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Academic year: 2022

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(1)多点水位観測結果を用いた流量ハイドログラフの推定法 パシフィックコンサルタンツ(株). 正会員. ○森下. 祐. 広島大学大学院 フェロー会員 中央大学研究開発機構 正会員. 河原能久 内田龍彦. 1.序論 洪水流量ハイドログラフは河道計画や治水安全度評価を検討する上で重要となるが,一般的に流量観測は労力 が大きく,観測精度は低いという問題を有する.渡邊ら. 1). は,水位は流量に比べて観測精度が高いことに着目し,. 実測水位ハイドログラフを境界条件とした二次元不定流解析を介して,洪水流量ハイドログラフを推算する手法 を提案している.この手法では,観測誤差が大きい実測流量ハイドログラフを粗度係数を推定する際の参考程度 の利用に留めることで,高精度の流量ハイドログラフの推算を実現している.しかし,洪水期間中の流量の実測 データを少なくとも 1 断面で必要としている. 本研究では,流量の実測データを用いるのではなく,多点水位観測結果から算出できる洪水流の伝播特性を用 いた手法を提案し,その手法の精度を検討する.ここで,本手法の精度は粗度係数の推定精度に強く依存するこ とを踏まえ,複断面蛇行水路の非定常流を対象に,高水敷粗度係数の違いが水位や流量,洪水流の伝播速度に及 ぼす影響について比較する.この意図は,高水敷粗度係数の変化に対する各諸量の感度の大きさを比較すること で,洪水流の伝播速度から,流量の実測データを用いた時と同様に適切な高水敷粗度係数を推定できるかどうか を検証することにある. 2.解析手法の特徴 本手法の特徴は洪水流の伝播速度を用いる点である.この理由として,洪水流の伝播速度は,①多点水位観測 結果から算出することができること,②断面平均流速の影響を強く受けているという 2 点が挙げられる.つまり, 洪水流の伝播速度は,潜在的には断面平均流速の情報を有しているため,これを正確に捉えることができれば, 原理的には水位データのみで流量ハイドログラフを推算できると言える. 本手法は,渡邊ら 1)の手法をベースとしており,境界条件として上・下流端に水位の時系列データを与え,水位 縦断分布の実測結果と解析結果が一致するような粗度係数分布を推定する.この時,洪水流が二,三次元的な挙 動を示す場合,水位縦断分布の比較のみでは十分な精度で粗度係数分布を推定できない.このため,洪水流の伝 播速度の実測結果と解析結果を比較することでこの推定誤差を補うこととしており,この点で流量ハイドログラ フを用いて推定誤差を補う福岡らの手法とは異なる. 3.非定常複断面蛇行流れを対象とした流量推算手法の検討 (1)解析の概要 本手法の検討に先立ち,図-1(a),(b)に示す実験水路に,図-1(c)の流量ハイドログラフを流下させた実験を行 い,図-1(a)に示す 9 点で水位及び流量の時系列データを取得する 2).この実験では,多点水位の実測結果の重要 性を強調するため,水面勾配制御区間(図-1(a)参照)での水面勾配が河床勾配と一致するように下流端ゲートを 自動調整している. 本解析では内田ら 3)が提案した二次元数値解析モデルを用いる.このモデルはデカルト座標系を用いながら市街 地氾濫解析で良好な結果を示すことが実証されている 4).境界条件は,福岡ら 1)の手法と同様に,水路の上下流端 に仮想の pond を設け,断面①,⑨での水位ハイドログラフの実験結果を再現するように pond 内に水位変動を与 える.低水路(nmc)及び高水敷粗度係数(nfp)は,水位縦断分布の時間変化及び断面①,⑤,⑨のピーク付近に おける流量の実験結果と解析結果の比較から,nmc=0.010,nmc=0.020(基準値と呼ぶ)と推定された. (2)高水敷粗度係数が流量,水位,洪水流の伝播速度に及ぼす影響評価 高水敷粗度係数(nfp)が水位,流量,洪水流の伝播速度に及ぼす影響を明らかにするために,種々の nfp を用い た数値実験を行った.なお,低水路粗度係数(nmc)は全ケースとも基準値とし,断面①,⑨に境界条件として与 える水位ハイドログラフは全ケースにおいて同一である. 図-2(a),(b)に,種々の nfp に対する断面⑤での流量及び水位ハイドログラフを示す.流量ハイドログラフは nfp の違いによって大きく変化し,その変化はピークに近い程大きい.それとは対照的に水位ハイドログラフは洪水.

(2) 22.5 m ①. ②. ③. ④. :水位計測点. ⑤. 水面勾配制御区間 ⑦ ⑧. ⑥. 制御ゲート. ⑨. 2.2 m. Flow 蛇行度. 河床勾配. 1.10. 1/1000. 人工芝(7 mm). 流量(×10-3m3/s). (a) 水路平面図. 5.2 cm. 最大流量 17(×10-3 m3/s) 18 16 14 12 10. 基底流量 7(×10-3 m3/s). 8 6. 0.5 m. 0. 500. 1000. 1500. 2000. 時間(s). (b) 水路断面図. (c) 流量ハイドログラフ 実験水路と実験条件 9.5. 20. nfp=0.015 nfp=0.019 nfp=0.020 nfp=0.021 nfp=0.025. 18 16 14. 水位(cm). 流量(×10-3m3/s). 図-1. 8.5. nfp=0.015 nfp=0.019 nfp=0.020 nfp=0.021 nfp=0.025. 7.5. 12 10. 6.5. 8 5.5. 6 0. 500. 1000. 1500. 0. 2000. 500. 1000. 種々の nfp による断面⑤の流量ハイドログラフと水位ハイドログラフ 60. E H (%) . (H )t  (H s )t  100 ( H s )t. n  ns E n (%)   100 ns. H, Q ,n :水位,流量,粗度 E :相対変化 添え字 t :時間 t (s) 添え字 s :基準. 図-3. 流量. 40. 流量の相対変化(%). ( Q ) t  (Q s ) t  100 (Q s ) t. 0.15. 20 0 -60. -40. -20. 0. 20. 40. -20 -40 -60. 粗度係数の相対変化. 60. 水位の相対変化の平均値(%). 相対変化 E の算出式 EQ (%) . 2000. (b) 水位ハイドログラフ. (a) 流量ハイドログラフ 図-2. 1500. 時間(s). 時間(s). 水位. 0.1 0.05. -60. -40. 0 -20 0 -0.05. 20. 40. 60. -0.1 -0.15. 粗度係数の相対変化. (a) 流量 (b) 水位 断面⑤における高水敷粗度係数の相対変化と流量及び水位の相対変化. の全期間を通して nfp の違いによる影響を殆ど受けていない. 高水敷粗度係数 nfp の変化が断面⑤の流量と水位に及ぼす影響をそれぞれの相対変化を用いて定量的に検討する. 相対変化は図-3 のように定義するが,相対変化は任意の時間 t の相対変化ではなく,600~1400 秒までの 20 秒毎 に算出した相対変化の平均値を意味する.図-3 より,nfp と流量は明らかな相関を有しており nfp が小さくなるほど 流量の増加率が高い.一方で,nfp と水位には目立った相関も認められず,nfp に対する変化量も流量に比べ極端に 小さい.このため,流量から nfp を容易に推定することができる反面,水位から nfp を推定することは困難である. 次に,洪水流の伝播速度を検討する.洪水流の伝播速度は断面①~⑨のピーク水位の発生時刻を流下方向に追.

(3) 下流端からの距離(cm). 表-1. 2000. 断面①. 高水敷 粗度係数 nfp 上流部 遅れ時間(s) 下流部 遅れ時間(s) ピーク時間 差(s)(前) ピーク時間 差(s)(後). 1600 1200. nfp=0.010 nfp=0.015 nfp=0.020 nfp=0.025 nfp=0.030 実験結果. 800 400. 断面⑨. 0 855. 865. 875. 885. 断面① 1600 1200 800 400 0 855. nfp=0.010 nfp=0.015 nfp=0.020 nfp=0.025 nfp=0.030 実験結果. 0.015. 0.020. 0.025. 0.030. 7.5. 9.5. 9.8. 11.0. 10.1. 5.0. 12.2. 9.1. 10.2. 11.3. 15.84. 20.86. 18.68. 19.54. 20.80. 19.22. 18.60. 20.92. 19.99. 20.01. 65. 解析結果 55. 実験結果. 45. 断面⑨ 865. 875. 885. 時間(s). 図-5. 洪水流の伝播速度(cm/s). 下流端からの距離(cm). ピーク水位の縦断位置と発生時刻の関係. 2000. 0.010. ※ピーク時間差(前) :遅れ時間を調整する前の上・下流部の ピーク水位発生時刻の差 ※ピーク時間差(後) :遅れ時間を調整した後の上・下流部の ピーク水位発生時刻の差. 895. 時間(s). 図-4. 洪水流の伝播速度と nfp の関係. 895. 35 0.005. ピーク水位の縦断位置と発生時刻の関係 (遅れ時間調整あり). 0.015. 0.025. 0.035. 高水敷粗度係数 nfp. 図-6. 洪水流の伝播速度と nfp の関係. 跡することによって算出できる.図-4 に実験及び種々の nfp の解析結果におけるピーク水位の縦断位置と発生時刻 の関係を示す.この関係における傾きが洪水流の伝播速度を表す.ここで,境界条件を与えている断面①,⑨の ピーク水位発生時刻はそれぞれ異なっており,特に実験と解析でその違いは大きい.これは,pond の水位変動が 断面①,⑨に伝播するまでに要する時間(遅れ時間と呼ぶ)に起因する誤差である.つまり,実験と解析の誤差 は遅れ時間を考慮していないため,各解析間の誤差は nfp によって遅れ時間が異なるためと考えられる.洪水流の 伝播速度を検討する際,この誤差により,図-4 中の傾きが変化する可能性もあるため,境界条件の与え方を改善 する必要がある.これについては,次節で述べ,nfp による影響評価も上述した理由から次節に譲る.なお,実験 結果には所々で不連続部が見られる.その位置は上流から規則的に配置されているため,蛇行水路の形状に起因 して生じたものであることが示唆されるが,断面⑦の実験結果については計測誤差に因ると考えている. (3)高水敷粗度係数が洪水流の伝播速度に及ぼす影響評価の再検討 境界条件の与え方を改善するが,これには上・下流部(断面①,断面⑨)で適切な遅れ時間を評価する必要が ある.本研究では,前述した種々の nfp に対し,上・下流部でのピーク水位発生時刻が実験結果と一致するように, この遅れ時間を試行錯誤的に調整した.表-1 に上・下流部で調整した遅れ時間,及び遅れ時間を調整した場合と しない場合の上・下流部のピーク水位発生時刻の差も付記する. 図-5 に遅れ時間を調整した後のピーク水位の縦断位置と発生時刻の関係の比較を示す.遅れ時間の調整により 上・下流境界断面のピーク水位の発生時刻は実験結果と概ね一致している.nfp の増加に伴いピーク水位の到達時 刻が遅れていることがわかる.しかし,実験結果の精度上の問題もあり,実験結果と解析結果(5 ケース)の比較 から nfp を推定することは困難である.このため,図-5 から洪水流の伝播速度を算出し定量的な比較を行う.とこ ろで,洪水流の伝播特性は,図-5 の形状から下流の制御ゲートの影響を強く受けていると考えられる.そこで, 洪水流の伝播速度を断面①~断面⑤のピーク水位の縦断位置と発生時刻の関係を最小二乗法で近似した線形式の 傾きとして求めた.図-6 に洪水流の伝播速度と nfp の関係を示す.図より,nfp が増加するに従い洪水流の伝播速度 は減速するという妥当な結果と共に,その減速割合は次第に小さくなる傾向にあることがわかる.この傾向は,.

(4) 洪水流の伝播速度(cm/s). 洪水流の伝播速度(cm/s). 65. 遅れ時間調整あり 遅れ時間調整なし. 55. 45. 35 0.005. 60 55 50 45 40. 0.015. 0.025. 0.035. 10. 高水敷粗度係数. 図-7. 15. 20. 25. ピーク水位発生時刻の差. 洪水流の伝播速度と nfp(左)及びピーク水位発生時刻の差(右)の関係. 図-3(a)に示した nfp の違いによる流量の相対変化と同様であり,伝播速度と流量の間には密接な関係性があるこ とを証明している.これらの結果と実験結果の伝播速度を比較した場合,実験結果は nfp=0.020 に最も近く,伝播 速度から nfp を評価できることがわかる.ただし,nfp に対する伝播速度の違いは,実験結果の精度に比べて十分に は大きいとは言えず,目安となる伝播速度の実測値にかなりの精度が要求されると言える. 最後に,遅れ時間を調整したことによる洪水流の伝播速度への影響を検討するため,図-7 左に,遅れ時間を調 整した場合としない場合の洪水流の伝播速度の比較を示す.図-7 左より,伝播速度の変化量は小さく,これは, 上・下流部でのピーク水位発生時刻の差(表-1)が調整の有無でほとんど変化しなかったためと考えられる.ま た,図-7 右に nfp=0.020 における上・下流部でのピーク水位発生時刻の差と伝播速度の関係を示す.この関係は, ピーク水位発生時刻の差が変化すればするほど,伝播速度も変動することを示しているため,洪水流の伝播速度 の評価には,上・下流部のピーク水位発生時刻の差を概ね一致させることが重要であると考えられる. 以上のように,水位の実測結果のみから洪水流の伝播速度を再現することで,大まかな粗度係数を推定できる ことが示された.しかし,本検討では,高水敷粗度係数と伝播速度の関係性を捉えることは出来たものの,種々 の影響(流下距離,断面形状,下流条件)により,その関係性の程度の妥当性を評価するに至らなかった.また, 洪水流の伝播速度を評価するためには,水位の実測値にかなりの精度が要求されることになる.このような課題 を克服するために流量ハイドログラフの観測値は有用である.しかし,図-2(a)で示したように,計算される流量 は nfp の違いにより変化するが,その変化には一定の規則性がある.このため,粗度係数の推定には必ずしも洪水 全期間での流量データは必要ではない.即ち,洪水流量観測が減水期でしか行うことができない場合にも,その 一部のデータから数値解析を介して粗度係数値の推定誤差を小さくすることができ,流量ハイドログラフを十分 な精度で推定できると言える. 4.結論 1) 非定常複断面蛇行流れにおいて,洪水流の伝播速度は,高水敷粗度係数の違いに対し,規則性を有した変化を 示すことから,洪水流の伝播速度を参考として,高水敷粗度係数を推定することは可能である. 2) 流量の実測値は,高水敷粗度係数をより適切に推定できる指標であることが確認され,洪水期間の一部の流量 観測データでも,流量ハイドログラフを推算する有用な情報となる. 参考文献 1) 渡邊明英ら:複断面蛇行河道におけるハイドログラフの変形と河道内貯留の非定常 2 次元解析,水工学論文集, 第 46 巻,pp.427-432,2002. 2) 森下祐,渡邊明英,内田龍彦,河原能久:複断面蛇行河道における洪水流の増水期と減水期の流れ構造,応用 力学論文集,Vol.9,pp.977-985,2006. 3) 内田龍彦ら:地形変化を有する二次元浅水流の保存型 CIP 陽解法,応用力学論文集,Vol.9,pp.917- 924,2006. 4) 内田龍彦ら:デカルト座標系を用いた市街地氾濫流シミュレータの構築と竹原市の高潮氾濫への適用,水工学 論文集,第 51 巻,pp. 517-522,2007. 5) 森下祐ら:水位ハイドログラフと二次元不定流解析を用いた高水敷粗度及び流量ハイドログラフの推定,水工 学論文集,第 52 巻,pp.901-906,2008..

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