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搏動性眼球突出症の2例 金澤軍営大郷久留外科教室(主任久留勝教授)

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搏動性眼球突出症の2例

金澤軍営大郷久留外科教室(主任久留勝教授)

辰  巳  邦  雄

   K2trii  Tals7ynii   (昭和24年2月14日錦窯)

緒  搏動性眼球突出症に面する記載は1809年 Travers 4)によるものを無二とし,本邦に寝て は吉釜,高橋(明治25年)12)の報告以來二十数

前の報告を見る.余は最:面白教室に於て特護性 及び外傷性搏動性眼球突出症各1例を経験せる を以て蝕に報告する.

臨  第1例患者35歳農婦〔主訴〕左眼球突出.〔家族 歴〕特記すべきものなし.〔既往歴〕21歳の時爾側慢 性丁丁炎に罹患せる他著骨なし.出産6回t何れも尋 常分娩.〔現病歴〕昭和19年3月,分娩2日前より突然 左眼に穿刺檬疹痛を訴ふ.3月11日分娩す.疹痛は其 の後2ケ月程にて去り,漸次二親,覗力障碍を訴へる 檬になった.同年8月5日眼孔にて搏動性眼球突出症 の診断を受け,頭痛,耳鳴を訴へる檬になり,同年9 月6日當科に入院す.〔現症〕腿格榮養共に中等,胸腹 蔀四肢に異常を認めず.左眼球は覗診上突出を認め外 轄筋麻痺:を認む.(附圖第1).球結膜充血し,眼球に 情動を射れ聴診により眼窩周邊に騒音を聞く.二毛.

      ミ左0.5,右1・2.眼球突出度左17m血右12mm(ヘ ルテル氏).直屋.最高135mmHg .最低100皿mllg・

血液,尿,尿,畷脊腿液に異常なく,氣彊撮影をなす も特記すべき所見を詔めず.〔診断〕左特綾性眼球突出 症.〔手爾及び経過〕昭和19年9月13日,左総頸動脈結 紮術を施行す.術後10日にして眼球突出去り,自他畳 的に騒晋を認めず,外轄筋聯痺を僅かに残すのみにて 退院す.

 第2例患者21歳看護婦〔主訴〕右眼球突出蚊に頭 痛.〔家族歴〕特記すべきものなし.〔既往歴〕16歳の時 左照性肋膜炎に罹患す.〔現病歴〕昭和21年4月7日,

列車より顛落し右後頭部を強打し,約1週間意識不明 にて経過せる後,右眼に雪明を感ずる様になり,同年 6A二二より硯力障碍,二二性頭痛,耳鳴あり,外轄 筋麻痺を認める檬になった.同年9月某病院にて右内 頸動脈結紮術を受け,諸症野州んど消退せるも,昭和 22年3月末頃より再び眼球突出, 耳鳴,頭痛等を訴へ る檬になり,同年5月28日入院す.〔現症〕盟格榮二丁 に中等にして,胸腹部四肢に二丁を認めず.右眼嵩部

 ヨより右頬部にかけ浮腫状に腫脹す,右上眼瞼下学,眼 球突出,結膜充血を認め,右眼周邊に騒音を聴取す,

三反融経支配領域は第1,II, III技の順に知豊鈍靡 あり.血糊.最高110mmHg・最低98mmH9,血液〆 尿,尿,鷹脊毒液に異常を認めず.〔眼科検査〕感力,

左1・2,右眼前手動,眼球突出度,左16mm,右23mm

(ヘルテル氏〕,右眼底に壇殖性網膜炎あり,右外轄筋 麻痺を謹明す.(附圖第3).〔診断〕右外傷性搏動性眼 球突出症.〔手術及び経過〕右内頸動脈結紮術を施行 す.術後僅かに諸症朕輕快するやに見えたるも,6月 13日頃より前記症朕再燃し,同年7月18日,頭蓋内内 頸動脈に銀クリップをかけた.術後嘔氣,嘔吐著明に して,激しい頭痛を訴へたが,順調に経過し,頭痛,

耳鳴も殆んど消退し,頑力障碍,外轄筋麻痺を胎して 同年8月11日退院す.

考 搏動性眼球突出症は内頸動脈が海綿洞内を通

過する部に於て破れ,蝕に動静脹瘤が形成さ

[ 53 ],

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184 搏動性眼球突出症の2例

れ,眼窩静脈の高度の鰐血を來す爲に護生する ものであって,罹患側野球の突出及び搏動雄に 該脂球周邊の自他畳的騒音を…持徴とする事は周 知である.その護生機韓から外傷性のもの及び 特獲性のものに大別される.從來の報告を通覧

するに外傷性のもの遙かに多く,C. H. Sattler 3)

は322例中,外傷性246例,特獲性76例にして 外傷性は特獲麟の約3倍に早ると報告す.外傷 性のものN原因としては,直接海綿洞内に於け る内頸動脈を損傷するものとして,刺創,銃創 あり,頭蓋骨折等により二次的に獲生するもの としては,顛倒,頭蓋の衝撃,打撲等が畢げら れてるる.特護性のものは,.妊娠,分娩,月経 困難症,徽毒,熱性疾患時等に見られる事多し とされてみる3).余の1例は顛倒に件ふ頭蓋打 撲を直接の原因とし,他の1例は分娩に合併し て獲生して みる.本症の徴:候としては前記三主 要徴候の外に,頭癒結膜浮鞭眼窩静脈の怒 張,搏動,眼球の攣位,一次謄躍紳経萎縮,.覗 力障碍,眼筋麻痺,交感刺1経障碍,三叉聯経障 碍等が報告され,これらの中眼筋麻痺,交感祠1 経障碍,三叉門経麻痺等は直接動静脈瘤そのも のに基因する:場合もあり,本症を惹起した外傷 そのものによる場合もある.反之前記馬車徴拉 に結膜浮腫,一次的覗手刷萎縮等は動脹血の静 脈系統に急激に移動する結果鶴首する症候であ る.外傷性,特神性爾者の間に自mva的,他量的 症候に著しき差異を認め得なV・.眼筋麻痺を惹 起する動脈紳経,滑車耐経,外旋祠脛の障碍ば 海綿洞に封ずる解剖學的關係より,之に最:も密 接な外旋聯経が侵され易く,之に次で動眼,滑 車帥経の順と報告されてるる3、.叉三叉祠1経に 於ても同様の關係より第1枝が最も侵され易 V・.余の2例は共に外旋祠脛麻痺を謹明し叉外 傷性のものには三叉祠細魚枝の領域に知事鈍麻 を認めたが,何れも術後の経過に伴ぴ溝退し た. (附圖第2,第4)Dandy i8)は診断上最:

重要なるは眼窩藍鼠に於ける自畳的拉に他畳的 の騒音なりとしてみる.本症の治療には頸動脈 墜迫法,眼窩静脈電氣焼灼法,眼窩静脈に凝固

性物質を注入する法,内郷は総頸動脈結紮法及 び絞短辺,内頸動脈内筋肉片挿入法,限窩静脈 結紮法等あり,この申最も屡々憲用されるもの は内及び総頸動脈結紮法にして,本症の治療に 初めて本法を鷹用せるはTravers 3)なり.その 後多敷の追試を見,C. H. Sattler 3)の統計に 依れば,外傷性及ま特賦性の一側総(内)頸動脈 結紮197例屯治癒99例・魚群39例,再樹9例,

不攣5例にして,約50%に於て治癒を見ると云

ふ.頸動脹結紮に就てはpilz 4), Zimmermann19),

Siegrist 2), Ranzi 4)等の報告あり,生理解剖羅

宇關係より脳軟化,牛身不随,失語症等を績 讃する場合あるは不思議とするに當らない.

Siegrist 2)はかエる不愉快な績獲症の原因とし てWillis氏環による和行循環の異常,動脈硬 化,高齢,心臓衰弱による血管擬張力の減退等 を墨げてるる.Matas i J)は興行循環を:槍する爲 除去可能なるアルミニウムバンドを使用する事

を凶夢し,C. H. Sattler 3)は文獄を蒐i擁し,外

傷性搏動性限球突出症の一側頸動脈結紮による 死因を槍生し,周到なる注意の下に治療を行ふ 時は死亡率を0.6%に減じ得ると蓮べてるる.

Dandy 18)は35歳以上の患者の場合は頸動脈結 紮は死,臓障碍の原因となり得るを以て,術前 頸1動脈墜迫によりWillis氏i環による副行循環 を挿し,薄薄,頭痛,眼前朦朧,失祠1等を來す 場合には跣行循環の不充分なるを警告するもの

とし,結紮を避け絞掘を適用すべきとしてゐ

    ヴ       も

る.総頸動脈結紮が内頸動脈結紮に比し屡々慮 塗せられるは,外頸動脈を経由して内頸動脈に 流入する血液により騒障碍等の危瞼が輕減さ れるものと考へられてるる故で,Dorrance a.

:Loudenslager lo)は血流力學的見地より槍興し・

内頸動脈結紮により該動脈血流は一時全く遮断 され爲に海綿洞内に於ける動脈破裂孔より末梢 に位する臓よりの血流が逆流し隅症状を呈し且 この結紮によの頸動脈養を高き堅力で刺戟し,

ために血墜を下降せしめ,心臓作用を抑制す る.か寝る血管内塵の急激な下降は駆血管内の 血栓形成を招來する危瞼性あり.反之,総頸動

( 54 ]

(3)

辰 巳 論 文 附圖

第1圖

術前.導爆轄筋麻痺を好む.

第2圖

術後 4ケ年.三韓筋麻痺消失す.

第3圖 第4圖

譜・

術前.右外籟筋麻痺を認む.

薮叢

襲藤羅

術後 8ケ月.外鱒筋麻痺消失す.

1

(4)

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脈結紮により内頸動脈の血流は50%しか減じな い,之は外頸動脈より逆流する故で前記の如き 危険なし叉更に上甲歌腺動脈を結紮せぼ残絵血 流は更に孚減すると述べてみる.余の1例は総 頸動脈結紮により治癒せる例なり.絞掘方法に

は(1>廣筋膜6)の如きを用ひる法,(2)ゴムテ

t v,銀,アルミニウム14)等の金属バンドを用 ひて徐々に血管閉鎖を來す法1)とあり,術後の 調節可能な黙よb前者が勝れりとしてみる18).

頸部に於て総(内)頸動脈を結紮して効果なき 場合,頭蓋内にて内頸動脹結紮を提唱せるは

Zeller 13)にしてその後Hamby a. Gardner i7)の

報告あり,これらは何れも絹綜を用ひたるもの なるが,Dandy ls)は再損張を防止する爲銀ク

リップの使用を推奨す.余の第2症例は内頸動 脈結紮により諸症歌減退せざりしものにして,

頭蓋内にて内頸動脈に銀クリヅプをかけ,輕快 せしめ得たものである.

結 1)搏動性眼球突出症の2治験例を報告す.

1例は特獲性にして,1例は頭蓋外傷に績罪す.

2)治療法として頸部に於ける総或は内頸動 長結紮,二二によ診治癒せざる場合頭蓋内に於

て内頸動脈に銀クリ bプをかける法は推奨に値

す.

 欄筆に當り,御指導御二丁を賜りし恩師久留一升に 深謝す.

主 要丈獣

1) A. E. HaEstead, Surg, etc. 12, 298−303

(1911). 2) A. SHIegrist, Arch. ophth.1,

511−646 (1900)・ 3) C. ff. Sfldett1er, G nt efe u. Saem. Handb. d. ges. Aug. 9, (1920).

4) E. Rapmzi. Wien. klin. Wsch. 3i, 349一一359

(1918).       5) 原田。悶寒i, 實馬倹二二科目陰山,

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心眼,22,172一ユ83(大7)・  8)正,市川i敦 授記念論文集,367−375(昭5)・  9)丸尾,日 眼,8,643−669(明37)・   1の】鞭。Porranee a. E. Loudemsgager, Am・ J. ophth. 27, 1099−

1111(1934)。    11)中島, 日眼,26,1−12,

189−201,257−266(大11)・   12)小aV,大

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O. ZeRer, Dtsch. z. Chir. 111, 1−39 (1911).

14) R. Matas, J. am. med. Assoc. 56, 233一一 239, (1911). 15) R, Matas, J. am・ med.

Assoc.63,1441−1447(19ユ4).   16)満水。

糠倉,眼臨,40,190−191(昭21)・   17)W・

B. Hamaby a. W. 」. Gardmer, Arch. Surg.

27,. 676−685 (1933). 18) W. E. Dandy.

Zbl. Neurochir. 2, 77一一113, 165−206 (1937)・

19) W. Zimmermann, Beitr. klin. Chir. 8,

364−420, (1892). .

[ 5,5]

参照

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