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市販小児用かぜシロップ薬の 購入動機に関わる要因分析

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市販小児用かぜシロップ薬の

購入動機に関わる要因分析

雄 一 郎

小児期はある一定の状態ではなく、成人となる為の成長・発達の過程であり、新生児期から青 年期に至るまで、体重・体表面積の大きな変化、臓器の成長・発達、薬物動態の変化、精神・知 能の発達などが連続する。「小児」に関する定義は複数あり、最近の定義に関わる公的な文書と して、平成 12 年 12 月 15 日医薬審第 1334 号「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガ イダンスについて」では、年齢区分による小児患者の分類はある程度任意に決められると書かれ ており、考えられる 1 つの分類は早産児、正期産新生児(0∼27 日)、乳幼児(28 日∼23 カ 月)、児童(2 歳∼11 歳)、青少年(12 歳∼16 又は 18 歳)である。また一般用医薬品のかぜ薬 製造販売承認基準(薬食発 0325 第 28 号 厚生労働省医薬食品局長通知 平成 27 年 3 月 25 日)では、年齢区分別用量の換算計数表で 15 歳以上を係数 1 として、15 歳未満を年齢区分ご とに減算している為、15 歳未満のものを「小児」として扱われていると考えることもできる。 休日や夜間に緊急性のない軽症患者が病院の救急外来を自己都合で受診する行為「コンビニ受 診」が社会問題になっている。また共働き等の増加で子供を昼間に受診させることができず、あ るいは急な発熱等で救急外来を訪れる親御さんも多い。ただ、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で逆に小児科の受診率が極端に低下し、必要なワクチン接種率の低下が問題しされ るなど、医療現場の混乱は続いている。このような状況下、小児の罹患時にはまず市販薬で様子 を見て、必要なら受診するという対応が今後の新しい生活様式として確立されて行くと考える。 そこで購入頻度の高いと思われる市販小児用かぜシロップ薬を対象に、購入動機に繋がると推 察される本質的な機能(有効性・安全性・品質)、経済的な要因(価格)、安全配慮(安全キャッ プとプラスチック容器の使用状況)、外箱記載の情報(広告的な側面を含む)の 4 つの視点から 製品調査を行い、製品戦略を考察することを目的とした。

調 査 方 法

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページの一般用・要指導医薬品 (11)

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の情報検索より、薬効分類(医薬品の種類)に「かぜ薬(内用)」、剤形に「液剤」を指定した上 で、販売名(医薬品の名称)にキーワード「こども」、「キッズ」、「小児」で絞り込まれた製品を 対象とした。情報検索は 2019 年 9 月に実施した。その際、同一商品名の医薬品でフレーバー (イチゴ味、ピーチ味等)が異なるものは別製品として扱った。加えて「要指導・一般用医薬品 製造販売承認基準・申請実務の手引き 2017」で、シロップ剤は 7 歳以上の者及び生後 3 か月未 満のものを対象とする用法は認められないと記載があり(1)、また令和元年 7 月 9 日付厚生労働 省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知(薬生安発 0709 第 9 号)(2)により、コデインリン酸 塩水和物またはジヒドロコデインリン酸塩含有製剤は 12 歳未満の小児への使用が禁止されたこ とから、上記 2 成分を含む医薬品は調査対象から除いた。さらに別途、ネット検索を行った際 に検索にかかった「小児用かぜシロップチルダンプラス」「フジコールシロップ小児用 N」を加 えた 66 製品を今回の調査対象とし、添付文書を入手の上、記載内容を整理し解析を行った。 価格調査は「amazon.co.jp」のサイトを利用した。サイト内に販売店が複数ある場合にはそれ ぞれの販売価格の平均値を求めた。「amazon.co.jp」での販売規約の特性上、配送料を高値で商 品販売価格を安値で設定することでアマゾンへの支払い手数料を低くする手法を取り入れている 販売店もある為、平均値は配送料を含めた価格で求め、配送料の平均値を引いたものを製品販売 価格の平均値とした。 外箱記載の情報調査では、ドラッグストアで良く見かけるパブロンキッズかぜシロップ、小児 用ジキニンシロップ、小児用ビタクール D かぜシロップ、新チルニン小児シロップ、ノスポー ルこどもかぜシロップ、ムヒのこどもかぜシロップ Pa、キッズバファリンシロップ s を調査対 象とした(以下、この 7 製品を「外箱記載情報調査対象製品」と略す)。外箱記載情報調査対象 製品の外箱の各種情報量を比較するために、各項目の表示面積は正方形又は長方形と仮定して算 出した。キャラクターにフレーバー表示などの項目が重なっている場合は、キャラクター(フレ ーバー箇所も含む)とフレーバーに分けて計った。また、余白部分は計測せず、会社名、連絡 先、副作用被害救済制度などの項目は全て「問い合わせ」の項目にまとめることとした。

結果及び考察

1.本質的な機能(有効性・安全性・品質) 前述のかぜ薬製造販売承認基準に基づき、市販小児用かぜシロップ薬で扱える成分は限定され ている。実際の市販小児用かぜシロップ薬 66 製品に配合されていた有効成分ならびに添加剤の 使用頻度を図 1、2 に、有効成分のうち主要な有効成分を抜き出したものを図 3 に示す。 かぜ薬製造販売承認基準より 15 歳未満に使用できる解熱鎮痛成分はアセトアミノフェン以外 にもサリチルアミド、エテンザミド、ラクチルフェネチジンが上げられるが、図 3 に示すよう に実際に市販用かぜシロップ薬 66 製品で使用されていた解熱鎮痛は全てアセトアミノフェンで あった。この理由の一つとしてサリチルアミド、エテンザミドは、アスピリン喘息や子供のイン (12)

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フルエンザ脳症との関連が示唆されてからではないかと考えている(3) 次に抗ヒスタミン薬だが、今回調査を行ったかぜシロップ剤に含まれる抗ヒスタミン薬はクロ ルフェニラミンマレイン酸塩(d 体のみも含む)、ジフェンヒドラミン塩酸塩とジフェニルピラ リン塩酸塩の 3 成分であった。このうち、60 製品がクロルフェニラミンマレイン酸塩を選択し ていた。かぜ薬製造販売承認基準ではこの 3 成分以外にも複数の抗ヒスタミン薬の使用が可能 であるが、その多くは脳に移行しやすい第一世代の鎮静性抗ヒスタミン薬で、熱性けいれんの持 図1 市販小児用かぜシロップ薬に含まれていた有効成分と使用頻度2 市販小児用かぜシロップ薬に含まれていた添加剤と使用頻度 市販小児用かぜシロップ薬の購入動機に関わる要因分析 (13)

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続時間を延長する可能性があることや抗コリン作用により気道の粘液分泌を抑制することから風 邪症状を悪化させることが知られている(4)。現在では脳内移行率が低いとされる非鎮静性抗ヒ スタミン薬が多く承認されており、その中でも生後 6 カ月の乳児から小児適応をとっているフ ェキソフェナジン、レボセチリジンは、今後、市販小児用かぜシロップ薬への配合が望まれる。 鎮咳薬については、dl-メチルエフェドリンが 51 製品(全数の 77%)、デキストロメトルファ ンが 40 製品(61%)にそれぞれ含まれ、グアイフェネシン、漢方などの鎮咳作用を持つ成分が 1種類以上含まれるのは 63 製品(95%)だった。これ以外の鎮咳成分が含まれない 3 製品に関 しては、アセトアミノフェンと抗ヒスタミン薬 1 成分のみの組み合わせにカフェインが含まれ ている、あるいは含まれていない 2 もしくは 3 成分のかぜ薬であった。鎮咳薬は多種類に渡る が、先程述べた様に令和元年 7 月 9 日付厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知(2)で、 コデインリン酸塩水和物含有製剤又はジヒドロコデインリン酸塩含有製剤(以下「コデイン類」 という)は 12 歳未満の小児には服用しないことと改訂されている。この改定の理由は小児にお いてごくまれに重篤な呼吸抑制の副作用が生じるおそれがあり、米国や EU では処方制限が行 われている為である。 かぜ薬では、カフェイン類を鎮痛目的に使用する。無水カフェイン、カフェイン水和物、安息 香酸ナトリウムカフェインの 3 種が 49 製品(74%)に使用されていた。一方、カフェインを含 まない 17 製品のうち 9 製品の添付文書にノンカフェインやカフェインなしの記載が見られた。 カフェイン類はかぜ様症状に対して鎮痛目的で使用されているが、小児にとって大切である正常 な睡眠・覚醒のリズムを妨げる可能性がある。添付文書上にもノンカフェインであることを記載 し、カフェインを含んでいないことが有益であるという印象を持たせ、他商品との差別化を計る 工夫と考えられた。睡眠不足は小児の成長の妨げになることが示唆されており(5)、他にも認知機 能の低下、落ち着きのなさ、将来の肥満のリスクをもたらす等の研究結果も報告されている(2)3 市販小児用かぜシロップ薬に含まれる主な成分に対する製品数 (14)

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2.経済的な要因(価格) 河瀬絢子らが行った一般消費者の OTC 医薬品購入時の意識比較に関する調査(6)で、小児を育 てる親世代が多いと思われる 30 代以下と 40 代の人が OTC 医薬品を選ぶ際に「価格が安い」 ことをそれぞれ理由の 1 位、3 位に挙げている。OTC 医薬品は消費者が自分の意思で選択する 為、販売者側は消費者の希望に沿うような販売戦略を取ると考えられる。そこで、市販用小児か ぜシロップ薬に対して、販売価格と成分数、あるいは内容量との相関を検討した。 図 4 に示すように有効成分数あるいは添加物数と販売価格との間に相関性は見られなかった が、内容量に対しては相関関係(p<0.05)が認められた。内容量が 120 mL の多くが 800 円前 後、30 mL の多くが 500 円前後であった。消費者が視覚情報の大小でバリューを判断する為に 内容量によって販売価格が決められている可能性がある。 更にアニメキャラクターを用いた製品は競争力があり、またアニメキャラクター使用料も必要 なために価格が高くなるかと予想したが、キャラクター有りの製品価格帯は 735-910 円、キャ ラクターなしの価格帯は 602-1149 円で、キャラクターの有無は製品価格に影響しないと考えら れた。 3.安全配慮(安全キャップとプラスチック容器の使用状況) 子供の誤飲事故の原因製品では、医薬品・医薬部外品はタバコについで 2 位である(7)。そこ で誤飲防止の為の安全キャップの使用状況と、シロップ剤の容器に汎用されているガラス容器に 較べ破損しにくいプラスチック容器の使用を調査した結果を表 1 に示した。 全製品中、安全キャップを採用している製品は 16 アイテム(22%)、プラスチック容器を採 図4 価格と有効成分数・添加物数・内容量との相関 市販小児用かぜシロップ薬の購入動機に関わる要因分析 (15)

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用している製品は 7 アイテム(10%)であるのに対し、96 mL 以上の内容量をもつ製品に限定 すると 21 製品中、安全キャップ採用は 15 製品(71%)、プラスチック容器採用は 7 製品(33 %)であった。基本、安全キャップ、プラスチック容器を採用している製品のほとんどは 96 mL以上の内容量の容器に限られていた。30 mL や 48 mL の内容量の製品は 1 日で使い切れる ため、誤飲防止の為の安全キャップや割れた時の危険性を考慮したプラスチック容器は必要ない と推察した。 4.外箱記載の情報(広告的な側面を含む) 1)外箱各面の表示項目 外箱記載情報調査対象製品の外箱各面ごとに記載されている項目を表 2 に示す。 前面に記載されている項目は、商品を棚から取る際に必ず目にする項目である為、製品名やキ ャラクターイラストなどの一目見た瞬間に興味を引く項目が記載されていた。また、用法用量や 成分、効能効果、注意などの手に取ってから、自分の意思で読む必要がある項目については、製 品を回転する必要がある側面に記載されていることがわかる。上面に記載されている項目につい ては、棚に置かれている場所によっては、上から見下ろすこともある為、前面の項目と共通する 部分が多いと考えられる。下面は、購入者が一番目の届きにくい場所なので、必要ではあるが購 入者があまり意識することのないバーコードや使用期限・製造番号などの医薬品管理に関係する 項目が記載されていると考えた。 表1 市販小児用シロップ薬の容器材料と安全性キャップの有無 全製品数 (66 製品) 96 mL以上の内容量の製品数 (21 製品) 安全キャップ 有 16 15 無 50 6 容器材料 プラスチック 7 7 ガラス 59 14 表2 外箱記載情報調査対象製品の外箱各面ごとに記載されている項目と頻度 (16)

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3 外箱記載情報調査対象製品の項目ごとの情報提示面積比率

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2)製品ごとの各表示項目が占める割合 外箱に記載されている情報は、品質、有効性、安全性などの本質的な項目と広告などの非本質 的な項目に分類される。本質的な項目は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確 保等に関する法律」(薬機法)で必須な項目とそうでない項目にわけることができる。また非本 質的な項目は広告的な項目と非広告的な項目にわけることができる。外箱記載情報調査対象製品 7品目の外箱に表記された各情報項目の前面での表示面積が 6 面全体の面積に占める割合と、各 情報項目の 6 面合計面積が 6 面全体の面積に占める割合を表 3 に示す。 外箱に記載されている情報の中で最も重要な情報は、薬機法上表示が義務付けられている項目 である。表 3 に示すように薬機法上必要な情報は全面積の 38.4% を占めていた。その中で、前 面の製品名は 6 面全体の面積の平均 5.7%(2.7-7.4%)、6 面全体の製品名は 6 面全体の面積の 平均 13.0%(4.8-18.6%)を占めていた。河瀬らの調査結果である一般学生・薬学生・薬剤師の OTC医薬品選択時の視線の比較では、製品名は一般学生の中では最も長い視点滞留時間を示し た(6)。このことから販売戦略として、製品名が占める面積を大きく取り、購入者の目に留まる ことや製品名を覚えてもらうことを意図しているのではないかと推察した。次に視点滞留時間が 長いキャッチコピーの記載はそれほど大きくなく、代わりにキャラクターの面積が大きいものが 多かった。 次に本質的な項目である効能効果、成分、注意、問い合わせ、用法用量は、成分数や記載内容 によって多少各製品で異なる部分はあるが、概ね面積比に大きな差はないと考えられた。ただ し、注意の項目は他の項目に比べ多少面積の割合が大きかった。川瀬らは一般学生の視点滞留時 間は短いが、薬学生・薬剤師では成分の項目に次いで長いと述べており、OTC 販売に薬剤師が 関与することがあること、また購入者の安全性に対する関心度合いからも注意の項目は重要と考 えられ、表示面積が大きく取られているものと推察した。英語で小児用かぜ薬であることを表記 している新チルニン小児シロップは、海外からの観光客が多い日本の状況を考慮して上面全てと 前面・背面の名称の一部に英語表記を用いているものと考えられた。120 mL の 4 製品は全てフ レーバーが記載されているが、各製品でフレーバーの面積が多少異なることがわかった。フレー バーもキャラクターイラストの一部に使用しているものは面積が大きく、小児の目が引くように 設計されていた。 以上、調査対象全 66 製品の外箱情報を調査した結果ではないが、7 製品だけの比較でも各社 それぞれの考えで外箱の情報提供を行っている一面が理解できた。 引用文献 ⑴ 一般社団法人 日本 OTC 医薬品情報研究会,医薬品製造販売指針 別冊 要指導・一般用医薬品製 造販売承認基準・申請実務の手引き 2017,じほう,2017 年,pp 35-49 ⑵ 厚生労働省 医薬・生活衛生局監修 第 9 号 2019 年 7 月 OTC 医薬品使用上の注意改訂情報 ⑶ 厚生労働省 医薬品・医療用具等安全性情報 Pharmaceuticals and Medical Devices Safety

Infor-mation No.167 平成 13 年 6 月 27 日〈https : //www.mhlw.go.jp/houdou/0106/h0627-2 a.html〉 (18)

(9)

⑷ 谷内一彦,小児における抗ヒスタミン薬の選択について考える,小児,39, 275-282(2018) ⑸ 大川匡子,子どもの睡眠と脳の発達−睡眠不足と夜型社会の影響−,学術の動向,15 巻 4 号,pp

34-39(2010)

⑹ 河瀬絢子,崔庭瑞,李志炯,泉澤恵,日比野治雄,小山慎一,専門家・一般消費者における OTC 医 薬品選択時の視線の比較−医薬品情報コミュニケーションデザインのための基礎研究−,BULLE-TIN OF JSSD, vol.63 No.2, pp 81-88(2016.9)

⑺ 子供用水薬を中心とした医薬品容器の安全対策 報告書 平成 23 年 4 月 東京都商品等安全対策協 議会 謝辞 大阪大谷大学紀要の細則により学部学生を著者として記載できませんが、本論文のコアとなるデータは 医薬開発学講座所属の小引一樹さんの卒業研究を通じて協働で得られた結果であることをここに記し、小 引一樹さんの貢献に感謝の意を表します。 市販小児用かぜシロップ薬の購入動機に関わる要因分析 (19)

表 3 外箱記載情報調査対象製品の項目ごとの情報提示面積比率

参照

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