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2022
年8
月19
日 全6
頁Indicators Update
2022 年 7 月全国消費者物価
食品の伸び率が高まる中、「携帯電話機」も全体を押し上げ
経済調査部 研究員 瀬戸 佑基
[要約]
2022
年7
月の全国コアCPI(除く生鮮食品)は前年比+2.4%と、伸び率は前月から
0.2%pt
上昇した。エネルギーの伸び率は前月と同程度であったものの、食品関連の品目の押し上げ圧力が強まったことで非耐久消費財の伸び率が上昇した。また「携帯電話 機」の影響で耐久消費財もコア
CPI
を押し上げた。
今後も輸入物価高が消費者物価指数の押し上げ要因となるだろう。非耐久消費財を中 心とした財や、サービスのうち輸入物価の動向に影響を受けやすい品目で価格の上昇 が続く可能性が高い。他方、政策要因が物価の下押し圧力となり、コアCPI
は前年比+2%台前半で推移するとみている。ただし、為替要因によって輸入物価の伸び率が高止
まりし続けるリスクには注意が必要だ。日本
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7 月コア CPI:コストプッシュインフレが継続し、前年比+2.4%に
2022
年7
月の全国コアCPI(除く生鮮食品)は前年比+2.4%と、伸び率は前月から 0.2%pt
上昇した(図表1)
。エネルギーの伸び率は前月と同程度であったものの、食品関連の品目の押 し上げ圧力が強まったことで非耐久消費財の伸び率が上昇した。また「携帯電話機」の影響で耐 久消費財もコアCPI
を押し上げた。全国新コアコアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)は同+
1.2%と、伸び率が前月から 0.2%pt
上昇した。CPI
の持つ歪み(上方バイアス)が抑えられた連鎖方式の指数(季節調整値)で物価の推移を 確認すると、コアCPI・新コアコア CPI
は共に上昇基調にある(図表2)
。引き続きコストプッ シュインフレが進行しているといえる。図表
1:消費者物価指数の概況(前年比、%)
図表
2:全国 CPI
の水準(季節調整値、ラスパイレス連鎖方式)2021年 2022年
12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
全国コアCPI 0.5 0.2 0.6 0.8 2.1 2.1 2.2 2.4
コンセンサス 2.4
DIR予想 2.4
全国新コアコアCPI ▲ 0.7 ▲ 1.1 ▲ 1.0 ▲ 0.7 0.8 0.8 1.0 1.2 東京都区部コアCPI 0.5 0.2 0.5 0.8 1.9 1.9 2.1 2.3 新コアコアCPI ▲ 0.3 ▲ 0.7 ▲ 0.6 ▲ 0.4 0.8 0.9 1.0 1.2
(注1)コンセンサスはBloomberg。
(注2)コアCPIは生鮮食品を除く総合、新コアコアCPIは生鮮食品及びエネルギーを除く総合。
(出所)総務省「消費者物価指数」より大和総研作成
93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
全国コアCPI 全国新コアコアCPI 全国CPI(総合)
(2020年=100)
(年)
(注1)全国コアCPIは生鮮食品を除く総合、全国新コアコアCPIは生鮮食品及びエネルギーを除く総合。
(注2)シャドーは政府の「月例経済報告」においてデフレである旨の記載があった時期。
(出所)総務省「消費者物価指数」、内閣府資料より大和総研作成
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非耐久消費財の寄与度が上昇を続ける中、耐久消費財の伸びも徐々に加速
コア
CPI
の財・サービス別の寄与度の前月からの変化を見ると(図表3、4)
、非耐久消費財、耐久消費財などが上昇した。
非耐久消費財のうち食品関連では、「食パン」(6 月:前年比+9.0%→7 月:同+12.6%)や
「あんパン」(6 月:同+6.1%→7 月:同+9.1%)、「食用油」(6 月:同+36.0%→7 月:同+
40.3%)などをはじめとし、引き続き幅広い品目で値上げが行われている。
他方、非耐久消費財のうちエネルギーでは、「電気代」(6 月:前年比+18.0%→7 月:同+
19.6%)や「都市ガス代」
(6月:同+21.9%→7月:同+24.3%)などの伸び率が上昇したものの、燃料油価格激変緩和対策事業の効果や原油価格下落の影響もあり「ガソリン」(6 月:同+
12.2%→7
月:同+8.3%)などでは伸び率の低下が続いた。結果として、エネルギーによるコア
CPI
への寄与度は前月とほぼ同程度であった。耐久消費財では「携帯電話機」(6月:前年比+2.3%→7月:同+14.7%)が全体を大きく押 し上げた。半耐久消費財では、目立った価格変動は見られなかった。
サービスでは、「通信料(携帯電話)」(6月:前年比▲22.5%→7月:同▲21.7%)のマイナス 幅が縮小した。前年度の裏の影響などではなく、価格水準が
6
月に比べ小幅に上昇したためだ。また、引き続き「ハンバーガー(外食)」(6月:同+7.6%→7月:同+10.6%)などの様々な外 食サービスで値上げが行われている。他方、「宿泊料」(6月:同+3.6%→7月:同+0.2%)の 伸び率が低下した。
図表
3: 全国コア CPI
の前年比と寄与度 図表4:全国コア CPI
の内訳-25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
17 18 19 20 21 22
サービス 新コアコア非耐久消費財
半耐久消費財 全国コアCPI
エネルギー(右軸) 耐久消費財(右軸)
(前年比、%)
(前年比、%)
(年)
(注1)左図の消費増税、教育・保育無償化、Go Toトラベル事業の影響は大和総研による試算値。
(注2)全国コアCPIは生鮮食品を除く総合、新コアコア非耐久消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(出所)総務省「消費者物価指数」より大和総研作成
-2.0
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
17 18 19 20 21 22
消費税の影響 教育・保育無償化の影響
Go Toトラベルによる下押し サービス(政策要因除く)
エネルギー 新コアコア非耐久消費財
半耐久消費財 耐久消費財
コアCPI
(前年比、%、%pt)
(年)
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先行き:輸入物価高による押し上げが続くが、政策要因により一部緩和
今後も引き続き輸入物価高が消費者物価指数の押し上げ要因となるだろう。非耐久消費財を 中心とした財や、サービスのうち外食や外壁塗装費などの輸入物価の動向に影響を受けやすい 品目で価格の上昇が続く可能性が高い。他方、燃料油価格激変緩和対策事業などの政策要因が 物価上昇を一部抑制し、コア
CPI
は前年比+2%台前半で推移するとみている。7
月の円ベースの輸入物価指数(出所:日本銀行)は前年比+48.0%と高止まりしている。こ の輸入物価高は、タイムラグを伴いつつCPI
を押し上げるだろう。なお、円ベースの輸入物価指 数は契約通貨ベースの指数(7月:前年比+25.4%)を大きく上回る状況が続いていることから(図表
5)
、足元では為替要因も輸入物価押し上げに寄与しているといえる。足元では世界的な商 品市況の高騰が徐々に落ち着きを取り戻しているが、為替要因によって輸入物価の伸び率が高 止まりし続けるリスクには注意が必要だ。他方、今後も政策要因が物価の上昇を抑制する。2022 年
10
月期の輸入小麦の政府売渡価格 は、物価高対策の一環として、2022年4
月期から価格が据え置かれることとなった。また岸田 総理は2022
年8
月15
日の「物価・賃金・生活総合対策本部」第3
回会合にて、燃料油価格激 変緩和対策事業について「10月以降の対策を具体化」するよう指示1を行った。足元の物価上昇 の主因である食品やエネルギーに対する対策が重点的に行われることで、コアCPI
の伸びは抑 制されるとみている。これらの物価高対策に加え、「全国旅行支援」が実施され、その影響がCPI
に反映されれば、コアCPI
の伸びはさらに抑制されるだろう。図表
5:輸入物価指数(総平均)の前年比の推移
(出所)日本銀行統計より大和総研作成
1
首相官邸「総理の一日」
(2022年8
月15
日)5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
21/04 21/06 21/08 21/10 21/12 22/02 22/04 22/06 (前年比、%)
(年/月)
円ベース 契約通貨ベース20%pt程度
乖離5 / 6
消費税の影響 教育・保育無償化の影響
教養娯楽関連 教育関連
運輸・通信関連 医療・福祉関連
保険料等 家賃
公共サービス -0.9
-0.6 -0.3 0.0 0.3 0.6
17 18 19 20 21 22
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(年)
消費税の影響 たばこ 教養娯楽 保健医療 家事用消耗品 食料 その他 非耐久消費財
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
17 18 19 20 21 22
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(年)
消 費税の 影響 高 等教育 無償化 の影響
Go Toトラベ ルによ る下押 し 通 信・教 養娯楽 等(政 策要因 除く)
教 育関連 家 事関連
家 賃 外 食
そ の他 一 般サー ビス
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
17 18 19 20 21 22
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(年)
消費税の影響 身の回り品
自動車関連 教養娯楽
被服及び履物 家具・家事用品
その他 半耐久消費財
-0.1 0.0 0.1 0.2
17 18 19 20 21 22
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(年)
消費税の影響 冷暖房用器具 家事用耐久財
教養娯楽 携帯電話 その他
耐久消費財 -0.4
-0.3 -0.2 -0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
17 18 19 20 21 22
(コアCPIへの寄与度、%pt)
(年)
全国コアCPIの財・サービス別寄与度分解 耐久消費財 財・サービス別にみたコアCPIの動き
全国コアCPIの財・サービス別寄与度分解 耐久消費財 財・サービス別にみたコアCPIの動き
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、新コアコア非耐久消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(注2)消費増税、幼児教育・保育・高等教育無償化、Go Toトラベルキャンペーンの影響は大和総研による試算値。試算の都合上多少の誤差が存在する。
(注3)高等教育無償化に関して、国公立大学授業料は公共サービスに、それ以外は一般サービスに含まれる。
(注4)「政策要因」には携帯電話通信料引き下げの影響は含まない。
(出所)総務省「消費者物価指数」より大和総研作成
半耐久消費財 非耐久消費財(生鮮食品、エネルギーを除く)
公共サービス 一般サービス
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
17 18 19 20 21 22
消費税の影響 教育・保育無償化の影響 Go Toトラベルによる下押し サービス(政策要因除く)
エネルギー 新コアコア非耐久消費財
半耐久消費財 耐久消費財
コアCPI
(前年比、%、%pt)
(年)
6 / 6
輸入物価と企業向け価格 名目実効為替と原油価格
(注)企業物価、企業向けサービス価格は消費税を除くベース。
(出所)左図は日本銀行、右図は日本銀行、Bloombergより大和総研作成
他の関連指標の動向
70
75
80
85
90
10 95 30 50 70 90 110 130
17 18 19 20 21 22
WTI原油先物価格 ドバイ原油スポット価格 名目実効為替(右軸、逆目盛)
(2010年=100)
(年)
(ドル/バレル)
↑ 円安
円高
↓ -30
-20 -10 0 10 20 30 40 50 60
-6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12
17 18 19 20 21 22
企業物価 企業向けサービス価格
輸入物価(円ベース、右軸)
(前年比、%)
(年)
(前年比、%)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
17 18 19 20 21 22
内閣府 日本銀行
(%)
(年)
(注1)内閣府の期待インフレ率は消費増税の影響を含む、日本銀行は含まない。
(注2)内閣府と日本銀行の期待インフレ率のいずれにおいても上方バイアスがあるため、方向や相対的な水準で評価する必要がある。
(出所)左図は内閣府、日本銀行、右図は総務省「消費者物価指数」より大和総研作成
-200 -100 0 100 200 300 400
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
2020 2021 2022 2023
消費税の影響 ガソリン
灯油 ガス代
電気代 エネルギー
WTI(右軸)
(前年比寄与度、%pt) (前年比、%)
(注)為替レートとWTIが足元から一定と仮定した場合の試算値。燃料油価格激変緩和補助金は、2022年12月まで現行の制度のまま延長、
2023年1月以降は補助額を徐々に減少させ、2023年3月末まで実施すると仮定した。
(出所)総務省「消費者物価指数」、財務省、日本銀行、EIA、CME、Haver Analyticsより大和総研作成 試算値
(月)
(年)
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
17 18 19 20 21 22 (年)
コアCPI(生鮮食品を除く総合)
コアコアCPI(食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合)
新コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)
(前年比、%)
CPIの前年比変化率(コア・コアコア・新コアコア)
エネルギー価格のコアCPIへの影響とその見通し 家計の期待インフレ率(1年先)