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幹細胞の分化誘導による歯髄再生機構の解析

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Academic year: 2021

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J

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はしがき 研究組織 研究代表者:庄司茂(東北大学病院歯内歯周科) 研究分担者:八巻恵子(東北大学大学院歯学研究科) 研究分担者:根本英二(東北大学大学院歯学研究科) 交付決定額(配分額)(金額単位:千円) 直接経費 亊I ィニ N 合計 平成13年度 S 0 S 平成14年度 3 0 3 平成15年度 都 0 都 平成年度 平成年度 総計 S 0 S 研究発表 (1)学会誌等:なし (2)口頭発表:なし (3)出版物:なし 研究成果による工業所有権の出顔.取得:なし

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序 歯科疾患での歯髄炎や根尖性歯周炎に対して、これまでは抜髄や感染根管治療を 行うことで根管を生体に刺激しない状態に保つ治療法が正しい治療法と考えられ てきた。しかし、無髄歯がいかに脆いものであるかは最近大きな閉居になってきて おり、さらには歯髄除去に要する患者・歯科医の時間的、経済的損失は極めて大き いなどの問題がある。この解決のために、細菌本体やその産物によって引き起こさ れた炎症部位のみを除去し、残っている歯髄組織の幹細胞・未分化間葉系細胞の分 化を誘導し、歯髄を再生させることを目的とした研究を進めた。

<歯髄の解剖学的特長>

歯髄は象牙質に囲まれた軟組織で、血管・リンパ管そして神経を根尖孔から受け 入れており、タイプⅠコラーゲンを主体とした結合組織とともに、星状細胞や象牙 芽細胞などの歯髄細胞で構成されている。歯髄の存在部位により歯冠にある冠部歯 髄と歯根にある根部歯髄に分けて呼ばれている(図1)0 前述の通り、歯髄-の血液供給は根尖孔という狭い孔からしかなされていない。 しかし、図2に見られるように暦例の若い生物においては充分に血液供給が期待で きる。 *-マトキシリン・エオジン(H-E)染色では、血管中の血液は茶褐色に染まる。 したがって、少なくとも若年者の歯髄において、 「歯髄組織の再生」が期待できる。

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<細胞再生の定義とその指標>

再生とは、生体の失われた細胞・組織が全能性を有する幹細胞(ES細胞: EmbryomicStemcell )の増殖・分化によって補われることである。この再生に基 づく医療(再生医療)が最近大きくクローズアップされてきている背景には、わが 国でも1999年より行われるようになった脳死臓器移植が、ドナー数の不足に加え て、感染や拒絶反応などの深刻な問題を抱えているためである。現在、成功してい る代表的再生医療としては白血病治療法としての骨髄移植があげられる。 急激な研究の進展をみせている幹細胞は階層性(Hierarchy)があることが判明し、 特に最近では体性幹細胞よりさらに未分化なE S細胞に匹敵する能力を持った細

胞(MAP C s : Maltipotent adult progemitor cell)の存在も示唆されている。そ

の階層性は以下のように考えられている(図3)。 (図3)幹細胞の種類と階層性 受精卵 1 腫性幹細胞(E S細胞) 1 体性幹細胞 l MAPCs細胞 1 造血幹細胞 血練内皮幹細胞 同乗幹細胞 肝幹細胞 神島幹細胞 上皮幹細胞 <腔性幹細胞: E S細胞の表面抗原> 腫性幹細胞(ES)も、その定義が敢然には定まっていない。最近、 ES細胞をは じめとする多能性幹細胞の分化を同定する指標の一つとして、分化段階特異的に発 現量が変化する細胞表面抗原が明らかになってきた。

細胞表面抗原としてのSSEA・1 ( Stage Spee迫c EmbryonicAntigen・1 )は、マ ウスでは、 EmbryonalCarcinoma Cell( EC ), Embryomic Stem Cell ( ES ),およ びEmbryonic Germ Cell ( EG )で発現するものの、ヒトではEmbryonic Germ

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同じ細胞表面抗原の一種であるSSEA, 3 ( Stage Specific Emb町OnicAntigen・ 3 ) やSSEA・4 ( Stage Specific EmbryomiCAntigen・4 ) 、さらにはTRA・1・60( Tumor

軸ectionAntigen l・60)そしてTRA・1・81は、ヒトではEC,ES,EGの全ての細胞で

発現するものの、マウスではどの細胞でも発現はみられないb

特に、マウスではSSEA・1は未分化な段階では強く発現しているものの、分化が 進むにつれて発現量が低下し、代わってSSEA・4の発現が増加する。しかし、ヒト

のEC細胞やES細胞では未分化な状態でSSEA・4やTRA・1・60( nlmOr Rejection

Antigen l・60)そしてTRA・1・81などが発現しているが、分化が進むとSSEA・1の

発現が増加する。

SSEA・ 1 ( Stage Specific EmbryomiCAntigenl 1 SSEA・ 3 ( Stage Specific EmbryomiCAntigen・ 3 SSEA・ 4 ( Stage Specific EmbryomiCAntigen・ 4

TRAP 1・60( nlmOr RejectionAntigen l・60) TRA・ 1・81( Tumor RejectionAntigen l・81)

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実験材料と実験方法

<ヒトおよびマウス歯髄の選択理由>

1、ヒト抜去歯の歯髄 免疫組織化学的染色やフローサイトメトリーによるヒトES細胞の表面抗原解析 を行う上で、ヒトの歯髄はその抗体の種類を考えると極めて有用で容易な実験材料 ではある。しかし、歯を保存することが多くなってきた現代において、解析が行え るだけの歯髄容積を有する歯を入手することは困難である。今回、矯正治療での便 宜抜去の歯と下顎第三大白歯を対象とした。 2、マウス歯髄 研究当初において、免疫組織化学的染色やフローサイトメトリーによるマウス ES細胞の表面抗原解析を行う上で、マウスやラットの歯髄はその抗体の種類を考 えると極めて困難な実験材料であった。しかし、次第に上述のマウス抗体が市販さ れるようになってきたため、実験期間や方法を考慮した安定した研究が後半の時期 には行えるようになり、 8適例の雄性マウスの上下顎の大臼歯を実験に用いた。 特にマウスにおいては、末梢血中お幹細胞を基準として、歯髄組織内の幹細胞の 誘導を検討するための実験も行った。

<免疫組織化学的染色およびフローサイトメトリー解析法>

1、 免疫組織化学的染色 1) 入手した歯髄を4%パラフォルムアルデヒドで固定 2) 低温(4度C)でEDTA・Na脱灰 3) 凍結標本およびパラフィン標本で切片を作成 4) 免疫染色および鏡検 抗体: Chemicon lnternational 社製 免疫組織化学染色用 SSEA・1,3,4 と TRA・1・60,81 2、 フローサイトメトリー解析:末梢血中の幹細胞の誘導 1) G・CSFを投与し骨髄からの幹細胞の動員を図る 2)末梢血を採取 3 ) Ficdl上で遠心分画し末梢血中の細胞群から精製単核球群を得る 4)抗体・磁気ビーズ法により精製単核球群からCD34+細胞分画群を得る 5)フローサイトメトリーを用いて細胞表面抗原の分析を行い幹細胞を同定 抗体: Chemiconlntemational 社製 フローサイトメトリー用 SSEA・1,3,4 と TRA・1・60,81

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結 果 1 、免疫組織化学的染色 1)ヒトの健全歯髄 今回の実験目的を説明し理解と協力の得られた患者から得られた抜去歯歯髄を 対象にして、前述の免疫組織化学染色を施し、顕微鏡で観察した。その結果、ヒト 歯髄の一部で、細胞表面を覆うようにSSEA・1の発現がみられた(図3)0 盛衰鑑三豪逼塞定義二 .丸必㌫払' ヽ      1・L ヽ ・ダーt    -◆ ・二・、i fヾ I. I; -ヽ 各、鞍了J一ヽ照準 1-    、A〆 ■ I ■■

.. -..),I-(A

!信之野等声票等 ㌔ゲ (図3)

一方、同じようにヒト健全歯髄組織の一部の細胞全体にSSEA・4の発現が見られ た(図4)0 (図4)

(8)

ssEA・1とSSEA・4での染色性に差がみられたので、ヒトの未分化細胞で最近明

らかになってきたTumOr RejectionAntigen l・60 ( TRA・1160)についても免疫染色

を試みた。その結果、歯髄組織の一部の反応が強く見られた(図5)。

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ついで、特に未分化細胞で最近明らかになってきたTbmor RejectionAntigen l・81 (TRAl・81)に注意して検討を加えた。その結果、 TRA・1・81発現もヒト健全 歯髄細胞で見出すことが出来た(図7)。 (図7) ただし、今の歯を保存する流れの中で予想されたことではあったが、ヒトの歯で は歯の条件がそろって、しかも歯髄組織主としても充分な標本を入手することが困 難であった。このようなことから、マウスの歯髄に絞って検討を加えた 2)嵩洞形成後のヒト歯髄変化 一定の条件でのヒト健全歯髄反応を収集することが困難であったので、エナメル質を越して 象牙質半分に至る深さ2 mmの寓洞を形成し、 3円後に抜歯し寓洞形成下の歯髄変化を観察し た。その結果、今回は歯髄での幹細胞出現反応日を3 日後と考えて免疫染色を行ったが、 SSEA-1などの抗体を見出すことは出来なかった(図8)∩ (図8) i l -/     ! . I ノ         一 上 .

-3 . F

-A H H H g ぎ l t t k -〃 机 か . l ■ ー ぜ o J i ∼ -  < . J L 0 -1 一 N u m u H l T l ■ 事 . . 昏 ㍉. 、∵∴、"

(10)

2、マウスの歯髄 マウスの上下顎大臼歯歯髄を免疫組織化学染色を施し、顕微鏡で観察した。その 結果、ヒト歯髄で見られたのと同様にマウス健全歯髄組織細胞の一部で、細胞表面 を覆うようにSSEA・1の発現がみられた(図9,10)0 -=・::志摩;I( . .∴.よ. <-三方Ir (図1 0 :図9の一部の拡大像) (図9)

ー √ b r J .

(11)

一方、同じようにマウス健全歯髄組織の一部にSSEA・4の発現が見られた(図1 1 )。

(図11)

Tumor RejectionAntigen l・81 ( TRA・1181)のマウス健全歯髄での染色像は図1 2

に示したが、当然ながら発現を見出すことは出来なかった。 軒      tr 輪LT・ Pt,       Y 輔・L::-,,: . i ●   ● ■〆` 軒 (図12) 2、フローサイトメトリー解析:末梢血中の幹細胞の誘導 実験材料のマウス尾静脈からの末梢血採取量が少なかったため、 5匹分の末梢血 を解析に用いた。そのためか、フローサイトメトリーでの解析でのデータ採取が困 難であった。

(12)

ま と め

今回の免疫染色により明らかに染め出されたヒトの細胞では、図3と図4で分かる ようにヒトではSSEA・1の方が多かった。このことは、入手した歯が矯正治療での

便宜抜去歯や埋伏歯などで歯髄が完成したもので、歯髄内での細胞分化が進んでい

たと考えられる。ヒトのEC細胞やES細胞では未分化な状態でSSEA・4や

TRA・1・60( Tumor RejectionAntigen l・60)そしてTRA・1・81などが発現している

が、分化が進むとSSEA・1の発現が増加する。今回の染色では、 TRA・1・60の発現 に加えてTRA・ 1 ・81の発現が得られたことからヒト歯髄標本の暦例が進んでいる ことを裏付けた。 一方、マウスではSSEA・1だけでなくSSEA・3,4の発現が見られた。このことは、 今回実験に用いたマウスの暦例が8適例であったので、未分化な細胞が染め出され るSSEA・1だけでなく分化が進んでから染め出されるSSEA・4が見出されたと考 えられる。 今回の実験を通してヒトやマウスのEC細胞やES細胞を染め出すことが可能で あった。しかしながら、今回確立されている抗体 SSEA・1,3,4 や TRA・1・60,TRA・1・81ではEC細胞とES細胞を識別することは不可能であった。 さらには、今回の実験ではフローサイトメトリーでの細胞表面抗原検出が不可能で あったため、歯髄の一部に欠損を作成した後の治癒反応を検索していくという今後 の研究ためには、 EC細胞とES細胞の識別可能な抗体の確立が必要であると考え られる。

参照

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