高齢者の住宅改善における理学療法士の役割と専門性
TheRoleandSpecializationofPhysicalTherapistsintheHousingAdaptation 2012 年 3 月和洋女子大学大学院 総合生活研究科 総合生活専攻
蛭間基夫
MotooHiruma目 次
第 1 章 序 論 1. 本 研 究 の 社 会 的 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1-1. 今 日 の 日 本 の 高 齢 化 の 実 態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1-2. 高 齢 者 の 居 住 の 場 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1-3. 高 齢 者 の 継 続 的 な 地 域 居 住 の 要 望・・・・・・・・・・・・・・・10 1-4. 介 護 保 険 の 導 入 と 住 宅 改 善 (住 宅 改 修 )・・・・・・・・・・・・・ 11 1-5. 自 治 体 に よ る 住 宅 改 善 支 援 制 度 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 1-6. 小 括 : 理 学 療 法 士 の 介 入 の 必 要 性 ・・・・・・・・・・・・・・・ 20 2. 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21 3. 先 行 研 究 と 本 研 究 の オ リ ジ ナ リ テ ィ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22 4. 研 究 の 構 成 と 各 章 の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 27 5. 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30 5-1. 我 が 国 に お け る 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 誕 生 ま で の 動 向・・・30 5-2. 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 5-3. 理 学 療 法 士 の 勤 務 機 関 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・・・・・・・ 35 5-4. 住 宅 改 善 介 入 に お け る 報 酬 の 確 保 ・・・・・・・・・・・・・・・ 36 5-5. 理 学 療 法 士 と 作 業 療 法 士 の 現 在 の 関 係 性 ・・・・・・・・・・・・ 37 6. 用 語 の 定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 38 6-1. 住 宅 改 善 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 38 6-2. 日 常 生 活 活 動 (ActivitiesofDailyLiving;ADL)・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 40 第 2 章 訪 問 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お け る 訪 問 看 護 師 と 理 学 療 法 士 の 関 与 の 実 態 1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 41 2. 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 3. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 3-1. 対 象 者 の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 423-2. リ ハ 的 ア プ ロ ー チ の 実 施 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 3-3. リ ハ 的 ア プ ロ ー チ の 実 施 者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 3-4. 利 用 者 の リ ハ 的 ア プ ロ ー チ の 提 供 者 と し て の 希 望・・・・・・・・44 3-5. 機 能 障 害 ex と し て 実 施 し て い る 項 目 と PT,OT が 実 施 す べ き 項 目・45 3-6. ADLex と し て 実 施 し て い る 項 目 と PT, OT が 実 施 す べ き 項 目 ・ ・ ・ 46 3-7. リ ハ 的 ア プ ロ ー チ の 優 先 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 4. 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 48 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50 第 3 章 住 宅 改 善 を 実 施 し た 高 齢 者 の 実 態 1. は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 2. ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る 高 齢 者 の 実 態 調 査・・・・・・・・・・・・・52 2-1. 対 象 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 2-2. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 2-3. 小 括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55 3. 改 修 工 事 を 行 っ た 高 齢 者 宅 へ の 訪 問 調 査・・・・・・・・・・・・・56 3-1. 対 象 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 3-2. 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 57 3-3. 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 57 4. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 66 第 4 章 群 馬 県 に お け る 理 学 療 法 士 の 住 宅 改 善 介 入 の 実 態 1. は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 2. 対 象 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 3. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 3-1. 住 宅 改 善 の 経 験 の 有 無・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 3-2. 勤 務 施 設 と 主 対 象 者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 3-3. 住 宅 改 善 の 具 体 的 役 割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 3-4. 住 宅 改 善 の 効 果 判 定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
3-5. 住 宅 改 善 の 介 入 意 義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 3-6. 連 携 職 種 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 4. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77 第 5章 住 宅 改 善 に お け る 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 役 割 1. は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 2. 対 象 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78 3. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 3-1. 調 査 対 象 者 の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 79 3-2. 住 宅 改 善 の 実 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 3-3. 住 宅 改 善 後 の フ ォ ロ ー ア ッ プ 及 び モ ニ タ リ ン グ・・・・・・・・・87 3-4. 具 体 的 計 画 立 案 の 視 点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 3-5. 効 果 判 定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 3-6. PT, OT の 住 宅 改 善 に お け る 役 割 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 92 4. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 4-1. 住 宅 改 善 に お け る PT と OT の 役 割 ・・・・・・・・・・・・・・・ 97 4-2. 住 宅 改 善 に お け る PT と OT の 専 門 性 の 相 違・・・・・・・・・・・100 4-3. PT,OT の 地 域 支 援 へ の 介 入 を 阻 害 す る 要 因・・・・・・・・・・・101 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 103 第 6章 デ ン マ ー ク に お け る 住 宅 改 善 で の 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 役 割 と 専 門 性 1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 104 2. 対 象 と 方 法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 3. デ ン マ ー ク に お け る PT,OT の 歴 史 的 成 り 立 ち・・・・・・・・・・106 4. デ ン マ ー ク に お け る 住 宅 改 善 支 援 制 度・・・・・・・・・・・・・・108 4-1. 社 会 サ ー ビ ス 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 4-2. 住 宅 改 善 支 援 制 度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 4-3. 住 宅 改 善 支 援 の 実 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
4-4. デ ン マ ー ク に お け る 地 域 支 援 の 一 事 例・・・・・・・・・・・・・114 5. PT, OT の 養 成 課 程 と 住 宅 改 善 の 位 置 づ け ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 115 5-1. PT, OT の 養 成 課 程 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 115 5-2. PT, OT 養 成 に お け る 住 宅 改 善 の 位 置 付 け ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 117 6. コ ム ー ネ に お け る 住 宅 改 善 の OT の 活 動 状 況 ・・・・・・・・・・・ 120 6-1. 福 祉 器 具 セ ン タ ー の PT, OT の 配 置 ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ 120 6-2. 住 宅 改 善 に お け る OT,PT の 役 割 の 相 違 ・・・・・・・・・・・・ 120 7. 事 例 報 告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121 7-1. 集 合 住 宅 に 住 む 高 齢 者 夫 婦 世 帯・・・・・・・・・・・・・・・・121 7-2. 郊 外 の 戸 建 て 住 宅 に 住 む 児 童 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 124 8.考 察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 註 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 131 第 7 章 結 論 1. 各 章 の ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133 1-1. 「 第 章 訪 問 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お け る 訪 問 看 護 師 と 理 学 療 法 士 の 関 与 の 実 態 」 で 得 ら れ た 知 見 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 133 1-2. 「 第 3 章 住 宅 改 善 を 実 施 し た 高 齢 者 の 実 態 」で 得 ら れ た 知 見・・133 1-3. 「 第 4 章 群 馬 県 に お け る PT の 住 宅 改 善 介 入 の 実 態 」 で 得 ら れ た 知 見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133 1-4. 「 第 5 章 住 宅 改 善 に お け る 理 学 療 法 士 と 作 業 療 法 士 の 役 割 」で 得 ら れ た 知 見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134 1-5. 「 第 6 章 デ ン マ ー ク に お け る 住 宅 改 善 で の 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 役 割 と 専 門 性 」で 得 ら れ た 知 見・・・・・・・・・・・・134 2. 結 論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 3. 住 宅 改 善 に お け る PT に 関 す る 今 後 の 研 究 課 題・・・・・・・・・・137 文 献 一 覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138 謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
第 1 章 序 論
私 は 1991 年 4 月 か ら 理 学 療 法 士 (以 下 , PT)と し て 札 幌 市 内 の 病 院 に お い て 勤 務 し て き た .入 院 し て い た 高 齢 者 や 障 害 者 が 自 宅 に 退 院 す る 場 合 に ,生 活 す る 住 宅 を 彼 ら が 使 い や す い 環 境 に 整 備 し な け れ ば 家 庭 生 活 の 維 持 は 難 し い こ と が 多 か っ た .し か し ,多 く の 対 象 者 は 自 宅 に ベ ッ ド を 準 備 す る 程 度 で ,段 差 解 消 や 手 す り の 設 置 と い っ た 住 宅 改 善 を 実 施 す る 者 は ほ と ん ど い な か っ た .そ し て ,場 合 に よ っ て は 住 宅 改 善 に よ り 自 宅 で 入 院 中 と 全 く 同 じ 動 作 が で き る に も 関 わ ら ず ,住 宅 改 善 を 実 施 し な い で ,で き る 動 作 を あ き ら め て 生 活 す る 事 例 も 少 な く な か っ た . リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 最 終 的 な 目 標 と し て ,社 会 復 帰 や 家 庭 復 帰 が あ げ ら れ る . 従 っ て , PT が 対 象 者 の 復 帰 先 と な る 住 宅 や 住 宅 改 善 に つ い て 一 定 の 情 報 や 知 識 を 有 す る こ と が 必 要 と 考 え て い た が , 当 時 の 状 況 と し て は PT が 住 宅 改 善 に 取 り 組 む こ と は 社 会 的 に 浸 透 し て い な か っ た . 従 っ て , PT 全 体 の 住 宅 改 善 に 対 す る 取 り 組 み も 十 分 で は な か っ た . し か し , 高 齢 者 や 障 害 者 の 社 会 復 帰 や 家 庭 復 帰 を 最 終 的 な 目 標 と す る PT が そ の 復 帰 先 と な る 住 宅 や 住 宅 改 善 に 対 す る 知 見 が な い こ と は ,結 果 と し て , 社 会 復 帰 や 家 庭 復 帰 が で き な い 対 象 者 を 増 や す こ と に な る .あ る い は ,入 院 中 に 理 学 療 法 に よ っ て 獲 得 し た 動 作 や 機 能 を 自 宅 で は 活 用 で き な い こ と に も な る . 従 っ て , PT は 住 宅 改 善 に 関 す る 知 見 を 得 て , そ の た め の 具 体 的 な 支 援 に 積 極 的 に 介 入 す る べ き で は な い か と い う 疑 問 を 日 々 の 業 務 を 通 し て 持 つ こ と に な っ た . た だ し , 当 時 は PT が 住 宅 改 善 に お い て ど の よ う に 介 入 す る べ き で あ る の か と い っ た ガ イ ド ラ イ ン は な く ,参 考 と な る 資 料 も 建 築 系 の 研 究 者 や 技 術 者 が ま と め た 技 術 的 な 内 容 の も の と な っ て い た .そ れ ら の 一 部 の 中 に 住 宅 改 善 に PT が 介 入 す る 重 要 性 を 指 摘 す る も の が あ っ た が ,PT と し て の 私 の 疑 問 を 十 分 解 消 す る よ う な も の は 見 当 た ら な か っ た . そ こ で ,私 は 福 島 大 学 大 学 院 地 域 政 策 科 学 研 究 科 に 進 み ,鈴 木 浩 教 授 の ご 指 導 の 下 ,「 地 域 福 祉 に お け る 住 宅 改 善 の 有 効 性 に 関 す る 基 礎 的 研 究 」 と い う テ ー マ で ,ま ず 支 援 を 受 け る 側 と な る 高 齢 者 の 住 宅 改 善 に 対 す る 意 識 を 調 査 ,研 究 す る に 至 っ た .そ の 後 ,こ れ ら の 研 究 を 通 し て 得 ら れ た 知 見 を 基 礎と し て , 実 際 の 支 援 の 現 場 で あ る 介 護 老 人 保 健 施 設 で 勤 務 す る が , そ の 後 , 直 ぐ に PT の 養 成 校 に 勤 務 す る よ う に な り , 実 際 の 支 援 に 関 わ る こ と が な く な っ た . た だ し , 養 成 校 に お い て 住 宅 改 善 に 関 す る 科 目 を 担 当 す る と PT の 住 宅 改 善 に お け る 役 割 が 曖 昧 で ,そ の 職 域 が 不 明 確 で あ る こ と が 改 め て 明 ら か に な っ た . こ の よ う な 疑 問 を 強 く 感 じ な が ら , 2008 年 に 現 在 の 職 場 で 勤 務 す る た め に 群 馬 に 居 を 移 す こ と と な っ た . そ し て , PT と し て 勤 務 し て か ら こ れ ま で 疑 問 と し て 持 ち 続 け て い た 住 宅 改 善 に お け る PT 固 有 の 役 割 に 関 す る 研 究 に 取 り 組 む た め に 2009 年 4 月 か ら つ い に 和 洋 女 子 大 学 大 学 院 に 進 学 し ,こ こ に そ の 研 究 成 果 を ま と め る も の で あ る . 1.本 研 究 の 社 会 的 背 景 1-1.今 日 の 日 本 の 高 齢 化 の 実 態 2010 年 度 国 勢 調 査 1)の 結 果 に よ る と 我 が 国 の 総 人 口 は 1 億 2,805 万 7,352 人 (2011 年 10 月 1 日 現 在 )で 前 回 調 査 (2005 年 度 同 調 査 )と 比 較 す る と 横 ば い で 推 移 し て い る . こ れ に 対 し て 65 歳 以 上 の 高 齢 者 の 人 口 は 357.4 万 人 増 加 し , 2,924.6 万 人 に 達 し て い る . そ し て , 高 齢 化 率 は 前 回 調 査 時 の 20.2%か ら 過 去 最 高 水 準 の 23.0%に 達 し て い る が ,こ れ は 他 の 主 要 国 と 比 較 し て 最 も 高 い 水 準 で あ る (表 1). ま た , 7.0%(高 齢 化 社 会 )か ら 14.0%(高 齢 社 会 )に 達 し た 所 要 年 数 (倍 化 年 数 )は わ ず か 24 年 で , こ れ は 他 国 と 比 較 す る と 最 短 期 間 に な る (表 2).こ の よ う に 我 が 国 の 高 齢 化 の 進 行 は 他 国 と 比 較 し て 非 常 に 速 い 速 度 で ,世 界 で 最 も 高 い 水 準 に ま で 到 達 し た こ と に な る .従 っ て ,他 国 が 高 齢 社 会 に 向 け た 社 会 保 障 や 福 祉 ,介 護 の 課 題 を 予 想 し な が ら 徐 々 に 改 善 し ,対 策 を 整 備 で き る 状 況 に あ る の に 対 し て ,我 が 国 の 場 合 に は こ れ ら の 対 策 を 短 期 間 で 迅 速 に 進 め な け れ ば な ら な い と い う 問 題 が あ る . 高 齢 化 率 は 65 歳 以 上 の 人 口 の 占 め る 割 合 を 示 し た 数 値 で あ る が , こ れ を 前 期 高 齢 者 (65 歳 以 上 75 歳 未 満 )と 後 期 高 齢 者 (75 歳 以 上 )に 分 け て 比 較 す る . 2010 年 の 国 勢 調 査 で は 前 期 高 齢 者 人 口 は 1,517 万 人 , 後 期 高 齢 者 人 口 は 1,407 万 人 と 前 期 高 齢 者 の 方 が 約 100 万 人 多 い .し か し ,2015 年 以 降 の 人 口 推 計 で は 前 期 高 齢 者 の 人 口 の ピ ー ク は 2016 年 で あ り , 以 降 1,300 1,700
万 人 台 を 推 移 す る .ま た ,後 期 高 齢 者 で は 2010 年 の 結 果 か ら 2050 年 に は 約 1.7 倍 の 人 口 (2,372 万 人 )に ま で 増 加 す る . つ ま り , 前 期 高 齢 者 は 現 状 維 持 の 状 況 で あ る が ,後 期 高 齢 者 の 人 口 は 着 実 に 増 加 す る と 推 測 さ れ て い る .ま た ,各 々 の 人 口 が 総 人 口 に 占 め る 割 合 に つ い て も ,前 期 高 齢 者 で は 定 常 状 態 で あ る の に 対 し て ,後 期 高 齢 者 で は 確 実 に 上 昇 す る .つ ま り ,今 後 の 我 が 国 の 高 齢 化 率 の 上 昇 は , 後 期 高 齢 者 の 増 加 が 背 景 に あ る と い え る (図 1). 表 1 我 が 国 の 高 齢 化 率 と 諸 外 国 と の 比 較 1) 表 2 倍 化 年 数 の 各 国 比 較 2)
図 1 我 が 国 の 人 口 の 将 来 推 計 と 高 齢 化 率 の 状 況1, 2) 出 典 : 実 測 値 は 総 務 省 「 国 勢 調 査 」 か ら 算 出 し た . 人 口 推 計 は 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所「 日 本 の 将 来 推 計 人 口 (2011 年 )」の 出 生 中 位 (死 亡 中 位 )推 計 か ら 算 出 し た . 1-2.高 齢 者 の 居 住 の 場 急 速 な 高 齢 化 の 進 行 に 伴 っ て 高 齢 者 の い る 世 帯註 1)(以 下 , 高 齢 者 世 帯 )も 増 加 し て い る .2010 年 の「 国 民 生 活 基 礎 調 査 (厚 生 労 働 省 )」3)で は ,高 齢 者 世 帯 は 2,070.5 万 世 帯 に 達 し ,我 が 国 の 全 世 帯 の 42.6%を 占 め て い る .特 に , 単 独 世 帯 や 夫 婦 の み の 世 帯 の 増 加 を 背 景 と し た 高 齢 者 の み の 世 帯 の 増 加 は 1975 年 の 約 10 倍 に 達 し , 高 齢 者 世 帯 の 49.2%を 占 め て い る (表 3). 高 齢 者 の 居 住 の 場 は 大 部 分 が 自 宅 で あ り ,施 設 で 生 活 し て い る 者 は 全 高 齢 者 の 約 3%で あ る .ま た ,こ れ は 要 介 護 認 定 者 の 場 合 で も 同 傾 向 で あ り ,83.3% の 要 介 護 認 定 者 が 自 宅 で 生 活 し て い る (図 2).ま た ,自 宅 で 生 活 す る 高 齢 者 が 多 い 状 況 は 単 独 世 帯 に お い て も 同 様 で あ り ,そ の 傾 向 は 経 年 的 に 強 く な っ て い る (表 4).
表 3 高 齢 者 の い る 世 帯 の 年 次 推 移 3) こ の よ う に 多 く の 高 齢 者 が 自 宅 で 生 活 し て い る が ,生 活 す る 自 宅 の 所 有 状 況 は ,高 齢 者 世 帯 で は 持 ち 家 の 割 合 は ,我 が 国 の 全 世 帯 の 割 合 よ り 高 い .た だ し , 高 齢 者 の 単 独 世 帯 で は 持 ち 家 の 割 合 が 低 く な っ て い る (表 5). 高 齢 者 が 生 活 す る 住 宅 の 質 に 関 し て は ,高 齢 者 が い る 世 帯 の 状 況 は 持 ち 家 , 借 家 に 関 わ ら ず ,我 が 国 の 全 世 帯 の 状 況 よ り 居 室 数 ,畳 数 ,面 積 と も に 値 が 大 き い .し か し ,高 齢 者 単 身 世 帯 で は 持 ち 家 及 び 借 家 の 両 方 で 全 項 目 と も こ れ ら の 数 値 が 小 さ い 状 況 に な っ て い る (表 6).
図 2 高 齢 者 の 居 住 の 場 4) 1.厚 生 労 働 省 『 平 成 23 年 8 月 分 事 業 状 況 報 告 (暫 定 )』4)よ り 著 者 が 作 成 し た . 2.施 設 入 所 者 は 施 設 サ ー ビ ス (介 護 老 人 保 険 施 設 ,介 護 老 人 福 祉 施 設 ,介 護 療 養 型 医 療 施 設 )の 当 該 月 の 利 用 者 か ら 算 出 し た . *図 中 の 「 要 介 護 認 定 」 と は 「 要 介 護 及 び 要 支 援 認 定 者 」 を 意 味 し て い る . た だ し ,「 要 支 援 者 」 は 制 度 上 施 設 サ ー ビ ス の 利 用 は で き な い . 表 4 高 齢 者 単 独 世 帯 の 生 活 場 所 1) 表 5 高 齢 者 の 住 宅 の 所 有 状 況 5)
表 6 高 齢 者 が 生 活 す る 住 宅 の 実 態 5) 高 齢 者 対 応 の 設 備 の 整 備 状 況 に つ い て ,何 ら か の 設 備 の 整 備 を し て い る の は 我 が 国 の 全 世 帯 の 48.7%で あ る .そ し て ,こ の 数 値 は 世 帯 内 の 最 高 齢 者 の 年 齢 が 高 く な る の に 従 っ て ,さ ら に 高 く な る .具 体 的 な 設 備 の 項 目 は ,手 す り の 設 置 の 割 合 が 高 い .し か し ,最 も 整 備 率 が 高 い 手 す り の 設 置 に 関 し て も , 65 歳 以 上 で 5 割 前 後 に あ る . 高 齢 者 世 帯 の 状 況 を 持 ち 家 と 借 家 で 比 較 す る と 借 家 は 全 項 目 の 整 備 率 が 持 ち 家 よ り 低 く な っ て い る (表 7). 表 7 高 齢 者 対 応 の 設 備 の 整 備 状 況 5)
現 在 ,住 ん で い る 住 宅 で 困 っ て い る こ と と し て は「 何 も 問 題 点 は な い 」の 割 合 が 高 い .困 っ て い る 場 合 の 理 由 で は ,「 住 ま い が 古 く な り い た ん で い る 」, 「 住 宅 の 構 造 や 造 り が 高 齢 者 に は 使 い に く い 」,「 台 所 ,便 所 ,浴 室 な ど の 設 備 が 使 い に く い 」 と い っ た 住 宅 の 構 造 や 設 備 に 関 す る も の の 割 合 が 高 い . 表 8 住 宅 で 困 っ て い る こ と 6) (複 数 回 答 )
心 身 機 能 や 同 居 家 族 の 変 化 に よ り 転 居 が 求 め ら れ る 高 齢 者 の 受 け 皿 で あ る 様 々 な 住 宅 や 施 設 の 現 状 を 示 す .要 介 護 認 定 を 受 け た 高 齢 者 の み が 利 用 で き る 介 護 保 険 の 居 宅 系 の 施 設 や 介 護 保 険 3 施 設 の 定 員 が 大 半 を 占 め る .こ れ に 対 し て ,要 介 護 認 定 を 受 け る 以 前 の 自 立 度 が 高 い 高 齢 者 が 利 用 で き る 高 齢 者 向 け 住 宅(シ ル バ ー ハ ウ ジ ン グ や 高 齢 者 向 け 優 良 賃 貸 住 宅 等 )の 整 備 は 十 分 で は な い(図 3). 図 3 高 齢 者 向 け の 住 宅 と 施 設 の ス ト ッ ク の 現 状 7) 出 典:厚 生 労 働 省「 社 会 保 障 審 議 会 介 護 保 険 部 会 (第 32 回 )資 料 」を 著 者 が 一 部 修 正 し て 作 成 し た .
1-3.高 齢 者 の 継 続 的 な 地 域 居 住 の 要 望 自 身 の 心 身 機 能 が 低 下 し た と き に 希 望 す る 生 活 の 場 所 は ,「 現 在 の 住 居 に , と く に 改 造 な ど は せ ず に そ の ま ま 住 み 続 け た い 」や「 現 在 の 住 宅 を 改 造 し 住 み や す く す る 」と い っ た 継 続 的 な 居 住 を 希 望 す る も の が 多 い .た だ し ,単 身 世 帯 で は 現 在 の 自 宅 を 改 造 す る よ り 専 門 的 な 介 護 を 受 け る こ と が で き る 施 設 や 子 供 や 親 戚 宅 へ の 転 居 を 望 ん で い る .こ れ に 対 し て 三 世 代 世 帯 で は「 現 在 の 住 居 に と く に 改 造 な ど は せ ず に そ の ま ま 住 み 続 け た い 」 の 割 合 が 高 い (表 9). 表 9 虚 弱 化 し た と き の 居 住 形 態 6) (複 数 回 答 ) 資 金 等 の 問 題 を 考 慮 せ ず に 新 し い 住 宅 に 住 み 替 え を す る 場 合 の 住 宅 や 住 環 境 で 重 視 す る 点 に つ い て ,「 手 す り が 取 り 付 け て あ っ た り , 床 の 段 差 が 取 り 除 か れ て い る な ど ,高 齢 者 向 け に 設 計 さ れ て い る こ と 」の 割 合 が ,い ず れ の 世 帯 に お い て も 最 も 高 い(表 10).
表 10 住 宅 や 住 環 境 に 関 す る 優 先 度 6) (複 数 回 答 ) 1-4.介 護 保 険 の 導 入 と 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 ) (1)要 介 護 認 定 者 の 実 態 2009 年 度 ま で の 要 支 援 及 び 要 介 護 認 定 者 数 の 推 移 で は .要 介 護 4,5 と い っ た 重 度 要 介 護 者 よ り 要 介 護 3 以 下 の 軽 度 か ら 中 等 度 要 介 護 認 定 者 の 増 加 率 が 高 い(図 4). 2011 年 8 月 現 在 , 第 1 号 被 保 険 者 は 2000 年 の 介 護 保 険 開 始 時 (2,165 万 人)と 比 較 し て 755.6 万 人 増 加 し , 2,992.0 万 人 に 達 し て い る . ま た , 2011 年 の 要 支 援 , 要 介 護 認 定(以 下 , 要 介 護 認 定 )を 受 け て い る 者 は 500 万 人 で , 全 第 1 号 被 保 険 者 の 17.1%を 占 め て い る .こ れ は 2000 年 の 要 介 護 認 定 を 受 け た 者(218 万 人 )の 占 め る 割 合 (10.1%)よ り 増 加 し て い る .
図 4 要 介 護 度 別 認 定 者 数 の 推 移 8) 出 典 : 厚 生 労 働 省 『 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告 (年 報 )』 よ り 著 者 が 作 成 し た . 65 歳 以 上 の 年 齢 階 層 別 に 要 介 護 認 定 の 認 定 率 の 状 況 を 比 較 す る と , 前 期 高 齢 者 で あ る 65 69 歳 及 び 70 74 歳 の 要 介 護 の 認 定 率 は 10%未 満 で あ る . こ れ に 対 し て , 85 89 歳 で は 認 定 率 は 45.9%に ま で 上 昇 し , 90 歳 以 上 で は さ ら に 68.0%に ま で 達 す る .つ ま り ,年 齢 が 上 が る ほ ど ,認 定 率 も 上 昇 し て い る (図 5).
図 5 高 齢 者 人 口 と 要 介 護 認 定 率 (2009 年 度 )9) 出 典 : 厚 生 労 働 省 『 平 成 20 年 度 介 護 給 付 実 態 調 査 』 よ り 著 者 が 作 成 し た . (2)介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 善 (住 宅 改 修 ) 2000 年 か ら 開 始 さ れ た 介 護 保 険 で は 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )に 要 し た 工 事 費 用 を 原 則 1 人 1 回 と し て 上 限 20 万 円 (自 己 負 担 1 割 を 含 む )ま で 補 助 す る 制 度 が 導 入 さ れ た (表 11). 第 1 号 被 保 険 者 分 の 当 該 費 用 及 び 総 数 は 2000 年 の 開 始 以 降 2003 年 ま で 上 昇 し て い る . 2004 年 か ら 一 時 的 に 減 少 す る が , 2006 年 以 降 , 再 び 総 費 用 , 総 件 数 と も 上 昇 し て い る (図 6). 開 始 時 か ら 10 年 間 (2009 年 度 )で 総 額 約 3,604 億 円 の 工 事 が 実 施 さ れ ,1 件 当 た り の 平 均 工 事 費 用 (2009 年 度 )は 10.6 万 円 (自 己 負 担 分 含 む )と な っ て い る . 過 去 10 年 間 の 1 件 当 た り の 工 事 費 用 を 比 較 す る と 僅 か で は あ る が 徐 々 に 減 少 傾 向 に あ る (図 7). ま た , 1 件 当 た り の 工 事 費 用 の 差 は , 要 支 援 1 と 要 介 護 5 で 比 較 し た と き に 約 4,000 円 で あ る (表 12).
表 11 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 費 補 助 制 度 の 概 要
図 6 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 費 の 推 移 (第 1 号 被 保 険 者 分 )8) 出 典 : 厚 生 労 働 省 『 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告 書 (年 報 )』 よ り 著 者 が 作 成 し た .
図 7 1 件 当 た り の 住 宅 改 修 費 用 の 推 移 (第 1 号 被 保 険 者 分 )8) 出 典 : 厚 生 労 働 省 『 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告 書 (年 報 )』 よ り 著 者 が 作 成 し た . 表 12 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 費 用 の 実 態 (2009 年 度 )10) (3)住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )に お け る チ ー ム ・ ア プ ロ ー チ の 課 題 と 実 態 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )は 本 来 多 く の 専 門 職 が 関 係 す る 仕 事 で あ る (溝 口 )11). そ の よ う な 中 で 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )の 支 援 で は ,介 護 支 援 専 門 員 (以 下 , ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー と 記 載 )が PT, OT, あ る い は , 建 築 士 な ど 他 の 専 門 職 種 と 連 携 し て 適 切 な 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )を 進 め る キ ー パ ー ソ ン
と さ れ る (児 玉 )12).し か し ,住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )の 過 程 に お い て ,こ れ ら の 専 門 職 間 の 調 整 が 必 ず し も 十 分 で は な い (山 田 )13)と す る 指 摘 も あ る .そ し て , 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )で は「 ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー が 知 り 合 い の 大 工 か 工 務 店 な ど に 頼 む か , 建 築 業 者 が 直 接 本 人 の 相 談 に の る ケ ー ス が 多 い 」 (野 久 尾 )14)と さ れ る . ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー は 医 療 ,福 祉 ,介 護 に 関 係 す る 専 門 職 と し て 一 定 の 実 務 経 験 が あ る 者 が 取 得 で き る 資 格 で あ る (表 13). そ の た め , 建 築 に 関 す る 知 識 や 情 報 が 不 足 す る 結 果 ,住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )に 関 し て 適 切 で な い 内 容 で 行 わ れ ,高 齢 者 の 様 々 な 課 題 が 生 じ て い る と 指 摘 さ れ て い る .ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー が 有 す る 課 題 に 関 し て 碇 16)は 下 記 の よ う に ま と め て い る . 1.利 用 者 の 制 度 に 関 す る 説 明 が 不 足 し て い る . 2.申 請 書 類 の 内 容 を 事 業 者 任 せ に し て い る . 3.見 積 も り の 理 解 不 足 の た め ,工 事 の 後 に 利 用 者 に 金 銭 的 な 負 担 を 生 じ さ せ る . 4.良 い 施 工 業 者 の 選 定 が で き な い . 5.部 材 な ど の 商 品 の 知 識 不 足 で あ る . 6.業 者 を 利 用 者 に 紹 介 す る だ け で , 利 用 者 宅 を 訪 問 し な い . こ の よ う な 課 題 に 対 し て ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー は 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )を 含 む 様 々 な 介 護 保 険 の 支 援 ,サ ー ビ ス の 総 合 的 な マ ネ ジ メ ン ト を 行 う 専 門 職 で あ る .従 っ て ,上 述 の よ う に 建 築 に 関 す る 知 識 や 情 報 は 乏 し い の で ,見 積 も り の 判 断 や 商 品 の 知 識 不 足 と い っ た 課 題 に 対 す る 対 応 は ,ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー 自 身 が 個 人 的 に 取 り 組 む こ と は 難 し い .そ の た め ,住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )に 関 し て ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー は「 関 与 を 避 け た り ,事 業 者 に 全 て 任 せ て い る こ と が 多 く な る 」(太 田 ら )17).あ る い は ,「 本 来 ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー が 果 た す べ き 役 割 (ア セ ス メ ン ト 技 術 )と 施 工 業 者 が 行 う べ き 役 割 (プ ラ ン ニ ン グ 技 術 )の 両 者 を こ な し て い る こ と が 多 い 」(鈴 木 )18)と い う 指 摘 も あ る .ま た ,施 工 業 者 と の 連 携 は ,住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )以 外 の 支 援 で は そ の 機 会 が な い 専 門 職 や 領 域 で あ る た め ,ネ ッ ト ワ ー ク の 形 成 や 連 携 の 構 築 も 難 し い .従 っ て ,こ れ ら の 課 題 に 関 し て ,ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー の 支 援 役 と し て「 公 的 に 建 築 関 連 の 専 門 職 を 起 用 す る 」 (碇 )16)こ と も 同 時 に 提 案 さ れ て い る .
表 13 介 護 支 援 専 門 員 の 職 種 別 合 格 者 数 の 累 計 15) (2011 年 度* 1ま で ) 建 築 業 者 に 関 し て も「 一 般 の 大 工・工 務 店 で は 高 齢 者 の 身 体 状 況 を 把 握 し て 改 修 を 実 施 す る こ と が 難 し い 」 (野 久 尾 )14), あ る い は ,「 身 体 特 性 に つ い て 知 識 を あ ま り 持 た な い 施 工 業 者 で は 高 齢 者 が 使 用 で き な い 改 修 が 行 わ れ る 場 合 が あ る 」(金 )19)と い っ た 指 摘 も な さ れ て い る .そ し て ,こ れ ら の 課 題 を 有 す る ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー と 施 工 業 者 だ け で 住 宅 改 修 に あ た る 場 合 に は ,動 作 確 認 が 不 十 分 で 適 切 で な い 改 修 に つ な が る と 報 告 さ れ て い る (児 玉 )12).つ ま り ,身 体 機 能 や 動 作 分 析 に 対 す る 専 門 性 を 有 す る 専 門 職 が チ ー ム の 構 成 員 と し て の 参 加 が 求 め ら れ る 状 況 に あ る . こ の よ う な 身 体 機 能 や 動 作 分 析 に 対 す る 専 門 職 と し て PT の 住 宅 改 善 介 入 の ニ ー ズ が 明 ら か に な る .
1-5.自 治 体 に よ る 住 宅 改 善 支 援 制 度 介 護 保 険 開 始 以 前 に 自 治 体 で 実 施 さ れ て い た 住 宅 改 善 の 費 用 支 援 制 度 の 整 備 率 は 人 口 規 模 の 大 き い 自 治 体 で は 高 く ,町 村 を 含 む 場 合 や 地 方 の 場 合 に は 低 下 し て い る (図 8).ま た ,助 成 金 額 の 平 均 上 限 額 も 町 村 部 を 含 む 場 合 の 方 が 少 額 に な る 傾 向 に あ る (図 9). 図 8 基 礎 自 治 体 に お け る 住 宅 改 善 費 用 支 援 制 度 の 整 備 率 20) 出 典 : 蛭 間 基 夫 『 地 域 福 祉 に お け る 住 宅 改 善 の 有 効 性 に 関 す る 基 礎 的 研 究 』 (2004 年 ) よ り 東 北 地 方 の 市 部 を 対 象 と し た 調 査 に お い て , 費 用 の 助 成 限 度 額 の 平 均 は , 介 護 保 険 実 施 前 は 89.6 万 円 と な っ て い る が , 介 護 保 険 開 始 以 降 は 徐 々 に 低 下 し て い る . 同 時 に 介 護 保 険 と 同 じ よ う に 限 度 額 は 20 万 円 と す る 制 度 が 増 加 傾 向 で あ る .ま た ,対 象 者 1 件 あ た り の 平 均 助 成 額 も 介 護 保 険 前 と 比 較 す る と 開 始 以 降 は 減 少 傾 向 に あ る (図 10).
図 9 基 礎 自 治 体 の 助 成 制 度 の 平 均 限 度 額21) 出 典 : 石 田 道 孝 , 他 『 自 治 体 の 介 護 保 険 外 の 住 宅 改 造 ・ 改 修 制 度 の 現 状 と 課 題 』 (02 年 )よ り 介 護 保 険 開 始 以 前 に 一 部 の 自 治 体 で は ,独 自 の 住 宅 改 善 に 関 す る 支 援 制 度 と し て ,多 職 種 の 連 携 に よ り 高 齢 者 を 援 助 し て い た 事 例 も み ら れ た .し か し , 介 護 保 険 に お け る 住 宅 改 修 費 用 の 補 助 制 度 の 導 入 に よ っ て ,小 規 模 な 自 治 体 や そ れ ま で 制 度 を 整 備 し て い な か っ た 自 治 体 を 含 め て ,全 て の 自 治 体 で 統 一 さ れ た シ ス テ ム に よ り 支 援 が 実 施 さ れ る と い っ た 前 進 は あ っ た .し か し ,こ れ ま で 一 部 の 自 治 体 で 実 施 さ れ て き た「 各 種 専 門 職 の 介 入 や チ ー ム・ア プ ロ ー チ ,あ る い は ,心 身 機 能 や 介 護 状 況 に 対 応 し た 住 宅 改 善 と い っ た 視 点 で の 支 援 は 後 退 し て い る 」 (石 田 )21)と 指 摘 さ れ て い る .
図 10 基 礎 自 治 体 に お け る 住 宅 改 善 費 用 支 援 制 度 の 整 備 率 (東 北 6 県 ・ 市 部 )20) 出 典 : 蛭 間 基 夫 『 地 域 福 祉 に お け る 住 宅 改 善 の 有 効 性 に 関 す る 基 礎 的 研 究 』 (2004 年 )よ り 1-6.小 括 : 理 学 療 法 士 の 介 入 の 必 要 性 我 が 国 の 高 齢 化 は 世 界 的 に 類 を 見 な い 速 度 で 進 行 し ,そ の 結 果 様 々 な 課 題 を 生 じ る 要 因 と な っ て い る .高 齢 化 の 進 展 の 背 景 に は 後 期 高 齢 者 の 増 加 が あ る .後 期 高 齢 者 は 要 介 護 認 定 の 認 定 率 が 高 く ,後 期 高 齢 者 の 増 加 は 介 護 を 必 要 と す る 高 齢 者 の 増 加 も 同 時 に 示 唆 し て い る .た だ し ,介 護 の 必 要 性 の 有 無 に 関 わ ら ず , 高 齢 者 の 大 部 分 は 在 宅 生 活 を 営 ん で い る . 我 が 国 の 在 宅 福 祉 ,介 護 は 様 々 な 問 題 を 有 し な が ら も ,こ れ ま で 女 性 を 中 心 と し た 家 族 の 介 護 力 に 支 え ら れ て き た .た だ し ,こ の よ う な 介 護 形 態 は 単 身 世 帯 や 夫 婦 世 帯 と い っ た 高 齢 者 の み 世 帯 の 増 加 に よ っ て ,家 族 の 介 護 力 を 確 保 す る こ と が 難 し く な る .ま た ,介 護 が 必 要 に な る 高 齢 者 を 受 け 入 れ る 施 設 と し て 介 護 保 険 施 設 や そ の 他 の 施 設 が 整 備 さ れ て い る が ,一 方 で 専 門 的 な 介 護 を 必 要 と し な い 心 身 機 能 の 水 準 に あ る 高 齢 者 を 受 け 入 れ る た め の 住 宅 や 施 設 の 整 備 は 進 ん で い な い . 高 齢 者 自 身 の 様 々 な 要 望 に 関 し て も ,単 身 世 帯 以 外 の 高 齢 者 は 継 続 的 に 現
在 の 住 宅 で 生 活 し た い と す る 意 識 が あ る .た だ し ,単 身 世 帯 に お い て も 継 続 的 な 在 宅 生 活 を 要 望 し て い る も の の 単 身 生 活 に よ る 不 安 や 負 担 の 軽 減 の た め , 施 設 入 所 や 転 居 を 希 望 し て い る と 推 察 さ れ る . こ れ ら の 状 況 は 高 齢 者 の 継 続 的 な 地 域 居 住 の た め の 地 域 や 在 宅 支 援 の 重 要 性 を 示 唆 す る も の で あ り ,そ の た め の 住 宅 改 善 の 必 要 性 を 示 唆 す る も の で あ る . 介 護 保 険 の 開 始 に よ り 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )費 の 費 用 補 助 の 総 額 や 総 件 数 は 増 加 傾 向 に あ る .た だ し ,制 度 そ の も の に つ い て も 下 記 の よ う な 課 題 が 指 摘 さ れ る . (1)費 用 補 助 を 受 け る こ と が で き る の は 要 支 援 , 介 護 認 定 を 受 け て い る 者 に 限 定 さ れ る . (2)費 用 補 助 の 対 象 と な る 工 事 内 容 が 6 種 類 に 限 定 さ れ る .(3)費 用 補 助 の 上 限 が 20 万 円 (1 割 の 自 己 負 担 を 含 む )と 低 額 で あ る . ま た ,介 護 保 険 開 始 に 伴 い 基 礎 自 治 体 で 取 り 組 ま れ て い た 住 宅 改 善 に 関 係 す る 諸 制 度 ,支 援 の 後 退 や 縮 小 を 招 い た と さ れ る .特 に ,そ れ ま で 様 々 な 専 門 職 が チ ー ム を 形 成 し な が ら 支 援 を 行 っ て い た 状 況 か ら ,介 護 保 険 で は ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー と 工 事 施 工 業 者 に よ っ て 支 援 が 進 め ら れ る こ と が 多 く な っ た .そ の 結 果 ,不 適 切 な 内 容 の 住 宅 改 修 が 行 わ れ て い る 場 合 も あ る .こ れ ら の 専 門 職 が 限 定 的 に 支 援 に 介 入 す る の で は な く , そ の 他 の 専 門 職 の 介 入 と と も に (詳 細 は 次 項 に 記 載 す る が ), 動 作 分 析 に そ の 専 門 性 を 有 す る PT, OT の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る . こ の よ う に 住 宅 改 善 は 高 齢 者 の 継 続 的 な 地 域 居 住 の た め の 重 要 な 支 援 で あ る が ,そ の 中 に お い て 動 作 分 析 に 関 し て 高 い 専 門 性 を 有 す る PT,OT の 果 た す べ き 役 割 は 重 要 に な っ て い る . 2.研 究 の 目 的 高 齢 者 が 心 身 機 能 の 低 下 や 動 作 ,ADL の 制 限 ,あ る い は ,介 護 す る 家 族 の 変 化 と い っ た 要 因 に よ っ て ,そ れ ま で 暮 ら し て き た 地 域 や 自 宅 で の 生 活 が 高 齢 者 の 望 ま な い 形 で 中 断 さ れ た り ,あ る い は ,自 立 し た 生 活 を 制 限 さ れ る こ と が あ る .そ し て ,こ の よ う な 高 齢 者 の 居 住 の 継 続 や 自 立 し た 生 活 の 確 保 の た め に 求 め ら れ る 住 宅 改 善 に 関 す る 適 切 な 支 援 に は ,特 定 の 専 門 職 だ け で は な く ,医 療 ,福 祉 ,介 護 や 建 築 に 関 す る 複 数 の 専 門 職 が 各 々 の 専 門 性 に 基 づ
き チ ー ム を 形 成 し ,介 入 す る こ と が 求 め ら れ る .こ の よ う な 中 で 本 研 究 の 目 的 は ,社 会 的 背 景 に お い て ま と め た よ う に 住 宅 改 善 に 関 与 す る 専 門 職 の チ ー ム の 一 員 と し て 介 入 が 求 め ら れ る リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 技 術 職 で あ る PT の 役 割 や 専 門 性 を 明 ら か に す る こ と で あ る . 具 体 的 に は 以 下 の 3 点 が 本 研 究 の 明 ら か に す べ き 目 的 と な る . 第 1 に , リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 技 術 職 と し て 多 く の 場 合 に は 病 院 で 勤 務 す る PT が , 地 域 支 援 の 一 つ で あ る 住 宅 改 善 に 介 入 す る 意 義 や 重 要 性 を 明 ら か に す る . 第 2 に , PT と 同 様 に リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 技 術 職 と 位 置 付 け ら れ る 作 業 療 法 士 (以 下 ,OT)と の 住 宅 改 善 へ の 介 入 お け る 役 割 の 相 違 や 類 似 点 を 明 ら か に す る . 第 3 に , 住 宅 改 善 に 介 入 す る 際 の PT の 役 割 の 背 景 と な る 固 有 の 専 門 性 に つ い て 明 ら か に す る . 3.先 行 研 究 と 本 研 究 の オ リ ジ ナ リ テ ィ 先 行 研 究 に お い て 住 宅 改 善 に 介 入 す る PT 及 び OT の 役 割 や 専 門 性 の 重 要 性 は 多 数 報 告 さ れ て い る . 住 宅 改 善 は 高 齢 者 の 心 身 機 能 や 動 作 ,ADL の 状 況 に ,生 活 し て い る 住 宅 が 適 合 す る よ う に 働 き か け る 支 援 で あ る .そ の た め ,自 宅 で の 高 齢 者 の 生 活 状 況 や 動 作 ,ADL の 状 況 と 住 宅 の 物 理 的 な 構 造 に 関 す る 知 識 や 技 術 が 同 時 に 求 め ら れ る . 従 っ て ,「 1 人 の 専 門 職 が す べ て 考 え , 支 援 す る こ と は 不 可 能 に 近 い 」 (逢 坂 )22)と 指 摘 さ れ ,「 各 職 種 が ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成 し な が ら , 進 め る 必 要 が あ る 」(水 村 )23)と チ ー ム・ア プ ロ ー チ の 重 要 性 が 報 告 さ れ て い る . 支 援 に 介 入 す る 専 門 職 に 関 し て 多 職 種 の 連 携 を 先 進 的 に 進 め て き た 馬 場 24) に よ っ て「 基 本 的 に は 福 祉 領 域 ,医 療 領 域 ,保 健 領 域 ,建 築 領 域 の 4 つ の 分 野 が 必 要 で ,こ れ ら の 分 野 が 連 携 す る こ と で 的 確 な 支 援 が 可 能 に な る 」と そ の 領 域 を 報 告 し て い る .た だ し ,鈴 木 18)は「 多 職 種 に よ る 連 携 」が ス ロ ー ガ ン の よ う に 広 く 言 わ れ て い る が ,各 々 の 役 割 に つ い て 深 く 検 討 さ れ て い な い と 指 摘 を し て い る . こ の よ う に 多 数 の 専 門 職 の 介 入 や チ ー ム・ア プ ロ ー チ が 重 視 さ れ る 住 宅 改
善 へ の 介 入 に お い て 先 行 研 究 で は PT,OT の 役 割 は 以 下 の 2 つ に 集 約 さ れ る . ① 高 齢 者 が 生 活 す る 自 宅 で の 動 作 分 析 や ADL の 評 価 を 行 う . PT, OT の 役 割 と し て ,「 医 療 , 保 健 , 福 祉 関 係 者 の 協 力 は 欠 か せ な い が , 特 に 生 活 動 作 の 専 門 家 で あ る PT や OT の 協 力 を 得 る こ と は 大 切 で あ る 」 (手 島 )25)と 重 視 し た 報 告 が あ る .同 様 に 建 築 技 術 者 で あ る 西 村 26)は 自 身 の 住 宅 改 善 の 経 験 か ら 「 本 人 の 動 作 は PT, OT の 意 見 を 聞 く こ と が で き れ ば 最 良 の 助 言 を 得 る こ と が で き る 」と 報 告 し て い る .ま た ,こ の よ う な 建 築 技 術 者 の PT, OT の 評 価 と し て , 高 橋 27)は 「 建 築 士 か ら の ヒ ア リ ン グ で は PT, OT の 関 与 に よ り 改 修 効 果 が ア ッ プ す る 」と 報 告 し て い る .同 じ く 建 築 領 域 の 研 究 職 と し て 水 村 23)は 「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 関 係 職 種 (PT, OT)に お い て は , 対 象 と な る 人 の 心 身 状 況 や 生 活 行 為 の 処 理 能 力 の 状 況 の 情 報 を 取 り 扱 う 」と そ の 役 割 を 述 べ て い る . 以 上 の よ う に 住 宅 改 善 に 介 入 す る 建 築 領 域 や 福 祉 領 域 の 先 行 研 究 か ら PT, OT の 役 割 と し て 心 身 機 能 を 含 め た 動 作 や ADL の 分 析 , 評 価 が 報 告 さ れ て い る . ② 住 宅 改 善 の 具 体 的 な 計 画 を 検 討 , 立 案 に 参 加 す る . 行 政 に 勤 務 す る 坂 井 28)は「 住 宅 改 善 の 具 体 的 計 画 の 基 礎 は 動 作 を 見 極 め る こ と で あ る 」 と し て い る が , 同 時 に 「 そ の た め に PT, OT を 活 用 し た い 」 と も 述 べ ,計 画 の 検 討 ,立 案 と 動 作 分 析 や ADL の 評 価 の 関 連 性 と と も に ,PT, OT の 重 要 性 も 同 時 に 指 摘 し て い る .同 様 に 藤 井 29)も「 PT の 役 割 は プ ラ ン を 作 成 す る た め に 重 要 な 身 体 機 能 面 の 評 価 で あ る 」と こ の 段 階 に 介 入 す る た め の PT(OT)の 前 項 ① の 役 割 を 指 摘 し て い る . そ し て , 建 築 士 で あ る 岡 村 30)も 「 プ ラ ン ニ ン グ に 苦 慮 し た と き に は 動 作 の 評 価 や 指 導 が で き る 医 療 職 (OT や PT)に 相 談 す る 」 と 指 摘 し , 具 体 的 な 計 画 の 検 討 , 立 案 と 動 作 , ADL の 重 要 な 関 連 性 と と も に , PT, OT の 前 項 ① の 役 割 の 重 要 性 を 指 摘 し て い る . ま た , 鈴 木 31)は 住 宅 改 善 が 具 現 化 す る 特 定 の 時 期 , 場 面 だ け に 発 揮 さ れ る 住 宅 改 善 の プ ラ ン ニ ン グ と 施 工 に 関 す る 専 門 的 技 術 者 と し て 建 築 技 術 者 と 同 じ 「 住 宅 改 善 の 専 門 職 」 と い う カ テ ゴ リ ー に PT, OT を 分 類 し , そ の 重 要 性 を 指 摘 し て い る (表 14). 更 に , 各 住 宅 改 善 の 専 門 職 の 有 す る 具 体 的 な 能 力 や 立 場 の 相 違 や 範 囲 に つ い て よ り 詳 細 に 規 定 18)し て い る (表 15).
表 14 住 宅 改 善 に お け る PT, OT の 役 割 31) 文 献 31 よ り 著 者 が 作 成 し た . 表 15 住 宅 改 善 の 専 門 職 が 有 し て い る 能 力 と 立 場18) 文 献 18よ り 一 部 抜 粋 し た . PT で あ る 金 沢 32)も 住 宅 改 善 へ の 介 入 に お け る 動 作 分 析 の 重 要 性 に つ い て 「 セ ラ ピ ス ト は 利 用 者 の 動 作 分 析 を 中 心 と し た 身 体 機 能 面 を 評 価 し ,今 後 の 身 体 上 の 変 化 や 予 後 を 見 据 え な が ら ,利 用 者 が 家 屋 か ら 被 っ て い る 問 題 点 を 導 き 出 す 」こ と が で き る と 述 べ て い る .た だ し ,こ れ ま で の 先 行 研 究 と は 異 な り ,現 段 階 だ け で な く ,今 後 の 変 化 や 予 後 と い っ た 将 来 的 な 視 点 を 有 し て 分 析 を 行 え る と 述 べ て い る . た だ し , 上 述 の よ う な PT, OT の 役 割 が 報 告 さ れ て い る 一 方 で ,「 PT, OT が ど の く ら い 頼 り に な る の か は 職 場 や 個 人 に よ る 差 が 大 き い 」(馬 場 )24)と い っ た 指 摘 も な さ れ ,対 象 者 や 他 職 種 か ら の ニ ー ズ に 十 分 対 応 で き て い な い 可 能 性 が 示 さ れ て い る . ま た , こ の よ う な 多 く の 他 領 域 か ら の 報 告 に 対 し て , PT で あ る 逢 坂 22)は 「 OT や PT は 住 宅 改 造 の 専 門 職 の で あ る か の よ う に 聞 く
が ,身 体 状 況 ,動 作 分 析 は で き て も ,建 築 構 造 や 福 祉 制 度 等 ,行 政 サ ー ビ ス の 知 識 , 情 報 に 精 通 し て い る と い え な い 」 と 述 べ , PT, OT の 住 宅 改 善 に お け る 役 割 の 明 確 化 の 重 要 性 を 指 摘 し て い る . 先 行 研 究 か ら 住 宅 改 善 に お け る PT,OT の 役 割 は ① 自 宅 で の 動 作 分 析 や ADL の 評 価 と こ れ を 基 礎 と し て 行 わ れ る ② 住 宅 改 善 の 具 体 的 な 計 画 の 検 討 や 立 案 に あ る と い え る . こ の よ う に PT 及 び OT の 住 宅 改 善 へ の 介 入 の 重 要 性 が 報 告 さ れ る 一 方 で 下 記 の 課 題 も 指 摘 さ れ て い る .こ れ ら の 課 題 を 解 消 す る こ と が 本 研 究 の 意 義 と な る .ま ず ,1990 年 に 野 村 ら 33)が PT,OT の 住 宅 改 善 へ の 介 入 状 況 に つ い て 当 時 の PT, OT の 総 数 の 約 20%を 対 象 と し た 大 規 模 な 調 査 を 実 施 し た . し か し , こ の 調 査 以 降 に , 2000 年 の 介 護 保 険 の 開 始 に 伴 う 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 ) に 関 す る 費 用 補 助 制 度 の 導 入 に よ っ て 我 が 国 の 住 宅 改 善 に 関 す る 仕 組 み が 変 化 し た .ま た ,PT 及 び OT の 養 成 課 程 に お い て も 住 宅 改 善 を 対 象 と し た 科 目 と し て 「 生 活 環 境 学 」 が 新 設 (1989 年 )さ れ た . そ し て , 社 会 背 景 と し て も 介 護 保 険 の 開 始 と 前 後 し て ,そ れ ま で 生 活 し て き た 地 域 や 自 宅 で の 継 続 的 な 居 住 の ニ ー ズ が 顕 在 化 し て き て い る .ま た ,住 宅 改 善 に 関 与 す る ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー や 福 祉 住 環 境 コ ー デ ィ ネ ー タ ー と い っ た 新 し い 資 格 や 専 門 職 も 登 場 し て い る . こ の よ う な 住 宅 改 善 に 介 入 す る PT, OT の 周 辺 で は 大 き な 変 化 が あ る に も 関 わ ら ず ,1990 年 の 調 査 以 降 ,住 宅 改 善 に 介 入 す る PT,OT の 実 態 に 関 し て 同 規 模 で 行 わ れ た 調 査 は な い . 従 っ て , 全 国 の PT, OT を 対 象 と し た 住 宅 改 善 に 関 す る 調 査 を 実 施 す る こ と が 本 研 究 の 第 1 の 意 義 と な る . 次 に ,上 述 し た 先 行 研 究 で は 多 く の 場 合 に ,PT と OT を 一 つ の カ テ ゴ リ ー と し て 扱 い「 PT,OT」,「 セ ラ ピ ス ト 」,あ る い は ,「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 技 術 者 (職 )」と 記 載 し ,住 宅 改 善 に お け る 各 々 固 有 の 具 体 的 な 役 割 や 専 門 性 が 区 分 さ れ て い な い .こ の よ う な 状 況 は ,PT と OT が 同 時 に 介 入 す べ き で あ る の か ,あ る い は ,ど ち ら か 一 方 で 良 い の か ,一 方 の 場 合 に は 何 ら か の 基 準 や 規 定 が あ る の か と い う 要 因 を 曖 昧 に す る こ と に つ な が る .そ の 結 果 ,意 識 や 関 心 の 高 い PT や OT の み が 住 宅 改 善 に 介 入 す る こ と に つ な が り か ね な い .あ る い は ,高 齢 者 や 他 の 専 門 職 か ら の PT や OT の 住 宅 改 善 に 介 入 す る ニ ー ズ も 曖 昧 に な る た め ,結 果 的 に は ニ ー ズ そ の も の が 消 失 す る こ と に も な り ,PT,OT
の 職 域 が 狭 小 化 す る こ と に な る .従 っ て ,本 研 究 を 通 し て 各 々 の 固 有 の 役 割 や 専 門 性 が 明 ら か に な り , 今 後 の PT の 職 域 の 維 持 , 拡 大 に つ な が る こ と が 第 2 の 意 義 で あ る . 最 後 に 上 述 の よ う に PT,OT 以 外 の 研 究 者 や 専 門 職 か ら PT,OT の 役 割 や 専 門 性 に 関 し て 多 数 報 告 さ れ て い る が , 一 方 で ,「 住 宅 改 善 に お け る 職 能 の 重 要 性 に も 関 わ ら ず , PT, OT に よ る 研 究 , ま た は そ の 機 能 と 役 割 を 分 析 し た も の は 多 く 見 い だ せ な か っ た 」(山 本 )34)と 指 摘 さ れ て い る .特 に ,先 行 研 究 は 他 領 域 の 研 究 者 や 専 門 職 か ら の 報 告 で あ る た め , PT, OT の 住 宅 改 善 以 外 の 実 態 や 様 々 な 環 境 , 背 景 あ る い は , PT, OT の 専 門 的 な 視 点 に つ い て 不 明 確 な ま ま 論 述 さ れ て い る 場 合 も あ る .従 っ て ,こ れ ら の 課 題 を 解 消 す る た め に PT 自 身 に よ っ て 住 宅 改 善 に お け る PT の 役 割 や 専 門 性 を 明 ら か に す る こ と が 第 3 の 意 義 と な る . こ の よ う な 3 つ の 課 題 に 関 し て ,PT 自 身 が 住 宅 改 善 に 介 入 す る 際 の PT 固 有 の 役 割 や 専 門 性 を 明 ら か に し ,調 査 ,研 究 を 進 め る こ と が 本 研 究 に お け る 重 要 な 視 点 と な る .特 に ,PT と OT は 他 の 様 々 な 介 入 場 面 に お い て も 各 々 の 職 域 や 専 門 性 の 区 分 が 難 し い 状 況 に な る .こ の よ う な PT と OT の 住 宅 改 善 に お け る 役 割 や 専 門 性 の 相 違 点 か ら , PT 固 有 の も の を 明 ら か に す る こ と は , こ れ ま で の 先 行 研 究 に は な い 本 研 究 の 重 要 な オ リ ジ ナ リ テ ィ で あ る .
4.研 究 の 構 成 と 各 章 の 概 要 本 論 文 の 構 成 は 全 7 章 か ら 構 成 さ れ て い る .本 論 文 の 構 成 と 各 章 の 調 査 対 象 を 図 11 に 示 す . 各 章 の 概 要 を 下 記 に 記 載 す る . 図 11 論 文 の 構 成 と 対 象 者 第 1 章 序 論 序 論 で は 本 研 究 の 社 会 的 背 景 , 目 的 及 び 意 義 を 示 す . 第 2 章 訪 問 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お け る 訪 問 看 護 師 と 理 学 療 法 士 の 関 与 の 実 態 第 2 章 は ,様 々 な 地 域 支 援 の 中 で PT の 専 門 性 が 最 も 重 視 さ れ る「 訪 問 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 」 に 対 す る ニ ー ズ や 介 入 の 難 し さ の 要 因 を 明 ら か に す る . そ の た め に ,在 宅 で 実 施 し て い る リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 的 な ア プ ロ ー チ に 関 し て 訪 問 看 護 師 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ て い る .対 象 は 群 馬 県 内 の 全 訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン 97 施 設 に 勤 務 す る 看 護 師 及 び 准 看 護 師 計 574 人 で ,
有 効 回 答 数 159 人 (回 収 率 27.7%)で あ る (期 間 2010 年 8 月 10 月 ). 第 3 章 住 宅 改 善 を 実 施 し た 高 齢 者 の 実 態 第 3 章 は ,住 宅 改 善 を 実 施 し た 高 齢 者 の そ の 後 の 生 活 状 況 や 住 宅 改 善 を 実 施 し た 箇 所 の 使 用 状 況 を 下 記 の 二 段 階 の 調 査 に よ っ て 検 討 し ,住 宅 改 善 に お け る PT 介 入 の 意 義 や 重 要 性 を 明 ら か に し て い る .調 査 (1):介 護 保 険 に よ り 住 宅 改 修(住 宅 改 善 )を 実 施 し た 高 齢 者 に 質 問 紙 に よ る ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し ,工 事 箇 所 の 使 用 状 況 や そ の 満 足 度 に つ い て 明 ら か に す る .対 象 は 介 護 保 険 を 活 用 し て 住 宅 改 修(住 宅 改 善 )を 実 施 し た 高 齢 者 54 人 で , 有 効 回 答 数 25 人 (回 収 率 46.3%)で あ る (期 間 2009 年 7 月 2010 年 6 月 ). 調 査 (2)ア ン ケ ー ト 調 査 に よ っ て 了 承 が 得 ら れ た 高 齢 者(15 人 )の 自 宅 を 工 事 に は 介 入 し て い な い PT1 人 に よ っ て 訪 問 調 査 を 実 施 す る (期 間 2009 年 9 月 2010 年 7 月). 調 査 は , 工 事 箇 所 で 実 際 の 動 作 方 法 や 使 用 状 況 の 分 析 及 び 評 価 を 実 施 す る .そ し て ,こ れ ら の 分 析 や 評 価 を 通 し て ,実 施 さ れ た 住 宅 改 善 の 内 容 の 適 正 性 を PT と し て 検 討 す る . 第 4 章 群 馬 県 に お け る 理 学 療 法 士 の 住 宅 改 善 介 入 の 実 態 第 4 章 で は , 第 5 章 で 実 施 す る 全 国 規 模 の PT, OT の 調 査 の プ レ 調 査 と 位 置 付 け ,PT の 住 宅 改 善 の 介 入 の 実 態 を 明 ら か に す る た め に 質 問 紙 に よ る ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し て い る .対 象 は 群 馬 県 理 学 療 法 士 協 会 の 全 会 員 で あ る PT714 人 で , 住 宅 改 善 介 入 に 対 す る 意 識 や 連 携 す る 専 門 職 の 実 態 を 明 ら か に し て い る .有 効 回 答 数 268 人 (回 収 率 は 37.4%)で あ る (期 間 2009 年 6 月 8 月 ). 第 5 章 住 宅 改 善 に お け る 理 学 療 法 士 と 作 業 療 法 士 の 役 割 第 5 章 で は , 第 4 章 の 調 査 結 果 を 基 礎 と し て 住 宅 改 善 に お け る PT と OT の 住 宅 改 善 介 入 時 の 具 体 的 役 割 や そ の 意 識 ,そ し て ,介 入 す る 際 の 各 々 の 専 門 性 を 明 ら か に す る .調 査 方 法 は 質 問 紙 に よ る ア ン ケ ー ト 調 査 で ,対 象 は 日 本 理 学 療 法 士 協 会 及 び 日 本 作 業 療 法 士 協 会 に 各 々 所 属 し て い る PT(59,586 人)及 び OT(38,570 人 )か ら 各 々 無 作 為 に PT3,795 人 , OT2,094 人 を 抽 出 す る .有 効 回 答 数 は PT1,529 人 (回 収 率 40.3%),OT785 人 (回 収 率 37.5%)で あ る(期 間 2010 年 6 月 8 月 ).
第 6 章 デ ン マ ー ク に お け る 住 宅 改 善 で の 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 役 割 と 専 門 性 第 6 章 は ,OT が 中 心 と な っ た 住 宅 改 善 の 支 援 制 度 を 構 築 し て い る 海 外 先 進 事 例 と し て デ ン マ ー ク を 対 象 と す る 訪 問 調 査 を 実 施 す る .こ の 調 査 に よ っ て デ ン マ ー ク に お け る 住 宅 改 善 の 支 援 制 度 の 実 態 と と も に ,PT,OT の 歴 史 や 養 成 課 程 つ い て も 明 ら か に す る . 調 査 の 対 象 は ,PT , OT の 養 成 校 (METROPOL 大 学 ), 2 コ ム ー ネ (市 )の 福 祉 器 具 セ ン タ ー , 住 宅 改 善 を 実 施 し た 2 事 例 で あ る (期 間 2011 年 6 月 27 日 6 月 30 日 : 現 地 時 間 ). ま た , 訪 問 調 査 で は 明 ら か に で き て い な い 部 分 は ,客 観 性 や 訪 問 先 の 特 異 性 を 除 外 す る た め に ,デ ン マ ー ク 政 府 や コ ム ー ネ が 発 表 す る 各 種 資 料 を 訪 問 先 や 公 的 サ イ ト か ら 入 手 し , 分 析 す る . 第 7 章 結 論 第 2 章 か ら 第 6 章 で 実 施 し た 調 査 , 考 察 に よ り 高 齢 者 の 継 続 的 な 地 域 居 住 や 自 立 し た 生 活 の 確 立 の た め に 重 要 な 支 援 と な る 住 宅 改 善 へ の 介 入 に お け る PT の 役 割 や 専 門 性 を 明 ら か に す る . PT が 住 宅 改 善 に 介 入 す る 意 義 は 自 宅 で の 「 動 作 分 析 や ADL の 評 価 」 に あ る .現 在 ,高 齢 者 の 住 宅 改 善 の 支 援 は 介 護 保 険 に よ り 全 国 的 に 統 一 さ れ た 制 度 に よ っ て 実 施 さ れ て い る .し か し ,実 際 の 支 援 は ケ ア マ ネ ー ジ ャ ー と 工 事 施 工 業 者 に よ っ て 行 わ れ る こ と が 多 い .特 に ,介 護 保 険 を 利 用 す る 場 合 に は 工 事 内 容 が 6 種 類 に 限 定 さ れ て い る た め ,そ の 内 容 に 合 致 し て い る か ど う か が 制 度 利 用 の 前 提 と な る .従 っ て ,高 齢 者 の 動 作 や ADL の 状 況 を 反 映 し た 住 宅 改 修 (住 宅 改 善 )が 実 施 さ れ な い た め 不 使 用 と な る 事 例 も あ る .こ の よ う な 事 例 に 対 し て 動 作 分 析 や ADL の 評 価 に 高 い 専 門 性 を 有 す る PT が 介 入 す る こ と が PT の 住 宅 改 善 介 入 の 意 義 と な る . 住 宅 改 善 介 入 に お け る PT の 役 割 は 以 下 の 2 点 で あ る . 第 一 に 「 動 作 分 析 や ADL の 評 価 」で あ り ,第 二 に こ れ を 基 礎 と し た 在 宅 生 活 に お け る「 問 題 点 の 発 見 」 で あ る . た だ し , こ の よ う な 役 割 は OT も 同 時 に 有 し て い る . そ し て ,実 際 の 介 入 場 面 に お い て も PT と OT に は こ れ ら の 役 割 に 相 違 が な く ,PT 及 び OT の 意 識 と し て も 両 者 の 役 割 に 差 は な い こ と が 示 さ れ て い る .た だ し , 各 々 が 対 象 領 域 と す る 動 作 や ADL に は 以 下 の よ う な 差 異 が あ る .つ ま り ,PT
は 「 移 動 や 移 乗 」 に 関 す る 動 作 が PT の 対 象 領 域 と し て PT の み な ら ず OT に よ っ て も 位 置 付 け ら れ て い る . OT で は 「 Self-care」 や 「 IADL」 が OT 及 び PT と も OT の 対 象 動 作 , ADL で あ る と 認 め て い る . こ の よ う な 対 象 と す る 動 作 や ADL の PT と OT の 専 門 性 の 差 異 が ,住 宅 改 善 介 入 時 に 相 互 に 役 割 が 全 く 同 じ で あ っ て も ,両 者 が 同 時 に 介 入 す る べ き と す る PT 及 び OT の 意 識 の 高 い 背 景 と な る . デ ン マ ー ク を は じ め と す る 欧 州 各 国 で は 住 宅 改 善 に お け る OT の 専 門 性 が 明 確 化 さ れ ,支 援 の 中 心 的 な 役 割 を 果 た す 形 態 が 多 い .こ れ に 対 し て ,我 が 国 で は 住 宅 の 有 す る 構 造 的 特 徴 や 和 式 生 活 を 基 礎 と し た 重 心 の 上 下 動 が 大 き い 動 作 が 多 い と い っ た 要 因 か ら ,「 移 動 や 移 乗 」 に 関 す る 動 作 へ の 検 討 や 対 応 に よ り 一 層 高 い 専 門 性 が 必 要 と な る . こ の よ う に PT に 対 し て 求 め ら れ る 「 移 動 や 移 乗 」 動 作 の 高 い 専 門 性 が , PT が 住 宅 改 善 に 介 入 す る 必 要 性 を よ り 一 層 高 め る 我 が 国 特 有 の 形 態 で あ る . 5.理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 5-1.我 が 国 に お け る 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 の 誕 生 ま で の 動 向 我 が 国 の 理 学 療 法 及 び 理 学 療 法 士 の 歴 史 は ,類 似 す る 内 容 が 古 く は 聖 徳 太 子 の 時 代 か ら あ る と さ れ る が ,現 行 体 系 の PT と OT が 整 備 さ れ ,定 着 す る の に 至 っ た の は 1965 年 に 「 理 学 療 法 士 及 び 作 業 療 法 士 法 」 が 制 定 さ れ た こ と が 契 機 35)と さ れ る . 以 下 , PT 及 び OT の 誕 生 ま で の 歴 史 的 過 程 35-41, 43)を 簡 潔 に 記 載 す る (表 16). 1950 年 代 始 め に 先 進 諸 国 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 実 情 を 視 察 し た 旧 厚 生 省 関 係 者 や 医 学 界 の 有 識 者 が ,リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 専 門 職 の 養 成 の 必 要 性 を 政 府 や 関 係 団 体 に 訴 え て い た . そ の 後 , 1959 年 に 「 機 能 療 法 及 び 職 能 療 法 に 関 す る 研 究 会 」が 厚 生 省 (当 時 )内 に 発 足 し ,後 の 法 案 作 成 の 資 料 と な る 報 告 書 が ま と め ら れ る . 1961 年 に は 厚 生 省 が 近 代 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に 必 要 な 国 際 水 準 の 理 学 療 法 と 作 業 療 法 の 発 展 と 定 着 の た め に 世 界 保 健 機 構 (以 下 , WHO と 記 載 )に 対 し て 技 術 援 助 の た め の 顧 問 を 招 聘 し た . こ れ に よ っ て ア メ リ カ 人 講 師 が 来 日 し , 講 習 会 が 開 催 さ れ た . 1963 年 に 「 医 療 制 度 調 査 会 」は 厚 生 大 臣 (当 時 )に リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に 従 事 す る 専 門 職 の 教 育 ,業 務
内 容 の 確 立 な ど の 制 度 化 を 早 急 に 図 る 必 要 が あ る と 答 申 を 出 し た .こ れ に よ っ て 砂 原 茂 一 氏 (当 時 の 国 立 療 養 所 東 京 病 院 院 長 )を 座 長 と す る 「 PT, OT 身 分 制 度 調 査 打 合 会 」 が 設 置 さ れ た . こ の 会 の 主 要 な 業 務 は (1) 「 Physical Therapy」,「 OccupationalTherapy」の 日 本 語 の 名 称 の 検 討 ,(2)業 務 内 容 の 範 囲 ,(3)資 格 要 件 (教 育 課 程 ,試 験 及 び 免 許 ,欠 格 条 項 ),(4)養 成 所 の 開 設 の 基 準 等 で あ っ た . 特 に , (1)「 PT」,「 OT」,「 Rehabilitation」 に 対 応 す る 日 本 語 を ど の よ う に 定 め る か が 大 き な 問 題 で あ っ た . 表 16 我 が 国 に お け る 理 学 療 法 士 , 作 業 療 法 士 の 誕 生 ま で の 経 緯35-41, 43) 文 献 35-41, 43 よ り 著 者 が 作 成 し た . 1962 年 に 水 野 祥 太 郎 ら は 欧 米 の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に 関 す る 視 察 報 告 で , 「 PhysicalTherapy」 及 び 「 PhysicalTherapist」 を 「 機 能 療 法 及 び 機 能 療 法 師 」と い う 呼 称 で 紹 介 し た .ま た ,当 時 の 日 本 整 形 外 科 学 会 で は「 Physical