変動相場制をめぐる諸問題
29変動相場制をめぐる諸問題
小川密一
目 次 1.はじめに
2.為替相場制皮の基本的分類 3.変動相場制支持論 4.固定相場制支持論
5.IMFの為替相場制度改革論議
6.フローリング・ペッグとワイダー・バンド
7.カナダの変動相場制移行 8.わが国の立場
9.むす び
1. は じ め に
1970年9月21日からコペンハーゲンで開催されたIMF総会におい て、シュバイツァーIMF専務理事はブレントウッヅ体制の基本原則は完全 なものであって、混乱の原因は現行体制の欠陥によるものでないと述べてい る。問題は政策であるとし、特に基軸通貨国である米国のインフレが国際経 済情勢および現行通貨体制に大きな動揺をあたえていることを強調してい
る。
また、他方国際間に巨額の浮動資金が滞留しいわゆるユーロ・ダラーの総
額は1970年末400億ドルをこえると推定されている。そのはか、EC
諸国にとってはブロック内の為替制度、あるいはECブロックとドルブロッ
クとの間の為替制度をも展望して弾力化問題を考えているのである。本年2
月9日EC理事会で採択された「経済・通貨同盟の段階的実現に関する決議
案」において、やがて創設されるであろう共同体中央銀行機構に6ヶ国通貨
の対米ドル平衡操作と6ケ国内「EC共通レート」の設定を内容とする構想
を示している
Oとういう情況の下において、為替制策は如何にあるべきかというのが当面 の問題となってくる訳であり、一時なりをひそめていた変動相場論議が台頭 してきたのもむべなるかなである
oそこで本論では、変動相場の素描を試 み、その論議なり、批判なりを取纏め、今後予想される多彩な為替相場論議 に対応するための基礎作りをしたい。
2.
為替相場制度の基本的分類
変動為替相場制の用語については昨今苦干の混乱がある場合があり、一応 整理してみたい。
まず、現行の為替相場制度は大体次のように分類されるであろう
D(1)
固定相場制
(Fixedrate system)① 金本位制
(Goldstandard system)②
調整可能固定制
(Adjustable peg system) (2)変動為替相場制
①
自由変動替替相場制
(Floatingrate system) a Unlimited and unmanaged flexibi 1 i
ty b Un1 i
mited and managed fllexibi1 i
ty②
屈伸為替相場制
(Flexiblerate system)③
ク ロ ー リ ン グ ・ ペ ッ グ (Craw1 i
ngpeg system)金本位制の下では、一国の為替相場は金現送点のきわめて狭い範囲内でし か変動することができず、一点で固定されたものではなかったにしても一般 に固定相場と呼ばれている
D現行の国際通貨基金体制では、加盟各国は金、米ドノレを基準とする平価 ω 上下
l労の範囲でしか為替相場の変動を認めていない。上記二つの制度を固 定相場制と称することについては異論のないと乙ろである
o(1)一般に変動為替相場ときは、自由変動相場制
(floatingrat system)を 指し、屈伸相場制(f
rexiblerate system)と区別して用いる場合が多い、
屈伸相場制は変動相場制と固定相場制の中間的な位百にあるというのであ
変動相場制をめぐる諸問題
31 るo(2)変動為替相場制には、当局の為替市場への介入を全く認めない
unmanagedとするものと、その介入を容認する
managedとするものとのこつがある
D屈伸相場制も同様に、1i
mitedand managed flexibilityと1i
mitedand unmanaged flexibi 1 i
tyに分類できょう。屈伸相場制は
broadened band,
wider bandなどとして表現された場合にはもっとすっきりしたものにな る。しかし、fI
exible exchange ra teが広義に解され、
freelyf1
llctuating exchange ra te(自由変動為替相場)を含む場合もある
oflexi ble exchange( 3 )
rate
の熱心な推賞者である
E・ゾーメン教授の場合然りである
o英語の f I
exibleをいかに翻訳するかにも問題があり、その著者の怠味するところ により変動、あるいは屈伸と使い分けした方が便利であると思う。また、屈 伸相場と自由変動相場との相違点を単に政府当局の介入の有無によって区別
( 4 )
する表現もある。本稿では、原則として、屈伸相場制は
296‑‑‑596程度の変 動幅拡大を意味するものとし、変動相場制は自由変動相場制を意味するもの
として取扱うこととする
DCra wling peg
は為替平価を為替相場の実勢に鞘寄せする形で定期的、か っ小支iJみに変更していくことである
o屈伸相場制の中で論ぜられる場合があ るが、最近
Crawlingpegは為替相場改卒論の中の大きな項目の一つにな っているので一応区別するのが適当であると思う
O3.
変助相場告
IJ支持論
変動為替相場論議の内容自体は特に目新らしいものがある訳ではないが、
これまで一般に主張されてきたそれぞれの立場よりする論拠を整理対照して みたい
O(1)
適正な自然の水準
変動相場制において、国際収支に不均衡が生じた場合その影響は直ちに為
替相
j坊に反映する。その相場の脱落が一時的なものとみられるときは、その
脱落を相殺するような投機業者などの勤きにより相場は適正な水準に洛ち着
くコその相場のJJ.
0t誌が
ft 7 F 造的なものとみられるならば、投機的な取引により
速かにその適正水準を発見するというのである。
固定相場制の平価は適正水準であるという判定が困難であるために、基礎 的不均衡による平価変更が遅れがちであり秩序ある平価変更が期待できな い。大量な投機資金の移動により平価変更に追い込まれるケースが多く、と かく投機攻勢にさらされむしろ不安定的であるといえる
D(2)
国際収支の均衡作用
たとえば、国際収支の赤字傾向によって外国為替が上昇するときは、自国 通貨建で外国商品の価格を高めると同時に自国商品の外国通貨建価格を低め ることによって、輸入を減少させるとともに輸出を増加させ、国際収支に均 衡作用をあたえる
oその逆も同じである。為替相場は時に応じて変動するか
ら固定相場制のように時機を失して困難な事態を招くおそれもない。
変動相場制の下では当局の介入も少なく、理論的には金、外貨準備は殆ん ど必要としない。また為替先物市場 dこ介入し、金利裁定関係を利用して直物 相場を安定させることもできる
O直物市場
ζl介入するには外貨準備が必要で あるが、先物市場に介入するには差当り不必要であるからそれだけ外貨の節 約になる
O(3)
投機に対する防衛
固定相場制の下では、投機筋に対して好餌を提供することになる。すなわ ち、一国の通貨不安から平価調整の可能性が予見される場合投機筋は圧力を かけてくるが、固定相場体制の下では、為替相場の変動は秘めて狭い範囲 内に止まるから、万一思惑がはずれても受ける打撃は軽微なものに止まる一 方、期待通りに行けば巨利を博するという一方交通である
Oこれに対して、
変動相場制の下では思惑がはずれたとなれば大損害を被ることになるから均 衡破壊的な投機は行なわれ難い。
(4)
国 の 損 失
前項と裏腹の関係になるが、現行固定相場制は平価の調整が可能だとして
も実際には極度に引き延ばされ、調整に追い込まれる可能性が強い。その間
投機筋の攻勢に対して通貨当局が常に防戦しなければならない。投機筋の勝
利は国家に膨大な損失をもたらす結果となる
qたとえば、平価切下げの恐れ
変動相場制をめぐる諸問題
33がある場合は相場維持のため当局は巨額の準備をくいつぶさなければならな い。その後実際に切り下げが行なわれば投機筋は巨利を博することになる訳 である
Oこれに反して、変動相場制の下では投機で損をするのも得をするの
も投機者であり、国家は関係ない
D⑤
賃銀物価の悪循環
変動相場制の下では、インフレーションが進んでいる場合には賃銀物価の 悪循環を促進するというけれども、これは追加的な国内信用拡大が行なわれ ない限り生じない。なお、賃銀の上昇の必然性を認めたとしても、輸入商品 に対する支出の家計費に占める割合は相対的に低いこと、したがって外国為 替上昇と家計賀の上昇との問、また、家計費の上昇と賃銀上昇との問にも時 間のずれがあることなどから、国際収支はその聞に回復する可能性がある。
また、過度の信用拡大政策に対する警告の指標としては、固定相場制でい う金、外貨準備の勤きよりも、変動相場制における相場ーの勤きの方が効果的 である
o外貨準備の勤きは、注意深く見まもるとしても、一部の人だけしか わからない。それに反して、相場の勤きは一般の人に公開されており、異状 事態が生じれば直ちに国民に伝わる
D為替相場を長期的に安定させようと努 力する通貨当局はその相場の動きに速応して政策の修正を行うことになるで あろう。
(6)
国内経済政策の自由
国際収支調整策は大きく三つに分けられる
Oすなわち ①国内物価、所得 水準に対する一般的国内政策、②為替相場の変動、③貿易、為替取引など対 外取引の統制である。
固定相場制の下では、国際収支が悪化した場合まず外貨準備が流出し、並
行してデフレーション政策をとることが考えられる
Oしかし、国内経済にお
ける価格、賃銀水準は一般的に下方硬直性があるので金融財政政策によるデ
フレーションの実施は失業を生じやすい口従って、政府当局が完全雇用の維
持達成を目標としているならば、そのデフレーション政策は大きく制約され
中途半端なものに終る可能性が強い。貿易、為替取引などの対外取引の統制
は好ましくないので、決るのは為民相場の変動となる
D変動相場 i l j l J の均合
は、国際収支のかなりの部分が相場の変動により自動調整されるから、外界 の事情とは独立して国内的均衡政策をとる自由度が高まる
D(7)
金利裁定取引による短期資本流動の防止
固定相場制の下では、国内均衡のための金利政策の効果が内外金利差を誘 因とする短期資本の移動 l とよりかく乱されることがある口たとえば、インフ
レ抑制のずこめに高金利政策をとったとすれば、国内金利を慕って海外から資 金が自由に流入してくるから、金利を上げたためにかえって国内流動性が高 まり、政策の効果は相殺されてしまう
Oこれに対して、変動相場制がとられ ていれば、先物相i 易の内外金利差調整機能が十分に作用し、かかる短資移動 が抑えられる
O従って国内均衡のための金融政策がより容易に行なわれうる ことになる。
(8)
対外取引の安定
貿易業者のリスク回避については、変動相場を導入すれば先物市場がおの ずから十分に発達し、その市場において妥当なコストでカバーできる。両国 の経済条件が安定的であれば、先物為替相場の過度の不均衡は投機活動の介 在により、急速に是正されるであろう
Oつぎに、長期資本活動については、
現行の
IMF制度下の固定相場制でも同様のリスクはある
O基礎的不均衡が あれば為替相場の変更がありうる。なにも変動為替相場制l こ限ったことでは ない。
なお、 E ・ゾーメンは次のようにいっている r 先物によるカバーを貿易 業者は為替相場変動の危険を避けるのに用いることができるが、それに伴っ てコストがかかるから伸縮的為替相場はやはり貿易を阻害するという議論も また正しくない口後にふれるように、 (次の節で扱われるような国内と海外 との聞の金利差によって決まる水準を超える)先物に対する割引
(discount)あるいは割増
(premiam)という「保険料」は(現物)為替市場が釘付けされた通貨の平貨維持が疑問視されるときにのみ生ずる。
現物相場と先物相場の聞に大きな差が生ずるのは、通貨が完全な交換性を
もち得ないときだけである(あるいは、短期資本の自由な移動を妨げようと
する各同の銀行の自発的な協調があるときだけである)ぃさもなければ、利
変動相場制をめぐる諸問題 35
子に対する裁定取引がつねに、短期利子率の差異によって生ずる差額を上限 として、現物相場と先物相場を一致させる傾向にある
oJ (5)また、たとえば、先物為替に
premiumがついた場合輸入業者には負担 になるが、輸出業者にはそれだけ有利となり、貿易取引全体としてはカバー コストが直物取引より割高であるとはいえないという考え方もある
o( 6 )
4.
固定相場制支持論
(1)
適正な自然の水準
IMF
自身の見解のように、そもそも、為替相場には適正な自然の水準な どありえない。管理通貨制は見方によっては、金融面からする経済統制であ る
Dそのような状態の下で為替相場に自然の水準がありうるか疑問である
O現在のように慢性的なインフレ状態の場合通貨への不信をもたらすので、
Tlf場には常に不安と動揺が存在し均衡点の発見は困難である
oいかなる場合 l こ も、適正相場というのは、当該国およびそれが重要な経済関係を取り結ぶ他 の諸国のとる経済、金融および通貨諸政策のいかんによって定まる
oまた、変動相場
<<11Jの調整機能には、資本移動についての説明が不十分で・あ る。何らかの理由により一時的に短資の大量移動が生じた場合、為替相場は 均衡為替相場からかえって弔離することになる。
もし、市場心理に動揺が生じた場合、投機者がはたして、変動相場論者が 期待するような合理的な動きを示すかどうかも疑わしい。弱気が弱気を呼 び、強気が強気を呼んで市場動向が偏する傾向は固定相場の場合よりも大き いかもしれない
D(2)
国際収支の均衡作用
変動相場制が強制する為替レート変動による国際収支の調整効果も、
?JJ給の弾力性に依存し、過大な評価は危険である
O西独の例をとれば、
1970年には物価は依然高い上昇を示し、工業品生 産者価格は 6% 程度、 i~í 貨者物価は 496程度の上昇となった O それにも拘ら ず、貿易収支の黒字幅は
157億マノレクで前年同期比
1佑マルク噌を示し、
fi'r
i ' i まっておらず、マルク切上け
oも十分効果をあげていないものと
II日 1 行され
る。その理由としては海外の好況、インフレ傾向の持続のほかに、価格以外 の品質や習慣などの要因があげられている
o(7)(3)
賃銀物価の悪循環
外国為替市場における現実の不均衡はかならずしも国際間のコスト、価格 構造の不均衡によるものではない
Dたとえば、一国で過度の信用拡大策がと られれば国内物価が上昇する以前に輸入は増加し国際収支は逆調となる
oこ のようなとき変動為替相場制が採用されているならば、外国為替が上昇し、
輸入価格を上昇せしめ、次第に国内一般物価水準の上昇、賃銀の騰貴をもた らす口その結果は通貨が崩壊するか、あるいは、政策当局がきびしい貿易制 限、為替管理を採用し、結局、変動為替相場は終結を余儀なくさせられるこ
とになる。
しかし、このような過度の信用拡大策という政策自体が誤りであるとし、
そしてそれをただちに是正しなければならないとするならば、政策当局にと っては、固定為替制度の下において国際収支の逆調から生ずる劇的な外貨危 機の方が、一般国民の注視を受けやすいという点において、変動為替相場制 の下において為替相場の徐々の下落よりも優れているといえる
O(4)
国内政策の自由
相場の変動自体が対外均衡を回復しうるというならば、各国は積極的に国 内の不均衡を是正しようとする怠欲を失うであろう。すなわち、金融節度、
国際収支節度を欠くようになり、おのおの勝手な政策を追求する結果、国際 協力体制は崩壊することになる
O(5)
金 利 政 策
固定相場制の下では金利政策によって均衡回復的な資本移動を促進するこ とができるが、変動相場制の下では先物相場の内外金利差機能によって資本 移動が逆に阻害される
o(6)
対外取引の安定
固定相場によって維持される相場の安定は貿易取引の採算の基礎を明確な
らしめ、ひいては、国際貿易と国際金融の発展をうながすというのが固定相
場論者の最大の論拠である
ο変動相場丹市の下でも先物取引による為詩リスク
変動相場制をめぐる諸問題
37回避の途があるが高く付く。また、先行き不安定な通貨であれば為替市場で 出合いをとることすらむつかしい口変動為替論は貿易、為替の実体を知らな いものの議論にすぎない。長期の輸出入契約にあっては、先物カバー自体が 極めて困難となり、また、海外投資などの長期資本取引面でも為替相場変動 リスクのために資本移動が阻害される
O更に変動相場制の場合、その国の通 貨の対外価値の低落は、競争関係にある他の国から保護的な貿易制限、ある いは平価切下げ挟作などによって抵抗されるおそれもある
o(8)5. 1 M F
の為者相場制度改草論議
IMF
総会の焦点は総会に先立つて
9月
13日に発表された
IMF理事会の リポート
"Therole of exchange rates in the adjustment of interna‑ tional payments"であった白
その第一部において、ブレトン・ウッヅ体制の基本原則は健全であり維持 強化しなければならないということを確認し、次の四点をあげている
O(1)
国際貿易の拡大と均衡のとれた発展のための基本的条件である為替相 場の安定と秩序を維持すること
D(2)
平価の変更は基礎的不均衡の是正に関して行なわれるものでなければ ならないこと
O(3)
平価の変更は加問国の提議があったときに限り行なわれるものでなけ
n ばならないことO
( 4 ) 平価の変更は国際的な関心事であり、合;むされた国際的手続きにした がって行なわれなければならないこと。
そのほか、注目すべきは、基礎的不均衡という言葉について一応の概念を 与えていることである。すなわち、 「基礎的不均衡という用語は協定では定 義されておらず、また基金はこれを定義づけようとしたことはない。中略。
基礎的不均衡の概念は第一部の
5頁および
47'""50頁において一周詳細に論議されている。この概念が回定相場制において果す役割は主要であるの で、基金は基礎的不均衡の存在と大きさに関する判断を行う場合に考応に入
(9)
れるべき統計的およびその他の要素について研究を続けるであろう
oJとし
ている
O基礎的不均衡の理論的概念としては、一般に受入れられているものがあっ
(10)
た訳であり、特に異るところはないが、一言にしていえば、国内にインフレ のない完全雇用を維持しながら対外的には国際収支の均衡を達成しうる相場 といえよう
oリポートは、理論を実際に応用する際には、甚だ微妙な問題を 含む基礎的不均衡についていろいろの実例をあげ、その例として、国際収支 が均衡していてもそのため国内経済が非常な停滞を余儀なくされている国と か、国内がインフレ的にも拘らず国際収支が黒字である場合などを引用し、
結局「対内的な考慮と対外的な考慮とが国内の安定政策に関して相互に逆方 向に引合うような矛盾がある場合、もしその矛盾が永続的なものであるとす れば、それは基礎的不均衡の存在を示すものと考えてよかろう」といってい
るo( 1 1 )
平価の変更に関して、 「専務理事が必要と考えるときに、問題の微妙さ に即した方法で当該加盟国の平価に関する問題について当該加盟国とー諸に
( 1 2 )
審議することを妨げるものではない。」という乙とと、そのときの基準とな る基礎的不均衡という用語の概念がクローズアップされたということは、平 価切上げに追込まれる懸念のあるわが国にとっては一つの関心事であろう
Oとはいえ、平価の変更は、現実的には、基礎的不均衡という基準よりも、
むしろ当事国の国内政治、あるいは投機攻勢に大きく支配されることには変 りはないであろう
Dその第二部、
3、において、理事会はブレトン・ウッヅ体制の基本原則を再確認し、固定相場に代替する次の三つの為替相場に関する提案を拒否すべ きであるとの結論に達している
o1 (
3)( 1 ) 変動為替相場制度。
(2)
基金の平価を基礎とするが、変動幅を大幅に拡大する制度。
(3)
予め決められた何等かの方式を自動的に適用することにより平価を定 期的に調整する制度。
同じく
4、において、固定的相場制度を最も円滑かっ有効に機能させると
いう観点から、為替相場弾力化の三案が次の通り示されたわけである
o1 (
4)変動相場制をめぐる諸問題
39 (1) Prompt adjustment of parities in appropriate cases不均衡の累積を防止するためのより迅速な、かつより小幅な平価調整であ って、いわゆるクローリング・ペッグである口この実施方法には二つがある とリポートは述べている
O一つは協定の改定は必要としないとする立場で、
基礎的不均衡があり、かつ、
IMFが平価の変更に同意すれば現行協定で、
クローリング・ペッグは実施しうるとする考え方であり、他は協定を改定し て、たとえば、その平価変更が
1年聞に
396以内、または
5年間の累積が1
096
以内の場合には
IMFの同意を必要としないものとするという方法であ る 。
IMF
当局は、ほかによい方法がなければこの案を優先的に検討したい志 向のようである
o(1日(2) A slight widening in the margins around parity
平価の上下変動幅の大幅な拡大は固定為替相場制度の基本原則に反するの で、変動幅を小幅に拡大する、いわゆる
slightlywider bandであるO理 事会の討議を通じて言及された拡大幅は
296ないし
3%であったが、変動幅 の拡大による不利益が、それによる利益をこえない範囲でどこまで拡大でき るかという点についての決定は非常に困難で、理事会の意見は一致をみてい ない。
変動幅拡大の利点、として、①国内金融市場に対する資本移動の影響をある 程度緩和し、国内の金融政策の独立性を若干拡大するであろう
o②民間資金 の思惑的な移動を安定的方向に誘導し、公的準備に対する圧力を減少せしめ る場合もありうる。③平価変動の予忽に基く投機の見込収益をわずかながら 減らし、平価調整の円滑な実施に若干貢献しうる
O欠点として ①変動幅の拡大は各国の選択にゆだねられているので変動幅を 拡大しない国は、変動幅を拡大した国から悪影響を受けるおそれがある
D②小幅の拡大でも貿易その他の経常収支に悪影響を与えるおそれがある
o③
1グループに属する諸国の問の経済的、金融的関係をかく乱するおそれが あるとしている
o大幅の変動幅の拡大が、平価の引下げ競争を招くから望ましくないという
点で各理事聞に怠見の一致があるが、小幅変動の長短に関する説明はあまり 明快でない
Oなお、協定を変更して変動幅を拡大すべきか否か、また、拡大して変動を 詐す場合にも、それにいかなる条件を付すべきかも、引続き検討しなければ
ならないと述べている。
(3) Temporary deviations from par value obligations
過去において各国が平価順守義務から離脱することもやむを得なかった例 外的な場合もあるので、協定を改正して一時的な離脱を認める権限を
IMFに与えるのが適当であるかどうかということである
O平価順守義務から一時 的離脱を認める正式の権限を
IMFに与えることは、この離脱が固定相場‑制 度の基本原則にあまり造反していないように受取られるという弱点がある
O一方、
IMFはより効果的にこの問題に対処できるようになり、国際社会の 利益を擁護しつつ固定相場への早期復活を助長しうるという利点もあるとい
うのである。
一時的に平価より離脱するということは、
1969年のマ
jレク切上げの例 のように、平価の切上げはすでに不可避のことがらとしても、実際に切上げ 幅を何パーセントにするかは一時市場の実勢をみてからにするということで ある
D相場の決定を市場の諸力に委ねるといってもドイツ・マルクの場合、
実際には中央銀行が市場に介入し、その市場相場の形成をリードしたことは 周知の事実である
Oしかし、その場合でも、市場の諸力が大いに当局の決定 に影響力を持ったであろうことは否定できない口
以上が相場弾力化のための三案であるが、いずれも検討のための糸口を示 したものにすぎず、これを実行可能なものにするためには引続き研究を要す るとしており、早期実現の可能性に之しく一般にあまり訴えると乙ろはなか ったようである
Dというのは、各国の経済事
f吉、国際金融環境の複雑さのために足並のそろ えるような情勢にないからである
Oアメリカはドル価値の低下を防止するためには、保護貿易政策をとるか、
他国通貨の切上げを求めざるをえない。したがって、為替の弾力化を推進し
変動相場制をめぐる諸問題
41たい立場にある訳であるが、それにも拘らず、あまり積極的な姿勢はみられ なかった。その理由として、①米ドノレは基軸通貨でありそれ自体の価値は変 更できない立場にある
O②米国の国際収支は依然悪い。③弾力化が実施され た場合には基軸通貨のドノレとポンドはすべて下の方に押し下げられ実質的信 認は低下するロ④弾力化が切下げ競争を招く危険もある、などがあげられて いる。
欧州の事情は更に複雑である
oEEC諸国は通貨統合の具体化をすすめて いるところで、たとえ
IMFが変動の幅を決めても六ヶ国相互間の変動幅は 拡大しないという点で意見の一致を見ているものの、
IMF全体としての変 動幅拡大案そのものについて同一歩調をとるかどうかについては芯思統ーが できなかった
o現行固定相場制の堅持を主張するフランス、ベルギー、ノレク センフ V レグと若干弾力的な西独、イタリア、オランダが対立している
oフランスは米国のインフレと国際収支について基軸通貨国としての責任の 重大性を強調し、こうした状態では為替制度の弾力化は正統的な政策効力を 弱めるにすぎないと批判的であるが、提案の中の変動幅拡大については考慮 の余地があるとしている。これは欧州通貨同盟と他の通貨との問でおこりう
る弾力化をも展望してのことであろう。
英国蔵相の演説は
EEC加盟の問題もあり、固定相場維持の立場であった が、それと裏腹に国内では為替相場改草論が強まっている
oすなわち、①英 国は固定相場制にしばられて常に対外均衡の達成を最重点政策とせざるをえ なかった。②この結果成長路線を取ることができなかった。③輸出主導型の 成長が可能になる。
カナダについては、
IMF協定を無視してフロートさせている乙とについ て有力先進閏の批判が強かったが、カナダ蔵相は、時期は今の段階では言え ないかできるだけ早く変動相場制をやめると述べ、また、弾力化案について は小幅拡大を支持している口
日本側は、現行協定の枠内での運用、現行制度の機能の改善という従来の
主張と変りなく、為替弾力化は現実的でなく、その論議自体が投機を助長す
るという側面を指摘しており、強い反対論として受取られている
o( 1
) 66.
ク ロ ー リ ン グ ・ ペ ッ グ と ワ イ ダ ー ・ ノ て ン ド
(1)クローリング・ペッグ
固定相場制の硬直化を緩和する具体策として、いわゆるクローリング・ペ グッ(漸進的平価調整方法)が各方面から提案されてきており、今回の 1 M
Fリポートの中でも
Prompt adjustment of parities in appropriate cases(適当な場合における平価の迅速なる調整)として第一番目にとりあ げられているのである
Oいわゆるクローリング・ペッグの内容は学者により 若干異っているようであるが、一般に例示されているウィリアムソンの提案 により内容をみると次の通りである
Dすなわち、
IMF協定第
8条の義務を受諾した加盟国は基礎的不均衡の修 正に必要な平価の変更を徐々に最大限一週間に
1/2696( 年
296)の割合で行 なう。この場合各国の為替相場はすべて現在と同様平価の
196内に固定され るが、変更国の平価は、あらかじめ発表された方式の下に、毎週切上げの場 合は上方へ、切下げの場合は下方へと
1/2696ずつ移動することになる
Dそして一方平価の変更国は、この漸進的平価調整が資本の移動を誘発する ことを防止するため、適当な金利水準を維持することが必須条件とされる。
すなわち、たとえばある国が
2年間年率
296の割合で平価を切下げてゆくと すると、この通貨価値の減価に対応して国内金利を
296方高めに維持するこ とが必要とされる訳である
oクローリング・ペッグのねらいの第ーは、固定相場制の均衡破壊的な短資 の移動を防ぐことである
Dすなわち、今迄しばしば繰り返された通貨危機は 投機を目的とする短資の大量移動によってもたらされるものであるが、これ は
adjustable pegの下で一国の通貨が突然かっ、大幅に変更される可能性 が多分にあるからである
oもし一国の通貨価値が毎週
1/26%という小刻み漸 進的な方法で実施されるならば、平価変更を見越した投機を行なう旨味がな くなる。その通貨の減価を見越した短資の移動があるとしても、これは金利 の引上げによって対処すればよいというのがその考え方である
Oねらいの第二は、国際収支是正のための通貨調整を促進するという点にあ
変動相場制をめぐる諸問題
43る
Dすなわち、
adjustablepegの下では、平価の変更があまりに劇的な形で、行われるため、内外経済に与える街撃は大きい。従って、国際収支の不均 衡が長期にわたり継続する場合でも、均衡状態から遊離した平価が長く維持 される傾向をもっ
Oそしてこれが平価変更の思惑を生み、不合理な形で平価 の変更が強いられるという結果になりがちである
Oそこで、クローリング・
ペッグ方式は平価の変更を小幅かっ頻繁に行なうことによって、長期的趨勢 的不均衡を是正せんとするものである
Oクローノレの具体的方法として、裁量的
(discretionany)調整案と、自動的
(Automatic)調整案に大別される。
裁量的調整案というのは設定された年間の変更幅の枠内で毎回の実際のク ローノレが当局の意思判断に基いて行なはれる方式で、前記ウィリアムソン案 がその典型的なものである
O自動的調整案というのは、平価のクローノレが過 去の一定期間における市場相場の劫きに自動的に結びつけられる方法であ
る 。
自動調整方式は、平価の調整が不均衡に迅速に反応して行なわるという点 からその機能において裁量的調整方式に勝ると一応考えられるがまた欠点も ある
o第ーに、クローノレの基礎とされる市場相場の水準はあくまでも過去の ものであって、これが必しも現在の水準決定に適合したものに限らない。第 二に、たとえばある国で国内金融の逼迫から民間が多量にユーロダラーを取 入れるとすれば、為替相場は異常な勤きを示し、これを基礎とした平価水準 はゆがめられる
D第三に、当局は為替相場の変動幅内において市場に介入す ることによって、基礎とされる市場相場の動向を間接的にコントロールする ことができ、自動的方式といっても実質裁量方式に近いものになる。
両案の相違は基本的には、前者が固定相場制に基礎をおいた考え方である のに対し、後者はより変動相場的考え方 l 乙立脚したものといえる
o次に金利政策との関係についてであるが、一般に為替相場開力化の提案
ば、それによって為替相場のもつ国際収支の調節機能が十分に働くから一国
の金融政策は対外配慮から解放され、より自由に国内目的のために伎用でき
るという点が大きな根拠となっている
Dところがクローリングの下では、為
替相場の弾力化がかえって金利政策の非時力化をもたらすのではないかとい う問題がある
oクローノレに対応させて金別を調整する必要は、単に金利裁定を目的とした 短資移動を防ぐばかりでなく、いわゆる貿易決済上の
leadsand lagsの発 生を防止するためにも必要とされよう
C金利の変更が当面の国内の政策目標に一致している場合、たとえば切下げ の方向にクローノレしている赤字国に超過需要が存在するとか、あるいは切上 げの方向にクローノレしている黒字国に過少需要がみられるとかいった場合に は、クローノレに伴う金利の変更は内外両面の均衡を同時に達成させる方向に 働くであろう
Dしかし、乙の場合にも国内に要訪される金利水準と、クロー
j
レに伴い必要とされる金利水準と合致しないことがありうる。他方上記に反 して金利の変更が当面の政策目標と逆の方向にある場合には、同内の犠牲 において対外均衡優先の金融政策をとることは実際に不可能になるであろ
0
・
っ
以上の通り金利拘束の問題があるが、これを緩和するものとして次のよう なことが考えられる
o第ーに、黒字国と赤字国がともにクローノレすることによって、クロー
Jレに 伴う金利拘束の負担を双方で分担しあうことである。このような国際協力体 制がとられるならば金利拘束の負担は半減されよう
D第二に、金利水準をクロー
Jレに述勤しない場合、短期資本の移動が誘発さ れやすいが、これを外貨準備の増減、あるいは国際金融協力によって対処す る
oクローノレの場合は投機収益が比較的少ないことから巨額の思惑資金移動 は発生しないであろう。
第三に、資本統制により海外短資の国内金融面に及ぼす悪影響を直接遮断 することである。非居住者預金に対する付利を禁止するとか、預金準備率を 高めるという方法である。
第四に、クローノレの先行き見透しが明瞭に察知できないような場合、すな
わち、為替相場が変動幅の枠内で浮動しているような場合には短資移動が金
利政策を拘束する度合を減ずるであろう
oしたがってワイダー・バンドを併
変動相場制をめぐる諸問題
45用した場合にはよりよい効果をあげうることになろうロ
そのほか、クローリング・ペッグに対する批判としては次のようなものが ある。
第ーに、自由変動相場同様、国際収支の節度を弱める
o(しかし、固定相 場制の場合程敏速に大きな調整が期待できないということでかえって当局を 慎重にさせるという面も考えられる
o )第二に、前記クローリング・ペッグのねらいにあげた投機資金の移動防止 については、平価変更が予測されるために激しい投機を呼びおこす恐れがある
o第三に、クローノレ・システムは「突然の政治的決定」を行なう必要をなく すものではない
o( 1 ' { )
7.
カナダの変動相場制移行
( 1 ) カナダの対米為替相場変更の歴史
194 6
年
7月
10%切上げ、
lカナダドノレ=1米ドノレとした。目的は米 国のインフレの影響を防ぐためであったといわれる。しかし、当時通貨の 自由交換性が回復しておらず、対芙黒字で対米赤字を決済することが困難 となった。また、その後対米赤字が悪化し外貨準備は激減した。かくし て 、
194 9
年
9月 平価切下げを行ない
lカナダドノレ=9
0.9091米セントとし た
D195 0
年
9月 変動相 t~~1jlj 採用 o
90.9091米セントは過少評価とみられ、
195 0
年
6月朝鮮戦争勃発を契機として8億米ド
jレを越す投機資金が流 入したといわれる
Oこの短期資本流入を抑制するため一時的措
i8:として変 動相場制を採用した口
195 1
年前半
95米セント程度で推移
195 2年
6月 米ドノレとパ
196 1
年
6月迄 lカナダドノレ=1, . . . . , 1 .
06米ドノレの範囲内において各四半
期間の変動
l隔が
296内でほぼ安定。安定の理由としては短期資本の勤きが
思礎収支に対して補強的であったこと、カナダの通貨当局が金利政策を通
じて採作を行ったことなどがあげられているQ.
196 2年5月 固定相場制復帰。 lカナダドノレ=92.5米セントで新平価を 設定したが、直接の動機は、カナダの国際競争力が次第に失われ、反面大 幅な長期資本流入がっつ、いた結果、カナダドノレ相場‑の低下による貿易収支 回復という本来の機能が阻害されることになったのであるO そこで当時の 市場相場から 2.996低い水準である92.596という新平価を設定したのであ るo そのころ IMFとアメリカ政府は固定相場制復帰について強い圧力を 加えていたといわれ、復帰時、 IMF、米国、英国その他加盟主要国は 1 億ドノレの信用を供与しているD
197 0年6月 変動相場移行。カナダ政府は5月31日夜、当分の問米ドノレ の買ささえを中止しカナダドノレ相場を変動相場
i ! l I J !
乙すると発表した。同時 にカナダ銀行は公定歩合を7.596から796に引下げると発表したD ベンソン蔵相は、カナダの外貨準備はSDRの 配 分 (1億24百万米ドノレ)を除い ても、第l・四半期中に3億67百万米ドノレ、 4月![2億25百万米ドノレ、 5 月にも2億62百万米ドノレを増加したが、このほかに先物での受取勘定が3 億60百万米ドノレあり、 1月"""'5月の米ドノレ買ささえは合計12億米ドノレ以上
にのぼったこと、米ドjレ買ささえのための政府カナダドル資金が減少した ことをその理由としてあげているO カナダドノレの相場は年初来93.20米セ ント以上と、堅調で、乙のため公定歩合の引下げ、あるいはカナダドル相 場の介入点の引上げ、更には平価切上げの予想も生じていた。 5月12日に は 、 公 定 歩 合 が896から 7.596に引下げられたがカナダへの資金流入は依 然として続き遂にこの措置がとられるに至ったわけであるQ
( 1 8 )
(2) カナダの外貨準備
外貨準備は5月末で40億84百万米ドルに急増したが、その理由は次の辺り である。
① 貿易収支が大幅な黒字を示したことC カナダの貿易収支は第1 ・四半 期においても6億22百万米ドノレの大幅な出字を示し経常収支が34百万米ドノレ の黒字となった。貿易収支の黒字幅拡大は前年のストライキの反動もあって 輸出が急増(前年同期比16.296増)を示した反面輸入が
f
t)>;~~~:
(同じく2.6死
変動相場制をめぐる諸問題 47 増)したためであるo
② 長期資本の流入が続いたことo カナダの国際収支は経常収支の赤字を 外債発行と直接投資でカバーする型であるが、経常収支が黒字になった上、
長期資本の流入が衰えていない口新規外債の発行は1968年18億72百万米 ドル、 1969年18、倍61百万米ドノレ、また、直接投資の受入れは19 6 8年 6
億1
0百万米ドノレ、 1969年6億25
百万米ドルとなっているo③ 短期資本の逆流があったこと。従来は流入した長期資本のうち、ユー ロダラ市場などで運用されるもの多く、 19 6 9年は16億9百万ドJレの増加 となったといわれる。このため1969年7月にはスワッフ。預金が規制され た口 1970年に入って、海外金利の低下により短期資本の流れが変り、 3 月にはスワップ預金規制が撤廃されるなどであったoその他、カナダドjレの 切上げ、または介入点引上げの思惑から投機的な資金の流入もあったとみら れている。
(3) 変動相場制採用の主なねらい
① 外資特に投機的な資金流入による外貨準備の急増と国内流動性の増加 を防ぐためであろう。カナダの国際収支を長期的にみると、貿易収支の黒字 幅は拡大傾向にあり、経常収支も改善の傾向にある。しかし、経常収支は昨 年までは赤字であった。基礎収支は大幅な尽字であるが、長期資本流入のう ちに前述のように短期資本の流出につながるものもあって、カナダの場合は 必ずしも国際収支不均衡を示すものとはいえないであろうo経常収支は好転 しているものの、まだ大幅黒字が定着し為替相場変更による国際収支調整が 必要な段階ではないように思われるD したがって今回の措置は外資流入の抑 制をねらったやむにやまれぬものであり、 1969年 (9月30日......,10月26
日)のドイツ・マjレクのような平価切上げへの過渡的な変動相場制ではない と思われる口カナダへの資本流入はアメリカよりの借金にすぎず、経済基調 ば西ドイツとは本質的に異なるからである。
カナダ蔵相は世銀総会演J誌の中で、カナダの状況の特殊性、および現在の 国際収支の異常な強さを強調し、カナダの国際収支の先行き見送しには不確 定な要囚が多く、祈'f価を低く定めた場合、あるいは日く定めた場合それぞ
れにおいて困難な事態を招くo相場がそれ自身の水準を見出し、長期間維持 できるような為替相場を見出す方法を選んだとしている。(1)9
② インフレの抑制にある。これまでインフレ対策の主役であった金融引 締は内需を鋲静化させたものの輸出を急増させ、インフレ対策としては限界 に達しており、失業率は5月に6.296に上昇、なんらかの内需拡大策をとる 必要が出ていたから、変動相場制移行により実質的平価切上げ効果をあげ、
輸出の抑制をはかりつつ対内均衡をねらったものであろうo
(4) カナダドル相場の推移
変動相場制移行後のカナダドノレ相場の勤きは別表の通りであるが、平均相 場でみると5月93.21米セントより
9月 10月 11月 12月 1971
1月 2月
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4
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Q U Q U
98.11 97.61
6月96.35米セントと急上昇し、以後 強調を示し、 99米セント台に達して いる。
外貨準備は相場の強調を反映し、 5 月末40億84百万米ドルより 7月 末44 億44百万米ドノレ、 10月末46億7百 万 米ドル71年2月末48億50百万米ドル
と急増しているo
7月下旬以降の相場強調の要因と しては次のような点があげられてい る。
① 多額の外債発行の影響。
② 近い将来に米ドJレとパーで固 定化されるとの,思惑から欧州銀行筋の投機的なカナダドル買いやヘッジ的な
98.05 I 98 . 24 I 97.94
(京銀週報〉
資金流入があった。
③ アメリカとユーロダラーの金利低下のため、金利裁定によるカナダへ の資金流入。
④ 政府の米ドノレ買いささえ資金が不十分なため、当局の市場介入があま り行なわれていないこと。