一︑は し が き
二︑封建性分析の視点
三︑労働力構成と賃金問題
四︑労働条件と封建性
五︑む す び
l はしがき 中小企業問題と前期性
﹁日本経済の成長と近代化﹂との副題を銘打って︑極めて楽観的な分析を下した経済白書も︑その後一年を出でず
して﹁適すぎた拡大とその反省﹂という痛々しい副題をつけなけれぼならなかった︒それ故に﹁反省白書﹂と呼ば
ヽヽヽ れた昭和三十二年度の経済自書は︑幾多の点で日本資本主義経済の問題点をかなり率直に提出している︒そのうち
最も大きい問題点はいわゆる﹁経済の二重構造﹂であっ左︒すなわちその第一は︑・﹁雇用の二重構造︑﹂第二は︑﹁賃
︵1︶
金の二重橋造﹂第三ほ︑﹁貿易の二重構造﹂と︑三つの問題点があげられている︒具体的に述べるならば︑第一の︵三二︶ 三山 商美質労働における封建性
商業賃労働における封建性
−−−高松市を中心とする繊維業者を素材として
橋 勲
︵享〇 三二 第三十忘旬 俊二号 雇用の二重構造とは︑日本に庖ける就業者のうち︑雇用労働力にくらぺて家族労働力の比重が極めて大きいという
ことであ・り︑第二の賃金の二重構造とは︑大企業と中小企業との賃金格考すなわち規模別賃金格差がますます増大
してきているというこ′とであり︑さらに第三の貿易の二重橋造とほ︑大企業の生産物は後進国に輸出され︑中小企
業の生産物は先進国に輸出されるといヶことである︒以上三つの問題点は︑何れも日本資本主義の政行性︑すなわ
ち︑一方では頂点において少数の巨大独占資本が急速に発展し︑他方では︑底辺において無数の焙少な中小企業が
︵2︶ 塵嘆の如くとり贋されて小るという日本資本主義の根本的な構造的特質に基くものである︒この意味においても︑
中小企業間題︑特に中小企業の﹁近代化﹂は︑まさに日本資本主義にとって緊急の課題であるというべきであろ
ちノ○
ところで︑中小企業問題紅接近せんとするとき︑先ず当面する問題は︑中小企業の本質は何か1中小企業の基本
的問題点はどこにあるか︑という最初にして︑しかも最後の問題である︒この本質問題をめぐっ・ては︑百花按乱の如
︵S︶ く紅諸説紛々とし︑例えば︑経営的観点から﹁実質的な個人出資︑個人能力による経営﹂を意味し︑叉︑適正規模
論から﹁適正規模以下のもの﹂を指摘する見方もある︒しかしながら︑中小企業間題を単なる経営技術的な問題に
解消してしまうことなく︑広く社会経済的な観点から日本資本主義の山環として考察しようとする観点軋立つなら
ば↓次の二つの意見が︑有力な見解として登場するであろう︒その﹁つは︑中小企業を﹁従属性﹂ ﹁隷属性﹂ある
いほ︑資本としての﹁非独立性﹂ ﹁依存性﹂を強調する見解であり︑琴一は︑その﹁非近代性﹂ ﹁前期性﹂あるい
ほ︑資本としての﹁未熟性﹂ ﹁組織性の欠除﹂を主張する見解である︒この中小企業の従属性と前期性ほ︑ともに
中小企業間題の本質紅迫牒核心的な問題点であり︑およそ中小企業を論じょうとするかぎりほ絶対に看過すること
の出来ない基本的視点である︒しかしながら本稿は︑この基本問題に深く立入ることを意図するものでほなく︑さ
しぁたり商業労働関係の調査結果を考察するにあたって必要な程度に止めておかなければならない︒したがって︑
ここでは︑二つのうち第二の︑﹁非近代性﹂ ﹁前期性﹂紅ついて主として実証的な視角から調査資料を中心とした
若干の吟味を試みることにする︒
︵1︶ 経済自書︑昭和三十二年度︑三一こぺージ以下参照︒
︿2︶﹁二重経済﹂は白書によっては昭和三千二年度においで始めて明確に指摘されたが︑この日本資本主義の政行性は決して近
年になって忽然としてあらわれたものでほない︒すでに日本資本主義成立当初から伏在し︑大正時代に入って独占段階に入
ると顕在化してきた日本資本主義の根深い問題なのである︒この日本経済のアキレスの腱を率直紅指摘しなかった今までの
﹁白書﹂は︑果して﹁自書﹂と呼んでよいであろうか︒
︵3︸中小企業の本質をめぐる我が国諸学者の見解についてほ︑代表的なものとして藤田敬三︑伊東岱吉編﹁中小企発の本質﹂
を参照されたい︒
二 封建性分析の視点
さて︑ここにいわれる﹁前期性﹂ ﹁前近代性﹂とほ果して如何なる実体のものであろうか︒他面からいうならば
﹁中小企業の近代化﹂といい︑﹁労働関係の近代化﹂というはあい︑その具体的内容は︑﹁前期性﹂の払拭であり
﹁前近代性﹂の克服でなければならない︒それでほ︑払拭され︑克服されるべき﹁前期性﹂ ﹁前近代性﹂とは劇体
如何なる内容のものであろうか︒
近代化とは︑ウェーバー的に答えるならば︑伝統主義の克服であり︑その克服が︑資本主義的なもの︑近代的な
︵l︶ ものの出現である︒この伝統主義をさら紅具体的に規定するならば︑それはすぐれて封建的な伝統であり︑﹁封建
的なもの﹂め克服︑﹁封建性﹂の払拭が考えられるであろう◇︑﹁前期性﹂とほ﹁封建性﹂と全く同じ範疇とほい
商業賃労働における封建性 ︵三三︶ 三三
第三十一..巻 第二号
︵2︶ えないが︑通用ではしばしば同工意味に使用されているぼあいが多い︒
でほ には±つの方法がある︑一つは︑抽象的加般的に概念規定をあたえようとするものであり︑第二は︑具体的個別的
に例証をもって示そうとするものである︒ここでほ調査結果の分析検討を中心とする本稿山性質上︑先ず具体的個
別的な例証の問題とL七一応の考察を行い︑直ちに資料的事実の検証と吟味に移ってゆくことにする︒﹁封建性﹂
の理論的吟味は機会をあらためること軋したい︒
賃労働における封建制︑あるいほ﹁封建的なるもの﹂とほ︑具体的にほいかなる形態を指しているものであろう
か︒さしあたり︑′この問題について最も注目すべき研究ほ︑昭和二十八年の社会政策学会第八回大会の研究報告と
︵3︶ 討論であるが︑そのなかで︑藤本武氏ほ次の如く論じている︒
︵1︶ 藤本氏は︑﹁現在の日本における労働関係が純粋封建的な性格をもっているということほありえない︒﹂とされ︑
現在り賃労働関係における封建的なるものとほ︑﹁半封建性﹂あるいほ﹁半封建的性格﹂であると主張される︒何
故なれば︑純粋に封建的な関係というものは︑例えば﹁農奴制下のロシア払おいて農奴が農奴たる地位を保持したま
ま領主山マニュファクチュア紅使用される場合︑徳川幕制下において農奴が霹役として滞営鉱山の労働に従事する
場合︑あるいは中世ギルド的な親方徒弟副を意味するのであるが︑封建社会におけるマニュファクチュアの発展ほ︑
本質的な意味において〝近代的″労働者を徐々に生み出してきたのであって︑それがなお半封建的な性格をおび
︵5︶ ていたとほいえ︑従来の純粋封建的なる滝のと区別されるものをもっていた︒﹂からである︒すなわち︑現在の日本
払おいては︑
式の確立という事実淀もとづき︑労働者と資本家の関係は︑領主と農奴との関係︑あるいはギルド親方と徒弟との ︵三四︶ 三四
関係と︑ほ全く異っていると考えられているからである︒藤本武底の.いわれ
ないわけでほないが︑その吟味はしほらく措き︑その﹁半封建的なもの﹂すなわも﹁半封建的雇傭形態﹂と呼ばれ
るものにほどのようなものが存在するの竃あろうか︒今簡単紅列挙してみること紅しよう︒
常山彗紳頭制︒これは炭坑では納屋制度・飯場制÷土建でほ入夫部屋・監獄部屋︑林業では庄屋制・姉頭創︑
工場でほ社外工あるいほ人夫供給請負制と呼ぼれているものであり︑その他︑漁業︵船頭制︶・港湾・発電所︒造
船1化学・鉄鋼などに広汎に︑あるいほ部分的に︑みられるそうである︒この雇傭形態の特徴ほ︑組頭が労働者と
雇主との労働力の売買契約の間に形式的あるいほ実質的紅介入し︑典型的なばあいは募集・作業・賃金支払・生活
︵前借制・飯場制︶などの管理をおこなうヰのである︒この雑頑の下におかれた労働者は︑経済的あるいほ経済外
的強制の下に︑直接的に組頭の統轄を受ける︒経済外的強制というなかにほ︑いわゆる〝たこ部屋〟 のよう紅暴力
機楕をもつばあいもあう︑また農村組頭制のように︑直接暴力ほ用い鬼いが︑親方の血縁地縁関係によって︑構成
され︑親方子方開係で結びつけているようである︒
第二に︑募集人制度︒これほ︑組頭のおこなう墓粂・作業・賃金支払・生活の四つの機能のうち︑募集的機能
が独立したものであり︑我が国の産業革命期︵明治二十年代︶ から大正時代にかけて︑紡織工業∵池鱒業・土建等に
広汎にみられ︑いわゆる﹁人身売買行為﹂として摘発されるはあいほ︑悪質な募集人が介入しているばあいであ
るっ これも︑男働力の売買契約が直接紅労働者と雇主との間で結ばれず︑形式的濫も募集人が介入するものであ
る︒ 第三に︑拘禁的寄宿舎制︒この拘禁的寄宿舎制ほ︑募集人制度と韓ひついて︑特に女工哀史で有名な紡織工共にお
︵6︶ いてみられた︒この制度によって貧農の子女を狭い﹁豚小舎﹂と呼ばれる寄宿舎につめこみ︑﹁門止め﹂という外
︵三五︶ 三五 商薬賃労働紅おける封建性
︵三六︶ 三六 第三十こ筍 密雲号
出制限︑信書の干渉・没収︑などによって人格的自由を剥奪し︑苛酷な労働条件を強制した︒戦後︑労働基準法・ ︑ 寄宿舎規則にもとづいて自治生活の原則が法によって強制された紅も拘らず︑このような人権無視の拘禁的宿舎制
が存在することほ︑かの近江描線ストによっても明るみに出たところであった︒近江絹経本杜労組が会社側に提出
した二十ニケ条の要求項目のなか紅は︑﹁組合を認めよ﹂という要求に始まり︑﹁仏教の強制絶対反対︑夜間通学等
教育の自由を認めよ︑結婚の自由を認めよ︑人件をじゆうりんした信書の開封︑私物検査を即時停止せよ︑外出の
自由を認めよ︑﹂等々のいわゆる人権要求が含まれているが︑このような事実ほ︑何れも非人間的な︑前近代的な拘
タ 束といわねばならない︒
第四紅︑前借制を伴う徒弟制あるいは︑年季奉公制︒これは︑中小企業を中心として︵二部の大工場を含め︶戦
前にほ広くみられたが︑戦後ほかなり崩れてきている︒しかし徒弟制ほ山部の小工場や家内工業には根強く残存し
魔弟制と結びつかない紡織工業に残存した年季奉公制もごく山部ではあるが残存しているようである︒
右に述べた雇傭形態ほ藤本武氏によれば︑﹁日本における労働関係一般がもっている半封建的性格の典型的な現
︵7︶ヽ︑︑.︑ 象形態とみるべき﹂ものとされている︒すなわち労働関係の原基型は中小企業のなかに見出されるのであって︑例
︵8︶ えば︑労働契約の内容が極めて不明確であるとか︑労働者のなか軋経営者の縁故者が多く︑特紅それは零細企業に
なるはど高まり︑遂には家族従業者だけの経営になるとか︑小さい経営には住込制︑前借制が残されている等々が
あげられている︒何れも前近代的労働関係の一要因をなすものであろう︒
次に︑松本達郎氏は︑同じ社会政策学会の報告匿おいて︑労働市場の封建性を労働力需要の性格から考察し︑労
︵9︶ 働関係の封建性を︑特に︑豪族主義や身分制度﹂に着目されている︒この家族主義と身分制度は︑他面大河内誹
男氏も強調されているところである︒すなわち︑大河内教授は︑日本の賃労働における封建性の成立根拠を︑日本
払おける賃労働の本質が出稼型であると論断しつつ﹁出稼女エ﹂について次の如く述べている︒繊維製品を中心と
する女子労働者が﹁年季奉公﹂的出様労働を特徴とする結果︑﹁単紅労働の諸条件が低いというだけでなく︑労働関
係そのものが︑身分的な色彩をもち︑往々強権的な実質を帯びるに草っている︒これは単に出様労働者が女子であ
るということ紅のみ基づくものではなく︑彼女たちがまさに出稼着であるという事実紅根差すものに外ならない︒
とりわけ農村における家族生活︑家族構成の封建的実態とそこに支配する身分的生活関係とはまたそこでの労働の
Aエー†ス∀は︑出稼労働者を通して工場地帯にもち込まれ︑経営内における労働関係を封建的に身分的なものに
形成する︒日本の家族生活における封建的なるもの身分的なるものが︑そのままエ場地帯における労働関係の中紅 ︵10︶ もち込まれる﹂と︒さら乾このように出稼塾の賃労働者が経営内紅もちこんだ結果について続けて日く︑﹁これは
資本家的労働関係を家族関係として解釈し︑労働生活を﹁家﹂生活になぞらえて︑説明しようとする態度を生むよ
ぅ紅なる︒而も︑労働関係における身分的なるものは︑第て二転主と労働者全体との問における関係として︑第二︑
労働名相互の上下的身分関係として︑例えば熟練工と不熟練工との間に︑また先輩と後輩との間に︑また監督労働
︵11︶ 老と礪場作業員との間に︑現はれる︒﹂と︒さらにまた︑我が国の家族制度について幾多の優れた研究を発表してお
られる川島武宜民も︑家族主義が多くの擬制的家族関係をつくり出すことを拇摘され︑その例証として︑擬制的親
子関係︵名づけ親︑かね親︑−ひろい親︑等々︶︑地主・小作がしばしば﹁親方子方﹂とよほれること︑﹁大家店子﹂
的関係︑書生や女中などの家内﹁奉公﹂人や商店﹁奉公﹂人に対する﹁主家﹂の封建的親子関係︑その現代版た
る﹁企業山家﹂的な工場労働関係︑近代的色彩をもつ会社や役所や学校における親分子分的派閥徒党︒議会という
/
︵招︶ 近代制度のなかにおける親分子分的政党︑そのはかの︑もろもろの親分子分関係︑等々があげられている︒
以上︑﹁封建的なるもの﹂ある小ほ﹁封建性﹂について従来の主な見解を列挙し.その内容を︑具体的個別的な
商業賃労働における封建性 ︵一一石︶ 三七
︵三八︶ 三八 軍士‡ト巻 欝一号
例証によって探ろうと試みたわけであった︒以上の検討を⁝般的に概持するならば︑封建的なるものは︑日本の賃
労働関係が︑すぐれて家族主義的であり︑身分制度的であるという点に要約されるであろうが︑問題は︑このよう
な家族主義や身分制度を現実そのもののなかから検証せんとするとき︑一体如何なる形態であらわれているか︑
又︑いかなる視角で把握すべきかということである︒この点については︑藤本武氏の半封建的雇傭関係の典型的な
現象形態︵組頭制︑募集人制度︑拘禁的寄宿制︑前借制を伴う徒弟制あるいは年季奉公制度︶が具体的事実検証の
手がかりになるが︑これらは文字通り↓典型的﹂なばあいであり︑したがってかなり特殊的な事例に属する︒そこ
で本調査紅おいてほ次のような視点から﹁封建的なもの﹂の事実検証をおこなった︒今予め列挙してみるならば
− 仙店主と労働者のあい産転徒弟的約束があるだろうか︑㈲労働目的ほ︑近代的な生計維持を目的とした労働力の販 売という形で意識されているであろうか︑それとも業務見習という徒弟的性格をもっているのであろうか︑矧労働 者の住居は家族の貞として﹁住込む﹂という家族主義的色彩をもっているであろうか︒㈲下男や女中と異って歯 糞労働に従事する筈であるにも拘らず︑家事労働にも使われていないだろうか︑㈲﹁家族的雰囲気﹂の下に︑﹁激
父﹂である店主が従業員をひきつれて慰労会をしでいるのではなかろうか︒㈲雇入れ経路は縁放的色彩︑したがっ
て恩義的色彩の伴いやすい縁故採用が多いので牲なかろうか︑m商業労働者の給源︑すなわち出易階層ほどの分野
軋属するものであろうか︑封建性の強い農村出身者が多いのではなかろうか︒㈲給与についても﹁親方﹂一である店
主の温情主義的︑慈恵的な決定に委ねているものであろうか︑それとも客観的に制度化され︑体系化されているも
のであろうか︑等々について現実を確認してみることにしたい︒商業労働関係の封建性を摘出する視点としては︑
もとより以上の項目で充分であるとは考えられない︒痕目が不十分であるのは本調査が元来結合的一般的な商業実
態調査の囁として調査された関係上︑調査項目上の制約を免れなかっ′たことにもよるが︑又方法上の欠陥に基く
ものも含まれているであろう︒忌博ない叱正批判を侯ちたい︒
︵1︶ Ma舛W︒ber⁚Diepr︒te冨nt許h︒Ethik弓dderGeistムes只ap基山smus・−¢NO梶山力︑大塚久雄訳︑山市波文膵版︑ 参照︒
︵2︶ ﹁前期的﹂と﹁封超的﹂とほ必ずしも同じ概念でほない︒﹁前期的﹂という概念を明確に定式化したかは︑大塚久雄教授
であるが︑大塚教授は︑いわゆる﹁前期的資本﹂なる範疇について︑次の如く述べられる︒﹁ところで﹁資本の歴史﹂は云う
迄もなくかかる﹁資本家的生産方法の歴史﹂よりも尚古きに測るものである︒即ち︑資本は所謂前期的資本−商業資本及
び高利貸資本1−1なる形態払おいてほ資本家的生産方法の登場以前に既に存在した?・・︒かくの如くして前期的農本即ち
商業資本及び高利貸資本ほ資本家的生産方法︑従って資本家社会以前の存在を示すものであるが︑更にまたそれほ農本家社
会以前においてのみ存在しうるものである︒別言すれほ︑それほ資本家的経済体制の成立とともに消去らねばならぬのであ
る︒﹂ ︵大塚久雄﹁近代資本主義の系譜﹂ 二月︶このように︑前期的資本は︑資本家的生産方法登場以前の社会匿存在する 農本の意味であって︑必ずしも封静的生産方法の下血存在する資本のみを意味するものでほない︒従ってこの引証でもみら
れるように︑﹁前期的﹂なる概念ほ︑﹁封建的﹂よりも概念の外延が広い︒けれども︑現在にあって﹁前期的﹂を云々する
ほあいにほ︑はとんど﹁封超的﹂′なるものを内包するものと解してよいであろう︒この点において両者は同一鱒考えられ七
よい︒血鱒にマルクスは︑資本制商業以前の商業︑すなわち﹁前期的商業資本﹂を﹁前期的﹂という明確な範暗によって区別
しているわけでほないが︑その範疇の基礎となる基本的分析ほ︑資本論︑讐一惑︑第四編︑第二十章 商人資本に関する歴
史的考察において鮮かに展開している︒
︵3︶ 社会政策学会編﹁貿労働匿おける封建性﹂参照︒
︵4︶ ︵5︶ 前掲蕃八五ぺPジ以下参照︒
︵6︶ 例えば︑細井和気蔵者﹁女工哀史﹂岩波文膵版︑−貯○ページ以下参照︒
商業賃労働における封建性 ︵三九︶ 三九
︵7︶ 社会政策学会編﹁貿労働における封建制﹂九てへージ︒ ︵8︶労働省の調査によれば︑大企業を含めて就職時に給料と仕事の内容を知っていた婦人労働者はわずかに三七%にすぎず︑
四二%は何れも知らなかったと答えているそうである︑︵﹁婦人の職業﹂昭和二十三年山月︒前掲番九ニージによる︶
︵9︶ 社会政策学会編﹁賃労働における封建制﹂五五ぺージ か
︵10︶ ︵11︶ 大河内一男﹁社会政策の経済理論﹂こ一八ぺージ︒
︵12︶ 川島武宜﹁日本社会の家族的構成﹂一八ぺー汐︒
三 労働力構成と賃金問題 先ず調査対象となった高松市及び岡山市の繊維卸商ならびに小売商の労働関係にかんする予備的資料分析から入
ってゆくことにする︒因匿︑調査対象と調査方法軋ついて二言ふれておくならば︑高松市の卸商は四〇軒︵配布は
七〇軒であるから回収率は五七%︶岡山市の卸商は一二軒︵配布は三二軒であるから回収率三八%︶高松市の小売
商は四四軒︵配布は四八軒であるから回収率九二%︸計九六軒の回収をえた︒高松市の卸商は悉皆調査︑小売商は
サンプル調査により︑それぞれ調査員を通じて業主に記入を依頼したので︑二三の例外を除き殆ど業主自らが記入
したものである︒ さて︑調査資料に従って事実検証を進めるならば︑先ず第劇に︑家族従兼員と雇傭従業員の比率によって︑家族
労働力の比重をみてみよう︒この家族従業員の比重が減少し︑雇廠従業員の比重が増大することは︑同時に賃労働資
本関係の成立を︑したがって資本主義的近代的雇傭関係の発展を示すものである︒つまり︑旧中間層と呼ぼれる独
立小商品生産者や小宮業者など﹁家業﹂的存在は︑資本主義の進展と共に次第に減少し︑やがては実質的な賃労働
者がこれにかわって登場するようになる︒したがって資本主義め成熟の早いイギリスでほ︑山九五山年の家族従業 第三十丁巻 第一号 ︵四〇︶ 四〇
員の比率は金就業者中僅か紅〇・二%︑業主七%とあわ
せて七・二%という低い比重を示し︑叉アメリヵにおい
ても︑家族従業員の比率一・九%︑業主は﹂五・八%で
︵1︶ 合せても﹂七・七%にすぎないのである︒しかるに我が
国においては︑資本主義的な階層分解の進展が遅く︑頂
点軋ほ既に巨大な小数の独占資本が形成されているにも
拘らず︑底辺においては無数の蓉細な小企業が残存する
結果︑家族従業員の比重が極めて高い︒昭和三十二年度
の経済白書によれは︑家族従業員の比率は三割︑業主で
ある自家営業主の割合は二割四分︑合せて五割四分まで
︵2︶ ほ家族労働者によって占められている︒このように日本
払おいて前期的就業形態を根強く保っているのは農業部
門における階層分解が停滞していること︑又非農業部門
でも中小零細企業が多数ひしめきあって残存しているこ
とに基くものであるが︑特に商業部門は︑農林業ととも
に単独業主が多く︵農林水産業六画・八%︑卸売小売業
一五・八%︶︑家族従業者もまた単独業主の多い部門に
おいてこの比重が高いようである︒
商業賃労働における封建性 ロカ 態 菜 ︵
第1衰A 家族従業員と雇傭従業員の比率
9 2 110
岡山卸
9
3
12 12.1
卸6284 224 乱 製
6︵︾42
卸326・・ 2
258 54 112 29=7
ほ
‡ゑ
家族従菜員
69 151 73 78
18 72 126 187
87 223 199 265
87.9 77.8 80.6 703
雇傭従英員
′■ヽ
四)
四
第1表B 家族従業員と雇傭従業員の比率(規模別)
岡山卸 卸
製 卸 小 売
{ .{
中 小 中 小
′ ′ ■ √ ▲ 1
中 小 中 小 11 15 28 30
9 13 25 29 20 28 53 59
11.5 38.417.9 72.8
56 17 76 2
98 28 167 20 154 45 243 22
8臥5 61.6 82.1 27‖2︷⁝ 9093 662 ●
16
4
0773
640 14
1
男 9 女 3 計 12 同%121 男 69 女 18 斜 87 同%879
12 24 10 18 22 42 1aり6 336
99 52 41 31 140 83 86.4 664 家族従弟員
1907
775 日13
5
0447
・022 ‖3365
8
雇僻従業員
第三十一巻 第一号
哀調査紅おいても︑家族従業員の比重は卸小売の全業態を通じ
て二三・四%であり︑イギリスの七・二%︑アメリカの仙七●七
%など・にくらべると遥かに高いが︑全国的水準にくらべると低い
方でほない︒︵これは調査対象に地方の零細小売商が含まれてい
ないのも凶紅なっている︶︒前回の昭和三十年の調査結果と比
較すると家族労働者の比重は僅かに減少気味にほあるが︵前竺一
五%︶︑殆ど変化していない程度である︒更に細かくみるならば
当然のことながら︑家族従業員の比重ほ小売商に高く︑又規模
が小さい種苗い傾向を示している︒このような規模別の相異ほ前
回よりもむしろ増大気味にある︒特に小売商でも零細なる店舗は
殆ど家族従業員を中心としており︑︵七三%まで家族で占められ
ている︶雇傭従巻貝ほ補助的な役割しかあたえられておらず︑全
く生業的な家族経営であり︑そこに家族主義的な﹁温情主義﹂が
発生する最大の土壌が培われているのである︒
発±虹︑雇僻従業員の平均勤続年数に眼を転じよき︵第二表︶元
来経営規模が小さくなる程勤続年数は短くなるのが通例である︒
規模の小さい経営では︑ご暇紅いわゆる﹁賃金の支払能力﹂も弱
く︑叉労働条件も低劣でみる︒したがって勤続年数が嵩んで来て
第2表A 平均勤続年数(業態別)
卸 製 卸 小 売
43 38 54
27 2.5
3り6平 均
47
(
3.1
)
四 平 均
′ ∧ ヽ 中 小
4.9 41
29 35
第2表B平均勤続年数(規模別)
卸 製 卸 小 売
」 −
1「ミ
50 31 36 43 50 6小6
34 19 26 23 3..0 44
岡山卸′ ▲ ■
中 小男 5−8 女 29
昇給が頑打をするようにな?て限界が生じ︑やが
ては︑相対的に条件のよい安定した職を求めて去
ってゆくのが通例である︑︒調査結果によっても平
均勤続年数ほそれはど長くはなく︑男子店員四・
七年︑女子店員三・㌻年というゝ平均になってい
る︒細かく業態別にみれほ︑卸売よりもむしろ小売
の方が仙年はど長い傾向にあり︑卸売︑男四・五
年︑女二・六年に対して︑小売は︑男五・四年︑女
三・六年となっている︒叉規模別にみても︑女子
店員のぼあいは︑僅かながら規模の小さい店の方
が長い傾向を示している ︵女︑中規模二・九年︑
小規模三・五年︶︒これは前回と同じ傾向であるが
このような事実の裏には少規模少人数の店でほ縁
散採用のものが多く︑したが?てやめるばあいに
も大規模の勤務先よりもやめにくいという事情が
いわゆる﹁恩愛の絆﹂に縛られという事情が潜ん
でいるものであろう︒なお︑従業員の経験年数と
平均賃金起の関連をみれぼ︑経験年数が増加する
商業賃労働における封建性
第2表C 従業員の経験年数
2年 3年 4年 10年、20年
ヽ−11−−− 1−・ノ \−−\′−ノ i 年以人0 0 0 0 0 1 0 1 00
20上
年下人2 0 2 5 7 3 8 4 3 7
2 1 4 1
以平均賃金
3,000円以上 4,000円 5,000円 6,000円 7,000円 8,000円 ・9,000円
10,000円 11,000円 13,000円人0 0 0 0 1 1 0 1 〇一7
人011 113 19飢 14柑10
人001
1 2
人062
1 2
人1
1 1 1 7 4
5 8 7
2 3
)
四
年年年
7 5 1 1 2
ほほ ほ 年年上 10 20 以 へ 〜 年 5 1 1 1 2 〃 〃
第三十ご奄二第−骨
につれて平均賃金も増大し︑経験
年数二年位では五千円どまりの低
賃金であり︑三年勤めて約七千円﹂
一万円に達するには五年以上かか
るという実情紅ある︒その昇給率
は極めて﹁のどか﹂といわざるを
えない︒
第三に︑業主の経験年数︒業主
の経験年数をみれば凡そ店歴が競
えるわけであるが︑業主の方は店
員の経験年数とは異って︑規模の
大きい商店の方が業主の経験年数
も古いという極めて当然な傾向を
示している︒︵第三表︶・規模の大
きい商店では︑すべて五年以上の
経験年数紅なっているが︑これら
の商店の基礎は敗戦直後から昭和
二十五︑六年頃まで紅大体固めら
第3表A 経験年数(業主)(業態別)
岡山卸 卸 袈 卸 小 売
0
1 1 0
封2 7 2 3 21 20 28 8 %万 . 岡27232322308
1年以下
2 〝
3 〝
4
′′
\5年から10年 11年から20年
21年以上不 明
討
0
0 60
0
00 0 2
2
4
21 5 3
6
9 20 4
1
3 1 1 3
1 1 1
9
23 17 42 91
第3表B 経験年数イ業主)(規模別)
岡山卸 卸 製 卸 小 売 討 同 %
−■_一一___
中 小
0 3.9′−・・・・人・一−ヽ
中 小 { { ′−−・ノ・・・−ヽ r・−・人一−、
中 小 中 小 中 小 中 小
0 1 0 1 0 0 0 2−
0 0 0 6 0 1 0 7
︵四四︶ 四四
下
⁚
〝1 2 3 4 人い 0 0 0 0 1 0 0 0 0︑0 0 2 0 6 ︵U
0
「0
7 9
へJ 31
2 1 6 6 5 2
0 0 7 5 6 1
0 2 0 0 1 1
0 0 2 3 1 0
0 0 4 3 7 1
0 0 0 2 2 3
0 2
0 3 0 5 9
年 年 10 20 上 明 珍疹以
和郎年 5 11 21 不
1110 27‖5 19.6 10 10 25 19。6
15 13 37 5 25 5
4 2 10 79
1
5
0
4
3
2 9 1
1
1
6
6 1
7
1
8
れたようであり︑その後創業された店歴や経験の
浅い商店が進出することは極めて困難なようであ
る︒このこと.は︑規模の小さい商店の中には経験
年数五年以下の若い業主がかなり多く︑二割五分
までしめているが︑中規模の中には経験年数五年
以下の店が全然みられない点紅もよくあらわれて
いる︒経験年数を業態別にみると︑製造卸が案外
に短く︑続いて小売︑卸ほ最も長い︒店主の年齢
や経験年数が︑古い封建的意識の温存に関係して
いるものと考えられるが︑実証的に解明すること
は残された課題の融つである︒
次に賃金問題に進んでゆくことにしよう︒賃金
問題ほいうまでもなく賃労働関係払おいて最も重
要な問題であり︑それについては︑賃金水準︑賃
金形態など︑種々の問題が含まれているが︑先ず
賃金水準から考察してみよう︒
\
第四︑賃金水準について︒一般に香川県の所得
水準は全国的紅みて決して低い方でほない︒例え
商業賃労働における封建性
水 準(業態別)
製 卸 小 売 平 均
5,170 5,023 5,055 3,434 4,600
4.45215,792 16,969 19,982
8,923 8,918 9,102 7,519 11,659 10,548 5,598 6,170 6,253
第4表A 賃 金岡山卸 卸
4,571 5,194 5,750 4,485 26,714 22,284 9,500 9,400 12,167 10,791 7,250 6,383
第4表B 賃 金 水 準(規模別)
軍票 卸 酢;製 卸 小 売 平 均
惑こ∧㍊
岡山卸
中 小 中 小 中 小 中 小
5,000 5,318 5,040 5,300 4,963 5,500 4,885 5,323 4,429 4,550 3,800 3,167 4,687 4,438 4,664 4,090 24,02921,17319,50013,14317,50015,80022,12317,561
10,400 8,70011,417 6,78611,2815,76710,823 7,024 11,01410,680 7,717 5,80010,51714,40010,67010,390
6,867 6,0616,910 4,800 6,783 5,382 6,895 5,496 中 小
4,571 5,750
:十−
男26,710 女9,500
最 高焉(雲1…;去…言
第三十血巻 第ご号 ︵四六︶ 四六
ほ︑昭和三十年の県民山人当り平均国民所得は︑七六︑六〇〇円で︑全国平均七三︑六劇四円にくらべると四・一%
︵4︶
だけ平均を止まぁっていることになる︒ところが賃金水準についてみるならば︑香川県は平均より遥か︑に下まわり全国的紅みて低賃金の県に属しているのである︒例えば︑昭和二十九年三月の﹁毎勤統計﹂によれば︑香川県の男子
賃金水準は︑二︑二九〇円で︑全国平均融五︑八三八円にくらべると︑二九%も低いわけである︒全国的に賃金
水準の低い県から数えるならば︑鳥取︑山梨︑鹿児島︑山形︑徳島︑福井︑香川︑と最後から七番目にあたる低質
へ5︶ 金の県紅なっている︒
ところで本調査対象たる繊維卸・小売商の賃金水準について量れば︵第四表︶︑男子一〇︑五四八円で︑県平均
よりもかなり低い水準を示してい・る︒しかしながらこの男子山○︑五四八円という平均も︑店主や家族従業員の賃
金もかなり含まれているので︑純然たる雇傭労働者のみの平均賃金ほ︑これより遥かに下まわり︑〟万円を大きく
下まわることほ想像に難くない︒実態ほかなりひどい低賃金になるであろう︒これに対して女子の平均賃金ほ︑六︑
ニ五三円でますます低い水準を示している︒このような低賃金を規定しているもの︑さらにほ︑労働者の労働条件
の改善を阻み︑ひいてほ中小商業経営の合理化と労働者の自覚を阻ん・でいるもの︑その要因の一つほ︑各分野にお
いて見出される封建性にはかならないのであるが︑賃金水準紅ついては︑さしあたり男女別賃金格差紅ついてみら
︵6︶ れる︒すなわち全国的統計庭よれぼ︑卸売では男さ○に対し女四六︑小売では六二になっている︒他の産業部門︑
例えば︑石炭四〇︑紡織一元︑機械四〇︑電気四〇︑などに比較すれば︑商業部門の男女の格差は相対的に小さく
煙草製造部門を除けは︑最も賃金格差の少い部門になっている︒これは︑商業労働においてほ︑職種に男女別の相
違が余りないこ上からして当然のことである︒しかるに本調査の結果は男女切賃金格差は大きく︑男UOに対し
て女五九とハ女子賃金の指数は全国平均よりもさらに低い︒業態別にみれば︑卸売ほ全国平均指数四六に対して高
松市ほ五九で全国平均よりも高いが︑小売濾全国平均六二に対して高松市五三と大きく下まわっでいる︒このよう
に男女賃金格差が大きいことは︑この地方紅女子労働餞視の前近代的意識が強く作用しているものと考えられる︒
さら転︑業態別に平均賃金の高さをみれば︑最も高いのは岡山の卸商であり ︵調査対象が規模の大きい店に傾い
ている事情がある︶︑次いで高松市の卸︑小売とつづき︑最も低いのが製造卸となっている︒規模別にみるならば
やほり︑規模の小さい方が賃金水準も低くなっているが︑その差ほ女子賃金の規模別格差では相当的・に小さく︑男
子平均賃金格差の方が大きくなっている︒
このように男女の賃金格差が平均賃金において大きく開いてくるのほなぜであろうか︒初任給において最初から
格差が大きいのであろうか︒調査結果によって初任給をみれば︵第五表︶︑新制中学卒業程度で︑卸売でほ︑男
四︑二三八円・に対し︑女三︑八六〇円で︑その相違は僅か四百円たらず︑小売においても︑男三︑六七九円に対し
女三︑四五七円で︑その差値か二百円たらずである︒高校卒程度の初任給紅おいても︑多少男女格差が大きいが︑
それでも八百円あまりにすぎない︒その原因を他に求めるとすれば︑さしあたり・勤続年数が考えられるが︑平均勤
続年数は既紅みたように男が∵坪乃至二年長い程度軋すぎないので︑主な原因とは考えられない︒するとこのよう
に平均賃金において四千円から五千円以上の差が︑比率にして約二倍近くの相異が出ているということ峰︑結局男
女によって昇給率の相違が著るしいということ︑叉男子の年齢が高いというこ
いであろう︒
ともあれ︑初値姶正ついてみれば︑新制卒四千円︑高校卒五千円︑大学卒八千円というところであって︑一般に極
めて低い︒なかでも︑小売や製造卸が低く︑卸では僅かながら高くなっている︒規模別にみると︑平均賃金では規
磯の大きい方が高くなっていたが︑初任給では顕著な傾向はみられず︑殆ど同じ高さであった︒
︵四七︶ 四七 商業賃労働における封建性
第三十∵巻倍卿二号
中小企業労働者はかぐの如く賃金水準も初任給も
極めて低い︒その上に︑その内容︑すなわち賃金形
態紅ついてみても極めてあいまいで不安定な状態紅
あるといわなければならない︒近代的大経営になれ
ほ賃金はたとえ低水準にとどまろうとも︑一応賃金
形態は客観的な形で確立されている︒しかるに中小
商業経営では︑給与制度の規定があるものは全体で
半分余りの六山%にすぎない︵第六衷︶︒しかもこの
規定の内容たるや頗る疑問であり︑恐らくは︑明確な
昇給制度の規定をもつ経営は︑数える程しかないも
のと思われる︒このように︑給与規定が明文化され
ず︑曖昧であるという事実は︑給与決定に客観的合
理的基礎を欠ぎ︑その決定に店主の感情︑縁放その
他の慈意的情状が混入し︑そのため労働者が労働力
の販売に対する当然の権利として受取るぺき給与
に主観的なしたがって恩恵的色彩をあたえること し になる︒業態別紅は生産過程を含む製造卸がやや整
備されているようであり︑又規模の点からほ︑やはり
第5表A 初 任 給 (業態別)
岡山卸 卸
製 卸 小 売 平 均男 3,由0
4,238 3,950 3,679 3,924 女 3,700 3,860 3,409 3,457 3,550 男 4,750 5,999 4,950 5,308 5,386 女 4,786 4,769 4,000 4,520 4,542 男 7,900 7,000 8,500 7,938 女 6,500 4,650 6,800 6,256
第5表B 初 任 給 (−規模別)
岡山卸 卸
製 卸 小 売 平 均//、、 ̄へ/′ ̄ ̄■−■一へ ̄〆\/〜〈−\′′′ ̄)\ ̄、/■)、 ̄、
小 中 小 中 小 中 小 中 小
3,560 3,9674,4004,5003,1253,7733,3333,9323,912
3、700
3,4604,2603,9172,8003,5003,3893,6073,463
4,750 5,5836,・2265,6673,8755,2505,5005,2675,583 4,786 4,7504,7774,5003,5004,6944,0714,6944,324
8,0007,7507,000 ・−10,0007,0008,2007,500
−6,5005,0004,3006,6677,0006,2506,260 新制中卒(
高校卒 大学卒
一へ
四八
)
四
八
新制中卒(雲高校卒 (雲
大学卒(雲
第6表A 給与制度の確立(業態別)
卸 山 5 4 0 9 岡 討 50 32 7 91 川 じ
同 6139
2 1 10 1 23
製 卸 小 売
13 2d
3
150
6
16 40
る い 明 あ な カ カ 計 定 定
規 規 不
商業賃労働における封簸性
第6表′B 給与制度の確立(規模別)
岡山卸 卸 製 卸 小 同 %
′−」へ⊥−■ヽ
中 小 64.1 5乳1 35小9 41.9
′一−一人一一、、 ′−−・人一−ヽ
中 小 中 小
5 0 3 9 3 1 3 7 0 0 1 0 8 1 7 16
{ {. {
中 小 中 小 中 小 5 8 12 8 25 25 1 2 7 9 14 −18 0 0 0 6 1 6 6 10 19 22 40 49 規定がある
規定がない 不 明
計
規模の大きい店が少しは整っているようである︒さらに平
均賃金水準との関連でみると ︵欝六表C︶五千円以下の賃
金水準の経営では給与制度が不明瞭であり︑やは︑り賃金水
準が高い経営になると給与制度も次第転塾ってきている
ようである︒
姶考制度の規定そのものが明文化されているとしてもそ
\ の内容紅立入ってみれば︑賃金形態も本俸のみという極め
て簡単明瞭且素朴な形態が多く︑全体で四割近くまで占め
第6表C 給与規定について
平均賃金 1・明文化さ 21・明文化され れている ていい
な 3,000円以上
0件 2件4,000円 2 2
5,000円 6,000円 7,000円 8,000円 9,000円 10,000円 11,000円 13,000円
2 4 2 1 2 1 1 3
2 7 3 6 2 4 2 0
︵四九︶
四九本俸 と手 当(業態別)
灘卜 卸 小 売 討
同 %
9
16 35 385
8
20 50 549
0
6 6 6。.6
17 42 91
欝7表A卸 ﹂ 1 8 0 9 山 岡
け 当 明 卵 引
本本 不
ロ 9 4 0 3 守止 l n−
第三十二奄∴第一.号第7表B 本俸と享当(規模別)
製 卸 ′j\売 計 同 %
′一−一人一一一ヽ ′一一人一丁ヽ ′−■一人一丁ヽ /一一一〈−一一−\
中 小 中 小 中 小 中 小
2 7 511 1124 27,5 47.0
岡L嘩P 卿′一人−−−ヽ ′−−ん−−ヽ
中 小 中 小 1 0 3 6 7 1 4 10 0 0 0 0 8 1 7 16
け.当 明 卵ノ 計
本海 不
29 21 725 41.2 0 6
011‖84 0
1
6 6 3
2
4 4 0 0
9 1
1
1
6
1 5 0 4
ている︒特に比較的に給与制度が明文化されていた業態で
ある製造卸においても︑その内容は簡単で︑本俸と手当の
二つの形態に分けている店は少く︑むしろ本俸だけという
簡明型の店が多いのである︒その他の業態の給与制度の規
定内容については凡そ想像に難くない︒なおまた︑規模別
にみるとや聴り規模の小さい方に本俸だけの簡明型が多く
規模が大きくなれぼ整っていて七割までほ本俸と手当償
わけられているようである︒また賃金水準が高くなればや
第7表C 給与は本俸と手当に分
れて−屠りますか
平均賃金 本俸だけ 克驚
3,000円以上 0件 2件
4,000円
1 3
5,000円
2
26,000円
5 6
7,000円
2 3
8,000円
1 6
9,000円
0 4
10,000円 2
3
11,000円 2
1
13,00b円
1 2
/■ ̄\
五
○
\ J
五
(⊃
ほり本俸と手当がわかれて形態も整備されて.く
る傾向にある︒︵第七表C︶
では次正幸当の形態匿泳どのようなものがあ
るだろうか︒︵第八表︶ この事当の内訳は︑調
査票の記入欄に既に予想される手当の種類を列
挙していたので︑誘導的な聞き方になっている
ので必ずしも事実そのままのものとは思おれな
い︒程々な手当形態を明確軋区別して支給七て
いる店ほ少いもの■と考えられる︒ともあれ︑調
査結果紅よっても生活保証的な家族手当を設け
ている店は︑全体で僅か山割にすぎない︒手当
の中では精勤手当という形態が最も多い︵二三
・三%︶︒この精勤手当が家族手当などよりも多
いということは︑店主の個人的な判断紅よる情
実的・恩恵的な決定を行う可能性を強くしてい
るものであり︑︑ここにも前近代的な色彩をあら
わしている︑︒特に精勤手当は︑規模の大きい店
軋多い傾向紅あることほ注意をひく︒
南米賃労働における封建性
第8表A 手当 の形態(業態別)
岡山卸 卸
4
45 3
3 5
0
101 8
0
013 30
襲 卸 小 売
2 4
5
152
7
3
97
212
0
21 56
4
討 1 28 17 22 37 バ ⁚J り︼ ︑J ・バ ︑い1山 3 4 8 0 1 同 1 2 1 1 3
家族手当 精勤手当 職務手当 そ の 他 な し 無享
2 0 12
己・†
∴ト: .== 入
第8表B 手当 の形態(規模別)
岡山卸 卸 製 卸 小 √売 、計
{ ′・−−へ一・、 ′−−ノ、一ヽ √−・・人一一ヽ ′叫一・−−・ヽ
中 小 中 小 中 小 中■ 小 中 小
4 0 2 2 1 1 4 0 11L 3当1当 当 手 手手
族一勤務
家精▼職
︵五こ 五仙
同 %
′′−−−−/ヽ一一−ヽ
中 小
17.2 5−432.8 125
18.‖8 8…917 、2 19、、6
12‖5 51.8 1‖5 18R︶ ﹂3 6 ︵0 0
0 2 4 2 0
1 13 2 21 7
1 6 rl 12 ち
0 4 5 1111 4 1
3 0 0 0
4 1 3
そ の 他
0 7 5 16 8 29 1 1 0 0 1 1
0 0
1 0 4 2 2 3 1 1 0 1 0 2 0 1 1
2 1
64 56
第三十劇巻 第ご号
賃金規定もなく︑又あったとしても恩恵的色彩
が強いということは︑既に労働者に家族主義的な
傾向をあたえやすい︒さらにこの傾向紅拍車をか
けるものに︑現物給与がある︒現物給与紅は品物を
渡すばあいもあるが︑特に家族主義的色彩という
点から問題になるのは︑食事である︒調査結果に
ょれぼ︵第九表︶毎日きまって出している店が一
六%︑ときどき出している店が四八%︑あわせて
六四%までが現物給与を出していること軋なり︑
業態別では小売に食事を出している店が多い傾向
︵7︶ がみられる︒昼食時の食事を職場で用意すること
は︑中小企業のみならず近代的大企業で鳩行われ
ていることではあるが︑問題は食事の提供の仕方
にある︒本来ならば一般の勤務先以外の市中の食
堂を利用すべきところを︑会社が便宜上社内で提
供し︑費用も労働者負担ということであれば問題
はない︒しかし︑中小商店のばあいは︑はとんどが
費用も業主負担で︑いわば﹁家族主義的﹂に提供さ
第9表A 現物給与の有無(業態別)
食事などの 現物給与ほ
% . 6 8 6 0 同 1 4 3 10
引 12 36 27 16 91
岡山卸 卸 3 10 8 2 3 2
製 小 売きまって出す 2 ときどき出す 2 出しでいない 4
無 記 入 1
封
92 7 5 3 7
1
5 7 0 0 2 1 1 1 4第9表B 現物給与の有無(規模別)
卸 製 卸 小 売 討
l・−・・ん−ヽ ′−・・・・ノーーーヽ { ′−・・・・・・・▲・・−・ヽ
中 小 中 小 中 小 中 小
2 1 1 1 3 2 8 4 2 8 2 5 11 6 17 19 3 5 3 2 5 5 14 13
同 %
/一−−・一ヘーーー\
中 小
20.5 11.1 436 52巾7 35.9 36.2岡山卸
′■−ノー一ヽ
中 小 きまって出す 2 0 と.きどき出す 2 0 出して−いない 3 1
無 記 入 1 0
討 8 1
0 2 0 3 010 115
7 16 6 11 19 23 40 51 100け0 100…0
第10表A 現物給与の負担(業態別)
岡山卸 業 主 負担 3 本人 負担 0 山部づつ分担 1 な し 4
無 記 入 1
計
9卸 8 3 2 8 2 3 2 売 O 1 2 8 1 2 \ 2 1 4 ..ハ︸
商業貸労働における封建性
計 36 5 6 5 9 1 3 9
% . 同 7 1 15 1 1 5 5 7
1
第10表B 現物給与の負担(規模別)
岡山卸 卸 製 卸 小 売 計
同 %/←・・−−−〈−−−−\
中 小 82.6 70.8
8.7 12.5 8.7 16.7
′■−・・ノーーヽ
中
業主負担 本人 負担 0 0
一部づつ分掴 1 0 な し 4 0
′−・ノ・・一■ヽ {一ヽ ′−・人−−ヽ ′一一人・−−ヽ
中 小 中 小 中 小 中 小
2 6 1 4 13 7 19 17 2 1 0 1 0 1 2 3 0 2 0 1 1 1 2 4 3 5 3 2 5 13 15 20
無 記 入 0 1 0 2 2 3 0 1 2 7
計
8 1 て16 611 19 23 40 51れているわけである︒調査結果紅よれば︑食事の費
用を業主が負担する店が大半の七六・六%までも
占めている︒︵第一〇表︶本人が負担するばあいは
僅か山割︑店主が補助しているぼあいが劇割余り
あるが︑まず恩恵的な給与であると考えてよい︒
さら紅角度を変えて賃金水準との関連でみれば
︵五三︶ 五三
第10表C 現物給与を出して居りますか
′きる
どし 1 き
と出
てる つい て ⊥ 0 まレ き出
出していな
平均賃金
い3,000円以上 4,000円
O 1 0 3 0 4 1 1 2 1
3 3 8 3 3 2 1 1 1
5,000円
1
6,000円 0
7,000円 0
8,000円
1
9,000円
1
10,000円 2
11,000円 0
13,000円