一序
︵1︶ 一九四五年以降のイギリス労働党の産業政策のうち︑最も注目されたものが︑国有化であることほいうまでもな
い︒周知のごとく︑国有化は私企業︵pri志te2nt2rprise︶を公共企業体に再編することであった︒国有化を取りあ
げる立場は種々多様であろうが︑ここではイギリス労働党の国有化をイギリスにおける公共企業体との関連におい
て考察する︒しかもイギリス労働党の国有化とイギリス払おける公共企業体との結びつきを国有化軋重点をおいて
考察しようとするのではない︒︑われわれめ考察の重点ほイギリスにおける公共企業体の性格いかんにある︒イギリ
スにおける公共企業体の性格いかんについてもまた︑従来種々論議されてきた︒われわれほイギリスにおける公共
企菜体の性格いかんの問題を戦後イギリス労臥覚の国有化との関連において考察しょうとする︒これがわれわれの
課題である︒
かかるわれわれの課題にと一つて非常に示唆軋とむものに︑イギリス労働党の国有化とイギリスにおける公共企業 第二十九巻 第二号
イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化︵こ
1E︑グッドマンの公共企業体論に関する一考察王
栄 河 野 重 三八︶ 二四
体との関連を公的統制の発展において統山的に把握せんとするE︑グッドマンの著書﹃公的統制と所有に関する諸
形態﹄︵同年宅ardG00dman⁝﹃OrmSOfPub−icCO旨○−andOwners首二軍㌧L︒nd︒n・︶がある︒この著におい
て彼ほ公的所有と統制に関する諸形暦を︑それらが﹁存在して来かつ実在しているがごとく巴取り挙げ
︵d邑ingwitFfOrmSOfpub−icOWnerSFipandcOntrO−as they ha諾been and are︶︑したがって歴史的に ︵2︶
貧stOrica−︶つまり規定的であるよりも叙述的に︵descript首ratberthan pr琵riptiくe︶論じている︒彼によれ
はイギリス労働党の国有化によってもたらされた公共企業体も公的所有および統制の一形態に外ならない︒本稿で
ほ上述の課題への接近の一つの道をグッドマンの公共企業体論の考察に求めることとする︒なおここで一言してお ︵
3︶
きたいことは上掲の彼の著書は公的統制と所有に関する概括的な研究︵笥ne邑suヨey︶であり︑したがって︑彼渉︵GO責nmentinter謡nti︒n︶ないしは産業の能率性と健全性とを増進せしめるための︑政府と産業との協働 ︵ J はイギリスに履ける公共企業体論に関するいわば問題の提起を行っている紅すぎないことである︒
ところで︑グッドマンはイギリス労働党の国有化とイギリスにおける公共企業体との関連を公的統制の発展にお
いて統一的に把握せんとするのであるが︑あらかじめ用語上の誤解をさけるために︑われわれは彼のいう公的統制
の意味を明らかにしておく必要があると考える︒彼のいう公的統制とは戦時等の非常時においてなされる︑一時的
な手段としてのいわゆる﹁統制︵トざnt邑s︑J﹂でほなく︑永続的なものとして︵aspermanent︶考えられ︑かつ特定 ︵
4︶
の諸制度を通じて︵thrOughspecia=nstit象OnS︶ 行われるものである︒しかも彼は国家の干渉︵Stateinter諾n︼ti旦と公的統制との問にほ論理的な区別ほつけられないとし︑﹁統制の用語が広く産業の事柄に関する政府の干
5︶
︵c?OperatiOn︶を含めて解されるならば広大な新らしい分野が開かれる︑﹂とさえいっている︒この点から彼のいう公的﹁統制﹂が株主と企業または経営とのT関係﹂とか︑労働観合と企業または経営との﹁関係﹂とかが論ぜら
︵一三九︶ 二五
イギリスにおける公共企業体と労働覚の国有化
れる場合の︑﹁関係﹂紅類似し︑企業に対する国家﹁支配﹂に近い意味者することがわかる︒しかしコントロー
ルを﹁支配﹂とすれば後述の所有︵OWn2rSblp︶との関係でグッドマンが問讐するソプアレンデイ︵sO責eign−
喜と概念上の混乱が掌るから︑国家妻配﹂の訳語をパブリック・コントロールに←めてることほ不適当であ ろう︒したがって森でほわが国賢いてもふ般化している公益事業﹁統制﹂の用語と同様な意味を統制の語軋含 ましめ︑パブリック・コントロールを﹁公的統制﹂とした︒なぎこで公的統制が﹁特定の諸制度﹂を通じて行わ れるものである点違志すべきで誉︒グッドマンのいう﹁特定の諸制度﹂とは政雷属の行政機関と這別個の ものが考えられている︒それゆえ政府の直接統制たとえば郵政業務ほ公的統制紅含まれない︒ さて︑われわれほイギリスにおノける公共企業体の性格を掛らかならしめるための叫つの手掛りとして︑イギリス 労働党の国有化とイギリスにおける念︿企業体との関連を︑グッドマン忙したがって考察しようとするのであるが︑ この場合︑問題は次の二つ穿かれると思われる︒第血の問題はイギリス労働党がいかなる理由によって国有化を 嘉したか︑あるいほ公的統制の発展監ヾいて国有化はいか窟えられるか︑の問題である︒第二の問題ほ現在イ
ギリス蓋いて公共企菓体なる制度ほいかなるものeて原則的纂えられているか︑あるいほ公的統制の発展に
ぉいて公共企業体ほいか墓えられるか︑の問題である︒以下われわれほこれらの二つの問題につき︑漸次若干の 考察を行い︑最後芸的統制の発展纂いて︑国有化と公共企業体との関連を統蒜に把握せんとするグッドマ の芸から︑彼ほいかに国有化を批判するかについて︑すなわらイギリス労働党の国有化賢ってもたらされた公 共企業体における諸問題をグッドマンはいか灯批判しているかについて考察したい︒
︵1︶イギリス労働嘗産羞策は次の三覧別することが出来る︒すなわら靡這私企業の国有化︑讐にいわゆる従属的公
企業︵富endentcO膏ratiOn︶とよばれる心くつかの全く採穿を考えないコーポレー・誓ンの新設︑および讐荘︑中 第二十九巻 第二号 ︵⁝四〇︶ 二六
小企業対策として若干のディヴェラップメソト・カウンシル︵de象︒2mentC︒uせーs︶を設置したこと︑これである︒こ
のうちわれわれの考察の対象は国有化にょってもたらされた公共企業体︑つまり独立採算が行われる自立的な公共企業体
である︒したがっていわゆる従属的公企業ほ考察の範南外匿おかれる︒
︵2一︶ EdwardGO乱man⁚FOrmSO−P象icC邑rだanPOwners首ン野・LOndOn−﹃・Pu・
︵3︶.E◆G00dman⁚Op・Cit:P・00∽・
︵4︶ E● G00dman⁚Op●Cit: P・↑U・
︵5︶ E● G00dman⁚Op・Cit:P・β・
二 公朝統制の発展と労働党の国有化
周知のどとく︑一九四五年以降の労働党政府の国有化は︑英蘭銀行︵BankOfE邑and︶の国有化に端を発し︑
あい続いて︑主要なものを拾っても︑石炭︑運輸︑電気︑ガスおよび鉄鋼等の基礎産巣ないし公益事凛といわれる
産業分野に押し進められた︒それはグッドマンも指摘するどとく︑つの単位として︑すでに機能していた実在 ︵
1︶
の制度︵ane詠tinginstitutiOna−r2adyfunc−iOnin粥aSauni−︶﹂ を公共企業体紅再編すること︑つまり形式的にほ所有︵OWnerShip︶を国家に移転する︵−ra邑2ユことであった︒私企業を公共企巣体に再編すること︑私的所
有産米︵pri邑eOヨedind邑告を統合し︑斬らたに公的所有の企業体︵apub−ic−y︒Wnedundertaking︶を設 ︵
2︶ 立すること︑これが労働党の国有化であった︒しかしながら国有化を︑少なくともわれわれの問題とするイギリス
労働党の国有化を︑単なる所有の移転であると片ずけることは出来ない︒けだし周知のごとく︑特定の社会思想は
その実現する手段のいかんにその特質を明確に現わすからである︒イギリス労働党の国有化が私企業を公共企業体
に再編したことの意味は単なる所有の移転より似上の何らかの意味を有している︒単なる所有の移転より以上の何
︵一四こ 二七
イギリスにおける公共企巣体と労働党の国有化
二四二︶ 二八 第二十九巻 第二号
らかの意味をイギリス労働党の国有化のうちから探し出すにほ︑何よりもまず︑男働党がいかなる理由によって国
有化を押し進めたのか︑つまりイギリス労働党の国有化に関する主張を吟味しなけれほならない︒グッドマンは労
働党の国有化に関する主張をイデオロギカルな主張と経済的な主張とに分けて考察し︑いかなる主張がイデオロギ
カルなものに属し︑あるいは経済的なものに属するかをそれぞれ列挙している︒ここではグッドマンの分類せる労
働党の国有化紅関する二つの主張のそれぞれに列挙されている幾つかのも.ののうち︑彼がこれら二つの王族の第一
にそれぞれ挙げているものを考察することとしたい︒
グッドマンがイギリス労働党の国有化に関するイデオロギカルな主張として分類せるもののうち︑第山に挙げて
いるものは︑次のごとき労働党の主張である︒すなわち︑グッドマンによれは︑労働党ほ国有化によって﹁経済的
専制という閉じられたる特権を打ち開き︑富の極端なる不嘩等を取り除き︑社会的正義︵sOCiaustice︶を樹立す
︵3︶ る﹂と主張した︒戦前の公共企業体の考案者たる保守党は﹁受け容れられ︑かつ基本的にほ不変の経済体制を前提
ヽヽヽ ヽヽヽ ヽヽヽ とし︑その経済体制のなか払おいて﹁固有な弱点を是正する︑あるいほ固有な諸欠陥を補正する︑あるいは固有な
経済的諸関係を改著する手段︵me㌢︶として︵傍点は筆者︶︑﹂自らの設立せる公共企業体を考えていた︒これに
反して︑国有化によってもたらされた公共企菓体の設立者たるイギリス労働党は公共企業体を︑保守党のごとく︑
資本主義体制を前提とし︑それに固有な諸欠陥︵引経済的諸関係︶ を改善する手段として︑考えたのみでほない︒
労働党ほ﹁経済体制の変革の一手段として︑新ちしい社会秩序に向う道紅踏み入れた二歩として ︵as a meanstO
t訂tran旨rma㌢n訂that︹−IeCOnOmic⁚⁝盛名︺よySte声aStepOntherOadtOaNewSOCia−Order︶︑﹂国
︵4︶ 有化を主張したのである︒かくのどとく︑イギリス労働紫は資本主義的経済体制の変革の一手段として︑国有化を
考えていた︒その限りにおいて︑労働党の国有化に関する主張ほ社会主義理論一般に見られる主張と何ら異なるも
のではない︒けだし国有化はいやしくも社会主義を標樺する限りは︑古くから殆んどすべての社会主義者によって
経済体制の変革の一手段として︑主張されて来ており︑国有化の実現方法いかん軋よって社会主義各派を分けるこ ︵ 5︶ とさえも出来る程︑国有化論ほ社会主義理論の中核にあるからでぁる︒ただ︑ここで次の二つの点は注意されねば
ならない︒その第一は労働党が経済体制の変革の一手段としての国有化を実現す牒軋際して︑具体的には公共企業 ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ 体という既存の制度に私企業を再編することによって行っ宰﹂と︑つまり労働党は公共企業体を経済体制の変革の ヽヽヽヽヽヽ 山手段として考えたことである︒そして︑その第二ほ労働党が国有化によって社会的正義︵sOCiaごustice︶を樹立
するという場合︑具体的にはいかなるととを考えているか︑である︒グッドマンが︑公的統制の発展として国有化
を論ぜんとする意図ほまさに︑これら二つの点を歴史的につまり公的統制の発展庭おいて把握せんとするが放であ
ろうと思われる︒けだし︑周知のごとく現存の制度は過去の道産を引継ぐものであり︑現存の社会理念ほ過去より
現在にいたる思潮のなかにおいてのみ理解することが出来るからである︒
次に︑グッドマンがイギリス労働党の国有化紅関する経済的な諸理由︵ecOnOmic蒜aSOnS︶として分類したもの
のうち︑第一軋挙げているものについて述べよう︒それは次のどとき労働党の主張である︒すなわち﹁全国的広が
︵6︶ りを有する独占体は国有によって︑全国的広がりのスケールの上でのみ効果的に統制することが出来る ︵ロatiOn・
wide mOnOpO首cOu−dOn−ybeef訂cti記号cOnt邑訂d On aロatiO守Wide sca訂﹀tざOugFロatiOna︼OWner洛ip︶︒﹂
後述のどとく︑イギリスにおいて魂在︑原則的に︑公共企業体は私的利得の動機によってではなく︑公共的奉仕の
動機によって運営されるものと︑理解されており︑したがって︑﹁利潤動機を排除することのみをもってしても︑公
共企業体ほ独占的収奪の患を有する大規模私企業よりも好ましい代替︵p蒜feHab−e a−ternati諾︶﹂ である︒これが
グッドマンが労働党の国有化に関する経済的な諸理由として分類せるもののうち︑第仙に挙げているも打であって
︵山四三︶ 二九 イギリスにおける公共企兼体と労働瀧の国有化
第二十九巻第二号
︵一四四︶ 三D労働党が国有化に際して経済的理由をいくつか挙げたうち︑何よりもまず第一紅︑グッドマンの言葉をかりれは独 ︵7︶
占の成長へtb2grOWthOfmOnOpOiy︶を指摘したこととなる︒周知のごとく独占の問題は従来しばしば論議され
て来たところの︑いわゆる独占と統制の問題に関するもの︑グッドマンの表現では公的統制のための反独占諭吉e
anti・mOnOp01yargum2nニ○→pub−iccOn−rO−︶として︑従来︑論じられ来たったものである︒ここでイギリス労働
党が全国的広がりを有する独占体の統制のために国有化︑すなわち私企業を公共企業体に再編することを洩ってし た点紅注意しなけれほならない︒グッドマンが公的統制の発展として︑国有化紅よってもたらされた公共企業体の 諸問題を考察せんとす牒意図も︑まさ軋この点に発するものであろうと思われる︒後述のどとく公共企業体ほ公共 的奉仕の動機によって営まれる自立的な機関とされるが︑その場合紅おける公共企業体の公共性とかあるいは自立 性とかいわれるものも︑彼軋よれば公的統制の発展において考察される︒独占と統制の問題とイギリス労働党の社 会主義理念からする国有化の問題との橋渡しをなすものこそ︑イギリス労働党の国有化によってもたらされた公共 企巣体を︑公的統制の発展において把握せんとする立場でほないであろうか︒
さて︑イギリス労働党の国有化に関する主張をグッドマンほ上述のごとくイデオロギカルな主張と経済的な主張 と紅分けて考えているのであるが︑これらの二は実はグッドマンが序文において﹁いかなる公的統制の発展も二つ
の相関的な▼−1二万匿おいてほ知的な︵in−2=ec−uaこ他方払おいては技術的な︵−2Chnicaマ〜原因の組合せから ︵8︶
生じた﹂という場合の︑知的な原因と技術的な偏因とにそれぞれ照応する︒ここで彼のいう知的な原因とは政治思
想︵pO−itica−号−OSOp首︶や政治理念︵pO−itica=d2a︶を指す︒すなわちそれほ公的統制に潜む理念の問題紅外
ならない︒イギリス労働党の国有化に関する主張のうち︑グッドマンが分類せるイデオロギカルな主張がイギリス 労働党の政治思想たる社会主義理念より発するものであることは今更ここで改めて論ずるまでもないであろう︒彼
︵9︶ のいう技術的な原因とは直接的には生産技術盲et2CbniquesOfprOd宍tiOn︶の発展によって招来された産業の単
︵10︶ 位︵theunitOfindustry︶ の性格︑とくにその規模︵si詣 またはsca−e︶ の問題と関連を有し︑さらには特定の
技術的発展の上にたち︑経営上ならびに規模上の特性を有する産業の単位によって構成される経済構造上の問題を
いう︒すなわち彼のいう技術的な原因とは公的統制の対象に関するものである︒グッドマンが分類せるイギリス労
働党の国有化に関する経済的な主張の第一に挙げているもの︑つまり独占の問題が企業の規模の問題と関連を有す
ることは論ずる迄もなく明らかであろう︒
公的統制の対象たる産業の単位ほ生産技術の仙定度の発展をまって始めて︑公的統制が要請される程度の経済力
︵ecOnOmicfOrCeS︶を有するに至る︒生産技術の発展が未成熟な時代には企業の規模も少さく︑企業の経済力虹つ
についての理解も当然不充分である︒アダム・スミスの時代に自由放任︵−計se?faire﹀nOninterfe蒜nCe︶が主張
︵11︶ されたのほ企業の経済力についての理解が不充分であったからである︒もっとも企業の経済力が生産技術の発展に
よってのみもたらされるものでなく︑また企業の規模の増大と企地声の経済力の増大とが比例するものではないこと
ほいう迄もない︒しかし生産技術と企業の規模と企業の経済力との三者間に何らかの関連があることはこれを否定
し得ない︒少なくともイギリスにおいてほ公的統制の始源的な原因として生産技術は大きな役割を演じて来た¢生
産技術の発展紅よってもたらされた産業革命の進行につれ︑地方的な固定路線を有する独占体︵−OCa−aロd fi諾d
⊇uteれぎOnOpO−iesJ つまりガス︑水道および軌道等のいわゆる公益事業︵pub−ic uti−ities︶が発生し︑そこに初
めて︑最初の公的統制すなわち公益事業統制が現われるに至る︒生産技術の発展は企業を大規模化し︑人々の生活
を圧迫する強大な独占的経済力を企業に与えた︒十技術的な変化が経済的諸制度︵ecOnOmic institutiOnS︶紅対する
︵12︶ 公的統制の度合︵meas虻re︶を以前よりも二暦大紅することを可能かつ必要ならしめた﹂ことほ最初の公的統制以
︵仙四五︶ 三山 イギリスにおける公共企業体と労働覚の国有化
東二十九巻 第二号 四六︶ 三二
来論議されて来たが︑今日イギリスでは当然のこととされている︒ところでイギリス虹おける伝統的な政治理念ほ
有名なべンタムの語に要約されるごとく︑﹁公益︵pub︼ic interest︶ のため紅﹂政治が行われなけれぼならないこ
と︑これである︒イギリスにおいてはいかなる政党も冒覚の政策を推進する軋際して︑究極的には﹁公益のために﹂
それを行うことを主張して釆た︒公的統制も﹁公益のために﹂なされる︒生産技術の発展によってもたらされた企
業の独占的経済力が人々の生活を庄迫しているならば︑企業の独占的経済力の圧迫を緩和ないし除去し︑公益に役
立たしめるよう︑政治的に統制しなければならない︒伝統的なイギリスの政治理念からは何ら矛盾することなしに
技術的発展がもたらした企業の独占的経済力を公益転役立たしめる方向に導く方途が考えられる︒ここで企業の経
済力が生産技術の発展と密接な関連を有するとともに︑個々人の社会的経済的な立場の相遥から︑企業の経済力に
対する理解が時代を異にするにしたがって︑またある特定の時代においても個々人によって相違することが注意さ
れねばならない︒この点に関してグゝドマンは次のごとく述べている︒すなわち公益の概念ほ公的統制が行われる
ある好走の時代の支配的な政治思想盲epred牒inantp︒−itica−phi−︒S︒p冨︶に依存する︒なぜならば公的統制の
諸制度は﹁技術的発展によってもたらされたものであるのみならず︑否むしろ技術の発展がもたらした詔利益を好
ましいと考えられる諸目的の達成紅役立たしめようとする︑思考する人々の諸活動︵tFe actiOnS Of th2tFin打in内
︵13︶ peOp−e︶によってもたらされたもの﹂であるからである?公的統制の発展の考察紅際し︑知的かつ政治的な諸影沓
︵14︶ ︵t甘eiロteect缶−and苫−iticanfFen房︶を見逃がしではならない︒かくてグッドマンが何にゆえ公的統制の理
念の問題を知的な原因としてとらえ︑公的統制の対象の問題を技術的な原因としてとらえたのかが明らかであろ
う︒公的統制の対象たる産業の単位は生産技術の一定度の発展をまって初めて︑大規模化し︑公的統制が必要とさ
れる程度の強大な独占的経済力をうるに至る︒しかもある㌦つの公的統制の形態が他の脚つの公
移行する際には必ずやより高度の生産技術の発展によって結果された産業の単位の規模の増大がある︒ところが︑
自己の存続と拡大化とを本能とする企業にとってほ外的な統制は自己の成長と存続にとっての障害であるに過ぎな
い︒それほ私企業にとっても公共企業体にとっても同様である︒公的統制の理念は個々の産米の立場を表明するも
のではない︒公的統制ほ人々の思考活動から︑すなわち公益のために統制を行わんとする政治的ないし行政的な立
場から行われる︒公的統制の目的たる公益の概念は政治理念のいかんによって︑その内容を異にし︑政潜理念は決
して産業の単位の立場から導き出されるものではないヵ政治理念疫あくまでも思想的︑倫理紆︑かつイデオロギカ
ルなもの︑つまり知的なものなのである︒
周知のごとく︑イギクスにおける十九世紀は︑アダム・ス︑︑\スたよって理論づけられた経済的自由主義の理念
ヽヽ 盲2ideaO叫2COnOmicfr22dOm︶が支配していた時代であるといわれるが︑その同じ十九世紀笹公益のための政
治的規制の理念︵th2idea Of pO≡ica−r2讐︼atiOn inth2 pub−ic interest︶ つまり政治的自由主義︵pO−itica− ︵ 15︶ −ibera−ism︶が発生する︒政治的自由主義は︑−・S・ミルの主張であり︑︑︑\ルの主張が公益事菜統制の仙般的な ︵ 16︶ 理論的背景となった︒ところで政治的にほホイッグ党の政治理念である経済的自由主義から自由党の政治撃念たる
政漁的自由主義への橋渡しほ哲学的急進主義者によって行われた︒哲学的急進主義者によって﹁従来︑望ましいと
認められながらも人間の手の及ばないものと考えられて釆た諸目的を達成するための科学的思考方法﹂が導き出さ
れ︑﹁同時に産業革命の進展につれて︑技術的な発展と行政上の種々の技術の改善とが行われ︑政治貯自由主義者 ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ ︵=自由党⁝⁝筆者︶ に共同社会における個々人の福祉のための法制︵tO−egis−ate fOrthe we−fareOft訂indT
へじ︶ 51.dua=ロtbecOmmunity︶﹂を可能にした︵傍点は筆者︶︒経済的自由主義者︵ホイッグ党︶の自然法理念から哲
学的急進主義者の﹁実定法﹂理念を経て︑政治的自由主義が形成されたことほわれわれに公益事業統制が︑まずも
イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化 ︵山四七︶ 三三
第二十九巻 第二号
︵劇四八︶ 三四って︑﹁法﹂的統制として発現したことの意味を知らせる︒法的統制としての公益事業統制は闇実的にはピール条 ︵
18︶
令︵謬e−︑sfirstCOmpanieひActin−∞長の欠陥を補うものとして発生した︒ ピール条令には料金とサーヴィスの質とに関する規定を有せず︑この両者は会社相互間の競争に委ねられていた︒そのため︑鉄道︑ガスおよび水道 ヽヽヽ︑ヽヽヽ
等の事業はその技術的な特性から︑地域的な独占︵−︒Ca−m︒n︒p︒−y︶が不可避なものと考えられ︑一指して公益事業︵pub−icuti−ities︶と呼ばれることとなる︒公益事業の技術的特性から必然的に地域的な独占が要求されるこ
︵通︶
と︑しかも公益事業の提供するサーヴィスほ国民経済上︑直接的には人々の日常生活転とって︑不可欠であること︑
この二点からピール条令の欠陥を補うものとして︑サーヴィスの標準化と不当な料金からの消費者保護とに関する
公益事業統制が︑︑まずもって法的統制として現われる︒サーヴィス統制と料金統制とほ公益事業統制の二つの軸で ある︒
ところで法的統制としての公益事業統制が効果的に行われるためにほ︑必然的に﹁特定の諸制度﹂が要求される
こととなる︒イギリスにおいて公益事業統制のための制度として︑最初に現われたのほ十九世紀後半に新らしい法
︵20︶ 制的な事業形態︵anewf︒rm︒fstatut︒ryunde旨king︶として形成された代議制トラストであった︒この代議
制上ブストは最初から純粋な統制機関としてでほなく︑事業︵und2r−邑n巴 を併せ行うものとして法制的に形成
されたものであったが︑主として両大戦間に新らしいタイプの統制機関が現われた︒それは公益事業の法的統制の
欠陥を補うものとして考案された法規・監督孟編のたかの委員会︵cOmmissiOnS︶および料率裁定のために準司
法的︵quasi・judica−︶な機関として設置された料率審判所︵tribuna−s︶である︒コ︑\\ッレヨソの代表的なものは電
気委員会︵E−ectricityC︒mmissi︒nu−竺忘⊥器︶であり︑その成果が公益事業以外の産業分野︑すなわち石炭︑
砂糖および鉄鋼業にコミプジョンの形成をもたらした︒トリピふーナルは主として陸上運輸とくに鉄道業正対する
料率の審判を行うもので︑●代表的なもの紅鉄道料率裁定所︵Rai−wayRales→註u邑J夏空⊥罵︶があった︒こ
こで︑すでに山九四五年以降の労働党の国有化によってもたらされた公共企業体の前駆的形態の大部分が︑コ︑︑\ッ
ジョンまたほトリビューナルの腎機能していたこと迄志しなければならない︒たとえば全国石炭局︵蔓iO邑
C邑B︒ard in−茎1︶ほ炭鉱再編委員会︵C邑Mines Re︒rganizatiOn PmmissiOn︶を︑原棉委員会 ︵Raw
C︒tt︒n C︒mmissiOn in窪ごは︑綿工某局︵C︒t什︒n Industry由︒ard︶を︑英国電気局︵British Electricity
AuthOrityin菓00︶は電気委員会を︑そして鉄道を中心とする陸上運輸と港湾および運河とに関する殆んどすべ
ての事業を運営ないし監督する機関である英国運輸委員会︵B註shTran名Ort COmmis賢nin−冨︶ほ古くは山
八七三年の鉄道委員会︵T訂Rai−wayC眉已ssi︒nerS︶ごにさかのばり得る︑各停のトナビューナルを前駆として
いるのである︒
かくのごとく︑今世紀の初威より公益事業統制ほ法的統制から︑グッドマンのいう特定の制度を通じて行われる
ものとしての公的統制へと名実とも紅発展した︒公益事業統制のための制度として︑最も成果をあげた電気委員
会も鉄道料率裁定所む︑とも警九二〇年前後の設立である︒ところが同じ完二〇年前後払は始源的な公共企業
体たる森林委員会︵芽estryCOヨ小鼓賢nin≡豊の設立が見られ︑公的統制としての公益事業統制が着々と成
果をあげつつあった完三〇年前後にほ典型的な公共企業体たる英国放送協会︵B・B・C・in−思5と中央電気
局︵C・E∵B・in㌫嘩○とが設立されている︒公益事業と公共企業体との共存が今世紀前半のイギリス監ける公
的統制の現状であった︒したがって︑しばしば︑公益事業と公共企業体との両者の性格上の混同が行われ勝ちであ
ることをグッドマンほ指摘し︑その理由を彼ほ次のことのうちに求めている︒すなわち︑今世紀前半において保守
党や労働党が公共企業体の設立を提案したのほ﹁単なる情勢に応ずる政策として︑彼らが押し進めることに努めた
イギリスにおける公共企菜体と労働億の国有化
冴
︵一四九︶ 三五
︵一五〇︶ 三六 第二十九巻 第二号
︵21︶ 派閥的な主張の隠れミノとして﹂ にすぎないどとく見えること︑これである︒しかしながらグッドマンの分類せる
イギリス労働党の国有化に関するイデオロギカルな主張の常山に明確紅示きれるどとく︑公共企業体と公益事業と
は性格上︑全く異なるものであるといわなければならない︒このことは保守党によって︑いまだ明確に意識されて
いなかった︒保守党は公共企業体を経済体制の変革の山手段として考えていたのでほない︒労働党に\よって初めて
公共企業体は集散主義︵cO−−ectiまsm︶ の実現の手段として考えられをに至る︒公益事業統制の理念は貰い倫理的
優先︵○−d mOra−.pre訂reロCeS︶ つまり自然法理念から抜け出るものではなかった︒十九世紀における天才的な政治
家連は個々人の普︵t訂gOOdOftheindi㌢旨a−︶とほ何かに関する暗黙裡の︑かつ不問の藷判断︵impiicitand
uFquestiOned judgements︶ でもって︑何らの科学的な証明を要せずに︑彼等の良心に深く浸みこみ︑かつ彼等の
︵22︶ 骨身に感じている望ましき目的を達成するため紅︑公益事業に関する種々の統制を行った︒しかしながら今世紀初
頚より企業の典型的な性格の変化︑つまり比較的小規模な地域的独占体から全国的広がりを有する独占体への変化
が起り︑その変化ほ独占の問題をそれ迄既知とされていた事実軋よっ.てほ解き得ないものたらしめた︒企業の大規
模化が﹁過去の哲学か解明せる既知事項︵音eda什a︒fthepr︒b−emw−ic:hatphii︒S︒pすi−1umi邑es︶﹂を変化
︵23︶ せしめたのである︒このことからわれわれほ︑グッドマンが︑イギリス労働党の国有化に関する経済的な主張の第
一に何よりもまず︑﹁全国的広がりを有する独眉体は国有によって︑全国的広がりのスケールの上でのみ効果的に
統制することが出来る﹂という労働党の主張を挙げて・いる意味を知ることが出来る︒
以上︑われわれは国有化と公共企業体との関連を考察する場合に第仙に問題となるところのイギリス労働党の国
有化に関する主張をグッドマン紅したがって考察した︒彼にあっては国有化ほ公的統制の発展払おいて考えられて
いる︒﹁かくして統制︵=公的統制⁝⁝筆者︶ の諸形態の研究は政治思想と技術的銘力との感動ならびに相
勒 ︵算e actiOn and interactiOn︶ の研究となる︒十九世紀においては〟方匿おける哲学的急進主義および自由主
義と他方における地方的かつ固定路線を有する独占体︵ガス︑水道︑鉄道︶との問の相関関係が重要であり︑二十
世紀においては産業の大規模な道営︵−a蒜eSCa訂OperatiOnOfindustry︶を可能にした技術的諸力と社会主義と
︵24︶ の間の相関関係が重要となる︒﹂次紅項を改めて︑国有化と公共企菓体との関連に際して︑第二に問題となるとこ
ろの﹁イギリスにおいて公共企業体なる制度はいか凍るものとして︑現在︑原則的紅考えられているか﹂の問題を
考察することとしたい︒
人1︶ E−GOOdman∴Op.Citこ p.∽ト.
︵2︶ イギリスにおいて産業︵ind宏t罫s︶は公務︵pugcser息ces︶に対立する概念である︒産業には私的所有産業と公的所
有産業とがあり︑私的所有産共ほ私企業 ︵pri㌶te e巳erprise︶ によって構成される︒ある産米の構成に占める公共企
業体︵pub詳cOぢOrat訂こ の地位がきわめて大きいか︑その産業分野を公共企業体のみが緩う場合に︑その産英ほ公的
所有産業︵p亡b︼ic首0宅ned ind房try︶ と呼ばれる︒
なお産業と公務との概念上の区別ほイギリス匿おいてほ長い伝統を有する︒たとえば芦﹃.L.浮ecFが引用せる:LOの
管理諮問委員会九三七年︶の管理ならびに親織に関する定義紅おいてほ︑両者とも紅﹁公私酔わたるすべての︑事業
や行政やあるいほその他のサーヴィス ︵any undeMtaking Or any administratiOロOr Ot訂r serまce︶pub−ic Or pユくate︶﹂
に関するものであるとされているが︑野ecFほこの定義が ﹁産業と公務とを区別するイギリスの典型的な態度︵ti︸e
BritisF attit已eOf distin望is訂n的b2t宅2en in賢監ry anPp鼓−ic seヨ岩2︶﹂と対照的である点に興味があると述べてい
る︵E・句・﹁BrecF⁝Mana彗mentlits naど蒜a邑si登i叫icance﹀LOndOnL拐uV p・β植野郁呆教授訳pp・∽舟−∽∽・な
お植野教授は︒industry andp註lic serまce﹀Yを﹁仙般の経営と公共事業﹂と訳されている︶︒
鼠こ 一二七 イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化
第二十九巻 第二号 ︵妄二︶ 三八
︿3︶ 後述のどとくイギリスにおける始源的な公共企蒐体は完完年の森林委員会である◇だがこれほ独立採算が行われる自
立的な公共企業体ではない︒独立採算が行われる自立的な公共企菜体として最も代表的な︑完四五年以前のイギリスに
ぉけるものは中央電気局︵C・E・B・こ§・ト∽金︑英国放送協会︵B・溺√C・L瞥⊥およびロンドン旅客道的局︵L.P.
T・B・L8u・−監り︶ の三である︒
︵4︶ E・G00dman⁚Op.Citこp.や00∽・設.
︵5﹀ その⊥例として︑われわれはフランスの社会主義運動におけるブルース派とグード派との論争をあげることが出来る︒す
なわち︑かってPa已BrOuSのeが藁合財産と公営︵LaPrOpri監邑ectl諾et訂Serri詔00pub冴︶﹄を著わし︑国
有化を主張した時︑JulesGue乳eほマルキンズムの立場からブルースの国有化論に激しい批判を行った︒
︵6︶ グッドマンほ﹁全国的広がりを有する独占体﹂につき次のどとく説明している︑︵E・G00dman⁚Op・Ci−・﹀p・m実 ﹁もち
ろん言其の厳密な億味紅おける全国的広がりを看する独占体ほはとんど摸し出し得ないであろうが︑論争転よって︑厳密
な意味における独占に対してのみでなく︑完全競争の嘩なる欠如に対しても︑全国的広がりを有する独占体の用語が使わ
れるようになって来た︒﹂
︵フ︶ E・G00dman⁚Op.Cit.も.mの小
︵8︶ E●G00d巨an⁚Op.Cit.も.トN.
︵9︶ ここでいう﹁.生産疲術﹂には現場における工学的な技術のみでなく︑また管理の技桶をも含まれる︒
︿望 グッドマンが企業︵2已2rpris2︶といわずに﹁産巣の単億﹂といい︑また﹁経済的諸制度︵2COn◇m叶cinstit露OHIS︶﹂とい
ぅのほ︑後述のどとくに公共企業体はコーポレーションであって︑エソタブライズでほないからである︒
︵11︶ 因︐GOOPman∵Op︸Cit.も.−り.
︵12︶ E・G00dman⁚Op.Citこp.ロ.
︵13︶ やG00dman⁚Op・Cit⁚p・﹇・
︵14︶ E・GOOdman⁚Op・Cit・︼ p・∽・
︵⊥5︶ E・G00dman⁚Op・Cit: p・ト∽・
︵迅︶ E・GO邑man⁚Op・Cit﹀ p・N心・
︵⊥7︶ E・G00dman⁚Op・C芦︶ p・−の・
︵⊥8︶ E・G00dman⁚Op・Cit・も・Nu・
︵望 E.G00dman⁚Op−Cit・も●田ここでグッドアンは鉄道︑ガス︑水道︑電気等の事共が︑︒indispensab牢かつ︒ロeCeSSar専
m︒n︒p阜であるがゆえに公益事業とよほれる陀至っ
の語ほイタリック体で衷現されている︒ ヽヽヽヽヽヽヽ なお︑われわれは公益事業なる概念は何よりもまず統制形態としての概念であり︑しかも今日公益事業として﹁一括されて
ヽヽヽヽヽ いる事業は技術的特性から︑公益事業と呼ばれるに至ったことに注意しなければならない︒したがって︑たとえば鉄道業
の発生ほ公益事業の発生を意味せず︑公益事業の消滅は鉄道事業の消滅を意味しない︒
︵空 E・G︒Odman⁚︒p・Cit・壱野なお︑ここではとくにMers2yD︒CkandHarb︒彗官ardinト∞∽りをさす︒MerseyDOCk
and HarbOur汐ardの詳細についてほ山城茸教授著﹁公企業︵改訂新版︶﹂︵昭和三十年春秋社刊︶巨U∽−¢頁参照
︵21︶ E◆G00dman⁚Op・Cit・ら・卜∞小
︵22︶ E・G00dman⁚Op・Cit・も・卜の・
︵23︶ E・G00dman⁚Op・Cit:p・トN・
︵24︶ E・G00dman⁚Op■Cit・﹀p・トN・
われわれほイギリスにおける公的統制形態の発展の理解に重要な年代を知っておかなければならない︒ここでは公的統制
五三︶ 三九 イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化
第二十九巻 第二号
の発展に関する︑きわめて概略な年代のみをあげておこう︒
一七七六 − A・SmitF国富論︵the idea OfecOnOmic freedOm︶
劇八四四−−ピール条令︵株式会社の法的基盤︶
一八四八!J・S・Mi−−経済学原理︵叶訂id2aOfpO宗calreg已atiOninthepub詳inte︐1邑︶
一九〇九 − ロンドン港務局︵代議制トラストの典型︶の創立
一九一九 − FOreStryCOmmiss−On︵始源的な公共企業体︶の設立
一九鵬九−E訂ctr−CityCOmmlSSiOnerS︵代表的な公益事業俄制制度︶の設置
山九二T卜占aiぎay評tesTribun巴︵代表的な公益事業統制制度︶の設置
山九二七!BBCおよびCEBの設立︵典型的な公共企業体︶
一九四六1英蘭銀行の国有化︵岩atiOnalizatiOn︶
右にあげた年代表から理念が制度化されるには時を要し︑︑その制度が効果をあげるには更により多くの暗が必空であるこ
とが知られよう︒そして同時にある理念に導かれる制度が着々と成果をあげつつある時︑すでにして他の琴念に導かれる制
度の嬰牙が見えることも知られよう︒ここでほ技術的発展の年代とイギリス︑における政覚め盛衰についての年代が書き込ま
れていない︒技術的発展と政覚の盛衰とが右の年代と照合される時︑われわれは特定の制度の発展に関して︑きわめて示唆
に富む暗示が与えられるであろう︒特定の制度を特定の時代札止めて理解する時︑まさに予属そのものの凝結であるかに見
える︒しかしながら︑制度それ自体ほ自らの法則に導かれて成長し発展する︒制庶に潜む発展の法則を見出すことほ文字通
り現代の最も重要な課題の劇つである︒
三 公的統制の発展と公共企業体 ︵二五四︶ 四〇
グッドマンによれほイギリスにおい・て︑すでに原理的に ︵inprincip互受け容れられている公共企業体の理念
へ1︶ は次のごとくであるという︒すなわち︑
︵⊥︶ 公共企業体は公共的機関︵ap廷icb︒dy︶でなければならない︒すなわら︑公共企米体のボードとスタッフは私的利得
︵pきategain︶の動機によってでなく︑公共的奉仕の動機︵mOti諾SOfpubl訂のerくice︶によって活動する︒
︵2︶ 公共企業体ほ自立的機関官1ndepend2ntbOdy︶でなければならない︒すなわら︑それは時の政府︵GO義臣entOf
tbeday︶に︑またほ政府部局︵StateDepartment︶に︑または︑その資本は事業︵⁝乙erta打ing︶に関する投票権ない
し所有権を行使しないから︑特定の株主集団︵pa邑culargrOupOf各a蒜邑紆rs︶に︑拘束されない︒
︵3︶ 公共企業体は機能的構成体︵=unc−iOna寺cOnS−i−ut2dbOdy︶でなけれはならない︒すなわち︑それは︑その設立法令
に規定されている︑明確に限定され︑かつ特定の枠内の︑遂行すべき仕事︵wOh打tOpe且Orm︶を有し︑そして政治的な
配慮や行政官としての資格からでほなく︑特定の能力︵specificc︒mpete−諾︶を有するがゆえに撰ばれたスタッフによっ
て構成されるボードを紹つ︒
︵4︶ 最後に︑公共企業体ほ政党のかけひきから独立の機関︵ab︒dyindependent︒;︒−it訝︶でなければならない︒しかしそ
れほ議会に対する︑かつ特定の大臣に対する︑仮に認められた相互的常任の関係︵gene邑−y rec︒Znize−邑ati︒nSbip
Of m已仁a−H・eSpOn巴bi≡y︶ を有している︒
右のうち第﹂は︑公共企業体︑つまりパブリック・コーポレーンヨソという場合のパブリックの意味をいうこと
ほ明らかである︒寛土は所有関係担もとずく支配に対しての自立を︑第四は公共企業体というものは議会における
政治的な粉争や政府の行政上の政策から影響を受けてはならないことを述べている︒ここで苫しておきたいこと
は︑第四において︑公共企業体の責任に及んでいることである︒このことほ劃般紅白立とほ必ず責任を随伴するも
︵山五五︶ 四山 イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化
第二十九巻 第二号 ︵山五六︶ 四二 へ︑こ のであることを示している︒この第二および第四を綜指して︑あるいは財政および行政よりの自立ないし白主とい ︵ 3︶ ぅことも出来よう︒ただし単なる言葉だけでなく具体的な制度に自立ないし自主の実体がなければならない︒ここ
において右のうちの第三が重要となる︒第三ほ公共企業体が機能的構成体であること︑すなわち公共企業体の遂行
すべき仕事と︑その仕事の遂行に責任あるボードな構成するスタッフの性格とに関するものである︒公共企業体の
職能︵functiOn︶がいかにして法的に規定されるか︑そこに公共企業体の日立ないし自主の実体の制約がある︒かく
して︑われわれほ公共企業体の原理的理念としてグッドマンが定義せるものの第二以下のものが︑公共企業体の︑
いわゆる自立ないし自主的な性格に関するものであることを知りうる︒しかしながら︑ここで次の点に注意しなけ
ればならない︒すなわち公共企業体の自立に関して問題となるところの三つの基本的な関係︑つまり所有と支配と
の関係︑法的制約と職能との関係および政治的申立と責任との関係が︑実ほ麓の公共性の問題と表宴二体をなし
ていること︑これである︒以下われわれほ戦後労働党の国有化によってもたらされた公共企業体の﹁公共性﹂が公
的統制の発展紅おいて︑いかに考えられるかの問題から︑漸次若干の考察を加えることとしたい︒
公共企巣体の原理的理念に関する常山の定義においては︑公共的奉仕の動磯が私的利得の動機と区別されている
ここでいう私的利得の動機とは︑グッドマンが﹁利潤動槻を排除することのみをもってしても︑公共企業体は独占
的な収奪の悪を有する大規模私企兼よりも好ましい代替である﹂という労働党の主張を結構する場合における﹁利
潤動機﹂と同じものであることは明白である︒このことから私的利得の動機がいわゆる資本主義的企業の基本原則
たる営利主義︵cOmmerCia−ism︶にもとずくものであることが知られよう︒ところセ公共的奉仕の動機は営利主義
と全く相容れないものであろうか︒ここではイギリスにおける公共企巣体︑それもイギリス労働党の国有化によっ
てもたらされたものに限定して︑﹁公共性﹂と﹁営利性﹂との′関連を考えて見たい︒
前項において︑われわれはグッドマンにしたがって公的統制の発展において︑イギり/ス労働党の国有化がいか匠
考えられるかを見て来た︒公益事業統制は公益︵p各−icinterest︶のため紅︑つまり﹁共同社会における個々人の
福祉︵thewe−fare針t訂indi邑ualintFecOmmunity︶﹂のために︑行われる︒パプリック・ユタィリグ・イのパ
ブリックの意味は﹁共同社会における個々人の福祉﹂である︒﹁共同社会における個々人の福祉﹂はまた﹁共通の普
︵cOmmOn的00d︶﹂の語で表現される︒﹁共通の啓﹂ほ﹁個々人の善︵t訂g00d Of indiまd巨−︶に相応ずる概念
である︒公益事業統制においてはレッセ・フェィルの場合と異なり︑統制が行われるけれども︑あくまでもそれは
﹁個々人の善﹂を前提として行われる︒公益事業統制はあくまでも個々人︵indiまdua〇聖里点をおいて行われた︒
始源的な公共企業体つまり一九⊥九年の森肝要員会が公益事業統制のための制度たる︑代議制トラストの成果によ
って着想されたこと︑およびコ︑︑\ッジョンやトリビふーナルが戦後労働党の国有化粧よってもたらされた公共企業
体の前駆をなしたこと︑の二点から公共企業体つまりパブリック・コーポレーションの﹁パブり/ック﹂がパブリッ
ク・ユテイクティズの﹁パブリック﹂と類似する意味に用いられていることほ︑推察するに難くない︒このことほ
労働党が国有化の目的を﹁社会的正義︵sOCiaustice︶﹂ の樹立にあるという場合匿おける﹁社会的正義﹂ の意味を
考察することによって︑より層明らかとなる︒社会的正義とほ︑次のグッドマンの論述から︑イギリスにおいて
ほ柵般に︑﹁個々人の正義︵indiまduaustice︶ に相応する概念であることが知られよう︒︑すなわちグッドマンほ
公的統制の分野に関する今日の課題は﹁個々人の正義と社会的正義という二つの現代の考えを合する方向に向う何
らかの道︵sOme WaytOWa昆meeting cOntempOrary COnCeptiOnS Of indiまdua1.and琶Ciaごu註ce︶﹂ を見出す
︵4︶ にあるといい︑別の個所で﹁個々人の正義﹂を﹁個々人の自由︵indiまd岳︼freedOm︶﹂ の語で表現している︒労働
党が主乗せる﹁斬らしい社会秩序﹂ほこのグッドマンの論述に見られるごとき︑﹁個々人の正義と社会的正義上い
︵一五七︶ 四三 イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化
第二十九巻 第二号
二五入︶ 四四ぅ二つの現代の考えを合する方向にむかう何らかの道﹂を進むときに達成されうるものであろう︒したがってイギ
リス労働党の国有化は﹁個々人の正義﹂を︑つまり﹁個々人の自由﹂を否定するものではない︒否むしろ︑あくま
でも個々人の正義を尊重せんがために︑国有化が行われた︒かくして︑われわれほ公的統制の発展において公共企
米体の﹁パブり/ック﹂の語が︑﹁共通の善﹂からの発展としての﹁社会的正義﹂の意味を有することを知る︒﹁共
通の普﹂紅対応する概念が﹁個々人の善﹂であり︑﹁社会的正義﹂紅相応ずる概念が﹁個々人の正義﹂であるとす
れば︑公共的奉仕の動機の概念が利潤動機の概念の発展においてのみ︑正しくとらえうることが知られよう︒
公益事業においてほ営利が否定されなかった︒公益事業統制は企業の営利が﹁共通の書﹂と相反する限りにおい
てのみ行われた︒個の薯ほ企業紅とっては営利に外ならない︒けだし企柴が無限の経済的発展のなかにおいて存続
しなければならないとすれば企業ほ営利主義に立脚せざるを得ないからである︒公共企巣体に・おいても︑公共企業
佐の存続が否定されない限り︑営利主義は排除されない︒私的利得の動機つまり利潤動概の排除ほ決して営利主義
の排除とはならない︒公共企業体における﹁公共的奉仕の動機﹂つまりパブり/ックの意味が﹁自己のために加入に
奉仕すること﹂と解されるときはじめて︑個の立場を尊重するイギリスの伝統と矛盾しないこととなる︒さきにわ
れゎれは公共企業体の自立ないし自主的な性格が公共企業体の﹁公共性﹂と表装の関係にあることを指摘した︒公
女性が偶の立場を尊重するものであるとすれば︑それは個の自立を認めるものでなければならない︒従属的公企業
︵dep2nd邑cOrpOratiOn︶はともかくとして︑少なくとも労働党の国有化紅よってもたらされた公共企米体が自立
的な機関とされる限りにおいて︑営利の否定に個の正義ほあり得ないと一いわぎるを得ない︒以上われわれが述べ来
たったことは従来︑計数的に公共企業体の独立採算︵s2−f・financing︶の問題として論じられて来た︒そして︑その
場合︑あるいほ原価補償主義が主張される︒とこでほこの問題虹立入ることが出来ないが︑独立採算の目的が公共
︵5︶ 企業体の自立にあるとすれば﹁いかなる原価を補償すべきか﹂の問題の鍵は容易に見出されよう?ともか.く︑公共
企業体における﹁公共的奉仕の動機﹂が決して営利主義を排除するものではないことは︑明らかであろう︒ただ︑ ヽヽ ここで次の点ほ注意されねばならない︒それは私的利得の動機から公共的奉仕の動機への発展であり︑共通の蕃あ
ヽヽ るいほ個々人の善から社会的正義あるいは個々人の正義への発展である︒公共企巣体ほ依然として営利主義に立脚
するものでほあるが︑この場合の営利主義ほ何よりも・﹁存続﹂とか﹁成長﹂とかの音味を有する︒したがって公益
事業から公共企巣体への発展には重要な意味がある︒公益事業の大部分は私企業つまりプライヴエイト︒エソタブ
ライズであったが︑国有化産業において軋公共企実体つ.まりパブリック・コーポレーションのみが存在する︒たと
えば電気事業において国有化以前ほ私有の電気会社と地方公営の電気局︵−○邑autFOrity︶とがあったが国有化後
払おいては公共企業体たる英国電気局︵B.E一A.︶ のみが存在する︒われわれは実体の発展に盲目であってはなら
ない︒
次紅︑公共企業体の白﹂且ないし自主的な性格が公的統制の発展において︑いか紅考えられるかにつき若干の考察
を加えたい︒第一次大戦後のイギリス軋おいて︑再来︑国有︵State・〇Wned︶ にさるべき産業にもっともよく適合
する統制形態ほ何かにつき論議された︒当時︑ハルデーン委員会︵Ha−danecOmmittee︶の報告にみられるよう
自主的な公共的機関 ︵autOnOヨOuS pub詳bOdy︶ の設置ではなくして︑直接的な政府部局による統制 ︵direct
︵6︶ departmen︷a−cOntr01︶ が望ましいとする主張が強かった︒ところがアックランド委員会 ︵Ac−and COmmittee On
FOreStry︶ ほ﹁特殊な種類の経済的活動︵森林︶ においてほ政治的圧迫︵pO−itica−pressures︶によって危険に陥入
︵7︶ る可能性が特に明白である﹂から︑森林事業に対する統制は自立機関︵independentbOdy︶ によるべきことを提案
した︒アックランド委員会の提案軋よって設立された最初の公共企業体つまり仙九山九年の森林委員会は議会にお
五九︶ 四五 イギリスにおける公共企業体と労働党の国有化
第二十九巻 第一亨
︵二ハ○︶ 四六ける財政決議軋左右され︑結局︑極力回避せんとした政治的圧迫を受ける堅実た︒だがしかし︑アックランド委 員会の精神ほ山九二七年に設立された英国放送協会と中央電気局とに引継がれる◇放送事業に関するクロワフォー
ド委員会︵TheCrawfOrdCOmmi−1eOn野OadcasIinginl琵︶も︑中央電気局の設立を提案したウェイア委員会
︵8︶ ︵W2irCOmmitteein−琵︶も︑ともに﹁自立的な︵蜜d2p2ndentJ﹂機関の設置を要求した︒イギリスにおい
て今日︑英国放送協会と中央箇気局とほ今次大戦後の労働党の国有化によってもたらされた公共企業体の最も純粋 ︵9︶
な原型︵mOStg2nuin2prOtOtypeS︶と考えられている︒公共企業体の自主︵au−OnOmy︶ほ山九三三年軋ロンドン
疲容運輸局︵L・P・T・B・︶蔓準1蚕3が設立されるにおよび︑最高度紅蓮した︒英国放送協会︑中央電気局およ
びロンドン旅客運輸局の三者は山九四五年以前における︑独立採算が行われる自立的なしかも責任ある官庁に対し てユニークな関係を有する︑代表的な公共企業体である︒ととろで山九四五年以降の国有化によってもたらされた 公共企菜体が︑なにゆえに独立採算が行われる自立的な機関とされたかは︑上述の三の代表的な公共企柴体の存 在を知ることのみでほ充分でほない︒われわれほさらに公益事業統制のための諸制度が国有化によってもたらされ
た公共企業体の前駆をなしていたことに注意しなければならない︒グッドマンが公的統制の発展において国有化を +
考え︑国有化によってもたらされた公共企業体を考えんとする意図もまさ瞥﹂こ紅ある︒ここでほコミッションの 代表的なものとしての電気委員会とトリビぷーナルの代表的なものとしての鉄道料率裁定所と紅つき︑いかにして 山九四五年以降の国有化が自立的な公共企業体を生むに至ったかに関して若干の考察を加えることとする︒
電儀委員会は電気委員︵E−ect註tyC︒mmissi︒ne誘︶によって構成され︑政府の部局でも独立の事業体︵inde︼
penden;Omm2rCia−BOard︶でもなかった︒ウィリアムソン報雀︵Wiご1amsOnRep旦は電気委員会運営の精神
を発送電撃業の助成にあるとしている︒グッドマンによれば電気委員連はま&にこの精神で仕事をなし︑電気誉貝
会の功績は記念すべきもの ︵mOnumental︶ であった︑という︒すなわち電気委員達は彼らの ﹁技術的な知識
︵technica−knO已edge︶でもって︑辛抱づよく個々の電気会社および個々の電気局︵indi5.dua−cOmpanies and
authOrities︶ の種々の困難の解決に当り︑それ軋よって彼らほ発電事業の全分野に測り得ざる爵献をなしたとい
︵⊥0︶ ㌢︑信望と権威︵an inf−uence賀d authOrity︶とを獲得した︒﹂電気委員会の功繚は中央電気局二九二六年電気
法改正︶を生み︑山九四八年の電某国有化に際し︑︶電気委員会と中央電気局とは英国電気局の中核となる︒鉄道料
率裁定所は電気委員会が助成をなすのと全て対照的に膚判︵judgement︶ をその機能としていた︒一九二山年の鉄
道法ほ資本過剰に悩んでいた官有余の会社を四つの幹線会社紅統合した︒鉄道料率裁定所の職責ほこれら四つの新
会社に︑標準収益をあげうるがごとき料率︵ratesOfcharges︶を適用することであった︒しかしながら二九二山
年の鉄道法による合併ほ対等合併のため︑新会社の資本は依然として水増しの状態紅あり︑しかも当時道路運送の
発展ほめざましぺこの二つの原因から︑車実上︑これら四つの新会社は標準収益をあげ得たことはなかった︒か
かる不健全な経済的基礎の上空止ってい中にも拘らず︑鉄道料率裁定所ほ有効かつ慎重な機関︵an宜ficien−a㌢d
cOロSideratebOdy︶であったと︑グッドマンほい㌢︒・すなわち鉄道料率裁定所は﹁電気委員会と同様虹監督してい
る産業に関する無類の技純的知識︵anunri孟2dtecFnic巴knOW−2dge︶を獲得し︑その知識を応用して︑一九二 ︵ 11︶ 山年の鉄道法における堅苦しい条項からほ心にも描かれなかった弾力的な料率を適用﹂し︑公益事業統制の効果を
あげた︒英国運輸委員会を生んだ山九四八年の運輸業国有化は鉄道料率裁定所のきずきあげた基礎の上に︑ロンド
ン旅客運輸局と上述の四つの鉄道会社との統合を中心として行われる︒ここで︑グッドマンがなにゆえに電気委員
会と鉄道料率裁定所とが大きな功績をあげ得たかについて述べる場合︑彼が両者ともに産業に関する﹁技術的な知
識﹂でもって竃業あるいほ鉄道業の諸困難の解決に当ったこ七を指摘している点紅注意しなければならない︒産業
二六こ 四七 イギリスにおける公共企芙体と労働常の国有化
第二十九巻 第二号 六二︶ 四八
の問題は産業の技摘的特性を明確に認識しなければとうてい解決出来ない︒産業の技術的特性を重視するならば公
共企業体は自立的機関でなければならない︒何故ならばモリソソも指摘せるごとく﹁公務員ほ経営管理 ︵busiロeSS
management︶に適せず︑﹂政府の直接統制は﹁政治機構という堪え切れぬ過重﹂ によって︑非能率的になり易ぐ︑
︵12︶ また政府の直接統制による場合には︑産業が﹁望ましからざる政治的影響﹂を受け易いからである︒前述せるどと
く︑アックランド委員会も﹁経済的活動においては政治棺圧迫によって危険に陥いる可能性﹂が大きいことを指摘
した︒かくして山九四五年以降の労働党の国有化によってもセらされた公共企某体がなにゆえに自立的な機関とさ
れたかは明らかであろう︒﹁国有化された石炭︑電気およびガス産業の類型︵pattern︶ほ燃料動力大臣のもと払お
いて︑すでに実在︵a−ready in being︶していた︒末東の英国運輸委員会は運輸大臣のもと払おいて︑すでに動き
つつある実体︵a−ready an Operatin的entity︶ であった︒社会主義の機構を樹立するには関連せる会社および地方
︵13︶ 局の事実上の所有︵actua−OWnerShip︶ を国家に移転 ︵transfer︶することのみが残っていた︒﹂公的統制のための
制度それ自体の発展を基盤として一九四五年以降の国有化が基幹産業およびいわゆる公益事業と呼ばれる産業分野
紅押し進められる︒かくしてわれわれは次のようにいうことが出来る︒すなわち︑英国放送協会︑中央電気局およ
びロンドン旅客運輸局という最も典型的な公共企業体の存在と︑電気委員会や鉄道料率裁定所等の成果とほ︑山九
四五年以降の国有化によっても凍らされるものが自立的な機関であることを当然のこととした︑と︒国有化によっ
てもたらされた公共企業体の自立的な性格ほ公的統制の発展において正しく把握することが出来る︒けだし国有化
軋よってもたちされた公共企業体は公的統制の発展払おける融つの︑形態に外な・らないからである︒
しかしながら公共企業体の自立に関して問題となるところの三つの基本的な関係︑つまり所有と支配との関係∵
法制的制約と職能との関係および政治的中立と責任との関係が個々の公共企業体軋とって︑具体的にどのようにな
っているかは︑公共企業体の白立的な性格が山般的に公的凝制の発展において宜しく把握しうるというのみであっ
ては︑明らかでない︒われわれはより進んで︑個々の公共企業体のそれぞれについて︑個別的に︑その成立の背費
や上述の三つの基本的な関係のそれぞれについて︑歴史的に︑とくにイギリスにおける公的統制の発展と照し合せ
て︑考察しなければならない︒個別的かつ歴史的な研究の裏付けなくして社会的な制度としての公共企業体の性格
いかんを見究めることほ出来ないからであ克︒このことは公共企菓体の公共性打ついても同様であるといえる︒前
述のごとく︑公共企業体の公共性つまり公共的奉仕の動機は営利主義と何ら矛盾するものではなかった︒しかし潅
がら︑そこでほ私的利得の動機から公共的奉仕の動機への発展が何ら説明されなかった︒この発展の説明は個別的
かつ歴史的な研究の後に改めて論じられるべきものであるご刑述の公共企業体の原理的理念として︑グッドマンが
挙げたところいの四つの定義から︑個別的な研究の焦点が公共企業体欄ボードの性格とその構成いかん紅向けられる
べきであることが知られよう︒ある特定の公共企業体の性格︑より劇般的にはある特定の社会的な制度の性格ほそ
の最高機関の性格とその機構とに最も明瞭に現われるということが出来るからである︒グッドマンの著作にあって
︵14︶ も主たる公共企業休のボードの構成とその機構とについて論じている︒本項においてほ個別的な研究紅進むことが
出来ないが︑イギリスにおける今日の公共企巣体︑つまり国有化によってもたらされた公共企業体のボードに︑性
格上ならび軋構成上︑類似するところの︑十九世紀後半軋現われた代議制トラスト粧つき三ロしておきたい︒代議
︵15︶ 制トラス寸は二名バブリソク・トラスト︵pub−ictrust︶とも呼ばれるごとく︑公共的性格を具備せるものであった︒
︵16︶ 代議制トラストは ﹁そのサーヴィスを利害が ︵実際上ほともかく︶並行しまたは同祝しうる受益人﹂・紅対して︑
行うものであった︒代議制トラスト︑とくにその代表的なものと考えられる帝都水道局︵MetrOpO≡an Water
BOard in−筈豊およびロンドン港務局︵POrt OfLOndOn AuthOrityin−箸3 のボードの構成は︑一九四五年以
︵二ハ三︶ 四九 イギリスにおける公共企菜体七労働覚の国有化
︵二ハ四︶ 五〇 第二十九巻 第二号
︵ロ︶
以上︑われわれはグッドマンにしたがって︑公的統制の発展において︑イギリス労働党の国有化を考え︑国有化
︵18︶
︵1︶ 句︸G00dman⁚Op.Cit: p◆p.余−余・
︵2︶ 山城教授は経営体の自主を主張される場合に経営体の責任に及んで説かれる︒山城章著﹁経営政策︵最高経営政策論︶﹂昭
和二十九年白桃書房刊参照
︵3︶ 山城教授は﹁政治・行政と経営の分離﹂︵山城茸著﹁公企業.︵改訂新版︶﹂昭和三十年春秋社刊一八〇貢︶またほ﹁財政・
行政と経営の分離﹂ ︵山城童著﹁経営学の学び方﹂昭和二十九年白桃書房刊三九頁︶の語で︑教授の﹁公企業の自主化﹂
あるいほ﹁公私企業接近の原則﹂を説明される︒
︵4︶ E◆G00dman⁚Op Cit:p.−○∽.
︵5︶ わが国においても︑イギリスの公共企業体における独立採算の問題につき論じている数多くの著作および論文がある︒最
近のものとしては西川義朗教授稿﹁公共企業における原価補償主義﹂ビジネス・レビュー二巻四号がある︒
︵6︶ E・●GOOdman⁚Op● Cit: p◆占.
︵7︶ E・G00dman⁚Op●Cit: p.芦.
︵8︶ E●GOOβman⁚Op︐Cit●こγp.会・怠.