イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果
(一)
著者名(日)
宮木 康博
雑誌名
東洋法学
巻
51
号
1
ページ
25-68
発行年
2007-10-15
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000625/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaイギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果O
宮
木
康
博
東洋法学
1 一アスト購入 2 スティング捜査 3 天からのマナ捜査 4 私人による罠 1 甲<.留轟事件判決以前の展開 2 罰<。留轟事件判決以降の展開 3 塑<.88巴身事件判決 ほ の ぎ のな おわりに 一一一 ︵ 2 ー 判例の展開と立法等の対応 ラ が となる な一一一駅め鉾霧展開
四 五 ︵以上本・写︶ 25はじめに
26 イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果8
はじめに
わが国のおとり捜査は、第二次世界大戦の終結後間もなく、占領軍の要請の下、麻薬事犯の取締りが徹底され ︵−︶ た際に実施された。その後、対象犯罪は覚せい剤やあへん等の薬物事犯、銃器事犯にも拡大していった。おとり ︵2︶ 捜査の積極的な実施にともない、一九五〇年代は、公判においてその適法性が再三争われ、一九五三年には、リ ︵3︶ iディングケースとされる最高裁決定が出された。一九六〇年代に入ると、必要性に支えられるおとり捜査は、 薬物事犯の沈静化にともなって議論されることが少なくなっていったが、一九七〇年代に入ると、再び注目を集 めることになる。第二次覚せい剤濫用期である。実態調査がないため正確な数値は明らかではないが、現にこの ︵4︶ 時期、覚せい剤事犯に対して、おとり捜査が多用されたようである。一九八○年代後半に入ると、経済活動のグ ローバル化や交通機関・情報伝達手段の発達にともない、薬物事犯や銃器事犯が組織犯罪性を帯び、以前にも増 して捜査に困難が生じるようになった。また、一九九〇年代に入ると、犯罪の国際化にともなって国際犯罪組織 による犯罪への対応も必要とされるようになった。さらに、二〇〇〇年に入ると、第三次覚せい剤濫用期とな り、おとり捜査の積極的導入が検討されるとともに、国際犯罪組織の社会・経済に及ぼす影響の深刻化から国際 会議のレベルでも緊要の課題となるなど、議論が本格化していった。二〇〇四年四月からは組織犯罪対策に関す る企画立案機能などの強化のため、警察庁刑事局に組織犯罪対策部が設置され、全国の都道府県警察でも、一〇 月に警察庁が策定した﹁組織犯罪対策要綱﹂に基づいて組織犯罪対策に有効な捜査手法の積極的な活用を推進し東洋法学
︵5︶ ている。こうした中、同年七月一二日に最高裁判所がおとり捜査の訴訟法的な許容性についての初判断を示し、 ︵6︶ これに対する評釈が多数出されるなど、今日、法的論議が再び活発化している。 では、これまで、わが国のおとり捜査は、判例上、どのように処理されてきたのだろうか。リーディングケー スとされてきた最高裁昭和二八年三月五日決定は、﹁犯罪実行者の犯罪構成要件該当性又は責任性若しくは違法 性を阻却し又は公訴提起の手続規定に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものとすることのできないこと多言 を要しない﹂とした。すなわち、おとり捜査の実施は、被告人の罪責に影響を与えないとしたのである。この判 示からは、最高裁が、おとり捜査が違法となる可能性を否定し、そのため被誘発者に対して、許されないおとり ︵7︶ 捜査の法的効果が生じることに否定的であるとの姿勢を読み取ることが可能である。しかし他方で、﹁他人の誘 惑により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上その誘惑者が場合によつて は麻薬取締法五三条のごとき規定の有無にかかわらず教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別﹂とし ていることから、本決定が訴訟法上も常におとり捜査を適法と解しているかは不明であり、おとり捜査の訴訟法 的観点からの適否の間題は、積み残されたままとなっていた。 この点につき、学説では、詐術的要素を含むおとり捜査を無制限に認めることはデュー・プロセスや司法の廉 潔性に反するとの批判がなされ、アメリカ合衆国の判例理論である﹁わなの抗弁﹂の影響を受けたアプローチが ︵8︶ 有力に主張された。すなわち、訴訟法的観点から、あらかじめ犯意を有している者におとりが働きかけて犯罪を 実行させる場合︵機会提供型︶と犯意を有していない者におとりが働きかけて犯意を生じさせ、犯罪を実行させ 27イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e る場合︵犯意誘発型︶に分けて検討し、前者は一般的に許され、後者は違法とする、﹁二分説﹂によっておとり 捜査の適法性を判断しようとする見解である。下級審レベルでは、この見解に基づき、おとり捜査の適法性を判 ︵9︶ 断した判決もみられた。本決定は、こうした状況の中で、おとり捜査の訴訟法的な許容性について、最高裁とし て初めて判断を示したものである。 本決定では、おとり捜査は、刑訴法一九七条一項の任意捜査として許容されるとした上で、適法性の判断基準 として、﹁少なくとも﹂次の三つの要件が必要であるとの姿勢が示された。①直接の被害者がいない薬物犯罪等 の捜査であること。②通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であること。③機会があれば犯罪を行う意 思があると疑われる者を対象とすること。このように、本決定によって、おとり捜査の適法性の判断基準につい て、最高裁の考え方がある程度示されたわけである。しかしながら、本決定では、﹁少なくとも﹂との前置きが 付されていることからもわかるように、本決定で示されたのは必要十分条件ではない。また、いわゆる機会提供 型について言及したにとどまるのであって、その他のケースでどのような判断が下されるのかは依然として判然 としない。 また、本決定では言及されていないが、違法なおとり捜査から生じる法的効果について否定的とも解される先 の昭和二八年決定に対しては、﹁その後のデュー・プロセス思想の進展の中で最高裁が今日もなおこの立場に固 ︵−o︶ 執しているかは疑間であり、その判例は実質的拘束力を失っている﹂との指摘がなされ、学説では、本決定の射 ︵n︶ 程範囲を限定的に捉え、一定の場合に法的効果が生じることを肯定してきた。また、下級審においては、傍論で 28
東洋法学
︵12︶ はあるが、違法なおとり捜査の存在可能性を認めていると思われる判決があり、最高裁においても、違法なおと ︵13︶ り捜査であるとした少数意見が見受けられる。さらに、違法収集証拠の排除法則を採用し、証拠の排除を認めた ︵14︶ ︵15︶ 最高裁判例や限定的にではあるが公訴権濫用論を理論上認めた判例もある。こうした状況をみると、昭和二八年 決定当時とは、状況に変化が生じているようにも思われる。そうであるならば、違法なおとり捜査が実施された 場合、いかなる法的効果が生じるかについて検討を加える意義は小さくないと思われる。 ︵16︶ ︵17︶ こうした検討にあたって有益と思われるのが、イギリスにおける罠捜査の研究である。イギリスでは、おとり を用いるなどの捜査手法の適否について、正面から言及した判例が一九四七年に出されて以来、興昧深い変遷を ︵18︶ 辿ってきており、一九九八年の欧州人権裁判所判決を踏まえた二〇〇一年の貴族院判決で、罠捜査に対するイギ ︵19︶ リスの到達点が明らかにされている。また、その過程で、罠捜査に対するアプローチ方法や判断基準・判断要 ︵20︶ 素、そして法的効果をめぐる議論が精緻化されてきたのである。さらに、以前に検討したドイツとは、同じ欧州 ︵21︶ 人権裁判所判決を経てなお異なる対応を採用しているという点も興味深い。 そこで、本稿では、依然として収束しないわが国のおとり捜査の適法性の判断基準や法的効果について検討す る足がかりとして、同様の間題についてのイギリスの対応につき、考察を加えることにしたい。具体的には、イ ギリスにおいて、罠が間題となる捜査手法を整理し、判例および立法等の展開を跡付けたい。次に、それらを前 提に、現在のイギリスにおける罠捜査の判断基準や法的効果を概観したい。そして最後に、以上の考察を踏ま え、おとり捜査をめぐるわが国における今後の議論の方向性について、若干の考察を加えることにしたい。 29イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果日 ︵1︶ ︵2︶
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石神千織﹁おとり捜査の適法性﹂捜査研究六三九号︵二〇〇四︶二頁、土本武司﹁おとり捜査の許容条件﹂捜査 最決平成一六年七月一二日刑集五八巻五号三三三頁。 三井・前掲注︵1︶八八頁。 最決昭和二八年三月五日刑集七巻三号四八二頁。 ー﹂法学新報五九巻三号︵一九五二︶二二二頁。 当時の議論状況について詳細に検討した文献として、田中政義﹁囮捜査に関する諸問題−判例を中心として も麻薬を譲り受けることができる旨の規定が設けられた。 法五三条︵現﹁麻薬及び向精神薬取締法﹂五八条︶に麻薬取締官に限り、厚生労働大臣の許可を受ければ何人から 三井誠﹃刑事手続法①﹄︵有斐閣、一九九七、新版︶八八頁。なお、一九五三年︵昭和二八年︶には、麻薬取締 研究六三九号︵二〇〇四︶一一七頁、前田雅英﹁おとり捜査とその違法性﹂研修六七七号︵二〇〇四︶三頁、石神 千織﹁最近の判例から大麻取引のおとり捜査を任意捜査として適法とした最高裁決定﹂法律のひろば五八巻一号 ︵二〇〇五︶五二頁、岡田悦典﹁おとり捜査の許容性﹂法学セミナー五〇巻二号︵二〇〇五︶一二四頁、実務判例 研究会編著﹁大麻樹脂密売を企図している者を対象に行われたおとり捜査の適否が争われた事案﹂ ﹃判例から学ぶ 捜査手続の実務H﹄捜査研究六四三号︵二〇〇五︶一二頁、甲斐行夫﹁おとり捜査﹂井上正仁編﹃刑事訴訟法判例 百選﹄ ︵有斐閣、二〇〇五、第八版︶二八頁、松本裕﹁おとり捜査の適法性が認められた事例﹂研修六八三号︵二 〇〇五︶一九頁、佐藤隆之﹁おとり捜査の適法性﹂法学教室二九六号︵二〇〇五︶三七頁、大澤裕﹁おとり捜査の 許容性﹂﹃平成一六年度重要判例解説﹄ジュリスト一二九一号︵二〇〇五︶一九〇頁、石神千織﹁大麻の有償譲渡 を企図していると疑われる者を対象にして行われたおとり捜査が適法とされた事例﹂警察公論六〇巻七号︵二〇〇 五︶八四頁、石神千織﹁捜査手続におけるおとり捜査﹂警察学論集五八巻九号︵二〇〇五︶一五八頁、内藤大海 ﹁直接の被害者がいない薬物事犯等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合 に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われている者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴法一九七条一項 に基づく任意捜査として許容されるとされた事例﹂北大法学論集五六巻六号︵二〇〇六︶二七二五頁、多和田隆史 30東洋法学
︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ﹁おとり捜査の許容性ほか﹂ジュリスト=一二六号︵二〇〇六︶一六九頁、川崎英明﹁おとり捜査の適法性﹂法律 時報七八巻二号︵二〇〇六︶九九頁、江原伸一﹁﹃おとり捜査﹄に関する一考察﹂警察学論集六〇巻二号︵二〇 〇七V一〇一頁、長沼範良・上冨敏伸﹁おとり捜査﹂法学教室三一八号︵二〇〇七︶七七頁、金子章コ、おとり 捜査の許容性二、大麻の有償譲渡を企画していると疑われる者を対象にして行われたおとり捜査が適法とされた 事例﹂甲南法学四七巻四号︵二〇〇七︶一二一頁。 この立場は、最高裁昭和三六年八月一日第三小法廷決定でも確認されている︵最決昭和三六年八月一日刑集二二 九号一頁︶。 ﹁エストッペル原理﹂や﹁エントラップメントの法理﹂など、アメリカ合衆国のおとり捜査について紹介・検討 した邦語文献として、団藤重光﹁﹃わな﹄︵エントラップメント︶の理論﹂刑法雑誌二巻三号︵一九五一︶二六頁、 渡辺修﹁囮捜査と罠抗弁ーアメリカ合衆国判例を中心に﹂法学論叢一〇五巻一号︵一九七九V四四頁、河上和雄 ﹁おとり捜査の発展﹂判例タイムズ四七五号︵一九八二︶三九頁、ローク・M・リード著/酒巻匡訳﹁﹃わな﹄の抗 弁とデュi・プロセスーアメリカにおける﹃おとり捜査﹄の法規制﹂ジュリスト七七八号︵一九八二︶二九頁、 渡辺修﹁おとり捜査の限界ーシードマンの研究﹂神戸学院法学一四巻三号︵一九八三V三〇一頁、木村榮作﹁覚 せい剤事犯のおとり捜査﹂四三五号︵一九八四︶三六頁、渋佐愼吾﹁アンダーカバーオペレイション瞥見﹂国際商 事法務一八巻五号︵一九九〇︶五〇〇頁、藤井紀雄﹁おとり捜査違法論の再評価﹂﹃刑事法学の総合的検討︵下V l福田平・大塚仁博士古希祝賀﹄︵有斐閣、一九九三︶三〇五頁、内山良雄﹁エントラップ面との抗弁における 被告人の犯罪性向と政府機関の働きかけ﹂﹃アメリカ刑事法の諸相−鈴木義男先生古稀祝賀﹄︵成文堂、一九九 六V一八三頁、堀田周吾﹁おとり捜査における達法性判断の基本構造ーアメリカ合衆国の規制アプローチを題材 として﹂東京都立大学法学会雑誌四六巻二号︵二〇〇六︶三一七頁などがある。 二分説を採用していると思われる下級審判例として、東京高判昭和二六年九月二六日高刑集四巻二言三八〇七 頁、東京高判昭和二六年一一月二六日高刑集四巻一三号一九三三頁、大阪高判昭和二七年三月二五日刑集八巻八号 二一四五頁、大阪高判昭和二七年六月三〇日刑集七巻三号五〇三頁、東京高判昭和五七年一〇月一五日判例時報一 31イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e パ ハ 1110 ) ) ︵12︶ ︵13︶ パ ハ パ
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) ) ) ︵17︶ 〇九五号一五五頁、横浜地判昭和六二年四月二七日判例タイムズ六四〇号二三二頁、東京高判昭和六二年一二月一 六日判例タイムズ六六七号二六九頁、大阪地判平成二二年九月一一日刑集五八巻五号三四〇頁など。わが国のおと り捜査の判例の展開については、三好幹夫﹁判例にみるおとり捜査﹂﹃刑事裁判の理論と実務−中山善房判事退 官記念﹄ ︵成文堂、一九九八︶六五頁が詳しい。 村井敏邦編著﹃現代刑事訴訟法﹄︵三省堂、第二版、一九九八︶一一八頁。 光藤景咬﹃刑事訴訟法1﹄︵成文堂、二〇〇七︶三二頁以下、佐藤隆之﹁おとり捜査﹂松尾浩哉ほか編﹃刑事訴 訟法判例百選﹄︵有斐閣、一九九八、第八版︶二七頁、三好幹夫﹁判例にみるおとり捜査﹂﹃刑事裁判の理論と実務 ー中山善房判事退官記念﹄︵成文堂、一九九八︶八六頁、大澤裕﹁おとり捜査の許容性﹂ジュリスト一二九一号 ︵二〇〇五︶一九一頁など。 東京高判昭和五七年一〇月一五日判例時報一〇九五号一五五頁、東京高判昭和六〇年一〇月一八日刑事裁判月報 一七巻一〇号九二七頁、東京高判昭和六二年一二月一六日判例タイムズ六六七号二六九頁など。 最高裁平成八年一〇月一八日第三小法廷決定。本決定は、公刊物未搭載である︵大野正男﹃弁護士から裁判官 へ﹄ ︹有斐閣、二〇〇〇︺一八九頁、指宿信﹁︹もぎたて判例紹介︺おとり捜査の存在とその適法性﹂法学セミナ ー五〇九号︹一九九七︺八二頁、尾崎久仁子﹁最近の判例から覚せい剤取締法違反事件にかかるおとり捜査の適法 性﹂法律のひろば五〇巻七号︹一九九七︺七一頁参照︶。 最判平成一五年二月一四日刑集五七巻=二頁。 最判昭和五五年一二月一七日刑集三四巻七号六七二頁。 ここで、おとり捜査ではなく、﹁罠捜査﹂との文言を用いたのは、イギリスでは、後に触れるように、当該捜査 手法が、罠に当たるか否かが許されるか否かの分水嶺であり、その対象は、わが国で想定されているおとり捜査よ りも広く、おとり捜査との文言を用いると混乱が生じるおそれを否定できないためである。 イギリスのおとり捜査についての先行研究として、島田仁郎﹁英国におけるおとり捜査について﹂司法研修所論 集二号︵一九七五︶三六頁、島倉隆﹁イギリス刑事法における証拠排除﹂﹃刑事法学の現代的展開︵上巻︶i八 32東洋法学
ハ ハ パ201918
V ) ) ︵21︶ 木國之先生古稀祝賀論文集﹄︵法学書院、一九九二︶四八二頁、指宿信﹁イギリスにおけるおとり捜査と手続打切 り﹂﹃激動期の刑事法学−能勢弘之先生追悼論集﹄︵信山社、二〇〇三︶四五頁がある。 §蹄職ミ辞O湧計◎撃、も篭蓋ミロ80 。]No。国国缶沁一〇一● 和§卜8題§>膝ミミ▽O§鳴ミN、。つ肉魯N§亀︵≧9恥黛鳴◎◎◎︶冨。。昌O囚国い㎝ω’ ︾ロ鐸Φ妻い−↓。Oげoρ﹄ミの恥魚魅ミR鴇貸§駄達騒9ミ無遷。り勲ら蕊ミミミ特§R&き題︵一80 。γ魯■9︾昌− 昏睾︾ωげ≦o濤F暴鳴O註ミきミミ8翁︵一8“︶もb合>口箭Φ項︾号零o旨F.閑①−身四且轟夢①︼W2且毘Φωo胤 国暮国8目Φ旨、︸[8。N]9誉,い却署●一。ごO窪段巴Φ爵oさワ旨困。冨こω。員ωΦ旨窪9轟。鼻。ぴU、>。 ↓げ○ヨ四ρ﹄§ぎoミ“黛ミ駄き西ミミ§題aミ織特s§誉鳴きら註ミきミミの8︵NO象︶︸OやG 。亀山島ゆ令Oω恥U①巳ω Ω巽Fbu恥ミ§“§駄卜罰籔oミ、ω目壽ミミ。り蛛骨&ご§馬O註ミ鳴一﹄Oミ魯む導鳴卜貸ミ鳳G試§きミ§ミ無磁導 誉ミ︵。 。.ユ①α﹄。。藤ン署。器−穽︾昌牙Φ≦︾ωゲ碕○﹃匪きα冨葺Φ勾a日曽旨ρS誉9ミきミ等88ω︵ω盆ΦP N。。㎝︶も戸ま。山。G 。旧Ω一<o缶四誌Φ匡曽巳因貰窪目震胤一Φ年Oo<o旨ぎ<Φω凝讐一8,︵N。8ン署。一ω一山實ζ鋤H什冒 缶雪巳げ巴蝉&ロω四蜜o§け暁o昼O試ミきミ自帯§§︵N。。①︶も巳。刈山。。旧国鼻oで営−。匡o︷︸①けR蜜⊆Bξ” 史§諄味 §鳴、⇔9ミきミミ§織ミ[N。。①]署.曽。ρ固.一ρUきωρ巳おω︸.↓ぎギ。三Φヨ且9田珪碧B①暮. [800]ρ一.いω.ま薯’ω㎝一. ドイツのおとり捜査については、先駆的な研究として、川崎英明﹁西ドイツ刑事訴訟法におけるおとり捜査の規 制﹂法学雑誌三一巻一号︵一九八四︶三二五頁、同﹁おとり捜査の規制−違法の判断基準を中心に﹂島大法学三 〇巻一号︵一九八六︶六七頁。欧州人権裁判所判決以降の展開について、拙稿﹁ドイツにおけるおとり捜査の許容 性と適法性の判断基準﹂同志社法学五七巻五号︵二〇〇六︶四九頁、﹁ドイツにおけるおとり捜査の法的帰結﹂ ﹃山中俊夫教授古稀記念論集﹄同志社法学五七巻六号︵二〇〇六︶四八九頁参照。 3334 イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e 二 罠をめぐる論議の展開 イギリスにおける罠捜査をめぐる論議の展開を跡付けることは、わが国のおとり捜査に関する法的間題につい て、今後の展開を占う意味でも有益なように思われる。もっとも、その際に注意を要するのは、イギリスと日本 では、この法的間題を検討するに際しての幅が異なるという点である。すなわち、わが国では、どのような捜査 手法がおとり捜査に該当するかを検討し、適法・違法を議論するのに対して、イギリスでは、わが国で一般的に 想定されている﹁おとり捜査﹂を対象とした検討に限定せずに、当該捜査手法が﹁罠﹂に当たるか、すなわち、 罠捜査か否かという視点から、法的間題が検討されているのである。そこで、まず罠が間題となりうる捜査手法 を整理し、次にイギリスにおける罠をめぐる判例・立法等の対応についての展開を跡付けることにしたい。 ω 罠が問題となる捜査手法 イギリスでは、罠になり得る捜査手法として、 ︵← 表的な四つの手法を紹介したい。 どのような戦術が用いられているのであろうか。ここでは、代 ー テスト購入︵.﹁Φ9■弩o訂ωΦ︶ ︵2︶ テスト購入とは、営業や販売などを許可された者が、 その許可の範囲内で経済活動を行っているかをテストす
︵3︶ るため、警察官や権限を有する法執行官などが身分を秘して一般客を装って違反者を摘発する方法をいう。代表 的事案としては、①ケースごとの酒類販売許可しか得ていない被告人が、一般客を装ってボトルごとの購入を申 し出た身分秘匿捜査官︵§αR8<Ro途8﹃︶に対して、ボトル販売を行ったために検挙された一九八八年の ︵4︶ U勺勺<。言霞旨巴一彗αUo≦器ω事件、②未成年者への販売が禁じられているビデオを、一一歳の男児に買いに 行かせたところ、スーパーマーケットの店員が同商品を販売したために起訴された一九九五年の国毘躍いωO ︵5︶ ダ≦Ooξo旨房巳o事件、③被告人のタクシー免許は、ノッティンガム市外で客を乗車させることに制限され ていたが、身分を秘匿した二名の警察官が市内で乗車を求めたところ、彼らを行き先まで連れて行くことに合意 ︵6︶ し、送り届けたことにより起訴された二〇〇〇年の20蕪轟富ヨΩ蔓Oo§亀ダ︾日冒事件がある。 こうした捜査手法は、免許を要する事業者や業務の特質から違反行為が行われる懸念がある事業者の検挙に適 しているとされ、主に煙草、花火、成人指定ビデオなどの販売に対して実施されている。
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2 スティング捜査︵ω吐品OでΦ﹁9δ器︶ スティング捜査とは、スティング︵ω鼠轟︶やデコイ︵住82︶と呼ばれるおとり︵警察官︶を投入して犯罪行 為を行った者を検挙する手法をいう。この手法は、わが国で一般的に想定されているおとり捜査を含む捜査手法 といえる。すなわち、身分を秘した警察官が薬物の売人と目される者に接触して購入を求め、販売された時点で 現行犯逮捕する方法である。この種がオーソドックスだと思われるが、イギリスでは、これ以外の方法によるス 35イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e ティング捜査も実施されている。代表的事案としては、①宝石などの盗品を取り扱うとの評判がある二名の店員 ︵いずれも身分秘匿捜査官︶が働いているダミーの宝石店を警察が設営し、盗品を持ち込んだ被告人を強盗の共 ︵7︶ 犯と賊物の授受で検挙・起訴した一九九二年の甲‘Oぼ一ω8二碧α≦﹃蒔算事件、②夫が妻を殺害しようと計 画し、殺人を請け負うとの触れ込みがあった殺し屋に依頼し、他方、妻は夫の殺害を計画して同様の触れ込みの あった別の殺し屋に依頼したが、いずれの殺し屋も実は身分秘匿捜査官であり、その警察官と被告人との間で行 ︵8︶ われた打ち合わせを秘密に録音したテープを証拠として起訴された一九九四年の塑ダωヨ葭島零巴け①きαO旨 ︵9︶ 事件がある。とりわけ、②の甲<。ω目仁辞げ類舞①目α○旨事件で用いられた手法は、警察官であるスティング に対して対象者︵後の被疑者・被告人︶が薬物などを提供するのではなく、むしろ警察官であるスティングがい ︵−o︶ わば商品として対象者に提供されることから、逆スティング捜査︵おく段器a轟︶と称されている。この他、 スティング捜査の例としては、老女に対する強盗が多発している地域において、婦人警官がターゲットになって ︵11︶ 検挙すべく老女の格好をして歩く方法などが挙げられている。 36 3 天からのマナ捜査︵ζ彗召ヰoヨエ$く雪OでΦ﹁魯δコ︶ 天からのマナ捜査とは、窃盗多発地域の公園など、公共の場所に財物を放置して監視し、窃取したところを検 挙する方法であり、ネズミ捕り︵轟?霞8︶とも称される。モーセ率いるイスラエルの民が荒野で飢えたとき に、マナという食物を天から恵まれたという旧約聖書が名称の由来となっている。代表的事案としては、二名の
警察官が人通りの多い街路に車をとめ、後部ドアをあけて煙草のカートン︵実物ではなく偽物︶を外から見える 状態にしておいたところ、被告人二名は誘惑に負け、煙草のカートンを車から運び出したところを逮捕された一 ︵12︶ ︵13︶ 九九三年のU勺勺‘ゑ旨冨ヨω碧α○.=貰Φ事件がある。この他、公園のベンチに財布を置いておき、何人かが もっていくのを監視し検挙する方法などが例として挙げられている。ただし、こうした手法については、警察官 の行為は、明らかに倫理性を試すような行為︵﹁道徳テスト﹂︶であるとか、通常であれば法律に従うような人が 負けてしまうような大きな誘惑があり、明らかに警察が犯罪を作り出しているといえるのだから、このような意 ︵14︶ 図的に企てられた誘惑から、市民は守られるべきであるとの批判が強い。
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︵15︶ 4 私人による罠︵でユく舞Φ団言βUヨΦ言︶ 私人による罠とは、警察官やその他の法執行官ではなく、私立探偵やジャーナリストといった民間人が罠にか ける手法をいう。活動主体が私人であるという点では共通するものの、警察官によって教育され、厳格な指示の ︵16︶ 下で投入されるドイツの秘密連絡員︵<−鼠碧P<七RωoP<−い①旨①︶とは異なり、捜査機関から依頼を受けずに 活動する民間人である。周知のように、イギリスには私人訴追制度があり、古くから探偵などの私人によっても 捜査が行われ、場合によってはおとりとしても活動してきたようである。代表的事案としては、報道機関に雇わ れていたレポーターが被告人と偽造紙幣の取引について会話を交わし、受け渡しの前にレポーターが警察に通報 ︵17︶ ︵18︶ し逮捕された一九九五年の罰ダ匡〇二亀碧血国旨8昌事件のほか、二〇〇一年の菌ダω冨目9事件や舛<■ 37イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e ︵19︶ 閏巽α&良①きα↓げ≦巴$ω事件がある。議論の中心は、罠の法理は、活動主体が公的機関に属する者と私的な 者とで違いがあるかという点である。即ダ匡〇二亀目α国旨8昌判決では、適用されるべき法理に違いはない としたが、他方、戸<。=巽α註良①きα↓げ名曽一器ω事件では、罠捜査による証拠排除などの法的効果との関係 ︵20︶ では、両者に差異があるとする。近時では、私立探偵などの私的な法執行機関の増加やジャーナリストの活動に おいても同様の手法が見受けられることから、私人による罠の法的間題はもはや見過ごすことができない状況に ︵21︶ なっていると指摘されている。 このように、イギリスでは、直接的な犯罪被害者がいなかったり、組織的な薬物・銃器事犯にとどまらず、広 く犯罪の解明のために、種々の捜査手法が実施されている。こうした手法を類型化し、法的間題が生じうる特徴 を明らかにしつつ、個別具体的に当該捜査手法が罠に当たるか否かが検討されているのである。わが国でも、 ﹁おとり捜査﹂の意義の多義性かち、捜査実務では、﹁買取捜査﹂や﹁譲受捜査﹂など、その特徴に応じて、ある ︵22︶ 程度意味が限定された用語が用いられているようである。 38 ω 判例の展開と立法等の対応 イギリスにおける罠捜査の判例・立法等の対応の展開をみてみると、一九七九年の刃ダ留鑛事件判決と二 〇〇一年の罰<。いoo8一ΦS︾辞o旨①<09R巴、ω勾像R98︵Zρω980。︶事件判決が転機となっている。
そこで、ここでは、二つの判例の前後に分けて、 ︵23V 罠捜査をめぐる論議の展開を跡付けたい。
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1 刀■∼ω①品事件判決以前の展開 ︹24︶ 一九四七年にω鍔目碧‘頴魯事件判決が下されるまで、おとりに関する法的間題は、もっぱら、おとりが 共犯者︵教唆・常助︶としての刑事責任を負うかという点にあり、それに伴って証拠法上も、おとりの証言を共 ︵25︶ 犯者の証言と同じものとして取り扱うかにあったようである。つまり、おとり自身の刑事責任の間題だったので あり、訴訟法上も、共犯者であることによって生じる﹁共犯者の証言﹂として取り扱うべきかに関心があったの である。 おとりを用いる捜査手法自体が正面から法的間題であると明確に意識されたのは、一九四七年の切轟目目ダ 悶①魯事件にさかのぼる。本件は、警察官が一般客を装って居酒屋における競馬の呑み行為に参加し、証拠を収 集した事案である。ゴッダート卿は、このような警察官の行動について、﹁ダービー警察が、犯罪を犯させるた めに警察官を居酒屋へ派遣することを正当であると考えたことは、当裁判所としては、極めて遺憾であり、承認 できない。国法がそのような行為を認めている場合は別として︵いかなる国法もそのようなことを規定していな いと思うが︶、他人の犯罪を捜査する目的で警察官や他の誰であっても、犯罪を自ら犯すべく派遣されることが 正しくないということは強調してもし過ぎることはない﹂とし、捜査のためにおとりが犯罪に参加することは、 ﹁全体として間違った﹂手法であると指摘した。 39イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e ω轟目碧‘評魯事件におけるゴッダート卿の指摘は、その後の裁判に影響を与えた。後任となったパーカ ︵26︶ 1卿は、O毘δダ○仁目事件判決において、﹁裁判官は、法律的関連性があり、許容性が認められる証拠であっ ても、その証拠を許容することが被告人に対して不公平に働くときには、排除する裁量権をもつ﹂とし、﹁この 裁量権は、抑圧、虚偽表示、トリック、脅し、賄賂、その他これと同様の方法によって、職権を濫用して得られ た疑いのある証拠については必ず行使されるべきである﹂とした。 ゴッダート卿・パーカー卿による﹁おとり捜査がもたらす不公正さ﹂や﹁裁判官の裁量に基づく証拠排除﹂の ︵27︶ 指摘は、いずれも傍論ではあったが、一九六五年の刃ダζ自∈ξ事件では、それらの指摘の解釈が展開され た。本件は、反乱軍を装った警察官に軍の機密情報を漏洩したとして有罪となった裁判の控訴審であるが、被告 人が両判事の指摘に依拠して証拠排除を主張したために、その意味するところが争われたのである。マクダモッ ト裁判官は、﹁トリックなどが用いられれば必ず職権濫用になるのではなく、具体的な個々のケースで判断する 必要があるとし、被告人の地位、身分、捜査の種類・性質、犯罪の重大性など諸般の事情を総合考慮して決する 必要がある﹂のであって、﹁右傍論は、字句通りに解釈すべきではない﹂旨判示した。また、パーヵ1卿自身、 ︵28︶ 一九六七年のω器39ダω8奉霧9事件において、私服警官が売春婦の傍らに車を停車させ、誘われるのを待 って検挙する捜査手法について、﹁捜査当局が対象となる犯罪の性質やその場の状況に鑑みて必要であると真に 思料した場合でなければ、実施されるべきではない。しかし、本件のように必要性があってなされたものであれ ば、そこで得られた証拠に基づく有罪判決を破棄したり、罰ダ匡仁∈ξ事件で主張された証拠を排除すべきと 40
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の理由は何ら見当たらない﹂として、先のO巴房ダO巨ロ事件判決における自身の傍論を緩和する判断を示し た。さらに、パーカー卿は、一九六九年の甲ダ匹註Φ事件判決において、先のo oま琶9ダo D8<Φ霧9事件で の自身の見解について、詳細な検討を加えている。本件は、被告人が凶悪犯という触れ込みの者︵警察官および その協力者︶に犯行に使用する車両と模造拳銃を提供されて郵便局に押し入ったところを強盗と模造拳銃所持で 検挙された事案である。本件では、被告人が凶悪犯に扮した警察官やその協力者による教唆によって初めて強盗 の犯意を形成したことを疑わすに足りる証拠があった。パーカi卿は、﹁おとりが犯罪を創造しないようにする こと、すなわち、人を教唆してそれがなければ犯さなかったであろう犯罪を犯させることのないようにすること を可能な限り保障することが極めて重要である。警察官がすでに計画された犯罪に関する情報を利用することは よい。その場合に、警察官が右犯罪の結果を和らげるために、狙われた被害者を保護する権限があるのはもちろ ん、それは義務でもあるし、その目的のために、場合によってはおとりにその犯罪に参加することを促し、ある いは警察官自らおとりとしてそれに参加することも、全く相当であるということもありえよう﹂とする一方で、 ﹁おとりに人を教唆させ、それがなければ犯さなかったであろう犯罪、あるいは、より重大な犯罪を犯すように 促すことは、これとは全く別の問題であり、後者は、当裁判所が全く承認しないところのものである﹂とした。 ここにわが国でいうところの﹁犯意誘発型﹂と﹁機会提供型﹂を区別する二分説的発想の萌芽をみることができ る。ただ、本判決では、結論としては、犯罪の成立を肯定し、ただ、刑を減軽したに過ぎない。その理由は、判 文中では明らかにされていないが、これまでの判例の流れからすれば、︵犯罪の成立自体は否定できないが︶被 41イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果8 ︵29︶ 告人に対する不公平性を緩和する方法として刑を減軽したものとみることができよう。 一九六〇年代後半になると、裁判所の関心は、一連の証拠排除の裁量とともに、当該事案におとりが投入され ︵30︶ たのか否かが裁判所に伝えられることをいかに確保するかにもあった。こうした事態を踏まえて、政府も対応に ︵包 乗り出し、先の罰<。田三Φ事件の後に、内務省によっておとりを用いる捜査手法に関する回状が各警察署長宛 ︵32︶ に出された。当時の文献をみる限りでは、﹁職務遂行上の秘密のために詳細を明らかにすることはできない﹂と して全容は公表されていない。しかしながら、ガイドラインを作成するに際して考慮されたポイントについては 明らかにされており、当時の関心を窺い知ることはできよう。 ︵33V ①社会を犯罪者から防衛するためには、警察は、適切な場合に、情報提供者︵一嘗興ヨ碧け︶を利用すること が許されねばならない。適切に用いられる情報提供者は、犯罪捜査に必須であり、一定の範囲で保護される ︵34︶ べきである。 ②情報提供者の犯罪への参加の程度に関しては、厳格な限界が画されなければならない。 ③警察官または警察が用いる協力者は、犯罪の遂行を助言︵8⋮ω9、教唆︵ぼ簿①︶、斡旋︵質02邑し てはならない。 ④警察は、情報提供者を保護するために、自ら裁判所に情報を秘匿したり、疑間をいだかせるような捜査手 法をとってはならない。 42
⑤情報提供者の利用については、上級の経験を積んだ警察官による効果的な監督が必要である。 する捜査官︵889<Φ︶の訓練については、特別の配慮が加えられなければならない。 この点に関
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このように、イギリスでは、捜査機関へのガイドラインが作成されるとともに、裁判所は、刑事手続におい ︵35︶ て、証拠が不適切あるいは不公平な手法で入手された事案においては、証拠を排除する裁量を有しているとの指 摘が判文中にみられる。しかしながら、そうした裁量が実際に行使された事案は少ない。ここに、おとり捜査が もたらす不公平さが、実際の裁判において争点となり、それが有罪・無罪の判断を決する重要な要素となった場 合のジレンマを垣間見ることができるように思われる。 しかしながら、罠捜査の事案で裁判所の証拠排除の裁量権が行使されているものも散見される。代表的な三つ の事案をみておきたい。 ︵36︶ ︵1︶ 刃ダ悶2疑9閃o巳評Φω”民一〇ぎω事件 本件は、LSDの大量所持で起訴された被告人らが、事 件の唯一の証拠である警察官の証言は、おとり捜査によって獲得されたものであり、排除されるべきであるとし て争った事案である。本件では、身分を秘匿してLSDの購入者を装った警察官が被告人らの一名に対して、 ﹁私に売ってくれないか﹂、﹁君が入手できるだけの﹂SDを全部売ってくれ﹂、﹁君の仲間に会いたいのだが﹂、 ﹁いつ取引できるか﹂、﹁私は無責任なことはしないので、君も責任をもて﹂、﹁君と君の仲間にここで会おう。君 たちは私にピルを渡す、キャッシュで取引して終了だ。私は外にバイクに乗った仲間を待たせておこう。ピルを 43イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e そいつに渡して無事に立ち去るのを見届けたら私も失礼しよう。しかし、君たちがもし変なまねをしたらただで はおかないぞ﹂などと執拗に依頼があったことを認定し、舛ダ匪莚Φ事件で裁判所が承認できないとした﹁お とりに人を教唆せしめ、それがなければ犯さなかったであろう犯罪またはより重大な犯罪を犯すように促すこ と﹂に該当するとし、被告人側の主張を受け入れて証拠を排除した。 ︵37︶ ︵2︶ 塑ダω自器簿鋤巳い8事件 警察の協力者から、自分は外国政府のエージェントであり、外交上の 免責特権があるため絶対に迷惑をかけることはないとして、偽造通貨と偽造のトラベラーズチェックを大量に仕 入れたい旨二ヶ月にわたって唆された被告人が、たまたま知り合ったもう一人の被告人に偽造の通貨をみせら れ、両者が共謀して警察の協力者に大量の偽造通貨を売った事案である。本件では、不公正なおとり捜査を理由 に、証拠が排除された。 このように、先の丙‘田三①事件判決や内務省の回状によるガイドラインの影響もあってか、証拠を排除す る判決が下されている。さらに、麻薬の大量購入を組織的に行わせようと企図して活動した身分を秘匿した警察 ︵38︶ 官が、犯罪遂行にとって重要な役割を果たしたとして証拠が排除された一九七七年の零<。︾含①R事件では、 証拠の排除と密接に関連する﹁当該捜査が罠か否か﹂の判断基準が示された。 44
②①
起訴されている犯罪と同種の犯罪がすでに計画されていたか。 警察官の助長・促進︵窪8自諾①ヨ①旨︶がなければ、犯さなかったであろう犯罪を被告人が犯したか。⑦⑥⑤④③
被告人には、起訴されている犯罪に関与する傾向︵R8窪巴蔓︶があったか。 警察官が犯罪行為の主たる役割を担ったか。 裁判所は、警察官に対する信頼性を確保しているか。 警察官の活動は、法定の管理体制︵お讐B①︶に基づいて認可されたものであったか。 当該犯罪は、公共の利益がそのような手法の実施を正当化するほどに重大なものであるか。東洋法学
ここまでの判例の到達点を要約すると、罠が間題となる捜査を捜査手法自体としては特段間題視しなかった時 代から、罠を用いた捜査手法によって獲得された証拠は、場合によっては職権の濫用に基づいて得られた証拠と なりうるのであって、こうした証拠に基づいて裁判を行うことが被告人にとって不公平である場合︵罠だとされ るケースなど︶には、裁判所の裁量により証拠を排除するに至ったといえよう。また、その過程では、警察活動 の行為規範として、内務省のガイドラインが、裁判官に対する裁判規範として、裁量に基づく職権による証拠排 除と密接に関連する罠の判断基準が形成された。こうした状況から、罠捜査に対しては、今後もさらに証拠排除 を含めた対応の展開が予想された。しかしながら、大方の予想に反した判決が一九七九年に出された。罰‘ 留轟事件の貴族院判決である。 45イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e 2 刀■く6ω①品事件判決以降の展開 ︵3 9︶ 丙‘留轟事件は、偽造のアメリカ銀行券行使の共謀罪で起訴された事案である。本件では、被告人は、警 察官の指示した情報提供者によって犯罪を唆され、もしその教唆がなかったならば犯行に及ばなかったのだか ら、裁判官は、裁量により証拠を排除すべきだと主張した。一審では裁量権の行使が認められず、控訴院への上 訴も棄却されたため、貴族院に上訴した。貴族院では、訴追された犯罪がおとりによって刺激されており、それ がなければ被告人によってなされなかったと認定されている場合、裁判官が検察側の証拠を排除する裁量を有す るか否かが争点となった。この点につき、貴族院は、証拠を排除する司法の裁量の範囲がどこまでであれ、それ は、おとりによって刺激されたものであるという理由に基づいて犯罪の証拠を排除するまでは及ばないと判示し ︵40︶ た。貴族院は、罠は刑事責任に関する抗弁にはなりえないという旨の従前の判断を踏襲し、もし裁量の範囲がそ こまで及ぶのであれば、事実審の裁判官が、罠は抗弁ではないと明確に確立されている実体法を回避する手続的 な手段になると理由を説明した。すなわち、罠によって得られた証拠を排除する裁量を是認するのは、罠を抗弁 として認めるのと同じ実際上の効果を有することになるのであって、罠の抗弁を否定している従前の判例と一貫 性に欠けるとしたのである。その上で、ディプロック卿は、裁判所による罠の事案の解決策としては、被告人に 対する刑の減軽と罠をかけた警察官の懲罰︵9零琶置①︶が、もっとも適切な対応であると結論付けたのであ る。 ひるがえって、刑の減軽の観点から罠と関連する判例をみてみると、裁判所は情報提供者の関与の前に、ある 46
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︵4 1︶ いはその関与がなくても犯罪が計画されていた場合には刑を減軽することに消極的であったが、罠がなければ犯 ︵42V 罪が起こらなかったかもしれない可能性を反映させるために刑が減軽された例は見受けられる。しかしながら、 こうした貴族院の判示に対しては、学説から多数の批判が寄せられた。まず、刑の減軽は、身分を秘匿した捜査 官に接触され、犯罪を実行するよう唆された人々にとって十分な予防・保護手段︵ω錬畠轟こ︶とはならないと ︵43︶ いうものである。次に、こうした貴族院の判断は、真に警察が犯罪と犯罪者を作り出したケースか、あるいは、 被告人による典型的な犯罪行為であって警察官や協力者はたまたま関与したに過ぎないケースなのかが曖昧にな る。確かに多くのケースでは、犯罪の実行を勧めるのと情報を得るために人に賛同することとの境界線は非常に ︵44︶ 細いものであるが、この区別は、非常に重要なものであるとする。さらに、職務が犯罪を防止することである捜 査機関が犯罪の創造に関与することは認められるべきではなく、彼らがそのように行動した場合は、単に情報 ︵証拠︶を排除し、あるいは刑を減軽するだけでは不十分であるとの指摘もみられるようになった。すなわち、 裁判所は、罠を仕掛けた者の行為が許容性の限界を超えた場合、訴訟手続の停止をも認めるべきであるとするの ︵45V である。 このように、貴族院による即ダ留轟事件判決は、厳しい批判にさらされた。また、一九八四年に警察・刑 ︵46︶ 事証拠法︵勺98讐α9一B冒巴国<一α98︾9電︾O包︶が成立したことで、その後の展開は、丙ダ留轟 事件の貴族院判決とは異なる方向性を示していくのである。 一九八四年の警察・刑事証拠法の七八条一項の施行は、裁判所に対して、裁判官の裁量による証拠排除の権限 47イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果⑨ を付与した。これにより、貴族院による即く■ω碧閃事件判決では量刑段階で刑を減軽するための考慮要素であ った罠捜査が、事実審理段階での証拠排除の考慮要素とすることが可能となったのである。 七八条︹不公正な証拠の排除︺ 一項 いかなる手続においても、裁判所は、訴追側が立証の基礎として申請する証拠につき、その証拠が獲 得された状況を含むすべての事情を考慮して、その証拠を許容することは当該手続の公正さに有害な 影響を及ぽすためこれを許容すべきでないと認めるときは、その証拠を許容することを拒むことがで ︵47︶ きる。 この規定の創設は、証拠排除の権限を裁判官に付与するとともに、証拠を排除するための指針を裁判所が検討 する機会を与える契機となった。 ︵48︶ 一九八九年の罰‘O旨きα園壁轟墨事件で、控訴院は、塑<。留躍事件における貴族院裁判官の見解は 留意しておく必要があるが、罰ダ留轟事件は罠の事案における勺︾O国七八条の裁量の行使を排除しないと判 示した。また、結論としては、証拠を排除しなかったが、二人の身分秘匿捜査官が無免許の販売人から酒のテス ︵49︶ ト購入を行った一九八八年のU勺勺ダ匡巽筈艶碧α∪○≦器ω事件では、罠の場合には、裁判官は、職権で証拠 ︵50︶ を排除する裁量を有することが前提とされていたし、一九九二年の罰‘Oぼ一ω8仁目α薫ユ讐け事件でも、 48
︵5 1︶ 勺︾○両七八条による裁量は行使可能であると判示した。さらに、一九九四年のω目員夢≦巴富彗αO旨事件の控 訴院判決では、被告人が実は身分秘匿捜査官であった者に対して殺人を依頼した二つの個別の事件において、裁 ︵52︶ 判所は、罠は七八条の裁量の行使に関連性があることを認め、その際に考慮されるべき六つの要素を設定した。
⑥⑤④③②①
警察官がその関与なければ行われなかったであろう犯罪を犯すよう被告人を誘惑したか否か。 罠の性質がどのようなものであったか。 完了した犯罪に証拠が関連していたか否か。 警察官は主に消極的であったか、あるいは積極的であったか。 行われた事柄について信頼できる記録があるか。 警察官が、規則に従ってなされるべきであった質問をするという役割を濫用したか否か。東洋法学
このように、立法という形で、罠捜査で獲得された証拠を裁判官の裁量で排除する権限が裁判所に付与され、 その後の一連の判例で即‘留轟事件の貴族院判決が事実上否定されたことにより、罠捜査がいかなる展開を みせていくのかが注目された。というのも、当時すでに職務が犯罪を防止することである捜査機関が犯罪の創造 に関与することは認められるべきではなく、そのような場合には、単に証拠を排除し、あるいは刑を減軽するだ ︵53︶ けでは不十分であり、手続を打切るという新しい法的効果が主張されはじめていたからである。こうした状況下 49 1イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e ︵5 4︶ で、一九九八年に欧州人権裁判所において罠捜査に関する判決が下された。 ︵55︶ 一九九八年の欧州人権裁判所による↓Φぼ虫轟80器窪o<’勺9ε覧一事件判決の事案は、次の通りである。 身分を秘した捜査官が、麻薬を取り扱っている疑いのある者に員付け人を装って声をかけた。捜査官がハシシの 供給元を執拗に尋ねたが判明しなかったため、ヘロインの購入を申し出たところ、本件の被告人であればヘロイ ンを調達できるが住所はしらないと答えたため、一緒に被告人の住所をつきとめて購入の意思を伝えた。被告人 はこの申し出に応じ、ヘロインを捜査官に渡したところを逮捕された。本件では、被告人にもともと麻薬取引の 犯意があったか否かは明らかではなく、前科はなかった。 本事案について、欧州人権裁判所は、警察官の関与がなくても被告人が犯罪を犯したことを示す証拠は何もな いとして、警察官が犯罪を唆したことを理由に、その活動は、身分を秘匿した捜査官に許された行動の限界を超 えるとした。また、本件のように警察官が犯罪行為に関与したり、刑事手続において証言し、証拠として用いら れたことは、最初から最後まで被告人が﹁公正な手続を受けなかった﹂ことを意昧し、公正な手続を受ける権利 を定めた欧州人権条約六条一項に違反するとした。 ︵56︶ イギリスでは、一九九八年に人権法︵国蝿目き田讐房︾9が制定されたため、欧州人権条約は国内法で適 用可能となった。手統の打切りについては、罠捜査の事案ではないが、一九九三年の犀‘=oお①8霞く菊o且 ︵57︶ 蜜謎一ω霞簿8、O霊拝象P浮9①辞事件において、貴族院は、﹁もし、個々の事案の状況において、被告人を裁 判にかけることを求められることが、裁判所の正義感および正当性に背く場合には、訴訟︵虞89暮一9︶は停 50
止できる﹂としていた。そこで、↓o一図①一轟80器實o‘勺o旨轟巴事件において欧州人権裁判所が、罠にかけ られた被告人の刑事手続における適切な救済方法として、手続自体が行われるべきではない旨判示したことが、 イギリスの刑事裁判にどのような影響を与えるのかが注目されたのである。これに答える形となったのが、二〇 〇一年の即ダい08巴①S︾暮○旨亀O窪段巴.ω園臥R魯8︵2ρω98。。︶判決︵以下、即ダい0822判 決︶である。
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3 刀、く’﹁08Φ一建事件判決 本判決は、罰‘い08色亀事件と匿8旨亀O窪R巴.ω勾臥R28︵乞ρω98。。︶事件︵以下、法務総裁 ︵58V 付託三号事件︶という二つの上告事件の共同審理判決である。本判決は、現在に至るまで、イギリスの罠捜査の 判例として重要な意義を有することから、事件概要や訴訟の経過も含めて、詳細にみておくこととする。 ︵1︶ 罰ダい08巴2事件 @事件概要 本件は、後の上訴人であるグラント・スペンサi・ルーズリi ︵O轟耳ω冨膏Rいoo器マ”以下、ルーズリi︶ともう一人の被告人ハリスが、﹁ロブ﹂という名前で知られてい る身分秘匿捜査官に対してヘロインを供給して逮捕されたという事案である。一九九九年、ギルフォード警察 は、ある特定された地域でA級ドラッグの取引がなされているとの疑いがあったために、身分秘匿捜査を開始し た。捜査対象の一つに、大衆居酒屋があがっていた。そこは、ある男がロブにルーズリーのファーストネームと 電話番号を提供し、麻薬を手に入れたければ彼に電話すべきだと伝えられた場所であった。ロブはルーズリーに 51イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e 電話し、﹁やあ、袋を二、三準備してもらえないか﹂といった。それに対してルーズリーは﹁いいよ、準備する よ﹂といった。ルーズリーはその後、ロブに彼のマンションヘの道順を説明した。ロブはそのマンションに行 き、○・五グラムのヘロインに対して、三〇ポンドの金額を支払うことで合意した。次に、ロブはルーズリーと 自車でハリスのマンションヘ行った。ルーズリーはロブから三〇ポンドを受け取って車から離れていった。彼は 数分後、例の﹁物﹂を持っているといって戻ってきた。ルーズリーは、ロブと一緒に自分のマンションに戻り、 そこで、小さな袋を取り出して開封し、そのうちの少量を自分のためにとっておき、残りをロブに渡した。検査 したところ、その袋には純度一〇〇%のヘロイン一五ニミリグラムが入っていた。 四日後、ロブは再び電話し、ルーズリーは例の物を用意することに合意した。ロブとルーズリーは大衆居酒屋 で会い、その後ロブの車でギルフォードにある劇場にいった。ルーズリーは、車を出て、その際にもう一度ロ ブから三〇ポンドを受け取った。彼が戻ってきたとき、彼はロブにフィルムで密封された丸い錠剤を手渡した。 彼らはルーズリーのアパートに行き、そこでルーズリーはフィルムで密封された丸い錠剤から少量を自分のた めに取り、残りをロブに渡した。検査したところ、その丸い錠剤には、純度七〇%のヘロイン一三二、・、リグラム が含まれていたことが判明した。 三日後、ロブはまたルーズリーのアパートヘ行き、一グラムのヘロインを用意することが可能か尋ねた。ルー ズリーは何者かに電話し、ロブと一緒に以前とは別の住所に行った。ルーズリーはロブから六〇ポンド受け取 り、フィルムで密封された丸い錠剤を持って帰ってきた。ルーズリーはロブに対して、これは半分だけだが、残 52
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りは一時間で用意できると伝えた。しかしながら、その日の午後にロブは上訴人のマンションに何度か戻った が、麻薬がそれ以上提供されることはなかった。実際に受け取った包みを調べたところ、純度一〇〇%のヘロイ ンが二二四ミリグラム含まれていることが判明した。 ㈲訴訟経過 ①刑事法院による判断 刑事法院では、被告人より本件の訴追は裁判所の手続の濫用として 停止されるべきであるか、そうでなければ、ロブによる証拠は、一九八四年法の七八条一項に基づいて裁判官に 与えられている裁量に基づいて排除されるべきとの主張がなされた。 証人適格についての予備尋間︵<o冒9お︶では、裁判所は、ロブの証拠について、この起訴の原因となった 捜査責任者である警察官から聴取した。予備尋問の結果、裁判官は手続の濫用としてこの起訴を停止すること も、一九八四年法の七八条の下で認められている裁量に基づいて証拠を排除することも拒絶する判決を下した。 判決の中で、裁判官はこれまでのイギリスの判例とともに、欧州人権裁判所の↓Φ一図o一冨留O器qo‘勺負− け轟巴判決についても言及した。裁判官は以下のように指摘した。 ﹁私が言及したいずれの事案︵↓Φ一図の一声号O霧RO<■男○誹罐巴判決を含む︶によっても秘密の監視 ︵§αR8<Ro房R轟江o昌︶や潜入︵旨包q簿δ嵩︶の結果として得られた証拠は、認められるべきではないとい う原則があるとは理解しない。導かれる原理は、英国の裁判例に示されている。すなわち、犯罪の実行は身分秘 匿捜査官に促されることなく行われるべきであり、その促されずに行われるべきというのは、その捜査官の関与 がなければ起こらなかったであろう犯罪を実行させたり刺激するべきではないという意味においてである。 53イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e ↓Φ一図Φ一声80器Ro<.∪自ε閃巴事件では、上訴人が過去に麻薬犯罪の前科がなかったからかもしれないが、 麻薬の犯罪に関連しているとは知られていなかったということが、裁判所にとっては重要だったようである。し たがって、裁判所は、その世界に関与しているとは知られていなかった人が関与するために促したことというの は、より重要な考慮すべき要素となったということを示しているようである﹂。﹁条約の六条については、念頭に ︵59︶ あるが、私はまた一九八九年のωoR旨閃‘d囚という事案において言及されている比例の概念︵8ロ8讐9 賓80岳9&蔓︶も念頭にある。比例の概念は、社会の一般的な利益の要求と個人の人権を保護する必要性と の間の公平なバランスの探求が条約全体に内在しているということを示している﹂。 再度、裁判官は↓①ぼ色轟80器嘗oダ勺自9鵬巴事件に言及して、以下のように指摘した。 ﹁裁判所の判示は、⋮⋮警察の関与なしには起こらなかったであろう犯罪を警察官が唆した︵冒ωけ蒔簿a︶と の心証を裁判所は抱いているという事情に基づいている。それが判決の核心であり、警察官が積極的︵碧賦く①︶ であったか、消極的︵冨ωω貯Φ︶であったかということに関して控訴院も言及したことがあることも知っている が、日Φ一図①一轟80器霞o<。勺99題一の事案において、ただ単に身分秘匿捜査官が積極的に行動した場合、そ の行動は禁止されており、訴追の根拠となりえないと述べられているとは理解していない。積極的な行為という のは必ずしも扇動︵旨舞①日Φ耳︶と同じではない。しかし、警察官が消極的から積極的な役割に移ることに関す る注意や懸念は確かに述べられており、それは正しいと考えるが、↓①一図Φ一轟80霧Roダ勺o旨鑛巴判決は、 控訴院がいったように、すべての関連ある状況を把握することがこのようなすべての事案においてなされなけれ 54
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ばならないといっていると理解している﹂。 さらに、﹁欧州人権裁判がすべての関連する状況を検討した上で、比較的良い性格の人間であるテイセイラ ︵↓Φ一図Φ一轟︶が、もしかしたら、自分の理性に反してただ一回だけ麻薬を入手するように説得され、それは収入 のためだったかもしれないが、彼は警察の関与がなければ頭にも浮かばなかったような犯罪を犯すように扇動さ れたと欧州人権裁判所はみているように思われる。裁判所は、身分秘匿捜査官の関与をそのような文脈でみたの である。本件で起きたことは、二人の被告人が少なくともよく知られた麻薬の使用者であり、両者とも麻薬の諜 報︵冒冨=蒔98︶の対象であり、地元の麻薬組織や麻薬取引に潜入の結果発見され、接近された者であり、そ のような者たちが身分秘匿捜査官に継続的にヘロインを提供したということである。確かに身分秘匿捜査官は麻 薬取引者にとっては理想的な顧客として振舞ったが、そのような状況で自分を示す以上のことを身分秘匿捜査官 がしたとは思わない。すべての状況を検討した上で、その行為を誘惑と判断することは難しい﹂とした。 ②控訴院による判断 この判断の後に、被告人は、控訴院に対して自分の有罪判決について控訴したが、そ の控訴は棄却された。控訴審の判断を述べる際に、ロック︵閑o畠︶控訴院裁判官は以下のように述べた。 ﹁当裁判所の判断では、法は明確であり、法は欧州人権条約と欧州人権裁判所の判断と一貫している、とくに 被告人の犯罪への関与が法を犯すように法執行官に刺激されたことに基づいている場合、あるいは、法執行官に よって犯罪を犯すように罠にかけられた場合、その法執行官によって獲得された証拠は一九八四年の警察・刑事 証拠法七八条に基づく権限を事実審裁判官が行使することにより排除されるべきなのである。そのような判断が 55イギリスにおけるおとり捜査の判断基準と法的効果e 被告人に対して行われなければならない多くの事案においては、手続をそれ以上進めることはできない。他方、 法執行官が法律を犯すような機会を被告人に対して与えたに過ぎないような場合、そして、被告人がその機会が 他の誰かによって与えられたとしても同じように行動したであろう状況において、その状況の利点を自由に活用 した場合、そこには法執行官によって獲得された証拠が排除されなければならない理由はなく、被告人の裁判は その証拠を認めた上で続くべきである﹂とし、本件で、﹁ロブが演じた役割というものが単なる観察を超えて上 訴人に対してヘロインを供給するよう頼んだような状況において︵ただし、裁判官が判断したところでは、その 頼みに対して上訴人はすぐに合意したのだが︶、裁判官は、﹃ロブ﹄という警察官によって獲得された証拠を認め ることを拒絶するべきであったのだろうか﹂という点について、否定的に解して上訴を棄却した。 ルーズリーは、三件のA級ドラッグの提供または提供への関与について二〇〇〇年一月五日にギルドフォード 刑事法院でなされた有罪判決に関する控訴を棄却した二〇〇〇年四月二一百の控訴審の決定について、二〇〇一 年二月一四日に貴族院︵=o器①9いo巳ω︶の上訴委員会︵︾唇o巴Oo日巨菖8︶の許可に基づいて上告した。 ︵2︶ 法務総裁付託三号事件 @事件概要 被告人は、A級ドラッグ︵ヘロイン︶を供給した罪および供 給に関与したという二つの罪で起訴されたわけだが、検挙されるまでの状況は次の通りである。 身分秘匿捜査官はSと呼ばれている男に会い、Sに対して、[密輸品]の煙草を購入したいかなどと尋ねた。 Sは被告人がいるところまで身分秘匿捜査官と一緒に行った。Sは被告人が乗っている車に行き、煙草が渡され た。そこでは、煙草に関する会話が交わされた。﹁私たちにブラウン︵麻薬︶を準備することはできるか﹂。その 56