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PFN と TKA コンポーネントの間での大腿骨骨幹部骨折の1例

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Academic year: 2021

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PFN と TKA コンポーネントの間での大腿骨骨幹部骨折の1例

旭川赤十字病院 整形外科 森 井 北 斗 加 茂 裕 樹 高 橋 滋 小野沢 司

Key words :Femoral shaft fracture(大腿骨骨幹部骨折)

Total knee arthroplasty(人工膝関節置換術)

Proximal femoral nail(大腿骨近位髄内釘)

要旨:大腿骨近位の PFN と遠位の TKA コンポーネントの間での大腿骨骨幹部骨折を経験した.手 術に際し PFN を抜去するか否か,内固定材料をどうするか考えたが,抜去せずに LCP を用いての ダブルプレーティングを施行.結果的には受傷以前の ADL が得られたが,手術方法,内固定材料 に関して検討の余地があったと思われる.本症例のような高齢者に対する手術は,手術侵襲を考慮 し,最終的な ADL を含めて慎重に検討する必要がある.

は じ め に

大腿骨近位のPFNと遠位のTKAコンポー ネントの間での大腿骨骨幹部骨折を経験した.

比較的稀な本骨折に対し,手術方法や内固定材 料について検討を要したので報告する.

4歳女性,自宅内でトイレに行こうとして転

倒した.近医を経て受傷2日後,当院救急外来 を初診した.元々,両杖で歩行は自立していた.

既往歴として89歳時に左大腿骨転子部骨折に対 して骨接合術を受け,その4ヵ月後,右膝OA に対しTKAを施行されていた.90歳時には再 度転倒により右大腿骨転子部骨折を受傷し,骨 接合術を施行されていた.

初診時,右大腿の変形と同部に強い疼痛を認 め,血液生化学所見では軽度の貧血のみで他の

図−2 初診時単純 X 線右 大腿骨側面 図−1 初診時単純 X 線右大腿骨正面

− 4 2 − 北整・外傷研誌 Vol. 2 6. 2 0 1 0

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検査値は特に異常を認めなかった.

大腿骨2方向X線(図−1,2)にて大腿 骨 骨 幹 部 骨 折 を 認 め た . 股 関 節 正 面X線 像

(図−3)では両大腿骨近位にそれぞれPFN が挿入されており,転子部での骨癒合は良好で あった.TKA周囲の大腿骨骨折の分類である Rorabeck分類ではType と考えた.リコン ストラクションCT(図−4)の矢状断でTKA コンポーネントまで達する骨折線を認めた.

受傷後4日,骨接合術を施行した.大腿骨外 側 ア プ ロ ー チ か ら 骨 折 部 を 展 開 し 整 復 し て Synthes Distal Femoral Plate9穴とLC-LCP 9穴の二枚を用いて固定した(図−5,6).

出血量は4だった.術後1週で車椅子に乗 車し,股関節の他動関節可動域訓練を開始し た.術後5週から部分荷重にて歩行訓練を開始 し,術後3ヵ月で両杖歩行で退院した.術後6 ヵ 月 で ほ ぼ 骨 癒 合 が 得 ら れ て い る .( 図 − 7,8)

PFNTKAコンポーネントの間の大腿骨 骨幹部骨折は我々の渉猟した限りでは報告が無 かったが,日常診療においては,経験する可能 性のある骨折と思われる.ADLが比較的保た れており,全身状態が安定している患者に対し

図−3 初診時単純 X 線股関節正面

図−4 初診時右大腿リコンストラクション CT 矢状断

北整・外傷研誌 Vol. 2 6. 2 0 1 0 − 4 3 −

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て手術療法は有効と考えるが,PFNを抜去す るかどうかといった点や,内固定材料の選択と いった点に関して一考を要する.PFNを抜去 し内固定を行う方法は,近位骨片の抜去後の骨 孔や,TKAコンポーネントまで及んでいる骨 折線のことも考える必要がある.PFNを抜去 せず固定する場合の内固定材料は,ケーブルプ レートシステムや,CCGバンド,ドールマイ ルズ・ケーブルシステム,ロッキングプレート を始めとするプレートなどを用いる方法があ

る.ケーブルプレートシステムはプレートに ケーブルの通る穴があいているタイプのもので あるが,近位骨片がケーブルのみの固定である 場合,回旋に対する固定力に疑問がある.CCG バンドは固定面積が広くケーブルとくらべると 安定が得られるが,骨膜の血流を阻害し骨癒合 には不利であると思われる.Fullkersonらは 人工股関節周囲骨折モデルに対するケーブルプ レートシステムとロッキングプレートの力学的 試験では捻転力,軸圧,ベンディング力におい 図−5 術後単純 X 線右大腿正面 図−6 術後単純 X 線右大腿側面

図−7 最終経過観察時右大腿単純 X 線正面

図−8 最終経過観察時右大腿単純 X 線側面

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てロッキングプレートが有利として お り1)

Largeらは人工膝関節周囲の大腿骨顆上骨折に

対してのロッキングプレートと従来のプレー ト,逆行性髄内釘を比較し,骨癒合率,再置換 率,変形治癒率いずれにおいてもロッキングプ レートが有利であったとの報告している4).本 症例では超高齢者に対する手術であることを考 え,早期離床が可能である固定力の獲得を優先 し,LCPでのダブルプレーティングを施行し た.他の固定法とくらべ固定性に関しては有利 と思われたが,骨折部を大きく展開したため侵 襲は大きくなってしまい,また長いロッキング プレートはベンディングが難しく,骨形状には 合わせにくいといった短所もあった.最近発売 さ れ たSYNTHES 社 製 LCP Curved Broad

Plateはアナトミカルカーブにより骨形状との

適合が期待でき,またスクリュー先端がフラッ トになっているPeriprosthetic Screwやスク リューヘッドにワイヤーを通すことが可能な Positioning Pinを使い分けることもできるの で,最小侵襲手術の手技も加えると本症例のよ

うな骨折には有用と考える.文献では松村らが 人工股関節周辺骨折に対するLCPを用いた低 侵襲手術をケーブルプレートシステムと比較3)

し 有 用 で あ っ た と 報 告 し て お り ,Chak- ravarthyらが人工股関節周辺骨折に対しLCP, Periprosthetic Screwは有用であるとの報告2)

している.今回は最終的に受傷以前のADL 得られたものの,本症例のような骨折は症例ご とに慎重な手術計画が必要であると考えられ た.

1. 大 腿 骨 近 位 のPFNと 遠 位 のTKAコ ン ポーネントの間での大腿骨骨幹部骨折を経験 した.

2.LCPに よ る ダ ブ ル プ レ ー テ ィ ン グ を 行 い,良好な成績を得た.

3.今回は使用できなかったが人工関節周辺骨 折用のLCPを用いた低侵襲手術も有用と考 えられた.

1)Fulkerson E, et al. : Fixation of periprosthetic femoral shaft fractures associated with ce- mented femoral stems. J Orthop Trauma26;20:89−93.

2)Chakravarthy J, et al : Locking plate osteosynthesis for Vancouver Type B1and Type C pe- riprosthetic fractures of femur : A report on12patients. Injury27;38:75−73.

3)松村福広ほか:人工股関節周辺骨折に対するlocking compression plateを用いたMIPOの治 療経験.東日本整災会誌 28;20:16−11.

4)Large TM, et al. : Locked plating of supracondylar periprosthetic femur fractures. J Arthro- plast28;23:15−10.

北整・外傷研誌 Vol. 2 6. 2 0 1 0 − 4 5 −

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