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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博士 (水産科学)田原大輔 学位論文 題名

クルマエビ(Peneus laponicus) のプロスタグランジン 測定系の開発とその生理作用に関する研究

学位論文内容の要旨

  

現 在、 海産 エビ 養殖 に不 可欠 な種苗の供給は、天然産の成熟した親エビを用 いて 行わ れて いる 。し かし 、エ ビ養殖事業の発展に伴う親エビ需要の増大、天 然産親エビの.漁獲量の減少、ウィルス病の蔓延などにより、親エビの安定した 確保 が困 難橙 状況 にあ る。 クル マエビは人工飼育下において、雄は体長12セン チ以 上に なれ ぱ成 熟す るの に対 し、雌は容易に成熟しなぃ。そのため、人工飼 育下で雌親エビを養成するための人為成熟・産卵誘発技術が切望されているが、

Penaeus

属の生 殖に 関す る内 分泌 機構 およ び卵 形成 機構 につ いての研究は少な い。

  

こ れま で水 槽で 成熟 した 雌親 エビを養成するためには、多毛類を補助的に給 餌す るこ とが

Penaeus

属 の卵 巣の 成熟 に効 果的 であ るこ とが 知られている。こ のこ とは 、多 毛類 に多 量に 含ま れている必須脂肪酸であるりノール酸やりノレ ン 酸 の 高 度 不 飽和 脂肪 酸を 前駆 体と する プロ スタ グラン ジン

(PG)

が生 殖と 何 らか の関 係を 有す るこ とを 示唆 している。PGは、多くの生物の生殖に関与し、

分娩 のみ なら ず、 性周 期と も密 接な関係があることが知られている。近年、淡 水産甲殻類においても、卵形成にプロスタグランジンF2。(PGF2。)およぴプロス タグ ランジンE2 (PGE2)が関与していることが示され、PG類は卵の最終成熟およ び産卵のみならず、卵黄形成過程全般に関与している事が示唆されている。し かし 、海 産甲 殻類 であ るク ルマ エビでは、PGと卵成熟の関係を調べた研究はな い。

  

本 研究 では 、ク ルマ エビ の人 工成熟技術を確立するための一助として、次の

3

項目について調べた。

I

. プロス タグ ラン ジン 測定 系の 開発

  

高 速 液 体 ク ロ マトグ ラフ イー

(HPLC)

2

抗 体法を 用い たラ ジオ イム ノア ッ セイ

(RIA)

によ るPGF2。 およ びPGE2測 定系 を確 立す るた めに 、HPLCおよびRIA

(2)

の 最 適 条 件の 検討 を行 った 。は じめ にPG類をHPLCで 分離 する 条件 を検 討し た 結 果 、

p

Bondasphere C18

分 析 カ ラ ム(3.9 mm内径

x15 cm)

を用 い、

17 mM

リ ン酸:アセトニトリル(70:30)を移動相として、流速1.25m1/min.で分離を行 うのが最適であった。さらに、PGF2。およびPGE2のRIA測定系の反応液組成を検 討 した 結果 、正 常ウ サギ 血清を含まなぃEDTA―PBSで希釈した第1抗体0.lm1、

1

%BSA−PBSで 希釈 したト レー サー およ ぴア ッセ イバ ッファーO.1mlを用いる の が最 適で あっ た。 また 、PGF2。測定系では第1抗体希釈率10倍およぴ第2抗体 希釈率60倍とし、2−12hrの反応条件下で、またPGE2測定系では、第1抗体希釈率

lO

倍および第2抗体希釈率40倍とし、2−2ー12hrの反応条件下で測定を行うこと と した 。こ れら の反 応条 件で標準曲線を作成し、測定系を評価した結果、本法 は 十分 な測 定精 度お よび 感度を有していることがわかった。以上のことから、

常法に従い測定試料から固相抽出カートリッジでPG類を抽出後、HPLCでPGFエ。お よびPGE2画分を回収し、2抗体法によるRIAでPGF2。およぴPGE2を定量することと した。

H

.卵巣発達に伴うプロスタグランジンの変動

  

前 章で 確立 され たPG測 定方 法を 用い て、 実際にクルマエビ血リンパおよび卵 巣の

PG

類 の測 定を 行い、 同時 に卵 巣に おけ るPG前駆体の高度不飽和脂肪酸をガ スク ロマ トグ ラフ イーで 測定 し、

PG

お よび 前駆脂肪酸と卵成熟との関係を調べ た。 はじ めに 、前 処理の 有効 性を 検討 する ために、クルマエビ血リンパおよび 卵巣 試料 の平 行性 試験お よぴ 回収 試験 を行 った。その結果、前処理を行った血 リンパおよぴ卵巣の測定サンプルの希釈系列曲線は、PGF2。およびPGE2いずれの 測定系においても標準曲線との平行性が認められた。また、PG回収試験の結果、

前処 理を 行っ た測 定サン プル では 、添 加し た既知量の標準物質を正確に測定す るこ とが でき た。 以上の 結果 から 、ク ルマ エビ血リンパおよび卵巣のPG測定に は、本実験の前処理法が有効であることが確認された。

  

次 に 、 卵巣 の 発 達 段 階 を、 卵巣 の色 調を 基に ステ ージIから

V

に分 類し 、異 なる 成熟 段階 にお ける血 リン パお よび 卵巣 のPG量を測定した。その結果、クル マエビ卵巣および血リンパ中にPGF2。とPGE2の存在が確認され、血リンパのPGF。 およ びPGE2量 は、 いずれ も卵 黄合 成期 初期 のス ーテ ジHに 有意 に増 加し た。ま た、卵巣においても未成熟または卵黄合成初期に相当するステージIでPGF:。お よびPGE2含有量は顕著に増加し、卵黄合成期には減少した。さらに、卵巣中の高 度不飽和脂肪酸含量を調べた結果、PGF2。およびPGE2の前駆体であるn←6系のりノ ール 酸お よび アラ キドン 酸の 含有 量は 、卵 巣の発達に伴い増加することが分か った 。以 上の こと から、 リノ ール 酸お よび アラキドン酸の変動パターンは、卵

(3)

巣内PGの変動ノくターンと相反していたことから、この時期に前駆体であるアラ キ ドン 酸か らのPG類の合成が活発に行われ、増加したPG類が卵巣発達に機能し ていることが示唆された。

m

.プ ロス タグラ ンジ ンに よる 卵巣 発達 促進 効果

  

はじ めに

PG

のクルマエビ卵巣発達効果を明らかにするために、PG類およびア ラ キド ン酸 を多く含むオゴノリ脂質抽出物を飼料に添加し、未成熟雌クルマエ ビ に投 与し 、成熟促進効果を検討した。その結果、オゴノリ脂質抽出物を与え た 実験 群で は、 ビテ ロジ ェニ ン(VTG)合 成を行う肥大した濾胞細胞の出現率が 増 加し た。

  

っぎ に生 体外で卵巣組織片を培養し、PGの卵巣発達に対する促進効果を検討 し た。 その 結果、PGE2添加群の一部では、著しく肥大した濾胞細胞塊の出現が 確 認さ れた 。以上より、PG類またはその前駆脂肪酸が、卵巣の濾胞細胞の肥大 化 に関 与し てい るこ とが 明ら かと なづ た。

  

以上 の結果 から 、本研究では重要な増養殖対象種であるクルマエビのPG測定 法 を確 立し、 クル マエ ビ卵 巣の 濾胞 細胞 にお けるVTG合成にPGFz。船よびPGEz を 含む

PG

類が 関与 して いる こと を示 唆し 、Penaeus属の卵成熟機構に新たな知 見 を提 唱した 。ま た、オゴノりを利用したクルマエビ配合飼料による成熟促進 効 果を 明らか にし 、オゴノリ脂質抽出物が成熟促進添加物として有効であるこ と を示 した。

(4)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   麦 谷 泰 雄

副 査    教 授    原    彰彦 副 査    教 授    板橋    豊 副 査    教 授    矢野    勲 副査   助教授   清水幹博

学 位 論 文 題 名

クルマエビ(Pe7zeus jap07zicus) のプロスタグランジン 測定系の開発とその生理作用に関する研究

  クルマエビは重要な栽培漁業の対象種であるが、種苗生産はすべて天然から捕獲さ れた成熟エビに依存している。しか.し近年、エビ養殖事業の発展に伴う親エビ需要の 増大、親エビの漁獲量の減少、ウイルス病の蔓延などにより、安定した種苗の供給が 困難な状況にあり、人為的に良質の成熟卵を得、大量の種苗生産を行うことが強く望 まれている。

  本研究はクルマエビの人為催熟技術を確立するための一助として行われたものであ り、申請者は、生理活性物質のーつであり、高度不飽和脂肪酸を前駆体として合成さ れ るプロス タグラ ンジン(PG)の 作用に着目し、卵巣発達に伴う血リンパと卵巣のPG 量 の変動を 解析し 、また合 せてPGを多量に含有するオゴ丿リ抽出物を飼料に添加し て 未成熟雌 エピを 飼育し、PGの卵成熟促進効果を検証した。得られた結果の概要は 次の通りである。

1. 高 速ク ロ マ トグ ラ フ イ(HPLC)とラジオ イムノア ッセイ の諸条件 を検討 し、最     適条件を組み合せることにより、また試料(血リンパと卵巣)の夾雑物を除去す     る など前 処理を的 確に行う ことに より、血 リンパ と卵巣のPG類(PGF2。および     PGE2)を迅速かつ正確に測定することが可能であった。なお得られた最適条件は     次の通りである。先ず試料のPG類を固相カートリッジで抽出し、メ‑Bondasphere     C18カラム を用いて 、17 mMリン酸: アセトニ トル(70:30)を移動 相として 流     速1.25 ml/minで分 離し、 正常ウサ ギ血清を 含まな いEDTA‑PBSで希 釈した第1     抗体0.1 ml、1% BSAPBSで希釈したトレーサーおよぴアッセイバッフアー0.1 ml     を 使 用 する 。 ま たPGF2。 (PGE2)測 定系 で は 、第1希 釈抗体の 希釈率 を10     お よび第2抗体 の希釈率 を60倍(40倍)とし、2‑12 hr (2‑2‑12 hr)の条件下で     反応を行う。

2.異な る成熟 段階にお ける血リ ンパと 卵巣PGの回 収率を 検討した。卵黄穎粒期で     は56u/o〜60%、未成熟期および卵黄合成初期では66% ‑‑73010であった。またHPLC     による回収率は全ステージを通して約85 010であった。これらの値を用いて血リン     パ と 卵 巣 のPG濃 度 を 補 正 し 、 各 個 体 の PG濃 度 を 算 出 し た 。 3.血リ ンパのPGF2。およびPGE2量はぃ ずれも前 卵黄合 成期〜卵黄合成初期に増加

‑ 325

(5)

    することが明ら かになった。また卵巣でも前卵黄合成期および卵黄合成初期に     PGF2。とPGE2の 含有量が顕著に増加し、卵黄合成期にはむしろ減少した。生殖     腺 指 数 と 血 リ ン パ ま た は 卵 巣 のPG量 と の 間 に い ず れ も 相関 はな か った 。 4.卵 巣の 高 度不 飽和 脂肪 酸であるn‑6系のりノール酸およびア ラキドン酸含有量     は、卵巣の成熟が進むにっれて増加し、卵黄合成期に最高値を示した。この様に     PG類の前駆物質 の変動バターンは、卵巣内のPG類の変動パターンと相反してい     たことから、前 卵黄合成期〜卵黄合成初期にアラキドン酸などからPG類が合成     さ れ 、 増 加 し たPG類 が 卵 の 成 熟 に 関 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 5.アラキドン酸などを多く含むオゴノリ脂質抽出物を飼料に添加し、未成熟雌エビ     を21‑‑ 25日問飼育することにより、顕著な卵成熟促進効果が認められ、93%の     個体(対象群46%)でビテロゲニンの合成を行う肥大濾胞細胞の出現が認めら     れた。

6.次に 生体外で卵巣組織片を培養し、PG類の卵巣発達に対する 促進効果を検討し     た。その結果、 培地にPGF2。またはPGE2を添加しても排卵を含む最終成熟を誘     導できなかったが、0.1 ppm PGE2添加群の一部の個体に著しく肥大した濾胞細胞     塊が出現した。

  以上の研究成果は 、重要な増養殖対象種であるクルマエピのPG類の測定法を確立 し、クルマエビの卵 成熟にPG類が関与していることを種々の手法により初めて明ら かにしたものであり、今後の本種の人為催熟技術の開発に貢献するものである。よっ て審査員一同は、本研究の申請者が博士(水産科学)の学位を授与されるに十分な資 格を有すると判定し た。

326

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