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博士(理学)内山 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)内山 学位論文題名

Quantum ‑lVIechanical States as Ensembles of         States in a Classical Phase Space

(古典的位相空間内の状態のアンサンブルとしての量子力学的状態)

学 位論文内容の要旨

  量子力学に於て 、測定以前にあらかじめ測定の結果が決定しているとす るとどうなる のかという議論の 中で、ベルの提出した議論ほど反響を呼び、それにっい ての理論、実 験ともに多くの研 究が為されたものは珍しい。ベルはシングレット状態に あるスピン‐

1/2粒 子対 が各 々反 対の 速度 で離 れ てい った 後に 各々 のス ピン の測 定を する とい うEP R‐ボ ーム の思 考実 験に 於て 、予め測定の結果が決定している隠れた状態 のアンサンブ ルを仮定し、更に スビンの測定の局所性を表わす仮定を加えて、スピン対 の相関に関す る統計不等式を証 明した。そして、このべルの不等式が破れれば、一方の スピンの測定 が、非局所的に他方、のスピン の測定結果に影響を及ばすという遠隔作用の存在を意味す ると主張した。そ の後に、実験技術の進歩により、ここ二十年ほどのあい だになされた 多 く の ( 主 に 光 子 対 に 関し て の)EPR型 の実 験で べル 型の 不等 式の 破れ が確 認さ れ、

量子力学には不可 思議な遠隔作用といった非局所的な性質が備わっている と広く信じら れている。この不 可思議な遠隔作用の存在を認めるか否かは物理学にとっ て重大な問題 であり、一部の物理学者達によ り、現実の実験における様々ナょ要因(ディテクターの効 率の低さ、同時計 数の使用)により遠隔作用が無くてもべル型の不等式が 破れ得ること が指摘されている。

  本研究では、粒 子描像にもとづく古典的で局所的なスピンの測定過程の 動的模型を構 成し、スピン対の 同時計数が原因でベルの不等式が破れ得る事を示した。 スピンに関し て、 元 のべ ルの 議言 侖に 忠実にディテクター の効率が100%であるとして このことが示 されたの;まこれが初めてであ るっ

  まず、粒子描像にもとづく古 典的ナょ単一のスピンの測定過程の動的模型を構成した。

このスピンの測定 の模型は、測定過程における隠れた状態の変化を常微分 方程式で表わ し、隠れた状態は 各々の測定値を持つ状態へと変化してしてゆく様に構成 されている。

各測定値を持つ隠 れた状態の集合は、測定過程を表わす常微分方程式のア トラク夕一に なる。このアトラ ククーに一様に分布する隠れた状態のアンサンブルをそ の測定値に対 応した量子力学的 固有状態に対応させる。これは本研究の模型の新しい特 徴である。単 一のスピン‑1/2の 対象の測定においては、対象がいつ測定器に入りいっそ こから出てゆ くのかという運動 の詳細は重要ではないので、この段階ではそれらを表わ す自由度は無 視す る 。対 象の 隠れ た状 態は 以下 のよ うに6次元 空間 の点 で表 わせ ば十 分で ある 。S‑

  (Sx,Sy,Sz) 、U= (Ux,Uv,Uz) と お き 、 こ の 空 間 の 座 標 を (S,U) と す る。Sはス ピン ヴェ クト ル、Uはそ の他 のあ る自 由度 を表 わす 。 スピ ンのz一 成分 の測 定過程を、ニっの アトラクターゼ1、ゼ2を持つ常微分方程式によってモデ ル化する。こ こで、

61―

(2)

    a1=t(S U):Sz‑j、|si=J、Uz‑J、Ux=UV= 0l、

    a2‑t(S,U):Sz‑ーj、|S|=J、Uz=―J、Ux‑‑UV 0l、

j =1/2、J2:3/4である。スピンのz一成分の測定におけるアトラククーゼ1にー様に 分布する隠れた状態のアンサンブルをスピンのz一成分の上向きの固有状態と同一視す る。他の固有状態にっいても同様ナよアンサンブルとの同一視を行ナよう。スピンのzー成 分の測定過程を表わす常微分方程式の解として、対象の隠れた状態は、aiまたはゼ2に 漸近的に収束するので、隠れた状態がどちらかのアトラクターの定まった適当な近傍に 入り安定化された時を測定の終了とみなす。スピンの他の成分の測定は異なる設定の測 定器セ行なわれるので、この測定過程に於ける隠れた状態の変化を記述する方程式は異 ナよったものとなる。スピンの他の成分の測定は、スピンのz一成分の測定の模型から測 定しようとする軸に回転する操作により自然な方法で得られるものとする。様々な方向 のスピンの固有状態に対応する隠れた状態のアンサンブルを初期条件としてスピンのZ 一成分の測定過程を表わす常微分方程式を数値的に解いて解を求めた。その解のアンサ ンブルから計算されたスピンが上向きになる確率は、対応する量子力学の結果とよく一 致していることが確かめられ、この意味で上の模型はスピン‑1/2対象の測定過程の模型 といえる。

  さて、次にこの単一のスピンの測定の模型をEPR−ボームの思考実験に拡張する。

この場合、スピン対が問題なので隠れた状態はニっの6次元空間の直積である12次元 空間の点で表わされる。EPR一ボーム状態はシングレット状態なので、回転不変であ りかっスピン対は負の相関を持っている。これらニっに特徴付られる12次元空間内の ある部分集合sに一様に分布するアンサンブルを初期条件とした。さらに、実際の実験 では捕らえられた対象達が対であることを認識するために同時計数を使わナょければなら ない。従って、今度はスビン‑1/2対象の測定器内の運動の詳細を無視することはできな い。この運動に関しては、ある敷居時間Tがあって、測定の終了時間がTより大きくな ると測定器との相互作用の結果として位置にぱらっきが生じ、そうでないときは素通り すると仮定した。この仮定から、対を成す各々のスピンの測定の終了時間が共にT以下 である対だけが同時に計数される確率が1であることが示される。ベルの不等式を最大 に破るTを、前と同様にして数値的に求めると、T ‑ 0.133であった。このとき、スピ ン対の相関は量子力学の結果と近似的に合致し、この模型は遠隔作用ナよしでべルの不等 式を破ることも確かめられたョこれには、同時計数を使っていることが本質的である。

実際、同時計数を使わない場合(T ‑∞での計算と同等)は、ベルの不等式を満たして ることが確かめられた。かくして、遠隔作用なしにべルの不等式を破る模型が構成され、

ベル の不等式の 破れは必 ずしも遠 隔作用の 存在を意 味しナょ いことが示 された。

  本研究では、EPR−ボームの実験において、同時計数が見かけの非局所性の源であ り遠隔作用は存在しナよいという考えを支持するスピン‑1/2対象に関する新しい模型をつ   くることに成功した。従って、もし現在の量子力学の記述の背後に隠れた状態のアンサ ンブルが存在すると仮定しても、本研究の模型のような機構があれぱ、遠隔作用の非存 在と い う物 理 学 の伝 統 的な 考 え 方と 量 子 力学 に は矛 盾 は ない ことが示 された。

‑ 62 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 教授 教授

副 査   教 授   石 垣 壽 郎

学 位 論 文 題 名

Quantum‑lVIechanical States as Ensembles of         States in a Classical Phase Space

( 古典 的 位 相空間 内の状態の アンサン ブルとし ての量子 力学的状 態)

現 代 物 理 学 の 柱 の ー っ を な すiケ ロ な 自 然 現 象 を 記 述 す る量 子 諭で は 、 運動 方 程式 よ り 決 定 さ れ る 複 素 被 動 関 数 が 物 理 状 態 を 表 わ し 、 波 動 関 数 の 絶 対 値 の2乗 等 の 実 数 値 が 確 率 と し て の 測 定 値 を 与 え る 。 一 方 、 古 典 論 で は 、 実 数 値 が 直 接 運 動 方 程 式 よ り き ま り 、 決 定 諭 的 な 測 定 値 を 与 え る 。 量 子 論 の 測 定 値 に 対 す る 非 決 定 諭 的 性 格は量子 諭の初期 の頃より 、アイン シュタイ ンを初め多 くの物理 学者をな やませた。そ の た め 、 決 定 諭 的 性 格 を 持 つ 隠 れた 変 数の 理 論 が考 え ら れた が 、へ ゛ ル の不 等 式と そ の 実験的検 証により これらは 、否定さ れたかに みえる。

  近 年 、 へ ゛ ル の 不 等 式 と 矛 盾し な い 局所 的 隠れ た 変 数理 論 の可 能 性 が議 論 され て き た が 、 これ ら は スヒ . ン1の粒 子 に 関す る もの で あ る。 最 も基 本 的 なス ヒ .ン  1/2に 関 す る も の は 未 開 拓 で あ り 、 今 後 の 発 展 が 待 た れ て い る 状 況 に あ る 。   本 論文 は 、 この よ うな 現 況 にあ る スヒ ゜ ン1/2にか んして、 へ゛ルの不 等式と相 容れ る 隠 れ た 変 数 理 論 を 構 築 し 、 こ れ をEPR‑t゛ − ム の 思 考 実 験に 適 用 する こ と によ り 、 へ ゛ ル の 不 等 式 の 破 れ が 必 ず し も局 所 的隠 れ た 変数 理 論 を否 定 する も の でな い こと を し め し た 。 こ の 議 論 で は 、 同 時 計 数 を 使 う こ と が 本 質 的 な と こ ろ で あ る 。   著 者 倣 、 ス ヒ . ン1/2に 対 す る 隠 れ た 変 数 理 論 と し て 量 子 論 的 固 有 状 態 に 対 す る ァ ンサンフ ゛I解釈と 測定過程に対する7トラケタ‐を持つ非線形微分方程式とのニっからな る 模 型 を提 案 し た。71ラ ヶ タ ーを 持 っと こ ろ に新 し さがある この非線形 微分方程 式は、

一 っのへ゛01ルが角運 動量に対 応し、他 のへ´ウIルが隠れた変数に対応するニっのへ゛01 ル を 含 む。 方 程 式が71ラ ヶ タ ーを 持 った め 、 解は 初 期条件に 関係なく、 安定して いる。

そ のため、 スヒ.ン との対応 がみやす い。この 模型を初め 単一スヒ ゜ンに適 用し、量子化 の 軸 を 変 え た 時 の 測 定 に っ い て 量 子 力 学 と 一 致 す る 結 果 を 得 た 。 き ら に こ れ をEP R‑t'ー ム の 思考 実 験に 適 用 した 。 二 っの ス ヒ. ン の測 定に対し て同時計数 を使うこ とに よ り 、 局 所 的 な 隠 れ た 変 数 理 論 であ り なが ら 、 へ゛ ル の 不等 式 を破 る 量 子力 学 の結 果 と 一 致 す る 相 関 を 得 た 。 ス ヒ . ン1/2に関 し てこ れ が しめ さ れた の は 初め て であ る 。 こ れ は 、 ス ヒ . ン1/2に っ い て の 隠 れ た 変 数 理 論 と し て の ー っ の 模 型 で あ る 。 こ れ で 量 子 力 学 と 一 致 す る 結 果 を 得 た こ と よ り 、 へ ゛ み の 不 等 式 の 破 れ が 必 ず し も 隠 れ た 変 数 理 論 を 否 定 す る わ け で は な く 、 量 子 力 学 的 結 果 が 遠 隔 作 用 を い み す も の で は な い こ と が 明 確 に な っ た 。 量 子 力 学 が 間 違 っ て い る と 考 え る 物 理 学 者H現 在 皆 無 で あ る が 、 本 論 文 の 結 果 は 基 礎 的 な 所 に 関 す る も の で 、 物 理 学 や 自 然 哲 学 の 分 野 で有益で ある。

  こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 局 所 的 な 隠 れ た 変 数 理 論 に 関 し て 、 ス ヒ ゜ ン1/2局 所 的 隠 れ た 変 数 の 理 論 が 存 在 す る こ と を は じ め て 明 か に し た 。 こ れ は 、 物 理 学 と 自 然

が あ る も の と 認 め る 。

63ー

( 理 学 ) の 学 位を 授 与 され る 資格

三 昇 健 川 本 石 河

査 査 主 副

   

参照

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