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博 士 ( 理 学 ) 鍵 山 直 人 学 ー 位 論 文 題 名

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博 士 ( 理 学 ) 鍵 山 直 人

学 ー 位 論 文 題 名

Development of a highly sensitive fluorescent      method for detection of nucleic acids

( 核 酸 検 出 の た め の 新 し い 螢 光 法 の 開発 )

学 位 論 文 内 容 の要 旨

    分子生物 学の分野においては、核酸ハイプリダイゼーション法、塩基配列決定法やPCR法などの 技術開発の結果、遺伝子に関する構造・機能の解析が可能となり、その情報は理学、医学、農学、工学な ど幅広い分野で利用されるようになった。核酸の検出には、従来、放射性同位元素(RI)が広く用いられ ていたが、最近では非RI検出法も用いられるようになった。その背景にはRIの不安定性のほか、設備や廃 棄物処理の問題、さらには研究者の健康管理の問題等がある。非RI検出法はこれらの問題を解決したが、

核酸検出の感度や解像度の面で問題を残している。そのため、高感度が要求されない塩基配列決定法やP CR法では非RI検出法が広く用いられているが、核酸ハイブリダイゼーションでは必ずしもそうではない。

    核酸ハイブリダイゼーションには、抽出精製した核酸を解析するフアルターハイプリダイゼーショ ンと、組織細胞や染色体上で核酸を検出する面situハイプリダイゼーションがある。前者では、酵素標識 が主流であり、用いる基質の違いで発色法と化学発光法に分けられるが、発色法はRI法に比ベ高解像度で あるという長所を持つ反面、検出感度が低い。化学発光法は、感度はRIに匹敵するが、解像度や定量性と いう点で問題がある。最近になってイメージングプレート(ロ)を用いた機器の開発によりRIシグナル や化学発光シグナル検出の感度・定量性が飛躍的にアップしたが、ロを用いたシステムは高価であり普及 性という点で難点がある。また、このシステムは放射線・発光を螢光シグナルに変換するというステップ を含んでいるので、結局は高感度で定量性に優れている方法は螢光検出法であることを示唆している。

    面situハイプリダイゼーションでは、抗体等を螢光色素で直接標識したものを用いる螢光法が主流で ある。RIは検出に数週間もの長時間を要し、化学発光法は解像度が低く利用に適さない。酵素標識を利用 した発色法は解像度と検出の簡便さという点で優れているが感度が低い。FITCを用いた螢光抗体染色法 は組織細胞中や染色体上での核酸の検出に広く用いられているが、標的に結合させうる色素数に限りがあ るため感度をさらに向上させることは容易ではない。また、この方法は共焦点レーザ一顕微鏡(CLSM) による解析にも用いられるが螢光の退色が早いという欠点がある。

    本研究では核酸ハイプリダイゼーションにおける上述の問題を解決するために、酵素による螢光シ グナル増幅系の導入を試み、フィル夕一や細胞・染色体に強く沈着する螢光基質の開発を行った結果、高 感度・高解像カの新しい方法の開発に成功した。

    第一章ではフアルターハイプリダイゼーションに用いる螢光基質の開発について述べた。標識酵素 としては比活性が高く安定なアルカリ性ホスファターゼを採用し、その基質となる螢光物質の合成を行っ た。クマリン誘導体26種、フレオレセイン誘導体6種、ペリレン誘導体7種、ナフトール誘導体50種、ア ントラセン誘導体10種、その他2種を合成し、ナイロンメンブレンフアルター上でスクリーニングを行っ た。合成する螢光物質の決定に当たっては、共役二重結合が多く存在し、化合物の構造が平面であるとい う条件を満たすようにし、スクリーニングを行った結果をもとに、経験的に、置換基の種類と数や位置を 変えて一連の合成を行った。スクリーニングの基準は@ナイ口ンの自家螢光のない480 nm以上の長波長

180

(2)

域 に螢光をもつ 、◎酵素反応後の生成物が ナイ口ンに対し強い沈着能を 有する、◎沈着後の比螢光 強度が 高 い(濃度消光 が少ない)ことである。こ れらの基準に従ってスクリー ニングを行った結果、ナフ トール 誘導体である3‑Hydroxy‑ N‑2|‑biphenyl‑2‑naphthalenecarboxamide phosphate ester (HNPP)が最も適して い るこ とが 分か っ た。 標識 酵素 であ る アル カリ 性ホ スフ ァ ター ゼと の反 応 によ り、HNPPは脱 リ ン酸 化 さ れ てHNPと な り 、 ナ イ 口 ンフ アル ター に強 く 沈着 する と同 時に 紫 外線 照射 下で510 nmの螢 光を 発す る。

    第 二 章 で はHNPP法 の 応 用 と 現 在 最 も 高 感 度 な 非RI法と され て いる 化学 発光 法 との 比較 を行 うと と もに、様々な フィルターハイブリダイゼ ーションヘの応用を試み、そ の有用性を立証した。現在 、非RI プ ロー ブに よる フ ィル ター ハイ ブリ ダ イゼ ーシ ョン においては化学発 光法が主流となりつっある が、HN PP法は感度・ 解像度・定量性のすべての面 で化学発光法より優れてい る。

    第 三 章 で はHNPP‑ア ゾ 色 素 法 の 開 発 に つ い て 述 べ た 。HNPは そ れ 自 体 で は 組 織 細 胞 や 染 色 体 ヘ 沈着せず面situハイブリダイゼーションに 用いることができない。これを解決するため、アゾ色素とのカッ プ リング反応を 利用することとし、マウス 肝切片およびショウジョウバ 工唾腺染色体を用いて32種 のジア ゾニウ厶塩を スクリーニングしたところ、Fast red TRと2‑biphenyldiazonium chloddeが有用であることが分 か った。アルカ リ性ホスファ夕―ゼの基質 となる沈着性螢光色素の開発 はここ数年いくっかのグル ープで 行 われ てき てお り 、な かに は商 品化 さ れて いる もの もあるが、HNPP法 は他のいすれをも凌駕して いる。

    第 四章 ではHNPP− アゾ 色素 法を 用 いて 種々 の由 むUハイ ブリ ダ イゼ ーシ ョンを行った例を示 した。

近 年、ゲノム解 析が世界的規模で行われて いるが、中でも遺伝子マッピ ングは重要な技術である。 しかし 数 キ口 ペー ス以 下 のプ 口ー ブの 場合 、 マッ ピン グが 困難なことが多い 。本章では、まずFITCを用 いた従 来 の螢光面餓‖ ハイプリダイゼーション法 (FISH法)との比較を行い、 本法の有用性を示し、次に 従来の FISH法 では 出来 な かっ た短 いd)NAプ口ー ブを用いたマッピングを行い 、従来法より高感度である ことを 示 した 。ま た、 酵 素反 応に より生成した螢 光色素は励起光による退色 が少ないという利点があるの で、C LSMによ る 検出 など 比較 的強 い 励起 光源 に曝 さ れる 場合 に適 して い る。 本章 では実際にショウジ ョウバ 工3齢 幼 虫 の 複 眼 成 虫 原 基 での 面釦 ハ イブ リ ダイ ゼー ショ ンを 行 いCLSMで の検 出 を行 って その 有用 性を実証した 。

    従 来の 螢光 基 質は ナイ ロン フア ル ター や組 織細 胞への沈着能が劣 り、解像度が著しく低かっ た。そ の ことが酵素標 識螢光法(enびnle恤kedauorescence盤sり、EIJA)のハ イプリダイゼーションヘの 応用を 妨 げ て き た 。HNPPの 開 発 に よ っ てEIJA法 の 最 大 の 欠点 であ る沈 着 性の 問題 を解 決 した が、 この 方法 は 、核酸の検出 のみでなく、酵素標識を利 用した様々な物質の検出にも 応用が可能であり、これま で見え なかったもの を可視化するなど基礎科学分 野への貢献が期待される。

(3)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

堀 吉田 高木 木村

学 位 論 文 題 名

    浩 廸弘 信夫 正人

Development of a highly sensitive fluorescent     method for detection of nucleic acids

( 核 酸 検 出 の た め の 新 し い 螢 光 法 の 開 発 )

  分 子 生 物 学 的 手 法 に よ る 遺 伝 子 の 構 造 及 ぴ 機 能 の 解 析 に は 、 従 来 放 射 性 同 位 元 素

( RI) が 一 般 に 用 い ら れ て き た が 、RI法 に は ( 1)RIが 不 安 定 で あ る こ と 、

(2) 特 殊 な 設 備 ・ 機 器 を 必 要 と す る こ と 、 (3) 廃 棄 物 処 理 の 問 題 が あ る こ と 、

(4) 取 扱 者 は 特 別 の 訓 練 を 受 け な け れ ぱ な ら な い こ と 、 (5) . 取 扱 者 に 対 す る バ イ オ ハ ザ ― ド の 問 題 が あ る 。 従 っ て 、 、RIを 用 い ず 核 酸 研 究 を 可 能 と す る 技 術 の 開 発 が っ よ く 望 ま れ て い た が 、 こ の10年 間 に か な り 有 望 な い く っ か の 方 法 が 欧 米 に お い て 開 発 さ れ た 。 そ れ ら 非RI法 は 、 (1) 酵 素 を 用 い た 色 素 法 、 (2) 螢 光 法 、 (3) 酵 素 を 用 い た 化 学 発 光 法 に 大 別 さ れ る 。 こ れ ら の 方 法 は 用 途 に よ り 使 い 分 け る こ と で 、 RI法 よ り は 簡 単 に 核 酸 研 究 に 利 用 し う る し 、 実 際 に か な り 広 く 用 い ら れ る よ う に な っ て き た 。 し か し 、 こ れ ら 三 っ の 方 法 は そ れ ぞ れ 、 (1) 検 出 感 度 が 低 い 、 (2) シ ー ケ ン シ ン グ の よ う に か な り 多 量 な 核 酸 を 対 象 と す る と き は よ い が 、 単 一 遺 伝 子 を 染 色 体 上 に マ ッ ピ ン グ す る と き に は 感 度 が 悪 く 、 退 色 も 早 い 、 (3) 組 織 や 染 色 体 上 で の 検 出 に は 解 像 度 が 悪 く 利 用 で き な い な ど の 欠 点 を 持 っ て い る 。   申 請 者 は 、 こ れ ら の 欠 点 を 持 た な い 汎 用 性 の 高 い 非RI法 の 開 発 を 目 的 と し て 、 ま ず 、 水 溶 性 で 無 蛍 光 の ア ル カ リ 性 フ オ ス フ ァ タ ― ゼ (AP ase) の 基 質 と な り う る 燐 酸 化 合 物 で あ り な が ら 、 脱 燐 酸 さ れ た と き に は 螢 光 を 発 し 、 不 溶 性 と な る よ う な 物 質 の 合 成 を 試 み た 。 ク マ リ ン 、 ナ フ ト ― ル 、 ア ン ト ラ セ ン 、 ペ リ レ ン の 誘 導 体100種     ― .182― .

(4)

以 上を 合成 し上 記の 条件 を満たす物質をスクリーニングしたところ、3−Hydroxy−N‑

2

―biphenyl−2−naphthalenecarboxamide  phosphate  ester (HNPP)が得られた。  つい で ナイ ロン 膜上 に固 定し た核酸 に対 し、 ハプ テン (

biotin

また はdigoxigenin)化 プ ロ ー ブ を ハ イ ブ り し た 後 、

AP ase

で 標識 し た ハ プ テ ン に 対 す る

Fab

を カ ッ プ ル さ せ 、

HNPP

を 含 む 緩 衝 液 中 で 反 応 を 行 っ た と こ ろ 、

10fg

ま で の

DNA

510 nm

の螢光として検出することに成功した。

  

っ ぎ に 、

HNPP

を 用 い た 方 法 (

HNPP

法 ) と 現 在 広 く 使 用 さ れ て い る 化 学 発 光 法 の比 較を フイ ルタ ―ハ イブリダイゼションを用いて行ったところ、検出感度、解像 度 、 定 量 性 い ず れ に お い て も

HNPP

法 が 優 れ て い る こ と が 分 か っ た 。

  

と こ ろ が 、 脱 燐 酸 さ れ た

HNPP

は ナ イ ロ ン膜 に は 結 合 す る が 、組 織や 染色 体に は 沈 着 し な ぃ た め

in situ hybridization

には 使用 でき ない こと が分 かっ た。 そこ で こ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、

HNPP

を 含 む 緩 衝 液 中 に ア ゾ 色 素 を 共 存 さ せ 、

HNP

を アゾ 色素 とカ ップ ルさ せることとし、これに用いるための最良のアゾ色素の探索を 行 っ た 。 そ の 結 果 、

Fast red TR

2

biphenyldiazonium chloride

が 有用 であ る こ と が 分 か っ た 。 こ の 方 法 (

HNPP

AZO

法 ) を シ ョ ウ ジ ョ ウ バ ェ 、 マ ウ ス 、 ヒ ト の染 色体 にお ける 単一 遺伝子のマッピングに適用したところ、従来の蛍光法より遥 か に安 定で 強い 螢光 が得 られ、 これ まで

RI

法 でも 蛍光 法で も成 功し なか った 遺伝 子 の マッ ピン グに も成 功し た。さらにこの方法は、蛍光が強いためレーザ―頭微鏡によ る 観察 が可 能で ある と共 に、Qバン ド染 色を 施し た染 色体上でバンド・パターンと遺 伝 子の 位置 を同 時観 察で きるという利点を有する他、組織切片上での遺伝子産物の検 出も可能という極めて優れた方法であることが分かった。

  

以上 のよ うに 申請 者は 世界一 検出 感度 の高 い極 めて 有用 な非

RI

法 の開 発に 成功 し た が、 これ は申 請者 の独 創性と努カの賜物である。よって審査員一同は申請者が博士 の学位を受けるに十分な資質を有するものと認めた。

183

参照

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