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     ( 北 半 球 に お け る 海 氷 域 の 変 動 機 構 ) 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地球環 境科学 )木村 詞明

     学位論文題名

A mechanism fortheVariationofSea −iCeeXtent     intheNOrthernHemiSphere

     ( 北 半 球 に お け る 海 氷 域 の 変 動 機 構 ) 学位論文内容の要旨

  北半球の海氷域は大きく時間変動しており、過去の研究から、多くの海域でその変動が 大気場の影響を強く受けていると指摘されている。しかし、海氷域面積の変動と大気場と の関係に関しては、主にその相関関係が議論されているのみで定量的な議論はなされてい ない。また、両者間に介在するメカニズムについても、ほとんど解明されていないのが現 状である。

  本研究では、海氷の漂流速度と地衡風速度との関係を明らかにし、さらに海氷域の変 動が風速場の変動から受ける影響の大きさと、その変動のメカニズムを解明することを 目的として解析を行った。海氷データとしては海氷密接度と海氷漂流速度の二種類を用 い た 。 海氷 密接 度は マイ クロ 波放 射計DMSP/SSMIによ る輝 度温 度か らNASAアル ゴリ ズム を用 いて 計算 した 。ま た、 海氷漂流速度は同じDMSP/SSMIの高解像度チャンネル の輝 度温 度か ら計 算し た。 大気 場データとしてはECMWFデータから計算した地衡風速 度の みを利用した。解析期間は1991/92年から1997/98年までの7冬(12月から4月)と し、1050日分の毎日のデータを用いた。本研究の最大の特徴は、衛星観測によって得ら れた長期かつ広範囲の毎日の海氷データを用い、海氷域の変動機構の地域的な違いを議論 する点にある。

  ま ず、SSM/Iの85.5GHz水平偏波チャンネルの輝度温度を用いて海氷漂流速度の導出 を行った。計算には面相関法とぃう、ある日のある窓画像内の輝度温度と最も高い相関 を持つ場所を別の日の画像から検出する方法を用いた。窓画像の大きさは6x6ピクセル (75x75 km)、計算の時間間隔は一日とし、窓画像の位置を1ピクセルずつ移動させなが ら全域で同様の計算を行った。計算結果に対して最大相関係数の大きさ、相関のピークの 鋭さ、周囲の点の結果との差を用いて3段階のフイルタリングを行い、信頼性の低いもの を除去した。このようにして得られた結果から、最終的に75x 75 kmグリッドの毎日の海 氷漂流速度データセットを作成した。また、以上の方法で計算された漂流速度は、高解像 度のNOAA/AVHRRに よる 赤外 画像 を用 いて 得ら れた漂 流速 度と も良い一致を示した。

  次に、毎日の海氷漂流速度と地衡風速度との関係を調べた。その結果、海氷漂流速度 は、地衡風に対して一定方向の向き(偏角)への、地衡風の一定の比率(減衰係数)の大き さでの動きとして、その変動の大部分が説明された。両者間の相関は特に季節海氷域で高 い値を示した。偏角には海氷が地衡風に対してやや右向きに漂流する傾向が見られたが、

その大きさは北半球全域でほぼ土10度以内であり、海氷は地衡風とほぽ平行方向に漂流 していることが分かった。減衰係数は北極海では0.8%以下であるのに対し、季節海氷域 では1.5%から最大2.5%に達し、海域によって大きく異なることが明らかとなった。この 地域差をもたらす最大の要因は、海氷密接度と氷厚の差に起因する海氷の内部応カの差で

(2)

あると考えられる。また、残余として表層海流が得られ、グリーンランド海やラブラドル 海の西岸沿いの強い南下流や、北極海の時計周りの循環、北極海を横断する流れ等の特徴 が見られた。これらは、実測海流データとも良い一致を見た。

  さらに、海氷域の変動に及ぼす海氷移流の効果を見積もり、海氷域の変動機構を解明す るための解析を行った。氷縁を横切るように氷緑に垂直方向の解析ラインを設定すること により、ライン上での氷縁位置の変動する速さ、氷縁での地衡風速度および海氷漂流速度 の ラ イ ン に 平 行 な 成 分 の 三 者 を 直 接 比 較 し た 。そ の 結 果は 以 下の 通 り であ る 。

(1)地衡風速と海氷漂流速との間には、ほとんどの氷縁海域で非常に高い相関がある。

(2)海氷漂流速と氷縁位置の移動速との相関は、バレンツ海、ベーリング海、オホーツク 海では高いところで相関係数が0.7を越える良い相関があり、それらの海域では氷縁移動 速の漂流速に対する回帰係数はほぽ1である。一方で、グリーンランド海やラブラドル海 では両者間の相関は非常に低く、それぞれ決まった場所での海氷融解によって海氷の張り 出しが抑制されている。

(3)地衡風速と氷縁移動速の相関係数の分布は(2)と非常に似ている。氷縁移動速の地衡 風速に対する回帰係数はオホーツク海北部で最も大きく地衡風の3%前後、/ヾレンツ海、

ベーリング海では2%前後である。

  また、ほとんど全ての海域において氷縁では定常的な海氷融解が起こっていること、オ ホーツク海とべーリング海では沿岸ポリニヤ域での海氷生成が重要であることも明らか となった。以上の結果から、それぞれの海域での海氷域の変動機構に対して以下のことが 推測された。

・バレンツ海、ベーリング海、オホーツク海では、全体的な海氷域の拡大は卓越する沖向 き風による海氷の移流によって起こる。短周期の変動に着目しても、地衡風の変化に伴つ て海氷漂流速度が変化し、それが海氷域の変化に強く反映されている。また、その変化の 大きさも海氷移流の効果のみによって説明可能である。

・グリーンランド海やラブラドル海では、海氷漂流速度は地衡風の変化に伴って変化する が、海氷域の変動は海氷の動きに依存せず、海氷域の張り出しは主に海洋側の条件により 決定される。

  さらに 、11月から3月までの 平均風速と3月の氷縁位置の毎年の値にも上記(2)と良 く似た関係が見られ、日変化に見られる地域的な特徴は年々変動にも反映されていると考 えられた。

(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 教授

若土正曉 池田元美 山崎孝治 大島慶一郎

榎本浩之(北見工業大学大学院工学研究科)

     学位論文題名

A mechanism for the variation of sea‑ice extent     in the Northern Hemisphere

     ( 北 半 球 に お け る 海 氷 域 の 変 動 機 構 )

  近 年 、 地 球 温 暖 化 な ど に よ る 気 候 の 変 化 が 懸 念 さ れ て い る が 、 全 球 気 候 モ デ ル に よ る 将 来 予 測 に は 、 高 緯 度 海 域 に 分 布 す る 海 氷 の役 割の 理解 が不 可欠 だと 言わ れて いる 。 しか し、

現 場 観 測 が 極 め て 困 難 な こ と も あ り 、 海 氷 の デ ー タ は 非 常 に 少 な く 、 人 工 衛 星 か ら 送 ら れ て く る デ ー タ を 解 析 す る こ と が 、 現 在 の と こ ろ 、 海 氷 研 究 で 最 も 有 効 な 手 段 で あ る 。   北 半 球 の 海 氷 域 は 、 北 極 海 内 部 を 除 い て 、 ほ と ん ど が 夏 に 完 全 に 消 滅 し て し ま う 季 節 海 氷 域 で あ る 。 季 節 海 氷 域 は 、 時 空 間 変 動 が 大 き く 、 海 域 に よ っ て ま た 年 に よ っ て そ の 変 動 も 大 き く 異 な る 。 海 氷 域 の 変 動 機 構 を 定 量 的 に 議 論 す る た め に は 、 海 氷 の 「 厚 さ 」 と 「 漂 流 速 度 」 の 情 報 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。

  本 研 究 は 、 人 工 衛 星 か ら の 主 にSSM/Iマ イ ク 口 波 デ ー タ の 解 析 に よ っ て 、 北 半 球 に お け る 海 氷 域 の 実 態 把 握 と そ の 変 動 機 構 を 明 ら か に し た も の で あ る 。 特 に 、 今 ま で ほ と ん ど 不 可 能 と 言 わ れ て い た 、 マ イ ク ロ 波 デ ー タ を 用 い た 「 高 精 度 の 海 氷 漂 流 速 度 」 を 導 き 出 す こ と に 成 功 し 、 北 半 球 の 海 氷 域 の 変 動 機 構 を 「 定 量 的 」 に 議 論 し 、 海 域 に よ る 違 い を 明 確 に 示 し た 。 本 研 究 で 得 ら れ た 主 な 知 見 を 要 約 す る と 以 下 の4点 が 挙 げ ら れ る 。

(1) 海 氷 域 の 変 動 と 風 速 場 の 関 係 を 示 し た 。

(2) ほ と ん ど の 海 域 で 、 海 氷 の 動 き の 変 化 は 風 速 の 変 化 に よ っ て 説 明 で き る こ と を 指 摘     し た 。

(3) オ ホ ー ツ ク 海 、 べ ー リ ン グ 海 、 バ レ ン ツ 海 で は 、 海 氷 域 は 海 氷 の 移 流 に よ っ て 拡 大     す る こ と 、 ま た 、 海 氷 域 の 変 動 は 風 速 の 変 動 に 伴 う 海 氷 の 動 き の 変 動 に よ っ て 、 そ     の ほ と ん ど が 説 明 で き る こ と を 指 摘 し た 。

(4) グ リ ー ン ラ ン ド 海 、 ラ ブ ラ ド ル 海 で は 、 海 氷 域 の 変 動 は 海 氷 の 動 き に 依 存 せ ず 、     特 定 の 場 所 で の 海 氷 融 解 に よ っ て 、 氷 縁 の 位 置 が 決 定 さ れ て い る こ と を 指 摘 し た 。

(4)

本研究では、海氷の変動を定量的に議論するために不可欠な情報のーつである「漂流速度」

を 、DMSP/SSMIの85.5GHzチ ャ ンネ ル の 輝 度 温 度 デ ー タ を 用 い て 面 相 関 法 に よ り 求 め た 。 こ の マ イ ク 口 波 デ ー タ を用 いて 得ら れた 漂流 速度 は、 高解 像度のNOAA/AVHRR画 像 を用いて得られた漂流速度とも良い一致を示した。そこで、毎日の海氷漂流速度を求め、

ECMWFデ ータ から 計算 した 地衡 風速 度との 関係 を調 ぺた 。そ の結 果以 下の 点が 明ら かに なった。海氷は地衡風とほぼ平行方向に漂流し、その速度は地衡風速に対するある一定比 率 (減 衰係数 )を もつ こと が分かった。この減衰係数は、北極海で0.8%以下であるのに 対して、季節海氷域では1.5%から最大2.5%に達し、海域によって大きく異なることが分 かった。しかし、減衰係数は海域によって異なるものの、ほとんどの海域で、海氷の動き の変化は風速の変化によって説明可能なことが示された。

  さらに、海氷域の変動に及ぼす海氷移流の効果を見積もるため、本研究では各海域の氷 縁を横切る方向に解析ラインを設定することにより、ライン上での氷縁位置の移動する速 さ、地衡風速および海氷漂流速のラインに平行な成分の三者の直接比較を行った。その結 果 以下 のこと が明 らか にな った。まず、1)地衡風速と海氷漂流速の問には、ほとんどの 氷緑海域で相関が非常に高かった。次に、2)海氷漂流速と氷緑位置の移動速との相関は、

海域によって異なり、オホーツク海、ベーリング海、バレンツ海では比較的高かったのに 対 して 、グリ ーン ラン ド海 やラブラドル海では非常に低い値を示した。最後に、3)地衡 風 速と 氷縁位 置の 移動 速と の相関は、2)の特徴に似ており、特にオホーツク海で最も高 い値を示した。これらの結果に基づいた、日変動スケールの海氷域変動機構は、上で挙げ た (3) と(4)と して 理解 され る。 この よう な日 変化 に見られる特徴は、年々変動にも 反映されている可能性を示す解析結果も一部得られたが、この点については将来の研究課 題となるであろう。

  最後に、本研究の何よりも独創的なことは、今まで不可能だと言われていた、「高精度の 海 氷漂 流速度 」を マイ ク口 波(SSM/I) デー タか ら導 出することに成功した点にある。

それも北半球全海氷域に適用したことにより、海氷域の変動機構の海域よる違いを定量的 に比較することを可能にした。今後、世界の気候における海氷域の役割を解明していく上 で、本研究の成果は大きく貢献することが期待される。

  以上の結果は、申請者が研究者として研究活動を行うために必要な高度な研究能カと学 カを有していることを示している。よって審査員一同は申請者が博士(地球環境科学)の 学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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