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Analyses of Observed Sea Ice Motion over the Arctic Basin      ( 北 極 海 で 観 測 さ れ た 海 氷 の 運 動 の 解 析 的 研 究 )

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)Roger Colony

     学位論文題名

Analyses of Observed Sea Ice Motion over the Arctic Basin      ( 北 極 海 で 観 測 さ れ た 海 氷 の 運 動 の 解 析 的 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  近年危倶されてい る地球温暖化の進行は、北極域においてもっとも顕著に現れるという 説もあるが、海氷面 積と厚さの減少が温暖化のために起こっているという確証をえるため には、海氷の生成融 解と運動のメカニズムを明らかにしなければならない。本論文では海 氷の運動について、 その実態と要因に注目して研究を進めた。

  北極 海の 海氷 につ いて は、19世 紀に は海氷に閉じ込 められた船の軌跡によって、20 世紀になると海氷上 に作られた有人ステーションの運動とそこでえられた気象データによ って、運動とそれを 作り出す気象要因が徐々に明らかにされてきた。最近の20年では氷 上に設置されたブイ によって、それまでの10倍の頻度で多くのデータが得られた。本論 文においてはブイ・データをColony and Thorndike(1984)の方法をもちいて統計的に解析 することによって、 まず空間的な補問をおこない、海氷運動の全体像を描き出した。海氷 は2、3年かけて北極 海を横断することが多いが、これまでの運動をもとに未来の位置を 予測する場合は、マ ルコフ過程にもとづいた確率によってその位置を予測することができ た 。 北 極 海 の 海 氷 は 6,7年 以 内 で 大 西 洋 に 流 れ 出 す 確 率 が 高 い 。   海氷 運動 の時 間変 動成 分は 、数 日か ら10年までの広 い変動周期において、その70% 以上が地衡風によっ て決定されている。統計的な表現を用いると、海氷の運動を地衡風に 比例する部分、ほぼ 定常な海流およびそれら以外に分解したところ、地衡風に比例する部 分の偏差が海氷運動 の偏差全体の70%以上となる。この比例定数の海域分布と季節変化 を詳細にしらべた。 海氷が厚くなると、変形抗カが大きくなることによって、比例定数が 小さくなり、地衡風 の影響を受けにくくなる。逆に海氷が薄くなると地衡風の影響は大き くなる。これが第一 の原因で、比例定数が時空間変動し、冬には夏より小さく、カナダ側 では北極海中央部や ロシア側より小さくなる。さらに第二の原因として大気境界層の安定 度を考慮する。海氷 にほとんど覆われている北極海では、冬に安定度が増し表面近くまで 運動量が運ぱれにく くなることによって、地衡風の影響は小さくなる。夏は大気境界層の 安定度が減り地衡風 の影響は大きくなる。

  近年注目されだし た北極振動は、北極上の大気循環が低気圧性と高気圧性の問を振動す る変動を持っている 。北極振動の10年周期成分にともなって、海氷運動も等圧線に沿つ て同様な変動をする ことが示された。

  いっぽう平均運動 場は時間変動成分とは異なり、海洋熱塩循環の結果として形成される     一―181―

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海面力学高度、すなわち海流が重要である。北極海の太平洋側にあるカナダ海盆で時計ま わりに移動し、その後ユーラシア海盆を通過して大西洋に流れ出す。平均海氷運動のうち 海流 に依存する成分と地衡風による 成分は同程度であり、北極海中央部では毎秒lcm程 度である。

  本論文では近年急速に収集されっっある北極海の海氷ブイによってえられた海氷運動と 気象データを用いて、海氷の運動を平均成分と時間変動成分に分解し、統計解析をした。

前者にっいては海流と地衡風が同程度寄与しており、変動成分は地衡風が主成因であるこ とを明らかにした。北極海の大きな特徴である海氷を維持しているメカニズムを明らかに すること、また北極域の気候変動に対する応答のみならず、大西洋に流出して全球海洋循 環、ひいては地球変動にも影響をおよぼす海氷運動の変動を明らかにする目的において、

本論文の示唆するところは重要である。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   池田元美 副査   教授   若土正曉 副査   教授   山崎孝治 副査   助教授   大島慶一郎

副査名誉教授   小野延雄(国立極地研究所)

     学位論文題名

Analyses of Observed Sea Ice Motion over the Arctic Basin      ( 北 極 海 で 観 測 さ れ た 海 氷 の 運 動 の 解 析 的 研 究 )

  近年危惧されている地球温暖化の進行は、北極域においてもっとも顕著に現れるという説もあ るが、海氷面積と厚さの減少が温暖化のために起こっているという確証をえるためには、海氷の 生成聶虫解と運動のメカニズムを明らかにしなければならない。本論文では海氷の運動について、

その実態と要因に注目して研究を進めた。

  北極海の 海氷に ついては 、19世紀 には海氷 に閉じ 込められ た船の軌跡によって、20世紀に なると海氷上に作られた有人ステーションの運動とそこでえられた気象デ一夕によって、運動と それを作 り出す気象要因が徐々に明らかにされてきた。最近の20年では氷上に設置されたブイ によって 、それまでの10倍の頻度で多くのデータが得られた。本論文においてはプイ・データ をColony and Thorndike(1984)の方法をもちいて統計的に解析することによって、海氷運動の全 体像を描 き出した。海氷は2、3年かけて北極海を横断することが多いが、これまでの運動をも とに未来の位置を予測する場合は、マルコフ過程にもとづいた確率によってその位置を予測する こ と が で き た 。 北 極 海 の 海 氷 は6, .7年 以 内 で 大 西 洋 に 流 れ 出 す 確 率 が 高 い 。   海氷運動 の時間 変動成分 は、数 日から10年 までの 広い変動 周期において、その70%以上が 地衡風によって決定されている。統計的な表現を用いると、海氷の運動を地衡風に比例する部分、

ほば定常な海流およびそれら以外に分解したところ、地衡風に比例する部分の偏差が海氷運動の 偏差全体 の70%以上となる。この比例定数の海域分布と季節変化を詳細にしらべた。第一の原 因として大気境界層の安定度を考慮する。海氷にほとんど覆われている北極海では、冬に安定度 が増し表面近くまで運動量が運ばれにくくなることによって、地衡風の影響は小さくなる。夏は 人生t境界層の安定度が減り地衡風の影響は人きくなる。このため比例定数が時空間変動し、冬に は夏より小さくなる。さらに第二の原因として海氷の内部応カを考慮する。海氷が厚くなると、

変形抗カが大きくなることによって、比例定数が小さくなり、風の影響を受けにくくなる。逆に 海氷が薄くなると風の影響は大きくなる。このためカナダ側では北極海中央部や口シア側より風 の影響が小さくなる。

  近年注目されだした北極振動は、北極上の大気循環が低気圧性と高気圧性の間を振動する変動

一 一183

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を 持って いる。北極振動の10年周期成分にともなって、海氷運動も等圧線に沿って同様な変動 をすることが示された。海流の変動を示す結果にはならなかった。

  いっぱう平均運動場は時間変動成分とは異なり、海洋熱塩循環の結果として形成される海面力 学高度、すなわち海流が重要である。北極海の太平洋側にあるカナダ海盆で時計まわりに移動し、

その後ユーラシア海盆を通過して大西洋に流れ出す。平均海氷運動のうち海流に依存する成分と 地 衡 風 に よ る 成 分 は 同 程 度 で あ り 、 北 極 海 中 央 部 で は 毎 秒 lcm程 度 で あ る 。   本論文では近年急速に収集されつっある北極海の海氷ブイによってえられた海氷運動と気象デ ータを用いて、海氷の運動を平均成分と時間変動成分に分解し、統計解析をした。前者について は海流と地衡風が同程度寄与しており、変動成分は地衡風が主成因であることを明らかにした。

北極海の大きな特徴である海氷を維持しているメカニズムを明らかにすること、また北極域の気 候変動に対する応答のみならず、大西洋に流出して全球海洋循環、ひいては地球変動にも影響を およばす海氷運動の変動を明らかにする目的において、本論文の示唆するところは重要である。

  よって著者は博士(地球環境科学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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