艦難45第齢55霧骨)
〔シンポジウム〕
人工腎臓の発展と適応の拡大
尋常性乾癬の透析療法
東京女子医科大学皮膚科学教室(主任:肥田野信教授)
荻原 洋子・西村 素・肥田野 信
オギハラ ヨウコ ニシ ムラ スナオ ヒ ダ ノ アキラ
腎臓病総合医療センター(所長:梅津隆子教授)
佐 中
サ ナカ
孜・太 田 和 夫
ツトム. オオ タ カズ ナ
(受付 昭和54年12月1日)
Psor董asis and Dialysis
Yδko OGIHARA, M.D., Sunao NISHIMURA, M.D. and Akira HIDANO, M.D.
Department of Dermatology(Director=Prof. Akira HIDANO)
Tsutomu SANAKA, M.D. and Kazuo OTA, M.D.
K量dney Center(Director:Pro£Ryuko UMEZU),TokyQ Women,s Mcdical Collegc Eleven patieHts with very extensive psoriasis were treated with hemodialysis. There were 10 males and l fセma正e ranging f}om 23 to 66 years old.
Our cases included 5 guttate types,5plaques types and l erythrodermic type. The duration of skin lesion was between 3 and 20 years, The perce迎tage of Iesions per skin surface varied仕om 20 to
95%.Obvious improvement was observed in 7 cases especially in guttate type, and older than 40 years old patients revealed better ef琵ct. There was no relationship between the ef艶ct and sort of solutions
and membranes used,L はじめに
血液透析療法が腎不全以外の病態にも治療効果 を示すことが最近明らかとなってきたが,その適 応拡大の1つとして尋常性乾癬の治療がある.わ れわれは腎機能の正常な11例の乾癬患者に試みた のでその結果を報告する.
1L 対象および方法
11例の内訳は表1のごとくで,男子10名,女子 1名,年齢は23歳から66歳(平均47歳),罹病期
間は3年目ら20年までである.治療の対象として は,青少年や高年者を除き,他臓器の重篤な合併 症がな:いこと,現在までの治療効果が少なかった
こと,罹病期間が長年月にわたること等の条件で 選択した.
罹患面積,透析療法の方法,効果は表1,表2 のごとくである.透析は原則として1回5時間,
週1〜2回行ない,15回を1クールとした.対照 として3名(No・4, No・7, No.11)にクラレ活
表1 症 例
No. 患者 性
年齢 擢病
重症度匇ヤi年)
罹患
ハ積i%)
潮紅
落屑 浸潤掻痒
萎縮
病.型 爪 効果1 S.1, 男
40
1070
3十 1十1十
十. 十 滴一型 白 濁有 効
2
R.S. 男 514 90
2十 2÷2十
十 十 〃 白濁肥厚著 効
3
KS. 男54
6 20 3十2十 1十
一 一 〃 正 〃4
KA, 女54
1270
3十 工十1十
十 十 〃点状陥凹
? 濁判定不能
5 KK. 男
63
10 60 3十 1.¥ 1十 十 十 〃 白濁肥厚 著 効
6
H.H, 男23
790
3十1十
3十 ÷ 一 局面型点状陥凹 無 効
7 R.O. 男
36
ユ680
3十1十 3十
十 一 〃白濁肥厚
̲状陥凹 〃
8 S.K:. 男
40 8 35
2十 2十2十
一 〃 正有 効
9 N.G. 男
43
.3 351十
2十1十
. _ 一 〃白 濁
〃10 T.H. 男 50 20 90 2十 2十・
2十
十 一 〃白濁肥厚
〃11 M.1.男 66 10 95 2十 2十
1十
十 十紅皮症型 白濁肥厚
判定不能 一表2 透析方法および効果
No.
性 年齢
干潮マアイザー 透析膜透析回数
補充液効果
1 男
40
ExO3 Cuprophane 2回/週x2P回/週x13 ペリソリタNa 130
有効
2 男 51 Tomy B1polymethyl
高?狽=iπylate
2画/週x101回/週x5
ラクテックリンゲル
著効
3 男54
Gambro盾垂狽奄高
Cupr。phane
2回/週x15. 〃 〃4
女54
TQray B2 M polynlethyl高?狽≠fwla艶 2回/週x2
P回/週x11
ペリソリタNa 130 判定s能
5
男63
Toray B2 M 〃 2回/週x2P回/週×13
〃 著効6 男
23
T(πay亀 〃.2回/週x4
P回/週x11
ラクテックリンゲル 無効 7 男36
To畑yB2M 〃 2回/週x2P回/週x13
ペリソリタNa 13Q 〃8
男40
Tα臓yB1 〃2回/週x15
P回/週x2 ラクテックリンゲル 有効
9
男43
〃 . 1回/週x.T
〃 〃ユ0 男 50 〃 〃
2回/週×4
P回/週x11
P回/週x5〃 〃
11 男
66
TQray B2 M 〃2回/週x 2
P回/週x6 ぺIJソリタNa 130
判定
s能
性炭吸着装置を用い,1回3時間で5回試みた.
さらに1例(No・10)には体外循環のみを4回試 みた.そのほか,ここにあげた11例以外の乾癬患 者3名に,ヘパリン1回5,000単位の週2回静注 を5回試みた.なお,透析中の内服療法はビタミ
ンB、,86など,外用療法は白色ワゼリン単塗布
のみに限った.
皮疹の形態による乾癬の病型分類に確立したも のはないが,われわれは局面型,滴状型,紅皮症 型の3型に分類した.この分類に自験11例をあて はめてみると,滴一型5例,局面型5例,紅皮症 型1例となる.皮疹の重症度としては潮紅,落
屑,浸潤,癌痒などを段階的に示した.
111・治療成績
われわれの経験はまだ11例にすぎないが,今ま で得られた知見を以下にまとめてみる.
1.症例
まず,良好な成績の得られた2例について詳細を述べ
る,
No・2=51歳,男子.
家族歴に特記すべきことなし.
既往歴=慢性前立腺炎,薬剤アレルギー。
現病歴=4年前より頭部に紅斑落屑局面が出現し,乾
癬の診断でODT(occulussive dress三ng technique)療法
をうけていたが再発をくり返していた.全身所見・検査所見に異常なし.
皮膚所見:ほぼ全身に大小種々の爪甲大までの紅斑落 屑局面が播種状に散在し,瞥部,下腿では融合傾向を示 している.長期ステロイド剤外用の副作用として皮膚萎 縮が著明にみられた.罹患面積は90%程度と考え,滴 状型とした(写真1).ほぼ全指趾爪に白濁肥厚がみら
れ,関節痛はなかった.
・緊・
1鰍 。曝.
写真1 No・2 透析前
透析方法=左前腕に内シャントを作成し,ダイアライ ザーはpolymethylmetacrylate膜のToray Blを使用し た.週2回で10回,その後週1回で5回,計15回行なっ た.1回の透析時間は5時間,補充液はラクテックリソ
ゲルを使用した.
経過:透析1回終了後,早くも潮紅,落屑がやや減少 したが,3〜4回終了後頃より皮疹は融合しはじめ,特 に躯幹では全体が融合し,潮紅,落屑がかえって増加し た.さらに透析を続けるうち,その寺台局面の中に弓状 に健常皮膚が少しずつ出現し,それが拡大してきた.15
写真2 No.2 透析後
回終了時,皮疹は入院時の60%ほど残存していた.そ の後はサリチル酸ワゼリソ外用のみで1ヵ月経過観察し たところ,著明な改善がみられ,両上肢,躯幹の皮疹は ほぼ消失し,轡部,下腿の皮疹も改善してきた(写真 2).この部位にPUVA療法を開始し,透析終了後8カ 月の現在,両下腿に数個ずつ皮疹が残存しているのみで ある.著効を呈した例と考える.
No・3:54歳,男子.
既往歴・家族歴に特記すべきことなし.
現病歴:6年前より腹部に紅斑落屑局面が出現し,乾 癬の診断でステロイド剤外用および内服にて治療をうけ ている.昭和53年5月22日当科入院前日に,数年間にわ たって時々服用していたブレドニン10mgを中止してい
る.
全身状態はよく,検査所見に異常なし.
皮膚所見:腹部から両大腿前面,背部,右腋窩に爪甲 大までの紅斑落屑局面が散在し,一部融合して軽度の廣 痒を訴えていた(写真3).罹患面積は体表の約20%で,
関節痛,爪の変化はない.ステロイド剤による皮膚萎縮 もない.
透析方法:左肘窩に動脈表在化を行なった.使用した ダイアライザーはCuprophane膜のGambro optimaで,
透析は週2回,1回に5時間とし,補充液はラクテック
リソゲル10〜15」を用いた,
写真3 No.3 透析前
写真4 No.3 透析後
経過=入院後皮疹はステロイド内服中止のため拡大融 合し,滲出傾向が出現,紅斑上に少数の膿庖さえみられ
るようになった.透析開始2週目,3回終了後,背腹 部,腋窩では潮紅が減退し,わずかに島状に健常皮膚が 出現してきた。また療痒もほぼ消失し,以後透析を行な
う毎に健常皮膚面は拡大し,潮紅,落屑,浸潤も減少 してきた.15回終了時,潮紅は一部残存するが,色素 沈着を残し落屑,浸潤はほぼ消失した(写真4).腋窩 の皮疹は4回終了後,これも色素沈着を残して消失し
た.
透析15回終了後,残存病変にPUVA療法を行ない,
1年4ヵ月後の現在再発はみられていない.著効を示し
た症例である.
2.治療経過
7例の著効,有効例の経過を図示すると図1の 通りで,皮疹の消長は必ずしも一様の経過をと ってはいない.透析15回終了まで,徐々に皮疹
が軽快,消失していった例(No.1, No.8. No.
皮 疹 の 変 化
No。1
2回/週 1回/週
2回/週 頸回/週 15回終了
No.2
oUVA
@↓
2回/週
PUVA
@ ↓
P5回終了 ↓
No.3
2回/週 1回/週
Nr).5
P5回終了
一 @ ↓
2回/週. 1回/週
No.8
1回/週
No.9
2回/週 1回/週
N(、.10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10111213 14151617週問 透析期間
図1 皮疹の変化と透析の関係
10),透析開始直後一時的な増悪がみられ,その 後に皮疹が改善しはじめた例(N・・2,No・3),
非常にすみやかに皮疹が軽快,消失傾向を示した 例(No.5, No.8)等があった.
再発に関しては,No,3を除き多少とも皮疹が 現われているが,いずれも軽度で外用療法により
コントロールしえている.
3.成績のまとめ
11例中,著効3例,有効4例,無効2例,判定 不能2例であった.判定不能としたのは54歳の女 子で,透析前から強力なステロイド外用を行なっ ていて,外用中止により皮疹が悪化し,13回の透 析で軽快したにもかかわらず,患者がステロイド
外用を強く希望して透析を中止してしまった例,
および66歳の男子の紅皮症型で,ステロイド離脱 症候群,透析による不均衡症候群のため,透析は 6回で中止して途中からステロイド内服を三儀な くされた例である.
4.効果と諸因子との関係 以上より次のことが考えられる.
a)年齢
著効患者は51歳〜63歳(平均56こ口,有効患者 は40歳〜50歳(平均43歳)であり,無効だつた2 例は23歳と36歳(平均30歳)で,年齢の高い人ほ
ど効果があるようである.
b)性別
11例中,女子1名は判定不能で,残りはすべて 男子であったので,女子についての効果について 云々することはできない.したがって男女差があ
るかどうかも不明である.
c)罹病期間
著効例の平均は7年,有効例の平均は10年,無 効例の平均は12年で,罹病期間は短いほど効果は あがる傾向にあるが,20年罹患患者でも有効であ り,一概にはいえず,罹病期間の長いものでも試 みる余地はあろう.
d)罹患面積
著効〜有効例では平均57%,無効例では85%で あった.90%で著効例も無効例もあり,面積との 相関はないと考えられる.
e)重症度
潮紅は著効〜有効例で平均2+,無効例で3十 でさほどの差はない。落屑は著効〜有効例で2 十,無効例で1十でこれも大差はない.しかし浸 潤は著効〜有効例で平均ユ+であったのに反し,
無効例では平均3+であり,浸潤の著しい局面型 には効果がないといえるようである.
廣痒は著効〜有効例で7例中4例,無効例では 2例とも廣痒がみられ,有意の差はない.皮膚萎 縮は著効〜有効例7例中3例にみられ,無効例で はみられなかった.
f)三型
滴状型では5例中4例著効〜有効,1例は判定
不能,局面型では5例中3例が有効で,ゴ例が無 効であった.しかも局面型で有効であった例では 部分的に滴状型皮疹を有していたが,無効であっ た2例は完全な局面型であった,従って滴二型の 場合透析は効果が大きいと考えられる.
9)爪病変
著効〜有効例7例中5例,無効例は2例ともに 変化がみられたので,爪病変の有無は効果と直接 関係しないように思える.
h)ダイアライザー
著効〜有効例ではToray B14例, Toray B2M 1例,Ex O31例, Gambro optima 1例で,無 効であった2例ではそれぞれToray B、M, Toray B、を使用している.したがってダイアライザー の機種による差はないといえよう.
i)透析膜
CuP「oPhane膜使用のEx O3, Gambro optima を使用した例では効果がみられている.また polymethylmetacrylate膜使用のToray B1でも効 果はみられている.クラレ活性炭による血液灌流 を3例(No・4, No・7, N・・11)に行なったが,
5回では皮疹に変動はなく,体外循環を1例(No・
10)に行なったがこれも無効であった.ヘパリン
大分子
血球
グロブリン アルブミン
(TQray BlToray B2M ExO3 ↓
臨胸
中分子 小分子
才慮
[二月落コ S叢コ )
水
濾_゚畏 N
@鼠
@賛 )
透_
ヘ多
@写
@∫ 〕
図2 除去療法の作用機序(太田論文より引用)
単独静注を試みた例でも皮疹に全く変化は認めら れなかった.この事実から,ダイアライザーへの 接続は必要で,透析という操作をへて効果が出現 するものと思われる(図2).
j)使用補充液
使用したペリソリタNa 130とラクテックリソ ゲルはその組成に大差なく,著効〜有効例でペリ ソリタNaI301例,ラクテックリンゲル6例だ
が,無効例ではそれぞれ1例ずつで,その効果の 差ははっきりしない.
W・透析による検査所見の動き 1) 組織学的所見
透析前後に皮膚の組織学的検討を3例(No・2,
No・3, No・5)に行なった.過角化,錯角化,表 皮肥厚,乳頭腫症,真皮上層の脈管周囲性のリン パ球浸潤など透析前後で基本構造旧著変はみられ なかった.
2)免疫学的所見
4例(No・2, No.3, No。8, No・9)で白血球 数,補体,免疫グロブリン(lgG,19M, IgA)の 透析5時間の間,および15回終了までの変動をみ た.透析5時間の間では,補体,免疫グロブリン に大きな変動はみられなかったが,白血球数,リ ンパ球数は種々の程度に増加がみられた.透析 終了1ヵ月までの補体,免疫グロブリンの変動
(No.3)をみると, C3, C4, IgG, IgM, IgAの
mg/d1 1000
500 300
150
100
50
0 Date
個/mm3
11000
9000
%80
5Q
Date
WBC
IgG
C3
1gA
IgMSeg
Ly
C3
HD 2圖/W
HD 2回/W
5/26 7/10 8/1
図4 Changes of WBC during Hemodialysis in case No.3
5/26 7/10 8/1
図3 Changes of IgG, IgA, lgM, C4&C3 during 且emodialysis in case No,3
すべてが増加傾向を示した(図3,図4).
PHA, PWM(pork weed mitogen)刺激セこよる リンパ球幼若化率を透析前後で比較したが,差は みられなかった.
3) 限外濾過液の検討
限外濾過液を20倍に濃縮し,セファデックスG 15によるクロマトグラフィーを行なったが,健常 者と比較して特に異常なピークはみられなかっ
た.
V・透析による副作用
患者は腎機能障害を有しない乾癬患者であり,
透析療法の副作用に重大なものはなかった。まず 穿刺部よりの出血および血腫が2名(No・2, No・
9)にみられたが,重大な出血には至らなかっ た.しかし,透析は1週間ほど中止せざるをえな かった.透析中に血圧低下が3名 (No・2, No・
4,No.9)にみられたが,.これは限外濾過による 脱水により,循環血液量の減少のためと考えら れ,点滴等で補充しながら透析を行なうことで解 決された.不均衡症候群とは透析により体液成分 の変化で血液と中枢神経系との間に物質の濃度差
ができるために生ずる症状を総括したもので,透 析中〜終了直後に全身の脱力感,頭痛,悪心,麻 吐を呈するものである.多少の体液の不均衡は透 析を行なった場合避けられないものである.この 不均衡候群は3名(No・2, N・・3, N・・11)にみ
られたが,2例では軽度のもので自然に治癒し た.しかし,1例(No.11)はステ.ロイド離脱症 候群とも重なって,透析を中止せざるをえなかっ た.これ以外では腎機能,肝機能,血液学的な所 見など,いずれも透析によって悪化したものはな
かった.
V1.考 按
1976年McEvoyら1)は12年間乾癬に罹患してい た43歳の男子が,たまたま慢性腎不全を併発した ため透析を行なったところ,透析4回目頃から皮 疹が軽快しはじめ,1年後には治癒したと報告し た.以来,有効例の報告が続き2)卍21>,名大におけ る成績では4例中全例が29〜33回で有効とされて いる13)14).さらにTward・wskiら18)1ま腹膜灌流も 乾癬…治療に有効であったと報告している,しかし すべての乾癬患者に有効ではなく,その病型に関
しては本邦における報告では膿癒性乾癬7例が有 効であり,乾癬性紅皮症19),関節症11)それぞれ1 例にも有効であったとの報告があるが,逆にこれ
らの特殊型の乾癬は無効との報告18)もみられる,
年齢との関係では,前田ら20)は13例の16歳〜71歳 までの乾癬患者を治療し,有効であった患者の平 均年齢は47.3歳,無効であった患者は30歳とし,
年齢の高い患老の方が有効であったとし,われわ れとほぼ同様の結果を示している.さらに爪に変 化のみられる乾癬に有効との報告があるが,われ われの無効例は2例とも爪に明らかな変化がみら れ,爪の変化とその効果との関係は一概にいえな
いと思う.
透析の頻度とその効果との関係は,未だ明らか ではないが,1週目2回程度が適当との印象をう けた.われわれは15回を1クールとしているが,
30回以上試みた報告が多数ある.
透析膜に関して,内藤ら21>は膿疸性乾癬に Cuprophane膜で週2回,計6回試み効果なく,
PAN(Polyacylilnitryl膜)を週2回,計9回試 みたところ,皮疹は消失したと報告し,この効果 は両町を通過する分子量の差と考え,分子量1万 から3万の間に何か乾癬の原因物質があって,そ れが除去されたのではないかと述べている.われ われの例ではCuprophane膜を使用した2例も著 効および有効であり,この膜を通過する17,000〜
8,000ぐらいまでの中分子量物質も原因物質とし て無視できないと思われる.
効果発現の機序を解明するため,種々の試みが なされている.まず,透析前後の末梢血液像,生 化学的検査等ルチンの検査に加えて,葉酸,亜鉛,
ビタミンA2), pH,浸透圧等の測定を行なった報 告18)もあるが,変化は認められなかった.また限 外濾過圧を250〜300mmHgとして得られた濾過 液をin vitroで正常表皮細胞に加え,そのDNA 合成を検討し,経時的にその組織像を検討してい
る17)が,著明な変化はみられていない.免疫学的 変化を透析前後の免疫グロブリン,補体の変動,
Tcell, B cellのsubpopulation, PHA, PWM による幼若化現象で検討した研究でも平野はな
い.
前田ら20)は透析前の患者爪に正常人にはない 脂肪酸エステル(tetra decanoic acid actadecyl ester)を同定し,治癒後には証明されないところ がら,この物質が乾癬の発症に関与すると述べて
いる.
いずれにしても,現在のところ透析療法の機序 は不明であり,これからの検索が期待される.
VII・結 語
11例の乾癬患者に透析治療を試み,判定不能の 2例を除いて,著効3例,有効4例,無効2例の 結果を得た.この成績から乾癬の透析療法には次 のような傾向があると考えた.
1)30歳より若い人には効果がなく,40〜60歳 の人により大なる効果があった.
2)乾癬の病型を滴凹型,局面型,紅皮症型の 3型にわけると,滴病弊に有効で,局面型には殆 ど効果がなかった.
3)乾癬の重症度からみると皮膚萎縮を伴う浸
潤の軽い病変に効果が大であり,潮紅,落屑,廣 痒とに関連は少なかった.罹患面積の少ない例に 有効例が多かったが,大きな例でも有効例があっ
た.
4)Cuprophane膜使用例, polymethylmetacry−
Iate膜使用のいずれも有効例があった.
5) ダイアライザーへの接続は必要であり,除 去という操作が必要であ.ると考えられる.
本論文の要旨は昭和54年9月29日東京女子医大学会 第45回総会シンポジウムにて発表した.
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21)内藤町一・矢尾板英夫・馬場 徹・鈴木正明=
血液濾過透析を試みた膿癒性乾癬の一例.第3/
回西日本皮膚科学会発表(1979)