アパレルショップのデータ分析から考える「売り場」の最適化
13D8101016H 青木深雪中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2017年
3月
あらまし:アパレルショップでは、店員が毎日マネキン となって自店の服を着て、アピールしながら販売をして いる。売り上げは品物の場所や気温、天気によっても変 動する。それだけでなく、店員のアピールが有効である ことも知られている。しかし、後者はあまり定量化され ていない。そこで気象データと、気温との関係の深そう なものの相関性を図り、アソシエーション分析で店員の 着用商品と売り上げの関係を調べ、どんな日に何を着て 何をアピールしていく「売り場」が最適なのかを考え る。
キーワード:アパレルショップ、回帰分析、アソシエー ション分析
1 はじめに
アルバイト先である洋服店から入手した売り上げデー タと気象データ、店員の着用データをもとに、何をする と売り上げにつなげることができるかを考える。
2 使用データ 2.1
店舗の概要
本研究では、オフィス街の中心にある駅構内のアパレ ルショップのデータを使用する。
・営業時間 平日
10時~22 時,休日
10時~21 時
・規模
10~15坪
・ターゲット
20代後半~40 代の女性
・店員数
7人常に
2人以上が同時に勤務
・服装のルール 勤務中は販売中の服を着用する 本来は
10代後半から
30代の女性向けファッションブ ランドだが、今回は立地が他店舗と少し違うため高い層 となっている。価格帯は一般には、高すぎず安すぎずの 適度な価格だが、本研究で対象の店舗の場合、周辺店舗 の価格帯が高いので、比較的安いと感じられることが多 い。
2.2
売り上げデータ概要
・対象期間…2016.10.2~2016.11.1
・客単価…3,840 円
・利用可能データ…購入商品、店員着用商品、店員着用 日、購入日
2.3
アイテムについて
今回使用するアパレル商品を表
2-1に示した。カテゴ リー別に分類し、流行品か仕事着にできるか使いやすい 定番アイテムなのかも明記した。このアパレル以外に も、ストールやスヌード、ポンチョなどの防寒具の売り 上げデータも利用する。
表
1 使用する商品商品 分類 流行 仕事 定番
オフショルPO ○
リブオフショル ○
リブVPO ○
サカリバPO
スキッパー ○ ◎ ○
オーバーシャツ ○ ○
袖変形ブラウス ○
オフショルブラウス ○
ノーマル ○
ドルマンニット ○
Vネックニット ○
クルーネックニット ○
袖広がりニット
スカーチョ ○
プリーツスカンツ ○
ハイウエストワイドP プリーツワイドパンツ デニムワイドパンツ
ワイドスカンツ ○
コーデュロイワイドP リボンベルト ノーマル
ビックシルエット パンツ シャツ
薄手ニット
テーパードパンツ ◎ プルオーバー
○
○
○
○ 柄スキニー カラースキニー 裏起毛スキニー
コーデュロイSK ○
フレアSK ○
デニムSK 柄ロングSK プリーツSK チュールプリーツSK 柄プリーツSK
セットアップ ○ ○
VネックシャツOP ケーブルニットOP
リブ袖広がりOP ○
ドルマンOP ロングCD カーデガン
リブロングCD ○
ドルマンCD
ライダースJK ○
Gジャン MA-1
チェスター ○
○
ミニスカート ○
ロングスカート ○ ○ ○ スキニーパンツ
ワンピース(OP)
カーデガン ○ ○
アウター ○
2.4
気象データ概要
本研究では、気象庁ホームページに記載されている、
過去の気象データから
2016年
10月と
11月
1日の東京 の日ごとの平均気温、最低気温のデータを使用してい る。
3 回帰分析
回帰分析はある一つの変数の値を予測したい、という 場面で使われる手法である。回帰分析とは、ある変数y を他の𝑛個の変数𝑥
1, 𝑥2, 𝑥3, … 𝑥𝑛によって説明する関係式
𝑦 = 𝑓(𝑥1, 𝑥2, 𝑥3, … 𝑥𝑛)
と、これだけでは説明できない残差項εを含めた、
𝑦 = 𝑓(𝑥1, 𝑥2, 𝑥3, … 𝑥𝑛) + ε
を特定する方法論で、特に
𝑓(𝑥1, 𝑥2, 𝑥3, … 𝑥𝑛) = 𝑏 + 𝑎1𝑥1+ ⋯ + 𝑎𝑛𝑥𝑛
で表される場合に限定したものを線形回帰という。
4 データマイニング 4.1
データマイニングとは
データマイニングとは、統計的手法を用いて、様々な データの中から各情報の相関や法則性などを探し出すた めの分析技術・手法である。
4.2
アソシエーション分析とは
アソシエーションルールと呼ばれる事象間のつながり の強さに関する規則を、知識として発見する分析法であ る。ある事象が発生した時に、別な事象が発生する事後 確率が高いような事象の組み合わせを求める。この分析 では、商品の組み合わせなど、頻出する何かの関連、規 則を相関ルールとして表す。データベースの中から相関 ルールを検出する際、評価指標が必要となる。今回は
2つの指標を使う。
信頼度…仮にルールの前提が起きたと仮定したときに、
結論が起こる確率。この数値が高いほどルールの前提と 結論の結びつきが高い。
リフト…前提または結論のどちらかのデータの中での出 現回数が非常に多い場合に前提と結論の間の結びつきの 強さを見ることが出来る。
今回この分析を行う際に、NTT データ数理システムの
Visual Mining Studio(VMS)というソフトを利用した。5 気象データと売り上げの相関
5.1
気温と売れる商品の相関性
気象データと関わりの深そうな商品の売り上げ個数につ いての相関性をもとめる。まず、表
2や図
1に表したよ うに、シャツ類と平均気温に相関があるように感じたた め、回帰分析を行った。
0 5 10 15 20 25 30
2 3 4 5 6 7 8 910 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 311
平均気温とシャツの売上個数
シャツ 平均気温
図
1 平均気温とシャツの売り上げ個数の関係1表
2 平均気温とシャツの売り上げ個数日付 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
曜日 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日
平均気温 23.1 22.7 24.9 24 26 21.4 21.2 22.3 18.4 17.6 17.9 16.5 15.6 16.7 17.4
シャツ 5 10 8 10 13 9 4 4 3 3 2 2 4 0 3
17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 11/1
月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火
17.5 20.9 20.8 21.9 18.2 16.7 18.1 14.9 14 19.1 19 12.2 15.5 11.9 14.3 13.4
1 4 2 2 2 0 1 5 2 3 0 1 1 0 0 0
y = 0.6813x - 9.2626
-2 0 2 4 6 8 10 12 14
0 5 10 15 20 25 30
シャツの売り上げ個数
平均気温
図
2 平均気温とシャツの売り上げ個数の関係2回帰分析を行った結果、決定係数
R2が
0.54と、0.5 以 上の高い数値となった。そのことからこの
2つの間には 相関があるといえ、 𝑦 = 0.68314𝑥 − 9.30123 の式で近 似ができた。また、平均気温と羽織ものについても同様 に回帰分析を行った。ここでも決定係数
R2が
0.56と、0.5 以上であったため、平均気温と羽織ものの売れ 行きの間に相関があることが分かった。
5.2
前日との温度差と羽織ものの関係
平均気温、前日との温度差と羽織ものの売れ行きにつ いての関係性を図るため、今度は重回帰分析をした。そ の結果、決定係数
R2は
0.59で、平均気温と羽織もの についての単回帰分析で出た数値よりもわずかだが高い 数値となった。
6 店員着用アイテムと売り上げの相関
店員着用アイテムが実際に売り上げ向上につながって いるのか、販売商品の
1日ごとの販売数とその日の店員 が何を着ていたかの
2つデータをもとに、アソシエーシ ョン分析を行った。
表
3 アソシエーション分析結果(単品)前提 結論 信頼度 サポート リフト ルール数 前提数 結論数
ケーブルニットOP *ケーブルニットOP 62.5 3.413 18.3 10 16 10 リブオフショル *リブオフショル 58.57 13.993 4.19 41 70 41
リブVPO *リブVPO 57.14 2.7304 20.9 8 14 8
VネックシャツOP *VネックシャツOP 50.0 1.0239 48.8 3 6 3 サカリバPO *サカリバPO 46.15 10.239 4.51 30 65 30 Vネックニット *Vネックニット 44.52 22.184 2.01 65 146 65 ライダースJK *ライダースJK 43.48 3.413 12.7 10 23 10 チュールプリーツSK *チュールプリーツSK 41.67 3.413 12.2 10 24 10 ノーマルテーパード *ノーマルテーパード 40.43 6.4846 5.92 19 47 20 スキッパーシャツ *スキッパーシャツ 33.33 6.1433 5.43 18 54 18 袖広がりニット *袖広がりニット 30.77 2.7304 11.3 8 26 8
表
3に表したように、単品ごとで見ても信頼度が
30%をこえるものがこれだけあった。信頼度が
50%を 超える品は
4つのみであったが、30%を超える商品は
12品も存在した。ここに記されていない品も多数あ り、それらは着用との関わりが全くないことが言える が、着用によって少しでも売り上げに関わる品が多数あ ることから、商品を着用することと売り上げとの相関は 考えられる。
表
4 アソシエーション分析結果(分類)前提 結論 信頼度 サポートリフト ルール数 前提数 結論数
リブ袖広がりOP *ニットOP 100 1.7065 10.5 5 5 28
ハイウエストワイドP *ビックシルエットP 100 1.7065 3.76 5 5 78
リブ袖広がりOP *OP 100 1.7065 9.45 5 5 31
ビックシルエットP *ビックシルエットP 87.64 26.621 3.29 78 89 78
スカーチョ *ビックシルエットP 87.5 2.3891 3.29 7 8 78
リブVPO *リブ 85.714 4.0956 4.33 12 14 58
ワイドスカンツ *ビックシルエットP 85.714 2.0478 3.22 6 7 78
ニットOP *ニットOP 84.848 9.5563 8.88 28 33 28
ニットOP *OP 84.848 9.5563 8.02 28 33 31
セットアップ *ビックシルエットP 84. 7.1672 3.16 21 25 78
VネックシャツOP *シャツ 83.333 1.7065 3.49 5 6 70
ドルマンOP *ニットOP 83.333 3.413 8.72 10 12 28
ドルマンOP *OP 83.333 3.413 7.88 10 12 31
スカート *スカート 82.243 30.034 2.74 88 107 88
ケーブルニットOP *ニットOP 81.25 4.4369 8.5 13 16 28
ケーブルニットOP *OP 81.25 4.4369 7.68 13 16 31
オーバーシャツ *シャツ 80 2.7304 3.35 8 10 70
ワンピ *OP 79.487 10.58 7.51 31 39 31
オフショルブラウス *シャツ 72.727 5.4608 3.04 16 22 70 リブオフショル *オフショル 71.429 17.065 2.68 50 70 78
シャツ *シャツ 70.707 23.891 2.96 70 99 70
リブ *リブ 69.048 19.795 3.49 58 84 58
ロングスカート *ロングスカート 69.048 9.8976 6.98 29 42 29 スキッパーシャツ *シャツ 68.519 12.628 2.87 37 54 70
リブオフショル *リブ 65.714 15.7 3.32 46 70 58
VネックシャツOP *OP 50 1.0239 4.73 3 6 31
大きな枠組で関係性を見ると、信頼度の高いものが多 数出てきた。どれもリフトは
2.5を超えており、十分な 結果といえる。ワンピースは、前述した商品ごとの分析 でも
2つの商品の着用との信頼度が高い数値で、今回の 分析でも着用との関係性が強いことが分かった。続い て、流行である「ビックシルエットパンツ」も多数出現 した。しかし、店員の着用との結びつきを結果として得 られたのは、その中でも仕事場で使いやすいものであっ た。それはシャツなどの他の商品も同様であった。
7 最適な「売り場」の提案
今回の分析から得たデータから考えられる最適な「売 り場」を考えた。まずは店員の着用だ。2 人の出勤の場 合は
1人がワンピース、もう
1人が仕事に着ていける流 行の商品というように着用することで、売り上げ向上が 見込める。
また、気温が高い場合には売り場には羽織ものは置か ずに、シャツ類を少しでも目立つところに置き、気温に 合わせだんだんと展開する割合を変えていき、14℃まで 下がったときにはシャツは下げ、羽織ものを最大限にア ピールし、売り出す。ワンピースの上に羽織ものを着た り、仕事で使えるようなボトムスにシャツを合わせるな ど、着用が効果的であるものを、一緒に着ることで、更 に売り上げ向上が見込めるはずである。
8 まとめ
今回、回帰分析にて気温と売り上げの相関関係を図 り、アソシエーション分析にて購買データと店員着用商 品を分析し、着用が売り上げに貢献しているのか、貢献 する商品はどんなものなのかを分析した。そして得られ た結果から「売り場」の提案を試みた。採取したデータ 量を増やし、洋服の様々な購買意欲への要因を考えるこ とによって、より良い「売り場」の提案が可能となる。
参考文献
[1]
藤澤克樹・後藤順哉・安井雄一郎、 “Excel で学ぶ
OR”、オーム社、2011.[2]
内田治、 “すぐわかる
EXCELによる多変量解析”、
東京図書株式会社、1997.
[3]
株式会社数理システム“Visual Mining Studio チ ュートリアル” 、2012.
[4]