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2020 年度の話題から考える分析化学誌
丹 羽 修
昨年春。通常より1月余り遅れて,分析化学誌の編集委員長を引き継ぎまし た。引継ぎ早々,COVID19による緊急事態が始まり,4月2日に埼玉大学で渋 川先生より対面で引継ぎ会議を行った後は,すべてオンライン会議となっています。
私の大学は,五反田までは1時間半かかる埼玉県深谷市にあり,今年の大河ド ラマの主人公である渋沢栄一の出身地です。群馬県に近く,常々,往復3時間以 上かけて会議に行くのは,現在の参勤交代の様で時間によっては1日潰れてしま います。しかし,すべてオンライン会議となり,どの組織であっても時間的に公平 になりました。案外不便もなく経費削減の面でも平常時でも本部会議をたまに行う 以外は,多用したいと考えています。2020年度に会に関係ある話題として,学術 会議のニュースがありました。自説を述べるのは,控えますが,本誌が和文誌であ ることから,活躍されている人文系の先生の論文発表の多くが日本語論文であると いう点に注目しました。学問の世界に文系も理系もないと思いますので,和文誌と しての本誌の役割について少し考えてみました。
本誌には総合論文という種目があります。これは国際誌を含む数編以上の内容を 和文でまとめた内容です。通常,自身の分野は原著論文を読んで調べますが,将来 に備えて異分野の研究を調べたい時など,余程英語に堪能でなければ,和文で書か れた総合論文は役立つのではないかと感じています。私は,将来に備えてなど言え る年ではないですが,賞や研究費の審査で異なる分野の研究を調べる時には本誌の 総合論文や他誌の和文の解説は,かなり役立っています。
3月現在やっとワクチンの接種が始まりました。期待に反しワクチンは100% 外国製で日本の将来が心配になります。本誌には,技術論文という分析工業会の企 業の方のご寄稿が多い種目があります。ワクチン開発とは逆に,日本の分析機器は 中国などアジア諸国を始めとして世界中で多数使われています。この様な世界的な 技術を持つ企業の研究者・技術者の報文がかなり掲載されているので,会員の皆様 に有益な知見や測定ノウハウが多々含まれていると思っております。
本誌は,若手初論文賞を設けています。学生の方も折角苦労して得た成果を発表 する際に英文誌に比べ,ハードルがやや低く書きやすいかと思っています。編集委 員長を拝命して直ぐに理事会の議事録で,タスクホース(TF)による学会業務の 再検討の答申を目にしました。本誌も議論されており世間と同じく緊急事態宣言に なった気分でした。しかしTFのメンバーを見てみると論文を良く出される大学の 先生のみで構成されています。大学入試に英語受験が必須のため学生の英語力は,
大学間で大きな差があると思います。私の大学でも博士はともかく,修士課程では 時間的に最初の論文は和文誌の方を選ぶ学生も少なからずおります。また,開発競 争で多忙な企業等の研究者の方でも英文論文までは時間が取れないこともあると思 います。本会が予算的に苦しいのは,理解しておりますが,本誌の将来像に対して 多様な立場からの意見を期待しております。
〔Osamu NIWA,埼玉工業大学,「分析化学」編集委員長〕