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エネルギーマネージメントから見た 鉄道システムの最適化

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JR EAST Technical Review-No.40

S pecial feature article

E233系のような省エネ車両投入、LED照明のような高効率 機器採用、さらに太陽光発電による再生可能なエネルギー 活用などに着実に取組んできたところです。

エネルギーの消費は図2のように、まず提供すべきサービス があり、これが車両や設備の機器容量を要求し、さらにこれ がエネルギー消費を要求する、という構造を持ちます。要求

(負荷)を減らさずに、エネルギー消費だけ減らすことは出来 ません。したがって、負荷を知るための測定と評価、負荷を 減らす工夫、さらに負荷に見合った最適システムの構築とい うアプローチにより、省エネルギーを実現出来ます。ですから、

高効率なアイテムを「外から」 持ち込むだけでなく、測定と 評価から得られた課題を「内から」解決していくマネージメン トを構築し、この視点からシステムを革新していくという技術

の哲学が大切です。

本論考では、列車運転系と建物系に分けて、鉄道の環 境負荷低減をめざす技術革新を紹介します。

鉄道事業は、列車を運転し駅を運営することを通じて、輸 送サービスを提供しています。そのようなオペレーションと、こ れを支える車両や設備のメンテナンスを加えたものが、鉄道 事業の総体と言えます。JR東日本がこの鉄道事業で消費し ているエネルギーは、列車運転における消費と駅を初めとし た建物系の消費を合わせると、電力が年間61億kWh、油な どが原油換算で9.1万klと莫大な量となっています(図1)。

少しでもこの消費量を減らし、鉄道の環境負荷低減を実 現することがJR東日本グループの使命となっており、E231系・

真保 光男

エネルギーマネージメントから見た 鉄道システムの最適化

東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センター 環境技術研究所 所長

 JR東日本は、列車運転と駅などの建物へ、年間61億kWhの電力と9.1万kl相当の油・ガスという莫大なエネルギー を消費しています。エネルギー消費は、まず提供すべきサービスがあって、これが車両システムや設備の機器容量を 要求し、それがエネルギー消費を要求するという構造を持っているので、環境負荷を低減するシステム革新はまずエ ネルギー消費への要求(負荷)を知りこの負荷を減らすことから始めなくてはなりません。ここでは、エネルギーマネー ジメントの視点から鉄道システムを最適化し、環境負荷を低減していく技術革新のアプローチを紹介します。

1. はじめに

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図1 JR東日本のエネルギー消費マップ 図2 エネルギー消費の基本構造

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Special feature article

高効率列車運転の実現に向けて

3.

主回路システムは、抵抗制御、チョッパ制御、界磁添加 励磁制御、さらにVVVFインバータ制御というように進化し、

いまに至っています。主回路システムは、永らく鉄道の技術 革新の牽引役を果たして来ましたが、高効率列車運転をめ ざすうえでもその役割が期待されます。

2011年度から主回路システムの高効率化(図4)に向けた 研究開発を進めています。まず、主回路設計史を振り返りつ つシステム革新の方向性を展望する検討を継続しています。

直流電動機駆動においては、主回路の設計指針が性能・容 量・定格の理論として体系化されていましたが、誘導電動機 駆動における体系化は未だ十分と言えません。2012年度から は、主回路システムの設計指針を体系化し、新しい主回路素 子を用いたハードの試作と走行試験も進めていく計画です。

次が経済運転です。駆動電動機について運転速度と引 張力によってエネルギー効率が変わる様子を示した、図5のよ うな「効率マップ」を作成します。これをベースとして、最も 効率の良いところを選んで通る(美味しいところを食べる)ノッ チ曲線や、力行・惰行・制動を最適に組合せた運転曲線を、

提案してまいります。

最後が回生エネルギーを有効活用する技術革新です。そ れには回生エネルギーの実態を明らかにしなければなりませ んが、回生性能は鉄道車両の能力として表示されているだ けで、実運用においてどのくらい能力を発揮しているかは測 定しない限りわかりません。そこで、まず運転エネルギーを定 量化する開発を進めています。

2011年までに、相模線において変電所と車両の双方に測 定装置を置いて、消費エネルギーを定量化する手法を確立 しました。2012年からは山手線や東北新幹線などの複雑な

列車運転系への革新アプローチ

2.

列車運転のエネルギーは、車両システムの駆動系(電車 では駆動電動機と制御装置からなる主回路システム)と、補 機系(冷房・照明などの補助機器)で消費されます。です から、高効率な車両システムの実現が、列車運転の省エネ ルギーの最初の課題となります。

一方、駆動電動機や空調など機器のエネルギー効率は、

運転状態により時々刻々と変わるものなので、実際の列車運 転において機器を効率良く働かせることが次の課題となりま す。これが列車の経済運転です。良い素質のスポーツ選手

(高効率な車両システム)を、良いコンデイションで働かせる

(列車の経済運転)と、素晴らしい成績を上げる(省エネル ギー)ことと比べられます。

最後に、全体最適のエネルギーネットワークを実現し、回 生エネルギーの有効活用などを目指します。具体的には、蓄 電技術の応用、多くの力行・惰行・回生を上手に組み合わ せた列車群としての省エネルギー、列車へ電力を供給する 変電系と駅などへ電力を供給する配電系の間のやりくり(電 力融通)のような、諸方策が考えられます。

このように省エネルギーに向けた課題解決を順番に積み上 げると、高効率列車運転の三階建構造(図3)が出来上がり ます。

このような、エネルギーマネージメントから最適化した鉄道 システムこそ、鉄道版スマートグリッドと呼ぶに相応しいもので す。その実現にはまず負荷を構成する一・二階のシステムを 最適化し、それを前提として三階システムを最適化するアプ ローチが求められる、と考えます。

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1.鉄損/銅損を減らす

2.電動機の2次銅損を減らす

3.主回路素子の革新による損失低減

(GTO→IGBT化)

4.主回路素子の革新による損失低減

(Si→SiC化)

マネー ジメント

電動機 インバータ

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高効率化のシステム計画 機器の損失

図3 高効率列車運転の三階建構造

図4 主回路システムの高効率化

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巻 頭 記 事

Special feature article 特 集 記 事

条件下でのエネルギー測定と評価へチャレンジしてまいりま す。これと並行して、変電所に蓄電池を置いたときの充放電 の挙動を測定・解析する研究も、2012年度からスタートさせ ます。

建物系への革新アプローチ

4.

次に、建物系における革新アプローチを紹介します。環 境技術研究所は、地下駅、総合車両センター、信号通信 機器室などの建物空間において、設備のサービス負荷を減 らしたうえで最適なシステムを構想する研究開発を、継続し ています。これらは、いずれも鉄道固有の空間ですから、鉄 道技術がシステム革新のソリューションを提示する責務を持つ と考えます。

駅の設備のなかでも、総武地下駅など地下空間の空調は、

システムの規模が大きく、エネルギー消費も大きい特徴を持ち ます。とりわけ、ホーム階は、線路(トンネル)という開口部 と車両の放熱という条件から、空調負荷が大きくなっていま す。負荷を最適に評価したうえでの省エネ改良が、かねてよ り希求されていました。

一方、総合車両センターのように多機能が集積された空 間では、大量の電力と蒸気を使います。この電力や蒸気の 使用実態を「見える化」し、無駄をつぶす取組みを支援し ます。思いきって、環境負荷を極小化する理想像(エコファ クトリー)を描くことも視野に入れています。まず、車体や部 品の修繕スペースなどの作業機能、会議室などの計画機能、

お風呂や食堂などの生活機能を洗い出して、それぞれを再 集約してコンパクト配置することを構想します。次に、これを 具現化する建築計画と設備計画を構想し、最後のこれらへ 電力や蒸気を供給する全体最適のエネルギーネットワークを 構想します。これを順に積み上げたものが、図6に示す、エ コファクトリーの三階建構造です。

最後が、信号通信機器室の空調設計を紹介します。ここ は運転保安を支える聖域とも言えますが、運営するユーザと 設備担当が連携すれば、「より効果的に機器を冷やすことに より無駄を排除する」ことは可能となります。フィールドを具体 的に選定して、その測定・評価を行い、これにより得られた 課題を解決するシステム改良を提案します。

大規模地下空調のシステム革新に向けて

5.

東京駅総武地下空調負荷を最新データとコンピュータシミュ レーションにより再評価する開発を2009年に開始しました。こ の評価は、実負荷が設計条件よりずっと小さいことを明らかに しました。また、ホーム階空調の方式が適切に機能せず負荷 を徒に大きくしていることが明らかとなり、これの見直し(図7)

を提案しました。

これらを踏まえた空調システムの改良を行えば、熱源の 2577冷凍トンを1101冷凍トンへと、なんと現行の約4割までス リム化できる見通しを得ました。

負荷評価と並行して、昭和40年代からいまに至る地下駅 設計史の振り返りを行っています。図8は、地下駅のホーム 階の空調方式を年代の古い順から比較したものです。これ を見ると、上述の総武地下ホーム階改良案が、最も新しい 仙台駅仙石線地下の方式に似ていることがわかります。仙 石線地下以前に設計された地下駅のホーム階空調の省エネ 改良をすれば、大きな効果を期待出来そうです。そもそも全 ᛶ⬟᭤⥺

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図5 駆動電動機の効率マップ

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図6 エコファクトリーの三階建構造

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Special feature article

般的に機器容量を過大に設計していたので、測定と再評価 による容量のスリム化も見込めるでしょう。

このように設計史を振り返ることから、総武地下駅だけでな く、地下駅そのものの省エネ改良の展望が見えて来ました。

さらに2011年度から他の地下駅を評価したところ、総武地下 駅と同様の諸課題と併せて、湿度が高すぎて冷却能力だけ では十分に空調機能を発揮出来ないという中間駅(新橋駅、

馬喰町駅など)固有の課題も明らかになりました。これらを踏 まえて、地下空調の省エネ改良を支援するための改良指針 を体系化する開発を2012年度から立ち上げました。

一方、負荷評価を単なる駅の省エネに終わらせず、駅部 の余剰能力を駅周辺へ活用して、駅・駅ビル・駅前ホテルと いったエリアへのエネルギーマネージメントを実現するシステム 構築も可能です。総合車両センターや、駅と駅周辺施設といっ た、鉄道固有の負荷集積エリアへの最適エネルギーマネー ジメントを、「鉄道版マイクログリッド」と呼んでも良いでしょう。

6. おわりに

本稿では、紙面が限られるため、省エネルギーに重点を おいた技術革新を紹介しました。環境負荷低減のもう一つの 柱として、再生可能なエネルギーの活用があります。鉄道 フィールドへの応用を目指し、太陽光エネルギーをより有効に 活用する系統連携制御や、ヒートポンプを用いた地下熱・空 気熱の活用方策を開発しています。

2009年4月に発足した環境技術研究所は、蓄電池駆動電 車システムの開発と、東京駅総武地下の空調負荷評価から 研究開発を着手しました。これらが一定の成果を得たので、

今後はエネルギーマネージメントの視点からシステムを革新す る諸開発へチャレンジしてまいります。

エネルギーマネージメントの視点からシステムを評価し最適 化するアプローチが、鉄道技術を革新し、そのことが省エネ ルギー、節電、さらにCO2削減という果実を社会へもたらすこ とを確信しています。

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図7 ホーム階空調方式の見直し

図8 ホーム階空調の設計史

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