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現代フランスの雇用戦略に関する一考察 : 「フランス型フレキシキュリティ」と「職業的社会保障」の交錯と対抗

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(1)

Ⅰ.はじめに

 周知のように,EUは2000年代の中期以降,

それまでのオランダとデンマークにおける失業 率抑制の政策の成功を受けて,リスボン戦略の もとでの中長期的雇用政策のモデルとしてフレ キシキュリティ(労働市場のフレキシビリティ

+雇用・所得等のセキュリティ)とそしてその 共通原則を提起し,加盟各国に対して共通原則 に依拠しつつ各国特有の労使関係と労働市場,

等の在り方に応じて独自のフレキシキュリティ を構築するように要請してきた。フランスにお いては,そのような EUレベルの検討と要請に むしろ先行して,雇用戦略と労働市場改革に関 するフランス独自の構想の専門家集団による提 起とその基礎上での労働組合による全く新し い雇用戦略の構想「職業的社会保障」の提起が 行われる一方,EUレベルの新たな雇用戦略の モデルとしてのフレキシキュリティ=デンマー ク・モデルとの解釈の観点から事実上,デンマー クのいわゆる「黄金の三角形」をいわば無媒介 的にフランスに適用しようとする「フランス型 フレキシキュリティ」の構想が別の専門家集団 によって提起されてきた。しかもそれを提起し た報告書のサブタイトルに「職業的社会保障」

と銘打って。

 このような新たな雇用戦略の提起をめぐって 錯綜した状況のなかで,EUによる各国独自の フレキシキュリティの構築という要請にフラン スが正面から対応しうるに至ったのは,2007年 5月のサルコジ大統領の就任を契機としてであ る。しかしながらサルコジ大統領もまた,就任

前と就任直後には自らの雇用戦略構想として

「職業的社会保障」の用語を使用していたにも かかわらず,彼の政権の要請のもとでの労使交 渉を通じて成立した「労働市場の現代化」に関 する職業間全国協定とその立法化すなわち政権 の雇用戦略構想の最初の具体化は,デンマーク の「黄金の三角形」の第一の柱のみの即時的優 先的適用を可能にし,第二,第三の柱について は事後の交渉に委ねるという形での「フランス 型フレキシキュリティ」の本質的実現に帰着し たのである。

 2012年5月にフランス社会党出身のオランド 新大統領が就任したことにより,ユーロ危機に 直面しているとはいえ,すでに公約されている 特に若者に的を絞った雇用創出政策を含め今や フランスの雇用戦略は,サルコジ時代とは別の 新たな展開が予想される状況にある。とはいえ 新大統領のもとでの雇用戦略は,これまでのそ れをめぐる政労使三者間の社会的妥協のプロセ スと諸協定・立法を無視しては構築されえない であろう。

 本稿はこうして,現代フランスの雇用戦略を

「フランス型フレキシキュリティ」と「職業的 社会保障」の交錯と対抗という観点から,サル コジ前大統領の5年間にわたる雇用戦略の展開 すなわち政労使三者間の社会的妥協の経緯を念 頭に置きながらも,当面これら二つの雇用戦略 構想の形成過程と基本的内容そしてその最初の 具体化である「労働市場の現代化」に関する協 定・法の基本的内容と評価に限定して考察しよ うとするものである。

現代フランスの雇用戦略に関する一考察

──「フランス型フレキシキュリティ」と「職業的社会保障」の交錯と対抗──

荒 井 壽 夫

(2)

Ⅱ.二つの雇用戦略構想の形成過程と基本内容

1.「フランス型フレキシキュリティ」の構想

⑴カユック・クラマール報告書

 まず「フランス型フレキシキュリティ」

(flexicurité à la française)について考える時,

この用語は,主観的には EUレベルで要請され ている各国ここではフランス特有の労使関係と 労働市場,等の状況に応じた独自のフレキシ キュリティの構築という意味で使われていると しても,客観的実質的には,フランス特有の 状況を無視してフレキシキュリティのデンマー ク・モデル=「黄金の三角形」のいわば無媒介 的適用という意味で使われている場合が多いこ とに注意する必要がある。

 この用語を明示的に使用することはないもの の,実質的には後者の意味において「フランス 型フレキシキュリティ」の構想を最初に明らか にした有力な研究の一つは,2005年に公刊され た二人の経済学者,P.カユックと F.クラマール による共同報告書1)であり,そのことは多く の論者によって認められている2)。しかしな がら,この報告書は二つの点で予め注意を要す る。第一の注意点は,報告書のタイトルであり,

それは『不安定性から移動へ:職業的社会保障 に向けて』と題されていることである。すなわ ち,サブタイトルとしてフレキシキュリティで はなくフランス独自の構想「職業的社会保障」

が使用されていることである。換言すれば,報 告書の内容は,実質的に「フランス型フレキシ キュリティ」を構想し提起しているのに,サブ タイトルとしてはフランス独自の概念「職業的 社会保障」が使用されているのである。第二の 注意点は,この報告書が当時のシラク大統領の

もとラファラン内閣の二人の閣僚,N.サルコジ 経済財政産業大臣と J.-L.ボルロー雇用労働社会 的結束大臣の要請を受けて作成された雇用政策 研究の報告書であるということである。すなわ ち,この報告書は以下に見るように,N.サルコ ジが次期大統領を目指す政治家として自己の雇 用戦略の構想を練り上げるための理論的土台と しての役割を果たしているのである。いずれに せよ,「フランス型フレキシキュリティ」の構 想は以上のように,フランス独自の構想「職業 的社会保障」をいわば看板として借用し,それ と交錯して出発しているのである。

 それでは,この報告書は「フランス型フレキ シキュリティ」の構想をどのように示している のか。報告書によれば,現代フランスの労働市 場の特徴として次の三点がまず強調される。す なわち,採用の大部分が不安定な労働契約の もとに行われていること,教育免状のない者 と高齢者が長期失業に陥りやすいこと,フラン ス人は仕事と将来に対する不安感が非常に高い こと,である。「職業的社会保障」はこうした 現状を克服するために必要であり,それは端的 には「すべての求職者に将来の職種に向けての 転職を可能にすることによって,穏当な所得と 質の高い付き添い支援を保証する」ことであ り,換言すれば「職業行程のセキュリティ付与

(sécurisation des parcours professionnels)を もたらす」ことである。それを達成するために 三つの経路が報告書によって提起される。

 第一の経路は,「国家の役割を明確にするこ とによって求職者の支援を改善すること」であ る。すなわち,それは一方では,企業の「解 雇への課税」によって最も付き添い支援を必要 とする求職者に失業補償を手厚くしつつ,解雇 実施企業の再就職斡旋義務を免除して,その義 務を国家と公共的雇用サービスの責任とするこ

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1) P.Cahuc et F.Kramarz,

Delaprécarité à la mobilité : versune Sécurité sociale professionnelle,

Documentation française, 2005.

2) 例えば,次の論文参照。Th.Coutrot, Une flexicurité à la française ? in M.Husson(dir.),

Travail flexible salariés

jetables,

La Découverte, 2006.

(3)

とである。それは他方では,既存の職業安定所

(ANPE),失業保険機関(UNEDIC)等の様々 な公的機関を集結する「単一窓口」を創設し,

そこに求職者の「人物像検出」(profilage)と 失業補償管理の業務を集中しつつ,付き添い支 援と再就職斡旋の業務については,成果に応じ て支払われる外部民間業者に下請けし,そのも とで求職者に求職活動の不首尾の場合,一定期 間後の「非営利部門でのパートタイム就労」の 受け入れ義務と拒否の場合の失業手当中断の制 裁を与えることによって,雇用復帰を推進する ことである。

 第二の経路は,「様々な部門・職業・免状へ のより公正なアクセスを可能にすること」であ る。すなわち,それは,免状や資格によって厳 格に規制されている多くの部門や職業特にサー ビス業,具体的には小売業,カフェ,ホテル,

獣医師,理容師,運動療法士,タクシー運転手 等の入り口での制限を廃止するとともに,これ らの仕事へのアクセスを容易にするために「職 業適性証」(CAP)に関する評価方法と「経験 的成果認定」(VAE)の運用方法を改訂するこ とである。報告書によれば,フランスはこうし てより大きな雇用の鉱脈を持つことになる。

 第三の経路は,「期限の定めのない単一労働 契約(contrat de travail unique)を創設するこ とによって可能な限り不安定雇用の地位をなく すこと」である。すなわち,それは,現在の不 平等の原因である無期契約と有期契約の区分を 廃止して前者に統一し,解雇を行った企業には 被解雇者に解雇手当,政府に「連帯税」を支払 わせるとともに,その代償として現在の解雇の 手続き・点検と再就職斡旋義務を廃止し,失業 保険料の減少を含め労働コストの削減を可能に し,全体として雇用の安定化の促進を目指すこ とである。

 報告書は,以上の経路=提案をデンマークも 含めた欧州諸国の経験・政策とフランスのそれ

との国際比較を通じて行ったことを各項目につ いて明示している。特に,第一の提案にかかわ る付き添い支援の個別化と失業補償の改善を結 びつける求職者と国家との間の「相互的な誓 約」および求職者の「人物像検出」を担当する 公共機関の「単一窓口」と再就職斡旋業務の外 部民間業者への下請け,そして第三の提案にか かわる無期労働契約の雇用保護と解雇手続きの 軽減化・廃止に関して,デンマークも含めた欧 州諸国の経験・政策から着想を得ていることを 明示している。こうして報告書は,その用語を 使用していないものの,フレキシキュリティと しての雇用政策の「デンマーク・モデルから着 想を得た(フランスの[引用者補足])改革の提 案」3)として現れるのである。すなわち,報 告書の第一の提案はデンマーク・モデル=「黄 金の三角形」の第一の柱(労働市場のフレキシ ビリティの増大),第二の柱(失業補償の充実),

第三の柱(積極的雇用政策の推進)の全てに関 連し,第二の提案は第一の柱,第三の提案も第 一の柱に関連しているからであり,こうして報 告書は事実上,特に第一の柱を重視する形でフ

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3) P.Penaud et als, Politiques sociales, Presses de Sciences Po et Dalloz, 2011, p.221.

図1. カユック・クラマール報告書による雇用戦 略の構想

(出所) P.Cahuc & F.Kramarz, De la précarité à la mobilité, Documentation française, 2005 にもとづいて作成。

・単一労働契約+解雇へ

・解雇手続き・点検廃止の課税

+再就職斡旋義務廃止

・サービス業労働市場の 規制緩和

・公共機関集結の単一窓 口と失業補償管理

・外部民間業者による再 就職斡旋と付添支援

・求職活動の点検と制裁

・困難な求職者の失業補 償の改善

(4)

レキシキュリティのデンマーク・モデル=「黄 金の三角形」の三つの柱を基準として,それら の柱に対応するフランスの類似の措置を提案す ることによって今後の雇用戦略の構想を提起し ているからである。「職業的社会保障のため」

という枕詞が使われているとはいえ,報告書の 提案を「フランス型フレキシキュリティ」の最 初の構想と呼ぶ所以である。そこでデンマーク・

モデル=「黄金の三角形」にならって,この報 告書による雇用戦略の構想を図示すれば,図1 のようになろう。

⑵フランスにおけるデンマーク・モデルの把握  以上のような「フランス型フレキシキュリテイ」

の構想の起源であるデンマーク・モデルは,フラ ンスにおいてどのように把握されてきたのか。

 その端的な表現である「黄金の三角形」は,

R.ボワイエによって次のように把握されている

4)。すなわち,それは,100年以上にわたる政 労使三者間の社会的妥協を通じて歴史的に形成 された,フレキシブルな労働市場(採用・解雇 ルール),寛大な社会保護(失業補償),巧妙な 積極的雇用政策(即応態勢・訓練)という三つの

「制度間の補完性と相互作用」として把握され る。そうした制度的補完性こそが,2000年代に おけるデンマークの低い失業率,高い労働移動 率,低い賃金・物価上昇率,高い雇用率,高い 生活水準,低い不平等・貧困率,等の良好なパ フォーマンスに表現されるような「企業の競争 力による収益性,賃労働者にとっての所得の安 定性,国家にとっての強制的課税能力」という 三者間の利益共有を可能にする「フレキシキュ リティの好循環」を生み出しているのである。

 同時に,こうしたデンマーク・モデルについ てその外国への適用可能性の観点から,その国

民的特殊性およびその弱点が摘出される。そ の国民的特殊性は,制度間の補完性と相互作用 として次のように把握される。すなわち,国民 経済の大部分が中小企業から構成されているデ ンマークにおける採用・解雇ルールのフレキシ ビリティ(柔軟性または弾力性)は,80%近い 組織率を持つ強力な労働組合のもとで管理され る寛大な失業補償とそれによる賃労働者・求職 者の所得のセキュリティ(保障または保護)に よって可能にされ,その寛大な失業補償とそれ による就労意欲剥奪可能性は,積極的雇用政策 によって厳しく点検されるとともに,失業補償 は雇用復帰への即応態勢と訓練への参加を条件 として給付される(アクティベーション)。さ らに積極的雇用政策は,そうしたアクティベー ションの仕組みを通じて求職者の迅速な雇用復 帰と労働市場の流動化に貢献するのである。

 そのうえで,いくつかの弱点が摘出される。

まず,焦点の一つである2000年代の低失業は,

19世紀末以降存在している解雇ルールの規制緩 和の結果ではありえず,全体の3分の1近い公 共的雇用あるいは早期退職・病気休暇制度によ る労働力人口の相当部分の労働市場からの撤退 にも起因していることが摘出されている。それ は,就業率の低い移民の統合の問題であるとと もに,デンマークの福祉国家としての税制の持 続性を妨げる弱点でもあるとされる。

 また積極的雇用政策については,アクティ ベーションの仕組みにおける「細かい調整にお ける実用主義」とそのなかの「矛盾」が指摘さ れる。すなわちそれは,失業手当享受の権利と 引き換えに教育訓練プログラムへの参加が義務 付けられていることに関連する。その際プログ ラムは,民間部門の補助金付き雇用,公共部門 の補助金付き雇用,基礎的教育プログラム,失

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4) R.Boyer,

La flexicurité danoise : quells enseignements pour la France ?

Editions Rue d' Ulm, 2006. R.Boyer, Comment concilier solidarité sociale et efficacité économique à l' ère de la globalisation : une lecture régulationniste, in S.Paugan(dir.), Repenser la solidarité, PUF, 2007, 1er édition Quadrige, 2011. なお,わが国におけるフレキシキュリ ティとデンマーク・モデルの研究については,例えば,菅沼隆「デンマークの労使関係と労働市場」(社会政策 学会編『社会政策』第3巻第2号,2011年),嶋内健「デンマークの積極的雇用政策」(同誌),等参照。

(5)

業者援助プログラムという四つのタイプに区別 されているが,第一のタイプは職務能力の向上 と良質の職の獲得を可能にするものの,それ以 外のタイプは魅力がない意欲剥奪的内容であり

「雇用復帰に駆り立てる脅迫」ないし「ワーク フェアの機能的等価物」に他ならないという点 である。

 さらに問題であるのは,寛大な失業補償を構 成する長期4年にわたる失業手当給付期間が,

2005年12月の政府委員会報告書によって短縮す ることが提案されていることであり,それは「フ レキシキュリティの支柱の一つのありうる再検 討」に相当するとされるのである。

 以上のようなボワイエの把握の他に,デン マーク・モデルのフランスへの適用可能性の観 点からは,J.-C.バルビエの把握に触れておく必 要がある5)。バルビエは,デンマークの研究 者に依拠して「相対的に弾力的な労働立法」「低 賃金について非常に寛大な失業保険制度」「積 極的雇用政策の非常にダイナミックな制度」と いう「黄金の三角形」を構成する諸制度間の「効 果的な補完性」としてデンマーク・モデルを提 示するとともに,その成功の土台として「社会 制度的整合性」,特に国家と経営者から独立し て失業保険を管理し積極的雇用政策のなかで中 心的地位にある職業訓練において必要不可欠な 役割を果たしている労働組合へのデンマークの 勤労者の高い加入とそして国民一般の政労使に よる改革の連鎖と「対立的妥協」への「社会的 信頼」を強調している。そしてバルビエは,そ の観点からフランスにおける労働市場のフレキ シビリティと雇用の不安定性の否定的影響を被 ることのこの間の不平等性の厳存,失業保険制 度と積極的雇用政策の管理における労使双方の

役割の副次性,等を強調することによって,デ ンマーク・モデルの適用としての「フランス型 フレキシキュリティ」の「時期尚早」を指摘し ている。

 この観点から浮かび上がるのは,上記のカ ユック・クラマール報告書のようなこの間論議 されてきた「フランス型フレキシキュリティ」が,

労使関係と労働市場の在り方等に関するフラン スとデンマークとの国民的特殊性の相違を無視 して,事実上フレキシキュリティのデンマーク・

モデル=「黄金の三角形」を構成する諸制度の フランスへのいわば無媒介的適用を意図するも のに他ならないということである。

 なお,フランスにおいてデンマーク・モデル のいわば社会的成功については論者の間で一致 するものの,その経済的成功については批判的 見解がいくつか存在する。例えば,ボワイエの 把握と同様に失業の低下が雇用のダイナミズム ではなく早期退職・病気休暇制度による労働力 人口の撤退政策に起因していること,1990年代 後半から2000年代前半にかけての経済成長と雇 用創出に関してはデンマークは相対的に低位で ありフランスよりも低いこと,等である6)。  また,D.メダは,デンマーク・モデルを「労 働市場の大きなフレキシビリティ」「失業時の 寛大な所得保証」「非常に発展したアクティベー ション政策」から構成される「黄金の三角形」

として提示する一方7),2000年代中期以降の EUおよびオランダ,スウェーデン,イギリス のフレキシキュリティとアクティベーション政 策に関する比較研究に依拠して,ヨーロッパに おけるフレキシキュリティの要であるアクティ ベーション政策が,「仕事第一の政策」として「求 職者への無限定かつ最大限迅速な就労への誘

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5) J. -C.Barbier, Au-delà de la ≪ flex-sécurité ≫ , une cohérence sociétale solidaire au Danemark, in S. Paugan

(dir.), op. cit., J.-C.Barbier, Réflexion comparative sur les conditions sociales d' une flexicurité à la française, in

Regards sur l’ actualité,

No.343, 2008.

6) Th. Coutrot, Une flexicurité à la française ? op. cit., Ch. Ramaux et D. Sauze, Attention aux mirages de la ≪ flexicurité ≫ à la danoise, in

Le Monde,

le 11 avril 2007.

7) D. Méda et A. Lefèbvre, Le modèle danois de la ≪ flexicurité ≫ , in

Cahiers français,

No. 330, 2006.

(6)

発」をもたらしていることを強調している8)。  メダによれば,これらのアクティベーション 政策は,失業補償の享受の条件としての「求職 活動の点検と制裁の増大」「成果に応じて支払 われる民間の請負業者への就職斡旋の委託」「権 利と義務を伴った個別的契約と行動計画の作 成」「人物像検出の技法の体系的利用」「適切な 求人(offred’emploi convenable)のより必要 最小限の定義」による「求職者の技能資格に合 致しえない職または劣悪な質の職の受け入れ」

の促進,等の共通する特徴を持つのである。そ してこうした仕組みを通じた「社会的支出の活 性化(アクティベーション)」は結局のところ,

「学習に好都合な労働編成の発展」や「技能資 格を付与する訓練」「長期的訓練プログラム」

へのアクセスの減少そしてそれと関連する「脆 弱にされた一部の人々における雇用と失業との 反復」ないし「臨時的雇用」の増加,さらには 労働力人口における「長期的な雇用獲得能力

(employabilité)の犠牲」をもたらすことに注 意を喚起している。この最後の点は,「余りに 頻繁な職の変更」をもたらすデンマーク・モデ ルにもまた共通して見出される懸念であること は明白である。なお,これらのアクティベーショ ン政策の仕組みが,カユック・クラマール報告 書における第一の提案とほぼ合致していること は「フランス型フレキシキュリティ」の目指し ている方向を示唆するものとして興味深い。

 総じて,以上のようなフランスにおけるデン マーク・モデルの把握は,ボワイエによって作 成された図2によって代表させることができよ う。

⑶サルコジ政権による「フランス型フレキシキュ リティ」の構想

 N.サルコジは,2006年末に与党 UNPの代表 としてフランス大統領選挙への出馬表明を行っ た直後に,大統領選挙に向けた自己の雇用戦略 を経済紙への投稿という形で簡潔に明示してい る9)。その論稿は,「職業的社会保障によって 完全雇用を再び見出そう」というタイトルも含 めて,前述のカユック・クラマール報告書を踏 まえたものである。すなわち,そこでは,「職 業的社会保障」を「種々の保護を職にではなく 断続的な職業行程にある賃労働者に付与する」

という意味で把握しつつ,カユック・クラマー ル報告書と同様にそれを追及することこそがデ ンマーク等で成功している「フレキシキュリ ティの進め方」をフランスにおいて実現するこ とになると明言されている。

 サルコジ大統領候補における「フレキシキュ リティの進め方」に関する構想は,端的には次 の三点に要約される。

 第一に,「採用を自由にするために,雇用と

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8) D. Méda, Flexicurité : quel équilibre entre flexibilité et sécurité ? in

Droit social,

juillet-août 2009. なお,EU に おけるフレキシキュリティに関しては,例えば,中野聡「EU のフレクシキュリティ政策」(『社会政策』同上誌)

等,参照。

9) N. Sarkozy, Retrouvons le plein-emploi grâce à la Sécurité sociale professionnelle, in

La Tribune,

le 12 décembre 2006.

図2. ボワイエによるデンマーク・モデルの核心:

三つの制度間の補完性

(出所) R.Boyer, La flexicurité danoise : quels enseignements pour la France? Editions Rue d' Ulm, 2006, p.19.

・採用と解雇のルールの 大 き な フ レ キ シ ビ リ ティ

・積極的雇用政策:即応 態勢のルール,訓練

・失業手当の寛大さ

によって可能にされる に貢献する

によって 点検される

(7)

労働編成により一層のフレキシビリティを導入 する」ことである。そうしたフレキシビリティ を体現する当時の措置として「新規採用契約」

(CNE)が挙げられている。因みに,2005年8月 に導入されたこの契約は,従業員20人未満の企 業を対象とする無期契約について,経営者が2 年の試用期間中に理由を明示する必要なしに従 業員を解雇できる契約であるが,ILOの解雇に 関する第158号条約違反の通告もあって,後に 見る「労働市場の現代化法」(2008年6月25日 法)によって廃止されることになる契約である。

 第二に,「期限の定めのない単一労働契約の 制度を通じて全ての賃労働者をより公正かつよ り効果的に保護する」ことである。

 第三に,「職業的社会保障を制度化すること によって,職業的リスクに直面している賃労働 者に提供される保証を強める」ことである。そ こで挙げられている「職業的社会保障の制度」

とは,職業安定所と失業保険機関との融合のう えでの公共的雇用サービスによる「個人の要求 に応じた成果の上がる再就職斡旋を受ける権 利」「求職の熱心な点検の代償としての寛大な 失業補償を受ける権利」「生涯にわたる職業訓 練へのアクセス」「非常に高い水準の付き添い 支援」である。そして,そうした公共的雇用サー ビスの充実の財源としては,「解雇に依拠する 企業への課税」が挙げられている。

 こうして,デンマーク等で実施されている「フ レキシキュリティの進め方」すなわち「フレキ シビリティ(柔軟性,弾力性)とセキュリティ

(保障,保護)の諸要求の間での野心的で公正な 釣合いのとれた改革」によって,失業率の低下 と完全雇用への復帰が可能になるとされている。

この構想は,一方においてカユック・クラマー

ル報告書と同様またはそれに倣って,フレキシ キュリティのデンマーク・モデル=「黄金の三 角形」を事実上,フランスにも適用可能な基準 と見なしそれを構成する諸制度として単一労働 契約+採用・解雇のフレキシビリティ,寛大な 失業補償,公共的雇用サービスの充実を提起し ている点において「フランス型フレキシキュリ ティ」の構想と言えるが,他方においてセキュ リティを体現するものとして「労働組合 CGTと CFDTが要求してきた」「職業的社会保障の制度 化」を失業補償や再就職斡旋等の充実した公共 的雇用サービスを「享受する諸権利」の実現で あり必要と見なしている限りにおいて,少なく とも表面的には労働組合が要求するフランス独 自の構想「職業的社会保障」を単なる枕詞とし てではなく部分的には採用せざるをえない雇用 戦略の構想の一要素と見なしていたと言えよう

10)。ここには,雇用戦略の構想をめぐる「フラ ンス型フレキシキュリティ」と「職業的社会保 障」の交錯あるいは雇用戦略の構想をめぐる政 労使三者間の社会的妥協の反映が見出される。

 以上のような「フランス型フレキシキュリ ティ」の構想は,2007年5月のサルコジ大統領 の選出・就任とそのもとで組織された F.フィー ヨン内閣のもとで,その具体化のための「方針 文書」を通じて労使交渉の対象になる一方(後 述),施政方針演説を通じてフレキシキュリティ の別の表現である「フレキシセキュリティ」

(flexisécurité)の実現に向けて取り組むべき優 先課題すなわち単一労働契約,失業補償方式改 革,職業安定所と失業保険機関の融合,新たな 貧困対策としての「積極的連帯所得」(RSA),

等として再確認され具体化される11)

 こうして上記方針文書の主要テーマ「労働市

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10) この点についてはなお,薬師院被仁志「日本で伝えられなかったサルコジ新大統領の公約」(『東京新聞』夕刊 2007年6月21日付)参照。

11) François Fillon présente les priorités du gouvernement en matière sociale, in Liaisons sociales : Bref social, No.

14907, le 5 juillet 2007. なおサルコジ政権の特に失業・貧困対策については,都留民子「フランスの失業・雇用 そして貧困対策」(『総合社会福祉研究』第32号,2008年3月),同「福祉国家はゆらいでいるか」(『経済』

No.168,2009年9月)参照。

(8)

場の現代化と職業行程のセキュリティ付与」に 沿った中央労使交渉が開始される一方,サルコ ジ大統領は就任の4ヶ月後,首相を差し置いて 自ら雇用を含む社会政策の方針をまさに「サル コジ政権」さながらに雇用戦略構想として明 示している12)。それは,労働時間,労働契約,

失業保険,職業訓練,等の領域を含んでいる。

 労働時間については,大統領選挙当初から 強調してきたスローガン「より多く稼ぐため により多く働く」(travailler plus pour gagner plus)のを可能にするために週35時間制の弾力 化に向けての超過勤務時間の税・社会保険料負 担の廃止,集団的労働時間決定における企業・

産業分野労使交渉へのより大きな余地,「時間 貯蓄口座」の活用,等が提示される。失業保険 については,職業安定所と失業保険機関の融合,

若者と不安定就労者へのより手厚い補償,失業 保険と他の雇用政策との連結,適切な求人や訓 練の拒否の場合の補償中断,点検と制裁の手続 き明確化,等が提示される。また職業訓練につ いては,「職業行程のセキュリティ付与」の観 点からの組織と資金調達の再検討が提示される。

なお,新たな貧困対策としての「積極的連帯所 得」についても明示されている。

 問題の労働契約については,「交渉による契 約破棄方式」と手続きの単純化,試用期間の制 度化,有期契約から無期契約へのより円滑な移 行,「訓練または生活保障を享受する権利の移 転可能性」等は提示されているものの,肝心の 単一労働契約と解雇実施企業への課税について は言及されなかったのである。

 こうして,サルコジ大統領就任後,当初の「フ ランス型フレキシキュリティ」の構想は,その 支柱の一つである単一労働契約の断念によって 修正されるに至ったのである。その理由として は,次のような説明が説得的であろう13)。す

なわち,労働組合の反対は,単一労働契約が解 雇の金銭的解決可能化と再就職斡旋義務廃止ゆ えに雇用の安定性を掘り崩すという観点から容 易に理解しうるが,経営者側もまた,単一労働 契約が有期契約の「期限の到達による契約の自 動的破棄という法律的利点」の消失と「企業に おける不安の要因としての解雇通知」の存続を もたらすとともに,法律的失敗に終わった「新 規採用契約」(CNE)の代用品と見なされ再び 勤労者の反発を買うことを危惧して反対するに 至ったという説明である。

 事実,フランスの代表的な経営者団体「フラ ンス企業運動」(MEDEF)は,大統領選挙の直 前において,次のような主要要求を掲げた「白 書」を公表していたのである14)。第一に裁判 官の点検を免れる「相互の合意による契約破 棄」または「分離可能性」の創設,第二に実現

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12) Nicolas Sarkozy présente un ≪ nouveau contrat social ≫ , in

Liaisons sociales : Bref social,

No. 14955, le 20 septembre 2007.

13) F. Gaudu, De la flexicurité à la sécurité professionnelle, in

Formation emploi,

No. 101, janvier-mars 2008.

14) J. Freyssinet,

Négocier l’ emploi,

Editions Liaisons, 2010, p.221.

図3. サルコジ政権による「フランス型フレキシ キュリティ」の構想

(出所) N.Sarkozy, Retrouvons le plein-emploi grâce à la Sécurité sociale pofessionnelle, in La Tribune, le 12 décembre 2006, Nicola Sarkozy présente un nouveau contrat social, in Liaisons sociales : Bref social, No.14955, le 20 septembre 2007 にもとづ いて作成。

・交渉による労働契約破 棄の導入

・試用期間の制度化

・単一労働契約の取り下

・職業安定所と失業保険 機関の融合

・付添支援と再就職斡旋 の充実

・求職活動の点検と制裁

・訓練と生活保障との享 受権の移転可能性

・若者と不安定就労者等 の困難な求職者への失 業補償の充実

(9)

の時に解雇なしに契約破棄を可能にする「予め 合意された破棄をもつ特別任務の無期契約」の 創設,第三に雇用調整計画に関する期限・補 償・裁判官取り消し可能性の制限,第四に国家 によって資金提供される普遍的制度と失業保険 機関によって保証される補足的制度との二つの 段階をもつ失業補償制度の創設,第五に労使双 方の「統一的監督」を条件とする職業安定所と 失業保険機関の融合の受容,第六に職業訓練に 関する協定の評価の枠組みにおける組織・資金 調達方式よりも訓練内容の検討の重視,等であ る。これらの要求は,サルコジ政権の方針と相 当重複するものの,単一労働契約の要求を含ん でいないことは一目瞭然である。

 いずれにせよ,サルコジ政権成立当初の「フ ランス型フレキシキュリティ」の構想は,図3 のように示すことができよう。

2.「職業的社会保障」の起源と構想

⑴ボワソナ報告書とシュピオ報告者

 以上のような「フランス型フレキシキュリ ティ」の構想のなかで使われてきた雇用戦略に 関するフランス独自の概念「職業的社会保障」

(sécurité sociale professionnelle)とはどのよう にして生まれたのか。この概念は通常,労働組 合 CGTによって最初に提起されたと言われて いるが,その概念は突然提起されたのではなく,

着想の起源を持っていることが論者によって認 められている15)

 その最初の起源として挙げることができるの は,J.ボワソナをリーダーとする学際的専門家 グループによる政府の「計画一般委員会」への 報告書16)である。ボワソナ報告書は,労働法 と労働契約が現在の賃労働の根本的変化に対 応できず勤労者の権利とセキュリティ(保障)

を護ることができていないことを認め,新たな

法律的枠組みとして「就業契約」(contrat d’

activité)を提起している。報告書によれば,そ れは,現行の労働契約である「雇用関係の組織 化の枠組みを対象,時間的広がり,人の範囲に 関して拡張する」ことである。

 対象の拡張とは,それが通常の雇用へのアク セスの権利だけでなく「訓練,独立自営や非営 利社会団体での就業を含めた様々な労働形態を 交互に行わせる職業的道程を誰もが構築するの を可能にする権利」をも含むことである。「就 業契約」はそれゆえ,勤労者に対してその道程 の「個別化された進路指導や追跡調査を享受す る権利」や「賃労働者,訓練実習生,独立自営 労働者の地位の接近」「企業連合のなかに設置 される相互扶助化された所得基金による報酬の 平等化」をもたらし,企業に対しては「賃労働 者の移動の組織化への合意にもとづく監視の権 利」を与えるのである。

 時間的広がりの拡張とは,それが,そのなかに 通常の義務的就労期間の他に「独立自営の職や経 済的社会的有用性をもつ休暇等が含まれうる副次 的労働契約や職業訓練契約が当事者間の合意に よって継続されるであろう,おそらくは最低5年 という複数年の期限」を持つことである。

 人の範囲の拡張とは,それが「一方では就業 者またはその代表者,他方では自由に構成され る企業連合に属する複数の雇主から構成される 経済的社会的責任者の団体との間の契約関係」

を含むことである。

 こうして拡張された「就業契約」は,次の二 つの目的を持つことになる。第一は,勤労者の

「不安定性,セキュリティ欠如または排除の同 義語ではない移動を促進する」ことによって「自 律性の要求と移動の欲求を個別的な行程に不可 欠の継続性と両立させる」ことである。第二は,

企業に「協働的な組織そして『相互扶助化され たフレキシビリティ』に依拠することによって,

─────────────────────────────────

15) F. ゴーデュの上記(13)の論文,参照。

16) J. Boissonnat(dir.), Le travail dans vingt ans, Editions Odile Jacob – La Documentation française, 1995.

(10)

より強い競争力を目指す柔軟性と反応性を与え る」ことである。

 ボワソナ報告書は,こうして拡張された「就 業契約」の提起によって,勤労者の職業生涯に おいて経験しうる就業または非就業の様々な形 態とその間の移動にセキュリティを付与しよう とする提案である。

 勤労者の職業生涯の変遷過程にセキュリティ を付与するという同じ発想に立ちながらも,「職 業的社会保障」という概念と構想の形成にとっ て決定的な意味をもつ革新的な考察と提案を 行っているのが,労働法学者 A.シュピオをリー ダーとする国際的学際的な専門家グルーブによ る欧州委員会への報告書17)である。シュピオ 報告書は,労働法全体にわたる包括的な考察と 提案を行っているが,ここでは勤労者の職業的 地位の継続性とセキュリティ付与の問題に限定 することにしたい。同報告書によれば,労働法 と労働契約は,現在,決定的に重要になってい る職業訓練や無償労働とくに家庭内労働等の非 営利労働形態あるいは独立自営労働,等を考慮 に入れることができないのであり,それゆえ逆 にそれらを包摂する「労働生活の多様性と継続 性を両立させる」新たな概念「人々の職業状態」

(état professionnel des personnes)の設定が必 要である。それは,一方で同様の観点に立つボ ワソナ報告書の「就業契約」を評価しつつも,

他方で問題であるのが「労働市場における契約 の交換以外に位置づけられる期間を含めること である以上,語るべきは契約よりもむしろ地位 である」という観点から提案の「人々の職業状 態」の妥当性を主張する。それゆえ,「従属と セキュリティを結びつけている被雇用者の地位 を継承しなければならないのは,労働の包括的 アプローチそして自由,セキュリティ,責任の 諸要請を結びつけうるアプローチにもとづいた

人々の職業状態である」ということになる。

 ところで,報告書によれば,「非就業期間も 雇用・訓練・自営労働期間または市場外労働期 間」も包摂する「人々の職業状態」を明確に するためには,社会法(労働法+社会保障法)

の四つの同心円への整理が有用である。それは すなわち,第一の外枠の円としての労働から独 立して全ての者に保障される「普遍的社会権」,

その内側の第二の円としての「非職業的労働 にもとづく権利」(育児教育と結びついた年金 上の特典,奉仕活動についての労災補償,等),

さらに内側の第三の円としての「職業活動に共 通の権利」(安全衛生,等),そして最も内側の 第四の円としての「賃金の支払われる従属労働 に固有の権利」という再構成であり,「人々の 職業状態」はこれら全てを包摂するのである。

 以上のような枠組みのもとで「人々の職業状 態」のなかに個人の労働の自由を統合し,あるタ イプの労働から別のタイプの労働への移行を容 易にするためには,「社会的引出し権」(droits de tirage sociaux)という新たな権利の保障が必要で ある。それは要するに,その実現が資格保持者 の自由な決定に属する,例えば「時間貯蓄口座」

や「訓練小切手」のような持ち運びできる装置 であり,必要な時に引き出して使用することが できる権利である。具体的には,賃労働の他に 家庭内労働,教育訓練労働,奉仕活動,独立自 営労働,公共的有用労働,等の労働形態間の移 行を勤労者に可能にする権利であり装置であり,

国家,社会保障,労使同数代表相互扶助機関,企業,

勤労者自身によって共同資金調達される準備金 により財政的に支えられる「労働一般に準拠し た新たなタイプの社会権」である。

 シュピオ報告書はこうして,新たな概念「人々 の職業状態」とその実現手段としての新たな社 会権「社会的引出し権」の提起によって,勤労

─────────────────────────────────

17) A. Supiot(dir.),

Au-delà de l’ emploi : Transformations du travail et devenir du droit du travail en Europe,

Flammarion, 1999. なお,シュピオ報告書については,水町勇一郎「学会展望」(『国家学会雑誌』第114巻1・2号,2001年),

同『労働社会の変容と再生』有斐閣,2001年,参照。

(11)

者が雇用のリスクに対応し職業的変遷過程を主 体的に統制し様々な移行を自ら組織するのを可 能にする職業的地位の継続性とセキュリティ付 与の構想を明らかにしたのである18)

 シュピオ報告書における「人々の職業状態」

と「社会的引出し権」の関連については,図4 のように示すことができよう。

⑵ガズィエの移行労働市場論

 以上のような勤労者の職業的変遷過程へのセ キュリティ付与の必要性という同じ課題をフラ ンスにおいて労働市場の観点から初めて考察

したのは,B.ガズィエである19)。ガズィエは,

その考察をフランスの雇用戦略の構築の枠組み として活用するために,共同研究者であるド イツの G.シュミットによって提唱された概念

「 移 行 労 働 市 場 」(marchés transitionnels du travail)を共有し提示している20)

 ガズィエによれば,現代において不可避に なった移行労働市場とは端的に言えば,「労働 と就業の一時的地位の総体の体系的調整および 交渉による調整」である。ここで労働市場にお ける移行の対象となる労働と就業の一時的地位 とは,フルタイムの正規雇用以外の短時間雇用,

失業時の求職活動,職業訓練や育児休暇そして 社会的有用性が認められる家事や奉仕活動等の 無償労働とその期間を意味する。移行労働市場 の目的は,これらの多様な移行の総体の調整と 利害関係者間の交渉による調整を通じて「危 機的移行」を回避し,「勤労者のセキュリティ,

自律性,キャリアに好都合な移行」を発展させ ることである。

 これらの移行労働市場は,シュミットの提唱 に依拠して教育訓練,有償雇用労働,無償社会 的有用労働,失業,退職という五つの領域とそ して雇用を中心としてそれらの領域間の相互的 な「架け橋」から構成される。そこで問題は,

特に低技能資格者の解雇に発する長期失業と社 会的排除・貧困化のみならず,出産育児・介護 や配偶者の配置転換と離婚等のカップル家族生 活とキャリア継続との両立困難にも起因する

「危機的移行」(transitions critiques)を雇用の

─────────────────────────────────

18) この点について,水町氏は次のように述べている。「シュピオは,『従属の代償としての保護』を基調としたこ れまでの労働法のあり方を大きく改編し,拡大された『労働』契約のなかに新たに『自由と責任』を組み込むこ とによって,社会の変化に適応しながら労働者の『人間性』『主体性』の回復を図ることを志向している」(前掲 書,231ページ)。なお,シュピオ報告書に対して,D. メダは一方で評価しつつ,他方で次のように批判している。

「シュピオの諸提案は,一度も働き始めたことがないか,または仕事の欠如の場合に威厳のある生活を送るのを 可能にする具体的な諸権利を開くためには十分に働いてこなかった人々の問題を解決しないという限界を持って いる」(D. Méda,

Le travail,

Que sais-je ? PUF, 2010, 4e edition, p.81)。

19) B. Gazier,

Tous Sublimes : Vers un nouveau plein-emploi, F

lammarion, 2003. なお,B. ガズィエのこの著作を「職業 的社会保障」の構想の起源の一つに挙げているのは,F. ゴーデュである。前掲注⒀参照。

20) G. シュミットの所説と意義については,すでに若森章孝氏によって論じられている。同「フレキシキュリティ とデンマーク・モデル」(安孫子誠男・水島治郎編著『労働:公共性と労働・福祉ネクサス』勁草書房,2010年,

所収)参照。

図4. シュピオ報告書における「人々の職業状態」

と「社会的引出し権」

(出所) A.Supiot(dir.), Au-delà de l’ emploi, Flammarion, 1999 にもとづいて作成。

社会的引出し 権:時間貯蓄 口座,訓練小 切手,等

賃労働

失業・非 就業,教 育訓練

独立自営 労働

奉仕活動,

家事育児 労働,等

(12)

セキュリティ,私生活とキャリア継続との両立

(ワークライフバランス)を可能にする「安全 な移行」(bonne transition)へ転換する調整ま たは介入の原則と制度である。

 移行労働市場におけるこれらの調整または介 入は,ガズィエによれば,自律性,連帯,効率,

地方分権化という四つの原則に立脚する。

 第一の自律性の原則は,「移行を割に合うも のにする」ことであり,勤労者に最低限所得と 再教育・継続的訓練等を保障することによって

「人生の選択に対する統制力」「いくつかの経路 と地位の間で選択する能力」を与えることであ る。第二の連帯の原則は,勤労者の総体を「社 会的リスクと労働市場に結びつくリスクの管理 に参加させる」ことであり,失業補償等の社会 保護制度の改革に労働組合等への動員を通じて 参加させることである。第三の効率の原則は,

「専門化,共同資金調達,定期的交渉」によっ て移行に付随する措置の効率を追求することで ある。それは例えば,有償雇用労働の領域にお ける専門化した調整ないし介入として,毎年の 政労使交渉による補助金投入に依拠した低賃金 の「見習い実習契約」の実現を正規雇用への移 行の促進の機会にすることである。第四の地方 分権化の原則は,「地方分権と目標ごとのマネ ジメントの原則を一つの企業,職住近接地域ま たは地域圏という現地のレベルにおけるひとま とまりの移行の管理」に適用することである。

それは例えば,市町村または地域圏の雇用関係 機関が資金調達して非営利社会団体による中高 年労働者のパートタイム雇用を実現することで ある。

 ガズィエによれば,移行労働市場における以 上の調整ないし介入の原則そしてデンマークに おける雇用政策の展開,とりわけ求職者(失業 者)の個別的対応の訓練・就職斡旋プログラム と賃労働者の育児休暇・訓練休暇取得との連結 による「職のローテーション」の施策を踏まえ るならば,今後フランスにおいて再構成される べき雇用政策は,次の三点に要約される。

 第一は,失業者への十分な補償であり,別の 地位を自律的に選択しうる条件を与えることで ある。第二は,失業を固定的な「状態」ではな く「移行」にするために,寛大な失業補償とい う「消極的」雇用政策の支出を「積極的」支出 とより適切に結合させることである。すなわ ち,失業補償と職業訓練・就職斡旋という二つ の異なった予算と行政機関を「同一の金庫」に 結合し,雇用復帰促進のための求職活動の点検 と訓練への動員を実施することによって,「後 者の制度が失業者をより多く就業させるのに 成功するならば,前者の制度がその資金的負担 をそれによって軽減するという資金調達のメカ ニズムを創設する」ことである。そして第三点 が決定的であり,それは「移行を享受する諸権 利」(droits à transitions)の広大なレベルでの 推進であり,いわば失業保険の「雇用保険」

(assurance-emploi)への転換と拡張である。そ れは「個人的都合のための育児休暇や訓練休暇 を享受する権利」あるいは「移行の資金調達に 必要な金額の一部を事前に貯蓄しうる装置」や

「休暇取得の後に同一企業または同一部署に再 雇用される保障」等から構成されるが,これら の権利は,全国的レベルで保障されるものの,

より具体的には現地のレベルで集団的に交渉さ 図5.ガズィエによる雇用戦略の構想

(出所) B.Gazier,

Tous Sublimes,

Flammarion, 2003 にも とづいて作成。

・移行を享受する諸権利:

「雇用保険」としての 育児休暇・訓練休暇享 受権,移行資金事前貯 蓄装置,休暇取得後再 雇用保障

・積極的雇用政策:就職 斡旋・職業訓練への動 員,求職活動の点検

・十分な失業補償(積極 的支出の成果による資 金的負担の軽減化)

(13)

れ適用される「引き換え券」(bons)の形態を とるであろう。

 こうしてガズィエの構想は移行労働市場の観 点からシュピオ報告書の「社会的引出し権」に 合流するのであり,これらの移行を享受する権 利の総体は,勤労者の「人生の選択に対する統 制力」を与え「職業行程にセキュリティを付与 する」ことを可能にするのである。ガズィエの 移行労働市場論を次に見る「職業的社会保障」

の構想の一起源とする所以である。ガズィエに よる移行労働市場の観点からの雇用戦略の構想 は,図5のように示すことができよう。

⑶「職業的社会保障」の構想

 以上のようないくつかの考察を着想の起源と して,フランスにおいて「職業的社会保障」

という構想を初めて提起したのは,労働組合 CGT(労働総同盟)である21)。CGTは2003年5 月に開催された第47回大会においてその構想を 公にしたが,それは,当時の CGTの定期刊行 物のなかで次のように記されている22)。  「われわれは≪職業的社会保障≫という意味 の重い定式化を通じて,いかなる賃労働者もそ の事情がいかなるものであれ,いかなる雇主に も対置可能であり,一企業から別の企業へ移転 可能である職業間のレベルで保障されるひとま とまりの権利を享受するという具体的で統合的 な権利要求の目標を目指している。…継続的訓 練と技能資格の承認を享受する真の権利の創設 は,≪職業的社会保障≫の一要素である。誰も が,職務遂行能力の獲得,補強,修正の諸局面 を結びつける変遷過程に応じて,その進路を見 出す可能性が与えられなければならない。それ は,キャリアの中断そして継続的な職業的地位 の正常な条件としての就業の新しい再進路指導 とを結合する賃労働の新しい地位のなかにでき

るだけ早く具体化されなければならないであろ う」。

 以上のような多少とも不明確さを含んだ構想 の提起は,2006年6月に開催された第48回大会 において,「賃労働の新しい地位」を獲得する ための「職業的社会保障」の構想の実現という 相互の関連としてより明確にされている23)。  「賃労働の新しい地位」とは端的に言えば,「経 済的産業的戦略によって押し付けられた構造改 革,国外移転または企業閉鎖が賃労働者に強い る二つの職の間の移行で苦しむ必要がない」事 態を実現するために「労働契約と報酬は,賃労 働者が少なくとも以前と同等のレベルの新たな 職への実際の再就職斡旋を獲得するまで維持さ れる」ということに他ならない。

 「職業的社会保障」は,そのような「賃労働 の新しい地位」を獲得するために,「その企業 と敷地,職業分野または職住近接地域,公共部 門または民間部門がいかなるものであれ,いか なる男女にも保障される同等の個別的諸権利」

である。それは,「賃労働者の自律性と解放を 保障し持続させる」諸権利すなわち「賃労働者 が自分の選択の形成に乗り出すのを可能にする 全ての金銭的物質的諸条件,時間の自由使用可 能性を享受するのを可能にする」諸権利であり,

具体的にはそうした「キャリアの展開」を保障 する「一企業から別の企業へと移転可能な訓練 を享受する権利」をはじめとする「安定的雇用,

生涯にわたる教育と訓練,技能資格と賃金との 承認と増進,私生活と職業生活の両立(ワーク ライフバランス),健康,連帯的年金,等を享 受する諸権利」である。そしてそのような諸権 利の保障のための資金調達については,「産業 分野または職住近接地域の企業が,相互扶助化 された基金の設立を通じて,産業分野間で組織 される連帯に貢献しなければならない」こと,

─────────────────────────────────

21) S. Grimault, Sécurisation des parcours professionnels et flexicurité : analyse comparative des positions syndicales, in

Travail et Emploi,

No. 113, janvier-mars 2008.

22) Compt rendu 47e congrès, in

Le Peuple,

supplément au No. 1577, le 28 mai 2003, p. 25 et p. 42.

23) Document d' orientation, in

Le Peuple,

supplement au No. 1632, le 28 juin 2006, p. 187-188.

(14)

「雇用を利する形での公共的基金の新しい方向 付けが,この装置を補完する」ことが提起され ている。

 こうして「職業的社会保障」は CGTによって,

労働契約の継続性を原則とし,職業訓練や社会 保護を享受する諸権利等の新たな社会的諸権利 の承認と移転可能性を通じて,全ての勤労者に ついての職業的生涯にわたる保護といわば「雇 用のリスク」から独立して自己のキャリアを自 律的に組織することができる諸手段とを提供す る制度それゆえ現代の雇用に対する革新的対案 として構想されたのである。この構想に,先の シュピオ報告書,ボワソナ報告書,ガズィエの 移行労働市場論が活用されていることは明白で ある。

 なお,CGTによる以上の構想は,フランス の他の代表的労働組合によってそのまま共有さ れているわけではない。もう一つの有力な労働 組合である CFDT(フランス民主労働同盟)は,

「全ての賃労働者について職業行程を促進しセ キュリティを付与する新たな集団的諸保障」を 権利要求の中軸におき,訓練を受ける権利や賃 金貯蓄を受ける権利等の「諸権利の移転可能 性」や求職者の個別化された付き添い支援の改 善,資金調達の相互扶助化,等の制度化を要求 する点については,立場を共有するものの,「新 たな諸権利はもはや労働契約ではなく個人に付 与されなければならない」のであり,諸権利の 移転可能性の制度化は「地位の一方的恵与にで はなく団体交渉と労使妥協による段階的構築に 属する」と考えており,CGTの労働契約の継 続性の原則に反対しているからである24)。  とはいえ,「職業的社会保障」の構想におけ る核心的要求である新たな社会的諸権利の承認 と移転可能性の制度化を意図する「職業行程の セキュリティ付与」が代表的諸労働組合によっ て共有されていることは,以後のフランスの雇

用戦略をめぐる政労使間の交渉と社会的妥協の 展開にとって決定的な要点である。

⑷「職業的社会保障」の構想の展開

 以上のように CGTによって2000年代前半に 初めて提起された「職業的社会保障」はその 後,単なる構想からより具体的な制度的裏付け をもった雇用戦略の構想として展開されること になる。

 その第一人者は,この構想と概念に密着して きた労働法の研究者 F.ゴーデュである。ゴー デュは実は,いち早くボワソナ報告書の公刊直 前に「職業的社会保障」の構想の起源に値し うる新たな概念「就業者の地位」(statut de l’

actif)を提起していたのである25)。それは,勤 労者の全体が「フルタイムでの雇用」という条 件で雇われることはもはや困難であり,失業の みならず解雇時の再就職斡旋や「操業短縮によ る休業」(chômage partiel),訓練休暇,育児休暇,

等による非就業期間それゆえ労働契約中断期間 を無視しえない大きさをもって経験せざるをえ ない現代において,「雇用の地位」と伝統的な 労働契約に取って代わるべきものである。その 概念は,「もはやただ一つの企業のなかではほ とんど展開されないキャリアのなかに,様々な 労働契約そして職業訓練,長期休暇,育児休暇,

等の様々な活動に充てられる諸局面を統合する であろう地位」であり,「職業的生涯の全体に わたって,生産的労働期間,教育訓練期間,奉 仕活動期間,家庭内労働期間,求職期間,等を 有機的に構成するであろう地位」である。こう して,ゴーデュの新たな概念提起は,ボワソナ 報告書の「就業契約」よりもむしろ後のシュピ オ報告書の「人々の職業状態」に近接するもの であった。

ゴーデュは CGTによる「職業的社会保障」の構 想の提起を受けて,以上の観点からそれをフラ

─────────────────────────────────

24) S. Grimault, op. cit.

25) F. Gaudu, Du statut de l' emploi au statut de l' actif, in Droit social, juin 1995.

(15)

ンスの法制度の裏付けをもった雇用の「戦略的 イニシアチブ」として把握し,その「全体的制度」

の輪郭を五点にわたって展開している26)。  第一の要素は,「職業的自由の回復」である。

それは,賃労働者が「自己のキャリアに対する 統制力を持つ」ことの表現である。それに関す る既存の制度は,若者について有期契約の職お よび無期契約の職に移行することの可能化(「若 者雇用」に関する1997年10月16日法),パートタ イム労働者について別の職に就くことの可能化

(労働法典 L.212-4-3条)等として存在している。

 第二の要素は,「移行の資金調達」である。

それは,シュピオ報告書の「社会的引出し権」

が表現するものであり,様々な就業と活動に乗 り出す勤労者が必要とする時にそれを通じて報 酬を得ることができる仕組みである。それに関 する既存の制度は,「時間貯蓄口座」(2003年1 月17日法)や非営利活動期間の所得の自治体に よる支払いを享受する権利を支える「個別的訓 練休暇」の資金調達の仕組み(労働法典 L.931-8-2 条)等を挙げることができる。

 第三の要素は,二つの活動または就業の「連 携の法律的技法」である。それは,移行を組織 するために二つの活動または就業を連結する仕 組みであり,労働契約,複数の労働契約を包含 する「基本契約」,「瓦をふくこと」(tuilage)

という三つの仕組みが挙げられている。労働契 約は,安定的契約の締結者の場合,訓練休暇,

育児休暇,見習い実習,等の新たな活動への移 行時に中断されるが,その活動期間終了後に復 職するのを可能にするセーフティネットの機能 を果たしうる。「基本契約」は複数の活動また は就業を連結するのを可能にするのであり,「雇 主連合」による勤労者の共同雇用によって実現 される「同時並行的パートタイム就業」(2005 年2月23日法),一部の企業が経済的解雇対象 者に提案しなければならない「職業移行契約

(CTP)」(2006年12月30日法)によって実現さ

れる継続的であるが限定的な期間の訓練・求職 活動の実現として示される。「瓦をふくこと」

は,ある活動が以前の活動のうえに積み重ねら れることにより勤労者に保護をもたらす仕組み であり,技術的援助や貸付けと同時に起業者自 己負担の社会保護の享受も可能にする「企業プ ロジェクト支援契約」(2003年8月1日法),企 業の経済的解雇時の再就職斡旋義務の行使とし ての従業員の隣接企業への貸出しによる既存特 典の継続,雇われている企業でのその取得が別 の企業での就業を可能にする「移動休暇」(2006 年12月30日法)として示される。

 第四の要素は,勤労者における「活動変更の 場合の社会保護の有効認定」である。それは,

シュピオ報告書が「人々の職業状態」に与えて いる意味の一つであり,勤労者の様々な活動が

「職業状態」に属するものとして同等に認めら れる以上,社会保護を享受する権利もまた同等 に有効と認定されなければならないということ を意味する。その方向は,例えば様々な年金制 度のもとで年金享受権の清算のための「年金の 単一請求」の制度化(1997年10月27日付政令)

等として示されてきたが,具体化は今後の課題 である。

 第五の要素は,「職業的アイデンティティ」

である。それもまた,シュピオ報告書が「人々 の職業状態」に込めた意味の一つであり,そこ で問題になるのは勤労者の職業的アイデンティ ティが労働契約から独立して確立されうる方法 である。このことに類似している制度である「経 験的成果認定(VAE)」(2002年1月17日法)は,

免状の付与に導いているがゆえに不適切であり,

勤労者の様々なキャリアの内容と獲得された適 性を職種と管轄地域において資格証明する別の 方法を考案しなければならないとされる。

 こうして,ゴーデュによる雇用の「戦略的イ ニシアチブ」としての「職業的社会保障」の構 想の展開は,図表1のように示すことができる

─────────────────────────────────

26) F. Gaudu, La Sécurité sociale professionnelle : un seul lit pour deux rêve ? in Droit social, avril 2007.

参照

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