九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ウェルドラインを有するプラスチック射出成形品の 組織構造と力学的挙動に関する研究
泊, 清隆
https://doi.org/10.11501/3070080
出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第5章 織維強化熱可型性プラスチヅクのウェルド強度 に及ぼす表面処理剤の効果
第1節 緒 言
前章にお いて 、 繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)射出成形品の ウェルド強度に及ぼす繊維配向および成形圧力条件の影響について検討した。
その中で 、 ウェルドラインの合流機構の違いによらず 、 強化繊維はファウン テインフロー現象によりウェルドラインに平行配向して、 合流面を貫通しない ことが分かった。 このため、 繊維は補強効果を発揮せず、 逆に、 配向繊維と樹 脂の界面はく離がウェルドライン破壊の起点となった。 この様な場合でも、 対 向流ウェルドラインに関しては樹脂圧力を高くすることにより樹脂と繊維の密 着度を向上させてウェルド強度を改善できることが分かった。 FRTPのウエ ルド強度をさらに向上させるためには、 接着性の無いガラス繊維と樹脂の界面
接合強度を改善しなければならない。
繊維/樹脂界面の 改善方法として繊維の表面処理が挙げられる。 中でも、 繊 維強化プラスチック(F R P)の分野では、 表面処理剤による化学的処理が一
般的である 。 ガラス繊維強化プラスチックに用いられる代表的な処理剤にシ ランカップリング剤がある(図5. 1 )。 シランカップリング剤の強化機構につ いてはいくつかのモデルが考えられている1)ー7)。 最も有力な理論は化学結合 理論である。 シランカップリング剤はガラス表面で単分子層を形成し、 図5. 2 に示すようなシロキサン結合により連結 した三次元構造を形成すると考えられ ている。 また、 シランカップリング剤の 有機性反応基が樹脂と反応することに より強固な界面を形成する。 これ以外にも、 表面濡れ理論、 歪み層理論、 1 P
N理論などがあるが、 強化機構については充分に解明されているとは言えない。
表面処理剤に関する研究の多くは、 反応基を有する熱硬化性プラスチックに 関するものであり、 反応基を持たない熱可塑性プラスチックに関する系統的な
130 -
(ÇH3b・n y �ヘ Si(OR)n
図5. 1 シラ ンカ ッ プリング剤の構造式 ( n は2まt:...は3 )
R . OH O/ 、si/ '0
ガラ ス表面
iiiii::::;;ijiiiiii:::i:::;; ...以Si�O�Si�
I I
図5.2 シラ ンカ ッ プリング剤の接着反応モデル
- 131 -
研究はほとんど無く、 表面処理の最適化は各メーカーの試行錯誤の域を出ない のが現状である8)・ 9)。 熱可塑性プラスチックにおける表面処理剤の機構は非
常に重要であり、 これを解明することによってFRTPのウェルド強度に及ぼ す界面接合強度の影響が明らかになるものと期待される。
また、 繊維強化プラスチックでは強化材の配向にともなう効果が存在するた めに、 特に、 FRTP射出成形品のように短繊維が三次元配向している材料で は、 純粋に界面の効果のみを検討することは困難であると言われている。 前述 のようにウェルドライン領域の繊維は全て合流面に平行に配向し、 試料は必ず そこで破断することから、 ウエルド試料は擬似一方向材とみなすことができる。
したがって、 ウェルド強度を因子とした評価方法はFRTP界面効果の検討に 最適であると考えられる。
そこで本章では、 第4章で用いた短繊維強化ポリカーボネート射出成形品の ウェルド強度に及ぼす表面処理剤の効果について検討した。 未処理のガラス繊 維と数種類のシランカップリング剤による表面処理を施したガラス繊維を混合 した複合材料を用いてダンペル試験片のノンウェルド試料およびウェルド試料 を成形した。 表面処理の有無や有機性反応基の種類、 処理剤濃度などの影響を 考察した。 また、 FRTP成形品は優れた特性を活かして過酷な条件下で使用 されることが多いため、 常温以外にも低温および高温下での実験を行い、 雰囲 気温度の影響についても考察した。
第2節 実験方法
2. 1 成形材料および表面処理剤
成形材料として、 ガラス繊維強化ボリカーボネート(P C)を用いた。 これ は、 第2章、 第3章で用いたP C (ユーピロンS2000 、 三菱ガス化学側製)に
Eガラス短繊維を2Owt %の含有率で予備混合したものである。
ガラス繊維の表面処理剤として、 表5. 1に示すように、 アクリルシランカッ プリング剤(略号をMPMSとする)、 エポキシシランカヅプリング剤(同GPES)、
- 132 -
ー一一一一一一一一一
a ・l
アミノシランカップリング剤(同APMS)の3種類のシランカップリング剤(以 下、 シラン剤と呼ぶことにする)と1種類のウレタン結束期u (以下、 ウレタン 剤と呼ぶことにする)を用いた。 さらに、 各シラン剤に ウレタン剤を混合した 処理剤3種類(各略号に*を付す)を用いた。 また、 APMS、 APMS本に関しては、
表5.2 に示すようにAPMSおよびウレタン剤濃度の異なる処理剤も用いた。
表5.1 ガラス繊維の表面処理剤
略号 処理剤 グレード(製造元)
MPMS γーメタクリロキシ70ロヒ。jレトリメトキシシうン A-174 (日本ユニカー側) GPES γーゲリシドキシ7・ロヒo )レトリエトキシシうン KBM40 3 (信越化学側)
APMS γーアミノ7・ロピjレトリメトキシシうン A-I100 (日本ユニカー側)
MPMS本 MPMS + ウレタン結束剤
GPESキ GPES + ウレタン結束剤
APMS本 APMS + ウレタン結束剤
表5.2 ガラス繊維表面処理剤の処理濃度
処理濃度(基準を1.0とする) APMS 0.5, 1.0, 2.0, 3.0 APMS卒中のUB 1. 0, 1.5, 2.0
注)上記以外の処理剤濃度はすべて1.0である UBはウレタン結束剤
2. 2 表面処理および混練
溶融紡糸したEガラス繊維モノフィラメントを一定濃度の処理剤水溶液に浸 潰して表面処理を行った。 処理した繊維を約3mmの長さに切断した。 繊維と樹 脂の混線およびぺレットイじに は2軸押出機(スクリュ径50mm、 ナカタニ機械側
- 133 -
歩'
製)を用いた。 押出条件は、 シリンダ温度 2800C、 スクリュ回転数100rpm、 吐 出量 40kg/hrとした。
2. 3 射出成形
射出成形方法は第2章 2.2と同様である。 射出成形条件は、 シリンダ温度
280-- 32 OOC、 金型温度目。C、 射出速度50mm/sec、 保圧60MPa 、 保圧時間10 s e c、
冷却時間15 s e cとした。
2.4 分子量、 繊維長およびパーフロー長の測定
混練、 ぺレ ット化、 射出工程において生じる材料変化 を検討するために、 P Cの分子量、 ガラス繊維長、 複合材料のパーフロー長を測定し、 表面処理の影 響を調べた。
重量平均分子量測定に はG P C (ウォーターズ側製)を用いた。 溶媒として THFを、 標準試料 としてポリスチレンを用いた。 カラム温度は 250C とした。
繊維長 は、 塩化メチレンを用いてペレ ットを溶解した後に残存した繊維に対 して画像処理装置(東レ側製MV500) を用いて測定した。 約1000本の 繊維長を
計測し、 平均 繊維長 を求めた。
パーフロー試験は、 樹脂 温度3000C、 金型温度 1000C、 射出圧力120MPaの 条件 で測定した(流路断面は15mmX 2mm)。
成形品物性として引張強度を測定した。 試験方法は第2章2. 3と同様である。
ただし、 試験温度は、 恒温槽を用いて- 40、 23、 1000Cの3水準に設定した。
第3節 実験結果ならびに考察
3. 1 分子量、 繊維長およびパーフロー長
FRTPでは混練や射出工程中に 繊維破断が生じ、 繊維長が短くなること が 知られている。 また、 熱履歴やせん断力によって樹脂の分子量低下が生じる。
このような 成形材料の変化に対して表面処理 が及ぼす影響について検討した。
- 134 -
, ...
表5.3に成形材料の平均分子量、 ペレ ツト中のガラス繊維の平均繊維長および 射出成形におけるパーフロー長を示す。
表5. 3 材料変化に及ぼす表面処理の影響
未処理 MPMS GPES APMS
PCの重量平均分子量 一 2. 23 2. 34 2. 25 ( x 104)
ガラス繊維の平均繊維長 103 2 10 1 90 1 83 (μm) * 2
複合材料のパーフロー長 一 1 11 11 2 1 05 ( mm)
UB MPMS本 GPES* APMS本
PCの重量平均分子量 一 2. 18 2. 24 2. 24 ( x 1 04) 取1
ガラス繊維の平均繊維長 267 3 1 2 29 1 306 (μm ) * 2
複合材料のパーフロー長 一 1 25 11 5 11 2 ( mm)
UBはウレタン結束剤
キ1 :成形品で測定、 ホ2:ペレ ットで測定
PCの平均分子量は 2.18--2.34x 104 であった。 GPESの場合が若干高分子量 である が顕著な差は認められなかった。 表面処理剤の違いによらず混練および
射出成形を通じて樹脂が受ける熱履歴は同程度であると考えられる。
平均繊維長は、 未処理の場合で 103μm (混練前は約3mm)であったのに対 して、 表面処理した場合は 183-- 312μmであった。 どの処理剤でもほぼ倍以 上の繊維長となっており、 表面処理は繊維長の維持に大きな効果を持つことが 分かった。 これは表面処理によって単繊維が集束され、 あるいは、 表面の濡れ
性が改善されることによって、 押出、 混線での繊維破断が低減されるためであ
- 135 -
る 。 各処理剤の効果を比較すると 、 M PMSの場合が最も繊維長が長く 、 同じシ ラン剤でもウレタン剤と併用した場合の方が繊維長が長か った 。 これらのぺ レ ツトを用いた射出成形品の平均繊維長はぺレ ツトのそれとほとんど変わらな かった。 したがって、 繊維破断は主としてペレット製造、 すなわち押出機によ る混練過程で生じたと考えられる。
複合材料の流動性を検討するためにパーフロー長を調べた 。 APMSの場合に パーフロー長が最も短く 105mmとなり、 MPMSキの場合に最も長く 125mmであっ た。 いずれの材料も分子量はほとんど同じであったにも関わらず、 パーフロー 長にこのような差がみられたことから 、 表面処理によりガラス繊維表面の濡れ 性が改善された結果 、 型内の樹脂流動性が向上したと思われる。
さらに 、 表面処理により押出混練工程での繊維供給が安定し、 ペレット中の 繊維分散が向上する現象が観察されたが、 詳細は省略する。
3. 2 物性に 関連した因子 3. 2. 1 試験片の破壊挙動
引張試験においては、 どの処理剤の場合も、 試験片内部に白化現象が観察さ れた 。 これは主に ガラス繊維と樹脂界面のはく離によるものであった 。 ノン ウェルド試料では白化現象は試験片全体で均一に発生したが、 ウェルド試料で はウェルドライン領域に集中した。 したがって、 界面のはく離が大きくウェル
ド試料の破壊に影響していると考えられた。
3. 2. 2 シランカップリング剤の影響
成形品強度に及ぼすシランカップリング剤(シラン剤)の効果を検討した。
未処理の場合を含む各シラン剤処理成形品の引張強度を図5 . 3に示す。
ノンウェルド強度は未処理の場合に On==54M P a であったのに対して 、 シ ラン処理を施した場合はいずれの処理剤でも約70MPaとなり、 約30%強度が向 上した。 短繊維強化熱可塑性プラスチックのノンウェルド強度は繊維長の影響 を大きく受け、 臨界繊維長以上では繊維長が長いほどノンウェルド強度が高く
- 136 -
1∞
80
60
40
(団山仏主)制組昭一m
ー孟J'JI'-.-
APMS GPES
MPMS
表面処理部j 未処理
ング剤の効果 成形品強度に及ぼすシ ランカ ッ プリ
図5. 3
ド強度を示す ングはウ ェル
ハ ッ チ ド強度、
- 137 - ンウ ェ ノレ
(略号は表5. 1参照) 白抜きはノ
事--
なる10)。 シラン剤処理により強度が向上したのは表5.3に示したように繊維 長が比較的長く維持されたためであると思われる。 さらに繊維長データに基づ くと、 an は未処理< APMS< GPES< MPMAの順に高くなると予測された。 しかし、
シラン剤処理剤の反応基の相違によるノンウェルド強度の顕著な差は認められ なかったことから、 予測とは逆に、 未処理< MPMS< GPES< APMSの順で繊維/樹 脂界面の接合強度は高くなっていると考えられる。
一方、 ウェルド強度 σwには、 シラン剤処理の反応基の相違による顕著な強 度差がみられた。 シラン剤処理の効果は、 未処理< MPMS< GPES< APMSの順で大 きかった。 比較的ウェルド強度の低いMPMS(σw = 49.6MPa)やGPES(aw =
51.2M Pa)に比べて、 APMSでは約15%高い値を示した(aw = 56.8MPa) 。
ウェルドラインの繊維は補強効果を発揮せず、 破壊はその界面はく離により生
じていることから、 ウェルド強度は主に繊維/樹脂の界面接合強度に依存して
いると考えられる。 したがって、 繊維/樹脂界面接合強度はMPMS< GPES< APMS の順であることが分かる。 この強度順位は、 前述のノンウェルド強度で予測さ
れた界面強度の順位と一致した。
一般に、 熱硬化性プラスチック複合材料では、 その強度がシラン剤の有機性 反応基に依存して著しく変化することが知られている3 )・11)。 しかし、 PCの ような熱可塑性プラスチックでは、 シラン剤との化学反応性は非常に低いと考 えられるので、 APMSの有意性は、 末端基であるアミノ基とPCのカルポニル基 と聞の水素結合がシラン剤と樹脂の相溶化を促進し、 界面接合強度が向上する ためと考えられる。
3.2.3 成形品物性に及ぼすウレタン結束剤の影響
結束期jは本来単繊維を集束して繊維束にするために用いられるが、 分子量の オーダーから考えても、 シランカップリング剤の効果に大きく影響を及ぼすと 考えられる。 そこで、 シラン剤とウレタン剤を併用した場合の成形品強度に及 ぼす表面処理の効果を検討した。
図5.4に引張試験の結果を示す。 図5.3と比較すると、 シラン剤を用いずに
- 138 -
i∞
,._'
80
(団山ιZ)
60
制細部一m
40
APMS事 GPES事
MPMS事
表面処理劃j UB
ェルド強度を示す ン収束期jの効果
ハ ッ チ ングはウ
- 139 - レタ ド強度、
成形品強度に及ぼすウ 白抜きノ
(略号は表5. 1参照) ンウ ェ Jレ 図5. 4
ウレタン剤のみで処理した場合でもσn は著しく改善され、 シラン剤処理の場 合とほぼ同じ強度(約70MPa)にまで達した。 これは、 平均繊維長がシラン剤 処理の場合と同程度に維持されたためである。 しかし、 ウレタン剤はほとんど 樹脂と接着しないために繊維長が影響しないσw に関しては未処理の場合に対
してほとんど強度は改善されなかった。
ウレタン剤とシラン剤を併用した場合、 シラン剤単独処理による場合よりも ほとんどの場合でノンウェルド強度が向上した。 これもウレタン剤との併用に より平均繊維長が長くなったことが原因のひとつと思われる。 シラン剤の種類 による効果をみると、 OnとOwはどちらもウレタン剤<MPMS.くGPES・<APMS.
の順で高かった。 これは、 ウレタン剤を用いない場合の順位と同じである。
ポリウレタンではウレタン結合におけるNH基とCO基が水素結合しているこ とが良く知られているI 2)。 同様にウレタン剤とPCの聞にもウレタン剤のウ レタン結合のNH基とPCのCO基の水素結合の存在が考えられ、 シラン剤と PCの聞の結合力が高められたと考えられる。 つまり、 ウレタン剤はシラン剤 の効果を図書することなく 、 逆に界面における相溶性を助ける働きによりシ ラン剤の効果を促進したと思われる。
3.2.4 処理剤濃度の影響
前項までの検討から、 繊維強化ポリカーボネートの界面強度を高める表面処 理剤はAPMSであることを明かにした。 次に、 APMSの処理濃度が強度に及ぼす影 響について検討した。
図5.5 はノンウェルド強度に及ぼす影響を示す。 成形は2800Cと3000Cの温度 で行った。 未処理の強度が70MPaであったのに対して濃度O.5の処理では90MPa と大幅に強度が向上した。 濃度O.5以上での強度上昇は緩やかになり、 ほぼ一
定となった(σn = 93MPa )。 つまり、 成形品強度はAPMS濃度に比例せず、 強度 に影響を及ぼす濃度には臨界値が存在すると考えられる。 この理由として、 第 1に、 実際にガラス繊維と化学結合している処理剤すなわち固着分子の量が濃 度に比例して増加しないこと、 第2に、 繊維と化学結合していない処理剤、 い
- 140 -
0 .一一
一一300・c
120
100
(伺ιE)
刷m綱相L
ム「 H b 入
\
��
。
2 3 60
0
APMS浪度 (ー)
ノ ン ウ ェルド強度に及ぼすAPMS濃度の影響 3000C
.: 2800C
- 141 - 成形温度 0:
図5.5
わゆる付着分子の影響が考えられる。
図5.6は、 APMSとウレタン剤を併用した場合のウレタン剤濃度の効果を示す。
APMS単独使用の場合よりも若干強度は高かった。 低濃度条件におけるデータが 無いため明確な結論は下せないが、 本実験範囲よりも高濃度条件で処理を行っ ても顕著な物性向上は期待されないと考えられる。
3.2.5 成形温度の効果
図5.7に、 成形温度2800Cにおける成形品強度(0280 )を基準とした無次 元強度と成形温度との関係を示した。
ノンウェルド試料では、 成形温度が最も大きく影響したのはGPESの場合であ った。 成形温度を2800Cから3200Cに高めることにより約7%強度が向上した。
その他のシラン剤の場合は3 %程度の強度向上であった。 ウエルド試料では、
MPMSが約7%と最も強度向上率が高くなり、 以下、 APMS 、 GPESの順であった。
以上より、 成形温度が高いほどノンウェルド強度もウェルド強度も増加する ことを見出した。
これは成形温度が樹脂の相溶性に影響を及ぼすためと考えられる。 演回らは、
シラン剤による界面構造が網目状の場合よりも直鎖状となる場合の方が界面へ の樹脂の浸透性が向上すると報告している13)。 本研究の場合も同様の考え方 が適用できると思われる。 ここでは、 用いたシラン剤はすべて3アルコキシ基 型なので、 界面は複雑な網目構造を形成していると考えられる。 成形温度が高 いほど溶融したPCの運動エネルギーが増加するので、 シラン剤界面への樹脂 の浸透性が向上し、 ぞれによって分子鎖の絡み合いが増加して相溶性が向上し たと推察される。
成形品の設計上は材料物性が安定していることが望ましい。 どのような成形 条件でも表面処理の効果が変化しない方が品質が安定すると思われる。 ここで、
成形温度の影響だけを考えると、 GPESは成形温度によるノンウェルド強度増加 率が最も高い処理剤であったにも関わらず、 ウエルド強度は最も低い増加率 (ほとんど変化しない)となった 。 M P M S もウエルド試料では最も増加率が高
142 -
e
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__0- 0一一
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280・c120
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�-""
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0 2
ウレタ ン収東部j 濃度 (ー)
ノ ンウ ェルド強度に及ぼすウレタン収束期l 濃度の影響 3 0 0 OC
. : 2800C
- 143 - 0:
成形温度 図5. 6
.'
(a)ノ ンウ ェ ルド
1.10ト -0
GPES.ド
APMS‘〉
MPMS。
"..町、‘
、、-"
ご1.05
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• �/
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1.00
280 300 320
成形温度 ("C )
図5. 7 (a ) シリ ンダ温度による強度変化( 280"Cの時の強度が基準〉
(ノ ンウ ェ ルド試料)
144 -
量'
(b)ウ ェ ルド
1.1 0 � -0-
GPES@ト
APMS-l)-
MPMS/" ‘〉
,戸、
、、....
/ ,
•
(SI
�
1.05
\
b
280 300 320
成形温度 (.C )
図5.7 (b) シリンダ温度による強度変化( 280 ocの時の強度が基準) (ウ ェ ルド試料)
- 145 -
.Þ
かったのに対して、 ノンウェルド試料では最も効果が低かった。 ウェルド強度 とノンウェルド強度で格差変動が少なかった処理剤はAPMSであり、 品質安定性 の観点からもAPMSが最もFRPCに適したカヅプリング剤であるといえる。
3.2.6 試験温度の影響
ウェルド強度は、 繊維長の影響を受けないため、 繊維/樹脂界面接着カの有 効な評価指標のあると考えられる。 最後に、 ウェルド強度に及ぼす表面処理の
効果の試験温度による変化について検討した。
図5.8は、 試験雰囲気温度がウェルド強度に及ぼす影響を示している。 成形 温度は 2800Cの場合である。
試験温度- 400Cでは、 230Cの場合よりもウェルド強度が約40%高かった。
- 400C、 230Cの条件下では、 APMSが3種類のシランカヅプリング剤の中で最も 効果が高かった。 試験温度1 00 oCでは、 230Cの場合より22-- 30%ウェルド強度 は低下し、 また処理剤の効果に差はみられなかった。
低温条件下ではマトリヅクス樹脂のぜい化現象が生じる。 この場合はき裂伝 播が支配的な破壊となるので、 その伝播経路の相当する表面処理界面の接着力
が成形品強度に直接影響したと思われる。 一方、 高温条件下では樹脂の軟化現 象により樹脂強度が界面強度を下回るため、 どの処理の場合でも強度は低下し、
反応基の効果にほとんど差がみられなくなったものと考えられる。
第4節 結 言
ガラス繊維強化ポリカーボネート射出成形品のウェルド強度に及ぼすシラン カップリング剤などによる表面処理の効果を検討した。
用いた3種類のシラン剤は全て著しい効果を発揮し、 未処理の場合と比べて ノンウェルド強度は30%向上した。 しかし、 これは単に界面接合強度が向上し たためばかりでなく、 押出や射出成形過程で繊維長が比較的長く維持されるこ とによる。 繊維長の影響を受けないウェルド強度でもシラン剤の効果が認めら
-146 -
→()O (M P a)
ウ ェ ルド強度 v1
z-uZM
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見順跡前田内(。の)
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れた。 アミノシラン剤が最も高い効果を示し、 aw は未処理よりも約25%向上 した。 ポリカーボネートのような熱可塑性プラスチックではシラン剤と樹脂の 化学結合は考えられないので、 アミノシラン剤の強化機構はシラン剤のアミノ
基とポリカーボネートのカルボニル基との水素結合によると考えられる。
ウェルド強度による比較では、 ウレタン集束剤処理による強度は、 未処理の 場合と同程度であったことから、 ウレタン剤はポリカーボネートとの接着効果 を持たないことが分かった。 しかし、 シラン剤と併用するとシラン剤以上の効 果を発揮したことから、 ウレタン剤はシラン剤の界面接着力を促進する働きを 持つと考えられる。 ノンウェルド強度にも効果があったが、 これはシラン剤単
独処理の場合よりもさらに繊維長が長くなった結果である。
シラン剤およびウレタン剤の処理濃度に対する強度の向上率は、 低濃度範囲 からすでに鈍化しており、 実際に繊維と化学結合した処理剤の量は処理剤濃度
に比例しないことが分かった。
ノンウェルド強度では繊維長が支配的な因子であったため、 界面結合力を発 揮しないウレタン剤でも強度向上に寄与した。 しかし、 ウェルド強度では、 用 いる処理剤の最適化を行わなければ充分な特性が得られないことが分かった。
- 148 -
�Þ-
参考文献
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- 149 -
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第6章 射出成形におけるウェルドライン消去のための二、三の試み
第1節 緒 言
ウェルドラインに起因する製品の外観不良や強度低下の防止手段としては従 来いくつかの工夫が試みられてきた。 例えば、 スライドコアなどによりキャピ ティを可変式にする方法1), 2)、 ウェルドライン発生位置に樹脂溜りを設ける 方法3)、 あるいはキャピティ内を真空にする方法などである4), 5)。 しかし、
これらの方法は、 金型コストの上昇や二次加工の必要性が生じるなどの問題点 を持つ。
本研究ではこれまで 、 より有効なウェルドライン改善策を見出すために 、 ウェルドライン問題の要因、 つまり切り欠き効果、 分子配向、 繊維配向、 繊維
/樹脂界面強度など、 について論じてきた。 本章では、 それらの研究で得られ た知見に基づき、 効果的なウェルドライン改善策として、 以下の2因子に焦点 を絞って検討を行った。
( 1 ) ポリスチレンのV溝による外観不良および強度低下(切り欠き効果)
(2) F R T Pの繊維配向による強度低下
第1点に関しては、 第2章で詳しく検討した。 ウェルドラインが明確に表面 に現れやすい材料のひとつであるポリスチレンでは、 V溝は外観品質の低下を もたらすとともに、 応力集中による強度低下の原因となった。 このため、 ポリ スチレンのようなぜい性材料に関しては、 成形技術によりV溝の消去を図らね ばならない。
ウェルドライン表面のV溝を消去するために、 樹脂温度や金型温度を通常よ りも高めに設定することなどが推奨されている6)。 また、 ハロゲンランプや高 周波などを用いて成形直前にキヤピテイを外部から予熱する方法が報告されて いる7)・ 8)。 しかし、 これらの方法には、 作業の安全性や成形サイクルなどの 点でなお問題が残っており、 また、 改善効果の定量的な評価もこれまであまり
- 150 -
....
行われていない9)。
第2の要因に関しては、 すでに第4章において、 FRTP射出成形品のウェ ルド強度と成形条件との関係を検討した。 その結果、 射出圧力、 特に保圧の効 果が大きいことが分かった。 その原因はウェルドライン領域における圧縮によ る樹脂とガラス繊維 との密着度の向上によるものと考えられた。 しかし、 ウエ ルド強度を大幅に向上させるためにはファウンテインフロー効果により流動方 向に直角に配向したウェルドライン領域の繊維配向を抜本的に改善しなければ
ならない。
柿崎らは、 2点ゲートの位置に高低差を与えると流動先端が斜めに合流する ためウェルド強度が向上したと報告している10)0 SCORIM (Shear Cont
rolled Injection Molding)法は、 2つの油圧ピストン、 2つの流路を用いて キヤピティ中の樹脂を交互に加圧減圧することによりウェルド界面の繊維配向 を制御する技術である11 ) • 1 2 )。 しかし、 射出ノズル部に取り付ける特別な油 圧装置を必要とすることや複数の流路を持つ金型は金型コストを増加させるな どの問題点がある。 特別な装置類を使用することなく金型設計により問題解決 を図る簡便な方法を確立しなければならない。
そこで本章では、 まずはじめに、 セラミックヒーターを用いて金型中で合流 する樹脂を瞬間加熱することによりウェルドラインを消去する方法について検 討した。 ヒーターは2点ゲート平板キヤピティ中のウェルドライン発生位置に 直接固定した。 金型全体ではなく小型ヒーターのみを瞬時に加熱することによ り、 昇温や降温速度が向上し、 成形サイクルに及ぼす影響を非常に小さくでき る。 また、 特別な外部装置を必要としない、 ハロゲンランプなどのように作業 環境に与える危険性が少ない、 などの長所を併せ持つ。 V溝発生が問題となる 透明プラスチックのポリスチレン射出成形平板のウェルドライン消去に及ぼす 加熱電圧の効果を検討した。
次に、 繊維強化ポリカーボネートや繊維強化ポリアミド成形品に生成した対 向流ウェルドライン領域の樹脂を再流動させ、 繊維配向を大幅に変化させるこ とを試みた。 これまで用いてきた2点ゲートダンベル試験片金型にダミーキヤ
- 151 -
参'
ピティを加工した多数個取り金型を作製した。 これにより、 ウェルドライン合 流後に新たな樹脂流動を生じさせることができ、 FRTP射出成形品のウェル ドラインによる強度低下の主要因である繊維配向を効果的に改善できると期待 される。
第2節 実験方法
2. 1 セラミヅクヒーターを用いた局部加熱消去法 2. 1. 1 成形材料
成形材料として、 第2章2. 2で述べたと同じ汎用ポリスチレンを用いた。
2. 1. 2 金型およびセラミックヒーター
第4章2. 2. 2で示した金型Aと同じ長方形平板の金型(長さ20 0mm X幅 10 0mm
×厚さ3mm )を用いた(図6. 1 )。 この金型においては平板中央部で溶融樹脂 が合流してウェルドラインが発生する。 また、 別図に示したA点、 B点はウェ ルドライン幅の測定位置である。
ウェルドラインの発生位置にセラミックヒーター(京セラ側製)を取り付け た(斜線で示す部分)。 これは、 アルミナを絶縁層として持つ金属発熱体ヒー
ターである。 ヒーターの概略図を図6.2に示す。 アルミナシートに金属抵抗体 を印刷して、 その上にアルミナ絶縁保護層を塗布して高温で一体焼結したもの である。 ヒーターの全長は60mmで、 このうち発熱部の長さは27mmである。 接着 剤(アラルダイトLW561 、 長瀬チパ側製)を用いてキヤピティ面に直接加工し た溝にヒーターを接着、 固定した。 ヒーターは固定側にのみ設置し、 またヒー ターの長さに制約があったことからウェルドラインの一部のみを加熱する構成 とした。
2. 1. 3 射出成形
射出成形方法は第4章2.2. 2と同様である。 主な射出成形条件を表6. 1に示
- 152 -
�-
ゲート
4
セラミックヒーター
o 。
守ーー・
p s
T C
00←
セラミックヒーター
4
ウエルドライン幅測定位置 ゲート100
図6. 1 ウェルドライン加熱実験用金型
P S :圧力センサー、 TC :熱電対、 A、 B :ウエルドライン幅測定位置
- 153 -
�-
リード線
27
60
図6. 2 セラミ ッ クヒーター外観図
- 154 -
‘苧F
シリンダ温度( OC )
金型温度 ( oC )
表6, 1 射出成形条件( 1 )
ポリスチレン 200 30,40,50,60,70,80
220 30,40,80 40 射出圧力(MP a) 1 55, 7 131. 7, 134,0 99, 4 射出時間 ( s )
冷却時間 ( s ) 1 5 25 25 ヒーター電圧(v ) 0,10,15,20,25,30,35,40 0,20,40,60,80,1 00
す。 射出圧力は、 金型温度が最も低 い 300Cの時の最小充てん圧力を基準として 設定した。
射出成形中にヒーターに直結したスライダックを用いてヒーター電圧を調節 した。 図6, 3はヒーター電圧とヒーター温度および金型内圧の時間変化曲線を 示している。 セラミックヒーターヘ通電を開始して一定電圧を加えると(点A )、
温度が上昇しはじめる。 温度がほぼ定常に達したところで射出する(点B )。
射出された樹脂が会合して 、 ウェルドラインを形成すると同時に樹脂圧力は ピークに達する(点C)。 この時点でヒーター電圧を OVに下げる。 キヤピテ イ内のヒータ一部温度は溶融樹脂の熱により瞬間上昇するが、 ヒーター電圧が OVのため徐々に低下する。 ヒーター温度が低下しはじめた時点で射出を終了 する(点D )。
2, 1, 4 ウェルドライン幅の測定および引張試験
射出成形平板におけるウエルドラインの改善度合を評価するために、 電子顕 微鏡(S E M)を用いて 2, 2, 2項で述べた測定点A、 Bにおけるウエルドラ イン幅を計測した。
また、 ウエルド強度を評価するために、 平板試料から図6, 4に示す短冊形状 の試験片をウエルドラインに直角に切り出した(長さ200mm、 幅 10mm)。 加熱
ー155-
R出血白羽制明lhmlM
,..-
C D A B
時間
ヒーター制御の関係 内樹脂圧力と
ピテ ィ キ ャ
図6. 3
射出開始 射出終了 点B
点D
156 -:
ヒータ一入 ヒータ一切 点A
点C
�-
fヤ
'tlL
00←
oo-
図6.4 引張試験片の切り出し位置および形状
ヒーター加熱部以外のウエルドラインはフライス盤で切削、 除去した。
( W L :ウエルドライン、 CH :セラミックヒーター)
- 157 -
,
部と非加熱部から各3本の試験片を作製し、 引張試験を行った。 ヒーターは固 定側キャピティにのみ設置されているので、 可動側キャピティ面に援する部分 の試料表面にはV溝が生成する。 これが強度に及ぼす影響を除去するためにフ ライス盤を用いて約O. 5 mmの深さで半円状に試験片を切削した。 引張試験方法 は第2章2.3と同様であった。 ただし、 引張試験速度は 2mm/minとした。
2.2 多数個取り金型によるパヅクフロー現象を応用した強度改善 2. 2. 1 成形材料
成形材料として、 ガラス繊維強化ポリカーボネート(PC)とガラス繊維強 化ポリアミド(P A)を用いた。 PCは第4章2.1. 1で述べた材料のうち繊維 含有率1Owt %と2Owt %の材料である。 PAは宇部興産側製の繊維強化ナイロン
6で、 繊維含有率は2Owt %である。
2.2.2 射出成形
成形に用いた金型を図6. 5に示す。 第2章2.2で示したダンペル試験片の1 個取り金型(これをr 1個取り金型」と呼ぶことにする)の非対称位置に2つ のダミーキヤビティを設けて多数個取り金型としたものである(これを「多数 個取り金型」と呼ぶことにする)。 多数個取り金型ではウェルドラインは試験 片の中央より数!日離れた位置に生成した。 主な射出成形条件を表6.2に示す。
2.2.3 引張試験
引張試験方法は第2章2.3と同様である。
第3節 実験結果ならびに考察
3. 1 ヒーター加熱法の効果
3. 1. 1 ヒーター電圧と表面温度
局部加熱によるウェルドライン消去実験では、 セラミックヒーターに一定電
- 158 -
- 4 七 |
司(:1"
127
b
t 6.6
a
19.0
216
図6.5 多数個取り金型
( a =ダンペル試験片、 b =ダミーキャピティA、
c =ダミーキヤピティB )
- 159 -
圧を加え、 ヒーター表面温度が定常状態になった時点で樹脂を射出した。 ヒー ター表面温度は金型 との接着面に取付けた熱電対で計測した(図6.1中のTC 点)。 しかし、 この位置では金型への放熱量が多いため正確な値が得られない。
したがって、 熱電対の出力とは別にヒーター電圧とヒーター表面温度の関係を 校正しなければならない。 得られた補正線図を図6.6に示す。 これは、 各金型
L_
表6.2 射出成形条件(II )
ポリカーボネート(繊維含有率1Ow t % )
ノンウェ ウェルド試料 ルド試料
シリンダ温度(OC ) 280 280 金型温度(OC ) 80 80 充てん圧力(M P a) 83. 8 47. 9
保圧 (M P a) 83. 8 0, 47.9, 119.7
射出時間 ( s ) 12. 0 12. 0
冷却時間 ( s ) 20. 0 20. 0
ポリカーボネート(繊維含有率2Ow t % )
ノンウェ ウェルド試料 ルド試料
シリンダ温度(OC ) 280 280 金型温度(OC ) 80 80 充てん圧力(M P a) 107 . 7 63. 5
保圧 (M P a) 107 . 7 。, 63.5, 119.7
射出時間 ( s ) 12. 0 1 2. 0
冷却時間 ( s ) 20. 0 20. 0
- 160 -
300 i
200r
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性d 明 間 骨時
100 I
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20
電圧 ( v )
JZー ずー �
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...--- 0。〆/
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40 60
金型温度 ( OC )
80 100
図6・6 定常時のヒーター電圧とヒーター表面温度の関係
- 161 -
ポリアミド(繊維含有率20wt%)
|
ノンウエ|
ウェルド試料ルド試料
シリンダ温度(OC ) 240 240 金型温度(OC ) 70 40, 70
充てん圧力(M P a) 25. 1 25. 1
保圧 (M P a) 25. 1
I
0, 25.1, 47. 9射出時間 ( s ) 12. 0 1 2. 0
冷却時間 ( s ) 15. 0 5. 0 1
温度においてヒーターに一定電圧を加えた時のヒータ一部温度を表面温度計で 実測して得たものである。 金型温度の上昇にともない直線的に表面温度も上昇 している。 これらの温度は、 溶融樹脂がヒーターに到達する時点でのヒーター
温度に相当する。
3. 1. 2 金型温度とウェルドライン幅
金型温度とウェルドライン幅の関係を図6. 7 に示す。 金型温度は30..., 80 oCの 範囲で変化させた。 ・は加熱部(セラミックヒーターの中央位置:図6. 1 のA 点)、 0は非加熱部(ヒーターから 4mm磁れた位置:図6. 1のB点)の測定結果 である(図6. 1参照)。
非加熱部におけるウェルドライン幅は、 金型温度300Cで約 17μmだが、 金型 温度の上昇にともなって急激に減少した。 金型温度を高温に設定するだけでも ウェルドライン消去に効果があることが分かった。
加熱部でも同様に、 金型温度の増加にしたがってウェルドライン幅は減少し た。 どの金型温度の場合も、 非加熱部よりウェルドライン幅が約5μm小さく なった。 これは、 素材の伝熱特性の違いによるものと考えられる。 セラミヅク ヒーターの主成分であるアルミナの熱伝導率は、 金型に用いられる炭素鋼に比
- 162 -
20
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15
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(自信門10H×)
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寝入干爪弘ム「
H hu
70 80 50 60
40 0
30
(OC ) 金型温度
金型温度とウ ェ ルドライン幅の関係、
0: 加熱領域
- 163 - .: 非加熱領域、
図6. 7
ペて若干小さく、 断熱効果が高いと考えられる1 3)。 したがって、 たとえヒー
ター加熱しない場合でもヒーターに接触した部分の樹脂は温度低下が少なく、
結果的にウェルドライン幅が小さくなった。 熱伝導率の低い材料を金型材に用 いることもウェルドライン消去に効果があると思われる。
金型温度8 0 oC以上ではウェルドライン幅はヒーター加熱の有無によらずほ とんどOμmとなった。
3. 1. 3 ヒーター加熱法によるウェルドライン幅の変化
次に、 ヒーター電圧を0-100Vの範囲で変化させた時のウェルドライン幅の 変化を調べた。
図6.8 はヒーターから 4mm離れた非加熱部のウェルドライン表面のSEM写 真である。 ウェルドラインは黒い帯状の線として観察された。 電圧が変化しで もウェルドライン幅はほとんど変化しなかった(約20μm)。 これより、 セラ
ミックヒーターは、 接触する樹脂だけを加熱し、 それ以外の部分の樹脂には全 く影響を及ぼさないことが分かった。
図6.9はヒーター加熱部における同様のSEM写真である。 電圧OVの時の ウェルドライン幅は21μmであり、 非加熱部とほぼ同様の値であったが、 20V で15μm、 40Vで5μmと次第に小さくなり、 60V以上では完全に外観上除去 された。 また、 ウェルドライン周辺の表面状態は電圧の上昇にしたがって粗面 へと変化した。 これはヒーター加熱により表面転写性が向上し、 ヒーター表面 の微細な凹凸が成形品に転写されたためである。 外観品質をさらに向上させる ためにはヒーター表面の研磨、 あるいはメッキ処理などが必要になると思われ る。
80V以上の高電圧下では、 特に表面状態が悪化したので、 実用上効果的と思 われる4 0 V以下の範囲に関して 、 種々の金型温度条件( 3 0 -8 0 oc )における ヒーター電圧とウェルドライン幅の関係を検討した。 結果を図6. 1 0に示す。 金 型温度が低いほどウェルドライン幅は大きくなった。 金型温度300Cではおよそ 3 0 V 、 金型温度7OOCでは18 Vでウェルドライン幅がOm m になり 、 ウェルドラ
- 164 -
( a ) ( d )
、、,』,,hu ,,aE、、
( e )
( c ) ( f )
..--- ' O.2mm
図6. 8 非加熱領域におけるウ エ ルドラインのSEM写真
ヒ ーター電圧: (a) O. (b) 20. (c) 40. (d) 60. (e) 80. (f) 100V - 165 -
( a )
、、Bg''、hu,,a,‘、
( c )
(d)
( e )
( f ) 1 ・
O.2mm
図6. 9 JJU熱領域におけるウエルドラインのSEH写真
ヒータ一宮圧: (a)O, (b)20, (c)40, (d)60, (e)80, (f)100V
- 166 -
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20
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口
5 •
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件。
ヒーター電圧 (y )
60 80
図6. 1 0 ヒ ーター電圧とウ ェルドライン幅の関係〈加熱領域) 金型温度 0: 30 . ム: 40 . 口: 50
.: 60 . 企 : 70 • . : 80 oc
167 -
インは完全に表面から消失することが分かった。 図6.6 に示した校正線図によ ってウェルドラインが消失したときのヒーター電圧から表面温度を求めると、
およそ800Cとなった。 これは、 ポリスチレンのガラス転移点( 80-1000C)に 相当する温度である。 一方、 非加熱部のウェルドライン幅は図6.11に示すよう に 、 金型温度が5 OOC以下の低温の場合に若干変動が大きいが 、 その平均値は ヒーター電圧を上げてもほとんど変化せず、 ウェルドラインの解消は認められ なかった。
3. 1. 4 ヒーター加熱とウェルド強度
ヒーター電圧に対するウェルド強度変化を図6.1 2に示す。 どの成形条件下で も、 ヒーター電圧の増加に対してウェルド強度は約30MPa と一定であった。 第 2章で述べたように、 ポリスチレン射出成形品のウエルドラインを機械的に切 削除去した時のウェルド強度は約35MPa であった。 成形品形状や成形条件が異 なるため厳密な比較はできないが、 本章で検討したヒーター加熱法を適用した 場合のウェルド強度は、 切削法を適用した場合のウェルド強度よりも低かった。
このことから、 以下のように考察した。
ヒーター加熱法によってウエルドライン合流時の樹脂粘度が低下して融着が 促進されるために表面のV溝が除去される。 しかし、 外観不良が改善されても 表面の分子鎖の絡み合い度は加熱前と比べてもそれほど向上しないために、 こ の領域が切り欠き効果を発揮して、 ウエルド強度はあまり向上しなかったと推 察される。
また、 加熱部樹脂に白化現象が観察されたことなどから、 ヒーター加熱法が 不均一冷却を招いて成形品中に成形歪みが生じたことも考えられ、 これらの理
由で強度が期待したほど改善されなかったと思われる。
3. 2 パヅクフロー法によるFRTPウェルド強度の改善 3. 2. 1 ウェルドラインによる強度低下
図6.1 3は保圧とウエルド強度の関係を示す(ガラス繊維含有率20wt%)0 1 - 168 -
20
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5 . 11 11
(巨巨門。OH×)
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刊 か
60 80 20 40
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( v ) ヒーター電圧
ヒ ーター電圧とウ ェルドライン 幅 の 関 係( 非 加 熱 領 域) 図6. 11
50 。C 80 口:
回:
40 70 ム:
Â:
30 60 ,
0:
. :
金型温度
- 169 -
40
35
(伺ιZ)
g
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30 O〈白
Mm綱却しιム「
同 わ
25
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80 60
件。
。 20
( v ) ヒーター電圧
ヒーター加 熱 電圧とウ ェ ルド 強 度 の関係、
図6. 1 2
400C 金型温度
P i=131.7MPa.
T c = 200 oC 0:
P i=134.0MPa.
P i = 99.4MPa.
T c = 200 oC ム:
170 -
-里里里里里璽璽園田 1
T c = 220 oC 口:
80
事#'
d‘
一一ー
. .
一一一一一. �
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70
55
a
.一一
6560
(伺仏主)
Mm綱相、ムムヘ
リ円 む
50
0 1∞ 150
(MPa) 保圧
so
20wt目) 保圧とウエルド強度の関係(繊維強化PC繊維含有率
Â:多数個取り金型
ー171 -
1個取り金型、
• 図6I 1 3
- ・ 里園 七里置園田七 l
個取り金型の場合はすでに第4章で述べた。 Ph =OMPaではウェルドライン領 域の樹脂には充分な圧力が伝わらず、 樹脂密度が低下してウェルド強度も低 かった(aw = 52.5MPa)。 しかし、 保圧の増加にともない強度は次第に向上 し、 Ph =119.7MPaではaw = 55. 6 MP aとなった。 多数個取り金型を用いた場 合でも、 Ph =OMPaの時はほとんど1個取り金型との場合と同じ強度であった が、 保圧の増加により急激に強度が増加して、 Ph =119.7MPaではσw =77.8 MPa となった。 1個取り金型の場合の保圧制御による強度向上は約 4%であっ たのに対して、 多数個取り金型の場合約20%となり、 保圧による強度の改善は 多数個取り金型を用いることによってより顕著となった。 繊維含有率1Owt %の 場合も同様の傾向であった。 これは多数個取り金型構造とすることによる樹脂 流動挙動の大きな変化によるものと思われる。
3.2.2 溶融樹脂の充てん過程
そこで、 多数個取り金型中を流動する溶融樹脂の流動先端の変化をショート シヨ ヅト法で観察した結果を図6. 1 4に示す 。 金型充てん過程はダミーキャビ ティA (図中b)、 ダンペル型試験片(同a)、 ダミーキャビティB(同c ) の順に行われていることが分かる。 つまりダンペル型試験片のウエルドライン が合流した直後は、 ダミーキヤピティBでは依然ジエツテイングを起こしなが ら溶融樹脂が充てんしている途中であるため、 ウエルドラインにはまだ保圧が 有効に伝わっていないと考えられる。 全てのキヤビテイの充てんが完了してか ら初めて保圧が伝わる。 これに対して第4章で検討した1個取り金型では、 流 動先端の合流と同時に樹脂に保圧が伝わった。 つまり、 多数個取り金型構造と することにより、 ダンペル試験片への樹脂充てん挙動やウェルドラインへの樹 脂圧力の伝達挙動が大きく変化していると考えられる。
3.2.3 顕微鏡による繊維配向観察
金型への樹脂の充てん挙動の違いによる繊維配向の違いを調べるために、 1 個取り金型の場合と同様に顕微鏡による試料観察を行った。 観察方法は第4章
172 -
1・
b
C
、、,ノ'aA 〆,‘、
a
( 2 )
( 3 )
( 4 )
( 5 )
図6, 1 4 多数個取り金型内の樹脂流動パターン
(流動は( 1 )から(5)ヘ進行、 a=ダンペル試験片、
b=ダミーキャピティA、 c =ダミーキャピティB )
173 -
, ...
3. 1. 4 で述べた。
図4. 1 2で示したように、 1個取り金型では保圧条件によらず対称的なひし形 の配向パターンが観察された。 つまり、 ウェルドライン界面は平滑面であり、
その面に平行な繊維配向は成形条件によって大きく変化することはなかった。
繊維はウェルドライン合流面に平行に配向しているため補強効果を発揮できな かった。
多数個取り金型の場合の顕微鏡観察結果を図6. 1 5に示す。 Ph =OMPaの時は
1個取り金型と同様にひし形の分布形状だったが、 P h = 119. 7MPaの時は分布 形状が大きく変化した。 図4.13に示した領域I、 すなわちウェルドライン界面 に平行に繊維配向した領域が大きく写真の右方向に突出している。 この配向パ ターンから考えると、 繊維の配向は図6. 1 6のようになる。
前述した樹脂充てんパターンからウェルドライン合流時の樹脂状態は図6. 1 7 のようであると考えられる。 ダミーキヤピティbが充てん完了していないため に、 ダンペル試験片に充てんされた樹脂は再び右ゲートを通じてダミーキャビ ティ方向ヘ流動する。 スキン層は流動しないが、 ウェルドライン領域における
未固化のコア層樹脂は右ゲート側に再流動する。 その結果、 図6.1 6のような繊 維配向分布となる。 これをパックフロー現象と呼ぶことにする。
パックフロー現象により、 図6.1 6に示すようにウェルドライン領域の繊維が 流動方向に再配向した。 この試験片を引張るとウェルドライン表面のV溝から き裂が発生し、 模式図の破線に沿って進行したので、 これらの繊維が補強効果 を発揮してウェルド強度が飛躍的に向上することが見出された 。 この方法を
「パックフロー法」と命名した。
3.2.4 破断面のSEM観察
破断面のSEM観察により前章で述べた繊維配向を確認した。 1個取り金型 および多数個取り金型における破断面のSEM写真を各々図6. 1 8、 図6. 1 9に示 す。 1個取り金型では、 ほとんどの繊維が破断面に平行に、 すなわち流動方向 に垂直に配向した。 多数個取り金型では、 特にコア層においてウェルドライン
- 174 -
( a )
-・圃・・・・・・・・・・一一一一一一一一一一一
ー.
h
置
(b)
J三[>�-
ウェルドライン
t t
3mm
工
ウェjレドライン
3mm
図6. 15 繊維強化PCウェルド部の繊維配向観察(多数個取り金型)
- 175 -
“�...・
破断開始点
ウ ェルドライ ン
I� ッ ク フ ロ ー
図6. 1 6 パッ ク フ ロー現象と繊維再配向の模式図
(矢印方向の逆流によりウ ェ ルドライ ンは成形品 内部で右側へ突出した。 破線は破断部を示す。 )
176 -
"
未充てん部分
ウェルドライン パックフロー現象
図6, 1 7 パヅクフロー現象
(斜線部は充てん完了していない流路を示す。 )
- 177 -
,
a. .-- I 1 m m
図6. 1 8 1個取り金型で成形したウ ェ ルド試験片の破断面SEM写真 (繊維強化PC : レ キサ ン 繊維含有率20wt%)
- 2
r------ , 1 In m
図6. 1 9 パ ッ ク フ ロー法により成形したウ ェ ルド試験片の破断面SEM写真 (繊維強化PC : レ キサ ン 繊維含有率20Wl%)
ウェルドライン面
178 -
面から突き出た繊維あるいは繊維の抜けた痕跡が観察され、 多くの繊維が流動 方向に配向していることが分かる。 これは、 多数個取り金型構造とすることに よりパックフローが生じウェルドライン領域の繊維の配向分布が変化したため である。
破断面のSEM写真よりウェルドライン界面から突き出た繊維(有効強化繊 維と呼ぶことにする)の数を測定した。 測定範囲は図6. 20に示したような破断 面中央部および端部である。 各々の測定幅は約650μmであった。 含有率1Owt % に関する結果を表6.3に示す。 繊維数にはガラス繊維の抜け跡の数も含まれる。
表6.3 繊維強化ポリカーボネートのウェルド破断面 における有効強化繊維数
P f-P h 繊維数
(M P a) 中央部 端部
47.9 - 70 68
47. 9 - 1 19. 7 1 5 7 209
保圧を上げることにより飛躍的に有効強化繊維数が増加しており、 ウェルド強 度の上昇傾向と一致した。
さらに、 成形品の層毎の有効強化繊維を調べるために、 中央部を厚さ方向に 表面層から 20分割して各層の繊維数を図6. 2 1に示した。 ( a)はPh =OMPa 、 (b) は119.7MPaの場合である。 試料厚さは32mmなので一層の厚さは160μmとなる。
縦軸は、 各層の位置を試料厚さで除した無次元厚さを表している。 0および1. 0 が試料の表層で、 0.5 が中心部である。 Ph =OMPaでは表層よりやや内側のい
わゆるスキン層とコア層の中間の層に繊維数の多い領域を持つ2山構造となっ た。 一方、 Ph = 119. 7MPaでは、 全層で繊維数が増加するとともにPh = OMPa の場合にみられた山型の配向分布が表層と中央部とにそれぞれ分離したような
3山型の分布形状となり、 ガラス繊維の分布が比較的均一イじした。 このように 多数個取り金型では、 保圧の増加によって有効強化繊維数が増加するとともに
- 179 -
ベトベト
破断面650 μ m 650 μ m
図6. 20 ウ ェ ルド試料破断面における有効強化繊維数測定箇所
- 180 -
。
(1)
初 0.5
世
お 疑
ハU
ハυ ハU
20 30
有効強化繊維数
図6.21(a) 無次元厚さと有効強化繊維数の関係 (繊維強化PC
•
P h= OMPa )- 181 -
。
〈一γ》
初監同νわ階歌 0.5 ハυ ハU
10 20 30
有効強化繊維数
図6.21(b) 無次元厚さと有効強化繊維数の関係 (繊維強化PC . P h= 119.7MPa)
182 -