• 検索結果がありません。

結論

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 66-74)

-用いて破壊力学試験を行い破壊じん性 K 1 C を求め、 これによりV溝に対する 材料特性を評価した。 ノンウェルド試料に関しては、 PSとPCはともにほぼ 同じK 1 C であったことから 、 き裂 に対する材料の抵抗力には差は認められな かった。 しかし、 ウェルド試料に関しては、 PCのK 1 Cがノンウェルド試料と 同じ値であったのに対して、 PSではノンウェルド試料の約5分の1に低下し た。 これは、 PSの方がウェルドライン合流面における分子鎖の絡み合いが少 ないためと考えられた。

測定 結果から、 PSのウェルドラインは、 表層においてはPCと比較して深 いV溝が形成され、 しかも内部においてはじん性低下を招く低結合領域が存在 する構造であることが明ちかとなった。 PSとPCのウェルドライン構造の違 いは固化時間や溶融体緩和時間の違いにより説明できた。

切削法で得られたウヱルドライン深さを破壊力学におけるき裂深さであると

仮定して 、 ウェルドライン深さとウェルド強度の 関係から求めた「見か けの じん性値」は、 DEN試験片を用いて求めたウエルド試料のK ICと全く一致し たことから、 切削法によるウェルドライン深さの定量化方法が適切であること が分かった。

切削法は、 表面粗さ計のように簡便な測定法ではないが、 単なる形状的なV 溝深さだけでなく、 その内層の低結合樹脂領域をも含んで強度に影響を及ぼす 領域を定量イじすることができるため、 成形品の強度設計を行う上で重要な測定 法であると言える。

第3章では、 液晶ポリマー(LC P)およびPC射出成形品に生じたウエル

ドラインにおける分子配向度を赤外二色比を用いて測定し、 ウエルド強度に及 ぼす分子配向の影響について検討した。 フィルムの配向度測定に実績のある赤 外分光法を射出成形品の解析に適用するため、 ミクロトームで薄片試料を作成 し、 顕微FTIR装置を用いて赤外吸収スペクトルを得た。

剛直で直線的な分子骨格を持つLCPは、 異方性が高いために非常に優れた 力学的 特性を持つ反面 、 ウエルド強度は極端に低くなり 、 強度保持率(ノン ウェルド強度に対するウェルド強度比)は10%以下であった。

195

-ウェルドライン領域の分子配向度 F を測定した結果、 LCPでは、 特に内 層の分子がウェルドライン合流面に平行配向していることが分かった。 これは LCPの分子鎖がファウンテインフローによって厚さ方向に引き伸ばされ、 そ のまま合流して凍結したためである。 これに対し、 PCでは成形品の全領域で F = 0となったことから、 流動時に配向したPC分子は保圧過程で緩和を起こ して無配向状態になることが分かった。

ウェルドライン領域から領域外にかけての配向度変化を測定することにより、

ウェルドラインからの距離が 1. 8mmまでの領域が非ウェルドライン領域と異な る分子配向構造を持つことを明らかにした。 LCPの場合でも、 この領域にお ける分子配向を緩和させることが可能であれば、 ウェルド強度が向上するもの と期待される。

繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)のウエルドラインは樹脂の組織 構造のみならず繊維配向の影響を大きく受ける。 第4章および第5章では、 そ のようなFRTP射出成形品のウエルドラインについて検討を行った。

ウェルドライン生成機構の違いがウェルド領域における繊維配向に影響を及 ぼすことから、 第4章では、 ウエルドラインの発生機構を、 ( 1 )対向流ウェル ドラインと(2 )並走流ウエルドラインに分類し、 その影響を検討した。 前者は、

複数の流動先端が互いに反対方向から合流して生じ、 後者は、 ピンやコアなど の金型内部品により分離した流動先端が再合流後に並走しながら生成する。

まず、 繊維強化PCの対向流ウエルドラインについて検討した。 非強化PC のウエルド試料はノンウエルド試料と同等の強度を示したが、 繊維強化材料で はウエルドラインにより大きく強度低下を生じることが分かった。 これは強化 繊維がウェルドライン合流面を貫通しないためであることが破断面のSEM写 真から明かとなった。 繊維含有率が高いほど強度低下も顕著となり、 含有率40

w t %では強度保持率はわずか50%であった 。 成形圧力の影響に関しては 、 充 てん圧力を高くするほどウエルド強度は向上した。 これは、 ウエルドライン合 流部の樹脂温度が高くなり、 分子鎖の絡み合いが促進されるためである。 また、

保圧を増加させると 、 やはりウエルド強度は向上した 。 これは 、 ウエルドラ

196

-イン領域の樹脂とガラス繊維が強く圧縮されて密度が増加するためである。 さ らにウェルドラインにおける樹脂圧力と強度保持率が直線関係にあることを見 出した。 この関係を詳細に検討すれば流動シミュレーシヨンを用いたFRTP 射出成形品ウェルド強度の予測も可能になると考えられる。

次に、 繊維強化ポリプロピレン(PP)の円形穴を有する平板成形品に生成 する並走流ウェルドラインについて検討した。 並走流ウェルドラインにおいて も合流面を貫通する繊維が存在しなかったため、 対向流ウェルドラインの場合 とのウェルド強度の差はなかった。 しかし、 対向流ウェルド強度が射出圧力の 影響を受けたのに対して並走流ウェルドラインでは影響はみられなかった。 ま た、 コア穴部分を形状の一部として持つ非対称試験片で評価した場合には、 コ

ァ穴径が大きいほどウエルド強度が低下した。 これは応力集中のみならず穴近 傍の局所的な繊維配向角変化の影響によるものと思われた。

繊維強化PPの場合の比較では、 対向流ウェルドラインと並走流ウエルドラ インでは、 成形圧力条件の影響の有無があるものの、 ウエルド強度には大きな 差は見られなかった。

第5章では、 FRTPのウェルド強度を向上させるためガラス繊維の表面処 理の最適化について検討した。

用いた3種類のシラン剤は全て著しい効果を発揮し、 未処理の場合と比べて

ノンウェルド強度は30%向上した。 しかし、 これは単に界面接合強度が向上し たためばかりでなく、 押出や射出成形過程で繊維長が比較的長く維持されるこ とによるものであった。

繊維長の影響を受けないウエルド強度でもシラン剤の効果が認められた。 ア

ミノシラン剤が最も高い効果を示し、 ウエルド強度は未処理よりも約25%向上 した。 ポリカーボネートのような熱可塑性プラスチックではシラン剤と樹脂の 化学結合は考えられないので、 アミノシラン剤の強化機構はシラン剤のアミノ 基とポリカーボネートのカルボニル基との水素結合によると考えられた。

ウレタン集束剤処理したウエルド試料は、 未処理の場合と同程度の強度であ り、 ウレタン剤はポリカーボネートとの接着効果を持たないと考えられた。 し

197

-かし 、 シラン剤と併用するとシラン剤以上の効果を発揮したことから 、 ウレ タン剤はシラン剤の界面接着カを促進する働きを持つ ことが分かった 。 ウレ タン剤はノンウェルド強度にも効果があったが、 これはシラン剤単独処理の場 合よりもさらに繊維長が長くなった結果である。 また、 実際に繊維と化学結合 した処理剤の量は処理剤濃度に比例しないことが明らかとなった。

最後に、 第6章では、 本論文において最も重要であるウェルドラインの改善 策について示している。 これまでに得られた知見に基づき、 ウエルドライン表 面に生じるV溝とFRTPの繊維配向の2つの因子に着目してウエルドライン の解消法について検討を行った。

第1の方法は、 金型キャピティ壁面に設置したセラミックヒーターを用いて PS平板に生じたウェルドライン表面を成形と同時に局部加熱する方法である。

ヒーター電圧の制御により局部加熱温度を種々変えた結果、 電圧が高いほどV 溝が融合してウェルドライン幅は減少し、 成形サイクルに影響を及ぼすことな く成形品の外観品質の向上を図ることができた。 しかし、 V溝消去によるウエ ルド強度の改善は期待さ れたほどではなかった。 これは、 成形品内部における 分子鎖の絡み合い不足を解消できなかったことと部分加熱による内部歪みの影

響によるものと考えられる。

第2の方法は、 金型設計を変えることによりウエルドラインに起因するFR

TPの強度低下を抜本的に解決する「パックフロー法」である。 第4章で述べ たように、 2点ゲートで生成する対向流ウエルドラインの場合、 射出圧力を増 大させることにより強度が改善したが、 ウエルドライン領域では繊維による補 強効果が現れないため実用的な対策としては不充分であった。 そこで、 実験に 用いた金型の非対称位置に新たなダミーキヤピティを付加させ、 対向流ウエル ドライン生成時の樹脂充てん挙動を変化させることを試みた。 本法を繊維強化 PCの成形に適用した結果 、 保圧過程においてウエルドライン領域の樹脂に パヅクフロー現象が生じ、 ウエルドラインに平行配向した繊維を流動方向に再 配向させることができた。 このパックフロー現象は保圧の増大にともないさら に顕著となり、 ウエルド強度は飛躍的に向上した。 このパックフロー法は、 繊

198

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 66-74)

関連したドキュメント