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ポラリメトリック SAR レーダデータによる 森林バイオマス計測手法の研究

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ポラリメトリック SAR レーダデータによる 森林バイオマス計測手法の研究

Study of Forest Biomass Measurement

Technology by Using the Polarimetric SAR Data

門脇 信彦

電気通信大学大学院電気通信学研究科 博士(工学)の学位申請論文

2007 年 3 月

(2)

ポラリメトリック SAR レーダデータによる 森林バイオマス計測手法の研究

Study of Forest Biomass Measurement

Technology by Using the Polarimetric SAR Data

博士論文審査委員会

主査 荒井 郁男 教授

委員 早川 正士 教授

委員 岩崎 俊 教授

委員 中野 和司 教授

委員 鎌倉 友男 教授

(3)

著作権保有者 門脇 信彦

2007 年

(4)

Study of Forest Biomass Measurement Technology by Using the Polarimetric SAR Data

Nobuhiko KADOWAKI

Abstract

The objective of this study is an approach to estimate forest biomass. Forest absorbs carbon dioxide emissions and reduces the greenhouse effect. The L-band microwave polarimetric SAR data were applied to measure the parameters of tree, such as tree height and diameter of trunk, because the microwave has a longer wavelength and permeates the tree. We make use of the polarization of microwave for classification of forest. The scope for this study consisted mainly of the development of several techniques, which included,

(1) The calibration technique for both amplitude and phase of full-polarimetric SAR data

(2) The preserved edge polarimetric SAR speckle filter

(3) An new algorithm of decomposing Kennaugh matrix into the four simple scatterers which are the pedestal, the sphere/plate, the dihedral corner reflector and the wire.

(4) Classifying the forests and estimating the mixed ratio of broadleaf tree and a conifer by using the component of simple scatterers.

(5) Estimating the tree height by using the Polarimetric SAR Interferometry technique and ESPRIT (Estimation of Signal Parameters Via Rotational Invariance Techniques).

(6) Improving MIMICS (Michigan microwave canopy scattering model) to be applied to the multi-layer forest and the slope land.

(7) A fast algorithm of nearest neighbor search building in SQL database and Neural Network technique.

SIR-C/SAR and JPL/AIRSAR L-band polarimetric mode images were used to measure the tree parameters and estimate the forest biomass. Comparing the result of field investigation with the estimated forest biomass, we obtained an acceptable good agreement. The best accuracy is over 90%.

A system of the forest biomass measurement was built. In the next phase, we

will make several case studies to evaluate the accuracy of the system by using

PALSAR satellite polarimetric SAR data.

(5)

ポラリメトリック SAR レーダデータによる 森林バイオマス計測手法の研究

門脇 信彦 概要

森林バイオマス計測手法の開発が本研究の目的である。森林は二酸化炭素を 吸収し,温暖化効果を軽減する。L バンドのマイクロ波は波長が相対的に長く,

森林を透過するために樹高及び幹直径など森林パラメータの計測に利用される。

また,マイクロ波の偏波特性を用いて,森林の分類にも利用される。本研究は 主に以下の技術を開発した。

(1)ポラリメトリック偏波 SAR データの振幅及び位相の校正手法 (2)エッジ保存型スペックルノイズ軽減手法

(3) Kennaugh 行列をペデスタル,球・平板,二面コーナーリフレクタ及びワ イヤの4つ簡単散乱体に分解するアルゴリズム

(4)簡単散乱体諸成分を用いた森林分類及び針葉樹と広葉樹の混生率推定 (5)ポラリメトリック・インターフェロメトリ(Pol-InSAR)技術及び ESPRIT

法を用いた樹高推定

(6)マイクロ波森林後方散乱モデル(MIMICS)を複層林及び傾斜地に適用する ための改良

(7)SQL データベース及びニューラルネットワークを用いた森林バイオマス の高速最近傍検索処理システム

SIR-C/SAR 及び JPL/AIRSAR の L バンドポラリメトリック SAR データを用いて,

森林パラメータの計測と森林バイオマスの推定を実施した。現地植生調査の結 果と比較して,良好な計測精度が得られた。ベスト精度は 90%台に達した。

本研究は,ポラリメトリック SAR データを用いた森林バイオマスの計測シス

テムを構築した。これから,PALSAR で取得されるポラリメトリック SAR データ

を用いて,本研究で開発された諸技術を適用し,実例を通して計測精度を検証

する。

(6)

目 次

図表一覧

第Ⅰ章 緒論 1 Ⅰ-1 森林バイオマス計測技術の必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅰ-2 効率的な森林バイオマス計測技術の実際 ・・・・・・・・・・・・ 1 Ⅰ-3 本論文の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 Ⅰ-4 本研究の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 Ⅰ-5 本論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第Ⅱ章 ポラリメトリック SAR データの偏波校正手法 5 Ⅱ-1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 Ⅱ-2 Klein アルゴリズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 Ⅱ-2-1 偏波校正のモデル式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 Ⅱ-2-2 混信成分の除去に用いる仮定条件 ・・・・・・・・・・・・・・ 7 Ⅱ-2-3 3面 CR による偏波間不均衡の是正 ・・・・・・・・・・・・・ 7 Ⅱ-3 Faraday 回転の補正手法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 Ⅱ-4 Klein 仮定条件に満たすピクセルの抽出 ・・・・・・・・・・・・・ 9 Ⅱ-5 検証に用いるポラリメトリック SAR データ ・・・・・・・・・・・・・ 9 Ⅱ-6 校正処理の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 Ⅱ-7 PALSAR 初期データの偏波校正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 Ⅱ-7-1 PALSAR 初期データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 Ⅱ-7-2 3面 CR の解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 Ⅱ-7-3 PALSAR 初期データの校正結果 ・・・・・・・・・・・・・・・ 17 Ⅱ-8 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

第Ⅲ章 ポラリメトリック SAR データのスペックルノイズ軽減 21 Ⅲ-1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 Ⅲ-2 Lee エッジ保存型 SAR スペックルフィルタ ・・・・・・・・・・・・ 23 Ⅲ-2-1 Lee フィルタの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 Ⅲ-2-2 フィルタ処理の手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 Ⅲ-3 山岳及び森林地域におけるフィルタ効果の評価 ・・・・・・・・・・ 28 Ⅲ-3-1 エッジ及び地表フィックチャの保存効果 ・・・・・・・・・・ 28 Ⅲ-3-2 森林分類に用いる最適なウィンドウサイズの選定 ・・・・・・・ 28 Ⅲ-3-3 偏波特性の保存効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

(7)

Ⅲ-4 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

第Ⅳ章 簡単散乱体によるターゲットの分解 35 Ⅳ-1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 Ⅳ-2 簡単散乱体及び抽出アルゴリズム ・・・・・・・・・・・・・・・ 36 Ⅳ-2-1 簡単散乱体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 Ⅳ-2-2 Kennaugh 行列から簡単散乱体を抽出するアルゴリズム ・・・・・ 40 Ⅳ-2-3 無視された K14と K24と K34の 3 エレメントの影響 ・・・・・・・ 40 Ⅳ-3 ターゲットの簡単散乱体分解事例 ・・・・・・・・・・・・・・・ 41 Ⅳ-3-1 針葉樹林の簡単散乱体分解 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 Ⅳ-3-2 広葉樹林の簡単散乱体分解 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 Ⅳ-4 分解失敗の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 Ⅳ-5 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

第Ⅴ章 森林分類及び針広葉樹の混生率推定 50 Ⅴ-1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 Ⅴ-2 使用データ及び対象地域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 Ⅴ-3 平地林の樹種分類及び混生率の推定 ・・・・・・・・・・・・・・ 51 Ⅴ-3-1 簡単散乱体による分解処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 Ⅴ-3-2 簡単散乱体諸成分を用いた樹種分類 ・・・・・・・・・・・・ 54 Ⅴ-3-3 パターン展開法による混生率の推定 ・・・・・・・・・・・・ 56 Ⅴ-3-4 混生率による分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 Ⅴ-4 山地林の樹種分類及び混生率の推定 ・・・・・・・・・・・・・・ 59 Ⅴ-5 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

第Ⅵ章 ESPRIT 法を用いた Pol-InSAR データの樹高計測 64 Ⅵ-1 Pol-InSAR の概念 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 Ⅵ-2 ESPRIT 法の原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 Ⅵ-2-1 問題の定式化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 Ⅵ-2-2 ESPRIT アルゴリズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 Ⅵ-3 樹高推定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 Ⅵ-3-1 対象地域と使用データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 Ⅵ-3-2 マッチング処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 Ⅵ-3-3 ESPRIT 法による樹高推定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 Ⅵ-4 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

(8)

第Ⅶ章 MIMICS 森林後方散乱モデルの改良 76 Ⅶ-1 MIMICS モデルの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 Ⅶ-2 複層式マイクロ波森林後方散乱モデルへの改良 ・・・・・・・・・・ 78 Ⅶ-3 傾斜地対応モデルへの改良 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 Ⅶ-3-1 葉・枝・幹の任意方向散乱 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 Ⅶ-3-2 傾斜地モデルの樹冠層及び樹幹層における放射伝達パス ・・・・ 83 Ⅶ-3-3 傾斜地モデルのシミュレーション ・・・・・・・・・・・・・ 85 Ⅶ-4 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86

第Ⅷ章 森林バイオマスの検出処理 89 Ⅷ-1 検索処理データの構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 Ⅷ-2 整合処理ツール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 Ⅷ-3 最近傍探索処理ツール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 Ⅷ-4 現地植生調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 Ⅷ-4-1 光波距離計測による立木の位置と樹高の計測 ・・・・・・・・ 96 Ⅷ-4-2 下草調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 Ⅷ-5 バイオマスの検出処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 Ⅷ-6 バイオマス算出結果の精度評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 103 Ⅷ-7 処理時間の評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 Ⅷ-8 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

第Ⅸ章 結論 106 Ⅸ-1 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106 Ⅸ-2 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 Ⅸ-3 提案事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109

付録 A Klein 偏波校正アルゴリズム 110 A-1 問題の定式化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 A-2 混信成分の除去 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 A-3 偏波間不均衡の是正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 A-4 ラジオメトリック校正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118

付録 B Huynen パラメータ 120

付録 C 散乱行列 121

(9)

謝辞 参考文献

論文目録

(10)

図表一覧

表Ⅱ-1 2つの3面 CR に関する閾値及びレスポンス ・・・・・・・・・・・・ 11 表Ⅱ-2 2つの3面 CR に関する校正係数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 表Ⅱ-3 2つの3面 CR に関する校正前後の比較 ・・・・・・・・・・・・・・ 12 表Ⅲ-1 Lake_1 及び Lake_2 エリアにおけるスペックルノイズレベルの推定 ・・・ 26 表Ⅴ-1 L バンドにおける簡単散乱体3成分の判別効率表 ・・・・・・・・・・・ 56 表Ⅵ-1 対象地域の SIR-C/SAR L バンドデータ ・・・・・・・・・・・・・・・ 71 表Ⅷ-1 複層式植生後方散乱モデルのシミュレーション入力データ ・・・・・・ 102 表Ⅷ-2 JPL/AIRSAR データによるバイオマス算出結果と現地調査との比較 ・・・ 104 表Ⅷ-3 検索処理時間の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

図Ⅰ-1 森林バイオマス計測のフローチャート ・・・・・・・・・・・・・・・ 4 図Ⅱ-1 校正処理のフロー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 図Ⅱ-2 L バンドの全電力画像及び CR_1 のレスポンス ・・・・・・・・・・・・ 11 図Ⅱ-3 2つの3面 CR に対する Klein アルゴリズムの適用結果 ・・・・・・・・ 13 図Ⅱ-4 3面 CR の位置図(PALSAR 校正) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 図Ⅱ-5 3面 CR 周辺地域の画像(PALSAR 校正) ・・・・・・・・・・・・・・ 15 図Ⅱ-6 高さ 3m の3面 CR のレスポンス ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 図Ⅱ-7 偏波シグネチャダイヤグラムで示す校正結果 ・・・・・・・・・・・・ 18 図Ⅱ-8 校正済の Pauli カラー合成画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 図Ⅲ-1 JPL/AIRSAR カラー合成画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 図Ⅲ-2 7×7 のウィンドウからの 3×3 平均値行列作成(a)とエッジ方向の検出(b) 23 図Ⅲ-3 8 つ非四方形フィルタウィンドウ(塗潰したピクセルをフィルタ処理に用いる) 24 図Ⅲ-4 Lake_1 エリアにおける JPL/AIRSAR L バンドデータのスペックルノイズの特性 26 図Ⅲ-5 5×5 ウィンドウ(a)及び 9×9 ウィンドウ(b)における 3×3 平均値行列の作成 27 図Ⅲ-6 樽前山画像を用いたフィルタ効果の比較 ・・・・・・・・・・・・・・ 29 図Ⅲ-7 森林地域におけるフィルタ前後画像の比較 ・・・・・・・・・・・・・ 30 図Ⅲ-8 テストエリアにおける HH,HV 及び VV 偏波強度値のヒストグラム ・・・ 31 図Ⅲ-9 テストエリアにおける HH,HV 及び VV 偏波間位相差のヒストグラム ・・ 32 図Ⅲ-10 テストエリアにおける元データとフィルタ済データのシグネチャ ・・・ 34 図Ⅳ-1 大きい導体球 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

(11)

図Ⅳ-2 導体二面コーナーリフレクタ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 図Ⅳ-3 導体ワイヤ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 図Ⅳ-4 4つの散乱体の偏波シグネチャダイヤグラム ・・・・・・・・・・・・ 39 図Ⅳ-5 カラマツ林の偏波シグネチャダイヤグラム(北海道・早来町) ・・・・・ 42 図Ⅳ-6 カラマツ林の簡単散乱体の偏波シグネチャダイヤグラム ・・・・・・・ 43 図Ⅳ-7. 白樺林の偏波シグネチャダイヤグラム(北海道・早来町) ・・・・・・・ 44 図Ⅳ-8 白樺林の簡単散乱体の偏波シグネチャダイヤグラム ・・・・・・・・・ 45 図Ⅳ-9 カラマツ純群林(横枝優勢) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 図Ⅳ-10 典型的な広葉樹(縦枝優勢) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 図Ⅳ-11 横枝発達のヤマハンノキ林(広葉樹) ・・・・・・・・・・・・・・・ 47 図Ⅳ-12 潅木混生のカラマツ林 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 図Ⅳ-13 無作為 SAR データの偏波シグネチャダイヤグラム ・・・・・・・・・・ 48 図Ⅳ-14 分解失敗 SAR データの偏波シグネチャダイヤグラム ・・・・・・・・・ 49 図Ⅴ-1 平地林の JPL/AIRSAR L バンド画像(R:G:B=HH:HV:VV) ・・・・・・・・ 51 図Ⅴ-2 山地林対象地域の SIR-C/SAR の L バンド画像(北海道・早来町) ・・・・ 52 図Ⅴ-2 山地林対象地域の SIR-C/SAR の L バンド画像(北海道・早来町) ・・・・ 52 図Ⅴ-4 教師エリアの位置図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 図Ⅴ-5 L バンドにおけるワイヤ散乱体の角度成分αの画像 ・・・・・・・・・ 53 図Ⅴ-6 簡単散乱体3成分のカラー合成画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 図Ⅴ-7 簡単散乱体3成分を用いた樹種分類画像 ・・・・・・・・・・・・・・ 55 図Ⅴ-8 広葉樹,針葉樹及び草地の基本パターン図 ・・・・・・・・・・・・・ 56 図Ⅴ-9 展開係数のカラー合成画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 図Ⅴ-10 広葉樹成分の混生率(%)画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 図Ⅴ-11 針葉樹成分の混生率(%)画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 図Ⅴ-12 草地成分の混生率(%)画像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 図Ⅴ-13 植生 3 成分の混生率による分類のダイヤグラム ・・・・・・・・・・ 59 図Ⅴ-14 植生 3 成分の混生率による分類画像 ・・・・・・・・・・・・・・・ 59 図Ⅴ-15 簡単散乱体 3 成分のカラー合成画像(全電力より正規化) ・・・・・・ 60 図Ⅴ-16 展開係数のカラー合成画像(山地林) ・・・・・・・・・・・・・・・ 60 図Ⅴ-17 針葉樹成分の混生率(%)画像(山地林) ・・・・・・・・・・・・・・ 61 図Ⅴ-18 広葉樹成分の混生率(%)画像(山地林) ・・・・・・・・・・・・・・ 61 図Ⅴ-19 草地成分の混生率(%)画像(山地林) ・・・・・・・・・・・・・・・ 62 図Ⅴ-20 植生3成分の混生率による分類画像(山地林) ・・・・・・・・・・・ 62 図Ⅵ-1 K 素子等間隔リニアアレーにおける2つのサブアレー ・・・・・・・・ 66 図Ⅵ-2 K 素子リニアアレーアンテナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 図Ⅵ-3 従来の単偏波 InSAR ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67

(12)

図Ⅵ-4 多偏波散乱波を持つ Pol-InSAR ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 図Ⅵ-5 アンテナから見た樹冠波,地表面波の2到来波 ・・・・・・・・・・・ 68 図Ⅵ-6 2波モデルのジオメトリ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 図Ⅵ-7 SIR-C データの画像範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 図Ⅵ-8 PR42613(上)と PR42615(下)の SLC 画像(HH:HV:VV=R:G:B) ・・・・・・ 71 図Ⅵ-9 樹高推定の作業フロー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 図Ⅵ-10 SHH-SHH間(上),SVV-SVV間(下)のコヒーレンシー ・・・・・・・・・・・ 72 図Ⅵ-11 SHH-SHH間のインターフェログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 図Ⅵ-12 ESPRIT アルゴリズムのフローチャート ・・・・・・・・・・・・・・ 73 図Ⅵ-13 相関行列の固有値3成分(割合) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 図Ⅵ-14 樹冠上部と地表面の干渉位相差 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 図Ⅵ-15 樹高の推定結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 図Ⅶ-1 MIMICS 森林後方散乱モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 図Ⅶ-2 MIMICS の後方散乱放射伝達パス ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 図Ⅶ-3 MIMICS のソフトウエア構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 図Ⅶ-4 北海道苫小牧 196 林班のカラマツ林写真 ・・・・・・・・・・・・・ 78 図Ⅶ-5 複層式マイクロ波植生後方散乱モデルの放射伝達パス ・・・・・・・・ 79 図Ⅶ-6 C バンドにおける広葉の電気シートモデルの散乱チャート ・・・・・・ 81 図Ⅶ-7 L バンドにおける広葉の回転楕円盤モデルのレイリ散乱チャート ・・・・ 81 図Ⅶ-8 L バンドにおける針葉の細長い円柱モデルのレイリ散乱チャート ・・・・ 82 図Ⅶ-9 L バンドにおける枝の細長い円柱モデルのミー散乱チャート ・・・・・ 82 図Ⅶ-10 L バンドにおける枝及び幹の太い円柱モデルの共振散乱チャート ・・・ 83 図Ⅶ-11 フォーアスロープにおける放射伝達パス ・・・・・・・・・・・・・ 84 図Ⅶ-12 バックスロープにおける放射伝達パス ・・・・・・・・・・・・・・ 84 図Ⅶ-13 直交入射斜面における放射伝達パス ・・・・・・・・・・・・・・・ 86 図Ⅶ-14 傾斜地カラマツ林の後方散乱シミュレーション ・・・・・・・・・・・ 87 図Ⅷ-1 ニューラルネットワークによる整合処理 ・・・・・・・・・・・・・・ 92 図Ⅷ-2 ユークリッド距離による最近傍探索 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 図Ⅷ-3 現地調査プロット位置図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 図Ⅷ-4 立木位置計測の写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 図Ⅷ-5 樹冠広がり計測の写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 図Ⅷ-6 196 林小班のプロット 1 エリアにおける立木の位置及び樹冠率マップ ・ 99 図Ⅷ-7 196 林小班のプロット 1 エリアにおけるカラマツ樹高のヒストグラム ・・・ 99 図Ⅷ-8 196 林小班のプロット 1 エリアにおけるカラマツ胸高直径のヒストグラム ・ 100 図Ⅷ-9 196 林小班のプロット 1 エリアにおける潅木の樹冠率マップ ・・・・・ 100 図Ⅷ-10 196 林小班の調査エリアにおけるシダの樹冠率マップ ・・・・・・・・ 101

(13)

図Ⅷ-11 バイオマス検出処理のフロー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102 図Ⅷ-12 196 林班における JPL/AIRSAR データを用いたバイオマス・マッピング画像 103 図 A-1 ポラリメトリック SAR の送受信システム ・・・・・・・・・・・・・・ 110

(14)

第Ⅰ章 緒論

Ⅰ-1 森林バイオマス計測技術の必要性

2005 年 2 月に発効した京都議定書において,日本国政府は,第一約束期間(2008~

2012 年)の間に 1990 年における CO2 排出量の 6%削減を義務付けられた。削減を義務付 けられた CO2 排出量の内,約 65%にあたる約 3000 万トン(炭素換算)は国内の森林による 吸収・固定により賄われる計画であり,森林吸収源による CO2 排出量削減は重要な役割を 果たすと考えられる。また,これに伴い,国内における森林管理による炭素固定量の増加,

海外植林事業による新規排出権獲得など,森林吸収源確保に関する新規プロジェクトが今 後増加すると考えられる。

プロジェクトの運営に当たり,ベースラインと云う初期森林量(バイオマス)の設定,育 林期間中の生長モニターリング及び排出権獲得ための炭素固定量認証など一連の業務に欠 かせない技術は森林バイオマスの計測技術である。排出権市場から安価,短期間(効率的) 且つ高精度な計測技術が求められている。

環境省は,かつて航空写真判読と現地標本調査を用いて 15 年間の歳月をかけた日本全 国植生図(分類図)を更新した実例がある。また林野庁の森林台帳には,材木となりうる幹 部分のみ対象とする 1990 年までの調査材積量が記載されている。未調査の枝と葉は凡そ 全体バイオマスの 15%~35%を占める。さらに材積量の計測誤差を重ねれば,森林台帳に おけるバイオマス換算の計測誤差は 50%を超えた。

京都議定書の排出量削減認定は,2008 年年初現在と 2012 年年末現在との差値が評価対 象となる。また,1トンの CO2が約 10 ユーロで取引されている市場価額を踏まえて,計 測費だけで取引額の 10 分の 1 以下に抑えなければならない。従って,従来の人力に頼る 標本調査法は時間的にも経済的にも森林吸収源のニーズに答えられない。

Ⅰ-2 効率的な森林バイオマス計測技術の実際

効率的な森林バイオマス計測手法は,レーザープロファイラー系と合成開口レーダ系に 大別される。前者は,近赤外波長領域のレーザー光を航空機から照射し,樹冠の反射信号 と,隙間を貫いた地面の反射信号との時間差から樹高を計測する。さらに 10cm 台地表分解 能を有する光学センサ(特殊なデジタルカメラ)データから樹冠の広がりを抽出し,単木の 外形からボリュームを推定する手法である。後者は,衛星及び航空機搭載の合成開口レー ダからマイクロ波電波を送信し,波長の長い電波の透過性より林冠の散乱信号と地面の散 乱信号との遅延位相差から樹高を求める。さらに多偏波電波の形状識別性より葉(円盤),

枝(棒)及び幹(柱)の散乱成分をそれぞれ抽出し,透過経路上に当たる植生のボリュームを 算出する。

(15)

森林総合研究所と日本森林技術協会と共同で,レーザープロファイラーを用いた森林計 測の実機実験が実施された。バイオマス計測には成功したが,高コストで普及不可能の結 論が下された。計測コストは排出権価額の数倍に昇る。航空機のチャーター料がコストの 8割を占めている。今現在,世界のどこにもレーザープロファイラー衛星の打ち上げ計画 は発表されていない。

一方,合成開口レーダ(SAR)を用いた森林計測について,海外ではドイツの航空宇宙セ ンター(DLR)が Pol-InSAR(Polarimetric SAR Interferometry)による樹高計測技術を開発 した。国内では本研究が ERSDAC(財団法人 資源・環境観測解析センター)の委託研究及 び NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金を受けて,ポラリメトリック SAR センサの形状識別性による植生ボリューム計測技術を開発した(2005 年 8 月に特許取 得)。2つの技術とも航空機データに基づいて開発したが,これから国産の陸域観測技術 衛星(以下,ALOS 衛星)搭載の L バンド合成開口レーダ(以下,PALSAR)より,衛星データ を用いた実機実験を実施する計画である。PALSAR データの販売価格は,撮影範囲 30km×

30km の1シーンが 2 万円弱となっている。経済産業省は,PALSAR の商業利用を積極的に 推進している。衛星データを利用すれば,森林計測のコストが一気に 10 分の 1 まで下が り,市場の容認範囲に入る。

波長の長い衛星搭載のポラリメトリック SAR センサは,森林計測に最も適していると 考えられている。今現在,このような衛星 SAR センサは日本の PALSAR だけである。

Ⅰ-3 本論文の目的

本研究では,ポラリメトリック SAR データを用いた CO2固定化に係わる森林バイオ マスの定量計測技術の研究を目的とする。特に今年 1 月に経済産業省が打上げた ALOS 衛星の PALSAR データの利用を念頭において,定量計測に不可欠となるポラリメトリッ ク SAR データの基礎処理手法をはじめ,樹高及び樹種分類など森林パラメータの解析 技術,マイクロ波森林後方散乱モデル及び森林バイオマスの検出システムを研究する。

本研究は,ポラリメトリック SAR データによる森林バイオマスの定量計測に係わる 最初の研究として,技術的なポテンシャルと計測精度の両面から研究を進める。また,

森林バイオマスの定量計測目的を達成する為に,多分野にわたる必要な技術を導入す る。

Ⅰ-4 本研究の経緯

本研究は,京都議定書が締結された翌年の 1998 年から議論され始め,1999 年度には ERSDAC の 3 年間委託研究業務として発足した。また 2002 年度から NEDO の 3 年間補助金 事業に換えて,2005 年 3 月に主な研究事業は終了した。その後,著者が勤める三菱マテ

(16)

リアル資源開発株式会社(mrc)の社内研究として継続され,未完成の部分が引き続き開 発されている。将来の計画としては,これまで開発された技術を適用して,2007 年度 から PALSAR データを用いた森林バイオマスの計測実例を作成する。

本研究は 1999 年からスタートし,本日までの間にポラリメトリック SAR データの基 礎処理からバイオマスの推定まで合計 7 つの必須技術を研究した。これまで使えるポラ リメトリック SAR データの数は非常に限られている。また,センサ別で数箇所に分散し ている。従って,各技術は異なる対象地域において別々に開発された。これからは新規取 得の PALSAR データを用いて,本研究で開発された技術を同一対象森林地域に適用し,ポ ラリメトリック SAR データによる森林バイオマス計測の実例を作成する。

Ⅰ-5 本論文の構成

本研究で開発した森林バイオマスの定量計測手法は,以下に示す工学的な発想に沿 って構築される。

ⅰ) 2 次元平面に樹種別でのカテゴリー分類を実施し,画像を領域分割する。

ⅱ) 各樹種カテゴリーにおける鉛直方向の樹高分布を求める。

ⅲ) 樹種のカテゴリーと樹高分布から構成される各 3 次元の画像領域に対して,その 森林ブロックの密度を求める。

Ⅳ) 密度の推定の当たり,森林マイクロ波後方散乱モデルを用いて予め有り得る理論 シミュレーション後方散乱行列をデータベース化する。計測対象森林の実 SAR デー タはこの理論データベースと照合し,最も類似する理論値を検出する。この理論値 の算出元である森林パラメータを用いて,樹木のボリューム(バイオマス)が算出さ れる。この種の逆推定法は雲量計測など大気物理学分野では日常的に利用されてい る。

本論文は全9章で構成されている。第Ⅱ章以降は図Ⅰ-1 のフローに沿って各解析技術 を述べる。

はじめに第Ⅱ章でポラリメトリック SAR データの基礎処理である偏波校正について述 べる。本来,この作業は SAR データ配布機関の業務である。しかし,バイオマスの定量計 測は高精度の SAR データを要求する。特に樹高計測における Pol-InSAR(ポラリメトリッ ク・インターフェロメトリ)処理は位相まで正しく校正されたデータを要求する。今まで のポラリメトリック SAR データの偏波校正アルゴリズムは,各偏波データの位相が考慮 されていない。従って,振幅と位相の両方を高精度で校正するアルゴリズムが必要となる。

次の第Ⅲ章において,エッジ保存型のスペックルノイズ軽減手法を述べる。PALSAR 多偏波データの空間分解能は凡そ 30m である。森林計測としてこれ以上分解能を落す

(17)

図Ⅰ-1 森林バイオマス計測のフローチャート

ことは望ましくない。SAR 画像に特有なスペックルノイズを軽減し,かつエッジ及び 偏波特性など画像品質の保持が両立されるノイズフィルタが必要となる。

第Ⅳ章では,本研究で提案した Kennaugh 行列の簡単散乱体分解アルゴリズムを述べる。

ポラリメトリック SAR データの1つ新しい解析ツールとして,簡単散乱体を用いた Kennaugh 行列の分解解析手法を提案した。

第Ⅴ章では,簡単散乱体諸成分を用いた森林分類及び針広葉樹の混生率推定について述 べる。

第Ⅵ章では,Cloude と Papathanassiou が 1998 年に提案した Pol-InSAR 理論[1]に基づ いて,Yamada らが 2001 年に導入した ESPRIT 法による樹高計測[2]を研究した。

第Ⅶ章では,MIMICS(Michigan microwave canopy scattering model)[3]に基づいて,

複層林及び山地林に適用する為に本研究が改良を加えたマイクロ波森林後方散乱モデルに ついて述べる。

第Ⅷ章では,MIMICS モデルと SAR 実データを用いたバイオマス算出システムを述べる。

また,現地植生調査を通してその算出精度が評価される。

第Ⅸ章は,本研究のまとめと結論を述べる。

PALSARデータ

②スペックルノイズの鎮圧

③森林分類

④混生率推定

⑤樹高算出

現地植生調査 (代表森林のパラメータ)

PALSAR フル偏波データ

(Mueller行列)

⑦最近傍検索

Input

バイオマス(体積) 樹高分布 植生分類 針広葉樹混生率

Output

森林の理論散乱値データベース

⑥マイクロ波植生後方散乱モデル

Yes

No

①偏波校正 PALSARデータ

PALSARデータ

②スペックルノイズの鎮圧

③森林分類

③森林分類

④混生率推定

④混生率推定

⑤樹高算出

⑤樹高算出

現地植生調査 (代表森林のパラメータ)

PALSAR フル偏波データ

(Mueller行列) PALSAR フル偏波データ

(Mueller行列)

⑦最近傍検索

⑦最近傍検索

Input

バイオマス(体積) 樹高分布 植生分類 針広葉樹混生率

Output

バイオマス(体積) 樹高分布 植生分類 針広葉樹混生率

Output

森林の理論散乱値データベース

⑥マイクロ波植生後方散乱モデル

⑥マイクロ波植生後方散乱モデル

Yes

No

①偏波校正

(18)

第Ⅱ章 ポラリメトリック SAR データの偏波校正手法

本章の目的

Kleinアルゴリズム[4]を拡張し,一般的な地表面においても振幅と位相の両方が正 しく校正される手法の開発を目的とする。

本章の要旨:

森林を定量的に計測する為にポラリメトリックSARデータの振幅と位相の両方を利用 する。これまでのポラリメトリックSARデータに対する校正手法は,振幅を正しく校正 するが,初期位相及び直交偏波成分(HV,VH)の位相を正しく保存していないことが問 題となる。第VI章に述べるPol-InSARを用いた樹高計測はこれらの位相データを利用す るから,本章では振幅と位相の両方を正しく校正されるKleinアルゴリズムを研究する。

また,これまで特殊な地表面である乾燥湖底に限定された校正サイトは,牧草地など 一般的な地表面にも校正できるように拡張した。さらに電波が電離層を通過する際に 生じるファラディ回転は伝達経路上の歪とみなし,偏波不純物及び偏波不均衡成分の 一部として補正される。

JPL/AIRSAR Lバンドのポラリメトリックデータを用いて,本章の校正手法を検証し た。予め牧草地に設置された2台の3面コーナーリフレクタ(CR)から良好な校正効果 が得られた。最後,PALSARの初期ポラリメトリックデータに対して本章の校正手法を 適用し,実用レベルに達した校正精度が得られた。

Ⅱ-1 まえがき

ポラリメトリックSARデータを用いた森林計測の第一歩はデータの校正から始まる。

通常のSARデータ解析にはあまり使わない位相成分を利用するから,高精度な位相校正 処理が必要となる。

1998年にCloudeとPapathannassouが始めてポラリメトリックSARインターフェロメトリ (polarimetric SAR interferometry,Pol-InSARと略称)の概念を提案した[1]。最適化さ れ た 偏 波 間 の 位 相 差 が 樹 高 の 推 定 に 利 用 さ れ る 。 更 に , 2001 年 に Yamada 達 が ESPRIT (estimation of signal parameters via rotational invariance techniques) 法 を Pol- InSARの解析に適用させ,偏波位相差から樹高を求める数学的なツールを導入した[2]。こ こで,各偏波の位相がキーポイントとなり,初期位相が保存された校正済データが必要と なる。

JPL/AIRSARを校正する為に,1990年代の初期から幾つの偏波校正アルゴリズムが開発さ れ た (Freeman, 1992)[5] 。 そ の 中 に 最 も 知 ら れ た も の は POLCAL(Polarimetric Calibration)アルゴリズムである。POLCALはJPL(Jet Propulsion laboratory)の圧縮スト

(19)

ークスマトリクスデータを処理するために設計され,初期位相が圧縮処理の故に切り捨て られた(van Zyl et al., 1990)[6]。他に散乱行列ベースのKleinアルゴリズム(Klein, 1992)[4]がほぼ同年代に提案されたが,当時のコンピュータ性能の制限により採用されな かった。Kleinアルゴリズムでは初期位相と偏波間の位相差と共に正しく保存される。

PALSARのような衛星搭載で波長が長い(Lバンド≒24cm)センサは,地球の電離層による 影響を受ける。電波が電離層を通過する際にFaraday回転現象が発生し,取得データの位 相に余分な成分が付加される。昼間のプラズマ活動時間帯では,最大40度の位相回転を生 じる可能性がある(Freeman et al., 2004a)[7]。この影響は衛星SARセンサとして特有な もので,特にPALSARデータに対して校正しなければならない歪である。

衛星SARセンサは南北方向に近い飛行極軌道を有する。サイトルークレーダとして近東 西方向の校正サイトが必要となる。今までの航空機搭載SARセンサが利用した校正サイト は総て近南北方向である。JPL/AIRSARの理想的な校正サイトである米国Goldstone地域は 近南北に分布している。地球上に近東西方向へ30kmにわたる植生なしのスムーズな地表面 が見当たらない。従って,特殊な地表面での校正を諦め,一般的な地表面でも校正作業が できるように校正アルゴリズムを拡張する。

最近PALSARを校正するためにPARC(Polarimetric Active Radar Calibrator)が開発され た(Fujita, 2003)[8]。3つの人工ターゲットを用いてFaraday回転を含む偏波校正手法が 検討された(Fujita, 2005)[9]。しかし,POLCALアルゴリズムが適用され,初期位相が無 視された。また位相を正しく校正するためにPARC内部の電気回路の安定性問題を克服する 必要がある。

本章では,Kleinアルゴリズムを一般的な地表面(草地)へ適用できるように拡張した。

またFaraday回転の補正についても検討した。PALSAR初期データ及びPALSARと同じ仕様を 有するJPL/AIRSARデータを用いて,本章の校正手法を検証した。

Ⅱ-2 Kleinアルゴリズム

Ⅱ-2-1 偏波校正のモデル式

ポラリメトリックSARデータに対する偏波校正モデルを次式で表す[4]。

(式Ⅱ-1) ここでは,3 つの歪みが存在し,8個の校正係数が必要となる。システムノイズは既知 或いは無視と仮定する。

未校正観測データ: Oij (Ohv≠Ovh) 真の散乱行列: Sij (Shv=Svh≠0)

①混信成分(Cross-talk)

送信系: (2 個の複素数校正係数)

1 0 1

1 0

0 1

1 0 1

hh hv j hv hh hv hh vh

vh vv vh vv vh vv hv

O O t S S r r

O O Ae t t S S r

φ⎛ ⎞

⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞

= ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟

⎝ ⎠

⎝ ⎠ ⎝ ⎠⎝ ⎠⎝ ⎠ ⎝ ⎠

hv, vh

t t

(20)

受信系: (2 個の複素数校正係数)

②偏波間の不均衡(Channel imbalance) 送信系: (1 個の複素数校正係数) 受信系: (1 個の複素数校正係数)

③絶対利得エラー(Absolute gain error)

ラジオメトリックエラー: (1 個の実数校正係数) 校正機器までの初期位相: (1 個の実数校正係数)

Ⅱ-2-2 混信成分の除去に用いる仮定条件

Kleinアルゴリズムの詳細について付録Aを参考し,ここではアルゴリズムを拡張する為 に混信成分の除去処理に用いる仮定条件を検討する。

予め対象画像から,除去処理用のランダムな小摂動表面散乱を示す自然ターゲットエリ アを選定する必要がある。また,このエリアは以下の仮定条件を満たす必要がある。

①エリア内ピクセルの互逆性(reciprocal)が満たされる。(Shv=Svh)

②エリア内ピクセルの Shh,Shv及び Svv間にそれぞれ線形無相関である。

(特に )

③エリア内ピクセルは,アジマス方向で対称的に分布するターゲットである。

ギザギザのラフネスを有する平坦な地表面では,照射電波に応じて小摂動表面散乱が発 生しやすい。これまで,乾燥地域における涸れた湖底エリアが上述の仮定条件を満たす。

一般的な地表面へ拡張する際にこの仮定条件を満たす画像ピクセルの選定作業が必要とな る。

Ⅱ-2-3 3面 CR による偏波間不均衡の是正 理想な3面 CR の散乱行列は,

(式Ⅱ-2)

式Ⅱ-1 より,画像から抽出された混信成分未除去の3面 CR の散乱行列は,

3 次項を無視して,

(式Ⅱ-3)

付録式 A-15 で得られた中間変数 を用いて,

1 0 0 1 Stri= σ

⎝ ⎠

hh vh hh hv vv

tri j

vh hh hv vv vv

r r r t t

O Ae

t r r t t

σ φ +

≈ ⎜⎝ + ⎟⎠

1r thh vv ρ≈

1 0 1

1 1 0 0

0 1

1 0 1 0 1

=

vh

hv hh

tri j

vv hv

vh

hh hv hv vv vh hh hv vv j

vh hh hv vv vv vh vh hh

r

t r

O Ae

t r

t

r r t t r r t t Ae t r r t t r t r

φ

φ

σ σ

⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞

= ⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟

⎝ ⎠⎝ ⎠

⎝ ⎠ ⎝ ⎠

⎝ ⎠

+ +

⎛ ⎞

⎜ + + ⎟

⎝ ⎠

hv, vh

r r

tvv

rhh

A φ

hh vv

SS

* * * *

(S Shh hv) (S Svv hv) (S Shh vh) (S Svv vh) 0

ε =ε =ε =ε =

(21)

(式Ⅱ-4)

式Ⅱ-4 右辺の符号は,式から決まらない。正と負が互いに1周期のπ分位相差が生じ る。実際の処理作業において,両方の符号を試して,良い校正結果が得られた符号を選ぶ。

Ⅱ-3 Faraday回転の補正手法の検討

PALSAR のような長い波長(L バンド≒24cm)を利用する衛星搭載 SAR センサでは,送受 信で用いる直線偏波電波が地球の電離層に通過する際にその位相成分が変化されて Faraday 回転現象が発生し,取得されたデータの位相に余分な成分が付加される(Freeman et al., 2004a)。Freeman A.(2004b)[9]は Faraday 回転角Ωを含んだ偏波校正式を次のよ うに提案した。

(式Ⅱ-5)

式Ⅱ-5 の右辺におけるSij行列の左右両側を展開すると,

(式Ⅱ-6)

(式Ⅱ-7) 式Ⅱ-6 と式Ⅱ-7 を式Ⅱ-5 に代入して,変数変換すれば次式に書き直される。

(式Ⅱ-8)

式Ⅱ-8 と式Ⅱ-1 と比較して,式Ⅱ-8 右辺の 項を1つの複素数として,Sij

行列の左右両側は式Ⅱ-1 と同じ形式を持つ。従って,Faraday 回転を SAR システムの歪の 1つとみなすことができる。式Ⅱ-8 に基づいてその影響を考慮した校正係数を求める。

回転角度Ωを求めなければ,Klein アルゴリズムから電離層の影響を含んだ偏波校正係数 が算出される。この点について,木村(2005)[10]が別の角度から同じことを指摘した。

Ⅱ-4 Klein 仮定条件に満たすピクセルの抽出

Klein アルゴリズムが Goldstone で植生なしの非常にスムーズな乾燥湖底面に適用され (Klein, 1992)[4],優秀な校正効果が確認された。本章では草地と言う一般的な地表面に おいて,Klein アルゴリズムが適用できるように校正処理の手法を拡張した。

草地など一般的な校正サイトにおいて,Ⅱ-2-2 節の仮定条件に満たすピクセルは点々

tri

hh hhtri

vv

r o

ρo

≈ ±

1

vv hh

t ρr

2 3

1 1 2 4

1 1 0 cos sin cos sin 1 0 1

1 0 sin cos sin cos 0 1

hh hv

hh hv j

vh vv

vh vv

s s o o

Ae f s s f

o o

φ δ δ

δ δ

⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ Ω Ω⎞⎛ ⎞⎛ Ω Ω⎞⎛ ⎞⎛ ⎞

⎜ ⎟= ⎜⎝ ⎠⎝⎟⎜ ⎠⎟⎝⎜− Ω Ω⎠⎟⎝⎜ ⎠⎟⎜⎝− Ω Ω⎟⎠⎜⎝ ⎟⎜⎠⎝ ⎠⎟

⎝ ⎠

( ) 1 1 0 0 1

1 0 0 1 1

hh hv

hh hv j hv hh vh

vv vh vv

vh vv vh hv

s s

o o t r r

AA e t s s

o o t r

φ φ

⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞

⎜ ⎟= ⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟

⎝ ⎠⎝ ⎠⎝ ⎠

⎝ ⎠ ⎝ ⎠ ⎝ ⎠

( )

AA e jφ φ

2 2 1 2 1

1 1 1 1 1 1

1 1 0 cos sin cos sin sin cos

1 0 sin cos cos sin sin cos

f f

f f f

δ δ δ

δ δ δ

Ω − Ω Ω + Ω

Ω Ω

⎛ ⎞⎛ ⎞⎛ ⎞=⎛ ⎞

⎜ ⎟⎜ ⎟⎜⎝− Ω Ω⎟⎠ ⎜ Ω − Ω Ω + Ω⎟

⎝ ⎠⎝ ⎠ ⎝ ⎠

4 2 3 2

3

4 2 3 2

2 4

cos sin cos sin

1 0 1

cos sin

sin cos sin cos

0 1

sin cos

f f

f f

f

δ δ

δ

δ δ

δ

Ω + Ω Ω + Ω

Ω Ω ⎛ ⎞⎛ ⎞ ⎛ ⎞

⎛ ⎞

= ⎜ ⎟

⎜ ⎟⎜ ⎟

⎜− Ω Ω⎟ Ω − Ω Ω + Ω

⎝ ⎠⎝ ⎠⎝ ⎠ ⎝ ⎠

(22)

と分布している。広い範囲の全ピクセルを選んだら,仮定条件に満たさないピクセルにも 選んでしまう。点々となっている利用可能なピクセルをいかに拾うかは Klein アルゴリズ ムの適用のカギとなる。

図Ⅱ-1 にこの拡張処理の流れを示す。Ⅱ-2-2 節の仮定条件②と③を満足させるために,

以下 3 つの基準を設けて対象画像から校正処理に利用可能のピクセルを抽出する。

(1)画像上の平坦なエリアから HH,HV 及び VV 偏波の最大強度閾値α,β及びγをそ れぞれに見積る。

(2)仮定条件②を満たす為に,線形無相関に関する最小閾値ωを設ける。

(3)仮定条件③を満たす為に,7×7 局所ウインド内の最大統計平均閾値τを設ける。

上述の5閾値は校正対象データによって変化する。この5つ閾値を変化させ,繰り返し て3面 CR の散乱行列 Sijを求める。最小 及び が得られば,校正 処理を終了する。

Ⅱ-5 検証に用いるポラリメトリック SAR データ

PALSAR データと類似する JPL/AIRSAR の L バンド SLC(single-look complex)ポラリメト リックデータを手法の検証に用いた。データのカバー地域は,米国アーカンソー州フォー ト・スミスの南約 40km に位置するアワチタ山地の北縁に当たる地域である。平坦な地表 でほぼ 100%が牧草で覆われている。その全電力の画像を図Ⅱ-2(a)に示す。画像のサイズ は 750 ライン×1024 ピクセルである。レンジ及びアジマス方向のピクセルサイズはそれ ぞれ 6.662 メートルと 3.03 メートルである。2 台の高さ 2 メートルの3面 CR が予に牧草 地に設置された(図Ⅱ-2(b))。AIRSAR の SLC 画像から CR_1 と CR_2 と名付けた2つ3面 CR が抽出される(図Ⅱ-2(a))。背景の牧草地に対する CR_1 の HH 偏波後方散乱強度レスポン スは 28.51dB である(図Ⅱ-2(c))。

Ⅱ-6 校正処理の結果

混信成分を除去する為に,図Ⅱ-2(a)の画像から破線で囲まれた 12 箇所を選択した。

Ⅱ-2-2 節の仮定条件②と③を満足させるために,12 箇所から CR_1 に関する 1756 ピクセ ルと CR_2 に関する 11848 ピクセルをそれぞれ抽出した。抽出する際に用いる5つの閾値 は表Ⅱ-1 に示した。表Ⅱ-1 から分かるように,CR_1 と CR_2 は同じ電気性質を持つ3面 CR であるが,それらに対する閾値 α, β 及び γ が異なる値となる。これはレンジ距離 の違いによるものと考えられる。他の2つ閾値 ω と τ については,類似する値が得られ た。また,CR_1 の局所入射角度が 53.09°で,Boresight 角度である 54.74°に近い。従 って,CR_1 のレンジ距離が CR_2 より長くでも関わらず CR_1 の後方散乱強度が強い。

上述の閾値を利用して,既知の CR_1 及び CR_2 から算出された7つの校正係数を表Ⅱ-2

(

hvtri hhtri

)

dB S S arg S

(

hvtri Shhtri

)

参照

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