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本章の目的

MIMICS 理論モデルシミュレーション後方散乱データベースの中から,実際に撮影され た SAR データと最も類似する理論シミュレーション値を検出し,シミュレーション値を構 築する際に理論モデルへ入力した植生パラメータを用いて森林バイオマスを逆演算で算出 することを目的とする。また,バイオマスの算出精度について検証し,検出処理の高速化 を図る。

本章の概要

森林分類,混生率推定及び樹高算出は,SAR データから直接解析して結果を求める。森 林バイオマスの算出は,マイクロ波森林後方散乱モデルを経由して 1 種の逆演算プロセス で割り出す。予め森林後方散乱モデルから理論解を大量に作り,観測された実データと一 致するものが解とする探索手法である。計測対象森林に有り得る変化のケースを理論モデ ルでシミュレーションし,その結果を SQL データベースに格納する。理論データベースか ら SAR 観測データと最も類似している結果を検索して,属性として格納されている該当ケ ースの植生パラメータが抽出される。このモデル入力の植生パラメータを用いて SAR 観測 データに対応する森林バイオマスが積算される。ニューラルネットワークによる近似及び 最近傍探索技術の適用により,データベースの大きさに関係なく,高速で検索するシステ ムを開発した。

現地植生調査の結果を用いて,探出処理の速度及び算出された森林バイオマスの精度に 対して検証した。検証の対象となる苫小牧国有林の 196 林班のカラマツ林小班 28.36ha に 対して,バイオマス算出のテスト処理を実施した。約 20,000 ピクセルの SAR データが 25 分で検索処理され,処理速度が実用レベルに至った。また,4 調査プロットを用いて JPL/AIRSAR データによるバイオマス算出結果と現地調査結果を比較した。平均的な混生 率を設けた理論モデルに近いプロット 1 と 2 では 90%台の計測精度に達した。モデル設 定より広葉樹が多く混生しているプロット 6 は,過大評価された。またモデル設定より大 木が多い純群林となるプロット 3 は,過小評価された。

全林班におけるカラマツのバイオマスが 2,114 トンであり,材積に相当する幹部分の体 積が 2,196m3であった。広葉樹のバイオマスが 679 トンであり,材積に相当する幹部分の 体積が 674m3であった。針葉樹と広葉樹の合計バイオマスが 2,793 トンとなり,合計幹体 積が 2,870m3となった。

尚,196 林班の全域がカラマツ純群林であることを仮定する成長モデルによる営林署の 材積見積値は 2,808m3(2001 年 4 月 1 日施行)である。

Ⅷ-1 検索処理データの構成

SAR 実 Kennaugh 行列データ及び MIMICS 理論 Kennaugh 行列データは以下の仕様で再編 成される。

(1) SAR 実 Kennaugh 行列データの構成

画像データとして,1 ピクセル毎にライン番号,ピクセル番号,Kennaugh 行列の 9 個独 立エレメント(K11,K12,K13,K14,K22,K23,K24,K33及び K34)によって構成される。データ のフォーマットは IEEE 64bit float(intel)と定義され,バイナリ形式のファイルとする。

苫小牧国有林地域の JPL/AIRSAR データを一例とすると,以下の構成となる。

ファイル名: block196_larch_mul.out フォーマット:IEEE 64bit float(intel) 画像サイズ: 520 ライン×825 ピクセル 1 ピクセル毎: (合計 11 個データ)

ライン番号,ピクセル番号,K11,K12,K13,K14,K22,K23,K24,K33,K34 ファイルサイズ:520×825×11×64bit=37,752,000 バイト

非 196 林小班及び非カラマツピクセルは,ライン番号とピクセル番号があるが,

Kennaugh 行列の 9 個独立エレメントは「0.0」とする。

(2) MIMICS 理論 Kennaugh 行列データの構成

モデルシミュレーションデータとして,1 ケース毎に入力植生パラメータ(属性:樹高,

胸高直径,樹冠厚,…)及びミュレーション Kennaugh 行列の 9 個独立エレメント(K11,K12, K13,K14,K22,K23,K24,K33及び K34)によって構成される。データのフォーマットは IEEE 64bit float(intel)と定義され,バイナリ形式のファイルとする。

苫小牧国有林地域における植生調査結果に基づくシミュレーションデータを一例とす ると,以下の構成となる。樹冠層の枝密度が固定とする。

ファイル名: larch_mdl.out

フォーマット:IEEE 64bit float(intel)

モデルケース数:41(樹冠厚)×18(幹直径)×141(樹幹高)=104058 ケース 1 ピクセル毎: (合計 12 個データ)

樹冠厚,幹直径,樹幹高,K11,K12,K13,K14,K22,K23,K24,K33,K34 ファイルサイズ:41×18×141×12×64bit=9,989,568 バイト

Ⅷ-2 整合処理ツール

観測値の SAR 実 Kennaugh 行列データとモデル計算値の MIMICS 理論 Kennaugh 行列デー

タを整合するために,ニューラルネットワークを用いた関数近似の整合処理ツールを開発 した。

本 ツ ー ル は MATLAB Neural Network Toolbox が 提 供 す る バ ッ ク プ ロ パ ゲ ー シ ョ ン (Backpropagation)の Bayesian 正則化 Levenberg-Marquardt アルゴリズムを利用した。処 理の流れを図Ⅷ-1 に示す。

①学習データ

9 個独立エレメント(K11,K12,K13,K14,K22,K23,K24,K33 及び K34)を持つ SAR 実 Kennaugh 行列データから座標原点への 9 次元ユークリッド距離を求める。平均ユークリ ッド距離より上下 2.5 倍標準偏差値の範囲に等間隔で 1000 ピクセルを選出する。この 1000 点は学習データとしてネットワークへ入力する。

②教師データ

①と同様の選出手法を用いて,9 個独立エレメント(K11,K12,K13,K14,K22,K23,K24, K33及び K34)を持つ MIMICS 理論 Kennaugh 行列データから,1000 点を正解値である教師デ ータとしてネットワークへ入力する。

③正規化前処理

学習の高速化を図るために,入力データ及び学習ターゲットデータを正規化すれば,よ り効果である。本ツールでは入力データ及び教師データの最小値と最大値を領域[-1,1]に 入るようにスケーリングする。

④ネットワークの構成

図Ⅷ-1 に示すような 1 中間層と 1 出力層から構築される 2 階層 Feedforward ネットワ ークを設定した。中間層のニューロンは正接シグモイド伝播関数を,出力層のニューロン は線形伝播関数を用いた。中間層ニューロンの数は可変とし,出力層ニューロンの数は入 力データ数と同様に Kennaugh 行列の 9 個独立エレメントとする。

⑤Bayesian 正則化 Levenberg-Marquardt アルゴリズムによるネットワークの学習

収束速度の向上とオーバーフィットの回避を両立するために,汎用性が高い Bayesian 正則化 Levenberg-Marquardt アルゴリズムを採用した。

⑥ネットワーク訓練の収束性の評価

収束を評価するために教師データとの誤差二乗和(SSE),各ニューロンの重みの二乗和 (SSW)及び有効な重みとバイアスの数(Par)の 3 パラメータを設けた。SSE,SSW 及び Par が共に安定値が得られるように繰り返してネットワークを学習させる。

SAR学習データ (1000点)

理論モデル 教師データ

(1000点)

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