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対馬の学校教育がめざすもの 丸山 由希子

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Academic year: 2021

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ヒアリング報告③

対馬の学校教育がめざすもの

丸山 由希子

1.はじめに

今回の対馬アクション・リサーチの目的の一つは、学校の統廃合が地域にもたらす影響 や問題を明らかにすることであった。そのため、対馬市教育委員会の方々へのヒアリング は、対馬市の学校教育事情や今後の展望・課題、廃校になることで起こりうる地域の問題 を中心に進んだ。ここでは、ヒアリングの内容を、対馬に誇りをもつということ、学校が もつ地域でのはたらき、今後の

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教育の三点に絞ってまとめていきたい。

2.対⾺に誇りをもつこと

まず一点目、対馬に誇りをもつことについて。教育委員会の方々が何度もおっしゃって いたのは、対馬の子どもたちが対馬で学んでも一度島外に出てしまったらなかなか戻って こない、ということであった。この課題解決に向けて、対馬市では

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年度から教育努力 目標の第一点を「ふるさとを知り、愛し、未来につなぐ学びの充実」とし、ふるさと学習 の充実を推進している。もちろん高校・大学と対馬を離れて様々な場所で多くの知識を身 に付けていくのはとても大切なことである。なぜなら、対馬市以外の地域に行くことで、

対馬では当たり前だと思っていたことが他の地域では違うことに気づき、考えの幅が広が るからだ。だが、将来対馬に戻りたいと思う子どもたちが育っていない、という実感が教 育委員会にはあるそうだ。対馬に帰って来たいという気持ちを子どもたちにもってもらう ためには、子どもたちが対馬に誇りをもつことが大切である。対馬市教育委員会では、児 童生徒が一度はみな島外に出ても、その何割かは戻って来るような、そういう思いを育て られる学校教育を展開するために、ふるさと学習の充実と

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教育の展開を模索しはじめ ている。誇りをもつということは、どういうことなのか。

前日に、私たちは旧阿連(あれ)小学校の子どもたちにヒアリングを行った。阿連小は

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月に廃校になり、阿連小に通っていた児童は現在、統合先の金田(かんだ)小学 校に通っている。そのヒアリングの中で子どもたちは積極的に地域の話をし、「亥の子」を 披露してくれた。特に「亥の子」の歌はみな堂々と歌っており、聞いていた私たちはとて も感動した。「亥の子」は豊作に感謝する歌で、阿連地区に伝わる伝統の歌である。だが、

この歌や地域の話は、新しく通っている金田小ではあまり話さない、ということだった。

自分たちが誇りのように思っていた地域のよさを、統合先の金田小では自信をもって語る ことができていないようである。これは、対馬出身者が島外へ出たときにも共通すること だ。教育委員会の平山俊章課長は「子どもたちが地域のことを語るのは対馬の中だからで

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きることだけど、本土に出たときでも、一人でそれができるようになってほしい」とおっ しゃっていた。

では、自分たちの地域のよさを積極的に語ることができるようになるためには何が必要 であるのか。永留教育長は、「対馬島外に出たときに、もう一歩乗り越えなきゃいけない何 かがあるのでしょうね。知るだけじゃだめで、好きなだけじゃだめで、もう一歩そこを乗 り越える意志がないと、誇りになっていかないのではないでしょうか」とおっしゃってい た。

対馬には宝がたくさんある。だが、それが宝だと気づかない子どもたちも多い。対馬市 では現在、島外からの移住者が増え、地域資源を活用して事業を起こしている。また、大 学の教員や研究者などが訪れ、対馬の資源に注目している。このように対馬の魅力は数多 くある。今後の教育方針の一つとして、教育委員会では、そのような誇りを子どもたちが もてるような教育をしたいとおっしゃっていた。地域のよさを子どもたちから引き出すよ うな、ステップアップした教育を総合学習で探求学習としてぜひやりたい、ということだ った。

3.学校がもつ地域でのはたらき

では、そのようなことを学ぶ学校のもつ役割は何か、二つ目として学校がもつ地域での はたらきについて考えたい。阿部教授は、話し合いのなかで、学校の統廃合が進むことに よって起こりうる問題について述べた。学校がなくなるというのは、学校が地域で担って いた役割も失ってしまうことである。学校は、地域の様々な資源や文化、自然を教材とし て活用してきた。またその過程で、学校が単に地域資源を活用するだけではなく、様々な 魅力を見つけてきた。その際には地域の協力が必要不可欠であり、子どもだけではなく、

大人の世代を超えたつながりが重要であった。そしてそれが過去から連続して現在まで続 いている。そのようなはたらきをもっていた学校がなくなるということは、地域にとって どういうことなのだろうか。またそういう機能を果たしていた学校がなくなったときに、

そこを代替するものはどんなものがありうるか。今回の実習や今後の調査で明らかにして いきたい、という話であった。

私は学校が地域資源を活用し見出していく、という話を聞いたときはピンと来なかった が、翌日豊小学校の子どもたちに案内してもらった豊集落ツアー(

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参照)で、

その意味を痛感した。ツアーで案内してもらった場所は、鯨組跡地や韓国展望台、かんこ ろもち工場、ツシマヤマネコが通る道などで、地域の魅力が沢山詰まった場所だった。子 どもたちは、その各所を歴史の勉強やインタビューで学んだことを通して詳しく教えてく れた。私ははじめ、豊集落について何も知識がなかったが、ツアーを終えた後には、地域 の魅力やよいところを多く発見できた。と同時に、豊集落が抱えている地域の問題や伝統 を受け継ぐ困難さも感じ、今後の地域資源の活用について学ぶことができた。もし学校が 廃校になってしまったら、このようなことを学ぶ機会は減るだろう。また、子どもが地域 の人と交流したり、伝統を受け継いだりするチャンスも減ってしまう。豊小の子どもたち はこの学習で多くの地域資源を発見し、また地域の人の協力を受けながらツアーを完成さ せたという。魅力が詰まったこのツアーは来島者に影響を与え、地域の魅力を十分発信し

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ていると思う。授業で地域資源を見つけ出し、発信していくことは、学校のもつ大きな意 味になっているのではないかと考える。

学校が地域の魅力を引き出せば、そこに誇りや自信が生まれるだろう。学校は地域の誇 りを見出す場であり、過去から未来へと受け継いでいく重要な役割を担っているのだと感 じた。前述の阿連小はもう廃校してしまったが、学校はなくなっても阿連地区の伝統は消 えないでほしい。阿部教授は「学校がなくなった後でも、大人と子どもが一緒になって地 域のことを学べる何かを、学校教育というものにとらわれずに社会教育などで学べる機会 があるとよい」と言っていた。児童数が少なくなっても、学校が統廃合してしまっても、

地域について学ぶ機会をなくさないことが大切だと感じた。

4.対⾺市における今後の ESD 教育

最後に、今後の

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教育について述べたい。ヒアリングの中で、対馬市で

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教育を 進めるにあたって教員の負担が増えてしまうのではないか、という懸念が挙がった。たし かに、環境教育や国際理解教育など、様々な教科がある中で

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教育に取り組むのは簡単 ではない。このことに対して阿部教授は「そうではなくて、

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教育をやることがそれら をすべて解決すると伝えたい。

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教育は新たな科目ではなく、既存のものに対して視点 を変えて、組み直していく学習とも言い換えられる。対馬市ではすでに

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教育を取り組 むことになっているが、それによって地域が抱えている課題を子どもたちの未来と一体化 することができる。そのことを先生方と特に地域の方、保護者の方々に理解してもらえる とありがたい」と述べていた。

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教育を新たな取り組みとして位置付けるのではなく、

今までのものに対する見方を変えた学習を行っていくことが肝要なのである。

また、

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教育を進めるうえで、小中高の学校間のつながりも欠かせない。対馬市の学 校では現在、中学と高校が一貫教育を行っている地域があったり、高校生が小学生の地域 学習に入ったり、学年をまたいだ教育が進んでいる。だが、共通の教材プログラムが十分 に整っておらず、取り組みを進めるには改善すべき点が多い。教育長は小中高の一貫教育 を進めるにあたり、「小学校段階、中学校段階、高校段階とそれぞれの段階で教えていき、

そこの連携がうまく機能していけば、ものすごくいい形になる」とおっしゃった。さらに

「子どもたちが対馬の誇りを持つために、地域の自然にせよ、文化にせよ、たとえば小学 校なら小学校の段階で、まず基礎知識として、すべて子どもたちに教えたい。そこから中 学校段階なら中学校で、自分の興味のあるものを深め、探求していく。さらに高校につな げるために、学んだことをどう外部に発信していくのか、考える。そういう教育計画やプ ログラムをつくれたら、さらによい。それらを通して自信や誇りをもってほしい」とおっ しゃった。

今後の対馬市での

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教育は、教育段階に応じた学びを進めたいということだった。そ の話を聞いていた学生からは「対馬では教材となる地域資源が豊富だけれど、それらを手 広く教えて全部宝だと認識してもらいたいのか、それとも優先順位をつけて教えていくの でしょうか」という質問が出た。教育委員会の方の答えは「学校は学び方を教える場であ るから、素材は何でもいい」ということだった。子どもたちは、対馬ならではの何かひと つ―たとえば、ツシマヤマネコならツシマヤマネコを通して学んでいき、それは他のも

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のであっても同じようにできる。将来に向けた学びの力を身につけるのが、学校の役割で あるため、優先順位をつけてあれもこれも教える、ということは考えていないそうだ。そ して、少なくとも、学んだことをそのままにするのではなく、子どもたちが

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年後、

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年後を思い描いて、その未来に自分が何か関わっているか、関わったときに何ができるの か、そのようなところまで考えられるように教育レベルを上げたいと話されていた。

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教育が行われることによって、子どもがもつ可能性をどのように伸ばし、展開して いくか。またそれらが子どもと対馬の未来にどのように関連していくのか。長期的な目線

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教育を考えることが重要であると感じた。

ヒアリングの終盤、対馬の誇りは何か、という質問を、学生から永留和博教育長に問い かけた。対馬には魅力が多く、一つにまとめきれないため、答えるのは難しいのではない か、と私たちは思っていた。だが、永留教育長は「対馬の誇りは日本の原点であること」

と答えられた。対馬は朝鮮半島に近く、歴史的にみて、様々な文物が対馬を経由して日本 にやってきた。そしてそれらが、現在にもつながっている。対馬の存在意義や存在価値を 理解することで、永留教育長のように、地域に対する誇りをはっきり言えるようになるの だと感じた。

5.おわりに

教育委員会のヒアリング内容を、誇りをもつこと、学校がもつ地域でのはたらき、今後 の展望の三点からみてきた。今後、対馬市では、今まで以上に

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教育がすすめられるだ ろうが、

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は今までの学習と大幅に変わるのではなく、視点を変えた学習であり、あら ゆる課題に対応することが可能になる。学ぶ素材は問わないが、教育段階に応じた学習を することで学びが深くなり、島外に出たときにも通用するような誇りにつながる。学校は 地域の魅力を見出し、受け継いでいく重要な役割を担っており、学校の統廃合が進んでも 地域について学ぶ機会を失わないことが大切なのだろう。

今回、対馬市教育委員会の方にお話を伺い、対馬の魅力を再認識したと同時に、教育面 での様々な取り組みを学ぶことができた。私は話を聞いていて、対馬市で教育を受けた子 どもが、大人になって自分のふるさとを振り返ったときに、子どもの時には気づかなかっ た何か大切なものに気づくことがあるのかもしれない。

このヒアリングをまとめている最中、私は自分の小学校・中学校時代を振り返っていた のだが、授業で地域学習をしていたことを思い出した。当時は何も思わずに授業を受けて いたが、大学生になって様々な地域から来た人と話す中で、出身地の観光名所や見どころ を話すことが多くなった。他の地域と相対化することで、出身地のよさを再発見し、新た な気づきを得ることも多かった。小中学生の時に学んだうっすらとした記憶は意外にも、

いろいろな場面で役に立っているのかもしれない。対馬市では、地域学習に力を入れてい るところが多く、地域資源を知る機会も多数ある。子どもの頃はその良さに気づかなくて も、大人になって何かのきっかけで自分の出身地を振り返ったときに、地域のよさを再発 見することはあると思う。対馬市の

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教育を通じて、子どもや大人が地域のよさや誇り を知り、魅力が受け継いでほしいと感じた。

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【参考⽂献】

対馬市ホームページ,

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,「対馬市の教育方針及び教育目標」,(

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日取得

http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/policy/images/kyouiku/1_housinmokuhyou.pdf

).

(まるやま・ゆきこ 立教大学社会学部現代文化学科3年)

参照

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