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「持続可能な開発のための教育の10年 (DESD) 」と環境教育NPO

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Academic year: 2021

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(1)1 0 9. Me m .S c h o o . 1B .O .S .T .K i n k iU n i v e r s i t yN o .1 4 :1 0 9 ' " " '1 2 4( 2 0 0 4 ). 「持続可能な開発のための教育の 1 0年 ( D E S D ) J と環境教育NPO 新田和宏. 1. 要旨 周知の通り、国連は、 2005年から 2014年までの 10年間を、. 「国連持続可能な開発のため. 0年 (UNDESD:U NDecadeofE d u c a t i o nf o rS u s t a i n a b 1 eDeve10pment) J のキャン の教育の 1. ベーン期間に定めている。 本稿は、 UNDESD に対応しながら、. 「持続可能な開発のための教育 (ESD:Educationf o r. s u s t a i n a b 1 e S u s t a i n a b 1 eDeve10pment) J とし、う教育的アプローチを通じて持続可能な社会 ( s o c i e t y ) J の形成を目指そうとする日本の ESD運動について、後述するプレーミングとブレ. イクダウンという概念を分析・説明ツールとして用いつつ、その戦略的な特性と課題を明ら かにするとともに、 ESD という新しい教育が指向する方向性についても明らかにしたい。 また併せて、このような ESD運動を契機に、 ESD を推進する環境教育NPOがどのような対 応を試みることになるのか、この点についても明らかにしたい。 DESD (DecadeofEducation 0年)キャンペーン期間は、環 f o rS u s t a i n a b l eDevelopment:持続可能な開発のための教育の 1. 境教育NPOにとって、自らの行動変容を迫られる転換期となる可能性が高い。 尚、本稿を立論する際、日本における ESD の推進を目指す全国的な規模のネットワーク NGOである「持続可能な開発のための教育の 10年推進会議 (ESD-J:JapanCouncilonUN DecadeofE d u c a t i o nf o rS u s t a i n a b l eDevelopment) J に参画し、かつまたその ESD-Jの運営の. 中心を担ってきた 5つの環境教育NPOの代表者に対して、共通の質問項目に基づく個別のヒ アリングを行ない、木稿のテーマを省察するための「素材」を収集した。本稿は、この「素 材」の省察を基底に据えながら議論を展開するものである。. 1 . DESDの「交通整理 J. さて、周知されていると言っても、一般的には、依然として、 DESD に対する理解は錯綜 を極めている状況がある。そこで、最初に、図 1の IDESDの基本構造 j をもとにしながら、 DESD に関する「交通整理J を行ない、後論のためにも議論の土台をきちんと踏み固めてお. く作業から始めることとしたい。 2002年 9月 2日、小泉純一郎首相は、南アフリカ共和国の首都ヨハネスブルクで開催され. た 「 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 世 界 サ ミ ッ ト (WSSD. World Summit on Sustainable. 2 0 0 4年 6月 2 5日 . 1C o u r s eo f T e a c h e rT r a i n i n gandL i b e r a 1A出,KinkiU n i v e r s i t y , Wakayama6 4 96 4 9 3, J a p a n. 原稿受付. 姐.

(2) 1 1 0. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t y NO.14 ( 2 0 0 4 ). D e v e l o p m e n t ) Jにおいて、 した。. 「国連持続可能な開発のための教育の 1 0年」を次のように提案. I日本は、天然資源に恵まれない中、人的資源を礎として今日の日本を築いて参りま. した。日本は、発展の礎として教育を最重要視してきました。なればこそ、. 『持続可能な開. 0年』を国連が宣言するように、日本の NGO とともに提案しました。ま 発のための教育の 1 , 5 0 0億円以上の教育援助を提供することとしています J(1)。多少なりとも敷街す た5年間で 2 れば、. 「米百俵」の逸話を脳裏に浮かべながら、. 「発展の礎としての教育」を力説する小泉. 首相は、スピーチの前段で国連に対して DESDを宣言するように促すとともに、その後段で. O f f i c i a lD e v e l o p m e n tA s s i s t a n c e 政府開発援 は日本は後発発展途上国に対し「教育ODA ( , 5 0 0億円以上の拠出を行なうと約束したのである。これが所謂 助) J として 5年間で総額2 「小泉イニシアティブJ と呼ばれているものである。. 図 l. ※ WSSDで低開発国ヘ 5年 間 で 総 額 2, 500億円. 接合 官同. 教 育解育 教理教 発際和 開国平. 、. OB. l山. G. m. UMD 標 玉川目 れ U 発 新何十闘. 、. の日リ めのコ た{子パ の識引. 人連連 万国国. rEEBEESE-. rEEEEEEEE. 以上の拠出を約束. f 教育O DAJとしての ESD. (新田作 j 戊). 「小泉イニシアティブ」の後段にフォーカスした上で、ここから、 ESD= r 小泉イニシア. 5 0 0億円の「教育ODAJ という単純な理解が一部に流布している。但し、単純 ティブ J=2, な理解とはいうものの、この理解を一蹴できるほど、簡単なものではない。というのも、 「小泉イニシアティブ」の後段は、 ESDを「教育 ODAJ と関連付けている。日本がこれか ら行なう ESDが、たとえその一側面であっても、後発発展途上国に対する様々な教育的援 助、例えば、学校や教育関係施設などいわゆる「教育インフラ」の建設、教材・教具の現物 支給、日本から現地への教育指導者の派遣、現地の教育指導者の養成などのフ。ロジェクトと して実施される可能性は高いといえる。また、こうした「教育ODAJ としての ESDという文.

(3) 1 1 1 脈の延長から、日本国内における開発教育や国際理解教育あるいは平和教育や健康教育の展 開が、 ESDとして連動することも、併せて予期される次第である。 2 0 0 2年 1 2月、国連は、 WSSDでの小泉首相の提案( f 小泉イニシアティブJの前段)を 受け、先程、触れたたように、 2005年から 2014年までの 1 0年間を、 のための教育の 1 0年 (UNDESD) Jのキャンベーン期間に定め、. 「国連持続可能な開発 「教育は持続可能な開発. を達成していく上で必要不可欠な要素であることを強調 J(2) したのである。それと同時に、 国連は、 UNDESDの先導機関(le a da g e n c y ) に国連教育科学文化機関(日叩SCO) を指名し た 。 その UNESCOは 、 2 0 0 3年 7月 、. fUNDESD国際実施計画案のための枠組 (UNDESD. Frameworkf o raD r a f tI n t e m a t i o n a lI m p l e m e n t a t i o nScheme) J(3) を発表した。この「国際実施 計画案のための枠組」は、内容的に、. 「万人のための教育 (EFA :E d u c a t i o nf o rA l l ) Jや. 「国連識字の 1 0年 (UNLD:UNL i t e r a c yD e c a d e ) J および「国連ミレニアム開発目標 (MDGs:M i l l e n n i u mDevelopmentG o a l s ) Jに連動している。 EFAやUNLDとも共通の基盤 を有し、また優先順位の高い鍵を握る ESDのテーマとして、貧困の克服、ジェンダーの平 等、健康増進 ( h e a l t hp r o m o t i o n ) 、環境保全と環境保護、農村改革、人権、多文化理解と平 和、持続可能な生産と消費、文化的多様性 ( c u l t u r a ld i v e r s i t y ) および情報通信技術 ( I C T s ) を列記している。 こうしてみると、. 「国際実施計画案のための枠組」は、どちらかというと、 ESDを開発. 途上国向けの教育として捉え、開発途上国における教育の整備と充足、そして民衆の人間開 発 (humand e v e l o p m e n t ) に力点が置かれていると理解できる。この結果、先進国における ESDの実施は、やはり、. 「小泉イニシアティブJの後段のように、. 「教育ODAJ というこ. とになるのであろうか?このように、 ESDが「教育ODAJ に極小化された場合、先進国で は、自国民や市民を対象にしたESDの実践や制度化は、積極的には指向されないことにな るのであろうか? 続けて、 UNESCOは 、 2 0 0 3年8月に、. fUNDESD国際実施計画のための枠組 (UNDESD. Frameworkf o rI n t e m a t i o n a lI m p l e m e n t a t i o nScheme) J を発表した。 7月に発表した文書と表 aD r a f t ) J という文字が含まれていない。 題はよく似ているが、 8月の文書には「案 ( 2 0 0 3年 8月の「国際実施計画のための枠組」において、注目すべき点は、 的なモデルはない」と明言し、. fESDに普遍. 「各国が自国の優先順位や行動を決めるべきである」として. いる点である。また、 ESDの「目標や強調点、過程は、文化的に適正な方法において、地 域の環境的・社会的・経済的条件に合わせるかたちで、地域で決定されなければならなしリ と併せて明記している点も注目に値する刊。 尚、この「国際実施計画案」は、 2004年の中頃にバージョン・アップされ、その改訂案 が示された後、 2004年暮れの国連総会の場で fUNDESD国際実施計画」が決議される段取.

(4) 1 1 2. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .o .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o . 1 4( 2 0 0 4 ). りである。また、その IUNDESD 国際実施計画」は、各国に対して IDESD 園内実施計 画」を策定するように要請する文言が含まれるとのことである。 いずれにしても、今後、日本でDESDの「圏内実施計画J がどのような策定過程を経てそ れが形成されるのか、並びに「国内実施計画」が「地域実施計画」の策定権限を当該地域に 保障するのか否か、それらの点は全くの未知数といえる。. 2. 本稿の方法. 先の WSSDにおける小泉首相のスピーチから垣間見られるように、もともと、 DESDは日 本の NGOである「ヨハネスブルク・サミット提言フォーラム Jの提案を受けたものである. O. そのため、 DESDのイニシアティブをとった日本の NGOのその後の活動に、世界的にも国 内的にも注目が集まるのは自然である。 「提言フォーラム」は 2003年3月に解散し、現在は、その後継組織として、日本における ESDの推進を目指す全国的な規模のネットワーク NGOである「持続可能な開発のための教 0年推進会議 ( E S D J ) Jが発足 ( 2 0 0 3年 6月)し、活発な活動を展開している (5) 育の 1. そこで、これまでESD-Jの運営の中心を担ってきた ESD運動の当事者であると同時に、所 属する環境教育NPOの代表でもある 5名のキー・パーソンにフォーカスし、彼女・彼らが、 ESD をどのように捉え、 ESD を日本国内や地域のレベルでどのように実践し、かつまたど. のように ESD を制度化していくのか、要するに ESD運動の進め方を中心にヒアリングを行 なった。ヒアリングを行った環境教育NPOの代表は、. 「エコプラットフォーム東海 J ( 名. 古屋市事務局は「中部リサイクノレ運動市民の会 J 内)の新海洋子、財団法人「キープ協 会 J (山梨県)の川嶋直、社団法人「日本ネイチャーゲーム協会 J (東京都)の降旗信一、 NPO法人「国際自然大学校 J (東京都)の佐藤初雄、およびNPO法人「環境教育情報セン. ター J (東京都)の森良の 5氏である (6)。 また、ヒアリングは 5氏に対し一人一人個別に行なった。但し、予め共通の質問項目を用 意し、ヒアリングを行なった次第である。共通の質問項目は、 ESD という教育の捉え方、 ESD と環境教育の関係、 ESD-Jの役割、 ESD が育成すべき能力、主体形成のイメージ、 IESD運動」を推進するさいのポイントとその難しさ、教育改革の方向性、政策ミックス、. 並びに DESDキャンペーン終了年である 2014年における社会変容のイメージである。 尚、ヒアリングは、基本的に、研究者が当事者から「素材」を聴き出すという一方向的な 行為ではない。それは、アウトプットされた「素材J を基点に置きながら、その「素材」が 双方向的なコミュニケーションを促し、かつまた「素材 Jがさらなる質疑応答のみならず議 論をも誘発し、そこから新たな「素材Jが生産されるという極めてスリリングなフ。ロセスを も伴う. O. その意味で、ヒアリングは、当事者と研究者とのブレインストーミング. ( b r a i n s t o n n i n g ) とし¥うべきワークショップが自然発生する場といっても決して過言ではない。.

(5) 1 1 3. したがって、本稿は、ヒアリングの結果を忠実に再現するものではない。ヒアリングで得 た「素材」を、文字通り、検討の姐上に乗せるべき「素材」として取り扱い、それをフレー ミングとブレイクダウンという分析・説明ツールによって省察してみる。その省察から、持 続可能な社会を教育的アブ ローチによって形成しようとする ESD運動の戦略的な特性とそ ρ. の課題を明らかにしてみたい。それでは、次に、分析・説明ツールとして用いるプレーミン グとブレイクダウンという概念を確定しよう。. 3. f r a m i n gとbreakdown プレーミング(企a m i n g )は、端的に言って、社会運動における戦略的な方向付けであり、ま た「①ものごとをわかりやすくみせ、②それまでの定義や解決策とは異なる定義や解決策を 示す J(7) ことである。また、反転して、フレーミングは社会運動の方向付けを分析かっ説 明するツー/レとしても使える。 ロパート・ベンフォード ( R o b e r tD .B e n f o r d ) とデイピッド・スノー ( D a v i dA .Snow) が 詳細な文献渉猟に基づいてフレーミング理論の整理を行なった論文「プレーミング過程と社 会運動一概要と評価. ( F r a m i n gP r o c e s s e sa n dS o c i a l Movements An O v e r v i e wa n d. A s s e s s m e n t ) J(8) を参考にしながら、かつまた私見を交えて、次のようにプレーミングのプ ロセスを整理してみた。 一般に、. iESD運動」を含めた社会運動は、問題状況をわかりやすく説明しながら課題. の特定化や構造化をはかり、当該社会運動の必要性や存在意義を証明した上で、目指すべき 理念や目標を確定し、かつまた課題解決策をも提示しつつ、それらを意味付け、言語的・非 言語的なメッセージを駆使しながら広範な人々の共感を得て支持や参加の輪を広げ、諸資源 の動員をはかり、運動をさらに拡充しようと指向する。また、運動を進めていくなかで生じ る内部マネジメントや外部マネジメント上の困難性や複雑性をクリアしつつ、改めて運動の 方向付けを見直し、そして政治的機会を利用して目標の実現や制度化を目指すダイナミック な動きとして展開される。もちろん、このようなプレーミングに失敗すると、当該社会運動 は雲散霧消する蓋然性が高くなる。 それから、プレーミングという分析・説明ツールで ESD運動を省察するさい、併せて、 理念や目標を具体的かっ実践的に落とし込むというブレイクダウン ( b r e a k d o w n )という概念 を分析・説明ツールとして用いる必要がある。とりわけ、 ESD運動を含めて新しい教育を 指向する運動は、<目指すべき理念や目標>を実現するために、く言語的・非言語的なメッ セージを駆使しながら広範な人々の共感を得て支持や参加の輪を広げ、諸資源の動員をはか り、運動をさらに拡充しようと指向する>場合、他の社会運動とは質的に異なるブレイクダ ウンが要求される。それは、とりわけ、教育コンテンツとして要求される。実は、この教育 コンテンツこそが ESD運動の生命線を握る大変重要な要因であると思える。教育コンテン.

(6) 1 1 4. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o . 1 4( 2 0 0 4 ). ツとは、カリキュラムやプログラム、アクティピティ、実践例、および教材や教具など、要 するに教育の中身のことである。また、そうした教育コンテンツを使いこなす教育指導者 (インストラクターもしくはファシリテーター)の養成や指導マニュアルの提供、教育方法 や学びの場づくりの技法のトレーニングなどが付随する。 ESD運動は、く目指すべき理念や目標>を大上段に構えることに終始するだけでは、多. くの人々の共感や参加を得ることが叶わない。したがってまた、<目指すべき理念や目標> を具体的かつ実践的な教育コンテンツにまでブレイクダウンしなければ、大方の理解が得ら れない。それだけに、 ESD運動のような新しい教育を志向する運動にとって、. 「何をどう. ELV. 。. 、 、. やって (WhatandHow) J教えるのか、というブレイクダウンの観点は欠かすことができな. そこで、次節以降、このプレーミングとブレイクダウンという 2つの分析・説明ツールを 併用しながら、 ESD運動を省察してみよう。論点となるのは、次のポイントである。①ESD の定義と ESD-Jの役割期待、②持続可能な社会と ESD との関係、③ESD-Jの「拡大戦略j と 「個別教育J のパージョン・アップ、④ESDの制度化についてで、ある。. r o l ee x p e c t a t i o n ) 4. ESDの定義と ESD-Jの役割期待 (. 「 環 境 と 開 発 に 関 す る 世 界 委 員 会 (WCED World Commission onE n v i r o n m e n ta n d D e v e l o p m e n t )J. 通称「ブルントラント委員会 J)が 1 9 8 7年に示した「持続可能な開発と. は、将来の世代が自らの欲求を充足する能力を損なうことなく、今日の世代の欲求を満たす s u s t a i n a b l ed e v e 1 o p m e n t ) の共通 ことである J(9) という定義は、一般に、持続可能な開発 (. 了解として定着しているが、しかしながら、持続可能な開発あるいはまた持続可能な社会と いう概念は、厳密な定義を確定するまで進展していない。また、 ESD も、持続可能な開 発・持続可能な社会としづ概念と同様に、定義が確定していなし 10 ESD-Jは 、 ESDを持続可能な社会を形成するための教育的アフ。ローチとして概括的に理解. していると同時に、持続可能な社会形成には、改めて教育的アフ。ローチが必要である点を力 説している。しかし、現段階では、さらに踏み込んで、 ESD を定義するまで、には至ってい ない。また、く問題状況をわかりやすく説明しながら課題の特定化や構造化をはかる>こと にも、 ESD-Jは必ずしも成功しているとはいえない。むしろ、問題状況は、. 「持続不可能性. ( u n s u s t a i n a b i l i t y ) J とし¥う概念に一括され、自明のこととされている。それから、. iESD. 運動」のく必要性や存在意義を証明>する点についても、 UNDESD というキャンペーンの 追い風が却って災いし、これまた自明のことと目されている。 社会運動の基本となるく言語的・非言語的なメッセージを駆使しながら広範な人々の共感 を得て支持や参加の輪を広げる>には、また、とりわけ日本において日本の市民や子どもを 対象に ESD を実施しようとするならば、学ぶ意欲ない子どもたち、学習崩壊、. 「学力」低.

(7) 1 1 5. 下 、. 「学力」の復権、子どもの人権の抑制、階層・所得格差と教育格差の連動、不登校・ひ. 0 0万人、フリーター 400万人、および高卒・大卒無業者の増加など、それこそ きこもり 1. 「持続不可能性」を帯びる切実な教育問題に対しコミットメントし、積極的なメッセージを. E S D Jから発信することが ESDの必要性を社会にアピールする上で極めて重要なことであ ると考えられる。また、日本では、一般に、教育が様々な社会的な課題を解決するためのア プローチとして受け取られているのではなく、むしろ教育そのものが解決されるべき課題と. S D Jにとって教育問題に対するコミットメント、そして ESD なっている現状を鑑みれば、 E という新しい教育の在り方を提起することは不可欠であると思える。 そうすると現段階において、 E SD運動は、社会運動の出発点に据えられるべき基本的な 項目というべき、く問題状況をわかりやすく説明しながら課題の特定化や構造化をはかり>、. SDそのものを定義することについて、満足な及第点を得ていないことになるので そして E あろうか?早急な評価は諌めよう。. E S D Jは不確定概念に相当する ESDを、現段階で無理矢理に定義付けようとはしない。そ S D JがESDを“準公式的 れは「回避戦略」を意識的に採用しているともいえる。仮に、 E に"定義付けると、そこに無用な混乱と一定の排除を招く恐れがあるからである。. S D Jに参画する 5名の環境教育NPOの代表者(以下 i E S D運動の この点に関連して、 E SD運動の最大の弱点を、何よりも ESDに関するコミュニケーショ 当事者」と略記)は、 E ン不足にあるという。そうすると、 E S D Jは、しばらくの問、地道に ESDに関するコミュニ ケーションや議論の活性化を促す運動として展開していく覚悟が必要である。おそらく、そ うしたコミュニケーションや議論の深化により、. i E S Dとは何か」という ESDを定義する. SD運動の当事者は、そのような方向付けで、 ESDに関 課題がクリアされるのであろう。 E するコミュニケーションや議論の場を設定する役割を E S D Jに期待している。それが、. 「 全. 国ミーティング」や「地域ミーティング」であるという。. S D Jは 、 E SD運動を拡大するために、 また、上記の諸点に関連して、 E. 「包括的な教育. ( h o l i s t i ce d u c a t i o n ) Jおよび「し 1くつもの E S D J という立場に立脚する。 E S D Jは 、 E SDが 既存の環境教育や開発教育、国際理解教育、人権教育、平和教育、健康教育、並びにまちづ くり学習等々の「個別教育」を包括・総合するとともに、多種多様な教育NPOの集合を試 み、お互いを否定せず、かつまた「し 1 くつもの E S D J があっても構わない「懐の広さ」を示. S D Jの「拡大戦略」の基本といえる。 す。それが E そして、 E S D Jは、カリキュラムなどの教育コンテンツについても、それぞれの教育NPO もしくは地域が自己決定すべきであると考える。となると、 E SD運動を教育コンテンツに. S D Jにあるのではなく、 E S D Jに参画する教育 までブレイクダウンするというタスクは、 E NPOや地域に帰属することになる。 E S D Jは、教育NPOや地域に教育コンテンツを開発す るように促すファシリテーターの役割を演じながら、教育コンテンツの自己決定を教育NPO.

(8) 1 1 6. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN o .14 (2004). や地域に保障していくために、ここでも「懐の広いスタンス」をとる。ここに、 E S D Jと教 育NPOや地域との役割分担がはっきりとする。 このように教育NPOや地域による教育コンテンツの開発とその普及は、その随伴的効果 として、 E SDに関するコミュニケーションや議論を一段と深化させることとなり、さらに. ESDの定義をせり上げようとする知的状況の創出に連動することまでが期待されている。 S D Jの「自己決定戦略」であろう。 それは、言うなれば、 E S D Jが行なう ESD運動の初期段階は、基本的に、 E S D J自らが ESDの定義を かくして、 E SDを教育コンテンツにブレイクダウンすることも行なわず、それらは 行なわず、また E E S D Jに参画する教育NPOや地域に信託(アウトソーシング)される。それは、別の側面 から見ると、 E SDの定義にまつわるリスクを回避する巧みな「リスク・マネジメント戦 略J ともいえる。. 5 .c a p a b i l i t yとc o m p e t e n c y 先ほど、 E SD運動の当事者は、 ESD運動の最大の弱点として ESDに関するコミュニケー ション不足を指摘している点に触れたが、他方、. I E S Dが育成すべき能力 j にコミュニケ. ーション能力をあげている。 E SD運動にとって、コミュニケーションは大変重要なキーワ ードなのである。 久しく「情報洪水 J と言われ続け、インターネットや電子メール、携帯電話などの情報通 信ツールを媒介にして「高度情報化社会」がさらに「高度化」する時代において、改めてコ ミュニケーション能力の重要性が指摘されているのは一種のパラドックスであろうか?そ れはさておき、かかるコミュニケーション能力は、メディアやプレスの情報を相対化して批. m e d i al i t e r a c y ) J のことを 判的かっ主体的に接する認識態度を培う「メディア・リテラシー (. SDが育成すべきコミュニケーション能力とは、公共的問 必ずしも意味するわけではない。 E 題や持続可能な社会形成について、市民が日常的に議論を行なう状況をもたらす「討議民主. d e l i b e r a t i v ed e m o c r a c y ) J の基底をなすコミュニケーション能力のことである。 主義 (. E S D Jは、こうしたコミュニケーション能力が、. 「コミュニケーション能力 J と一言の下. SDに関 に一括せず、それが具体的かっ実践的には一体どのようなものなのか、それこそ E するコミュニケーションの積み上げによって、その特徴や様相を提示する必要があるだろう。. c a p a b i l i t y)を行動特性 ( c o m p e t e n c y ) として記述し直すブレイクダウン それはまた、能力 (. SD運動の当事者の一人は、コュニケーション能力の一つの側面を、例 の作業でもある。 E えば、くお互いの考え価値を認め合いながら、丁寧に合意形成を導く力>とそのコンピテン シーを表現した。また、. I E S Dが育成すべき能力 J に、事象やデータを読み解く力や政策. a d v o c a c y ) などが指摘されていたが、そうした能力を市民に培う「市民シン を提言する力 ( クタンク Jや「市民コンサルタント」の必要性が併せて指摘されていた。.

(9) 1 1 7 6. 持続可能な社会と ESDとの関係 次に、 ESDが目指す持続可能な社会と ESD との関係という論点に移ることにしたい。こ れは、プレーミングの中で、く目指すべき理念や目標を確定>する点に関連する。 1 9 9 2年、ブラジルのリオデ、ジャネイロで行なわれた「国連環境開発会議 (UNCED) J (通称「地球サミット J)から 1 0年が経過した2002年の時点で、 UNCEDにおいて採択さ れた膨大な行動計画である「アジェンダ2 1 (Agenda2 1 ) J を評価し、今後の方向付けを見 直す場がWSSDで、あった。 関 2. ゲッド・ガヴァナンス. 平和的生存/積極的平和 (新lJl作成). 1 9 9 2年のUNCEDから 2002年のWSSDまでの 1 0年間、何が大きく変化したのかというと、 貧富の差が一段と拡大した点とグローバリゼーション ( g l o b a l i z a t i o n ) が急激に進展した点 を上げることができる。この 2つの点が、持続可能な開発もしくは持続可能な社会という概 念にも、微妙ではあるが、やはりかなり大きな認識の変化をもたらしているといえる。それ を端的に言い表せば、環境保全と経済開発を両立させる Win-Winアプローチ(ダブノレWinア プローチ)から、環境保全と経済開発そして社会開発もしくは社会保障を共立させる WinWin-Winアプローチ(トリフ。ノレWinアプローチ)への変化である。 すなわち、冷戦が終結し、. 「平和の配当 J の一部として地球環境問題への取り組みが加速. した 1 9 9 2年前後においては、経済開発をし、かに環境保全の視点からコントロールするかに 関心が集まった。これに対して、グローパリゼーションがもたらした貧富の差が改めて歴然 としてきた2002年前後から今日に至るまでの関心は、経済開発と社会開発・社会保障を確 保しつつ、いかに環境保全を達成するかということに移っている。尚、 Wir トW in-Winアプロ ーチによる持続可能な社会は、平和的生存を基盤に据え、市民の参加や協働を前提にしたグ ッド・ガヴァナンス ( g o o dgovemance:良い統治)によって運営される(図2 . 1""持続可能な 社会の基本構成」参照). 0.

(10) 1 1 8. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN O . 1 4( 2 0 0 4 ). また、 UNCEDから WSSDまでの 1 0年間は、日本の場合、 たい重複している。それは、. 「失われた 1 0年」の時期とだい. r 2 1 世紀は日本の世紀」と自他共に認める「経済大国日本 J. の急速な転落過程でもあった。中国の世界市場への参入による世界的な大競争 ( m e g a -. c o m p e t i t i o n ) とグローバリセーションの進展は、日本に未曾有の激震をもたらし、政治・行 政・経済・経営・雇用・社会・地域および教育など、これまでの日本のシステムを全面的か っ大胆に変革することを迫るとともに、その反作用として公共事業に依存する地方社会の旧 態依然的な社会構造を死守する現象をもたらした。公共事業への依存は公債の発行を累積さ. 0 0 3年には国と地方を合わせた長期債務残高が実に 7 0 0兆円 せることに連動し、この結果、 2 2 0 0 3年度の一般会計の歳入は約 8 1兆7千億円)。産業の空洞化や雇用 を超えるに至った ( リストラ、商庖街の衰退、地域間格差の増大、そして子どもの学ぶ意欲の減退や高卒・大卒 無業者の増加など、構造的な持続不可能性を帯びる問題群が噴出した。他方、 年」は、. 0 「失われた 1. 「危機は好機」というように、この危機をバネにして、 NGOやNPO・ボランティ. アなどの市民活動が隆盛したことは言うまでもない。 このような状況の中で、 ESD-Jは、<目指すべき理念や目標>である日本における持続可 能な社会をどのようにデザインするのか、という課題が残されている。この課題に対しでも、 前述のような「回避戦略」と「自己決定戦略」が連動してくる。 ESD-Jは 、 ESD運動の基本として、ナショナルなレベルよりも地域を重視しつつ、その地. s u s t a i n a b l ec o m m u n i t y )Jも 域において、地域の人々が目指すべき「持続可能な地域社会 ( s u s t a i n a b l ec i t y ) J をデザインし、なおかつ数値目標を立て、そ しくは「持続可能な都市 ( こから「逆算」しながら計画を立てた上で、計画を実行する「バックキャスティング・アプ. b a c kc a s t i n ga p p r o a c h ) Jに立脚すべきであると考える。そして、目標をクリアする ローチ ( 閏. ためには、いかなる教育が必要なのか、つまりどのような教育コンテンツの ESD を展開す べきなのかは、結局のところ、地域の「自己決定J の範時であるという立場をとる。それ故 に 、 ESD運動の当事者の一人によれば、 ESDは地域の「コミュニティ・エンパーメント J を目的にして、その教育プログラムが実施されるべきであると指摘するに至る。 ところで、地域における「持続可能な地域社会 Jや「持続可能な都市 J のデザインやESD の「自己決定」と言っても、大都市圏の都市や県庁所在地の地方都市はともかくとして、地 方の小都市や郡部、もしくは中山間地域においては、かかる「自己決定」さえ困難な地域が 相当数存在することが容易に予想できる。そうすると、. 「自己決定戦略」は、 ESD をめぐ. る地域間格差を改めて浮き彫りにするという新たな問題が発生するリスクを負う。今後、こ うしたリスクをいかにマネジメントするかが、オール・ジャパンを標楊する ESD-J~ こ問われ. ている。.

(11) 1 1 9 7. ESD-Jの「拡大戦略」と「個別教育」のバージョン・アップ ESD-Jは 、. 「拡大戦略」というべき、. 「包括的な教育 j および「し 1くつもの ESDJ という. 立場を採用していることについては前述した通りであるが、このことは ESD-Jに参画した多 種多様な教育NPOによる「ケミストリー(化学変化) J というべき ESDの未知なる発展的 な可能性を担保するとともに、反対に、既存の環境教育や開発教育などの「個別教育 J の単 なる寄せ集めという陥穿に般まる危険性も、 ESD運動の当事者のあいだでは十分に認識さ れている。それ故に、 ESD運動の当事者は、現状では、まず、それぞれの「個別教育」が ESD に対応しながら、自らがもっ教育コンテンツをマイナー・チェンジすることから出発. すべきである点を強調していた。 問題は、今後、それぞれの「個別教育」が ESDに対応して如何にパージョン・アップをは かるべきかである。例えば、ある ESD運動の当事者は、自然体験学習という環境教育をい くら積み重ねても持続可能な社会形成にはつながらないと指摘する。但し、その自然体験学 習も、地域とその地域で生活する市民を直接的に媒介にすることによって、いわば課題解決 学習に進展しつつ、 ESDに対応したバージョン・アップをもはかる可能性を秘めていると いう。さらに、ある ESDの当事者は、自分が代表する教育NPOそのものが、 DESDの登場 を契機に、組織や活動内容をバージョン・アップすることつながると予期している。教育 NPOにとっても、 ESDは重大な分岐路なのである。. 思うに、. .の 「個別教育」が ESD に対応してパージョン・アップをはかる道筋は、図 3. IESDと政治教育・市民性教育 J のように、それぞれの「個別教育」が、環境や開発などを. テーマにしながら、 図3. 「個人. 的課題解決学習」から「社 会的課題解決学習」へその 教育的側面を移行し、併せ. V 1.政治教育・市民性教育 政治教育・市民教育の教育的側面. 加・協働・提言するカ. f. 政治教育・市民性教育の領域. て政策形成や参加・協働・. [ … ル 鮪 一 策 形 成 ) ノンフォーマル教育 (NPO). 提言する基礎的な能力を培. フォーマル教育(学校教育). リンケージする方向である。. V .行動:社会的課題解決. 尚、この点については、別. lV.行動:個人的課題解決. i l l .コミュニケーション:相互理解・表現. の拙稿にまとめる予定なの. E 知性・認識・理解・思考. で、本稿ではこれ以上は触. I 感性こころ・価値・態度 教育的側面 /r 個別教育」. う政治教育の教育的側面と. や エ ン ダ ー 福祉 健康 環境 開発 人権 平和 シ. (新田作成). れないこととする (10) 。.

(12) 1 2 0. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t y NO.14 ( 2 0 0 4 ). 8 . ESDの制度化 SDの制度化について取り上げよう。 最後の論点である E. IDESDの交通整理」で触れたよ. うに、 2 0 0 4年暮れの国連総会の場で決議される予定の IUNDESD国際実施計画」は、各国 に対して I DESD国内実施計画」を策定するように要請するとのことである。. E S D Jは、省庁横断的に内閣府が DESDを所管し、また、日本の IDESD圏内実施計画」 S D JなどのNGOとその計画案を検討するためのラウンド・テーブ の策定にあたっては、 E ールを設置するように求めている。策定される I DESD国内実施計画」がどのような策定プ ロセスを経て、どのような内容から成り立ち、そしてし 1かなる実効性を有することになるの かは、まだこの段階で予想も付かない。. SDの「自己決定」としづ論理が IDESD国内実施計画」の基本に組み込まれると、 但し、 E それにはどのような課題が生じるであろうか?この仮説的な問い掛けには、十分な魅力が ある。. SDが学校教育 ( f o n n a le d u c a t i o n ) で展開されると、現行の教育課程の枠組の中で まず、 E は「総合的な学習の時間 j に吸収される蓋然性が高い。. I 総合的な学習の時間」は、学習の. 方向性が示されただけで、ナショナル・カリキュラムの強い縛りがなく、また統ーした教科 書や指導書もなく、学校そして教員のいわば「裁量Jで実施できる「領域」である。ところ が、現実的には、. 「総合学習崩壊」と榔撤されている状態が決して少なくなく、その原因を. W h a ta n dHow) J、 「総合的な学習 探ると、教員サイドで年間を通じて「何をどうやって ( の時間」を教えていいかわからず、そのため「総合的な学習の時間 J が安易な「調べ学習 J に媛小化されていたりしている。それ故に、 E SD運動の当事者の一人は、. I E S Dが育成すべ. き能力 J に関して、何よりも学校の教育者を対象にして教育能力の再開発が必要であると指 摘する。 それから、地域における E SDの「自己決定」は、各地域における本格的なローカル・ア. 1の策定に連動することが予期される。本格的なローカル・アジェンダ2 1 とは、 ジェンダ2 基礎自治体における環境基本計画や環境行動指針などではなく、環境以外の政策分野も包含 した基礎自治体の「総合計画」である。本来の順序ならば、本格的なローカル・アジェンダ. 21=総合計画に基づいて、 DESDI 地域実施計画」が策定されるプロセスを辿るべきであろ n o n f o n n a l う。それはともかくとして、地域の教育NPOなどが市民を対象に「非定型教育 ( e d u c a t i o n ) J として ESDを実践し、 DESDI 地域実施計画J はもとよりローカル・アジェン ダ2 1を策定しえる市民の政策形成能力の育成をはかる必要がある。. E S D Jは、今後、日本の地方分権改革・市民自治の流れと地域における DESDI 地域実施 1の策定とを、いずれは合流させる運動として発展し 計画 j 並びにローカル・アジェンダ2 1やDESDI 地域実施計画」を策 ていく課題を背負っている。地域がローカル・アジェンダ2 定する「自己決定」は、地域で決定し実施できることは地域で行ない、地域では出来ないこ.

(13) 1 2 1 とを広域行政体や中央政府に委託する「自律補完性 ( s u b s i d i a r i t y ) J の原理の基礎となる。 地方分権改革・市民自治の流れは、地域の権限を高め、中央政府が行なう事項を外交や防衛、 経済競争のノレールや社会福祉のナショナル・ミニマムのガイドラインなど制度的に限定し、 中央一地方関係を「自律補完性 J の原理に基づいた大胆な再編成に至る可能性を秘めている。 そのような地域の「自律補完性 j を担保するのは、言うまでもなく、市民の政策形成能力で ある。したがって、それを育成する E SDの役割は極めて高いといえる。. 9 . ESDと政策との関係 SDと政策はいかなる関係にあるのだろうか?この関係を見極める手掛かり ところで、 E を、環境教育と環境政策との関係に求めてみよう。 一般に、環境政策の多くは、市民をステイクホルダー(利害関係者)にカウントしている。 なぜならば、環境政策は、市民の協力なしに、その実効性を確保することが困難だからであ る。それ故に、環境政策が実施 (Do) される段階で、市民は最終的な「政策実施者」に見 据えられている。市民は、単に、環境政策のサービスを享受する客体に見据えられてはいな い。また、一般に、. 「環境政策フ。ログラム(施策) Jの中に、その環境政策の実効性を確保. するために、市民に対する「環境教育プロジェクト(事業) J をパッケージとして組み入れ ているのが常套である。そして、環境教育によって教育された市民は、最終的な「政策実施 者」として、当該政策の具体的な実現を担うことが予定されているわけである。 このように、環境政策にパッケージされた環境教育は、通例、 位置づけられている。すなわち、市民は、例えば、. 「普及啓発」の意味合いで. 「地球温暖化対策 Jや「リサイクルの推. 進」の環境教育に啓発され、自分自身の身の周りで出来ることに気付き、そこから「行動変 容」を促され、具体的には家庭における節電やごみの分別などを行なうことが期待されてい る。但し、環境政策にパッケージされた環境教育は、政策プライオリテーが決して高いわけ ではない。 しかしながら、環境教育NPO は、上記のように、自らが展開する環境教育を環境政策に パッケージされた「普及啓発」の意味合いで捉えているわけではない。ここに、環境政策と 環境教育の微妙なズレがある。環境教育NPOは、参加型学習や体験学習を実践しながら、 相対的に自律した学びの場において、学校教育とは違う教育の在り方や教え方・学び方を蓄 積してきた。したがって、環境政策と環境教育の微妙なズレは、実のところ、大きいギャッ プとなっており、環境政策と環境教育を引き離している。 このような環境教育と環境政策との間における微妙なズレや大きいギャップが、同様に、. ESDと持続可能な社会を形成するための様々な政策との聞にも持ち込まれるのであろう SDは、持続可能な社会を形成する教育的アプローチである。そ か?敢えて繰り返せば、 E SDの中心は、持続可能な社会の形成を担う市民の能力開発であり、 して、 E. 「行動する市.

(14) 1 2 2. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN O . 1 4( 2 0 0 4 ). 民 ( a c t i v ec i t i z e n ) J としての主体形成である。したがって、 ESDは、政策をいわば下請す る「普及啓発」を担当する教育でもなければ、政策から切り離された教育や体験活動でもな い 。 ESDは教育と政策との関係性について、改めて聞い直すことを提起する。 もちろん、 ESDだけでは、持続可能な社会の形成は到底不可能である。 ESD という教育 的アフ。ローチと様々な政策的アプローチがリンケージされる必要がある。そうすると、 2002 年 4月にドイツで閣議決定された「国家の持続可能戦略J のように、持続可能な社会形成を 「国家意思」として表明することが重要な意味をもってくるだろう (11) 。 尚、環境教育NPOの代表は、環境教育が開発教育や人権教育・平和教育などと関連する ことに関心を示すと同時に、 ESDが教育という領域にとどまらず、政策の領域と関連する ことを十分に認識している。基礎自治体レベルにおける市民自治基本条例や子どもの権利条 例の制定、そして本来的なローカル・アジェンダ2 1 の策定、並びに環境政策や産業政策、 雇用政策、少子高齢化対策、さらに教育改革に連動するものと認識している。 最後に、 DESDのキャンペーンが終了する 2014年の地点における「持続可能な社会・日 本 J について、 ESD運動の当事者でもあり環境教育NPOの代表でもある 5氏に尋ねたこと を記して本稿を閉じることにしよう。 これからの 1 0年は、文字通り DESDのキャンペーンに過ぎないという、いささか消極的 な返答が多かった。. r 失われた 1 0年 J において失うものは容易かったが、その反面、これ. 0年」は前途多難ということだろうか。しかしながら、これからの 1 0年で確 からの「創る 1 実に地域の自己決定の比重が増し、また子どもの参画が推進されるだろうとの指摘もあった。 いずれにしても、 ESDは教育という人間開発の営みに、改めて希望を託す強い意思表示 の運動であるとともに、実際に、持続可能な社会という「生活の豊かさ ( w e l l b e i n g ) Jの 実現を求めてやまない、教育による希望の実現過程といえるのかも知れない。. 文献(注釈). ( 1 )h t t p : / / w w w . k a n t e i . g o . j p / j p / k o i z u m i s p e e c h/ 2 0 0 2 / 0 9 / 0 2 s p e e c h . h t m l ( 2 ). r 国連持続可能な開発のための教育の 1 0年に関する決議 J ( 2 0 0 3年 1 2月 2 3 日)は、 ESD-J 編~ r 国連持続可能な開発のための教育の 1 0年 j へ の 助 走 -ESD-J2003報告書 -J lESD-J、2004年 、 1 4 8頁に所収.. ( 3 ) UESCO,"UNDESD ( Ja n u a r y2005-December2 0 1 4 ) Frameworkf o raD r a f tI n t e m a t i o n a l I m p l e m e n t a t i o nScheme", J u l y , 2 0 0 3 .. “UNDESD ( 2 0 0 5 2 0 1 4 ) Frameworkf o raI n t e m a t i o n a lI m p l e m e n t a t i o nScheme", ( 4 ) UESCO, 3 2 C / I N F . 9, 26, A u g .2 0 0 3 . (5). これまでの ESD-J の活動は、おおよそ前掲ESD-J 編 ~ESD-J2003 報告書』で伺い知るこ. とができる。.

(15) 1 2 3 ( 6 ) ヒアリングに快く応じて戴いた 5氏には、改めてここで御礼申し上げたい。本稿は、 5. 氏より得た「素材」がなければ、本稿の立論そのものを得ることができなかったことを 記しておく。 ( 7 ) 高木隆輔. rW住民投票』という名の常識へ一社会運動のフレーム抗争 -J 、大畑裕嗣・. 、 1 2 31 2 4頁. 成元否・道場親信・樋口直人編『社会運動の社会学』有斐閣、 2004年 同. ( 8 )R o b e r tD .B e n f o r dandDavidA . Snow,“ FramingP r o c e s s e s andS o c i a lMovements An OverviewandA s s e s s m e n t " ,Ann u a lReviewofS o c i o l o g y, Vo . 126,2 0 0 0 .. 、 28頁. ( 9 ) 環境と開発に関する世界委員会『地球の未来を守るために』福武書店、 1987年 ( 10 )拙稿「持続可能な開発のための教育 (ESD) と政治教育-持続可能な地域社会の形成. -J 、開発教育協会編『開発教育』第 50号 、 2004年 8月発行予定。 ( 1 1 )小泉みね子「ドイツ-持続可能性を目指す大国」、 昭. 『科学』岩波書!吉、 2002年 8月号参.

(16) 1 2 4. M e m o i r so fT h eS c h o o lo fB .O .S .T .o fK i n k iU n i v e r s i t yN O . 1 4( 2 0 0 4 ). 英文抄録. “ Decadeo f E d u c a t i o nf o rS u s t a i n a b l eDevelopment(DESD)" and E n v i r o n m e n t a lE d u c a t i o nNPO NITTAK a z u h i r o h eU n i t e dN a t i o n sr e s o l v e dt h ed e c a d ef r o m2 0 0 5u n t i l2014a st h ec a m p a i g n Asweh a v es e e n,t fE d u c a t i o nf o rS u s t a i n a b l eDevelopment( 閃DESD). p e r i o do ft h e閃 Decadeo 中o s eo ft h i sp a p e ri st h ee x p l a i n i n go ft h es t r a t e g i cc h a r a c t e r i s t i c sa n ds u b j e c to fESD Thepu movementofJ a p a nwhicha i m st ob u i l do fs u s t a i n a b l es o c i e t yt h r o u g ht h ee d u c a t i o n a la p p r o a c ho f weu s et h ec o n c e p t i o no f ESDc o r r e s p o n d i n gt ot h ec a m p a i g np e r i o dofUNDESD.Wheni te x p l a i n s, weshowt h ewayandt r yt h a t t h ef r a m i n ga n dbreakdowna st h et o o lo fa n a l y s i sande x p l a n a t i o n .And, e n v i r o n m e n t a lE d u c a t i o nNPOc o r r e s p o n d sESD. t h em a t e r i a l "t or ef 1e c ta b o u tESDmovementbyt h eh e a r i n gr e s e a r c ht o5keyp e r s o n s Wec o l l e c t e d“ who a r e a member o fESD-J(Japan C o u n c i l on UN Decade o fE d u c a t i o nf o rS u s t a i n a b l e t )andamanagero fi t ,andwhoa r et h er e p r e s e n t a t i o no fe n v i r o n m e n t a le d u c a t i o nNPO. Developmen 1e c t i o nt o“ t h em a t e r i a l " . T h i sp a p e rg e t sa l o n gw i t ht h er ef ,oncea g a i n,a n da Wet h i n kt h a tESDi samovementt oi n d i c a t eah o p et ohumand e v e l o p m e n t p r o c e s st or e a l i z es u s t a i n a b l es o c i e t ya st h ew e l l b e i n gt h r o u g ht h ee d u c a t i o n a la p p r o a c h ..

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