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大阪大学フォトニクスセンターのめざすもの

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Academic year: 2021

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図1 フォトニクスセンタービル(工学 P3 棟)

夢はバラ色

高 原 淳 一

Junichi TAKAHARA

− 83 − 1967年8月生

大阪大学大学院基礎工学研究科 物理系 専攻修了(1995年)

現在、大阪大学 大学院工学研究科 精 密科学・応用物理学専攻 教授  博士(工学) ナノフォトニクス TEL:06-6879-7927

FAX:06-4864-2695

E-mail:[email protected]

大阪大学フォトニクスセンターのめざすもの

A Dream of Photonics Center Osaka University Key Words:photonics, PARC, LED, SME

生 産 と 技 術  第63巻 第3号(2011)

  「夢はバラ色」どころではなくなってしまった。

東日本大震災による未曾有の被害により、日本の将 来には暗雲がたれこめている。一瞬にして身内や友 人を亡くされた方々、現在も被災地で不自由な暮ら しを余儀なくされている方々には心よりお見舞い申 し上げる。

  最近私が懸念するのは被災地から離れた関西でも 自粛ムードが拡がっていることである。西日本にい る我々までこのようなマインドでは経済が委縮して、

日本全体が悪くなるばかりである。大学、中でも工 学部の役割はこのような混とんとした時こそ今後の 産業の進むべき方向をしっかりと示すことであると 信じる。私はフォトニクス(光に関する科学と技術)

の研究者として、フォトニクスは 21 世紀の産業基 盤としてきわめて大きな役割を果たすと考えている。

気を取り直して、新しくビルが完成した大阪大学フ ォトニクスセンター(センター長 河田聡教授)の 現状と将来の夢について紹介させていただきたい。

 私は 2010 年 10 月から阪大工学研究科精密科学・

応用物理学専攻に着任してフォトニクスセンターの 運営を行っている。2011 年 1 月には吹田キャンパ スのほぼ中央、理工学図書館の横に新しくフォトニ クスセンタービル(5 階建て、床面積 4900m

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)が 竣工し、工学 P 3 棟として 4 月から運用を開始した

(図 1) 。このビルはまもなく 6 月に竣工予定のテク

ノアライアンス棟と並んで阪大の Industry  on  Cam- pus 構想の一翼を担っており、フロアの多くはフォ トニクス関連企業の研究室とオフィスが入って産学 連携をすすめる計画である。すでにいくつかの企業 が入居して活動を開始している。兄弟ビルのテクノ アライアンス棟は目と鼻の先であり、将来は相乗効 果も期待される。

 このビルはフォトニクスという名前にふさわしく 全館 LED 照明と屋上に太陽電池パネルをそなえ、

壁面にガラスパネルを多用した透明感あるデザイン となっている。LED 照明はセンサーネットワーク によって人の存在と自然光を感じて色と照度がコン トロールされ、照明環境と人との関係を探ることも 研究テーマとなっている。また、分光、バイオ、微 細加工の実験機器を備えた供用実験室コモンラボを 備え、研究をサポートする。また、入居企業のため ビル全体に最新のセキュリティシステムを導入し、

入退室を管理している。このようにハードウエアの 面では体制が整ったといえる。次にこのセンターを 拠点として何を目指すのかについて述べる。

 今、世界中でフォトニクスの研究センターが続々

と誕生している。20 世紀はエレクトロニクスの世

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図2 フォトニクスセンターの推進する三事業

− 84 − 生 産 と 技 術  第63巻 第3号(2011)

紀であったが、21 世紀の基盤技術はフォトニクス であるとの認識が世界的にあるためである。大阪大 学は日本の中でもフォトニクス研究者が最も多いこ とで知られ、古くから世界のフォトニクス研究をリ ードしてきた。しかし、全国的な傾向でもあるがフ ォトニクスの研究者は様々な部局に分散して存在し、

教育も体系化されていなかった。我々は 2005 年に 研究者の連携組織としてナノフォトニクス・リサー チイニシアティブを組織し、さらに 2007 年にはバ ーチャルセンターとしてフォトニクスセンターを立 ち上げた。これによって分散していた研究者間の学 内交流が生まれ、現在のセンターに受け継がれてい る。

 現在、我々はこのセンターにおいて図 2 に示す 3 つの事業を推進している。文部科学省のフォトニク ス先端融合研究拠点(Photonics  Advanced  Re- search  Center、以下 PARC)、経済産業省の光エコ ライフ技術開発拠点(以下、光エコライフ拠点)、

日本学術振興会のアジア先進ナノフォトニクス研究 教育拠点(以下、アジア研究教育拠点)である。

 PARC はセンター運営の中心となるプロジェクト である。PARC のミッションは産学連携によりフォ トニクス分野におけるイノベーションをおこし、そ れを起爆剤として新産業を創出することである。イ ノベーションをおこすためには核となる先端基盤技 術が必須となる。我々はナノフォトニクス、中でも プラズモニクスを基盤技術として、バイオやエネル ギーなど異分野との融合をはかることによって、フ

ォトニクスにおけるイノベーションを生み出すこと を目標としている。プラズモニクスという言葉は初 めて耳にする人も多いかもしれないが、金属ナノ構 造のフォトニクスであり従来の光技術では原理的に 不可能と思われていたことを可能にして注目を集め ている。

 PARC の産学連携スタイルは従来のものと大きく 異なる。従来は研究室単位での教授のつてをたより の共同研究がほとんどであり、企業からの研究者が 研究室に滞在することはあっても研究室の枠を超え ることはなかった。PARC では大学と企業が相互に 研究室を設ける相互浸透型産学連携を行っている。

大学は企業の中に、企業も大学の中にそれぞれ研究 室を作る。センター内に企業の研究室が多いのはこ のためである。さらに、交流を推進するため、壁面 と一体化した巨大なホワイトボードとオープンなガ ラス壁をもつコモンラウンジを各階に設けている。

ここを日常的にコーヒー片手に議論する交流の場と していきたい。また、協働企業とセンターに所属す る 20 以上の研究室が参加して、コロキウムとよば れる異分野、異業種間交流会を既に 20 回以上にわ たり開催し、夕方からビールとピザをつまみながら 皆で勉強会と討論を行っている。

 もう一つの柱である光エコライフ拠点のミッショ ンは光を駆使した環境エネルギー健康技術の開発で ある。レーザーセンシング技術を応用したプラスチ ックリサイクルロボット、ビルの LED 照明を活用 した光エコライフの実証試験など 21 世紀にふさわ しく環境に配慮したフォトニクス製品を企業と共同 開発している。さらに、このような活動を通じて高 度博士人材のキャリアパスを構築することが期待で きる。

 このようにセンターのミッションは多岐にわたる。

とはいえ本来、大学の使命は教育であり、これらの 多彩な活動を通じて学生を育成することが最も重要 である。学生をせまい研究室の徒弟制度の中に閉じ 込めてはならず、グローバルな環境や企業の開発の 最前線に立つ研究者とじかに触れ合わせることが必 要である。アジア研究教育拠点のミッションはこの ためにある。これは中国(中国科学院理化技術研究 所)、台湾(国家実験研究院儀器科技研究中心、国 立台湾大学) 、日本(阪大、神戸大、徳島大、理研)

の 3 カ国間における研究者、学生の相互交換プログ

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生 産 と 技 術  第63巻 第3号(2011)

ラムである。アジアの学生同士が相互に現地へ出向 いて交流し、切磋琢磨することが学生の視野を拡げ、

成長を促すと考えている。もうひとつ特筆すべき活 動がある。それは OSA と SPIE という世界最大のフ ォトニクス学会の学生チャプターがセンター内に拠 点をもつことである。学生のための光の祭典「フォ トニクスデイ」の開催などを通じて学生の自主的な 国際交流活動のサポートを行っている。

 企業からの研究者や外国人学生などが入り混じる 中で異分野融合研究を行う場合に障害となるのが先 端分野の学習である。受け入れの時期もまちまちで 入れ替わりもはげしく、セメスター単位の既存のコ ースでは十分な対応ができなかった。我々はこの問 題を解決するため、フォトニクス分野の質の高い e ラーニング教材を専用スタジオで作成し、スマー トフォンなどを通じて忙しい研究者がいつでもどこ

でも学習できる環境を整備している。

 先日、大学に入学したての新 1 年生がセンターの 見学にきてくれた。初々しい彼らも 4 年後には研究 開発の最前線に踏み出していることだろう。それま でにはセンターをイノベーションの活気に満ちた国 際的な雰囲気にあふれる場所にしたい。私は将来こ のセンターで生み出されたイノベーションが新産業 に成長し、千里丘陵を SME(Small  and  Medium  sized  Enterprise)群が拡がるフォトニクスヒルズ としたいと夢見ている。それを中心となって担うの が見学に来てくれたぴかぴかの若者たちであろうこ とはいうまでもない。

 将来に暗雲たれこめるこんなときこそ西日本にい

る我々が「バラ色の夢」 を語ってがんばらないと

い け な い 。 我 々 の 最 新 の 活 動 は ホ ー ム ペ ー ジ

http://parc.osaka-u.ac.jp/ をご覧いただきたい。

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