最近の胃がん診療
診断と治療の実際
高知医療センター
消化器・一般外科
目 的
胃がんについて理解を深めて頂く
胃がんの診断・治療の実際を知って頂く
日本人の死亡原因(人口10万人あたり)
国民衛生の動向2008 悪性新生物 (がん) 脳梗塞,脳出血 心疾患 肺炎 結核 不慮の事故 自殺 肝疾患 300 150 100 50 250 200 0 死 亡 率 1950 55 60 65 70 75 80 85 90 95 2000 07 昭和25 30 35 40 45 50 55 60 平成2 7 12 191955 60 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 昭和30 35 40 45 50 55 60 平成2 7 12 17 国民衛生の動向の動向2008 胃 大腸 気管、気管支及び肺 肝 膵 食道 全体 白血病 男 性 300 100 10 死亡率 胆嚢及びその他の胆道 1955 60 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 300 100 10 昭和30 35 40 45 50 55 60 平成2 7 12 17 死亡率 胃 大腸 肝 気管、気管支及び肺 胆嚢及びその他の胆道 膵 食道 全体 子宮 乳房 女 性 白血病 (人口10万あたり)
がんの死亡率 (部位別)
世界の胃がん羅患率
胃がんの原因
ピロリ菌 遺伝的素因 暴飲暴食 アルコール 刺激物 喫煙 ストレス胃がんの発生
さまざまな原因
進展
胃は厚い筋肉の壁で
できた消化器であり
食物の消化を行う
噴門 幽門 体部 前庭部 穹隆部胃の解剖
粘膜 粘膜下層 筋層 漿膜下層 漿膜 胃壁の断面(顕微鏡像) 酵素 胃酸がん
胃のリンパ節の分布と働き
日本胃癌学会編:胃癌取扱い規約 第14版(金原出版)p.14-15, 2010 11d 10 11p 12a 12p 12b 4sb 17 13 13 18 6 13 8p 8a 14v 14a AGB 8p 8a AGP VL AJ ACM AJ,VJ VCM ACD VCD VCDA VPDSA VMS VGED TGC TGC VCDA VGED VL VP AHC VMS VPDSA Pan-creas 14v 5 8 9 7 1 2 2 6 3b 4d 4d 4sb 3a 4sb 4sa VCM VCD VCDA VGED AGES APIS AGB 流入血管に沿って たくさん存在する 体内への異物進入 を防御する リンパ節 異物 (細菌・腫瘍細胞) 体内 胃壁④ 肝転移
③ 腹膜播種
② リンパ節転移
① 壁進展
胃がんの進展
①’ 直接浸潤
胃がんの進展(① 壁進展)
早期がん 進行がん 粘膜 漿膜 粘膜で発生して、胃の壁を 外側(漿膜)に向けて進展する ①‘周囲の臓器へ (= 直接浸潤 ) ちょくせつしんじゅん 結腸 膵臓 脾臓 肝臓胃がんの進展(② リンパ節転移)
リンパ節転移 肝臓
胃
胃がんの進展(③ 腹膜播種)
癌性腹水 (=腹膜播種 )
ふくまくはしゅ
腹水
胃がんの進展(④ 肝転移)
肝臓
肝転移
門脈
④ 肝転移
③ 腹膜播種
② リンパ節転移
① 胃壁進展
胃癌の進展状態
①’ 直接浸潤
限局したがん
リンパ節転移あり
腹膜播種・
肝転移あり
不明
46.4% 25.6% 13.2% 14.8%胃がんの進行度別の割合
腹部症状 ・食欲不振・腹満 ・体重減少 ・吐血・黒色便 ・腹痛
胃がん発見の流れ
検診
他疾患の治療中 病院受診 胃がんの確定診断 胃内視鏡検査 生検による病理診断 検査異常 ・貧血所見 ・腫瘍マーカー異常 ・CT異常レントゲン 胃内視鏡 腹部超音波 CT(断層撮影)
胃がんの状況を調べるための
治療前検査
バリウム透視 血液検査病変の進展状況を正確に診断することで
適切な治療方針が決定される
胃癌に対する検査の特徴
笹子三津留編:インフォームドコンセントのための図説シリーズ 胃がん(医薬ジャーナル社)p.38-43, 2007 加藤公敏ほか:消化器外科 31(5), 627-632, 2008 芳野純治ほか:消化器外科 31(5), 644-650, 2008 澤田 武ほか:消化器外科 31(5), 667-669, 2008 検査 特徴 上部消化管造影 ●バリウムと胃を膨らませる発泡剤を飲んで行うX線検査 ●一般的に検診で行われる ●臓器・病変の全体像の把握、粘膜の微細な描出に有用 ●スキルス胃癌の診断にも有用 胃内視鏡 ●口や鼻から胃の中に内視鏡を挿入して行う検査 ●胃癌の大部分を発見できる ●病変の全体像、形態、色調の観察、生検に有用 ●微細粘膜構造、血管模様の観察による診断も可能に 超音波内視鏡 ●超音波探触子のついた内視鏡で、胃壁の内部を観察する検査 ●深達度の評価に有用 CT/MRI ●X線、磁気により人体の断層を描出する検査 ●リンパ節・他臓器への転移の評価に有用 腫瘍マーカー ●CEA、CA19-9、CA125などは、再発スクリーニング、予後予測に有用 ●胃癌の早期診断において有用性が確立した腫瘍マーカーはない その他 ●下部消化管造影検査:大腸への転移、腹膜播種の診断 ●骨シンチグラフィー:骨転移の診断 ●PET-CT:進行癌における転移の診断胃がんの治療法の変化
手 術
化学療法
緩和療法
以 前 最 近 進行 早期化学療法
腹腔鏡 手術様々な進展状況
肝転移 腹膜播種 リンパ節転移 直接浸潤 壁進展内視鏡治療
「胃がん治療のガイドライン」に従って
基本的な治療方針が決まる
ガイドラインによる胃がん治療内容
壁 深 達 度 リンパ節転移の程度 N0 N1(1-2個) N2(3-6個) N3(7個以上) T1a(M) ⅠA ESD/EMR(一括切除) 〔分化型、2.0cm以下、UL(-) 〕 胃切除D1(上記以外) ⅠB 定型手術 ⅡA 定型手術 ⅡB 定型手術 T1b(SM) ⅠA 胃切除D1 (分化型、1.5cm以下) 胃切除D1+(上記以外) T2 (MP) ⅠB 定型手術 ⅡA 定型手術 補助化療(pStage ⅡA ) ⅡB 定型手術 補助化療(pStage ⅡB ) ⅢA 定型手術 補助化療(pStage ⅢA ) T3(SS) ⅡA 定型手術 ⅡB 定型手術 補助化療(pStage ⅡB ) ⅡA 定型手術 補助化療(pStage ⅢA ) ⅢB 定型手術 補助化療(pStage ⅢB ) T4a(SE) ⅡB 定型手術 補助化療(pStage ⅡB ) ⅢA 定型手術 補助化療(pStage ⅢA ) ⅢB 定型手術 補助化療(pStage ⅢB ) ⅢC 定型手術 補助化療(pStage ⅢC ) T4b(SI) ⅢB 定型手術+合併切除 補助化療(pStage ⅢB ) ⅢB 定型手術+合併切除 補助化療(pStage ⅢB ) ⅢC 定型手術+合併切除 補助化療(pStage ⅢC ) ⅢC 定型手術+合併切除 補助化療(pStage ⅢC ) Any T/N, M1 化学療法、放射線治療、緩和手術、対症療法Ⅳ 遠隔転移胃癌切除症例の病期(Stage) 別の治療成績
全国胃がん登録調査報告より引用・改変 昭和62~平成2年度症例 生存率 病期Ⅰ 病期Ⅱ 病期Ⅲ 病期Ⅳ 99.4% 79.9% 49.5% 13.0% 0 1 2 3 4 5 (年) (%) 100 50 0 内視鏡治療、腹腔鏡手術 標準手術→補助化学療法 (姑息手術→)化学療法 標準手術日常診療における治療法選択の流れ
Ⅴ胃癌の治療方針 日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン(医師用) 第3版(金原出版)p.6, 2010 ※ただし、T/N/MおよびStageの定義は、胃癌取扱い規約第14版による 胃癌 M0 M1 cT1 cT2/T3/T4a cT4b cN0 cN(+) cT1a(M) cT1b(SM) 分化型 2cm以下UL(-) 分化型 1.5cm以下 EMR ESD 胃切除 D1郭清 胃切除 D1+郭清 定型手術 D2郭清 胃切除 合併切除 D2郭清 化学療法 放射線療法 緩和手術 対症療法 【 手 術 後 】pStageⅠ 〔pT1およびT3(SS)/N0を除く〕pStageⅡ,Ⅲ pStageⅣ
経過観察 補助化学療法 化学療法対症療法 Yes No Yes No 遠隔転移 壁深達度 リンパ節転移 壁深達度 病理
「胃がん治療のガイドラインの解説書」
(患者さん用)
治療法決定までの流れ
• 患者さん・ご家族への説明
– 選択肢が複数のことも – セカンドオピニオンガイドラインに沿った治療方針
インフォームド・コンセント• 最終的な治療法の決定
患者さんの状態を加味した修正
内視鏡治療
手 術
内視鏡治療
化学療法
緩和療法
内視鏡手術
内視鏡 電気メス 生理食塩水を注入•早期の胃がんの一部は胃カメラで切除できる
病変マーキング 病変回収内視鏡治療の特徴
• 低侵襲の手術である 胃カメラ検査の要領でできる 体に傷ができず、時間的には1時間 在院日数も短く、外来でもできる • 適応が限られる 早期がんの中でも、限られた条件をみたすがんに対して行われる (2cm以下の分化型粘膜内癌、潰瘍なし、脈管侵襲なし) ただし、拡大適応もある • 追加切除の可能性 切除標本を調べて再発、リンパ節再発の リスクがあるときは胃切除術を追加する 必要がある手術治療
手 術
内視鏡治療
薬物療法
緩和療法
手術治療の特徴
・胃の切除法には
胃全摘
、
幽門側胃切除
、
噴門側
胃切除
があり、腫瘍の位置、進行具合で術式が
決まる
• 胃の周囲にあるリンパ節も
一緒に切除する
• 再建が必要である
手術治療
手 術
進行 早期腹腔鏡手術
開腹手術
(姑息的手術)
バイパス手術
・ 胃全摘 ・ 幽門側胃切除 ・ 噴門側胃切除(低侵襲)
(標準)
食道と小腸をつなぐ
胃空腸吻合 Y吻合 ルーワイ法胃全摘
• 切除範囲
• 再建図
胃をすべて切除
消化液 食物 リンパ節郭清 リンパ節郭清胃空腸吻合 Y吻合 ルーワイ法
幽門側胃切除
• 切除範囲
• 再建図
胃の下2/3を切除
残った胃と十二指腸または
小腸をつなぐ手術
食物 消化液 胃十二指腸吻合 ビルロートⅠ法 食物 消化液 リンパ節郭清 リンパ節郭清噴門側胃切除
• 切除範囲
胃の上2/3を切除
• 再建図
リンパ節郭清 リンパ節郭清 食道残胃吻合 残胃食道と残った胃とをつなぐ
食物 消化液手術治療
手 術
進行 早期腹腔鏡手術
開腹手術
(姑息的手術)
バイパス手術
(低侵襲)
(標準)
・ 胃全摘 ・ 幽門側胃切除 ・ 噴門側胃切除腹腔鏡下手術
モニター画面 腹腔鏡 胃 腹腔内 を炭酸ガスで 膨らませる お腹の中をビデオモニターに映 して、長い鉗子を用いて手術操 作を行う 実質上は開腹手術と一緒である トロッカー 鉗子腹腔鏡用鉗子
腹腔鏡下手術の特徴
適応:リンパ節転移がないと考えられる
内視鏡治療適応外の早期胃癌
手術時間は長いが、創は小さく開腹手術
に比べて術後経過がやや楽である
※ 胃癌治療ガイドライン上は標準法でない 開腹手術 腹腔鏡下手術 創の比較合併症、術後の成績は開腹手術と
同等であることが証明されている
全国的に年々症例増加傾向にある
全国の腹腔鏡
胃手術件数
腹腔鏡胃手術
の成績(論文)
当院における腹腔鏡下胃切除
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 2005 2006 2007 2008 2009 胃癌手術件数 年 腹腔鏡手術 開腹手術 2010アンビル挿入操作の改良 接合操作の改良 頭側 頭側 頭側 頭側
当院における腹腔鏡下胃全摘の工夫
胃 食道 食道 空腸術後の入院経過
離床 歩行リハビリ 外出 飲水 経口摂取 開始 分割食で段階的に 硬い内容に変更 ドレーン 抜去 抜糸 手術 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10活動面
食事面
創部
2週間目
退院
術後日数術後の問題点と対策
① つかえ感、食事摂取量の低下(入院中) 分割摂取で腹八分目まで時間をかけて食べる つかえたら無理をしない ② 術後合併症(入院中) 縫合不全、膵液ろう、吻合部狭窄、肺炎など 早期発見が重要 ③ ダンピング症候群(退院後) 食事の通過が速くなるために、食後に自律神経症状がおこる ゆっくり食べることで軽減 ※ 体重減少、やせ(半年~数年) 過度の体重減少でなければ大きな問題にならない術後の経過
がんの進行度に応じた
術後定期検査
採血(腫瘍マーカー、貧血、栄養指標) CT検査 胃内視鏡、胃透視摘出標本の病理報告
最終的な進行具合が分かる本人、家族への説明
最終進行度(病期診断) 術後化学療法の必要性・内容 退院後のフォローアップ計画 退 院術後フォローアップ
笹子三津留編:インフォームドコンセントのための図説シリーズ 胃がん (医薬ジャーナル社)p125, 2007 再発リスク 検査名 1ヵ月後 6ヵ月後 1年後 1.5年 後 2年後 2.5年 後 3年後 3.5年 後 4年後 4.5年 後 5年後 Stage Ⅰ 血液腫瘍マーカー* ● ● ● ● 胸部レントゲン ● ● ● ● 腹部エコー ● ● ● ● 腹部CT 内視鏡 ● ● ● 注腸 Stage Ⅱ 血液腫瘍マーカー* ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 胸部レントゲン ● ● ● ● ● 腹部エコー ● ● ● ● ● 腹部CT ● ● ● ● ● 内視鏡 ● ● ● 注腸 Stage Ⅲ 血液腫瘍マーカー* ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 胸部レントゲン ● ● ● ● ● 腹部エコー 腹部CT ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 内視鏡 ● ● ● 注腸 ● ● ● *CEA、CA19-9、CA125 (国立がんセンター中央病院のフォローアップ・プログラムを基に作成)手術治療
手 術
進行 早期腹腔鏡手術
開腹手術
(姑息的手術)
バイパス手術
(低侵襲)
(標準)
・ 胃全摘 ・ 幽門側胃切除 ・ 噴門側胃切除バイパス手術
胃に小腸をつなぐ手術 通過障害 ビルロートⅡ法 ルーワイ法 直接浸潤 腫瘍出血バイパス手術の意義
1) 閉塞を解除し、食事摂取を可能とする
2) 腫瘍出血のコントロール
3) 抗がん剤治療継続のため
4) 緩和医療への移行
非治癒切除と再発
手 術
進行 早期低侵襲手術
標準手術
姑息的手術
がん遺残
がん再発
胃がんの抗癌剤治療
(化学療法)
胃癌切除症例の病期(Stage)分類別の治療成績
全国胃がん登録調査報告より引用・改変 昭和62~平成2年度症例 生存率 病期Ⅰ 病期Ⅱ 病期Ⅲ 病期Ⅳ 99.4% 79.9% 49.5% 13.0% 0 1 2 3 4 5 (年) (%) 100 50 0 (手術 +) 化学療法 手術 → 化学療法胃がんの抗癌剤治療
① 補助化学療法
② 非根治症例への化学療法
根治手術のあとに見えない小さながん細胞
を退治する
癌が見える形で残っている場合の腫瘍
を退治
1)手術で切除できない場合
2)再発した場合
① 補助化学療法
再発 化学療法 目に見えないがん細胞 をやっつけて、再発を予防する 完治 根治切除 放 置 見えないがん細胞② 非根治症例に対する化学療法(1)
非切除手術
生活の質向上 延命効果
切除可能病変 通過障害の改善 病変出血の改善 腫瘍が縮小 化学療法② 非根治症例に対する化学療法(2)
再発巣 転移巣生活の質向上 延命効果
通過障害の改善 病変出血の改善 転移巣の縮小 主病変の縮小 転移巣胃がんの抗癌剤治療の特徴
内服薬と点滴治療薬がある
複数の薬剤を組み合わせることが多い
点滴治療薬では埋め込み式点滴ルートの使用
外来治療が基本
化学療法は日進月歩(新しい薬)
抗がん剤の副作用(有害事象)
①消化管への副作用(口内炎、食欲不振、下痢)
②骨髄抑制(血液細胞が減る)
③脱毛、色素沈着
• 内服薬といっても軽いとは限らない。
• 薬によって有害事象(副作用)の特徴が違う。
患者自身が薬剤治療について理解することが大切
前腕部埋め込みポート Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p Inf us e r pom p
静注抗がん剤投与の実際
② 持続ポンプ 抗がん剤 ① 点滴 抗がん剤外来通院
腫瘍内科外来
Sasako M et al.: ESMO 2010 abstract No.709PD