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( 本調査研究は 財団法人日本海事協会からの委託を受けて実施したものです )

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の導入に関する調査研究報告書

平成 22 年 6 月

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はじめに………..  第 1 章  ILO 海事労働条約の内容と条約証書に係る旗国検査・証書発給 スキーム………..  第 1 節  ILO 海事労働条約の概要………  第 2 節  ILO 海事労働条約における条約証書に係る旗国検査・証書発 給スキーム………..  第 3 節 他の条約との比較検討………..  第 2 章  ILO 海事労働条約をめぐる諸外国の動向………  第 1 節 欧州諸国………...  I.  デンマーク……….  II.  フランス………  III.  ドイツ………...  IV.  オランダ………...  V.  ノルウェー………  VI.  英国………..  第 2 節 非欧州諸国………..  I.  バハマ……….  II.  韓国..………..  第 3 節  ILO・外国船級協会………  I. ILO 事務局………...  II. BV (フランス船級協会) ………..  III. DNV (ノルウェー船級協会) ………...  IV. KR (韓国船級協会) ………..  第 3 章  ILO 海事労働条約の円滑な履行と RO の活用……….  第 1 節 旗国検査・証書発給スキーム検討の視点………  第 2 節 旗国検査・証書発給スキームのパターン……..………..  第 3 節 旗国検査・ 証書発給スキームにおける RO に対する監督…….  第 4 節 旗国検査・証書発給スキームの在り方………  おわりに………..  参考資料 1 5 5 9 12 19 19 19 23 28 35 40 56 64 64 68 72 72 74 76 78 83 83 85 90 100 105

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図 1:MLC2006 の規定構造………...  図 2:MLC2006 における旗国検査・証書発給スキーム……….  図 3:ISM コードにおける旗国検査・証書発給スキーム.………  表 1: MLC2006 批准国一覧………  表 2:海事労働証書発給に関する検査事項……….  表 3: ISM コード・ MLC2006 規律対象対照表………..  表 4:ILO 第 178 号条約・MLC2006 対照表……….  表 5:7 か国の MLC2006 動向調査結果概要………...  表 6:各機関における検査・証書発給体制………..  表 7:SOLAS 条約における認定機関に対する政府の監督.………..  表 8:EU における既存の RO 監督スキーム.………..  7 11 15 8 9 14 17 80 81 92 96

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1.調査の背景・目的 2006年2月に開催された国際労働機関(International Labour Organization: 以下「ILO」 )海事総会において、1919年以来ILOにおいて採択された 約60の条約・勧告を統合した 「2006年ILO海事労働条約 (Maritime Labour  Convention, 2006) 」 (以下「MLC2006」)が採択された。この条約は船員の 労働環境の向上に資するため、雇用条件、居住設備、医療・福祉、社会保障等 の国際的基準を定めている。 また、 この条約では、 旗国 (又は認定機関 (Recognized  Organizations:以下「RO」) )による自国船舶への検査及び証書の発給、PSC の仕組み(スキーム)が導入されている。 現在、日本国政府はMLC2006の批准に向け、国内法制化に関する勉強 会を実施しており、2011年中の批准が見込まれている。 本調査では、MLC2006を円滑に履行するためにはどのような形で認定 機関を活用すべきか、という論点について、今後の議論に資することを目的と して調査を行った。 2.調査の実施体制等 本調査のために、以下の委員及び事務局から成る調査研究委員会を設け、そ の指導及び助言の下、文献調査及び現地調査等を行った。 【委員名簿】 (敬称略・順不同) 委員長 委 員 〃 〃 〃 〃 〃 事務局 野川 忍 根本 到 門野 英二 小山 智之 平尾 真二 吉田 秀一郎 赤塚 宏一 春成 誠 齋藤 芳夫 大嶋 孝友 奈良 孝 野村 摂雄 明治大学法科大学院教授 大阪市立大学大学院法学研究科教授 川崎汽船(株)執行役員 海事人材グループグループ長 日本郵船(株)人事グループグループ長代理  (株)商船三井海上安全部船員グループマネージャー  (社)日本船主協会海務部労政担当リーダー  (社)日本船長協会副会長  (財)日本海事センター 理事長 常務理事 企画研究部長 〃 情報課長 〃 特別研究員

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【調査研究委員会の開催状況】 (場所はいずれも当センター会議室) 第1回 2010年 1 月25日14:00~16:00 主たる議題 調査実施方案の検討・合意、他の条約における検査・ 証書発給スキーム 第2回 2010年4月21日13:00~15:00 主たる議題  MLC2006  をめぐる諸外国の動向、諸外国における既 存の RO の状況 第3回 2010年6月23日13:00~15:00 主たる議題  MLC2006 をめぐる諸外国の動向、MLC2006 対象船舶 への影響 【現地調査の実施日時等】 国名・日時 訪問先 デンマーク  2010 年 3 月 18 日  14:00­16:00  Danish Maritime Authority  ­ Mr. Jorgen Loje (Head of Division)  ­ Mr. Jan Gabrielson (Head of Division)  ­ Mr. Martin John (Marine Surveyor)  フランス  2010 年 5 月 17 日  14:30­16:00  Ministry of Ecology, Energy, Sustainable Development and  the  Sea,  General  Directorate  for  Infrastructure,  Transport  and the Sea, Directorate for Maritime Affairs 

­  Mr.  Alain  Moussat  (Director  of  Labour,  Head  of  the  Maritime Labour Office) 

­  Mr.  Yann  Becouarn  (Deputy  Sub­Director  for  Seafarers  and Maritime Education)  ドイツ  2010 年 3 月 23 日  10:00­12:00  Federal Ministry of Transport, Building and Urban Affairs  ­ Dr. Heiko Schafer MJI  BG Verkehr, Ship Safety Division  ­ Capt. Tilo Berger  欧州諸国 オランダ  2010 年 5 月 17 日  11:30­13:00 

Ministerie  van  Verkeer  en  Waterstaat  Transport  en  Luchtvaart 

­  Mr.  Wouter  Pietersma  (Senior  Policy  Advisor,  Sea  Ports  Division and Sea Shipping) 

­  Mr.  Rj.,  de  Brujin  (Senior  Beleidsmedewerker,  Programma Zeevaart)

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韓国  2010 年 5 月 10 日  14:00­16:00  国土海洋部物流港室海運政策官室  ­ Mr. Lee, Hi Young (Director)  ­ Mr. Kim, Dong Seo (Deputy Director)  ­ Mr. Kim, Sok Hun (Deputy Director)  非欧州諸国 バハマ  2010 年 3 月 30 日  10:00­11:00  Bahamas Maritime Authority  ­ Capt. Douglas Bell (Deputy Director)  ­ Dr. Phillip Belcher (Technical and Compliance Officer)  ILO 事務局  2010 年 5 月 10 日  16:00­17:30  ILO, Sectoral Activities Department  ­ Mr. Dani Appave (Senior Maritime Specialist)  ノルウェー  2010 年 5 月 12 日  10:00­12:00  Det Norske Veritas (DNV) 

­  Capt.  Karl  R  Johansen  (Project  Manager,  Competence  Operation  &  Management,  Maritime  Technology  and  Production Centre)  フランス  2010 年 5 月 17 日  17:45­18:15  Bureau Veritas (BV)  ­ Mr. Serdar Isik (Manager, Maritime Labour Department)  ILO・外国船級協会 韓国  2010 年 5 月 12 日  13:00­15:00  Korean Register of Shipping (KR) 

­  Mr.  Jeon,  Jeong  Chong(General  Manager,  Statutory  System Certification Team)  ­ Mr. Choi, Jin Hong(Surveyor/Auditor, Statutory System  Certification Team)  ノルウェー  2010 年 3 月 16 日  10:00­12:00  同 17 日  10:00­12:00  Norwegian Maritime Directorate  ­ Mr. Haakon Strhaug (Senior Adviser)  ­ Ms. Unn Caroline Lem (Senior Legal Adviser)  Ministry of Trade and Industry  ­ Mr. Terje Hernes Pettersen (Senior Adviser)  英国  2010 年 3 月 29 日  14:00­15:00  Maritime and Coastguard Agency (MCA)  ­ Mr. Neil Atkinson (Inspector)  ­ Ms. Julie Carlton (Medical Administration Manager)

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American Bureau of Shipping (ABS)  AZS­System (AZS) 

Bureau Veritas (BV) 

Consultancy4 LLP (C4LLP) 

China Classification Society (CCS) 

China  Corporation  Register  of  Shipping  (CCRS)  Det Norske Veritas (DNV)  Ferriby Marine (FM)  Germanischer Lloyd (GL)  Hellenic Register of Shipping (HRS)  Isthmus Bureau of Shipping (IBS)  Intermaritime Certification Services (ICS)  International  Naval  Surveys  Bureau  (INSB) 

Indian Register of Shipping (IRS)  International Register of Shipping (IS)  International Yacht Bureau (IYB) 

Korean Register of Shipping (KR; KRS)  Korea  Ship  Safety  Technology  Authority  (KST) 

Lloyd’s Register of Shipping (LR)  Martinez & Co. (M) 

Marine Bureau (MB) 

Macosnar Corporation (MC) 

Marconi  International  Marine  Company  (MIMC) 

National Shipping Adjuster (NSA)  Nippon Kaiji Kyokai (NK) 

Overseas  Marine  Certification  Services  (OMCS) 

Panama Bureau of Shipping (PBS) 

Panama  Maritime  Documentation  Services  (PMDS) 

Panama  Maritime  Quality  Services  (PMQS) 

Panama  Marine  Survey  and  Certification  Services Panama Marine (PMSCS) 

Phoenix  Management  Services  Group 

Panama Register Corporation (PRC)  Polish Register of Shipping (PRS)  Panama Shipping Registrar (PSR)  Registro Italiano Navale (RINA)  Registro International Naval, SA  (RINAVE) 

Russian  Maritime  Register  of  Shipping  (RS; RMRS)  Ships Classification Malaysia (SCM)  St. Education & Training PTE (SETP)  STET Maritime PTE (SMP)  Star Maritime Security (SMS)  Universal Shipping Bureau (USB)  Universe Security Group (USG)

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条約証書に係る旗国検査・証書発給スキーム

第1節  ILO 海事労働条約の概要

(1)条約の背景 国際労働機関(International Labour Organization: ILO)では、1919 年の発足以来、  68  にものぼる海事労働に関する条約・勧告が採択されてきたが、その多くは採択から 相当の年月を経て、現在の社会状況や技術進展に十分対応できておらず、さらに、こ れらの中には同じ趣旨の規定を含む条約が複数存在するなど、条約体系が非常に複 雑なものとなっていった。そのため、それらの批准状況は全体として芳しくなく、結果と して実効性が伴っていないという問題点も指摘されていた。 こうした状況に対処する必要から、海事労働に関する条約・勧告を最新の基準ととも に整理・統合し、2006 年 2 月 23 日の ILO 第 94 回総会において採択されるに至った のが、「2006  年の  ILO  海事労働条約(Maritime  Labour  Convention,  2006)」(以下、 「MLC2006」)である。

(2)条約の目的 

MLC2006 は、国際海事機関(International  Maritime  Organization:  IMO)における 「1974 年の海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS 条約)及び「1974 年 の海上における人命の安全のための国際条約に関する 1988 年の議定書」(SOLAS88  議定書)、「1978  年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条 約」(STCW  条約)、「1973  年の船舶による汚染の防止のための国際条約」及び「1973  年 の 船 舶 に よ る 汚 染 の 防 止 の た め の 国 際 条 約 に 関 す る  78  年 議 定 書 」 (MARPOL73/78  条約)に続く、国際海事規則体系の「第  4  の柱」として、海事労働に 関するグローバル・スタンダードを確立することを大きな目的としている。 具体的には、 海事労働に関する雇用条件、居住設備、医療・福祉・社会保障等の国際的基準を確 立することで、船員の労働環境の向上を図るとともに、こうした国際的基準の確立を通 じて、国際海運における「公正かつ適正な競争の場(Level Playing Field)」が確保され ることをも目的とするものである。 (3)条約の内容

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いる。 第一に、条約の適用対象・範囲について、各国の裁量を認めている。すなわち、  MLC2006  は「船員」を「能力のいかんを問わず、この条約が適用される船舶において 雇用され若しくは従事し、又は労働する者」と広く定義し(第  2  条  1  項(f))、また、「船 舶」を「船舶のうち、内陸水域又は外洋の影響から保護されている水域若しくは港湾規 則の適用水域若しくはこれらの水域に近接する水域のみを航行する船舶以外のもの」 と定義し(同条同項(i))、漁船、伝統的構造船舶、軍艦を除き、通常商業活動に従事 するすべての船舶(公有のものであるか私有のものであるかを問わない。)を適用対 象・範囲とすると同時に(同条  4  項)、これら船員および船舶の適用対象・範囲につい て疑義がある場合には、各加盟国政府は労使との協議によりこれを決定することが可 能である(同条 3 項及び 5 項)。 条約が定める規範(コード)の適用については、国際航海に従事しない総トン数 200  トン未満の船舶に限り、これを国内法、労使協定、またはその他の措置により、加盟国 政府が個別に適用しないことを決定することもできる(同条 6 項)。 第二に、各加盟国が遵守すべき条約規定の構造であるが、国際的に法的な効力を 有している条約と、そうし た拘束力を持たない 勧告を統合したという事情も あり、  MLC2006 は強制規定と任意規定の二層構造を採用している(第 6 条)。具体的には、 規則及び規範 A 部(コード・パート A)が強制規定であり、規範 B 部(コード・パート B) が任意規定である。この点、規範 A 部の国内実施にあたっては、加盟国が規範 A 部を 条文通り実施できない場合でも、国内法の規定が当該条文の一般的目標の達成に貢 献し、かつ当該条文に効果を及ぼすと加盟国が判断する場合には、当該条文と国内 法の規則は実質的に同等であるとして、規範  A  部は実施されているものとして扱われ る(第 6 条 3 項及び 4 項)。この規定は「実質的同等性原則」と呼ばれるもので、加盟国 が MLC2006 の国内実施をより柔軟に行うことができる条約規定となっている。

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【図 1:MLC2006 の規定構造】 第三に、実効性を高めるため、実施する枠組みに次のような工夫がなされている。ま ず、加盟国は自国を旗国とする船舶について、船員の労働条件に関する検査及び証 明のための効果的な制度を設けることが義務づけられている(第 5.1.1 規則 2 項)。この 効果的な制度を設けるに当たっては、加盟国は適当な場合、能力を有し、かつ、独立 していると認める公の機関又は他の団体(認定機関:RO)に対し、検査、証書発給、又 はその双方を行うことを認めることができる。ただし、いかなる場合にも、自国を旗国と する船舶における船員の労働条件及び生活条件に関する検査及び証明について引 き続き十分な責任を有する(同規則 3 項)。これに加え、旗国は、国際航海に従事する 総トン数 500 トン以上の船舶について検査を実施し、条約適合が認められれば海事労 働証書(Maritime Labour Certificate)を発給する責任を有し(第 5.1.3 規則)、そして旗 国以外の加盟国の港に寄港する船舶に対しては、当該寄港国が検査(ポート・ステー ト・コントロール:PSC)を実施する権利を有する(第 5.2 規則)。 さらに、安全性や労働条件などについて定められた国際基準よりも低い水準で運航 される、いわゆる「サブスタンダード船」を排除するため、非締約国の船舶に対しても条 約 に 定 め ら れ た 国 際 基 準 を 適 用 す る 「 一 層 有 利 な 取 扱 い を し ない ( “No  More  Favorable Treatment”)原則」が規定されている(第 5 条 7 項)。 なお、これら旗国検査と寄港国検査については、先に示した「実質的同等性原則」 が適用されないため(第 5 章 2 項)、加盟国は条文に依拠した制度を構築しなければ ならない。 第四に、条約の規律対象は、主に加盟国を規律する事項を除き、以下の通りである。 第 1 章「船内で労働する船員の最小限の要件」(最低年齢、健康証明書、訓練及び資 Article(総則)  Regulation(規則)  Standard(基準) (規範 A 部)  Guideline(ガイドライン) (規範 B 部) 通常改正 簡易改正 強制規定 任意規定

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時間及び休息時間、休暇、送還、船員への補償、配乗水準、職業経歴・技能開発及 び雇用機会)、第  3  章「居住設備、娯楽設備、食料及び供食」(居住設備及び娯楽設 備、食料及び供食)、第  4  章「健康の保護、医療、福祉及び社会保障による保護」(船 内・陸上医療、船舶所有者の責任、健康及び安全の保護並びに災害の防止、陸上の 福祉施設の利用、社会保障)、第 5 章「遵守及び執行」(船内苦情処理手続、海難、陸 上苦情処理手続)。このほか、船員の社会保護に関しては、労働供給国の責任として 規定されている(第 5.3 規則)。 (4)条約の批准状況  MLC2006 の発効要件は世界の船腹量の 33%を有する 30 か国以上の批准後 12 ヶ 月で効力を生じると規定されている(第 8 条)。2010 年 6 月 21 日時点での批准国は、 バハマ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブルガリア、カナダ、クロアチア、リベリア、マーシ ャル諸島、ノルウェー、パナマ、スペインの 10 か国である(表 1 参照)。 発効要件の一つである船腹量については、この  10  か国で既に要件を充足しており、 残りは「30 か国」要件の達成のみとなっている。この点、欧州連合理事会(The  Council  of the European Union)が 2010 年 12 月末までの MLC2006 批准を EU 加盟国に促す 理事会決定(2007/431/EC)を行っていることから、EU27 か国が 2010 年度中に批准し た場合には「30 か国」要件も充たされるため、2011 年度中の MLC2006 発効の可能性 が高いと見込まれている。 【表 1:MLC2006 批准国一覧】 国名 批准日 バハマ  2008 年 2 月 11 日 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ  2010 年 1 月 18 日 ブルガリア  2010 年 4 月 12 日 カナダ  2010 年 6 月 15 日 クロアチア  2010 年 2 月 12 日 リベリア  2006 年 6 月 7 日 マーシャル諸島  2007 年 9 月 25 日 ノルウェー  2009 年 2 月 10 日 パナマ  2009 年 2 月 6 日 スペイン  2010 年 2 月 4 日 (ILO ホームページより:http://www.ilo.org/ilolex/cgi­lex/ratifce.pl?C186)

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証書発給スキーム

(1)条約証書に係る旗国検査・証書発給スキーム  MLC2006 が規定する旗国検査・証書発給スキームは以下の通りである(図 2 参照)。 まず、旗国は自国籍船について、内外航を問わず、船内の船員の労働条件・生活条 件の  MLC2006  及び法令等への適合性を確保する責任を有し(第  5  条  1  項及び第  5.1.1  規則)、定期的検査、監視その他の管理措置の効果的かつ調整された制度を通 じて、自国を旗国とする船舶が国内法令において実施される MLC2006 要件を遵守し ていることを確認する(同条 2 項及び第 5.1.4 規則)。具体的には、加盟国は自国籍船 における船員の状況に関する検査制度を保持し、その責任を果たすために資格を有 する十分な数の検査員を認定する(第  5.1.4  基準)。この検査官の任務実施のために は、能力確保、権限付与、独立性保持のための適当な措置が執られなければならず、 また、検査は適当な場合には 3 年を超えない間隔で実施される(同基準)。 次に、旗国は  MLC2006  が対象とする自国籍船について、海事労働証書及び海事 労働適合申告書(Declaration of Maritime Labour Compliance: DMLC)を備えることを 確保する義務を負う(第 5 条 3 項)。具体的には、国際航海に従事する総トン数 500 ト ン以上の自国籍船に対し、MLC2006  を実施する国内法令等への適合性に係る検査 を行った上で、海事労働証書を発給する(第 5.1.3 基準 6 項)。要求される検査事項は 下記表 2 の 14 項目である。 【表 2:海事労働証書発給に関する検査事項】 検査項目 該当規定 1.最低年齢 2.健康証明書 3.船員の資格 4.船員の雇用契約 5.職業紹介機関の利用 6.労働時間又は休息時間 7.船員の配乗水準 8.居住設備 9.船内の娯楽設備 10.食糧及び供食 第 1.1 規則 第 1.2 規則 第 1.3 規則 第 2.1 規則 第 1.4 規則 第 2.3 規則 第 2.7 規則 第 3.1 規則 第 3.1 規則 第 3.2 規則

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12.船内医療 13.船内苦情処理手続 14.賃金支払 第 4.1 規則 第 5.1.5 規則 第 2.2 規則 この海事労働証書は 5 年を超えない期間で発給され、その有効性の維持のため、3  年を超えない間隔で中間検査が実施される。そして、海事労働証書は更新が可能で あり、更新検査が証書の有効期間の満了の日前  3  ヶ月以内に完了した場合には、新 たな海事労働証書は、当該検査の完了の日から 5 年を超えない日まで期間効力を有 すると規定されている(第 5.1.3 規則)。 また、この海事労働証書には  2  部からなる  DMLC  を添付することが求められる(第  5.1.3 基準 10 項)。DMLC 第 1 部は権限のある機関により作成されるもので、MLC2006  が関連する国内法規及び国内的要件を明示する(同項(a))。第  2  部は船舶所有者に より作成され、検査から次の検査までの間において国内的要件を継続的に遵守するこ とを確保するために執られる措置を明示する必要がある(同項(b))。この第 2 部の様式 については、非強制規範である規範  B  において、海事関係の関連する他の文書(例 えば国際安全管理(ISM)コードによって要求される文書)を参照することができるとさ れている(第 5.1.3 ガイドライン 2 項)。 権限のある機関又は RO は、この第 2 部を確認して DMLC を発給する(5.1.3 基準  10  項(b))。また、海事労働証書の発給に関する船舶に条約違反があり、これに対して 是正措置がとられない場合、その違反の重大性又は違反頻度を考慮して、権限のあ る機関又は  RO  は海事労働証書を取り消すものと規定される(同基準  16  項及び  17  項)。

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【図 2:MLC2006 における旗国検査・証書発給スキーム】 (2)認定機関の権限等 先に述べたように、加盟国は、適当な場合には、能力を有し、かつ、独立していると 認める  RO  に対し、検査、証書発給、又はその双方を行うことを認めることができる(第  5.1.1 規則 3 項)。この RO の“能力及び独立性”に係る要件としては、MLC2006 に関 する必要な専門知識、船舶運航の適当な知識、及び MLC2006・国内法令・MLC2006  に関連する国際文書についての必要な知識を保持し、さらに、RO  に属する人材の専 門知識の維持・更新ができることを RO に求めている(第 5.1.2 基準 1 項)。他方、加盟 国には、RO が実施する業務の妥当性を確保するための制度の確立、RO との連絡手 続及びその監督手続の確立が求められる(同基準 3 項及び 4 項)。また、旗国検査に 従事する  RO  職員に対し、その職務に従事するための資格を有することを要求し、検 査業務に従事するための必要な法的権限を RO に付与するものとされる(第 5.1.4 基準  2 項)。  MLC2006 上の RO の権限は、以下の通りである。検査権限については、少なくとも  RO が検査において特定した欠陥の是正を要求し、この点に関して寄港国の要請によ り検査を実施する権限が与えられる(同基準  2  項)。RO  職員を含む、権限のある機関 が任命する検査官には、(a)  自国籍船への乗船、(b)  条約適合を確認するための調 査、検査又は取り調べ、(c)  欠陥是正要求並びに関連する船舶の出港禁止、以上の 権限が与えられる(同基準 7 項)。この点、旗国検査において示された苦情に対する調 査(同基準 5 項)、又は MLC2006 遵守のための国内要件の執行については、RO で 旗国 (または RO)  MLC2006 対象船舶 寄港国 検査・海事労働証書発給 適合申告書(DMLC)  PSC 実施  DMLC 第 1 部の作成(権限のある機関) 「国内的な要件の継続的な遵守を 確保するために船舶所有者が取る措置」 の記載  DMLC2 部の作成(船舶所有者) 添付 国内要件の記載

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検査に関するガイドライン』第 1 章第 58 パラグラフ)。海事労働証書については、これ を発給し、又は更新する権限を有する(第  5.1.3  基準  6  項)とともに、関連船舶に条約 違反があり、これに対して是正措置がとられない場合、その違反の重大性又は違反頻 度を考慮して、海事労働証書を取り消す権限も条約上認められる(同基準  16  項及び  17 項)。RO を利用する加盟国は、RO の一覧表を ILO 事務局に提供し、そこに RO に 与えられた任務権限を明記する(第 5.1.2 基準 4 項)。

第3節 他の条約との比較検討

(1)MARPOL73/78 附属書 I  「1973 年の船舶による汚染の防止のための国際条約」及び「1973 年の船舶による 汚染の防止のための国際条約に関する 1978 年の議定書」(MARPOL73/78)は、船舶 からの油その他の有害物質の排出により海洋環境が汚染されることを防止する目的で 採択された条約である。その附属書 I は、油による汚染の防止のための諸規則を規定 したものであり、国際航海に従事する総トン数  150  トン以上の油タンカー及び油タンカ ー以外の総トン数 400 トン以上の船舶を適用対象とする。検査(survey)の対象項目は、 対象船舶の構造、設備、装置、取付け物、配置及び材料であり、3  年を超えない間隔 で実施される中間検査においては、設備並びに関連するポンプ及び管系(油排出関 し制御装置、原油洗浄装置、油水分離器及び油除去装置を含む。)がこの附属書に 定める諸要件に完全に適合し、かつ、良好な作動状態にあることを確保することを検 査する。 条約上の検査を行う主体は、主管庁の職員、主管庁が指名する検査員又は主管庁 の認定する団体(RO)である(第 2 章第 6 規則 3.1)。検査によって条約適合が確認さ れた後、主管庁又は主管庁から権限を与えられた者若しくは団体(RO)は国際油汚染 防止証書を発給する(第 2 章第 7 規則 2 及び第 8 規則 1)。証書の有効期間は 5 年で ある(第 2 章第 10 規則 1)。 (2)SOLAS 条約附属書第 I 章 「1974 年の海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS 条約)は、航海の安 全、特に人命の安全の確保を目的に、船舶の構造、設備等の基準を定めた条約であ る。同条約附属書第 I 章は、海上における人命の安全を増進するために設けられたも ので、国際航海に従事する旅客船及び総トン数 500 トン以上の貨物船(無線設備につ いては総トン数 300 トン以上)を適用対象とする。検査(inspection  and  survey)の対象 項目は、船体、ボイラー機関、主機関、補助機関、無線設備、救命設備、防火・消防

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設備、航行設備など多岐にわたる。検査を行う主体は、主管庁の職員、主管庁が指名 する検査員又は主管庁の認定する団体(RO)である(第Ⅰ章 B 部第 6 規則(a))。検査 によって条約適合が確認された後、主管庁又は主管庁から権限を与えられた者若しく は団体(RO)は、旅客船安全証書(Passenger  Ship  Safety  Certificate)、貨物船安全構 造証書(Cargo Ship Safety Construction Certificate)、貨物船安全設備証書(Cargo Ship  Safety  Equipment  Certificate) 、 貨 物 船 安 全 無 線 証 書 (Cargo  Ship  Safety  Radio  Certificate)及び免除証書(Exemption Certificate)を発給する。 証書の有効期間は、旅客船については 12 ヶ月、貨物船については 5 年と規定され ている(第 I 章 B 部第 14 規則)。 (3)SOLAS 条約附属書第 IX 章-国際安全管理(ISM)コード  SOLAS 条約附属書第 IX 章の ISM コードは、最近の海難事故の多くが人的要因(ヒ ューマン・ファクター)により生じているとの認識から、海難防止のためには船舶(ハー ド要件)だけではなく陸上の管理部門も含めた全社的な取組が必要と判断し、船舶・ 陸上を含めた全社的な「安全管理システム」(ソフト要件)を構築し、これを確実に実施 することを義務付けるために設けられたものである。その目的は、海上における安全、 傷害又は人命の損失並びに環境、特に海洋環境及び財産の損害回避を確実にする こ と ( Code.1.2.1 ) 及 び 海 上 部 門 と 陸 上 部 門 を 包 括 す る 安 全 管 理 体 制 の 構 築 (Code.1.2.2)であり、そのため、検証(verification)対象も国際航海に従事する旅客船 及び総トン数 500 トン以上の貨物船に加え、その船舶の運航を管理する会社にも検証 を実施する(第 IX 章第 3 規則 1)。ISM コードにおける会社とは、「船舶の所有者又は 船舶の管理者若しくは裸傭船者等他の団体若しくは人であって、船舶の所有者から 船舶の運航の責任を引き受け、かつ、当該責任を引き受けるに際し、ISM  コードによ って課されるすべての義務及び責任を引き継ぐことに同意した者」(第 IX 章第 1 規則  2)と定義される。会社は、船舶運航時の安全な業務体制及び安全な作業環境の確保 (Code.1.2.2.1)、予防措置の確立(Code.1.2.2.2)、陸上及び船上の要員の安全管理技 術の継続的な改善(Code.1.2.2.3)に留意し、安全管理システム(SMS)の構築に当た ることが求められる。  ISM  コードの規律対象は、「経営資源及び要員配置」(Code.6;実務上は、年齢制 限などの任用基準、船員免状・資格、身体適正(健康証明書)、訓練、配乗など)、「船 内業務計画の策定」(Code.7;実務上は、人員配置、当直体制、航海日誌など)、「緊 急事態への準備」(Code.8;実務上は船上医療体制など)、「船舶及び設備の保守」 (Code.10)、「文書管理」(Code.11)、「会社による検証、見直し及び評価」(Code.12)等 である。この規律対象の一部は、事実上、MLC2006  がカバーするところと重複する (表 3 参照)。そのため、MLC2006 における船上検査を ISM コードにおける船上監査

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【表 3:ISM コード・MLC2006 規律対象対照表】  ISM コード  MLC2006  規 律 対 象 ・経営資源及び要員配置 (年齢制限などの任用基準、船員 免状・資格、身体適正(健康証明 書)、訓練、配乗) ・船内業務計画の策定 (人員配置、当直体制、航海日誌) ・緊急事態への準備 (船上医療体制) ・船舶及び設備の保守 ・文書管理 ・会社による検証、見直し及び評価 ※括弧内はコード規定、その解釈及 び 国 内法 で担 保さ れてい る 具 体 例。(国交省検査測度課監修『ISM  コードの解説と検査の実施』(成山 堂、2008)参照。) ・最低年齢 ・健康証明書 ・訓練・資格 ・募集職業紹介 ・雇用契約 ・賃金 ・労働時間・休息時間 ・送還 ・船舶滅失沈没時の船員補償 ・配乗水準 ・居住設備・娯楽設備 ・食料・供食 ・健康・安全・災害防止 ・陸上・船上医療 ・社会保障 ・苦情処理手続 ※実線下線部の項目は、ISM  コードと 重 複する と考 え られる も の。ちなみ に、ノルウェーは、実線下線部に加 え、破線下線部の項目も重複すると 認識している。 ちなみに、船社は実際の  SMS  を日常の船舶運航・管理に関する全ての項目に対 応できるシステムとして構築・更新してきており、既存の SMS によって MLC2006 の殆 どがカバーされていることから、MLC2006 に備えて若干の修正措置で対応している船 社のケースも見受けられる。他方、現時点での社内体制と、MLC2006 規律対象との間 に“ギャップ”が存在している場合、船級協会の力のもとに、MLC2006 規律対象も包摂 する SMS 又は社内システムの構築に向けて対応している船主は少なくない。  ISM コードにおける旗国検査・証書発給スキームにおいては(図 3 参照)、まず、会 社は、ISM  コードの要件を満たすような  SMS  を確立しなければならない。旗国による 検証に合格すれば、適合書類(Document  of  Compliance;  DOC)の発給を受ける (Code.13.2)。次に、船舶は、DOC  を所持する会社によって運航されなければならな

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い(Code.13.1)。そして、旗国による会社及び船舶への検証に合格すれば安全管理証 書(Safety Management Certificate; SMC)が発給される(Code.13.7)。 【図 3:ISM コードにおける旗国検査・証書発給スキーム】 そして、DOC 及び SMC の有効期間は 5 年であり、検証及び DOC 並びに SMC の 発給主体は、主管庁及び主管庁の認定を受けた団体(RO)である(第 IX 章第 4 規則 及び第  6  規則)。そして  3  年を超えない期間に中間検証が行われなければならない (Code.13.8)

(4)SOLAS 条約附属書第 XI­2 章-船舶及び港湾施設の保安の国際(ISPS)コード  SOLAS 条約附属書第 XI­2 章の ISPS コードは、2001 年 9 月 11 日の米国同時多発 テロ事件を契機に、海事保安の強化の必要性が認識されるようになったことから、海事 運送セクターにおいて保安に脅威を与える行動を検知し阻止するために、船舶と港湾 施設と協調する枠組みを形成することを目的とするものである。ISPS  コードでは、政 府・主管庁並びに海運及び港湾業界間の協力を含む国際的な枠組みを設立し、国 際貿易に使用される船舶及び港湾施設に影響を与える保安事件に対する予防措置 をとること、海事保安を確実にするために国内・国際レベルにおける政府・主管庁並び に海運及び港湾業界それぞれの役割及び責任を確立すること、保安関連情報の早 期かつ効率的な収集及び交換を確実にすること、保安レベルの変更に対応するため の手続きを保持するよう、保安評価のための方法を提供すること、十分かつ均整のと れた保安措置が適切となるための信頼性を確実にすることなどが規定されている(Part  旗国 船舶 (DOC, SMC 保持) 寄港国 会社 船舶検証・安全管理証書(SMC) 会社検証・適合証書(DOC)発給  PSC 実施 安全管理システム(SMS)

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ISPS  コードの適用対象は、国際航海に従事する旅客船及び総トン数  500  トン以上 の貨物船と、上記船舶に供する港湾施設とされる(Part  A/Code.3)。船舶の保安体制 及び全ての関連保安設備の ISPS コードとの適合検証(verification)は、主管庁又は認 定された保安団体(RSO)が実施する(Part  A/Code.4.3 及び 19.1.2)。この検証に基づ き発給される船舶保安証書(International  Ship  Security  Certificate)についても、主管 庁又は認定された保安団体(RSO)により発給がなされる(Part  A/Code.19.2.1  及び  19.2.2)。船舶保安証書の有効期限は  5  年であり、3  年を超えない期間に中間検証が 行われなければならない(Part A/Code.19.1.3) (5)ILO 諸条約  MLC2006 は、海事労働に関する 68 もの条約・勧告を整理・統合した条約であるため、 その規律対象のほとんどが既存の ILO 諸条約を土台としている。たとえば、MLC2006  第 2.3 規則の「労働時間及び休息時間」は「船員の労働時間及び船舶の定員条約(第  180  号条約)」と、第  3.1  規則の「居住設備」は「船員の設備(改正)条約(第  92  号条 約)」及び「船員設備(補足規定)条約(第 133 号条約)」に基礎を置いている。 また、規律対象のみならず、条約の履行に関しても、既存の  ILO  諸条約にならって いる(表 4 参照)。例えば、MLC2006 で規定された旗国検査制度と RO 利用制度は、 証書発給に関する事項を除き、「労働監督(船員)条約(第  178  号条約)」において既 に導入されているのである。

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【表 4:ILO 第 178 号条約・MLC2006 対照表】  ILO 第 178 号条約(「船員の労働条件及び生活条件の監督に関する条約」) ・1996 年採択、2000 年発効。15 か国が批准。日本は未批准。 ・海上の労働監督に関する初の国際条約である。 第 178 号条約  MLC2006  対象 「 船 員 」 と は、 資 格 の い か ん を 問 わ ず、この条約が適用される海上航行 船舶において雇用される者をいう。 (第 1 条(d)) 「 船 員」 と は 、能 力 のい かん を 問 わ ず、この条約が適用される船舶にお いて雇用され若しくは従事し、又は労 働する者をいう。(第 2 条 1 項(f)) 締約国の義務 この条約の適用を受ける加盟国は、 船員の労働条件及び生活条件の監 督の制度を保持する。(第 2 条 1 項) 加盟国は、自国を旗国とする船舶に おける船員の労働条件及び生活条 件がこの条約の基準を満たすこと及 び引き続き満たすことを確保する第  5.1.3 規則及び第 5.1.4 規則の規定に 従い、船員の労働条件に関する検査 及び証明のための効果的な制度を設 ける。(第 5.1.1 規則 2 項) 検査 加盟国は、船内における船員の労働 条件及び生活条件が国内法に適合 していることを確認するため、自国の 領域において登録された船舶が  3 年 を超えない間隔で及び、実行可能な 場合には毎年、監督を受けることを確 保する。(第 3 条 1 項) 検査は、適当な場合には、第 5.1.3 基 準(規範  A)に規定する間隔で実施さ れる。この間隔は、いかなる場合にも  3 年を超えてはならない。(第 5.1.4 基 準(規範 A)4 項) 規 律 対 象 ・船内における生活区域及び労働区 域の維持及び清潔さの基準 ・最低年齢 ・雇入契約 ・食料及び司厨 ・乗組員の施設 ・募集 ・配乗 ・資格 ・労働時間 ・健康検査 ・最低年齢 ・健康証明書 ・訓練・資格 ・募集職業紹介 ・雇用契約 ・賃金 ・労働時間・休息時間 ・送還 ・船舶滅失沈没時の船員補償 ・配乗水準 ・居住設備・娯楽設備

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・医療 ・疾病及び負傷に対する給付 ・社会福祉及びこれに関連する事項 ・送還 ・国内法令に従った雇用条件 ・国際労働機関の  1948  年の結社の 自由及び団結権保護条約に規定 する結社の自由等に関する条件 (第 1 条(e)) ・健康・安全・災害防止 ・陸上・船上医療 ・社会保障 ・苦情処理手続 (第 1 章~第 5 章) 認 定 機 関 の 利 用 中 央調 整機 関 は、い かなる 場 合 に も、船員の労働条件及び生活条件の 監督について責任を負う。中央調整 機関は、当該機関が能力を有しかつ 独立していると認める公的機関又は 他の団体に対し当該機関に代わって 船員の労働条件及び生活条件の監 督を行うことを認めることが出来る。 (第 2 条 3 項) 船員の労働条件に関する検査及び 証明のための効果的な制度を設ける に当たり、加盟国は、適当な場合に は、能力を有し、かつ、独立している と認める公の機関又は他の団体(他 の加盟国が同意した場合には、その 加盟国のものを含む。)に対し検査を 行うこと若しくは証明書を発給すること 又はその双方を行うことを認めること ができる。いかなる場合にも、当該加 盟国は、自国を旗国とする船舶にお ける船員の労働条件及び生活条件 に関する検査及び証明について引き 続き十分な責任を有する。(第  5.1.1  規則 3 項)

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第 1 節 欧州諸国 

I.  デンマーク

訪問先  Danish Maritime Authority(デンマーク海事局)  ­ Mr. Jorgen Loje (Head of Division)  ­ Mr. Jan Gabrielson (Head of Division)  ­ Mr. Martin John (Marine Surveyor)  訪問日  2010 年 3 月 18 日 デンマーク海事局より聴取した内容は以下のとおり。 1.MLC2006 の批准について (1)批准時期 ・同国は 2010 年 12 月末を目標としている。 (2)国内担保法

・ The Merchant Shipping (Masters’ and Seamen’s) Act 及び The Act of Safety at Sea  が主たる担保法であり、その実施規則で詳細を定める予定である。 ・両法について、MLC2006 実施のために必要な修正法案を国会に上程してい る。 当該法案が国会を通り、 詳細な規則を策定すれば、 批准の運びとなる。 【追記】 ・当該法案は、4 月末に国会を通過した。 2.MLC2006 のための RO について (1)導入の見込み ・検査及び証書発給について導入の予定。 ・但し、客船を除く。しかし、三国間航路に従事している客船については RO  に任せる。

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(2)資格要件・手続き ・資格要件としては、 EU の承認を受けた船級協会*であることが挙げられる。 ・従来、船級協会は、当局と書面(”Danish Class Agreement”)で業務等につ いて合意の上、RO となる。 【EU 承認船級協会】  *EU の承認を受けた船級協会  EU は、船舶の検査及び検査機関に関する基準等を策定し(Directive 94/57/EC,  Regulation  (EC)  No  391/2009, Directive  2009/15/EC)、それを満たすものとして以 下の 13 の船級協会を承認している(2007/C/ 135/04) 。EU 加盟国は、EU に承認 された船級協会のみを RO として利用することとされている。また、EU 加盟国 は、未承認の組織について EU に承認を求めることもできる(Article  3  of  Reg.  (EC) No 391/2009)。  American Bureau of Shipping (ABS)  Bureau Veritas (BV)  China Classification Society (CCS)  Det Norske Veritas (DNV)  Germanischer Lloyd (GL)  Korean Register of Shipping (KR)  Lloyd’s Register of Shipping (LR)  Nippon Kaiji Kyokai (NK)  Registro Italiano Navale (RINA)  Russian Maritime Register of Shipping (RS)  Hellenic Register of Shipping (HRS)  Registro International Naval, SA (RINAVE)  Polish Register of Shipping (PRS)  (3)権限・義務 ・RO は、検査及び証書発給を行う権限が与えられる。 ・RO は DMA との合意事項及び IMO 決議 A.739  (18)に従って、業務を行わ なければならない。 ・当局による監督(後述)を受け入れなければならない。 ・RO 検査員は、公務員と同じくデンマーク法に基づく守秘義務を負う。

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(4)当局による監督 ・当局は、EU 指令(Directive 94/57/EC)に従い、RO の業務について定期的 にモニタリングを行っている。 (当局は同指令 11 条 2 項により、RO の活 動の適切性について少なくとも隔年で監査を行い、その結果を委員会及び 他の加盟国に報告しなければならない。 ) ・当局は RO のオフィスに対して監査を行い(2 年に 1 度) 、また、RO が発 給した証書をランダムに抽出して当該証書の適切性を検査する。 ・当該 RO が証書を発給した船舶が拘留をうけた場合、若しくは、5 件の欠 陥が発覚した場合、PSC  班が当該証書を確認し、結果報告書を作成する。  RO 関係班は、それを見て、RO にコメントや是正措置を求めるなどしてい る。 3.その他 MLC2006 の国内実施について (1)エンターテーナーの扱い(MLC2006 第 2 条第 1 項(f)関係) ・原則としてあらゆる者を MLC2006 上の船員と考えているが、1 ステージ若 しくは 1 晩限り客船に乗船するエンターテーナーは除外する。 (2)船員の募集及び職業紹介機関の確認方法(第 1.4 規則関係) ・検討中である。「旗国検査ガイドライン」に則ることとなる。 (3)船長への労働時間規制(第 2.3 基準(規範 A)関係) ・その旨の労使協約が結ばれれば、例外を容認する。 (4)苦情受付窓口(第 5.2.2 規則関係) ・PSC 担当官が窓口となる。 ・DMA には PSC 担当官が 40 人在籍しており、25 人は本部、残り 15 人は全 国 7 つの支部に配置されている。 (5)ISM コードとの関係性(第 5.1.3 規則関係) ・詳細は未定であり、ISM コードと MLC2006 とは完全に中身が一致してい ないという意味で別個のものと認識しているが、検査する側からすれば  ISM コードとなるべく一体的に検査を行う方が自然であると考えている。

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4.SOLAS 条約等における認定機関について (1)認定機関の利用状況 条約 条約証書 検査 発給 備考  MARPOL (I)  国際油汚染防止証書 IOPPC  ABS  BV  DNV  GL  LR  NK  RINA  ­  旅客船安全証書 PSSC  ‐  ­  貨物船安全構造証書 CSSCC  ­  貨物船安全設備証書 CSSEC  ­  SOLAS (I)  貨物船安全無線証書 CSSRC  ­  適合証書 DOC  旅客船を除く  SOLAS (IX)  安全管理証書 SMC  ­  ­  SOLAS (XI­2)  船舶保安証書 ISSC  ABS  BV  DNV  GL  LR  NK  RINA  ­  * 2010 年 3 月の現地調査において確認。 (2)関連法令 ・1(2)国内担保法に同じ 5.統計 (1)MLC2006 条約証書対象船舶:約 549 隻 (2)自国籍船員数:5,833 名(2009 年時点) (3)船員労務官:約 40 名 (4)船上検査頻度:定期的には行っていない。

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Ⅱ.

フランス

訪問先  Ministry  of  Ecology,  Energy,  Sustainable  Development  and the Sea,  General  Directorate for Infrastructure, Transport and the Sea, Directorate for Maritime  Affairs(エコロジー・エネルギー・持続可能開発・海洋省海事局)  ­  Mr.  Alain  Moussat  (Director  of  Labour,  Head  of  the  Maritime  Labour 

Office) 

­  Mr.  Yann  Becouarn  (Deputy  Sub­Director  for  Seafarers  and  Maritime  Education)  訪問日  2010 年 5 月 17 日 エコロジー・エネルギー・持続可能開発・海洋省海事局より聴取した内容は以下 のとおり。 1.MLC2006 の批准について (1)批准時期 ・同国は 2011 年 6 月をめどとしている。 ・ILO188 号条約*もあわせて批准する予定。 【批准が遅れる理由】 ・EU 指令で 2010 年中の批准が推奨されていることは認識しているが、如何 せん、条約の内容が網羅的なので、関係する法令条文の数が多い。逐一確 認する作業を行っており、また、改正には国会動向とも関わるので、スム ーズにはいかない。よって、時間がかかっている。  *ILO188 号条約 正式名称は 2007 年の漁業労働条約(Work in Fishing Convention, 2007)で、  2007 年 6 月 14 日採択(第 96 回総会)。同条約は、MLC2006 が適用されな い漁船員の保護を目的とし、漁業労働を包括的に扱っている。同条約のベ ースは、112 号条約(1959 年の最低年齢(漁船員)条約、113 号条約(1959  年の健康検査(漁船員)条約)、114  号条約(1959  年の漁船員の雇入契約 条約)、126  号条約(1966  年の船員設備(漁船員)条約)であり、フラン スはいずれも批准している。なお、日本はいずれも未批准。

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(2)国内担保法 ・ MLC2006 が関係する法令は、 これまで海事労働法令集 (maritime labour code) としてまとめている。しかし、目下、すべての関係法令を見直し、新たに 交通法令集(transport  code)として再編する作業を行っているところであ る。ここでの海事労働に関する部分は、一般労働法の特別法にあたるもの となる。 2.MLC2006 のための RO について (1)導入の見込み ・検討中で確定していないが、 導入するとすれば少なくとも批准の段階では、 居住設備に関する検査に限ってのこととなると思う。 ・居住設備について代行させるのは、二重検査を避けるためである。 ・MLC2006 の国内実施については、ステップ・バイ・ステップの姿勢で臨む こととなるので、 将来的には RO を活用する幅が広がる可能性はゼロではな い。 【導入をハード面に限る理由】 ・労働省が  MLC2006  の国内実施に高い関心を示しているため、それを民間 に代行させることは相当な反対が予想される。組合も反対すると思われる。 ・一般にフランスでは、労働条件など社会的事項の検証は、守秘義務の観点 からも重要な問題と考えられている。 ・もとより、ILO 第 178 号条約の国内実施においても、RO を利用せず、海 事局検査官が労働省の検査官とともに船上検査にあたっている。もっとも、 十分には実施してきていない。なお、フランスでは、労働監督に関する制 度が再編されたところである。それまで各省で行ってきたものが、2009 年  1 月 1 以降、労働省の監督の下で一元的に実施されることとなった。 【MLC2006 検査官の養成】 ・MLC2006 検査官として 40 名の養成している。そのうち 7 名(うち 2 名は 元船長)を先駆的に  MLC2006  検査官として養成すべく、ILO  の研修を受 けさせている。ナントに研修センターを有しているので、彼らにそこで行 う講習を構築してもらい、さらなる MLC2006 検査官を養成する予定だ。 ・彼らは 14 ある Maritime Safety Center に配備されることとなる。 ・なお、Maritime Safety Center は、従来 ISM コードなどに基づく検査及び証 書発給を担っているが、24 時間 365 日対応している。証書発給の申請はオ

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ンラインを利用可能、交付までの所要時間は通常1~2日で、急ぐ場合に は暫定証書を発給している。交付は郵送若しくは窓口で行っている。 (2)資格要件・手続き ・すべては検討中であるが、中立性の要件を盛り込むことは確実である。 ・むろん EU で承認されている船級協会であることも要件となる。 (3)権限・義務 ・代行させるとしても当面は居住設備に限っての検査権限であろう。 (4)当局による監督 ・検討中だが、従来の枠組みで実施することとなるであろう。

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3.その他 MLC2006 の国内実施について (1)エンターテーナーの扱い(MLC2006 第 2 条第 1 項(f)関係) ・短期乗船のエンターテーナーは除外する。どの程度を「短期間」とするか を検討中である。むろん乗船の頻度も考慮し、関係団体と協議の末、決定 する。 (2)船員の募集及び職業紹介機関の確認方法(第 1.4 規則関係) ・雇用契約に明示させ、その複写を船上検査で確認する必要があるのではな いかと考えている。 (3)船長への労働時間規制(第 2.3 基準(規範 A)関係) ・起草過程における議論を考慮しつつ、緊急時の適用除外及び労使協約に基 づく例外を認める方向である。但し、労使協約に基づく例外は、荒天など 特定の状況のみであり、船長についてそっくり除外するようなことは許さ れないと考えている。 (4)苦情受付窓口(第 5.2.2 規則関係) ・PSC 担当官が窓口となる。その後の対応は、労働省の人間とともに行うこ ととなる。 (5)ISM コードとの関係性(第 5.1.3 規則関係) ・まだ確定していないが、DMLC 第 2 部の作成において、SMS の参照をする ことを認める方向である。 (6)その他 ・DMLC 第 1 部の作成について議論がある。当局としては、14 項目に関連す る国内法令の規定を記すのみではなく、 MLC2006 遵守に必要なすべての国 内法令の規定を挙げるべきだと考えている。

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4.SOLAS 条約等における認定機関について (1)認定機関の利用状況 条約 条約証書 検査 発給 備考  MARPOL (I)  国際油汚染防止証書 IOPPC  旅客船安全証書 PSSC  貨物船安全構造証書 CSSCC  貨物船安全設備証書 CSSEC  発給に 制限あり  SOLAS (I)  貨物船安全無線証書 CSSRC  BV, DNV, GL, LR  検査・発給に 制限あり 適合証書 DOC  ­  BV,  DNV,  GL, LR  発給に 制限あり  SOLAS (IX)  安全管理証書 SMC  BV, DNV, GL, LR  検査・発給に 制限あり  SOLAS (XI­2)  船舶保安証書 ISSC  GL, BV  不明  * 2010 年 3 月の現地調査において確認。 (2)関連法令 ・1(2)国内担保法に同じ 5.統計 (1)MLC2006 条約証書対象船舶:250~300 隻 (2)自国籍船員数:10,000 名以上 (3)船員労務官:約 200 名 (4)船上検査頻度:制度改正以後についてデータなし。

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Ⅲ.

ドイツ

訪問先  Federal Ministry of Transport, Building and Urban Affairs(連邦交通建設 都市開発省)  ­ Dr. Heiko Schafer MJI  BG Verkehr, Ship Safety Division(運輸交通組合船舶安全課)  ­ Capt. Tilo Berger  訪問日  2010 年 3 月 23 日 連邦交通建設都市開発省及び運輸交通組合安全課より聴取した内容は以下のと おり。 1.MLC2006 の批准について (1)批准時期 ・同国は 2010 年 12 月末を目標としている。 (2)国内担保法 ・1957 年制定の Seemannsgesetz が船員法であり、その他、MLC2006 の国内 実施に関する法令の中心をなす。  ­Seemannsgesetz (1957)  ­Verordnung über die Unterbringung der Besatzungsmitglieder an Bord von  Kauffahrteischiffen (1973)  ­Verordnung über die Krankenfürsorge auf Kauffahrteischiffen (1972)  ­Schiffsbesetzungsverordnung (1998)  ­Verordnung über die Seediensttauglichkeit (1970)  ­See­Arbeitszeitnachweisverordnung (2002)  ­Schiffsoffizier­Ausbildungsverordnung (1985)  ­Arbeitsschutzgesetz (1996)  ­Sozialgesetzbücher  2.MLC2006 のための RO について (1)導入の見込み

(33)

が行う 1  ・  IMO 条約の下で既に RO として活動している船級協会 (ABS, BV, DNV, GL,  LR, RMRS, RINA)が MLC2006 のための RO となると考えられる。 (2)資格要件・手続き ・ 資格要件としては、EU 法(Directive 94/57/EC))に合致した船級協会であ ることが挙げられる。他にドイツ独自の要件はない。 ・ 従来、船級協会は、当局と書面で業務等について合意の上、RO となる。 ・ 手続き等においては、 MLC2006 の第 5.1.2 規則及び第 5.1.2 基準を遵守し、 また、第 5.1.2 ガイドラインを勘案しつつ行う。 (3)権限・義務 ・RO は、MLC2006 に基づく検査について実施する権限を与えられる。 ・検査は、IMO 決議(Resolutions A. 744(18)及び A.948(23)に則って行われな ければならない。 ・当局による監督(後述)を受け入れなければならない。 ・RO  は、証書発給に必要となるすべての情報を当局に提供しなければなら ない。また、2002 年制定の Seeaufgabengesetz(German Maritime Authorities  Tasks Act)に従い、当局が整備する船舶データベースに必要となる情報な ど関連情報も提出しなければならない。 ・RO  は、検査報告書を含め、すべての書類について当局がアクセスするこ とを認める。(必要な限りにおいて、EU 委員会にもかかるアクセスを認め ている。) (4)当局による監督 ・当局は、EU 法(Directive 94/57/EC)に従い、RO の業務について定期的に モニタリングを行っている。かかるモニタリングでは、RO  に活動内容に ついて報告をさせ、また、QSCS(IACS Quality System Certification Scheme) 報告書も活用している。半年ごとにミーティングも行っている。 ・RO  が作成する検査報告を検証し、当該船舶に対する不定期の検査も実施  1 

BG  Verkehr の一部門である"Dienststelle  Schiffssicherheit"  (Ship  Safety  Division)  は、「公海海運分野における政府機能に関する法律(the  Law  on  the  Government’s  Functions in the Field of High­Sea Shipping)」により、当該分野における連邦中央 当局とされ、海上安全及び海洋環境保護に関する規制執行機関である。交通建

(34)

している。

・RO  に対する直接の監査は、IACS  若しくは  EMSA  が行う監査に参加して 行っている。 3.その他 MLC2006 の国内実施について (1)エンターテーナーの扱い(MLC2006 第 2 条第 1 項(f)関係) ・ 「48  時間以内の乗船者」を除外することとしているため、エンターテーナ ーがそれに該当すれば除外する。 ・48 時間の算出根拠は、機器類の修理等で船舶に訪れる者を勘案してのこと である。かかる修理業者等は、48 時間あれば修理等の作業を終え、下船す ると考えられるからだ。 (2)船員の募集及び職業紹介機関の確認方法(第 1.4 規則関係) ・ 「旗国検査ガイドライン」に則って行う。それ以上の詳細は未定。 (3)船長への労働時間規制(第 2.3 基準(規範 A)関係) ・労使協約に基づき、例外が可能である。 ・ドイツは、ILO 第 180 号条約においてもかかる対処をしており、MLC2006  についても同様の扱いとなると見込まれる。

(35)

【ILO 第 180 号条約・MLC2006 対照表】  ILO 第 180 号条約(1996 年の船員の労働時間及び船舶の定員条約) ・1996 年採択、2002 年発効。ドイツを含む 21 か国が批准。日本は未批准。 ・同条約は、船員の労働時間及び休息時間について下記のとおり MLC2006 と同 様の規定を有するものである。 第 180 号条約  MLC2006  対象 「船員」とは、資格のいかんを問わ ず、 国内法令又は労働協約により船 員と定義され、かつ、この条約が適 用される海上航行船舶において雇 用され又は従業する者をいう。 (第  2 条(b)) 「船員」とは、能力のいかんを問わ ず、 この条約が適用される船舶にお いて雇用され若しくは従事し、 又は 労働する者をいう。(第 2 条 1 項(f)) 労働時間 労働時間又は休息時間の限度は、 次 のとおりとする。(a)最長労働時間 は、次の時間を超えてはならない。  (i)いかなる二十四時間についても 十四時間  (ii)いかなる七日間につ いても七十二時間  (b)最短休息時 間は、 次の時間を下回ってはならな い。(i)  いかなる二十四時間につい ても十時間  (ii)いかなる七日間に ついても七十七時間(第 5 条 1 項) 労働時間又は休息時間の限度は、 次 のとおりとする。(a)  最長労働時間 は、次の時間を超えないものとす る。(i)  24時間につき14時間  (ii)  7日間につき72時間(b)  最短 休息時間は、 次の時間を下回らない ものとする。(i)  24時間につき1 0時間(ii)  7日間につき77時間 (第 2.3 基準(規範 A)5 項) 休息時間 休息時間は、 二を超えない期間に分 割することができる。 そのいずれか 一の期間は少なくとも六時間の長 さとし、 休息時間から休息時間まで の間隔の長さは、 十四時間を超えて はならない。 (第 5 条 2 項) 休息時間は、 2回を超えずに分割す ることができる。 そのいずれか1の 休息時間は、 少なくとも長さ6時間 とし、 及び連続する休息時間と休息 時間の間隔は、 14時間を超えない ものとする。 (第 2.3 基準(規範 A)  6 項) 例 外 の 承 認 1及び2の規定は、 加盟国が権限の ある機関による所定の限度の例外 を認める労働協約の承認又は登録 のための国内法令又は手続を定め ることを妨げるものではない。 この 例外については、 所定の基準にでき 5及び6の規定は、 定められた限度 の例外を認める団体交渉協約につ いて権限のある機関が承認し、 又は 登録するための国内法令又は手続 を加盟国が有することを妨げるも のではない。この例外については、

(36)

る船員又は短航海に従事する船舶 の船員に対し一層頻繁な若しくは 長期の休暇を考慮し又は補償休暇 の付与を考慮することができる。 (第 5 条 6 項) ものとし、そうでない場合には、当 直を担当する船員又は短航海に従 事する船舶で労働する船員に対し 一層頻繁な若しくは一層長期の休 暇又は補償休暇の付与を考慮する ことができる。 (第 2.3 基準 (規範 A) 第 13 項) (4)苦情受付窓口(第 5.2.2 規則関係) ・PSC 担当官が窓口となる。 (5)ISM コードとの関係性(第 5.1.3 規則関係) ・DMLC 第  2 部の作成について形式は問わない。船舶所有者の判断である。 最終的に、MLC2006 に求められるところが担保されていればよい。

(37)

4.SOLAS 条約等における認定機関について (1)認定機関の利用状況 条約 条約証書 検査 発給  MARPOL (I)  国際油汚染防止証書 IOPPC  旅客船安全証書 PSSC  貨物船安全構造証書 CSSCC  貨物船安全設備証書 CSSEC  ABS,  BV,  DNV,  GL,  LR,  RINA,  RMRS  SOLAS (I)  貨物船安全無線証書 CSSRC  ABS,  BV,  DNV,  GL,  LR  適合証書 DOC  SOLAS (IX)  安全管理証書 SMC  ABS,  BV,  DNV,  GL,  LR,  RINA  RMRS  SOLAS (XI­2)  船舶保安証書 ISSC  ABS,  AZS,  BV,  DNV,  GL,  LR,  ‐  * 2010 年 3 月の現地調査において確認。 (2)関連法令 ・1(2)国内担保法に同じ

(38)

5.統計 (1)MLC2006 条約証書対象船舶:約 485 隻(貨物船 472 隻+客船 13 隻) (2)自国籍船員数:9,738 名(2007 年時点) (3)船員労務官:約 40 名 (4)船上検査頻度:定期的には行っていない。問題が判明したときに 随時行う。

(39)

Ⅳ.

オランダ

訪問先  Ministerie van Verkeer en Waterstaat Transport en Luchtvaart(運輸公共 事業水利省)  ­ Mr. Wouter Pietersma (Senior Policy Advisor, Sea Ports Division and Sea  Shipping)  ­ Mr. Rj., de Brujin (Senior Beleidsmedewerker, Programma Zeevaart)  Inspectie Verkeer en Waterstaat(IVW)(運輸・水利監督局)  ­ Mr. Pieter Oost  訪問日  2010 年 5 月 17 日 運輸公共事業水利省及び運輸・水利監督局より聴取した内容は以下のとおり。 1.MLC2006 の批准について (1)批准時期 ・同国は 2011 年 1 月を目標としている。 (2)国内担保法 ・海事労働に関しては、一般的な労働関係法規及び海運関係法規のなかで規 定されている。  ­ Sea Manning Act  ­ Working Hours Act  ­ Working Hours Decree Transport  ­ Work Conditions Act  ­ Occupational Safety and Health Decree  ­ Civil Code Book 7 

­  Act  on  Allocation  of  Workers  by  Intermediaries  Regulation  Safety  Seagoing  Vessels 

­ Ships Act 

・MLC2006 の批准に当たっては、Sea Manning Act を改正し、Sea Manning Act  を第 1 部、 MLC2006 の内容を第 2 部とする Seafarers Act とする予定である。

(40)

2.MLC2006 のための RO について (1)導入の見込み ・検査及び証書発給について導入の予定。 ・従来の IMO 条約の下で導入しているのと同様のスタイルである。 (2)資格要件・手続き ・RO としては船級協会を想定している。 ・外国船級協会も対象とする。 ・中立性要件も盛り込む予定である。 ・検査員の資格要件については、MLC2006 に規定された要件で十分である。 (3)権限・義務 ・RO は、MLC2006 に基づく検査及び証書発給について実施する権限を与え られる予定である。 ・当局による監督(後述)を受け入れなければならない。 【権限機関の分業体制】 ・MLC2006 及び IMO 関連条約に係る検査・証書発給についての最終的な責 任は、IVW(原語 Inspectie Verkeer en Waterstaat;英語 Transport and Water  Management Inspectorate)が負っている。 ・オランダ籍船への検査実施については、IVW  の一部門である  NSI(the  Netherlands Shipping Inspectorate)が権限を有している。 ・RO の利用に関しては、NSI が RO と協定を締結し、検査・証書発給権限 を委任するが、その業務はあくまで IVW のための代行業務と位置付けら れている。 (4)当局による監督 ・当局は、RO  への立入検査・船上検査への立ち会いなど、不定期監査を実 施する。また RO のデータベースにアクセスし、業務手続きをチェックす る。 ・事実上、違反ということは生じないと考えている。違反があるとしても、 それは通常法令解釈の相違であることから、従来は協議によって問題を解 決してきた。 ・理論的には違反ということもありえることから、認定の取消しという措置 も準備するかもしれないが、通常はそういう事態は生じないと考える。

(41)

3.その他 MLC2006 の国内実施について (1)エンターテーナーの扱い(MLC2006 第 2 条第 1 項(f)関係) ・船員に含める。 ・ただし、この問題はソーシャル・パートナーと協議の上決定する。 (2)船員の募集及び職業紹介機関の確認方法(第 1.4 規則関係) ・ 「旗国検査ガイドライン」に則って行う。それ以上の詳細は未定。 (3)船長への労働時間規制(第 2.3 基準(規範 A)関係) ・船長も適用対象とする。 ・緊急事態においては、すべての船員が“長さの如何を問わず従事する”こ とが求められる。 (4)苦情受付窓口(第 5.2.2 規則関係) ・PSC 担当官が窓口となる。 (5)ISM コードとの関係性(第 5.1.3 規則関係) ・ISM 船上検証は MLC2006 船上検査によって部分的にカバーされうるため、 重複項目について二度検査を行う必要はない。 ・ISM 船上検証と MLC2006 船上検査との同時実施は効率的で良い考えで ある。 4.SOLAS 条約等における認定機関について (1)認定機関の利用状況 条約 条約証書 検査 発給  MARPOL (I)  国際油汚染防止証書 IOPPC  旅客船安全証書 PSSC  貨物船安全構造証書 CSSCC  貨物船安全設備証書 CSSEC  SOLAS (I)  貨物船安全無線証書 CSSRC  適合証書 DOC  SOLAS (IX)  安全管理証書 SMC  ABS,  BV,  DNV,  GL,  LR,  NK,  RINA  ABS, BV, GL, 

(42)

Verification Ship  Security  DNV:  Review and  approval of ship  security plans,  shipboard initial,  intermediate and  renewal survey  to verify  implementation  of the security  system  * 2010 年 5 月の現地調査において確認。 (2)関連法令 ・1(2)国内担保法に同じ 5.統計 (1)MLC2006 条約証書対象船舶:約 820 隻 【船種別内訳】  Liquified Gas Tanker  15  Bulk carrier  0  RO­RO Cargo  15  Oil Tanker  4  Chemical Tanker  60  Wood Chips Carrier  0  Cable Layer  0  Ref. Cargo Ship  10  General Cargo  575  Others  141  Total  820  (2)自国籍船員数:2,621 名(2007 年時点) (3)船員労務官:0 名(IVW 技官 45 名で適宜対応;内、5 名を MLC2006 担当

(43)

に指名予定)

図 1:MLC2006 の規定構造…………………………………………………...  図 2:MLC2006 における旗国検査・証書発給スキーム…………………….  図 3:ISM コードにおける旗国検査・証書発給スキーム.…………………  表 1: MLC2006 批准国一覧……………………………………………………  表 2:海事労働証書発給に関する検査事項………………………………….  表 3: ISM コード・ MLC2006 規律対象対照表………………………………..  表 4:ILO 第 178 号条

参照

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