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旗国検査・証書発給スキームにおける  RO に対する 監督

(1)日本における既存のRO監督スキーム 

MLC2006 における RO については、現在批准に向けた国内法制化作業の最中 ということもあり、現時点では監督スキームの構築はなされていない。他方、 

SOLAS 条約における RO に関しては、 「 (登録)船級協会」として、その登録要

件、認可要件、検査義務、報告義務、罰則など、詳細な監督スキームが船舶安 全法に規定されている(§25­69~§25­72及び表7参照。なお、§25­70につい ては、準用条文を参照) 。

【登録要件】

船舶安全法は、船級協会について以下のように登録要件を定めている。積極 要件としては、検査設備の保有(§25­47①(ⅰ))、有資格人員の保有(§25­47 

①(ⅱ))、そして消極要件としては、船舶関連事業者の子会社等の船舶関連事業 者の被支配者要件 (§25­47①(ⅲ))、 及び違反経歴者等に関する欠格条項 (§25­47 

②)が規定されている。そして、上記いずれかの要件に適合しなくなったと認 める時には、国土交通大臣は適合命令を発することができ(§25­55)、さらに、

命令に違反した場合又は不正登録を行った場合には、登録取り消し・業務停止 命令を発することができる(§25­58①(ⅶ)及び(ⅷ))。

【認可事項】

船級協会は、その検査業務の開始前及びその変更時に、検査業務規程につい て認可を受けなければならない(§25­51①)と定められている。この検査業務 規程には、検査業務の実施方法、専任の管理責任者の選任その他の検査業務の 信頼性を確保するための措置、検査に関する料金その他の国土交通省令で定め る事項を定めておかなければならない(§25­51②)。当該規程に対する変更命令 に違反した場合には、国土交通大臣は登録取り消し・業務停止命令を発するこ とができる(§25­58①(ⅴ))。

【検査義務】

船級協会は、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく検査を行う義務を負う

(§25­49②)。この検査業務に対しては、国土交通大臣はその改善命令を発する ことができ (§25­56)、 その命令に違反した場合、 国土交通大臣は登録取り消し・

業務停止命令を発することができる(§25­58①(ⅶ)) 。

【報告・情報アクセス】

船級協会は、財務諸表等の毎事業年度の提出義務(§25­53①)及び財務諸表 等の供覧義務を負う(§25­53②)。その他の報告・情報共有義務に関しては、登 録事項変更届出義務(§25­50)、帳簿の記載・保存義務(§25­59)、業務・経理 の報告義務(§25­60)が規定されている。これらの違反に対しても、国土交通 大臣は登録取り消し・業務停止命令を発することができる(§25­58①(ⅲ)及び  (ⅵ)) 。

【立入検査】

政府は、船舶安全法を施行するため必要があると認めるときは、船級協会に 対し、立入検査を実施できる(§25­61)。

【罰則】

上記の違反行為に対して、懲役刑を含む刑事罰を規定している(§25­63、§ 

25­64(ⅱ)、§25­65、§25­66、§25­71①、§25­72①)。

【表7:SOLAS条約における認定機関に対する政府の監督】

国内認定機関の義務等 違反に対する行政措置等

【積極要件】

○検査設備の保有§25­47①(ⅰ) 

○有資格人員の保有§25­47①(ⅱ)  登録 【消極要件】

○船舶関連事業者の被支配者(船舶関 連事業者の子会社等)§25­47①(ⅲ) 

○欠格条項(違反経歴者等)§25­47②

○適合命令§25­55 

↑命令違反について登録取消・業務 停止命令

§25­58①(ⅶ) 

○不正登録について登録取消・業務 停止命令

§25­58①(ⅷ) 

○欠格条項該当事項発生について 登録取消・業務停止命令§25­58①  (ⅰ) 

認可 ○検査業務規程の認可§25­51①

(検査業務実施方法、専任管理責任者 の選任、検査管理業務信頼性確保措置 等)§25­51②

○変更命令§25­51③

↑命令違反について登録取消・業務 停止命令

§25­58①(ⅴ) 

検査

○公正適法な検査の実施§25­49②

○改善命令§25­56 

↑命令違反について登録取消・業務 停止命令

§25­58①(ⅶ) 

○ 財 務 諸 表 等 の 毎 事 業 年 度 提 出 §  25­53①

○財務諸表等の供覧§25­53②

○登録取消、業務停止命令§25­58 

①(ⅲ) 

○登録取消、業務停止命令§25­58 

①(ⅵ) 

○登録事項変更届出§25­50 

○帳簿の記載・保存§25­59 

○登録取消、業務停止命令§25­58 

①(ⅲ) 

報告・立入検査等

○業務・経理の報告§25­60 

○立入検査§25­61 

罰則

(いずれも当該行為者について)

○業務停止命令違反  1年以下の懲役又は50 万円以下の罰金 §25­63 

○虚偽報告等  30万円以下の罰金 §25­64(ⅱ) 

○立入検査拒否等  30万円以下の罰金 §25­65 

○財務諸表の供覧拒否等  20万円以下の過料 §25­66 

○検査に係る収賄等  3年以下の懲役 §25­71①

○検査に係る不正行為等  1年以上10年以下の懲役 §25­71①

(注)条文番号は船舶安全法

(2)EUにおける既存のRO監督スキーム 

EU における既存の RO に対する監督は、EU レベルのものと各加盟国レベル のものとが一体となって構築されている。すなわち、EUは、IMO決議に依拠し つつ、ROの資格要件、定期検査、賠償責任、制裁等を規定しており、各加盟国 が利用する  RO に対して直接の監督を行っている。それと同時に、各加盟国は  EU の規定に従いつつ、RO に対する監督の制度を各国内で設けているのである

(表8参照) 。

【法的根拠】 

EU における当該スキーム構築の嚆矢は、RO に関する最低基準の資格要件を 定め、 その資格要件を満たすものとしてEUが認定したROのみを利用するよう 各国に要請した理事会指令94/57/EC である。

その後、 この理事会指令は欧州議会・理事会指令2001/105/EC 及び2009/15/EC  による改訂を経て、現在では  EU 諸国の国内法として効力を有する  EU 規則 

391/2009 を含む法的枠組みとして、 これらがEU全体におけるRO監督スキーム

を規定している。

具体的には、RO の初回認定権限の EU 帰属、EU 認定 RO の資格要件、監督 制度、賠償責任規定、制裁規定からなるスキームである。

【初回認定】 

RO の初回認定権限については、EU に帰属するものとされている。具体的に は、未認定団体への認定を希望する加盟国は、対象団体が付属の最低基準(Reg. 

Annex  I)及び 8 条 4 項、9 条、10 条並びに 11 条の要件を遵守していることの

証拠を付し、欧州委員会に認定要請を提出しなければならず(Reg. Art.3.1)、認 定は、Reg. Art.3の要件を満たす団体にのみ与えられる(Reg. Art.4.2)。そして、

対象団体が最低基準(Reg. Annex I)の要件を満たさない場合、または対象団体 

Council Directive 94/57/EC of 22 November 1994 on common rules and standards  for ship inspection and survey organizations and for the relevant activities of maritime  administrations 

Directive 2001/15/EC of the European Parliament and of the Council of 19 December  2001 amending Council Directive 94/57/EC on common rules and standards for ship  inspection and survey organizations and for the relevant activities of maritime  administrations 

Directive 2009/15/EC of the European Parliament and of the Council of 23 April 2009  on common rules and standards for ship inspection and survey organizations and for the  relevant activities of maritime administrations 

の実績が船舶の安全及び環境への容認できない脅威だと見なされた場合には、

欧州委員会は対象団体への認定要請を拒否しなければならない(Reg. Art.3.3) 。

【資格要件】 

ROは、船級検査に必要な支援要員、研究要員を保持し(Reg. Annex I, A.3)、 豊富な知識を有する検査員と、その知識・能力の維持向上システムを具備して いなければならない(Reg. Annex I, B 7)。さらに、ROは能力を有した専門要員 の使用を通じ、そしてISMコード実施ガイダンス(IMO A.913(22), Annex)に記 された条項に準じて、査定を行うのに必要な手段を備えていなければならない

(Reg. Annex I, B 10)。

また、ROの組織内部規制に関する要件としては、独立の会計監査による証明

(Reg. Annex I, A.1)、倫理規範による運営(Reg. Annex I, B 2)、守秘義務の確保

(Reg. Annex I, B 3)、サービス品質に関する内部システムを伴う規則・手続の確 保(Reg. Annex I, B 7)、RO要員の活動・業務を監視する内部監督システムの確 保(Reg. Annex I, B 7)が必要である。さらに品質評価要件として、品質に関す る計画的かつ文書化された内部監査システムの確保(Reg. Annex I, B 7)、国際的 に認められた品質基準に基づく、EN/ISO/IEC  17020:2004  (inspection  bodies)及び  EN ISO  9001:2000 (quality  management systems, requirements)を遵守した実効的な 内部品質システムの構築、実施及び維持(Reg. Annex I, B 8)が要件として規定 される。そしてROは、2011年 6月17日までに国際基準に一致する品質評価証 明組織(a  quality  assessment  and  certification  entity)を設置しなければならない

(Reg.  Art.11.1)と規定される。そして、この品質評価証明組織は、RO の品質 管理システムに対する  ISO9001 基準に応じた頻繁かつ定期的な査定、当該シス テムの認証等の任務を実施する(Reg. Art.11.2)。

情報公開については、船級登録に関する電子データベースの公開と維持(Reg. 

Annex  I, A.4)、消極資格要件としては、RO 及びRO検査員の被支配・独立要件

が規定されている(Reg. Annex I, A.6)。

【定期検査】

全てのROは少なくとも2年毎に、 欧州委員会並びに認定要請を出した加盟国 により、最低基準(Reg. Annex I)及びReg.の要件の適合を検証するための査定 を受けなければならない(Reg. Art.8.1)。また、品質評価証明組織は、委員会に よって定期的に査定されなければならない(Reg. Art.11.6)。

【是正措置】

最低基準(Reg.  Annex  I)の要件を満たさない場合、Reg.の要件を満たさない 場合、または船舶の安全及び環境への容認できない脅威を構成すると見なした 場合、 欧州委員会は、 ROに対して予防措置及び是正措置を要求する (Reg. Art.5)。

【情報アクセス・報告義務】 

ROは欧州委員会に対し、定期査定に必要な情報アクセスを確保しなければな らない(Reg.  Art.9.1)。RO は、欧州委員会及び加盟国に対し、機器装備等の証 明に関する基準の進展について定期的報告する(Reg. Art.10.1)。

【立入検査】

査定には、RO地方支部の視察と船舶への無作為検査を含む(Reg. Art.8.3)。

【賠償責任】

人損については、ROが関与した責任の度合いに応じて、当局は金融補償を請 求する権利を有する(加盟国は  4 百万ユーロまでの請求額下限を設けることが できる)(Dir. 2001, 5 (d) (ii)) 。また物損については、ROが関与した責任の度合 いに応じて、当局は金融補償を請求する権利を有する(加盟国は  2 百万ユーロ までの請求額下限を設けることができる)(Dir. 2001, 5 (d) (iii)) 。

【認定取消】

最低基準 (Reg. Annex I) 及びReg.の要件の度重なるかつ深刻な不履行の場合、

船舶の安全及び環境への容認できない脅威を構成すると見なした場合、欧州委 員会による査定の度重なる妨害の場合、そして罰金又は定期的懲罰支払金の支 払いを怠った場合には、 欧州委員会は当該RO の認定を取り消さなければならな い(Reg. Art.7.1) 。

【罰金及び定期的懲罰支払金】

欧州委員会はROに対し、罰金定期的懲罰支払金(periodic penalty payments)

を科すことができる(Reg. Art.6.1 & 2) 。この罰金及び定期的懲罰支払金は、抑 止的であって、 事案の重大性及びROの経済的能力に比例したものでなければな らない。罰金及び定期的懲罰支払金の総額は、ROの過去 3年の平均粗利額の総 額の5パーセントを超えてはならない(Reg. Art.6.3) 。