NAIST-IS-MT0751005
修士論文
移動ロボットの速度と安全性を両立する経路探索のた
めの地図情報に関する研究
荒井 優輝
2009年 2 月 5 日 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻本論文は奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科に 修士 (工学) 授与の要件として提出した修士論文である。 荒井 優輝 審査委員: 小笠原 司 教授 (主指導教員) 木戸出 正繼 教授 (副指導教員) 金出 武雄 客員教授 (副指導教員) 加賀美 聡 客員准教授 (副指導教員)
移動ロボットの速度と安全性を両立する経路探索のた
めの地図情報に関する研究
∗荒井 優輝
内容梗概 近年,人と同じ環境で案内,警備,介護などの仕事を行うサービスロボットが 発表され話題となっている.これらのサービスロボットはサービスを提供するに あたって自律移動する機能が必要となる.自律移動の機能には地図作成,自己位 置同定,経路探索が必要である.その中の経路探索の手法では地図上の通りやす さを表すコストマップが用いられており,コストマップの値によって探索される 経路は大きく変化する.一般にコストマップの生成は障害物からの距離に応じて 与えられるが,その生成方法はあまり深い議論がされていない. そこで本研究では地図にコストを与える手法として新たに速度マップ,ソナー マップ,環境変化マップを提案しその有効性を移動ロボットアプリケーション Carmen Tookitと移動ロボット Pioneer-2 を用いてシミュレーションと実機にお ける提案手法の有効性を示した. その結果,速度マップはシミュレーション上で移動時間の短縮が達成できた. また環境変化マップを用いた実環境における実験では,危険な場所を回避し障害 物と衝突しない経路を生成することに成功した. キーワード 移動ロボット, レーザー距離センサ,ソナー, コストマップ, 経路探索 ∗奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報システム学専攻 修士論文, NAIST-IS-MT0751005, 2009年 2 月 5 日.A study of map information for path planning
which combine velocity and safety
∗Yuki Arai
Abstract
Recently, the service robot that does the work of the guide, guard, the guide, and nursing in an environment the same as human is a topic. These service robots need the function that autonomous mobile when they provide service. Mapping,localization and path planning are necessary for the function of the autonomous mobile. A cost map expressing easiness of street in the map by path finding is used, and the path varies with the value of the cost map. Generally the generation of the cost map is given depending on the distance from an obstacle, but, as for the generation method, a too deep argument is not done. Therefore We suggested sonar map, speed map, environment change map as technique newly to allot the cost to a map in this study. I showed the effectiveness of the proposal technique with simulation and an actual machine with mobile robot application Carmen Tookit and mobile robot Pioneer-2. As a result, the speed map was able to achieve shortening of movement time on simulation. In addition, by the experiment in the true environment where I used an environmental variation map for, Robot avoid dangerous places and succeeded in an obstacle and the path planning that did not collide.
Keywords:
mobile robot, laser range sensor, sonar, cost map, pathplaning
∗Master’s Thesis, Department of Information Systems, Graduate School of Information
目 次
1. 序論 1 1.1 背景 . . . . 1 1.2 関連研究 . . . . 1 1.3 研究の目的 . . . . 3 1.4 本論文の構成 . . . . 3 2. 環境情報統合マップ 4 2.1 はじめに . . . . 4 2.2 背景となる地図生成,位置認識,経路計画手法 . . . . 5 2.2.1 地図作成 . . . . 5 2.2.2 自己位置同定 . . . . 9 2.2.3 経路探索法 . . . . 10 2.3 速度マップ . . . . 14 2.3.1 生成アルゴリズム . . . . 14 2.3.2 速度分布からコストへの変換 . . . . 14 2.4 ソナーマップ . . . . 15 2.4.1 ソナーマップの生成アルゴリズム . . . . 15 2.5 環境変化マップ . . . . 16 2.5.1 レーザマップ生成アルゴリズム . . . . 17 2.5.2 環境変化マップ生成アルゴリズム . . . . 17 2.6 まとめ . . . . 18 3. 実験 19 3.1 実験環境 . . . . 19 3.1.1 Carmenの概要 . . . . 19 3.1.2 ロボットの仕様 . . . . 19 3.1.3 実験環境 . . . . 22 3.2 基本機能の実験 . . . . 223.2.1 地図の評価 . . . . 22 3.3 速度分布マップ実験 . . . . 24 3.3.1 速度マップ評価実験 . . . . 24 3.3.2 シミュレーション結果と考察 . . . . 26 3.4 ソナーマップ実験 . . . . 30 3.4.1 検出実験 . . . . 30 3.4.2 走行実験 . . . . 30 3.5 環境変化マップ実験 . . . . 34 3.6 統合実験 . . . . 36 3.6.1 ソナーマップと環境変化マップ統合実験 . . . . 36 3.6.2 ソナーマップ環境変化マップ統合実験 . . . . 42 4. 結論 43 謝辞 44 参考文献 46 付録 48 A. CARMEN Toolkit 48 A.1 概要 . . . . 48 A.2 インストール . . . . 48 A.2.1 インストール環境 . . . . 48 A.2.2 必要パッケージ . . . . 48 A.2.3 バグ . . . . 49 A.3 モジュール解説 . . . . 49 A.4 実行手順 . . . . 51 A.4.1 シミュレーションでの実行 . . . . 51 A.4.2 実機での実行 . . . . 51 A.5 マップ作成 . . . . 52
図 目 次
1 EMIEW . . . . 1 2 レーザスキャンデータ . . . . 6 3 ICPアルゴリズム . . . . 7 4 オドメトリベースの地図 . . . . 8 5 スキャンマッチング . . . . 8 6 モンテカルロ位置推定 . . . . 11 7 Waverront アルゴリズム . . . . 12 8 セルのアップデート . . . . 13 9 ポテンシャル場の生成 . . . . 13 10 lpn . . . . 13 11 速度分布マップ . . . . 15 12 ソナーのモデル . . . . 16 13 ソナーの多重反射の例 . . . . 17 14 レーザーのモデル . . . . 18 15 Pioneer3 . . . . 20 16 実験環境 . . . . 21 17 地図と CAD データとの比較 . . . . 23 18 速度マップ . . . . 25 19 コストマップの比較 . . . . 27 20 パスの比較 . . . . 27 21 グラデーションマップ+速度マップの軌跡 . . . . 28 22 グラデーションマップの軌跡 . . . . 28 23 速度マップの軌跡 . . . . 29 24 コストマップ無しの軌跡 . . . . 29 25 ソナーマップ . . . . 31 26 ソナーマップ寸法評価 . . . . 31 27 ソナーマップ . . . . 32 28 ソナーマップ経路比較 . . . . 3329 環境変化マップ実験の経路の比較 . . . . 34 30 環境変化マップ . . . . 35 31 実験環境 . . . . 36 32 Aの経路の比較 . . . . 38 33 Bの経路の比較 . . . . 39 34 Cの経路の比較 . . . . 40 35 Dの経路の比較 . . . . 40 36 Eの経路の比較 . . . . 41 37 統合実験の経路 . . . . 42 38 carmenモジュール構成 . . . . 50 39 navigatorgui . . . . 51 40 robotgui . . . . 52
表 目 次
1 ガウシアンフィルター . . . . 14 2 Pioneer-3の仕様 . . . . 19 3 レーザレンジセンサの仕様 . . . . 20 4 実験結果 . . . . 26 5 ソナーマップの精度比較 . . . . 30 6 ソナーマップの実験結果 . . . . 33 7 環境変化マップの実験結果 . . . . 34 8 Aの結果 . . . . 38 9 Bの結果 . . . . 38 10 Cの結果 . . . . 39 11 Dの結果 . . . . 39 12 Eの結果 . . . . 411.
序論
1.1
背景
近年,少子高齢化の影響により労働人口の減少が危惧されており 2030 年には 2006年と比較し 1037 万人減少するとの報告もある [14].そこ案内,警備,福祉, 介護,アミューズメントといった仕事を人間に代わって行うサービスロボットが 必要とされつつある.現在,トヨタ自動車のロビーナ,ALSOK のガードロボ [10], 三菱重工の wakamaru[11], 富士通の enon,日立の EMIEW Fig.1 [3] といったロ ボットたちがいる.上記のロボットたちのうちいくつかは実際の商業施設で活躍 している.これらのサービスロボットは,作業の内容や環境が限定されている産 業用ロボットとは異なり, 人間と同じ環境で動き回るため,周囲の環境を認識し ながら移動する機能が必要となる. この様な機能を持つロボットを移動ロボットと呼びロボット自身の移動する環 境の地図生成,環境中におけるロボット自身の位置を知る自己位置同定,目的地 まで移動する経路を生成する経路探索の機能が必要となる. Fig. 1 EMIEW1.2
関連研究
移動ロボットに関係する基本的な機能は地図生成,自己位置同定,経路計画で ある.地図生成は自己位置推定と地図の生成を同時に行う必要があり SLAM (Simul-taneous Localization And Mapping)と呼ばれており,様々な研究がされている [7].SALM には Thrun らによるベイズ定理を用いた手法 [9] と Besl らによるス キャンマッチングを用いた手法 [9] がある. また自己位置同定には Thrun らによるパーティクルフィルタを用いた [8] 手法 がある. そして経路計画ではゴールへの最短距離を求めることが要求され,主に A*[2] をベースとするものとポテンシャル法 [6] をベースとする手法に分かれる. A*は最短経路を保証しているがグリッドベースなためロボットにとって走りに くいパスとなりがちである A*で求めたパスをグラデーションマップを用いて障 害物から距離をとる方法が金原らによって [12] 提案されている. ポテンシャル法は障害物との距離に余裕を持ったなめらかなパスが生成可能で あるが局所解に落ちる可能性や最短経路を保証しないといった問題がある. しかしいずれの方法も地図の形状データから最短経路を探索しているため生成 された経路がロボットが最短時間で走れる経路である保証はない. また経路探索の手法では経路探索に用いる地図コストの重み付けをしたコスト マップを用いて経路の優先度の決定を行っている (一部の手法では計算コスト削 減のため均一コストにしている物もある). しかしコストマップの生成には障害物からの距離を基準にしている物が多く実 際の環境における障害物以外のコストをどのようにコストに落とすかについては あまり議論されていない. 中宮らは [13] では周囲の環境をコストマップに含めた経路探索を提案している が,評価が消費エネルギベースであり実際の運用時に必要となる到達時間や安全 性のは議論されていない.さらに実環境のロボットに適応できるかは疑問が残る. そこで本研究では安全性と走行時間を最適にするコストマップの生成を目的と する.
1.3
研究の目的
本研究では,環境の様々な情報を経路探索で使用するコストマップに反映させ ることで,経路探索の際の計算コストを増加させることなく,経路探索の安全性 と走行時間の短縮を実現することが目的である. 移動ロボットの経路計画はゴールまでの最短経路を求める問題であるがそれら が地図上において最短経路であってもその経路がロボットの走行時において最短 時間で走れる経路とは限らない. そこで,地図の各点における走りやすさを求め コストマップへ変化する. また近年の移動ロボット研究において周囲の環境の認識にはレーザー距離セン サを用いた物が主流である.むろん本研究においてもレーザ距離センサは使用し ているがそれだけでは取得困難な環境の情報が数多くある.例えば,レーザーは 高速に高精度なデータが得られるが,レーザを吸収,透過してしまうような物体, 計測データが 2 次元形状しかとらえられないといった欠点がある.そのためレー ザー距離センサのみで構成された地図では情報が不足してしまう.場合によって はこの不足データがロボットを危険にさらしてしまう場合がある.レーザ以外の センサから取得したデータもコストマップへ反映する.これらを組み合わせサン プリングベースのコストマップを用いることによって安全かつ迅速な経路探索の 実現を目指す.1.4
本論文の構成
本論文ではこの章以降,2 章では井戸ロボットの基本的な機能と本研究で提案 するマップの生成手法について述べる 3 章では前章で作った各種マップについて の評価実験を行った結果を述べる.4 章では、現状と今後の課題について述べる。 また、付録 A には今回使用した Carmen を解説した物を添付する.2.
環境情報統合マップ
2.1
はじめに
本章では自律移動ロボットに必要となる基本的な機能を説明した上で,本研究 の目的であるコストマップの生成方法について述べる.初めに,自律移動ロボッ トでは次の機能が必要となる. 地図生成 自己位置同定 経路探索 移動ロボットにおいて地図とは自己位置同定や経路探索を行うのに必要となる物 である.本研究では地図生成に ICP アルゴリズムを使用し,実験環境のグリッド ベースな地図を生成する.次にロボットは地図とセンサを用いて地図上の自己位 置を知る必要がある.この自己位置同体にはパーティクルフィルタを用いたモン テカルロ位置推定 (MCL)[8] を用いる. 次にロボットは求めた自己位置からゴールまでの経路を探索する.ロボットが 現在位置から目的地へ移動するには目的地までの経路を生成する必要がある.ロ ボットの経路探索方法には主にポテンシャル法 [6] と A*[2] ベースな方法がある. 本研究では経路探索に [4] の方法を用いる.また経路探索では探索時に与えるコ ストマップによって生成される経路が大きく変化する.地図に与えるコストとし て最も考え付くのが障害物との距離であり,多くの研究では障害物からの距離を 基にコストマップを生成している.そこで経路計画に用いるコストマップを工夫 することでロボットの経路探索時の計算量を増加させることなく経路探索の性能 向をはかる.本研究で生成するコストマップの種類は以下の通りである 速度マップ ソナーマップ 環境変化率マップまず速度マップは地図のセルごとの平均速度を記録したものである.この値を 基にコストにマップを生成し平均速度の高い場所を優先的に選択して経路探索す ることで移動時間の短縮を図る ソナーマップはロボットに搭載されているレーザ距離センサで認識困難なガラ スなどの検出に用いて,より安全な経路探索を目指す. 環境は日々変化しておりロボットがプランニングを行う際に保有している地図 情報と実際の環境が異なっている場合がある.このような想定外の環境の変化に よってロボットが危険にさらされたり,経路の再探索が必要となってしまう場合 がある.そこで環境の変化しやすい場所を事前に知っておくことでこの様な事態 を避け,移動にかかるリスクやコストを下げることを目的とする.そしてこれら のマップを統合し,より安全で高速な探索を可能とするコストマップを生成する ことを目的とする.マップの定義を述べる.
2.2
背景となる地図生成,位置認識,経路計画手法
2.2.1 地図作成 まず始めにロボットは移動する環境の地図を保持している必要がある. 地図を作るには Fig2 に示すような測域センサなどで得た周囲環境の局所的な 形状を結合して全体の地図を作る必要がある. データの結合には各データの正確な計測位置が必要となる.通常,ロボットの 位置を知る GPS やロボットのエンコーダから得られるオドメトリが用いられる がこれらは誤差を含んでおり補正が必要である.そこで測域センサなどの計測値 をもとに自己位置の補正を行う.この様に自己位置と地図の両者を同時に推定す ることを SLAM(Simultaneous Localization and Mapping) と呼ぶ.SLAMには大きくわけて,ベイズの定理を用いて確率的に行う方法,スキャン マッチングの 2 種類がある.本論文では Carmen で使用している [1] の方について 触れる.
ICPアルゴリズム (Iterative Closet Point アルゴリズム)
Fig. 2 レーザスキャンのデータ 白色の部分が空き空間,赤色部分は物体を感知した場所,薄い青は不明領域 データ間の誤差が最小最小となる相対位置を繰り返し計算で求める方法であり, 式 2 を最小にする問題である.また前提条件として 2 個のデータ間にある程度の 位置合わせができている必要がある. Mk = C(Sk, T ) (1) E(T ) =∑ i+1 N (Mi− (Rsi+ T )) 2→ min (2) M モデルデータのベクトル s 計測データのベクトル N 計測データの数 R 回転行列 T 平行移動ベクトル ICPの処理の具体的な手順を説明する 1. モデルデータと計測データ (Fig.3(a)) に対して,計測データの各点とモデル データ各点の最も近い点同士を対応点とする (Fig.3(b)).
2. 計測データとモデルデータの誤差を近づけるような変換行列を求める (Fig.3(c)).. この作業には最急降下法やニュートン法が用いられる. 3. (b)と (c) を 2 個のデータの誤差が閾値以下になるまで繰り返すことで 2 個 のデータの対応関係が求まる (Fig.3(d)). Fig. 3 ICPアルゴリズム SLAMに ICP を用いる場合は測域センサ siのデータと,モデルデータ Miに ICPを行い,求められた R, t の値を用いてオドメトリを補正すればよい.参考に オドメトリと測域センサから構成した地図 Fig.4 に対して ICP アルゴリズムをほ どした物を Fig.5 示す.
Fig. 4 オドメトリベースの地図ロボットの得たオドメトリの上にレーザデータを かぶせた物.大きくずれているのが分かる.
Fig. 5 スキャンマッチング; Fig.4 にスキャンマッチングを施しオドメトリの誤差 を修正した物.
2.2.2 自己位置同定 自己一同定とは与えられた環境中の地図に対してロボットの位置と姿勢を推定 する問題である. パーティクルフィルタ ノンパラメトリックなベイズフィルターの実装方法の一 つである.事後信念を有限個のパラメータで比較する. 事後信念の状態から状態をランダムにサンプリングして事後信念 bel(xt)を表 現すると言うものである. パーティクルフィルタでは事故確率分布の標本はパーティクルと呼ばれ式 (3) で表される. Xt= x[1]t , x [2] t , . . . x [M ] t (3) 各パーティクル xt [m]は時刻 t における状態の推定値である.M はパーティクル の数を表し,M が大きいほど真の状態を推定しやすくなる. 1. 初期状態パーティクルの初期値 X0を設定する. 2. 予測各パーティクルについて前状態から現状態の予測を行う.パーティク ルと制御値から現在の状態の推定値を行う.制御データ utと,時刻 Xt− 1 のパーティクル Xtの推定値 ¯Xt を求める. 3. 重み付け現状態における各パーティクルの尤度を求める.次式で尤度の計 算を行う wt[m] = p(zt|x [m] t ) (4) この係数はパーティクル x[m]t で計測値 ztを得られる確率である.重み付け られたパーティクルの集合はベイズフィルタの事後信念 brl(xt)を表す.次 にリサンプリングもしくは重み付きサンプリングを行い 信念 bel(xt)を bel(xt−1)から再帰的に構築する. 4. リサンプリング ¯Xtから M 個のパーティクルを選択しなおす,各パーティ クルが選ばれる確率は各パーティクルの重み w[m]t によって決定される.
2から 5 を繰り返すことで状態を推定できる.
モンテカルロ位置推定 (Monte Carlo Localization MCL)
前節で説明したパーティクルフィルタを自己位置同定に用いたのが,モンテカル ロ位置推定 (Monte Carlo Localization MCL) である.Fig.6 は通路を用いて MCL の例を示したものである.p(z|x) 計測確率を示し,現在の位置 x からどのような 計測値 z が得られるかを示す確率法則である.初期の大域的な不確かさは Fig.6(a) のように,姿勢空間全体で一様にランダム選ばれたパーティクルで表現されてい る.ロボットが移動しドアを感知したときに,MCL はパーティクルの重みを変更 する.その結果が Fig.6(b) である.各パーティクルの高さはパーティクルの重み を示している.ここではパーティクルの場所は変化せず重みのみの更新に止まる. Fig.6(c)はロボットが移動してリサンプリングした後のパーティクルの様子で ある.この仮定では同じ重みを持つ新しいパーティクルののセットが生成される. ロボットのいる確率が高いと思われるドアの付近のパーティクルの密度が増加し ていることが分かる.新たに計測した後は Fig.6(d) のようにパーティクルの重み は不均一になる.この時点でほとんどの存在確率が 2 番目のドアに集まっている. この後,ロボットが動くともう一度リサンプリングが行われ,新たなパーティク ルのセットが動作モデルにしたがって生成される.Fig.6(e). この例から明らかな ようにパーティクルのセットは事後信念を正しく近似している. 2.2.3 経路探索法 本研究では経路探索に Konolige らのポテンシャル法ベースの手法 [4] を用いた. パスコスト 地図上のの経路を点の純序列で表し,k からスタートするパスを Pkとおく. P ={p1, p2, . . .} (5) 点の集合は隣り合う 8 近傍のグリッドであり,重複する点は含まれない.また, 経路の最後はゴールでなければならない.
スターと点から現在の点経路ののコストは F (P ) の関数 (離散系) で表されれる. F (P ) =∑ i I(pi) + ∑ i A(pi, pi+1) (6) Iと A どちらとも任意のコストを与えられる.I は通過時のコストを示し,与え られた領域の特性に応じて設定される.例えば,障害物の近くや不明な領域,滑 りやすい場所は高いコストが与えられる.A はロボットが移動する piと pi+1の 2 点間の距離に比例したコストを割り当てる.A の合計は経路の長さに比例したコ ストが与えられる. Fig.8 を説明すると,現在地が中央のセルで,次の目的地が左上のセルとす る.現在の移動コストの合計 (ポテンシャル)C = 20 であるとすると.次のセルの コスト I = 5,移動距離のコスト A14であることから次の目的地のポテンシャル は 20 + 14 + 5 = 39 となる.この処理をすべてのセルに施し,生成されたポテン シャル場を降っていくことで最良な経路散策が実現される.また場のコストは障 害物からの距離に応じて与える.このアルゴリズムを実際に用いた様子が Fig.10 である. Fig. 7 Waverront アルゴリズム
Fig. 8 セルのアップデート
Fig. 9 ポテンシャル場の生成
2.3
速度マップ
通常の経路探索は計算幾何学な部分しか考慮されていないため,生成された経 路長が距離が最短であっても,走行時間が最短である保証はない.すなわち,走 行時の周囲の障害物の位置によって加減速,旋回が求められトータルの走行時間 がかさむ場合がある.そこで,あらかじめ地図上に各地点で出せる速度を持たせ, 移動コストに反映させることでより最適な経路を生成可能にする. 2.3.1 生成アルゴリズム 速度マップの生成にはシミュレーション上でランダムにスタートとゴールをあ たえ自律走行を行うことを繰り返す.任意のセル mpを通過した距離 ∆l と通過に かかった時間 ∆t とセルを通過した回数 n を用いて,任意のセル任意のセル mp の値を式 (7) の用に定義する. mp = 1 n n ∑ i=0 ( ∆li ∆ti ) (7) 生成した速度分布マップは Fig11(a) で示されるが,このままではデータの存在し ないセルが存在するので,補間処理が必要となる.データの補間は周囲 8 近傍の内 値を持っているセルの最小値を用いる.最後に補間を行ったセルに対して Table1 のガウシアンフィルタを掛けたものが Fig11(b) となる. Table. 1 ガウシアンフィルター 1 16 2 16 1 16 2 16 4 16 2 16 1 16 2 16 1 16 2.3.2 速度分布からコストへの変換 得られた速度分布からコストマップへ変化することが必要となる.いくつかの 変換式を定義し,それらを用いて生成したコストマップを用いてシミュレーショ(a) (b) Fig. 11 速度分布マップ: (a) は補間前,(b) は補間後である. ンを行った.100 個のスタートとゴールのセットを用意し各コストとマップを用い た自律走行のテスト行い最も移動時間の短かったものをコストへの変換パラメー タとして用いる.
2.4
ソナーマップ
ロボットのセンサにはレーザ距離センサを用いている.レーザ距離センサは高 速,高精度であるがその特性上ガラス等の透明な物体や,センサを設置している 高さ以外の障害物の認識が不可能である. ソナーを用いて生成した地図を用いることでガラス等の透明な物体を地図に記 すことでレーザーで見えない障害物を検出 ガラスを主とした透明な物体の検出 2.4.1 ソナーマップの生成アルゴリズム 基本的なアルゴリズムは 2.5.1 節と同様に各グリッドの障害物の存在率を求め ることで生成するしかし,ソナーはその特性上距離に比例して計測範囲が広がる 12ことから遠距離にある障害物ほど正確な位置を取るのが困難である.そこで障 害物領域のグリッドに距離に反比例したポイントを与え,マップ m の障害物の存在確率を式 (8) で与え任意の閾値値以上のセルを障害物とみなす. mi = 1 n n ∑ i=0 ( 1 l2 i ) (8) Fig. 12 ソナーのモデル またソナーは吸音,鏡面反射や多重反射 (Fig.13) などの影響から真値から大き く異なる値を出すことがある.吸音や鏡面反射はソナーの返答が応答が存在しな いだけであるため異常値であるかの判定は容易であるが,多重反射はその判断が 困難である.特に狭い通路などではその影響を顕著に受ける.そこで,ソナーの 計測回数が一定数以下の領域についてはノイズとして処理する.
2.5
環境変化マップ
移動ロボットは人の生活環境は日々変化しており,ロボットが使用する地図の 更新が必要である.しかしロボットが常に最新の地図を保持することは困難であ り,実際の環境と異なった地図は自己位置同定や経路探索に悪影響を与える.得 に環境の変化が激しい場所ではロボットにとって危険な場所であるといえる.自 己位置同定は環境の変化に対してある程度ロバストに対応できるが経路探索は地Fig. 13 ソナーの多重反射の例 図の変化によって大きな影響を受ける場合がある.そこで地図の更新時に環境の 変化の起こった場所を記録し,環境の変化が起こりやすい場所を発見することで ロボットがそのような場所に近づく可能性を下げるように試みる, 2.5.1 レーザマップ生成アルゴリズム この節では地図の更新を行うアルゴリズムを説明する.まず正方形に区切った グリッド地図を用意しその上にレーザの計測データをに基づき各グリッドに値を 振り分ける.Fig.14 はレーザ一本分をモデル化した物である.ここでグリッドは 占有領域と非占有領域と未計測領域に分けられる.占有領域は障害物が計測され た場所をとる.またレーザーには計測誤差が含まれるため誤差 ∆d の幅分も加え て占有領域とする.非占有領域はレーザが通過した占有領域以外のグリッドをと る.各グリッドごとに占有領域と非占有領域と判定された回数を計測回数とし, 計測回数と,占有領域と判定された回数から各セルごとに障害物が計測された確 率を計算する.一定の確率以上のセルを障害物の存在するグリッドとして地図を 更新する.またこの際のロボットの自己位置は取得出来ている前提で行う. 2.5.2 環境変化マップ生成アルゴリズム 先ほど述べた手法で地図の更新を繰り返し地図の変化を保存していき,環境変 化マップのコストを次式で与える.現在の障害物の有無,過去に渡っての障害物
Fig. 14 レーザーのモデル のあった確率と障害物の有無の変化をもとに現時刻でのマップの信頼性を求めコ ストに反映する.グリッドに変化が生じた確率を式)9) で表しこれをコストとし 用いる.また移動ロボットは経路探索時に自身を円と仮定して障害物ロボットの サイズの半径分膨張させる処理を行っている.このコストをロボットの半径分だ け膨張させる作業を行う. cost = 1 t t ∑ i=0 kMi− Mi−1k (9) M 地図データ (値は 1 もしくは 0) t 地図の更新回数
2.6
まとめ
本章では移動ロボットの基本的な機能であるである地図作成,自己位置同定, 経路探索を述べた上で,本研究のメインとなる環境情報統合マップの各要素であ る,速度マップ,ソナーマップ,環境変化マップの生成アルゴリズムについて述 べた.3.
実験
3.1
実験環境
3.1.1 Carmenの概要
本研究ではベースシステムとして Carmen Tool Kit [5] を用いる.
Carmenの使い方の詳細については A 章で述べる.以下の実験を行うに当たっ て以下の 2 点は既知とする.
ロボットの自己位置
レーザ距離センサを用いて生成した実験環境の地図
3.1.2 ロボットの仕様
本研究において ActivMEDIA ROBOTICS 製ロボット,Pioneer3 Fig.15 を使用 した.使用したレーザ距離センサは SCIK 社の LMS 200 を使用した.センサの仕 様を Fig.3 に示す. Table. 2 Pioneer-3の仕様 車体サイズ 0.51[m] x 0.42[m] 車輪サイズ 190mm 最大速度 0.5 [m/s] 最大角速度 40[deg/s] 重量 16.5[kg] 制御方法 シリアル通信 ソナーの数 8 ソナー角度分解能 20 [deg] ソナー最大レンジ 4.0 [m]
Fig. 15 Pioneer3 Table. 3 レーザレンジセンサの仕様 視野 180° 角度分解能 1°∼ 0.25° 応答時間 13 ∼ 53 ms 分解能 10 mm システム誤差 15 mm 統計的誤差 (1σ) 5 mm レーザクラス 1 最大測定距離 80 m 測定可能距離 ≦ 10 m(黒色無光沢)
(A) (B) (C) (D) (E) (F) (G) (H) (I) (J) (K) (M) Fig. 16 実験環境:本研究で実験を行った環境 地図上の記号と写真が対応している.写真は矢印の方向へ見たものである.
3.1.3 実験環境
3.2
基本機能の実験
3.2.1 地図の評価 実験の基本となるラボのマップを生成した.臨海副都心センターの 3F の地図 である Fig.17 は生成したマップを建物の CAD 図面と比較したものである.これ より生成した地図と CAD 図面とがほぼ一致していることが分かる.また地図の 左右の廊下の終端が実際よりも短くなっているがこれは特徴点が少ないため ICP アルゴリズムがミスマッチングを起こしたためである.Fig. 17 地図と CAD データとの比較 ;赤色で示すのが CAD データ
3.3
速度分布マップ実験
3.3.1 速度マップ評価実験 本項目では,2.3 節で説明した速度分布マップの有用性を実験する.実験は生 成した速度分布マップ (Fig.18) と 2.2.3 節で説明した経路計画を組み合わせて評 価を行った.をそうでない場合において同じスタートとゴールのセットを与え, その際の走行距離と走行時間を比較した. 実験条件は最大速度 0.5[m/s],最大旋回速度 40[deg/s], リプラン条件はロボッ トが目標パスから 0.5[m] 離れた場合のみとした. ランダムに設定したスタートとゴールのデータセットを 200 種類生成し各コス トマップ 100 個のスタートとゴールの組み合わせをそれぞれのコストマップを用 いて経路探索のシミュレーションを行った.Fig.
18
3.3.2 シミュレーション結果と考察 その結果が Table.4 である.移動に必要とした時間はコストマップを用いない 物がもっとも多いが,経路探索の失敗が最も多く実用性にかける.次に良いのが 速度マップのみを用いた物である.この結果は衝突回数も 0 回と安全性も確保さ れていることが分かる. Table. 4 実験結果 コストマップの種類 時間 [s] 走行距離 [m] 総角度変化量 [deg] 衝突回数 [回] グラデーションマップ + 速度マップ 9481.19 3285.27 69335.67 0 グラデーションマップ 9597.00 3201.09 59086.09 1 速度マップ 7317.94 3058.46 78101.27 0 なし 6463.36 2812.68 47682.20 6 速度マップとグラデーションマップに大きな差が現れた結果と理由として次の ことが上げられる.Fig.20 パスの速度マップを用いた場合とグラデーションマッ プを用いた場合の走行の軌跡を表した物である.走行軌跡に大きな差が現れてい る.また同じ場所のコストマップは 19 であるが, Fig19(b)は下の方の通路は障害物に挟まれ障害物の距離応じたグラデーション によってコストが非常に高くなっている.これに対して Fig19(a) は通路は細いも ののここを通過するのに減速や衝突がなかったため危険はないとしてコストが低 めに設定されている. 以上のことから障害物の距離から機械的にコストを求めたグラデーションマッ プは障害物からの距離をとった安全な経路を生成するのには有効だが場合によっ ては安全に走れる最短経路を探索できない場合がある.これに対し速度マップは, 速度が速い場所はロボットがトラブルなく走れていることを結果的に示している 物であるため,見掛け上危険に見える経路でも安全であるかどうかを判別できる. また,本当に危険な場所は衝突や減速が発生し速度マップのコストが上昇するた め危険な場所を回避できる.この点については 4 速度マップとコストマップ無し の衝突回数から分かる.
よって単に幾何的に生成したグラデーションマップよりその場所の危険度と通 りやすさを正しく表しているものと言える.また「グラデーションマップ+速度 マップ」の結果に有意差が出ていないのはグラデーションマップによって速度マッ プのコストが上書きされてしまった結果だといえる. (a) 速度マップによるコスト (b)グラデーショーンマップによるコスト Fig. 19 コストマップの比較 (a) 速度マップ (b) グラデーショーンマップ Fig. 20 パスの比較
Fig. 21 グラデーションマップ + 速度マップの軌跡 Fig. 22 グラデーションマップの軌跡
Fig. 23 速度マップの軌跡 Fig. 24 コストマップ無しの軌跡
3.4
ソナーマップ実験
3.4.1 検出実験 ソナーを用いたガラスの検出実験を行った.実験は Fig.16 の環境において行っ た.閾値を 0.15,ソナーの検出回数が 1 回以下のデータはノイズとして扱い,ソ ナーマップのしきい値処理を行った.得られたソナーの地図が Fig.25 で示される. このマップの精度評価として実際の環境と比較を行った.比較結果が Table.3.4.1 である.10cm 以下の精度でデータが取得できていることがわかる.また地図は 10cmx10cmのグリッドで構成されているため,ソナーマップの最小単位は 10cm である. またソナーマップの主な目的はレーザで認識不可能な障害物の認識であるため, 既にレーザで認識でできている障害物がソナーで認識できていないことについて は得に問題としない. Table. 5 ソナーマップの精度比較 実測値 [cm] ソナーマップ [cm] A 140 150 B 123 120 C 210 210 3.4.2 走行実験 ソナーマップから生成したコストマップを用いて走行実験を行った.実験環境 風景は 16(a)(f) である.しきい値の条件は 3.4.1 と同じとし,得られた障害物を コストとして与えた実環境で走行実験を行った.その結果が 28 と 3.4.2 である.Fig. 25 ソナーマップ; 黒色で描かれているのがレーザから生成した地図,赤色で 示されているのがソナーから生成した地図,青色は不明な領域を示す.また図中 のアルファベットは Fig.3.4.1 中の物と対応している
(a) (b)
Fig.
27
Table. 6 ソナーマップの実験結果 コストマップ 成功回数 [回] ソナーマップあり 10/10 ソナーマップなし 0/10 (a) ソナーマップあり (b) ソナーマップなし Fig. 28 ソナーマップ経路比較
3.5
環境変化マップ実験
環境変化マップの性能評価を行った.評価に行うために 1 週間の環境の変化を 記録したデータを用いて環境変化マップ (Fig.30) を生成した.この結果よりドア の場所やテーブル近辺の変化率が高めに出ている.また計測誤差の影響から壁際 部分の変化率も高めになっている.なおマップ上部と左下部の範囲はは環境変化 の収集を行っていない. 環境変化率からコストへの変換は 1 倍として.環境変化マップを用いた場合と用 いなかった場合のコストマップにおいて実環境を走行した結果が Table.7 と Fig.29 である.環境変化マップありでは到達回数 10 回と良好な結果が得られているが, 対する環境変化マップなしでは到達回数 2 回であり,平均到達時間も倍近く要し ている.この結果から環境変化マップを用いたコストマップがが有効であること がわかる. Table. 7 環境変化マップの実験結果 コストマップ 到達回数 [回] 平均到達時間 [s] 環境変化マップあり 10/10 58.7 環境変化マップあり 2/10 90.7 (a) 環境変化マップあり (b)環境変化マップなし Fig. 29 環境変化マップ実験の経路の比較Fig.
30
3.6
統合実験
3.6.1 ソナーマップと環境変化マップ統合実験 実験条件 速度マップを除くコストマップの評価を Fig.16 の環境で行った. ソナーマップはラボ全域を計測した Fig.27 を用いた.環境変化マップは 1 週間 分の環境の変化を記録したデータを用いて生成した,Fig.30 を用いる. 実験のゴールセットを Fig.31 に示す.スタートは S から各ゴール A ∼ E まで の走行を本研究で生成したコストマップを使用した場合とそうでない場合の比較 を行った.また他の実験条件は以下の通りである. 実験条件 1 経路の再検索はロボットが計算した経路から 0.5[m] 外れた場合にのみ行う コストマップは障害物の距離を元にしたグラデーションマップのみ 実験条件 2 コストは環境変化マップが 0.5 倍コストはグラデーションマップの上に加算 ソナーマップのしきい値 0.15 他は実験条件 1 と同じとする. Fig. 31 実験環境実験結果と考察 各ゴールに対して各実験条件を 3 セット行った経路探索の結果 を Table.8∼12 に示す.またその時の走行した経路の軌跡を Fig.32∼36 に示す.ま た図中に実験条件 1 の軌跡を赤色,実験条件 2 の軌跡を緑色で示し,衝突した場 所を× 印で記す. ゴール A の実験では条件 2 の走行のみが成功している.ソナーマップによって 障害物が見えていたかどうかの差である Fig16(K) の緑色のマットがソナーで認 識できていたので回避ができたのである.これはゴール E の場合も同じことが言 える.こちら側もソナーマップによってガラスが認識されていたため衝突を回避 できている. ゴールセット B についてはコストマップ無しでは Fig16(G) の真ん中部分を通 る経路を選択した結果条件 1 では衝突している.衝突した付近は普段ロボットの 実験スペースとして使用しており環境の変化が多い場所 (Fig.30) である. ゴールセット C とについては Fig16(M) に環境を含んでいる.どちらの条件も 走行距離は同じだが走行時間については僅かだが差が現れている.これは環境変 化マップ初期位置が環境変化マップの影響下にありその結果経路のスターと方向 が初期姿勢と差が大きくなる方に向いてしまいその旋回動作によってタイムロス した影響である. ゴールセット D については経路と走行時間ともにあまり差が出ていない.こ れについては通貨場所の Fig16(F) 通路であり環境の変化があまりないことと, Fig16(E)が十分な広さがあるであるため環境の変化が経路探索にあまり影響を与 えないためである. 以上の結果より,実験結果 A と E よりソナーマップの有効性が,実験結果 B よ り環境変化マップの有効性が確認された.
Table. 8 Aの結果 実験条件 ゴール 走行距離 [m] 走行時間 [s] 1 × 5.49 12.29 × 5.85 13.99 × 5.48 11.87 2 ° 17.09 40.29 ° 16.34 39.68 ° 16.33 39.54 Fig. 32 Aの経路の比較 Table. 9 Bの結果 実験条件 ゴール 走行距離 [m] 走行時間 [s] 1 × 17.71 38.23 × 18.45 37.44 × 17.78 36.77 2 ° 27.81 63.89 ° 27.71 64.28 ° 27.89 65.50
Fig. 33 Bの経路の比較 Table. 10 Cの結果 実験条件 ゴール 走行距離 [m] 走行時間 [s] 1 ° 18.54 41.11 ° 18.50 40.47 ° 18.53 40.16 2 ° 18.55 45.59 ° 18.77 47.80 ° 18.63 45.09 Table. 11 Dの結果 実験条件 ゴール 走行距離 [m] 走行時間 [s] 1 ° 21.38 50.22 ° 21.77 53.10 ° 21.46 51.20 2 ° 21.89 51.00 ° 21.77 51.14 ° 21.89 52.23
Fig. 34 Cの経路の比較
Table. 12 Eの結果 実験条件 ゴール 走行距離 [m] 走行時間 [s] 1 × 41.98 85.59 × 14.78 34.53 × 14.74 35.74 2 ° 42.04 86.83 ° 41.97 85.41 ° 41.98 85.59 Fig. 36 Eの経路の比較
3.6.2 ソナーマップ環境変化マップ統合実験 3.3から 2.5 で生成したコストマップをすべて統合して実機の走行実験を行った. 統合方法は各コストマップを同じ重みで合計したものを用いる.緑の点はサブゴー ルを示しロボットはサブゴールを通って黄色の点で示すゴールへの経路探索を行 う.実験の結果障害物に衝突することなく走行距離 137.5[m],走行時間 291.5[s], 平均速度 0.47[m/s] で完走した. Fig. 37 統合実験の経路
4.
結論
本論文ではロボットの速度と安全を両立する経路探索を実現するために移動ロ ボットを構成するのに必要な基本的なアルゴリズムを述べ,経路探索時に用いる コストマップを生成する手法を提案した. 本研究では経路探索時に用いられるコストマップに様々な情報を付加すること で経路探索の計算コストを増やすことなく性能の向上を目指した. ベースとなる環境の地図を生成しその地図を基にシミュレータ環境において速 度マップを生成した.また移動ロボット Pioneer2 を使い環境のレーザ距離センサ での認識が困難なガラスなどの物体の位置を示すソナーマップを生成した.地図 の更新機能を実装し環境の地図をできる限り新しい状態に保つともに環境の変化 を記録し環境変化の起こりやすい地図の情報の信頼性が低い場所を示す環境変化 マップを生成した. そしてこれらの地図をコストマップ変換し,速度マップをシミュレーションで, ソナーマップ,環境変化マップをロボットを用いて実環境で実験を行い提案する コストマップの有効性を確認した. その結果速度マップを用いたシミュレーションで安全性を保ったまま移動時間 の短縮が達成できたまた環境変化マップとソナーマップ用いた実環境における実 験では危険な場所を回避して安全な経路探索を行うことに成功した. また本手法はコストマップマップの生成には周囲の環境情報の蓄積などに多く の時間を必要としするがコストマップの生成後は経路探索の計算コストを増加さ せることなく性能のよい経路探索が可能となる.また本研究の手法はコストマッ プを用いる他の経路探索手法に適応できる可能性が高いと考える. 今後の展望としては本研究で行っていた手動で行っていた各種マップからコス トマップへの変換のパラメータを学習などによって最適にする方法が必要である と考える.謝辞
本研究を遂行するにあたり, 研究生活において貴重かつ的確な御指導を賜わり 研究を進めるにあたって最高の環境を与えてくださいました産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センターセンター長でありデジタルヒューマン学連携講 座教授でもある金出武雄教授に対し, 心から感謝の意を表します. 研究方針について貴重なご指摘をいただきました本研究科木戸出正繼教授に深 く御礼申し上げます. 奈良先端科学技術大学院大学で御指導いただき, また東京に 着てからもお忙しい中御指導して頂きました本研究科小笠原司教授に深く感謝い たします. 研究方針, 論文執筆, 研究者としての考え方及び日常生活にいたる様々 なサポートを主にして頂きました産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究セ ンター副センター長でデジタルヒューマン学連携講座准教授でもある加賀美聡准 教授に深く感謝致します. 奈良先端科学技術大学院大学で研究方針についてご助 言いただきました本研究高松淳准教授に深く感謝致します. 本研究の遂行にあた り様々な点において幅広い知識をもとに的確なご助言をくださった産業技術総合 研究所 デジタルヒューマン研究センター西脇光一氏に深く感謝いたします. デ ジタルヒューマン学連携講座の同期生として共に頑張った野村尚央君に心から感 謝致します. 研究の進め方の研究に関する考え方や方針について有意義な助言を いただいた研究室 OB でトヨタ自動車の高岡豊氏に心から感謝します.研究の進 め方の研究に関する考え方や方針について有意義な助言をいただいた博士後期課 程 2 年の鈴木夢見子氏に心から感謝します.奈良先端科学技術大学院大学での学 生生活から, 東京に来てからも大学との橋渡し役になってくれた君に荒木天外君 に心から感謝いたします. 奈良先端科学技術大学院大学での楽しい学生生活をす ごさせてくれたロボティクス講座の同期のみんなに心から感謝します. デジタル ヒューマン研究センターでの研究生活でお世話になったチームの皆様に心から感 謝します. 研究に関することはもちろん, それ以外でも大変にお世話になった産 業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センターの職員の方々, また他大学の 学生の皆様に深く感謝致します. そして, 研究の様々な面で助言, 手助けしていた だいたロボティクス講座のスタッフをはじめ, 諸先輩方, 後輩の皆様に心から感謝 致します. 最後に, 好き勝手なことばかりしている私を陰ながら支えててくれた家参考文献
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付録
A. CARMEN Toolkit
A.1
概要
Carmenは CMU で開発された GPL ライセンスのロボットのツールキットであ る.移動ロボットに必要なマップ生成,自己位置同定,経路探索といった機能加 えロボットのドライバーやシミュレータ環境が含まれている.2009 年 2 月段階で の最新版は ver0.74 である.A.2
インストール
A.2.1 インストール環境 現在以下のディストリビューションで動作確認を行った.Debian 3.1 sarge Debian 4.0 etch Ubuntu 7.10 Ubuntu 8.04 Ubuntu 8.10gccの ver4.1 以下を推奨する.ver4.2 以降の場合は-Werror オプションを外す.
A.2.2 必要パッケージ libgtk2.0-dev gdk-imlib11-dev libwrap0-dev libmagick++9-dev libmagic*-dev swig
pythonを使用する場合 python-all python-all-dev python-tcpwrap
python-cxx-dev
A.2.3 バグ
ジョイスティックパスの指定/src/joystick/joyctrl.h の 54 行目#define CAR-MEN JOYSTICK DEVICE ”/dev/js0”
#define CARMEN JOYSTICK DEVICE ”/dev/input/js0”
pioneer ドライバ/src/base/pioneerlib/pioneer lib˙c にバグオドメトリがオー バーフローによりリセットされる.
A.3
モジュール解説
central サーバーモジュール carmen に必要となるデータはここを介して各 モジュールへ送られる. param deamon パラメータモジュール必要なデータ (マップ,ロボット・シ ミュレータのパラメータ等) を読み込む simulator シミュレータモジュール laser,pioneer とは排他的に起動すること laser レーザ距離センサのドライバ pioneer pioneer のドライバ localize 自己位置同定を行うモジュール. navigator パスプランニングを行うモジュール. robot ロボットの制御用モジュールA.4
実行手順
A.4.1 シミュレーションでの実行 $ central
$ param daemon -r ROBOTNAME MAPFILE $ simulator $ localize $ navigator $ navigatorgui $ robot $ robotgui Fig. 39 navigatorgui A.4.2 実機での実行 $ central
$ param daemon -r ROBOTNAME MAPFILE $ laser
$ BASEDRIVER(使用するロボットのドライバー ex. pioneer) $ localize
Fig. 40 robotgui $ navigatorgui $ robot $ robotgui PCにジョイパッドをつないでおくと操作可能キーボードとマウスもでも操作可能
A.5
マップ作成
実機を実行手順を行ったのちに $ logger ¡file name.clf*エンコーダとレーザのデータをとれている必要あり $ log2log