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② 曲面上のグラフの彩色について

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Academic year: 2022

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(1)

曲面上のグラフの彩色について

横浜国立大学 環境情報研究院

中 本 敦 浩

(2)

曲面上のグラフの染色数(古典的結果)

四色定理.(Appel&Harken, 1977

どんな平面グラフも4-彩色可能である.

Dirac (1956), Albertson-Hutchinson (1979): G S について, χ(G) = H(S)

G は完全グラフKH(S)を部分グラフに含む Franklin (1934):

GN2について,χ(G) H(N2) – 1 = 6

1 1

1 1

2 3

2 3

4 4

5 5

6

K

7 7

(3)

局所平面グラフ

GS ≠ S0.

Gの representativity (or face width) は次で定義される: r(G) = min {|G∩γ| : γS 上の非可縮閉曲線}

S上の局所平面グラフが性質 P を満たす

⇔ ∃R(S) s.t. G S について,r(G) R(S) →Gが P を満た す

大きな平面格子を マイナーとして含む

局所平面グラフ : rep.の大きなグラフ

完全グラフKmm5)は非平面的であり,

S ≠ S0 に埋め込むと,rep 3 になる.

2 3

5 4

1

K5

γは頂点のみを通るとしてよい

(4)

なぜ,局所平面グラフが重要 ?

★ 多くのグラフの組合せ的問題は,

グラフのtree-widthが抑えられていれば,効率的に解ける.

GTree widthが大きい

G は大きな平面格子を マイナーに含む

局所平面グラフは大きな 平面格子を含む

一方,

局所平面グラフは,局所的には平面的だから,

球面以外の曲面 S の局所平面グラフは,S の種数とは独立に,

平面グラフのような性質が成り立つのではないか.

さらに,

局所平面グラフは,切り開いたら,平面グラフ.

(5)

局所平面グラフの彩色

定理. (Thomassen, 1993)

任意の曲面S ≠ S0 の局所平面グラフは5-彩色可能である.

すなわち,∃R(S) s.t. G S について,r(G) R(S) →G: 5-彩色可能

注意.1.R(Sg) 214g+6 がまじめに証明されていた

2.repが任意に大きいグラフGS で,5-染色的なものが存在.

Fisk三角形分割:奇点がちょうど2個で隣接してる三角形分割)

3.Thomassen (1997), 「任意のS ≠ S0について, S に埋め込み可能な 6-critical

graphsの個数は有限個」を証明した.これは上の定理を含んでいる.

任意の部分グラフは5-彩色可能

(6)

曲面の偶角形分割の彩色

定理. (Hutchinson, 1995)

種数 g ≠0 の向き付け可能曲面の局所平面偶角形分割

は3-彩色可能.

G S : 偶角形分割def.⇔ 各面が偶角形であるグラフ 命題.

球面の任意の偶角形分割は二部グラフである.

2 3

1 4

K4

1 2

1 2

3 4

3 4 5

K5

R(S) 23g+5 がまじめに証明されていた

★「3」は最良である.

Joan Hutchinson

(7)

定理. (Hutchinson 1975, Liu et al. 2019)

G を曲面S ≠S0の偶角形分割とすると,次が成立.

ただし,この評価は N2 S2以外で最良である.

次の定理が知られている:

グラフ

偶角形 分割

球面

4 2

射影平面

6 4

トーラス

6 4 7

5

クライン

の壺 一般の曲面 局所平面的

5

3

?

向付可能 向付不可能

演習問題 4.上の定理を証明してみよう. Joan Hutchinson

4

射影平面の場合

Cycle parity という代数的な量を導入して,Hutchinsonの定理を証明する

(8)

Robertson-Seymour のグラフマイナー

G, HS : グラフ

HG のマイナー (曲面マイナー)⇔

H G から,辺の除去と縮約を繰り返して得られる

def.

G H

定理.(Robertson&Seymour, 1988)

H S ≠ S0 を固定すると,次を満たす整数 NS(H) が存在する:

GS について, r(G) NS(H) ⇒ G H をマイナーとして含む

この定理が使えることがわかると,局所平面グラフのrepの大きさを 真面目に評価しなくなった.

(9)

偶奇性の議論

★ 偶角形分割では,2つのホモトピックな閉路の長さの偶奇性は等しい.

ホモトピックな閉路

C3の偶奇はC1C2 の偶奇の和. (C1, C2, C3のどれかは偶数)

C

1

C

2

C

3

D

C

2

C

2

C

1

C

3

C

1

D

★ 可縮な閉路は偶閉路.

(10)

偶角形分割の cycle parity

基本群π1(S)

基点を始点・終点とするS上の 曲線をホモトピーで割った群

S

g

(11)

偶角形分割の cycle parity

基本群π1(S)

基点を始点・終点とするS上の 曲線をホモトピーで割った群

偶角形分割 GS を固定.

準同型写像 ρG : π1(S)→Z2 が定まる

a

1

a

2

a

3

b

1

b

2

b

3

基底:a1,b1,…,ag,bg

ρG : π1(S) → {0} ⇔ GS:二部グラフ ρG (a•b) ≡ ρG (a) + ρG (b)

ρG (id) ≡ 0

ρG GCycle parityという

GS

(12)

Cycle parityの練習

球面 S0 π1(S0) = {id}

⇒球面の偶角形分割

すべて二部グラフ

a

射影平面 N1

π1(S0) = {id, a}, ただし,a2= id

⇒非可縮閉路の偶奇で,

二部グラフ性が決まる

クラインの壺 N2 b

a

a

b ab

b a

a

b

トーラス S1

π1(S1) の基底がa,b

Cycle parity

(0,0), (1,0), (0,1), (1,1) ab

2部グラフ

π1(N2) の基底がa,b

Cycle parity

(0,0), (1,0), (0,1), (1,1)

2部グラフ

b

(13)

1. Robertson-Seymourの結果により,左図のように disjoint偶閉路が取れる

3. 境界に3色目を導入し,境界を同一視せよ.

4. G の3-彩色を得る.

G

0

2. 切断したグラフG0は二部グラフ

G

H : 各閉曲線にhomotopic 4本のdisjoint cyclesを持つ

H

Hutchinsonの定理の証明.

(14)

射影平面の四角形分割の染色数

定理. (Youngs, 1996)

G を射影平面の四角形分割とすると,χ(G) ∈ {2,4}

a

a

b

b

c c

d

d e e

f

f

a

a

b

b c c

d

d e

e

GN1 : 偶角形分割 ⇒ χ(G) ≦ 4 (Hutchinsonの結果) χ(G) = 4 G はodd 四角形分割を含む

★ (Gimbel&Thomassen, 1997)

GN1 : 三角形なし,3-彩色不可能 ⇔ G はodd 四角形分割を含む

(15)

補題. GN1:二部グラフでない四角形分割

任意の彩色 c: V(G) →{1,2,...}について,4頂点の色がすべて異なる面 f (polychromatic face) が存在する.

a

a

b

b c

c

d d

e

e

1. G を奇閉路 C で切り開く.

2. ∀辺 xy について,c(x)<c(y)のとき,向きx→yを与える

Let

2 1 2

3 4

1 4

1 1

-1 -1

1 1

-1

-1 1

2

4 1

3

1

1

1 -1

0 0 2

Quadrangulations on the projective plane

1 1

2 2

3 4

3 2

4

3

3

2 3

1

2

2

2 1

4 4 2

4 4

3 1

3.

任意

f について,時計回りOを与え

−1 1

( is along fO) ( Otherwise)

(16)

a

a

b

b c

c

d d

e

e 1

1

2 2

3 4

3 2

4

3

3

2 3

1

2

2

2 1

4 4 2

-1 1

= 2t ≠ 0 ⇒ ∃ fF(G) with

f は polychromatic.

2 1 2

3 4 1 4

1 1

−1

−1

1 1

−1

−1

1

2 1 4

3

1

1

1

−1 Let

1 1

-1 -1

1 -1

since

補題. GN1.:四角形分割

任意の彩色 c: V(G) →{1,2,...}, について, 4頂点の色がすべて異なる面 f (polychromatic face) が存在する.

(17)

グラフ

偶角形 分割

球面

4 2

射影平面

6 4

トーラス

6 4 7

5

クライン

の壺 一般の曲面 局所平面的

5

3

向付可能

向付不可能

4 ?

クラインの壺 N2 b

a

a

b ab

π1(N2) の基底がa,b

Cycle parity

(0,0), (1,0), (0,1), (1,1)

2部グラフ

トーラス

(18)

C

|C| が偶数

a

b b

c d e

c a

d f

g

g f

e

|C| が奇数

1 2

3 4

場合1.

場合2.

演習問題5.クラインの壺N2の四角形分割 G について,N2をアニュラ スに切り開く閉路Cの長さが奇数のとき(場合1)と偶数のとき(場 合2)に,染色数がどうなるか議論せよ.(必要であれば,Cとホモ トピックに数本のサイクルが取れることを仮定してよい.)

(19)

定理. (Youngs, 1996) 再掲

G を射影平面の四角形分割とすると,χ(G) ∈ {2,4}

定理. (Archdeacon, Hutchinson, Nakamoto, Negami, Ota, 2001) G Nk : 四角形分割

Gが向き付け可能に切り開く奇閉路を持つ ⇒ χ(G) ≧ 4

射影平面 クラインの壺

(20)

グラフ

偶角形 分割

球面

4 2

射影平面

6 4

トーラス

6 4 7

5

クライン

の壺 一般の曲面 局所平面的

5

3

向付可能

向付不可能

4 ?

(21)

グラフ

偶角形 分割

球面

4 2

射影平面

6 4

トーラス

6 4 7

5

クライン

の壺 一般の曲面 局所平面的

5

3

向付可能

向付不可能

4

(22)

Representativityと似た概念

GS ≠ S0.

Gの representativity (or face width) は次で定義される: r(G) = min {|G∩γ| : γS 上の非可縮閉曲線}

Gの edge-width は次で定義される:

ew(G) = min {|C| : CG の非可縮閉路}

1 1

1 1

2 3

2 3

4 4

5 5

6

7

G : 三角形分割

r(G) = ew(G)

一般に

r(G) ew(G)r(G)

k 2

face size k なら

(23)

局所平面グラフの彩色

定理. (Thomassen, 1993)

任意の曲面S ≠ S0 の局所平面グラフは5-彩色可能である.

すなわち,∃R(S) s.t. G S について,r(G) R(S) →G: 5-彩色可能

注意.1.R(Sg) 214g+6 がまじめに証明されていた

2.repが任意に大きいグラフGS で,5-染色的なものが存在.

Fisk三角形分割:奇点がちょうど2個で隣接してる三角形分割)

3.Thomassen (1997), 「任意のS ≠ S0について, S に埋め込み可能な 6-critical

graphsの個数は有限個」を証明した.これは上の定理を含んでいる.

S 6-critical graphs G1, G2, …, Gm

G : r(G) > k染色数 6 以上 G’ G: 6-critical graph

k = max{ew( f(H) ) : H = Gi, f : H→S}

→ ew(G’) k f(Gi)

任意の部分グラフは5-彩色可能

→ r(G) ≦ ew(G) ≦ ew(G’) ≦ k 矛盾

G

参照

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