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管理原則の具体例 1 指揮 命令の一元化 : 機能別組織 2 専門化の原則 : 企画部 財務部 人事部 3 統制範囲の限界 : 部 課 係の設置 4 権限 責任一致の原則 : 事業部制 カンパニー制 PDCAの具体例計画 (P) 予算制度命令 (D) 従業員の動機づけ重視調整 (C) 定例部課長会議

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(1)

論点

MEMO 過去問チェック H18−7−ウ H20−8(4)−ウ

マネジメント・サイクル

期間別経営計画

No.

1~2

 ★印は、論点を理解するのに最適な問題を示します。

1

 マネジメント・サイクル

(1)ファヨールの管理過程論  ファヨールは企業の経営活動の中で、予測・組織・命令(動機づけ)・調整・ 統制という管理過程(マネジメント・サイクル)の重要性に注目した。今日では、 一般的に、PDS(plan-do-see)やPDCA(plan-do-check-action)という形 で引き継がれており、経営計画もこのサイクルを経て策定される。つまり、経 営計画に基づき、実行し、その結果と計画との差を分析し、次の計画に役立て るのである。ナレッジマネジメントの視点から、実施段階で得られる知識を重 視してPDCAを回すことも増えている。  ファヨールのマネジメントの基本となる管理原則は 「管理過程論」 として引 き継がれ、今日では組織の管理原則として、①指揮・命令の一元化、②専門化 の原則、③統制範囲の限界、④権限・責任一致の原則の4つ(組織論論点№1 参照)が挙げられる。 計 画 組織化 動機づけ 調 整 統 制 マネジメント・サイクル 目標設定 目標遂行 C 達成度の 測定評価 A 是正 適切性維持 現在のPDCAサイクル H13年 第1問、第2問、第3問、第4問 (設問1) H14年 第1問、第3問 H15年 第14問★ H16年 第7問★ H18年 第7問 H19年 第1問★、第2問(設問1・設問2★) H20年 第8問(設問4) H25年 第1問★ 出 題 傾 向  マネジメント・サイクルと経営計画は関連性が強いため、合わせて学習する。H13年~H20 年まではH17年を除き毎年出題された重要論点。今年もやや注意。 出 題 予 想

(2)

過去問チェック H15−14−オ 管理原則の具体例 ① 指揮・命令の一元化 :機能別組織 ② 専門化の原則    :企画部、財務部、人事部 ③ 統制範囲の限界   :部、課、係の設置 ④ 権限・責任一致の原則:事業部制、カンパニー制 PDCAの具体例 計画(P)予算制度 命令(D)従業員の動機づけ重視 調整(C)定例部課長会議 統制(A)企画部・管理部設置

2

 経営計画の分類

(1)総合計画と部門計画(計画対象範囲による分類)  経営計画はその対象範囲により、総合計画と部門計画に分けられる。総合計 画は企業全体の活動を対象とし、部門計画は特定の部門を対象とする。部門計 画では更に、①事業(部)別計画、②機能別計画に分けることができる。 ① 事業(部)別計画:更に、製品別、顧客別、地域別に分けられる。  競争は事業ごとに起きているため、企業が複数の単位の事業で構成されて いる場合は、全社的な総合計画だけでなく、例えば繊維部門、住宅部門、電 気部門等の事業別に計画を立てる必要がある。それは、競争をその事業を取 り巻く外部環境である業界の競合他社、買い手、売り手、新規参入の脅威等 の競争状況に応じて計画を策定して、対処してゆく必要があるからである(論 点№13参照)。 ② 機能別計画:生産・販売・人事・財務等の機能別に分けられる。  これは、事業(部)別計画を横断して業務機能別に立案される計画である。 ここでは、事業(部)別計画が主に外部視点を考慮して立案するのに対して、 内部効率を高める視点から策定され、「生産計画、マーケティング計画、研 究開発計画、財務計画、人事計画」等の機能(論点№7参照)別に計画を立 案する。このことにより、重複した活動を避け、また、効率を向上すること を目的としている。  総合計画では、トップからの方針に基づき(トップダウン)、各部門との 調整(ボトムアップ)を経て策定されることが多い。 (2)期間計画と個別計画(計画期間の長さによる分類)  期間計画は、期間の長短により長期計画(5年から10年)、中期計画(3年 から5年)、短期計画(1年以内)に分類できる。今日では、環境変化が激し いので長中期計画として5年程度で計画することが多い。中長期計画は将来の 方向性を示すもので、詳細なアクションプランまでは必要ない。しかし、短期 計画は部門別に毎月度の詳細なアクションプランを盛り込む。

(3)

過去問チェック H14−3 LINK 理解のツボ ・経営計画 過去問チェック H15−14−アウ 過去問チェック H15−14−エ H19−2(1)−ウ  個別計画は、新製品開発や工場の建設のような特定プロジェクトに対する計 画であり期間の長さは案件により異なる。 (3)戦略計画と戦術計画  戦略計画は経営環境に企業の経営資源を適合させる、より長期的、定性的計 画である。しかし、今日の経営環境の変化は激しく、戦略計画の元となる予測 が困難になっている。最近ではシナリオという形で社員にわかりやすく伝えよ うとする試みもある。  戦術計画は経営資源を有効活用し、日常的業務を効率的に行うための、より 短期的、定量的計画である。

3

 経営計画の策定方式

(1)コンティンジェンシー・プラン(不測事態対応計画)  急激な環境変化への柔軟で迅速な対応を図るため、発生の可能性のある問題 に対して「事前に対応策を立て」、問題発生時に別の計画へ転換する手法である。 A、B、Cのどれかを選択 経営計画 不測事態発生 プランA プランB プランC (2)ローリング・プラン  環境変化が激しい現状では、一度作成した長期経営計画が、そのまま3年、 5年も継続利用できるものではない。定期的に計画をチェックし、計画とのず れが生じた場合「元の計画の一部を修正」していく手法である。 長  期  計  画 1 2 3 初年度 第1次中期計画 1 2 3 初年度 第2次中期計画 1 2 3 初年度 第3次中期計画

(4)

過去問チェック H13−2 H13−3 H14−1 H15−14−イ H16−7−ウ H19−2(1)−ア エ H25−1 過去問チェック H13−1 (3)作成上の留意点  トップマネージメントが示す将来の姿(ビジョン)に基づいて、経営計画は 作成される。このため、ビジョンは明確でわかりやすいことが重要である。企 画スタッフが作成し、トップマネジメントが承認する形が一般的であり、企画 スタッフは現場の声や現場から生まれる可能性によく耳を傾ける必要がある。 過去の実績の趨勢や積みあげによる計画部分が多いと現状の延長線上の計画に なりやすい。顧客ニーズや競合の状況、社会情勢等の分析に基づいて計画を作 成する。また、経営計画には利益計画だけでなく、社会的責任を考慮した多元 的な目標とそれを実現するための戦略を盛り込む。

4

 経営計画の効果

 経営計画には、①経営資源の合理的な配分と活用が全社的に確保される、②会 社の方針や目標を示し、全社的な方向性を定めて総合力を発揮させることができ る等の効果が期待できる。

5

 組織と戦略

 戦略という軍事用語は、チャンドラーが経営学に持ち込み、米国の巨大企業を 研究して、組織構造と戦略に関する命題を導き出した。 (1)組織(構造)は戦略に従う(チャンドラー)  企業は環境変化を察知するとそれに対応する戦略を策定する。しかし、その 戦略と組織構造が適合しないためにさまざまな管理問題が発生し、その解決の ために新しい組織構造を構築することになる。研究対象として選ばれたGM等 の4社は企業成長を実現するために職能別組織から事業部組織へと組織構造を 変革していった経緯がある。チャンドラーは、戦略が独立変数であり、組織を 従属変数とみなしている。 (2)戦略は組織に従う(アンゾフ)  これに対して、アンゾフは「戦略は組織(風土)に従う」という逆の見解を 示した。彼は優れた戦略を策定しても組織の抵抗によって実現しないことに注 目した。  企業がどのような戦略を策定するかは、組織の持つ能力や特性によって規定 されると考え、不連続な変化や不測の事態に対応できる戦略を策定するために は、まず能力と特性を備えた組織を構築する必要があるとした。特に画期的な 新しい戦略を策定するには組織の変革が必要であるが、人は変革を嫌い、安住 のために変革を妨害したりする。アンゾフは組織革新の抵抗も考慮して、戦略 を実現するにはそれに対応する能力が必要だと主張した。戦略は組織によって 規定される従属変数であり、人材は組織能力の構成要素であると位置づけてい る。  なお、現在では戦略と組織は相互に影響しあうと考えるのが妥当である。

(5)

LINK 生産管理 論点№20 過去問チェック H19−1−イ 過去問チェック H19−1−ア

6

 マネジメントシステム

 マネジメントシステムとは、組織の方針、手段およびプロセスを管理し、通常 PDCAサイクルを使い継続的に改善するためのフレームワーク(枠組み)である。

(1)TQM(Total Quality Management)

 TQMは顧客の満足する品質を兼ね備えた品物やサービスを適時に適切な価 格で提供できるように企業の全組織を効果的・効率的に運営し、企業目的の達 成に貢献する体系的活動である(デミング賞委員会による定義)。  米国でTQC(Total…Quality…Control)をマネジメントシステムに発展させ たものである。 (2)ISO9001 ①  I S O9001は、 組 織 が 品 質 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム( Q M S:Quality… Management…System)を確立して、文書化し、実施し、かつ、維持すること、 およびその品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善するために要 求される規格である。 ② 品質マネジメントシステムの有効性を改善するためプロセスアプローチを 採用し、組織内においてプロセスを明確にし、その相互関係を把握し、一連 のプロセスをシステムとして適用して運営管理する必要がある。 (3)シックス・シグマ ① シックス・シグマは、統計的手法を重視してプロセスの継続的な改善を目 的としたマネジメントシステムである。モトローラー社が開発して、GE社 (ゼネラル・エレクトリック社)が発展させたものであるが、その資格の名 称にブラックベルト(黒帯)を使う等、日本のQC活動からも影響を受けて いる。 ② シックス・シグマでは、測定のMフェーズ(Measure)、分析のAフェーズ (Analyze)、改善のIフェーズ(Improve)、管理のCフェーズ(Control)の 活動を回すことにより螺旋状に目標に近づけようとする運動である。 ③ シックス・シグマでは、改革しようとするいくつかのプロセスに重み付け を行ってビジネスにインパクトの大きいものから着手するが、その際、QC 運動のように社内の小集団から改善を進めるだけでなく、顧客の声(VOC: Voice…Of…Customer)を重視している。 ④ 本来の統計的管理幅における±6σ(シグマ)において、管理限界を外れ る確率は10億分の3~4である。しかし、マネジメントシステムにおけるシ ックス・シグマは、その統計学的数値とは少し異なり、平均値の揺らぎがあ っても不良品の発生頻度を100万分の3~4以内に抑えて経営効率を上げよ

(6)

過去問チェック H19−2(2) 過去問チェック H19−1−ウ うとする活動である。ただし、統計的手法を軽視したものではなく、むしろ 重視している。 (4)バランス・スコアカード ① バランス・スコアカードは、デビッド・P・ノートンとロバート・S・キ ャプランによって開発され、マネジメントシステムとして企業や組織のビジ ョンと戦略を具体的なアクションへと変換して計画・管理して戦略の立案と 実行を支援するフレームワークとした。 ② バランス・スコアカードでは、企業戦略を財務の視点(過去)、顧客の視 点(外部)、業務プロセスの視点(内部)、学習・成長の視点(将来)の4つ の視点から考える。ただし、ノートンとキャプランは、視点を4つに限定す るものではないとしている。 ③ バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものを「業績向上要因(パ フォーマンス・ドライバー)」と呼んでいる。戦略目標を達成するために最 も重要な要因である。 財務的視点 バランススコアカードの4視点 ビジョンと戦略 「バランス・スコアカード入門─導入から運用まで」 吉川 健男著より ランススコアカードの実行 結果の分析と報告 成 功 顧客の視点 ・戦略目標 ・重要成功要因 ・業績評価指標 ・ターゲット ・戦略プログラム /アクション・ プラン 業務プロセス の視点 ・戦略目標 ・重要成功要因 ・業績評価指標 ・ターゲット ・戦略プログラム /アクション・ プラン 人材と変革 の視点 ・戦略目標 ・重要成功要因 ・業績評価指標 ・ターゲット ・戦略プログラム /アクション・ プラン ・戦略目標 ・重要成功要因 ・業績評価指標 ・ターゲット ・戦略プログラム /アクション・ プラン スタート (4)マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(=MB賞) ① MB賞は、1987年のレーガン政権のもとで、米国の国際競争力の向上を目 的として設立されたもので、創造的でかつ継続的に顧客が満足するクォリテ ィ改善、その実施度合の評価、その改善領域発見のための優れた経営システ ムを有する企業を、大統領自らが毎年製造部門、サービス部門、中小部門の 3つの部門から最高6社に賞を与えるものである。

(7)

LINK 生産管理 論点№10 理解のツボ 過去問チェック H13−4(1) H16−7−アイエ H18−7−アエ ② MB賞は、経営トップのリーダーシップを重視するマネジメントシステム であるが、制度を設立する時に日本のQC活動を研究してその長所を取り入 れている。 ③ MB賞は、単なる現場の品質の向上だけではなく、「経営トップ」のリー ダーシップや顧客の重視等に関するマネジメントシステムであるため、「経 営品質賞」と呼ばれている。 ④ MB賞は、その評価基準の見直しを順次行う。MB賞の考え方に基づいて 作られた日本経営品質賞も、その評価基準は見直されている。 (5)ジャスト・イン・タイム(JIT)とかんばん方式 ① JITは、トヨタ自動車が開発したシステムで、後工程が使用した分だけ 前工程が作るのを原則として、作りすぎを防ぎ生産効率を上げようとしてい る。それは工程間の平準化、生産指示かんばんと引き取りかんばんによる連 携作業により成り立っている。 ② 「かんばん方式」の名称は、競合他社や他国に分かりにくいように、JI Tの別名として名づけたものであるが、「かんばん」自体は、ジャスト・イン・ タイムを実現させるための管理の道具である。 ③ JITにおいて、問題が発生すると「なぜ」を5回繰り返して考えようと しているのは、単なる問題発生の原因を考えるに止まらず、真の原因を把握 することが重要であると考えているからである。 ④ JITは、自動車の大量生産の中から生み出された生産管理システムであ るが、他の産業にも導入されている。 〔経営計画〕  経営計画の一般的な策定手順は以下のとおり。 ①…本社経営企画部門が経営環境分析を行い、それを参考にトップマネージメント が中・長期ビジョン、基本方針、ガイドラインを示す。 ②…各事業部門はトップマネージメントが示したビジョン、基本方針、ガイドライ ンに沿って事業計画(事業戦略、目標および実行計画)をまとめる。 ③…本社経営企画部門は各事業部門の事業計画をとりまとめ、必要に応じて調整を 行う。とりまとめた計画をトップマネージメントに提出、承認を得る。  日米で比較すると、米国ではトップに権限が集中する傾向が強く、統合的意思 決定の枠組みとして機能するが、日本は現場の意向が尊重される傾向が強く、行 動指針として機能している。  経営計画の策定方式は上記が基本であるが、経済のグローバル化等に伴い、急 激な環境変化が起こる可能性が高まっており、その対処のために予め複数の対策

(8)

学習のPOINT 案を策定することがある。これをコンティンジェンシー・プランという。また、 経営計画を作成した後は、それを遂行、その結果を検証し、次の経営計画に活かす、 いわゆるPDCAサイクルを回すことが重要である。計画通りに進まなかった場 合に、現場の状況を顧みずに分析に偏重してしまう分析マヒ症候群に陥らないよ うに注意しなければならない。 □ 経営計画はPDCAサイクルで策定される。 □ 管理の4原則を具体例とともに覚える。 □ 経営計画分類は総合と部門、期間(長期・中期・短期)と個別、戦略と戦術 の違いを整理して理解する。 □ 経営計画策定方式はコンティンジェンシー・プランとローリング・プランの 違いを理解する。 □ 経営計画はビジョンに基づき現場の声によく耳を傾けて作成されなければな らない。 □ 経営計画には、社会的責任を考慮した多元的な目標とそれを実現した戦略を 盛り込む。 □ 経営計画は①経営資源の合理的な配分と活用が全社的に確保される、②会社 の方針や目標を示し、全社的な方向性を定めて総合力を発揮させることがで きる等の効果が期待できる。 □ マルコム・ボルドリッジ賞は、経営品質賞といわれ、顧客満足、継続的改善 等に重点を置いて優良企業を表彰する。米国の国際競争力の向上を目的とし て設立された。 □ シックス・シグマは、統計分析手法、品質管理手法を体系的に用いて各種プ ロセスの分析を行い、不良率引き下げや、顧客満足度向上等を改善するマネ ジメントシステムである。 □ バランス・スコアカードは、企業のビジョン・戦略を具体化するために、4 つの視点から業績評価指標を設定し、目標管理と連携させるマネジメントシ ステムである。

(9)

論点

MEMO 過去問チェック H14−2(1、2) H17−4

1

 意思決定の内容と階層構造

(1)意思決定のレベル  アンゾフ による分類が下記であり、それぞれのレベルに、たとえば経営トッ プ、事業部長、部課長が対応する。 ① 戦略的意思決定 企業が成長してゆくためには、激しい外部環境の変化に対して内部の経営資 源をどのように割り当てるか、その戦略的意思決定が重要である。それは、 企業の製品分野と市場分野の選択にかかわる意思決定でもあり、その代表的 モデルとして、アンゾフの製品と市場、現在と新規の関係を分析した成長ベ クトルや多角化のマトリックス(論点№9参照)がある。 戦略的意思決定はトップマネジメントが行う。予測不可能な問題に対する意 思決定となることが多いため、フィードバックを通して、次の戦略的意思決 定に備えることが肝要である。迅速に課題を解決するために、戦略的な課題 を細分化し、担当部署に振り分け、権限を委譲することも行われる。このた めには全社的にビジョンを共有し、トップマネジメントと現場の意思疎通を 高める必要がある。 ② 管理的意思決定  最大の業績を生み出すための経営資源の組織化にかかわる意思決定であ る。決定領域は2つに分類することができる。1つは組織構造に関するもの で、権限と責任、仕事のフロー、流通等が含まれる。もう1つは資源の調達 に関するもので、開発にかかわる原材料の調達、人材教育訓練、資金調達、 設備調達等が含まれる。 ③ 業務的意思決定  現在の業務の収益性を最大化し、業務の効率性を高めることにかかわる意 思決定である。 H14年 第2問(設問1・設問2) H15年 第5問 H17年第4問 出 題 傾 向  これまで3回しか出題されていない。アンゾフの意思決定の分類とサイモンの意思決定プロ セスの概要は押さえておこう。 出 題 予 想

意思決定の階層構造

意思決定プロセス

No.

3~4

(10)

アンゾフの意思決定階層 ミドルマネジメント 戦略的意思決定 管理的意思決定 業務的意思決定 非定型的意思決定 定型的意思決定 ト ッ プ マ ネ ジ メ ン ト ローワーマネジメント (2)意思決定の内容  決定すべき内容による分類である。 ① 定型的意思決定  繰り返される特定の問題に対する日常的・反復的な意思決定である。たと えば、在庫管理等のプログラム化ができる意思決定である。業務的意思決定 は定型的意思決定が多い。 ② 非定型的意思決定  問題が複雑で代替案もその都度異なっているような問題に対する意思決定 である。戦略的意思決定は非定型的意思決定と言える。

2

 意思決定のプロセス

 サイモンによれば、経営に必要な意思決定はいくつかの代替案の中から1つを 選び出す過程のことであるが、次の4つのプロセスに分類できる。 (1)プロセスの分類 サイモンの意思決定プロセス 情報活動 設計活動 選択活動 検討活動 ① 情報活動 経営目的と「現状とのギャップ」を明確にし、問題を明確にす る活動 ② 設計活動 問題解決のための「代替案」を探る活動 ③ 選択活動 代替案を評価し、その中の「代替案のひとつ」を選択する活動 ④ 検討活動 選択された「代替案」を実行後、再検討する活動 (2)意思決定の前提  意思決定プロセスの中で使われる情報や評価、検討、採択には以下の2つの 前提がある。

(11)

LINK 経済学・経済政 策 論点№71 過去問チェック H15−5 ① 事実前提 …目的達成に向けての行動の適否を判断するための事実に関する 情報等。 ② 価値前提 目指す目的に対して「望ましい」などの価値観や倫理観等。  サイモンは、事実前提から導かれる意思決定を経営の主たる問題とした。何 を目的とするかという価値前提は重要であるが、一度その目的を把握すれば、 目的を達成するために取られる手段が適切であるか、手段選択の合理性の問題 を考察の対象としたのである。 (3)意思決定の基準  サイモンによれば、人間は現実的には満足できる水準で達成できそうな案を 選択する「満足化原理」による意思決定を行うものとしている。  たとえば、AがベターでBがベストの選択肢の場合、「もし、AがBより前 に示されるなら、Aは望ましいもの、満足できるものに思われる。しかし、B がAより前に示されるなら、Bが望ましいものと思われる」ことになる。 完全情報に基づき「客観的な合理性」のある意思決定を行うことを最適化原理 と言い、(経済人モデルとも言う)、そのためには、次の条件が必要である。 ① 全ての情報が収集され、全ての代替案が作成されること。 ② それぞれの代替案の結果を完全に予測すること。 ③ 予測された結果を単一の価値体系で評価し最適案を1つだけ選ぶこと。  インターネット等の通信技術の進歩により、人が収集できる情報量は爆発的 に増加し、情報収集コストは低下した。しかし、それでも全ての情報を収集す ることは不可能であり、コストはかかる。また、情報が必ずしも正しく伝わる とは限らない。また、重要な情報になるほど秘匿される。そして、代替案の全 てを作成することはできないし、代替案の結果も一部しか推測することはでき ない。つまり、経営の意思決定には、最適化原理の前提条件が完全に満たされ るのは困難である(管理人モデル、または経営人モデルと言う)。したがって、 不完全な条件の下で制約された合理性に従って、限られた「主観的な合理性」 による意思決定が行われる。これを満足化原理と言う。

(12)

過去問チェック H18−7−イ (問題は論点№ 2に掲載) 学習のPOINT

3

 分析型戦略論とプロセス型戦略論

(1)分析型戦略論  アンゾフに代表される経営戦略論は分析型戦略論とよばれ、戦略的な意思決 定はトップ・マネジメントの仕事であり、ミドルマネジメントは管理的、業務 的な意思決定を行うという考え方であった。その前提は、階層型組織構造であ り、戦略の策定と実行は二分されていた。 (2)プロセス型戦略論  現在のような環境変化が激しく、不確実性の高い時代においては、現場から 遠い一部の戦略スタッフによる戦略策定だけでは、現実に対応できない。そこ でメンバー同士や顧客・市場との相互作用により、新たな事業機会や変革の方 向性を模索することが重要になってくる。プロセス型戦略論には、分析型戦略 論とは対照的な4つの考え方の特徴がある。  第1に、戦略は企業と環境の相互作用や企業内で生起するプロセス・ダイナ ミクスの産物である。第2に、戦略的意思決定がトップ・マネジメントだけの ものではなく、顧客に近い現場を含めて、組織全体から生み出されるものであ る。第3には、戦略策定と遂行とが相互依存的に作用し、つねに進化する可能 性を秘めている。第4には、プロセスの中から生起してくる創発的な行動に注 目し、計画外の偶発的な現場の革新行動をも内部に取り込んで「組織学習」し ていくことから進化する。 □ 戦略的意思決定はトップマネジメントが行う。 □ 戦略的意思決定は予測不可能な問題に対する意思決定となることが多いため、 フィードバックを通して次の戦略的意思決定に備える。 □ 迅速な課題解決のため、権限委譲を行う場合、ビジョンの共有が必要。 □ インターネットの進歩で情報量は増加したが、全ての情報を収集することは 不可能。

(13)

MEMO 過去問チェック H13−4(2、3) 過去問チェック H13−11(1) LINK 経営情報システ ム 論点№28

1

 内部環境分析・外部環境分析

 経営計画・経営戦略の第1歩は自社が置かれれている内外の環境を分析するこ とからスタートする。内部環境、外部環境分析の主な項目として以下が挙げられる。  内部環境  組織構造、人材、財務力、研究開発力、販売力等  外部環境  マクロ環境(一般環境) …自然、政治、法律、経済、社会、技術等        ミクロ環境(タスク環境) 業界環境、競争環境、消費者環境、供給環境  上記の項目を分析するにあたり、事実をどのように解釈するかは人によって異 なる。これに加えて、企業によって目標は異なる。この結果、仮に競合する2社 が全く同じ情報を収集したとしても、立案される戦略は異なる。

2

 SWOT分析とは

 外部環境での企業にとって有利な環境である機会と不利な環境である脅威、内 部環境における他社より優れた強みと劣った弱みを明らかにすることである。 SWOT分析 好影響 悪影響 内部環境 S 強み W 弱み 強み(Strength):自社の経営資源の強み 弱み(Weakness):自社の経営資源からの問題点や弱み 外部環境 O 機会 T 脅威 機会(Opportunities):外部環境からの戦略機会 脅威(Threats):外部環境からの悪影響 ① 内部環境分析  内部環境とは、自社の経営資源を指すが、ここではコア・コンピタンス (自 社の持つ独自の技術やスキル・論点№15参照)や価値連鎖(バリュー・チェ H13年第4問(設問2・設問3)、第11問 (設問1) 出 題 傾 向  環境分析、SWOT分析は基本中の基本のため、本試験での出題の可能性は低いと予想する が、基本として理解はしておく。 出 題 予 想

外部環境分析・内部環境分析

No.

5

(14)

学習のPOINT ーン・論点№14参照)、企業文化等の自社の強み・弱みを分析・評価する。 ② 外部環境分析  外部環境とは、自社を取り巻く「マクロ環境、ミクロ環境」であり、外部 環境が自社に与える事業機会や脅威を分析する。  業界・市場環境を規定する要因として、ポーターのファイブ・フォース・ モデルによる競争市場規定要因(同業者間の競争の強さ、新規参入の脅威、 代替製品の圧力、供給業者の交渉力、買手の交渉力)も使われる。

3

 SWOT分析と戦略立案

SWOT分析と戦略代替案のパターン S 強み W 弱み O 機会 強みを生かし事業機会をつかむ施 策 弱みを克服し、機会をつかむ戦略 T 脅威 強みを活かし、脅威を最小限にす る戦略 弱みを克服し、脅威を最小限にす る戦略  このような「強み、弱み」「機会、脅威」が、クロスしたところに戦略立 案を考察する手法で、クロス分析ともいわれる。  経営戦略は一貫性が必要である。そして、自社の強みを活かし、絶えず変 化するビジネス環境に適応することが重要である。 □ 内部環境・外部環境分析の主な項目を理解する。 □ 内部環境・外部環境分析においては、事実の解釈は人によって異なる。また、 企業の目標も異なるため、同じ情報を収集しても戦略は異なる。

(15)

MEMO LINK 理解のツボ  ・ドメイン 過去問チェック H14−9(2) H23−1−ウ H24−1−エ H25−5−イウエ オ H27−2−ウエ ★印は、論点を理解するのに最適な問題を示します。

1

 ドメイン とは何か

 企業が行う事業活動の領域のことである。これは現在のみならず将来の潜在的 な事業領域も含まれる。ドメインとは、自らが競争相手と戦う 「土俵」 と 「自社の アイデンティティー」 を規定することであり、利害関係者の理解を得られるもので なければならない。複数の事業を営む場合、企業体としての方向性を定義する企 業ドメインとは別に、個々の事業レベルでのドメイン(事業ドメイン)を設定する。 事業ドメインは企業ドメインに適合していなければならない。  ドメイン設定の考え方には「物理的定義」と「機能的定義」の2つがある。  物理的定義は製品そのものの視点から定義されるもの、一方、「機能的定義」は 製品や技術が持つ機能の視点から定義されるものである。  レビットは、鉄道会社はアメリカの産業の発展の基礎であったにもかかわらず衰 退した例を挙げて、ドメインを「鉄道業(製品中心)」から「輸送業(顧客ニーズ中心)」 に設定しておくべきだったと指摘している。鉄道業という設定が物理的定義であり、 輸送業という設定が機能的定義である。製品はいずれは陳腐化するものの、機能 面に重点を置くことによって、事業の可能性を広げることができる。ただし、これ に対して、「輸送業というドメイン」では広すぎて、現実の戦略立案に役に立たな いとする見解もある。  ここでニーズとは、「生活上必要な充足を求めている状態(例:のどが渇いた)」 ということであり、ウォンツとは、「ニーズを満たす特定のもの(例:コーラ)を 欲する状態」をいう。  ウォンツは、ニーズを満たすための道具・手段に過ぎないが、目の前のウォンツ だけに目を奪われて、その背景にあるニーズを認識できないことをマーケティング・ マイオピア(マーケティング上の近視眼)という。  いずれにせよ、鉄道会社の場合では、人々の鉄道に対するウォンツそのものが 重要なのではなく、人と物を移動・輸送したいという顧客のニーズを理解していな かったのが問題である。また、映画産業も「映画」にこだわるのではなく「娯楽産業」 または「情報産業」としてドメインを設定することで、新たな戦略が見えてくる。 H13年 第5問 H14年 第9問(設問2) H17年 第7問 H23年 第1問 H24年 第1問★ H25年 第5問★ H27年 第2問★ 出 題 傾 向  ドメインは経営に大きく影響する重要な意思決定であり、要注意。なぜ自社の事業領域(ド メイン)を決定することが必要か、その意義や留意点を押さえておく。 出 題 予 想

事業領域(ドメイン)の決定

No.

6

(16)

過去問チェック H23−1−ア H24−1−オ H25−5−オ H27−2−オ 過去問チェック H13−5 H23−1−エ H24−1−アイエ H25−5−ア 過去問チェック H17−7 H23−1−イオ H27−2−アイ 理解のツボ 学習のPOINT

2

 ドメインの決定

 企業ドメインは、エイベルの3次元定義では、「市場・顧客グループ(誰に)」、 「顧客ニーズ(何を)」、「技術(どのように=製品形態)」を決めることである。また、 事業領域の広がりと競争相手に対し、どの程度の違いを提供するかという差別化 で事業は決定される。事業ドメインによって、事業の方向性が詳細に設定される ことによって、事業マネジャーのオペレーションの方向性が規定され自律性が確 保される。

3

 ドメイン決定の意義

 ドメインの決定により、企業ドメインの場合は企業全体として、事業ドメイ ンの場合は当該事業について次のような効果が期待できる。 ① 企業の意思決定の範囲や焦点を絞ることができる。 ② 必要とされる経営資源が明らかになる。 ③ 企業の内外に自社のアイデンティティーを示すことができる。 ④ 他社のドメインと比較分析することで、自社の競争優位性を分析できる。 ⑤ 戦略の基礎となり、競争範囲を特定できる。

4

 留意すべき点

① 広すぎると焦点がぼけて経営資源の集中が困難になり顧客満足できない。 しかし、狭すぎると活動の範囲が小さく成長の可能性が狭まる。 ② ドメインの規定は将来の企業存続に大きな影響を与えるため、慎重に検討 する必要がある。 ③ 社内・社外へのドメイン規定を浸透させ、理解してもらうドメインコンセ ンサスの必要がある。 ④ 環境変化に応じて再定義が必要である。しかし、、再定義して、事業の仕 組みを再構築するには時間がかかる。また、ドメインの再定義にともない事 業活動が変わる場合、利害関係者の理解を得るのが難しい場合がある。 〔ドメイン〕  企業が事業活動を行う領域、企業独自の生存領域を指す。企業単位の活動領域 を企業ドメイン、事業単位の活動領域を事業ドメインといい、自社の強みを活かし、 将来にわたって生存・発展してゆく領域を決定する。企業は自社のドメインを適 正に設定することで必要とされる経営資源が明らかになり、意思決定の範囲や焦 点を絞ることができるとともに企業の内外に自社のアイデンティティーを示すこ とができる。  ドメインの定義が狭すぎてしまうと、多様化する顧客ニーズに適合できなくな り、事業拡大の機会を失うことにもなる。逆に広すぎてしまうと、経営資源が分 散したり、他社との競争に巻き込まれやすくなったりといった危険性がある。 □ 目の前のウォンツだけに目を奪われて、その背景にあるニーズを認識できな いことをマーケティング・マイオピアという。 □ エイベルの3次元定義 誰に(市場)、何を(顧客ニーズ)、どのように(技術、 製品形態)を決めること。 □ ドメイン決定の意義と留意点を理解する。

(17)

MEMO 過去問チェック H13−6−ac

1

 経営戦略の2つの階層

 複数の事業を行う企業では、全社的な観点での全社(企業)戦略のレベルと、 その下に位置する事業(別)戦略と機能戦略の2つの階層の戦略レベルがある。 単一事業の企業では事業戦略は全社戦略と同一となる。…

2

 全社(企業)戦略

 全社戦略は企業全体の将来の成長の方向性を定める。成長戦略とも呼ばれ、 その内容は次の通りである。 ① 事業間のバランスをとり最適な事業構成を決める→ドメインの決定 ② 成長戦略(場合によっては撤退戦略)の決定(論点№9…成長ベクトル参照) ③ 経営資源の適正配分(論点№12…PPM参照)

3

 事業戦略

 ある事業単位での戦略である。特定の分野で他企業とどのように競争してい くかの戦略となるので、競争戦略とも呼ばれる。  ここで、ドラッカーの事業の考え方は、「事業とは何かを理解するためには、 事業の目的から出発する必要がある」として、それまでの企業経営の全社的な 資源配分の問題として事業経営を見ていた立場ではなく、「事業の目的は顧客 を創造することである」としている。これは、顧客価値の創造から見ているも のであり、彼は「事業は利益の点からは定義も説明もできない」としている。 それは、事業の市場成長率と相対的市場占有率からキャッシュフロー等を考え て事業への投資を考える「分析論」との立場の違いを明確にしているのである。 彼は、「顧客を創造する事業」の「事業を営む企業の機能」は「マーケティン グとイノベーションの2つだけである」としている。この考え方は、コトラー のマーケティング研究の成果による顧客を中心とした考え方から、さらにポー ターの事業を中心とした競争の考察につながってゆくが、競争優位は企業が顧 客のために行うさまざまな活動の総和として生み出す価値の大きさ(=価値連 H13年第6問 出 題 傾 向  H13年の出題以降、出題されていない。会社で働いている方は特に学習しなくても対応でき るものと思われる。 出 題 予 想

階層別戦略(事業戦略・機能戦略)

No.

7

(18)

過去問チェック H13−6−bd 鎖、論点№14参照)により生まれるという「競争戦略」につながる。

4

 機能戦略

 機能戦略は、事業戦略を横断するものであり、業務機能別に分割した戦略の ことである。生産戦略、マーケティング戦略、研究開発戦略、財務戦略、人事 戦略等の切り口となる。 経営戦略のマトリックス構造 機 能 戦 略 (事業戦略) マーケティ ング戦略 経営戦略 環境適応のパターンを将来志向的に 示す構造であり、企業内の人々の意思 決定の指針となるもの。 意 義 ①環境変化へ適応 ②成長方向性の探索 ③競争優位の確保 ④経営資源の配分と蓄積

5

 戦略のサブセット

 経営戦略は、主要な競争相手を見定めて自社の経営資源の配分を決定して、 中長期的な経営方針を策定する。しかし、部門数が増えてくると主要な競争相 手が全社同一とは限らない。例えば、パナソニックとソニーはライバルである が、洗濯機やクーラー部門では、競合しない。またホンダの二輪車部門では、 ヤマハやスズキを競合と考えても、トヨタを競合とは考えない。

(19)

学習のPOINT  このように、全社戦略を部門ごとに適用する段階で、微妙な変化が生じて、 部門ごとの戦略のサブセット(全社戦略の一部の要件だけを満たすこと)が必 要となる。こうして、企業全体の方向性を考える企業戦略、事業戦略(地域戦 略を含む)、機能別戦略等に分かれて、階層構造またはマトリックス構造を形 成する。 □ 全社戦略は、①事業間のバランスをとり、最適な事業構成を決める、②成長 戦略の決定、③経営資源の適正配分を定めること。 □ 事業戦略は競争戦略のこと。 □ 機能戦略は、生産戦略、マーケティング戦略、研究開発戦略、財務戦略、人 事戦略等の切り口となる。

(20)

論点

MEMO 戦 略 策 定 プ ロ セ ス 経営理念 事業領域(ドメイン)の設定 経営戦略代替案の策定 経営戦略代替案の選択 経営戦略の実行 全 社 戦 略 ( 成 長 戦 略 ) 事 業 戦 略 ( 競 争 戦 略 ) 成果フィードバック 企業共通の価値観 内部環境・外部環境分析 SWOT分析 成長戦略 競争戦略 オペレーション効率化 H13年~H27年出題実績なし。 出 題 傾 向  戦略策定のプロセスを知っておけば十分である。試験対策としては、各プロセスにおける詳 細が必要となる。 出 題 予 想

戦略立案プロセス

No.

8

(21)

1

 環境分析

 SWOT分析により、内部環境における強みと弱み、外部環境における機会 と脅威を明らかにする。

2

 戦略代替案の策定と選択

 戦略代替案は次の3つの観点から策定されるが、代表的手法は次のとおりで ある。 ① 製品・市場の決定(ドメインの決定): 成長ベクトル(論点№9参照)     (市場浸透戦略、市場開拓戦略、製品開発戦略、多角化戦略) ② 効率的資源配分: PPM(論点№12参照)     (金のなる木、負け犬、問題児、花形製品) ③ 競争戦略の決定: ポーターの3つの基本競争戦略(論点№14参照)     (コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)

(22)

論点

MEMO

1

 成長ベクトル

 成長ベクトルは、「製品」と「市場」、「現在」 と 「新規」 を掛け合わせたマ トリックスで将来の成長の方向性を決定するためのモデルである。 製品-市場マトリックス 製品 市場 現在の製品分野 新しい製品分野 現在の市場 市 場 浸 透 製 品 開 発 新しい市場 市 場 開 拓 多  角  化 (1)成長ベクトルの戦略類型 ① 市場浸透戦略  現在の製品分野と市場分野のままで売上やシェア拡大を図 る戦略 ② 市場開拓戦略 現在の製品分野を新しい市場分野に適合させる戦略 ③ 製品開発戦略 新しい製品分野を開発し、現在の市場分野に投入させる戦略 ④ 多 角 化 戦 略 製品分野、市場分野ともに新たな分野に進出する戦略 * ①−③をまとめて 「拡大戦略」 と呼び 「多角化」 と対比させることもある。 通常は、次のフローに従う。 製品・市場分 野の選択 ⇒ 成長ベクトル の検討 ⇒ シナジーの 測定 ⇒ 競争優位性の 判断 H14年 第6問(設問1) H16年 第8問 H17年 第8問(設問2) H18年 第2問★ H23年 第7問(設問1・設問2) H24年第2問★ H26年第5問 出 題 傾 向 ★印は、論点を理解するのに最適な問題を示します。  シナジーの意義、類型について理解しておく。近年、多角化よりも選択と集中がいわれてお り、多角化の注意点を押さえる。 出 題 予 想

成長のマネジメント

多角化

No.

9~10

(23)

過去問チェック H18−2−ア H26−5 過去問チェック H17−8(2) H18−2−イウ (2)シナジー  相乗効果のことで、複数の経営資源を結合したり、共通利用したりすること で、その総和以上の効果を得ることを言う。成長ベクトルの決定時に測定が求 められる。関係が深いほど、シナジー効果は発揮されやすく、シナジー効果が 働きやすい方向を目指す。 ① 販売シナジー チャネル・プロモーション・販売ノウハウの共有化等 ② 生産シナジー 原材料・技術・生産方式等の転用や共有化等 ③ 財務シナジー 設備投資の節約、研究開発費の節約等 ④ 管理シナジー マネジメントのノウハウの共有化等 シナジーの類型 販売シナジー 販売チャネル・販売促進 多角化 共通設備投資、研究開発等 財務シナジー 生産シナジー 生産方式・技術共有等 管理シナジー マネジメントのノウハウ

2

 多角化

自社の 「事業領域(ドメイン)を拡張し、新たな事業を行う」 ことである。 (1)多角化戦略の分類  多角化の程度により4つの類型に分類できる。 ① 水平的多角化 …既存製品と同じタイプの顧客に対して新製品を販売する場 合である。 ② 垂直的多角化 既存製品の生産や流通段階に進出する場合である。 ③ 集中型多角化 …既存製品と新製品間でマーケティングや、技術に関連を持 たせる場合である。 ④ 集成型多角化 既存の製品と市場に関連のない新規の分野へ進出する場合 である。集成型多角化による複合企業をコングロマリット と呼ぶ。  水平的多角化、垂直的多角化、集中型多角化はシナジー効果が期待できるが、 集成型多角化では難しい。

(24)

過去問チェック H14−6(1) H23−7(2) H24−2−ウ 過去問チェック H24−2−アエ 過去問チェック H16−8 H18−2−エ 学習のPOINT (2)多角化の理由 ① 成長機会の追求  製品のライフサイクルに合わせて、新分野で成長が図れる。 ② 収益の安定化  季節変動や流行による需要変動を平準化や複数事業で収益の安定化を図 る。 ③ リスクの分散  複数事業によるリスクの分散が図れる。 ④ 余剰資源の有効活用  組織スラック(未利用資源)を解消し 「範囲の経済性」(論点№11参照) が得られる。  組織スラックとは、組織内部に存在する「ゆるみ」を指す。組織スラックは、 緩衝剤として機能する未利用資源という考え方と非効率であるという考え方 の2つがある。サイモンの「満足化原理」をベースにする行動科学的な「意 思決定論や組織論」では、企業の意思決定の合理性は完全な合理性ではなく、 制約された合理性(論点№4参照)であるから、企業は常にスラックがある と考えられている。  「範囲の経済性」とは、単一の製品を生産するより、多角化により複数の 製品を生産する方が、経営資源の多重利用ができるためコストは低くなるシ ナジー効果のことを指す。 (3)多角化の手段  多角化を行う場合、内部成長方式と外部成長方式がある。 ① 内部成長は、社内に蓄積された資源を有効に使った新規事業開発である。 ② 外部成長は、外部環境の変化により、企業に事業展開を促す場合であり、 方法として戦略的提携とM&A方式がある。 (4)多角化の注意点  近年、多角化を進めた企業が失敗に終わるケースがしばしば観察され、「選 択と集中」による事業再編に取り組む企業が多く見られる。多角化の失敗の原 因としては以下が考えられる。 ① 高成長分野という理由だけで十分な環境分析をしないまま多角化を進め、 競争優位性を確保できなかった。 ② 自社のもつ経営資源以上に事業を拡大した。 ③ 競合企業も同様に多角化し、競争関係に変化がなかった。 □ 成長ベクトルの4つの戦略(市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化) □ シナジー(販売、生産、財務、管理等) □ 範囲の経済性… □ 多角化の4類型(水平的、垂直的、集中型、集成型)

(25)

過去問チェック H15−2(1、2) H16−9 H16−15−エ H22−6 H25−4 過去問チェック H15−12 MEMO ★印は、論点を理解するのに最適な問題を示します。

1

 戦略的提携

 提携(アライアンス)とは、企業が独立性を維持しながら、技術提携、共同開発、 生産・販売委託等を行うことであるが、「戦略的提携」 は業務上の提携を超えて、 企業の長期戦略にかかわる戦略的経営資源を提供し合い、共存を図る企業間の 同盟関係の構築を指す。交流頻度が高い程、協調関係も進展する。  得られるメリットはリスクを避け、必要な経営資源を短時間で獲得できるこ とであるが、具体的には次のようなものが挙げられる。 ① 技術やスキルの共有 ② 新製品開発費や固定費の負担減 ③ 流通経路の共有 ④ デファクト・スタンダード( 事実上の業界標準)の獲得に有利  *公的機関による基準はデジュア・スタンダードと呼ばれる。  ネットワークの外部性を働かせ、普及率を上げることがデファクト・スタン ダードのポイントである。ネットワークの外部性とは、利用者が増えることに より利便性がより増すことをいう。

2

 オープン・アーキテクチャー

 デフェクト・スタンダードを狙うため、自社の技術や設計情報を公開して利 用者を増やし、外部との効率的なネットワークを構築する戦略をオープン・ア ーキテクチャ戦略と呼ぶ。製品のモジュール化を促進し、普及を促す。 H14年 第4問(設問1・設問2) H15年 第2問(設問1・設問2)、第12問 H16年 第9問、第15問★ H17年 第8問(設問1・設問3★・設問4 ★・設問5) H18年 第4問 H22年第6問 H23年 第2問(設問1・設問2) H24年 第9問(設問1★・設問2★) H25年 第4問★ H26年 第4問、第7問★ 出 題 傾 向 事業戦略としてM&Aが活発になっており、要注意の論点である。 出 題 予 想

M&A、戦略的提携

No.

11

(26)

過去問チェック H14−8(2) H24−9(2) H27−8(2)−エ (問題は論点№ 17に掲載) LINK 経営法務 論点№8 財務・会計 論点№31 過去問チェック H16−15−ア 動 機 ・ リスクの分散 ・ 市場の成長 ・ ブランド構築 ・ 資源の調達 ・ 業界標準の獲得 ・ 競争優位の確立 制 約 ・ 共有または非共有 ・ 独占できない ・ コンフリクト ・ 事業展開上制約 競争 協 力

3

 アウトソーシング

 従来の社内業務を外部の専門業者に委託し、業務品質の向上と競争力を向上 させることである。  従来の外注と異なる点として、①外部企業の専門性やノウハウを活用する、 ②自社のコア・コンピタンス分野に経営資源を集中する、が挙げられる。アウ トソーシングのメリットとデメリットは以下のとおり。 メ リ ッ ト:…①コスト削減、②内部経営資源の有効活用、③外部経営資源の利 用や取り込み デメリット:…①社内ノウハウ等の流出、②柔軟な対応が困難、③従業員のモラ ールの低下、④アウトソーシング先との調整コストの発生

4

 M&A

 企業の合併と買収(Merger…&…Acquisition)を指す。合併とは複数の企業が 1つの企業に合同することで、買収は株式や営業権等を取得して、その企業の 支配権を獲得することである。相互にメリットがあれば 「友好的M&A」、片 方のみでは 「敵対的M&A」 と呼ばれる。 (1)M&Aのメリット  M&Aの最大のメリットは、新事業立上げの時間を買うことである。その他 のメリットは多角化のメリットと共通している。 ① 新事業立上げの時間を買うことができる。 ② 相互の未利用経営資源を活用できる。 ③ 複数事業を組み合わせること(事業ポートフォリオ)によりリスクの分散 ができる。 ④ 互いの事業の組み合わせで 「範囲の経済性」 が実現できる。 ⑤ 同一産業企業間では、シェアの増加により「規模の経済性」が実現できる。  範囲の経済性とは、企業が複数の事業活動を行うことにより、独立した事業 を行う場合よりも低コストで事業活動を行うことが可能になる効果のことをい う。モーターを使う洗濯機メーカーが、技術を活かして冷蔵庫、クーラー生産

(27)

過去問チェック H14−4(1、2) H18−4 H23−2(2)−ア H26−7 LINK 企業経営理論 論点№12 経験曲線効果 過去問チェック H16−15−ア H23−2(1)−ア 過去問チェック H16−15−ウ H26−4 する場合や、ケーブルテレビ業者が、インフラを活かしてインターネット接続 サービス事業に拡大するケースである。  規模の経済性とは、企業が生産規模を拡大してゆけば、生産物の単位当たり の平均生産コストが低下する現象をいう。大量生産の利益、規模の利益ともい う。典型的には自動車生産に見られる。規模の経済性が生じる原因は、大量購 入によるコスト低下や規模が増大しても必要な労働力や固定費が同じ比率で増 加しないばかりでなく、経験曲線効果による能率の向上があるからである。こ れは、参入障壁(論点№14参照)にも有効である。なお、規模が大きくなるこ とで管理コストが上がったり、最適生産規模を超えると現有生産技術の生産性 が低下し、生産コストが上がる場合もある。  規模の経済性のもたらす生産効果として、効率が良くなることにより原材料 の投入量の伸び率に比べて製品の出荷量の伸び率が増大することが知られてい る。これを収穫の逓増と言う。 (2)M&Aのデメリット  M&Aにおけるデメリットとして、シナジーの罠がある。シナジーがあって 「戦略上の適合性」が高いと判断されても、「組織文化の適合性」が低い場合、 組織統合の効果が上がらない。 (3)M&Aの手法 ① TOB(Take…Over…Bid)  一定の期間内に一定数量以上の株式を、一定の価格で買い付けることを公 表して行う株式の買い付けである。株式交換制度の併用により、少ない資金 での企業買収が可能になった。 ② LBO(Leveraged…Buy…out)  買収先企業の資産を担保に資金調達して、企業を買収する手法である。 ③ MBO(Management…Buy…out)  現在の事業の継続を前提に、現在の経営者・事業部門責任者と外部投資家 が株式を買い付け、経営権を取得する手法である(友好的M&A)。 ④ EBO(Employee…Buy…out)  MBOの経営者や事業部門責任者に代わって従業員が経営権を取得する手 法である。 ⑤ MBI(Management…Buy…In)  投資会社やベンチャーキャピタルが経営権を取得してからマネジメントチ ームを送り、経営に参画する手法である。

(28)

過去問チェック H23—2(2)−イ ウエ 過去問チェック H16−15−オ H23−1−イエ 学習のPOINT ⑥ 三角合併  合併の際に、消滅会社の株主に対して、存続会社の株式ではなく存続会社 の親会社の株式を割当てる合併手法のこと。 (4)M&Aの留意点 ① M&Aは迅速さが求められるので、相手企業の情報の質や量が制限される 中で意思決定を行うリスクがある。 ② 買収後の企業価値、潜在価値やシナジーを測定し、投資対効果を測る。 ③ 企業文化が異なり統合に困難性が伴う。 ④ 人材を含め重要経営資源が流出する可能性がある。 (5)M&Aへの対抗  崩れつつあるとは言え、日本はまだ長期雇用が主流であり、M&Aに対する 抵抗心が強い。また、グリーンメーラー(ターゲット企業の株式を買い集め、 その企業や関係者に高値で買い取りを迫る買収者)のようなファンドが現れる と防衛姿勢が高まる。買収への対抗として、買収者以外の株主への増資や新株 予約権付与により買収者の議決権の低下を狙う方法をポイズン・ピルという。 □ 提携は、企業の長期戦略にかかわる戦略的経営資源を提供し合い、共存を図 る企業間の同盟関係の構築を指す。 □ 提携のメリットは、技術やスキルの共有、新製品開発や固定費の負担減、流 通経路の共有、デファクト・スタンダードの獲得に有利。 □ アウトソーシングのメリットは、①コスト削減、②内部経営資源の有効活用、 ③外部経営資源の利用や取り込み。 □ アウトソーシングのデメリットは、①社内ノウハウ等の流出、②柔軟な対応 が困難、③従業員のモラールの低下、④アウトソーシング先との調整コスト の発生。 □ オープン・アーキテクチャーは自社の技術や設計情報を公開して利用者を増 やし、外部との効率的なネットワークを構築する戦略。 □ 規模の経済性が生じる原因は、規模が増大しても労働力や固定費が同じ比率 で増加しないばかりでなく専門化による能率の向上があるため。 □ M&Aによるデメリットはシナジーの罠。

(29)

論点

過去問チェック H14−6(2)−b H16−5 H26−6−アエ オ H27−1−ウエ MEMO ★印は、論点を理解するのに最適な問題を示します。

1

 PPMとは

 PPMとは、多角化企業の製品・事業を相対的市場占有率と市場成長率の2 つの座標軸の中に分類し、各製品・事業の市場ポジションを客観的に評価する ことで、戦略的視点から事業構成を見直し、経営資源の適正配分と個々の製 品・事業の目標設定を考える手法であり、ボストンコンサルティング・グルー プ(Boston…Consulting…Group:BCG)が開発した。リストラクチャリング(事 業の再構成)に利用される。 PPM ★ 花形製品 (小さいプラス) ? 問題児 (大きいマイナス) 低 $ 金のなる木 (大きいプラス) × 負け犬 (小さいマイナス) 高 低 相対的市場占有率 ( )は、キャッシュフローを示す は、事業の位置変化 は、資金の流れ 市 場 成 長 率 研究開発 H13年第7問、第8問(設問1・設問2・設問3) H14年第5問、第6問(設問2) H16年第5問、第12問 H19年第11問★ H24年第7問★ H25年第2問 H26年第6問★ H27年第1問★ 出 題 傾 向 近年、連続して出題されており、やや注意。 出 題 予 想

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・

マネジメント)

No.

12

(30)

過去問チェック H13−7 H16−12 H26−7 (問題は論点№ 11に掲載) 過去問チェック H14−6(2)−c 過去問チェック H13−8(2) H14−5 H25−2−エ  PPMは次の3つの理論が前提条件となっている。 (1)経験曲線効果  ある製品の累積生産量が大きくなるほど、その製品の単位当たりコストが低 減する(累積生産量が倍加するごとに、製品の単位当たりのコストが20−30% 低減する)。これは労働者が仕事に習熟し、作業方法等の改善が進むためである。 したがって、このことが「相対的市場占有率」に影響する。 経験曲線効果 製 品 単 位 当 り コ ス ト 累積生産量 (2)製品ライフサイクル理論  製品が誕生してから市場より消滅するまでの期間を、導入期、成長期、成熟期、 衰退期に区分したものである。なお、段階ごとにキャッシュフローのイン・ア ウトの量が違ってくる。(マーケティング論 論点№6参照)したがって、こ のことが「市場成長率」に影響する。 製品ライフサイクル 需 要 量 製品ライフサ イクル段階名 導入期 成長期 成熟期 衰退期 市場成長率 高い 高い マイナス マイナス 資金需要 多い 多い 少ない 少ない (3)マーケット・シェア  一般的に高いマーケットシェアは市場競争力が高い証であり、投資収益率と 相関関係にある。また、市場が成熟した後ではシェア拡大は困難である。勝ち 残るためにはシェア獲得が必要である。

(31)

過去問チェック H13−8(1) H14−6(2)−d H24−7−アウエ H25−2−アイ H26−6−ウ H27−1−アイウ 過去問チェック H25−2−ウ 過去問チェック H13−8(3) H14−6(2)−e H24−7−オ H26−6−ア H27−1−オ

2

 各現象の特徴

① 問題児  資金創出効果は小さいが、将来 「花形」 になる可能性を持つ製品事業である。 投資をして花形製品に育てることが目標である。それができなければ撤退す る。 ② 花形製品  大きなキャッシュを生み出すが、キャッシュを多く投入しないと市場地位を 失う。地位を守り、成熟期に金のなる木になるようにすることが目標である。 ③ 金のなる木  資金創出効果が大きく、企業の資金源である。追加投資を極力抑えて、キッ シュを最大化することが目標である。ここで得た資金を有望分野に投入する。 ④ 負け犬  長期的成長が見込めず、投資は避けるべきである。撤退を検討する。

3

 PPMとキャッシュフロー

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、企業内部のキャッシュフロ ーの観点から、製品・事業の市場ポジションを客観的に評価する。 PPMの資金の流れ ① 「金のなる木」 から 「問題児」 へ投資し 「花形製品」 を育成する。 ② 「金のなる木」 から研究開発に投入し 「花形製品」 を創る。

4

 PPMの問題点

① 市場成長率と相対的マーケットシェアの定義が不明確である。 ② 現状分析はできるが、将来の新分野進出戦略の方向性は示さない。 ③ 製品・事業間のシナジーが考慮されない。 ④ 経験曲線効果のコスト・リーダーシップのみを競争手段としている。 ⑤ 負け犬事業への再投資の機会が失われる。 ⑥ 負け犬で撤退事業とされた社員のモラールの低下が激しく、衰退を早める。 ⑦ 市場成長率が低下した成熟事業でも、新製品開発により市場成長率が伸び ることがある。 ⑧ 収益性のみで評価され、新規の戦略やイノベーションは考慮されない。 ⑨ 財務戦略的な色彩が強い。

(32)

過去問チェック H14−6(2)−a H24−7−イ

5

 SBU(戦略事業単位:Strategic Business Unit)

(1)SBUとは  複数の事業部間で、技術的関連性や市場の重複等でくくることのできる事業 単位を示す。事業部間の壁を取り払い、効果的な全社戦略を実現するためにく くり直した事業単位である。SBUの条件としては次が必要である。 ① 明確なミッションを持つ。 ② 独立した競争者がいる。 ③ 独立した戦略が立てられる。 ④ 独立した経営管理者がいる。 ⑤ 一定の経営資源の管理ができる。 (2)SBUとPPM  GE(ゼネラル・エレクトリック)社では、事業部制度の数が多くなるにつ れて売上高は増大しても、利益率が減少するという利益なき成長に陥った。そ れは、1950年代から1960年代後半に事業部の数が31から49へと増大し、徹底し た分権化が行われたが、細分化した事業構造では企業全体の戦略的視野から統 制が行われなかったことによる。事業部組織が本来の優位性を発揮するために は、成長性の低い低収益事業の整理と、成長性の見込める高収益事業への重点 的資源配分を行う戦略的意思決定が必要である。  こうした状況の中で、多様な事業への資源配分を可能とする意思決定ツール と既存の事業構造を超えて戦略的な事業展開ができる組織としてPPMに基づ くSBUが編成された。 事業本部 戦略事業単位(SBU) 事 業 部 事 業 部 事 業 部 事 業 部

6

 戦略的事業計画グリッド(ビジネス・スクリーン)

 GE社は、BCGのPPMの4現象の単純すぎる限界を補うために、マッキ ンゼー社と新しいモデルを開発した。ビジネス・スクリーンと呼ばれるこのモ デルでは、PPMの市場成長率に変わって産業魅力度の指標が用いられ、相対 的市場占有率に変わって、それを含む事業強度の指標を用いた。  産業魅力度とは、他産業との比較であり、具体的には市場規模、市場成長率、

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