日本経営品質賞とTMS
【
WAYマネージメントの実践 】
TOYOTA WAY(Lean Leadership)からの学び
トップダウン(方針展開)とボトムアップ(職場活性化)の融合
2014年4月
株式会社戦略スタッフ・サービス
Strategic Staff Services Corporation
経営品質向上プログラムとは
卓越した経営(エクセレンス)をめざして、経営全体をどの業種、業態の組織にも共通する枠組み(フレームワー ク)を用いて自らの経営の状態を尺度(ガイドライン)によって振り返ることを「セルフアセスメント」と捉えます。こ の「セルフアセスメント」という方法を用いて、経営を革新できる状態に組織の能力を高めていく一連のプログラ ムが「経営品質向上プログラム」です。 このプログラムの特徴は、 (1) どんな組織でもシステマティックに展開できる方法論として確立していること (2) 共通の枠組みを用いているので、業種や業態を超えて学習することができること (3) 時代の要請にあわせて共通の枠組みを含めた方法も変えていくこと です。 このプログラムは1996年に(財)社会経済生産性本部(現・日本生産性本部)が設立した会員組織である 「経営品質協議会」が中心となって推進しています。セルフアセスメントとは
卓越した経営をめざして、経営全体をどの業種、業態の組織にも共通する枠組みを用いて、自らの経営の状 態を尺度によって振り返ることを「セルフアセスメント」と捉えます。経営革新がどのくらい進捗しているのかを 振り返り、自らの気づきと組織能力による段階的革新を目指しています。「セルフアセスメント」とは、「評価」 を意味する行為、つまり「自分たちの活動を自己評価し、改善・革新の課題を発見する」方法という意味と、も う一つ「継続的な経営革新を進めていく考え方とその活動プロセス」の2つの意味があります。顧客価値を生 むプロセスに着目し、経営革新を進めることを通じて多くの気づきを得ることもアセスメントと考えています。 日本経営品質賞のアセスメント(評価) 基準は、目指すべき方向、基本理念を 構成する4つの要素、7つの重視する考 え方をベースとして、組織プロフィールと 8つのカテゴリーからなるフレームワー ク、20のアセスメント項目から構成され ています。 このガイドラインは、元々アメリカの品質管 理の専門家フィリップ・クロスビーが、組織 マネジメントが品質に重要な影響を持つと 考え、品質の違いを生む5段階の組織状 態として提唱した成熟度モデルが原型に なっています。この成熟度モデルは、その 後、カーネギーメロン大学のソフトウェア工 学研究所のハンフリー教授らがソフトウェ ア組織の成熟度モデル(CMM)を開発し、 組織のマネジメント能力を高めることで、 ソフトウェアの品質も高まったことから、多 くの民間ソフトウェア組織で導入されてお ります。WAYマネジメント と TMSの協調
激変する環境、グローバルでの事業展開下では、企業の「思い」にあたる「WAY」をいかに社員一人ひとりが理解・ 納得して、事業戦略を策定し、実践させることができるか、いわゆる「WAYマネジメント」の実践が成功の条件とも いえます。 現地現物でのカイゼン・サイクルを自律的に廻せるチーム(組織)・人の育成が継続力を育む。WAYマネージメント
TMS(現地現物、自律的)
方針展開
TOYOTA Way
企業としての進むべき方向やビジョンをどれだけ明確にし、顧客重視、品質重視の姿勢を打ち出 しているかを重要視する日本経営品質賞ですが、生産や営業といった直接部門ばかりではあり ません。本社のスタッフ部門等も一丸となってお客様を想い、品質を向上させて、ご満足を頂く。 そのために不断の改善活動をやらされ感無く(自律的に)全社で展開できる価値観(思想)が TOYOTA Wayの基本です。 TOYOTA Wayには、戦後まもなく(昭和20年)からの現場での改善活動の知恵が凝縮されて形式 知化されています。TMS(Total Management System)という形で、この形式知を集大成されました。 基本は職場(現場)の活性化と自律化です。現場が活性化されかつ自律化できてはじめて、トップのビジョンが実現され、その価値観が一瞬 の幻ではなく『○○-Way』という形で永続します。
トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷
TPSの始まり 1945年(昭和20年)8月に終戦を迎えました。その同年に当時の豊田喜一郎社長は、大野耐 一氏に『3年でアメリカを追い越せ』と伝えました。当時の日米の生産性の差はほぼ1対10でし たので、3年で生産性を10倍にすると言う事になります。当時の日本の状況は、終戦から戦後 の経済復興にこれからという時点です。日米での産業競争力(生産性)の大きな違いを見せつ けられ、アメリカの大量生産方式を真似る事が主流でした。この様な状況下でトヨタは、ひとり他 とは違うアプローチを開始しました。10倍の生産性と言う事は、今100人で作業をする製造ラ インがあれば、それを10人でできる様にすることです。と言う事で大野氏は、工員の多行程持 ちと言う一人の工員が製造機械を2台、4台と扱える範囲を広げる多能工化の育成が始まりま した。その結果2年後の昭和22年には、トヨタでは、すでに2台持ち、4台持ちの工程(工員)が 育成されました。その後色々な試行を経て、TPS(トヨタ生産方式)の基本が確立しました。TPSの 三本柱である、『自働化』、『ジャスト・イン・タイム』、『ムダ取り』を大野氏やTPSを推進するスタッ フ管理者が指導をしながら特定の製造現場(モデル工程)で実施され改善活動が推進されまし たが、この活動の管理と言うか推進は、トップダウンでのアプローチ(統制型マネージメント)でし た。このような状態で、次第に現場では『やらされ感』が蔓延し、現場でのモラールやモチベー ションが低下して、工場全体が荒廃して改善活動自体が組織内に広がりませんでした。このよう な状態の反省(振り返り)から、トータルTPSと言う考え方が生まれて来ました。トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷
トータルTPS トータルTPSとは従来のTPSが特定の製造現場(モデル工程)であった対象を工場全体に広げよ うとした考えです。従来のTPSの対象と異なり、工場全体となるとそこには、製造ラインの部門 (直接部門)の他に、工場設備の保全や、事務所(購買、計画、管理部門)で働く人たちも含まれ ます。このような間接部門の人たちをも対象となったとこで、トータルTPSでは、TPSの三本柱から 7つの重要な施策が掲げられました。基本の三本柱も次のように変化しました。自働化
JIT
ムダ取り
①品質改善: QA Network
②リードタイムの短縮
③原価低減・原価管理
④人と職場の活性化
⑤先行改善・間接部門の改善
⑥改善の手順・プロセス
⑦職場の見える化・GBM
また「従来のTPSではだめだ」と大野副 社長やTPSを指導していたスタッフ自ら やり方に対して反対する活動が生まれ、 指導すると言うトップダウンのアプロー チから自主研究(改善)『自ら問題を発 見し、自ら改善をする』活動に変革され ました。トップダウンでの強制的改善か ら全員参加の民主的な改善活動に生 まれ変わったのです。そのためには、 働く人たちが、モチベーションを高め、 自らマネージメントを行うと言う『人と職 場の活性化』が重要な施策となりまし た。TPSは『人づくり』と言われる所以で す。トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷
TMS((TOYOTA&)Total Management System)
トータルTPSは、工場全体いわば、生産に関係する部門でしたが、企業全体にこの考え方を広 めようとすると、問題が起こりました。生産に関係する部門では、結果が直ぐに解る(見える)仕 事ですから、人々の遣り甲斐や達成感も早く確認できますが、会社全体となると生産とは異なり 営業や本社事務部門では直ぐに結果を見る事が困難です。また仕事の品質などと言われても どの様に品質を測るのか?見えない事が沢山あります。更にトータルTPSで解説されてる用語も 製造に掛かる用語ですから、その用語の意味するところを製造とまったく関わりを持たない事務 部門の人達に理解して貰う事は不可能です。そこでトータルTPSで使用している用語も事務部門 (ホワイトカラー)の人達にわかる用語に置き換えてトータルTPSの原理、原則を理解して貰う事 が求められました。TMSはこの様な観点で再構成されたトータルTPSです。またTMSでは、トータ ルTPSの重要な施策の中の『人と職場の活性化』に焦点をあてた活動が主体となります。
①
5S
(整理・整頓・清掃・清潔・躾)② 仕事の定義
③ 創意工夫
④
専門技術・専門家認定制度⑤
自主的な改善活動(工程改善)⑥ 原価企画・原価低減
⑦ 人材育成制度
⑧ 業務の品質改善
⑨ 先行改善
トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷
2001年にTOYOTA Wayとして集大成された。
• チャレンジ (Challenge)
• 改善 (Improvement)
• 現地現物(Go and See)
知恵と改善 (Continuous Improvement)
尊敬・尊重 (Respect)
チームワーク (Teamwork)
人間性尊重(Respect for People)
「トヨタ基本理念」を実現するために、社員として共有すべき価値観と行動指針を明 示した「トヨタウェイ 2001」を策定しました。グローバルトヨタの発展と現地へ の権限委譲をスムーズに進めていくために、これまで暗黙知に伝承されてきたトヨタ の経営哲学、価値観、実務遂行上の手法を明文化したもの。トヨタ従業員の行動原則 といえるものです。
職場の活性化
自ら考え、自発的行動
職場が活性化されているとは、
活性化された職場・チームとは、どんなチームか? 方針展開に沿い、組織の目標を効果的(効率的)に達成する為にチームが協調して自律的に、 問題・課題を認識し、自らその解決を図りながら、永続的に成長する事で、仕事を通して「やり 甲斐」、「達成感」を味わい、顧客を含めたその関係者間に、感謝・感激・感動の気持ちが芽 生える。 その経営的メリットは、何か? 持続可能(ワークライフバランスの取れる)なカイゼン活動を通した永続的な企業の成長の仕 組みが構築でき、自律した社員・チームでの人財力による環境適応性の向上と企業競争力 の向上が期待できます。その経営成果としては、『強力な差別化による安定した利益』です。 職場が活性化されていると言う定義は? モラール、モチベーション、カイゼン目線(現状否定)、目標の共有、作業の標準化、見える化、 施策・手段の共有、自発的な言動、One for All, All for Oneの意識(言動)、プロセス重視、品質 に対する拘り、お客様に対する想い、自分達の強み・弱みを認識できる 上記の様な事柄が振り返りの中で議論され、その結果がビジュアル・ボードに表現されている か? 準備中; 一部リーダー格が頑張って引っ張って居る状態 20% 醸成中; 過半のメンバーがリーダー格をこなせる 60% 成熟期; 大多数のメンバーがリーダー格をこなせ、ほぼ全員が日替わりリーダー でチームが活動中 80%【参考資料】 TOYOTA Way の誕生と発展(他分野への伝播)
昭和20年(1945) 終戦 故豊田喜一郎社長が「3年でアメリカに追いつけ」と号令 生産性を10倍にする事(100人で行う仕事を10人で実施) ジャスト・イン・タイムの発想 昭和22年(1947) 機械の二台持ち、四台持ちへの挑戦(多能工化への挑戦) 昭和31年(1956) 故大野耐一副社長アメリカ視察 (スーパーマーケット視察) お客は、必要な時に店に行き、必要なものを、必要なだけ買える仕組み 昭和48年(1973) オイル・ショック トヨタ生産方式(TPS)が注目を浴びる 昭和57年(1982) コンビニのPOSシステム稼動(マーチャンダイジング連動) JITの発想=サプライ・チェーン 昭和58年(1983) トヨタ生産方式(TPS)の英訳本発刊 昭和60年(1985) E.M.ゴールドラット博士が制約理論(TOC)を発表 『ザ・ゴール』発刊 平準化(流れを作る)⇒スループットの思想昭和61年(1986) 野中郁次郎、竹内弘高共著のThe New New Product Development Gameが HBRに掲載 昭和61年(1986) ケン・シュウェイバーがScrumを提唱 昭和63年(1988) ハンコ三つ運動⇒権限委譲 平成元年(1989) 文鎮型組織⇒組織のフラット化 平成5年(1993) 業務改善活動⇒BPR 平成8年(1996) ケント・ベックがXPを発表 アジャイル開発が話題になる 平成13年(2001) TOYOTA Wayとしてまとまる 同年、アジャイル・マニュフェスト発表
育成のステップの紹介
TMSコアの位置付け、意味付け 組織の目標を達成する為に、その構成員として基本的に身に着けるべき考え方と行動様式を会得する指標 としてTMSコアの6つのステップが有効(単に理論ではなく、実績&経験からの方法論です。) 自律型チーム・ビルディング 改善の8つのステップを順番に実施する事で、自律したチーム、社員の育成が図れます。 基本は、現地・現物の職場巡回にあります。経営者、管理者の皆様には、自室に部下を呼び寄せての業務報 告の替りに積極的に現場(職場)を訪問して、職場活性化の評価項目を自分の目で、肌で雰囲気を掴んでく ださい。きっと自室で業務報告を聞くこととは異なった現場の真の様子を把握できます。 塾の指導員が24週間に渡って、毎週訪問して指導いたします。 最初の12週間で、人・チームの自律したチーム・ビルディングを目指します。 次の12週l」間で、経営目標と連動するチーム・ビルディング(組織間連携など)を目指します。 リーダー育成の重要性 指示・命令から能力を生かす。育てる。褒めるリーダーへの変革5S
仕事の定義= 通常業務+改善活動 創意工夫=考える 自主的な改善活動 (工程改善) 原価企画、計画、低減 業務の品質改善 後工程引き取り(JIT) 先行改善基本は24週(回)のカイゼン塾
【TMSの基礎知識と振り返り】
TMSの基礎知識の確認と振り返りの有効性と必然性を確認します。
【目で見る管理の考え方】
チームマネジメントとメンバー教育に有効な「目で見る管理」の考え方を学びます。
【目で見る管理と作業分析】
「目で見る管理」における目的・目標がチームで合意されているか確認し、仕事の構
成、仕事の内容を分析する必然性を理解します。
【タスクボードの設計】
仕事を分析し顧客への価値の提供ができている時間の実態を認識します。
【タスクボードの作成】
ビジュアルボードとタスクボードを作成し、自律的なマネジメントが出来るために、自
分たちのマネジメントを形式知化します。
【中間発表会】
これまで(上記)の成果を現地現物で確認します。
最初の12週の内容(1~3ヶ月間)
【目標の再設定】
組織の目的・目標を達成するため、目的、目標の見直し再設定を行います。
【ビジュアルボードの再作成+価値の創造】
自分達の目的・目標に対してより高い価値を提供するために仕事のやり方を変える。
【自工程完結】
自らの仕事の善し悪しが直ぐに解り、直ぐにカイゼンできるため、物事が良い方向に
動き職場が活性化するという考え方を実践します。
【ムダと2S活動】
自分達の目的・目標に対して、より効果的に仕事を行うためにムダと2S(整理・整頓)
をビジュアルボードに取り込みます。
【利益の創造】
自分達の目的・目標に対して、より利益を向上させるための考え方をビジュアルボー
ドに反映させます。
【成果発表会】
6ヶ月間の活動内容を発表します。
次の12週の内容(4~6ヶ月間)
カイゼン塾の姿
知
識
領
域
実
践
領
域
ワーク ショップ 問 題 発 生第2回目
知識
教育
第1回目
知識教 育 チーム で対策 ワーク ショップ 実践し てみる 問 題 発 生 知識教 育 チーム で対策 ワーク ショップ 実践し てみる 問 題 発 生第3回目
知識教 育 チーム で対策 ワーク ショップ第4回目
職場の問題に対してPDCAが周り意識が変わる
実践し てみる知
識
量
経
験
知
これは、アメリカ国立訓練研究所(National Training Laboratories)によって開発されたといわれ る「ラーニングピラミッド」と呼ばれている三角形です。 学び方によって、人はどれだけ学習したことを記憶に止めているかを数字で表しています。 これによると、講義などで習ったことはわずか5%しか記憶に残っていません。 「習ったことを誰かに教えること」で、90%が記憶に残るというのです。 個人が体験・学習できることは限られています。複数の人でグループ討論をし、個人の経験・ 知識を共有する事でより多くのことを学ぶ事が出来ます。