Title 小動物臨床における血液ガスの臨床応用への検討( 内容の要旨 ) Author(s) 城下, 幸仁 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第082号 Issue Date 2000-03-14 Type 博士論文 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/2136 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学 位授与年 月 日 学位授与 の 要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委・ 員 城 下 幸 仁 (神奈川県) 博士(獣医学) 獣医博甲第82号 平成12年3月.14日 学位規則第4条簸1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 東京農工大学 小動物臨床における血液ガスの臨床応用への 検討 主査 東京農工大学 教 授 山 根 副査 帯広畜産大学 教 授 山 田 副査 岩 手 大 学 教 授 首 藤 副査 東京農工大学 教 授 小久江 副査 岐 阜 大 学 教 授 工 藤 久 夫 栄一明 義明文栄忠 論 文 の 内 容 の 要 旨 動脈血血液ガス分析は、息畜の酸素化能や酸塩基平衡障害の診断および管理の たやの有用な手段であるが、獣医科領域においては未だ広く実施されていない。そ れは、小動物臨床において血液ガス分析を応用する際の実践的な問題である、1) 末梢静脈血の代用の可能性、2)動腺穿刺の困難性七危険性、3)分析装置が高価 でその管理と煩雑性、4)経時的動腺血採取に伴う困難性や危険性、に対する明確 な解答がいまたないことによる。本学位論文では、これらの間邁を解明するため に以下の4つの研究を行った。 先ず最初に、末梢静脈血サンプルの適応限界を明らかにするため、循環動態が 維持されている7頭の実験犬と、臨床犬の61症例のデータから、同時採取した動 腺血と末梢静脈血の血液ガス分析値を比軟検討した。実験では59組のサンプルが 侍られた。末梢静脈血のpHは、動脈血値より有意に低く、PCO2と【HCO3-】は有 意に高い億を示したが(Pく0.01、pair¢d-tteSt)、B.E.は有意差を認めず、臨床 的にも間蓮とならない差であった(静脈一動腺[平均±SD]=-0.3±2.5[実験】、 0.016±1.$[症例]mmol/L)。結果的にPCO2を除き、動脈血億とある程度の相 関が認められたが(r:=0.49-0.79)。B.E.以外では、大ま■かな動脈血億の指標に なるに過ぎないことが判明した。 次に、犬の動腺穿刺に伴う困難性と危険性を検討するために、連続サンプリン
グ法による120症例の犬の動脈穿刺の状況を調査した。全120頚のうち動脆血採 取に失敗したのは9頭だけだった。残りの111頭の犬で行われた動脈穿刺のうち、
7頭(6.3%)で中程度鱒、ら広範な皮内出血の併発症が起き、それは体重3・5kさ未
満の犬(調整オッズ比5.34、95%信頼限界1.62-17.6、P=0.006、ロシ●わィック回帰 分析)と心血管系障書を有する犬(調整オッズ比3.74、95%信頼限界1.26-11.2、 P=0.PIS、同分析)で有意に起こりやすかった。 3番目の研究としては、犬の血液を用いて、ポータブル型血液ガス分析装置OPTI lの有用性と正確さ(Accnracy)を評価した。OPTIlは価格が平均的な従来型装 置の約半分であり、ランニングコストもか、らず操作方法も極めて簡単であった。 11頭の麻酔下の犬から64個の動脈血サンプルが採取され、p臥PCO2、PO2、お よび【HCO3-】をOPTIlと、榛準とみなした従来型装置(GASTAT3)の両者間 で分析した。OPTIlの測定値は、GASTAT3の測定値と高い相関性を示し(r= 0.90-0.91)、2装置間の差の平均値±SDは、pHで-0.00毛±0.017、PCO2で-0.8さ士3.33mmHg、PO2で3.71士6朋・mm'Hg、【HCO3-】で一0.34±1.45mmol/ Lを示し、これらは統計学的に有意差はなく臨床的にも問題とならなかった。コ ントロール溶液のOPTIlによる測定値の変動係数も許容範囲内であった。OPTI lは、従来装置に匹敵する正確さを有しており、充分に、犬の血液ガス分析に対応 できることが判った。 最後に、経時的動脈血採取に相当する簡便で安全な代替法を検討するため、医 学で確立されている動脈血化静脈血の手法を犬に試みた。$頭の健康犬を軽い麻酔 下で諌起した代謝正常、代謝性アシドーシ・ス、代謝性アルカローシス、呼吸正常、 呼吸性アシドーシス、および呼吸也アルカローシスの各6状態下で、動脈血、横側 皮静腺(CV)血、および小伏在静脈(SV)血を「回ずつ同時に採血し、pH,PCO2, PO2,【HCO3-】、およびB.E.について分析した。CVとSVを動脈血化するために 前後址端を37℃に温めた。平均血圧はSOmmHg以上に維持した。動脈血化静脈 血のpE、【HCO3-】、およびB.E.値は、6状態下にて動腺血催と有意差がなく、高 い相関を示し(r:=0.93-0.99)、臨床的にも動脈血億との差は問題とならなかっ た。動脈血化静脈(CV、SV)血のPCO2は代謝性アシドーシス下および呼吸正常 下で動脈血値より有意に高い億を示したが(33.2【平均値】±3.0【SD】[動脈]YS.3$.7 士2.6[cv]、37.5士2.6[sv]mmHg、Pく0.01;および37.7±2.4[動腋]Ⅴ一s. 40.9±2.2[cv]、4l.3±3.0[sv]、P<0.05、MANOVA)、その中でも動脈血化 SV血のPCO2は動脆億と高い相関(r:=0.93-0.99)を示し、臨床的に開港とな らない差を示した。動脈血化静脈血のPO2は、動脆血億より有意に低く、かつ相 関も低く(r:=0・45-0・75)、臨床的に閉塞となる差を革した。循環動態が安定し ている犬では、臨床目的なら動脈血化静脈血のp臥【HCO3-】、およびB.E.は動脈 血億に代用可能で、さらに動脈血化SV血のPCO2は、動腺血億に代用してもよい と結論された。-208-以上4つの研究から前述の問題に対し以下の解答を与えた。
1)末梢静脈血の血液ガス分析億は」循環動態が安定した患者に限り適応でき、
安静下、駆血せず、陰庄を加えずに採取したサ◆ンプルでも、動脈血に直接代用可 能なのはB.E.だけで、他の億は大まかな動脈血億の指標になるに過ぎない。 2)大の動脈穿刺はそれほど困難でなく、その併発症も予期していたほど頻繁で も重度でもなかった。しかし体重3.5kg未満または心血管系に障害を有す犬への動 脈穿刺は、皮内出血のリスクが増加する。 3)ポータブル型血液ガス分析装置OPTIlは、低コストで済み、操作および管 理も簡単であり、その上、従来型装置と同等の犬の血液ガス分析が可能である。4)址端加温法による動腺血化小伏在軍服血のp臥PCO2、【HCO3-】、およびB・E・
の億は、臨床目的なら動脈血億に代用できる。とくに安定期に達した重症患者や、 外科手術後の息畜の管理に釦ナる経時的動脈血採取における簡便かつ安全な代替 法として有用である。 本研究成篇は、小動物臨床において動脈血血液ガス分析が広く一般に応用される ために非常に有用な所見となるだろう。 審 査 結 果 の 要 旨 多様化、かつ高度化した小動物臨床において、動脆血血液ガスの分析は、息畜の 酸素化能や酸塩基平衡障害の診断および管理、さらに手術時のモニター等におい て有用な手段である。しかし、獣医科領域(小動物臨床)において広く普及し、臨 床応用されているとはいえないのが現状である。その大きな障害となってい.る要 因としては1)末梢静脈血の代用の可能性、2)動脆穿刺の困難性と危険性、享)分 析装置が高価でその管理と煩雑性、4)病態把撞のための経時的動腺血採取に伴う 困難性や危険性等に対する明確な解答が未だないことによる。 そこで、申請者の城下幸仁君は、上記の問題を解明するために、以下の4つの実験 を実施した。l)最初に末梢静脈血サンプルの連応限界を明らかにするために、循環動態が推持
された7頭の実験犬と61症例のデータから、同時採取した59組のサンプルにおい て動脈血と末梢静腺血の血液ガス分析値を比較検討した。採血は両群とも同様な 方法で採取した。その結果、康梢静脈旦のPHは、動脈血より有意に低く、PCO主 と[HCO3 ]は有意に高い値を示したが(P<0.01)、B.E.は有意さを認めず臨 床的にも間蓮とならない差であった。結果的に、・PO2を除き、静脈血億も動脈血億 とある程度の相関は認められたが(r2=0.49-0.79)、臥E.以外は大きな動脈血値の 指標になるに過ぎないことが判明した。 2)次に、犬の動腺穿刺に伴う困難性と危険性を明確にするために、連続サンプル リング法による120頭の臨床例において、動脈穿刺を実施し調査した。120頭の中、動脈血採取が可能であった111頸について検討した結果、7頭(6.3 %)で中程度から広範な皮内出血の併発症が生じた。. 内容的に・は小型犬(体重3.5kg未満)と心血管系障害を有する犬で有意に起こりや すかった。 3)さらに、分析装置の間蔑点を解明するために、犬の血液におけるポータブル型 血液ガス分析装置(OPTIl)の有用性と正礪さを評価した。 OPTIlは価格が平均的な従来型装置の約1/2であり、ランニングコストもかゝら ず、操作方法も極めて歯単であった。 11頭の全身麻酔下の犬から`4個の動脈血サンプルを採取し、OPTIlと標準とみ なした従来型装置(GASTAT 3)との両者間で、PH,PCO2PO2,および[HCO3 ] について分析した。OPTIlの各測定値は、GASTAT 3の測定値と高い相関性を 示し(r=0.90-0.9.1)、2装置間の差の平均値±SDは、・PHで一0.do8±0.017、PCO2 で-0..88±3.33mmHg,PO2で3.71士6.98mmHg,[HCO31で-0.34±1.45mmol/ Lであり、競計的に有意差はなく、臨床的にも開港とはならなかった。結局、OPTI lは従来型装置に匹敵する正確さを有しており、充分に犬の血液ガス分析に対応で きることが判った。 4)最後に、経時的動脈血採取に相当する簡便で安全な代替法を検討するために、 医学で確立されている動脈血化静脈血の手法を犬に試みその有用性を検討した。 実験には$頭の健康犬を軽い麻酔下で誘起した代紆正常、代謝性アシドーシス、代 射性アルカローシス、呼吸正常、呼吸性アシドーシス、および呼吸性アルカロー・ シスの各6状態下で動脈血、横側皮静脈(CV)血、および小伏在静脈(5V)血を
一回ずつ同時採取しP札PCO2fO2,[HCO3
]およびBJLについて分野した。
CVとSVを動腺血化するたやに、前後址端を370cに加温し、平均血圧も80mmHg 以上に維持した。その結果、動脈血化静腋血のPE,【HCO3 ]および臥玉.億は、 6状態下で動脈血値と有意差がなく、高い相関を示し(r2=0.93-0.99)、臨床的に も動脈血値との差は開港とならなかった。また、動腺血化静脈(CV、SV)血の PCO2は、代敵性アシドーシス下および呼吸正常下で動脈血億より有意に高い億を示した。中でも動脈血化SV血のPdo2は、動脈血億と高い相関(r2=0.93_0.99)
を示し、臨床的に間患とならない差を示した。 動脈申化静脈血のPO2は、動脈血値より有意に低く、かつ相関も低く(rユ=0.45-0.75)、臨床的に問題となる差を示し史。 循環動態が安定している犬では、臨床目的ならば動脈血化静脈血のPH,[ECO3 ] および臥玉は、動脈血億に代用可能で、さらに動脈血化SV血のPCO2は、動鹿血値に代崩してもよいことが判明した。
以上、本研究は、従来獣医科領域で広く普及していなかった動脈血血液ガス分析 を一般の臨床現場において広く応用するための貴重な知見を撞供したものと考え られる。 当審査委貞会は全点一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文 として十分価値あるものと認めた。-210-基礎となる学術論文
1・Y・Shiroshita,R・Tanaka,A・Shibazaki,andY・Ymane,:AccuracyofaPortable
Blood Gas AnalyzerIncorporating Optode$forCanine Blood.Journalムf VeterrinaryInternalMedicine13(6)、597-600,1999. 2・Y・Shiroshita,R・Tanaka,A・Shibazaki,andY・・Ymane,:Retro岳PeCtivesthdyofclini-Calcomplicationsoccumngafterarterialpuncturesin111dogs,Theveterinary Record.145.1999(inpre$$) 既発表学術論文 1.城下幸仁、山根義久、鹿田尚享、白井由美子、籠瀬 純、清水美希、田中 綾、藤 沢史子、鈴木 薯、丸尾幸嗣:鋲静下および全身麻酔下における正常犬の動腺血 と後大静脈血間の血液ガス億の比軟検討、動物臨床医学5(3)、13-18、1996 2.城下幸仁、日高勇一、町田 登、山根義久:重度の全身性石灰沈着を示した猫の 1例、一動物臨床医学、7(3)、133-138、1998
3.A.Shibazaki,H.Matsumoto,Y.Shiroshita,Y.NoishikiIandY'.Yamane三Acom-ParativeStudy between Hypothermic andNormothermicCardioptllmonary By-