東京女署學會雑誌第四巻第二號
綜
説
腸.チフス﹂及類似熱性疾病の診断
︵第一要脚京女讐學単車會特別講演︶
東京女子讐學專門學校教授蕪同校病院内科部長
殴璽箪 今 村
明光講述
1緒
陶 腸コチフスLは昔から可なり多い病氣でありまして、皆さんが良く御承知の病氣であります。從って私如き者が今夏ら改まっ て腸刀チフスしの診断などを御話致すのは、恰も繹迦に設法を致す愚なもので、誠に烏瀞がましい次第でありますが、併し今 ︸歩進んで、然らば腸﹁チフス﹂は實潮上容易に診断され得る病氣であるかと申しますと、私は直に然りと答へるのに躊躇致 すのであります。腸﹁チフス﹂は幾日かの経過を槻察し、且つ特殊の槍査を行ふに非らざれば、確蜜なる診断を下すことが困 難なる病氣であると、私は考へて居ります。殊に近年は腸﹁チフス﹂の診噺が困難になった様に感ぜらる玉のでありまして、 今村11腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診断 第四巷 一一九2 今村11腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診断 第四巻 一二〇 私は近年、獲熟以外殆んど何等特殊の症候を呈しない腸.チフスしの患者に遭遇する場合が比較的多いのであります。叉他方 に於ては平熱以外殆んど何等の徴候を呈しない潜在牲肺結核が近年は可なり多くなりまして、之れと腸﹁チフス﹂との鑑別に 苦しむ場合は可なり多いのであります。少くとも近年腸﹁チフス﹂の豫防接種が盛に行はれる様になって以來、腸﹁チフス’ゐ 診断が更に幾分面倒になったと云ふ事は、孚はれない事々であります。私は褒熱以外殆んど何等特殊の症候を磯見し得ない 様な熱性病の患者に遭遇致します毎に、今一度東西の成書を熟讃して見たら、診噺上参考になる様な何かの暗示を得る事が 毒茸はしないだらうかと、何時も考へるのでありますが、﹁喉元過ぐれば熱さ忘れる﹂と云ふ磐の通り、すぐ其事を忘れて、今 日迄怠けて來た標な次第であります。ところが今同母らすも本讐墨會に於て、何か一席辮じなければならぬ様な窮境に陥り ましたので,此機首に於て、腸﹁チフス﹂に關する成書を熟讃して、其れを此虜で復習して見たい、そして其れに封して皆さ んの御魂駿をどしく御追加願ひたい、そしたら大に参考になる事があるだらうと考へまして、斯の如き陳衡な演題を掲げ た檬な次第であります。嚥ぞかし御迷惑の事であらうとは存じますが、成る避く簡箪に御話致す積りでありますから、殊に 類似熱性疾病の診噺は時闘の都合上,類症鑑別の形式に於て中上げる積りでありますから,暫時御清辣を煩はすことを得ま すれば、欣幸の至りとする所であります。
腸﹁手ラ衆﹂の臨躰的診噺
︵一︶、免疫關係。腸、チフス﹂の診断上坐づ注意すべき事は土塁關係でありませう。御承知の如く、腸﹁チフス﹂に一度罹ると 其大多数は軍畑.になって、二度腸﹁チフス﹂に罹るものは稀︵約二一三%︶であります。之は周知の事實であります。從って既 往歴に激て一度腸、チフスしに罹ったと云ふ髄かな信ずべき事實がありましたら,軍に其れ.点けの事實で腸﹁チフス﹂を否定し ても、誤は極めて少ないのであります。併しコアナムネーぜLは要り當てにならぬ事もありますから、此貼は注意を要する事 と存じます。 然らば豫防注射を行った場.合はどうだと申しまするに、腸﹁チフス﹂の豫防注射を受けた者で、腸コチフスしに罹る者が聞々りO あります。從って腸﹁チフス﹂の豫防注射を受けた事があると云ふ牽けで、腸﹁チフス﹂を否定することは出奨ませぬ。併し我 陸軍では腸、チフスしの豫防注射を鋤行ずる様になってから、腸﹁チフス﹂に罹る波除さんが著しく減少したと云はれて居ま す。從って腸﹁チフス﹂の書籍注射を受けたために、腸﹁チフス﹂に罹らない者が相當多数にあるだらうと云ふ事が想像される のであります。併し叉他方に於ては聖岳注射の効果を疑って居る學者もあります。 情愛防注射の効力は蓮常左程長くは績かないものN様でありまして、或る偉者は牛年に一同、煮る蝶理は一年に一回、叉 馨る二者は四年に一圃豫防注射を繰り返して行ふべきことを唱へて居るのであゆます。我陸軍では毎年一同宛繰り返して豫 防注射を行って居るとの事であります。 兎に角腸,チフスしの野比注射後興り多くの日月を維過せざる者に向って腸﹁チフス﹂の診衝を下さんとするには、之れから 申上げます所の諸鮎に充分注意を沸ふことが必要であらうと存ぜられます。殊に後刻改めて申述べます様に、豫防注射後高 年位を経過した者でも、腸コチフスしでないのに、腸﹁チフス﹂菌に謝する凝集反懸が張陽性に現はれることがありますから、 此黙は特に注意せねばなりませぬ。 ︵二︶、傳染径路。御承知の如く、腸コチフスLは生きた﹁チフス﹂菌が通常口から人間の燈内に這り込んで、それから約一一 二週間の潜伏期を経て諸病する病氣でありますから、腸﹁チフス﹂の患者が初めて讐者の診療を求めますのは通常感染後一− 二週闇以上を輕過して居るのであります。從って患者を診察して,若し腸﹁チフス﹂の疑がありましたら大凡感染した時期を 想像して、其想像した時期の頃に腸7チフス﹂或は其れらしき患者に接近した事はなきか、其れらしき患者の所持品或は排泄 物等に接回した事はなきか、其れらしき患者が近隣に居佳して居なかったか、或は其時期頃に﹁ナマ﹂の飲食物を播取した事 はなきか等の事を調査致しますと、其れが腸、チフスしの診断の助となり,或は参考になる事があります。暑い季節に於ては 假令一度熱を加へて徽菌を殺した飲食物でも、時日を経過致しますと。蠕などの媒介に依って,再び墨画が其飲食物に附着 し、或は更に繁殖致すことがありますから、此貼は注意せねばなりませぬ。 ︵三︶、季節。腸﹁チフス﹂は暑い季節に多く、之に反してコインフルエンザLは寒い季節に多い病氣であります。此事は腸﹁チ
今村陛腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診臨 第四巻 =二
4 今村一1腸コチフスL及類似熱性疾病の診断 第四巻 一一=一 フスしと﹁インフルエンザ﹂とつ鑑別上参考になる事でありますが、馨し患い季節にも腸コチフスしは少なくないのであります から、注意を要します。 ︵四︶、年齢及性。之等は腸﹁チフス﹂の診断上には飴り肺臓がありませぬ。 ︵五︶、自給症欣。腸﹁チフスしの際に於ける自性症状としては、熱感或は磯熱,頭痛、全身倦怠或は蓮和、食慾減退或は歓 損等が重なるものであります。殊に磯熱は通常患者の主訴でありまして、腸﹁チフス﹂の診噺上極めて必要な症候でありま すから、之は改めて後述する事に致します。 頭痛は病初に於ては多い所の自畳症状の一つでありますが、併し其程度は割合に輕く、而も第二週目頃になりますと自然 に浩失するものであります。從って頭痛が激.しい場合には他の病氣を考へる方が撫當でありませう。 全身倦怠或は違和は通常起る所の自畳症欣でありますが、併し第二週目頃になりますと,殆んど総べての自畳症歌が消失 して、患者は豊山的には殆んど何等の苦痛を訴へなくなるのが普通であります。流れ叉診断上注意すべき事であります。 食慾減退或は生損は通常地胆より恢復期迄著明に起るのでありまして、恢復期に這入のますと、食慾は通常猛烈に増進致 すのであります。 以上の如き自一女歌の外に.稀には筋肉痛、腰痛.關節痛などを訴へる者がありまして,﹁インフルエンザ﹂との鑑別に苦 しむことがあります。反封に叉稀には画聖性腸﹁チフス﹂なるものがありまして、高熱があるにも拘らす、殆んど何等の苦痛 を感ぜすに、雫常の如く業務に從事する者があります。 ︵六︶、悪寒及凝霜。腸﹁チフス﹂は悪寒を以て稜熱すること多しと云はれて居ります。併し戦擬を以て獲熱することは極め て少なく、或は殆んどないのでありまして、之は診断上特に注.与すべき事であります。帥戦藻を以て乱撃した場合には、軍 に其れ丈けの事實で腸﹁チフス﹂を否定しても、大した誤はないのであります。 ︵七︶、熱。御承知の如く、腸﹁チフス﹂の熱型は極めて特有であります。帥初め三−四日乃至撒日の間に、熱は階段蹟に日一 日と上昇して三九度乃至四〇度に達し、次で一週間乃至十日間位稽留し、次で再び弛張し始めて、徐々に下降するのであり
5 まして,此熱型を一と目見ますと、誰れでもすぐ腸﹁チフス﹂の疑を起す位い診主上極めて慣値あるものでありますが、併し 實際の場合に於て、腸﹁チフス﹂の患者が初めて讐者の診療を求めますのは、多くは第一週の終頃か、若しくは第二週の初頃 でありまして、其時期に於て初めて患者を診察致しますと、熱が階段朕に昇って以たか否かと云ふ事は麺當不明で、恰も突如 として高熱を隠したかの如く思はれる場合が多いのであります。殊に悪寒を以て護熱した場合に於ては恰も突如として高熱 を磯したかの如く思はれるのであります。世事際階段歌に熱が上昇せすに、愈々急激に高熱を磯する場合も、時にはあると 云って居る學者があります。且又一週間以上も悠々と熟の維過を糊察して、然る後に初めて診断を下すと云ふ諜にも滲りま せぬ。育って腸、チフスしの熱型は特有で診断上極めて贋値あるものであるにも拘らす、覚際上には籐り二値あるものとは云 へないと私は考へて居ます。併し第一週の絡頃から第二週の間に爾参日聞も患者を観察して、若し熟型が不規則であったら 其れは恐らく腸﹁チフス﹂でないだらうと想像しても差支ないかと存じます。 ︵八︶、脈搏。腸コチフス﹂の際には、熟の高さに比較して、短身の数が割合に少なく、熱は三九度乃至四〇度位あっても、 脈搏の数は通常一分間に九〇一一〇〇以上に増加せないと云ふことが、診断上慣値あること﹂せられて居ます。併し之は通 常成長せる男子に於て見る事で、小晃や寒入には斯かる事は甚だ少なく、叉成長せる男子でも千苦質の人には少ないのであ ります。低毒に叉噛膜炎の際などにも脹搏の数が少ないことがあります。從って脹搏の数が九〇或は一〇〇以上もあるから 腸﹁チフス﹂でないと云ふことも出定なければ、反樹に叉熟の高さに比較して脹簿の数が割合に少ないから、其れ丈けで直に 腸﹁チフス﹂だと云ふ事も出來ないのであります。只臓膜炎及其他に金融の少なくなる様な原因を見出し得ない熱性病の際に は、此事が腸﹁チフス﹂の診断上大に意義があると云ふのであります。 ︵附記︶、重複脹。爾ほ一言脹搏に就て附け加へて置きますが、腸﹁チフス﹂の際には重複脹を起こすことがあります。之れ 叉診断上参考とすべき事でありますが、併し敗血症、磯疹﹃チフス﹂などの際にも重複脹を起こすことがありますから、注意 せねばなりませぬ。 ︵九︶,意識及顔貌。御承知の如く、﹁チフス﹂と云ふ語は﹁ギリシャ﹂語の霧と云ふ語で、恰も霧がか曳つた様に、患者の意 今村一腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診断 第四巻 一二三
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今村ロ腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診圏 第四巻 =学
識が朦朧となって、顔貌は無慾欣を呈し、甚しき場合には意識が凋濁して、或は譜語を醜し、或は腱跳動、或は撮室摸豚な どを起こす様になる所から起こった語であると云はれて居ります。叉心逸に於ては﹁チフス﹂の事を俗に瀞紅熱など玉も構へ まして、腸﹁チフス﹂の患者は臓症を起こす場合が多いのであります。然るに我日本にに於ては意識が甚しく侵かされる者は 割合に少なくて、第二週の初石より幾分無慾状態を呈する位のものが比較的多い様に存ぜられます。併し叉意識の侵かされ ないものも少なくない様であります。 ︵一〇︶、難蕪或は重言。腸コチフスしの際には第二週の孚頃から難無を起こすものが少なくないのでありまして、診断上注 意すべき一症候でありませう。 ︵一一︶、舌及口唇。舌は多くは初めから褐色の苔に蔽はれ、且多くは干面するのでありますが、第二週目頃から後になり ますと、舌苔は舌の尖端から後方に立って剥離し始め、其劉離した部分が三角形を呈するので・あります。口唇も多くは干燥 し、或は輝裂を生じ、時には煤色の姉皮を被むることがあります。併し﹁ヘルペス﹂は通常機生致しませぬ。若し口唇に﹁ヘ ルペス﹂が磯生しましたら、寧ろ他の病氣を考ふべきであります。 ︵一二︶、薔薇疹。難山薇疹は腸﹁チフス﹂の診断上極めて便値ある症候の一つでありまして、之のもの、ために腸﹁チフス﹂の 診断を下し得る場合は決して少なくないのであります。然るに薔薇疹は腸、チフス﹂の暗面の症候ではないのでありまして、 腸﹁チフス﹂の官話〇一六五%に於て見るものであります。帥薔薇疹は腸﹁チフス﹂の診噺に必要な症候であるにも拘らす、之 れが現はれない場合が決して少なくないのであります。 叉薔薇疹は通常第二週目頃になりまして、主として胸、腹及背部の皮膚に、多くは少数に、且散在的に現はれるものであ りまして、腸﹁チフス﹂の早期診闘としては債値少なきものであります。 叉薔薇疹は腸っチフスしに特有なものではないのでありまして、﹁パラチフス﹂、無位﹁チフス﹂は勿論,叉稀には急性全身粟 粒結核の際にも薔薇疹が現はれることがありますから、注意せねばなりませぬ。 筒又我々日本人は白人と底ひまして、黄色忙種であります爲に、薔薇疹を見出すのが幾分困難でありますから、照明を良7 ぐして注意して捜すことが必要であります。 御承知の如く薔薇疹は面隠頭大の薔薇色の淡紅色輪形の斑瓢でありまして,皮膚面より稽﹂々隆起して居るものもあります が、併し尖端を作りませぬ。叉指で五爵しますと、暫時の間裡色するのであ夢ます。叉薔薇疹は通常三四日乃至勲日の後に は自然に溝失して無くなるのでありますが、併し他方に於ては、其間に他の場所に新しく蘇生しますから、之等の諸黙に注 意すれば、他の皮膚疹や,畿疹コチフス﹂とは通常容易に鑑別し得るのであります。 ︵=二︶、謹言支加答兇。西洋の本には、腸﹁チフス﹂の際には第一週の穂並は第二週の初頭から氣管支加答児を起こすもの が多い様に記載されて居ますが、日本の腸﹁チフス﹂には氣管支加答児を起こすものが比較的少ない様に存ぜられます。氣管 支加答見を併磯しますと、﹁インフルエンザ﹂、其他呼吸器病との鑑別に苦しむことがあります。 ︵一四︶,鼓腸。腸﹁チフス﹂の際には、第二週目頃から輕度の鼓腸を起こすものが多いのでありまして、其爲めに腹部は梢 々膨隆致すのであります。併し叉愈愈に腹部の粗々陥浸して居るものもあります。叉肺炎の際にも鼓腸を起こすことがあり ますから注意を要します。 ︵一五︶、廻盲部の腹鳴。鼓腸が起こりますと、鱗診の際に、宇瓦部に雷鳴を生するものが少なくないのでありまして、診 断上多少参考になるものであります。 ︵一六︶、脾腫。腸﹁チフス﹂の際には第一週の絡頃から、殊に第二週目に脾臓が腫脹して、其を打診或は燭診によりて諮明 し得る場合が多いと云はれて居ます。脾腫は薔薇疹と同じく、陽﹁チフス﹂の診断上極めて必要な症候の一つでありまして、 薫れを誰明することに依って腸コチフスしの疑を起こす場合が間々あるのでありますが、併し此脾腫は所謂傳染脾でありまし て,腸﹁チフス﹂に特有なものでもなく、叉其事が非常に軟かいために、腹壁を通して之を経れるのは通常困難であります。 私の経験によれば,腸﹁チフス﹂の際には脾腫を隅れ得る場合よりも、其れを燭れ得ない場合の方が多い檬に存じます。クル シュマン氏の報告によれば、腸﹁チフス﹂の際に脾腫を謁明し得る場合は八四%で、其中事れ得る場合は三四%であります。 ︵一七︶、便通。便通は初は多くは秘結致します。併し第二週目より以後には下痢を起こすものが多いと、猫逸の本には書 今村ロ腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診臨 第四雀 一二五
8 ムコ村11㎜腸﹁チフス﹂及■類似数⋮性疾・病の診断 第四巻 一二六 いてあります。而も此下痢便たるや、特有なる碗豆の﹁ソップ﹂様便、即淡黄色叉は黄緑色の水様便であると云はれて居ます 併し我邦の腸﹁チフス﹂は猫逸の其れと異なり、初から絡迄便秘するものが多いのであります。其他第二週の終頃から第三週 に亙り、腸出血のために門テ1ルL様の血便を出すことがありまして、其れに依って始めて腸、チフスしの疑を起こすことがあ ります。 ︵一八︶、尿。其他の急性傳染病と同じく、尿は濃厚になって、分量が減少し、且つ多くは所謂熱性蛋白尿を起こすのであ 砂ます。殊に從來腸﹁チフス﹂の診断上必要なりと云はれしものは﹁ヂアツオ﹂反底でありまして、腸﹁チフス﹂の極期、鄭第二週 目には、多くの場合に於て、尿は﹁ヂアツオ﹂聖慮を呈するのであります。併し尿の﹁ヂアツォ﹂反刃は腸﹁チフスし丈けに特有 のものではなくて、叉急性全身粟粒結核、獲疹﹁チフス﹂、肺炎等の際にも尿の﹁ヂアツオ﹂反窓が陽性に現はれることがあり ますから、注意せねばなりませぬ。 ︵一九︶.血液。腸﹁チフス﹂の際には最初爾三日間白血球数が一時梢々増加するもの﹂様でありますが、次で直に減少して、 四〇〇〇1・二〇〇〇位迄減少するのであります。此白血球減少症は主として中性嗜好白血球の減少でありまして、熱のある 間持績致しますから、腸コチフスしの診臨上必要のものであります。併し叉﹁インフルエンザ﹂の際にも白血球減少症を起こし ますから、其れと闇違へない様に注意せねばなりませぬ。 叉腸﹁チフス﹂の際には﹁エオジン﹂嗜好白血球が速に減少して、浩失するに至るのであります。之れ叉診断上特に注意すべ き事でありまして、彼の血液病の大家であるネーゲリ氏は馬丁後三日を経過するも、商ほ﹁エオジン﹂嗜好白血球を血液中に 見出さば、其れは腸﹁チフス﹂でないとさへ云って居るのであります。
腸﹁チフス﹂の細菌學的診断
腸コチフス﹂の最も確単なる診断法は細菌學的診断法であります。殊に患者の血液の中から腸コチフス﹂菌を誰明する方法は 腸﹁チフス﹂の早期診断法でありまして、最も重要なものであります。9 統計の示す所によれば、腸﹁チフス﹂の第一週の後結期には多くの場.合、帥二六〇1一〇〇%、雫黒影八○%に於て、患者の 血液の中から﹁チフス﹂菌を誰明することが出來るのでありまして,此時期に於て患者の血液約二蛯を静脹から採取し,其れ を直ちに叢叢培養基に植ゑて約二十四時間言忌器の中に入れて置きますと、﹁チフス﹂菌が謄汁培養基の中で繁殖致しますか ら、嵩置汁培養基の中から一白金儲の液を探って、其れをドリガルスキ氏或は遠藤氏の培養基に植ゑるのであります。かく して﹁チフス﹂菌を讃明し得れば.早期に且臨監に腸﹁チフス﹂の診断を下し得るのであります。併しかくしても爾ぼコチフスL 菌を誰明し得ないことがあります。殊に第二週以後は時日を経過するに從って、患者の血液から﹁チフスし菌を讃明し得る場 合が減少するのであります。帥第二週に於ては雫均自活〇%、第三週に於ては約五〇%、第四週に於ては約四〇%に於て﹁チ フス﹂菌が誰明され得るのであります。從って成るべく早期に、殊に第一週に溢血して検査することが必要であります。而 も只一個の謄汁培養基に血液を植ゑないで、同時に二三個の謄汁培養基に血液を植ゑて、更に其各々の謄汁培養基から、各 々二三個のドリガルスキ氏叉は遠藤氏の培養基に移植しましたら、確實な成績が得られるだらうと想像致すのであります。 血液の外曲糞便或は尿中にも﹁チフス﹂菌を讃明することが論難るのであります。帥糞便の数個所から各々一自金耳の糞便 を、二五蛇の滅菌せる生理的食鷺水を入れたる同一の試験管内に取りて、良く混合し,其糞便混合液の一白令耳,叉は尿の 遠心沈澱物の一白金耳をダリガルスキ氏叉は遠藤氏の培養基に塗抹して、卿卵器の中に入れて置きますと、﹁チフス﹂菌は御 承知の如き特有の集落を形成するのであります。此場合にも一個の培養基丈けでなくて、同時に二三個の培養基に植ゑて置 く方が確實であらうと存じます。併し糞便叉は尿中に﹃チフスL菌を誰明し得る場合は饒り多くないのでありまして、例へば 糞便中に﹁チフス﹂菌を誰明し得る場合は第一週に於て約三〇%、第二週に於て三四〇%、第三及第四週に於て各々約五〇%で ありまして、尿中に﹁チフス乙菌を讃明し得る場合は第二、第三及第四週前於て各々約一〇%、第五週に於て約二五%、第六 週に於て約二〇%であります。邸糞便中に﹁チフス﹂菌を讃明し得る場合は第三週及第四週に最も多くて約五〇%、尿中に﹁チ フス﹂菌を誰明し得る場合は第五週置最も多くて二五%でありますから、確度なる診噺法としても亦早期診忍法としても、 血液培養法に遙に劣るものと云はねばなりませぬ。 今村11腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診断 第四巻 一二七
10 A7村擢腸﹁チフス﹂及類似獄湘性疾病の甫診断
腸﹁チフス﹂の血清撃的診噺
第四巻 一二八 腸コチフスしの際には磯病後一週闇乃至+日以上を総過すれば、日を経るに從って、患者の血清又は磯泡液は殆んど常に腸 ﹁チフス﹂菌に⋮封して著明なるウヰダール氏の凝集丸吉を呈するのでありまして,腸﹁チフス﹂の診断法として從來專ら嘗ハ揚 された方法であります。併し此方法は腸コチフスしの早期診噺法としては彫りに大なる債値がないのでありまして、石原重成 氏が駒込病院に於て槍査された成績によれば、腸﹁チフス﹂の凝集反鷹は第一週に断ては四〇%、第二週に於ては約七〇%、 第三週に於ては九五%、第四、第五及第六週に於てば何れも約八○%に於て陽性に現はれて居るのであります。脚第三週目 に於て始めて殆んど総べての腸﹁チフス﹂患者に凝集反慮は陽性に現はれて來るのであ夢ますから、早期診断法としては血液 の縞菌培養法に劣るものと云はねばなりませぬ。 其他又腸﹁チフス﹂菌に謝する凝集反鷹は﹁パラチフス﹂、磯疹、チフスL、黄疸,図引刺氏病,肺結核、.急性全身粟粒結核等 の際にも、五〇1一〇〇倍.稀には其以上にも陽性に現はれることがありますから、腸ワチフスL菌に甥する凝集反憲が僅に 五〇倍乃至︼OO倍迄陽性に現はれた場合には、直に其れ丈けで腸﹁チフス﹂なりと診断することは、早計であると云はねば なりまぜぬ。 然らば腸コチフスL菌に蜀する凝集尊慮が幾倍以上陽性に現はれたら、其れを腸﹁チフス﹂と診断して宜うしいかと申します るに、二十四時間槍査法にて下る學者は一〇〇傍以上、下る墨者は二〇〇倍以上陽性に凝集幽晦が現はれた場合に、始めて 診断的の意義があると云ふのでありまして,若し一〇〇倍或は二〇〇倍以下の時は更に数日を経て、今一度新たに探血して 凝集反慮を槍査して見るのであります。そうしますと若し腸﹁チフス﹂であれば,日を経るに從って凝集反慮は通常著明にな るのでありますから,今度は前同より更に弼陽性、帥二〇〇倍以上陽性に凝集反鷹が現はれて來るのであっます。 かくの如く、凝集叫号は二〇〇倍以上陽性に現はれた場合に始めて至難的債値があるのでありますが、然るに近年に至り まして、假暉麗コチフスL菌に謝する凝集反張が二〇〇倍以上陽性に現はれても、其れ丈けで直に腸﹁チフス﹂なりと診断する11 ととが出來ない様な事情が起こったのであります、其れは何であるかと云ふと,豫防注射であります。腸﹁チフス﹂の豫防注 射を致しますと、注射後一年位の日月を経過して居ても、殊に腸コチフスしの豫防注射を受けた人が何等かの原因で獲熟致し ますと、腸﹁チフス﹂でないのに、其人の血清が腸﹁チフス﹂菌に劃して二〇〇倍以上も著明なる凝集反鷹を起こすことがあり ます。か玉る場合には数日を経て更に今一度新たに採血して凝集反慮を馬車すれば、若し腸﹁チフスしなら,前同より更に著 明なる凝集反鷹が現はれると云って居る導者がありますが、併し私はか玉る場合には腸﹁チフス﹂でなくても、熱があれば前 同より更に著明なる凝集反魂が現はれることがありはせないかと云ふことを疑って居るのであります。兎に回腸コチフスしの 豫防注射を受けて居た場合には、假令凝集反騰が二〇〇倍以上陽性に現はれても、直に其れ丈けで腸コチフス﹂なりと診断す るととは出來ないのでありまして,腸﹁チフス﹂の豫防注射が奨鋤されて居る現今に於ては凝集反慮の診断的債値は以前より も下落したと云はねばなりませぬ。
﹁バクテ璽オフアージユ﹂
西暦一九一七年冬人デレル氏は赤痢患者の糞便内には赤痢菌を溶解する物質があることを磯見して、其れを﹁バクテリオ フアージユ﹂と名付けたのでありますが,其後多数學者の研究によりまして、腸﹁チフス﹂患者の糞便や尿巾にも、腸﹁チフ ス﹂菌に謝する﹁フアージユ﹂が獲見され、早れを診断に慮用せんとするに至ったのであります。即患者の糞便叉は尿を少量 の﹁ブイヨン﹂叉はコペプトンL水に混じ、其れを五八−六〇度の水浴中に三十分問入れて置きますと、糞便或は尿中の難菌は 死んで、﹁フアージュ﹂は其儘攣化せないで残って居るのであ夢ます。そこで此糞便叉は尿の殺菌液の一白金蓮を普通の﹁ア ガール﹂雫板培養基に劃線的に塗・りまして、表面が乾いたところで、其上に新たに培養した腸﹁チフス菌の一白金耳を塗り まして、艀卵器の中に入れて置くのであります。共際若し﹁チフスフアージユ﹂があれば、﹁チフス﹂菌の磯生が障碍されるか 或は防止されると云ふのであります。私は﹁バクテリオフアージユ﹂に就ては少しも経験がありませぬから、批判的の事は申 し上げ餓ねますが、併し﹁チフスフアージユ﹂が最も多く陽性に現はれるのは第三週及第四週であるそうでありますから,從 今村目腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診噺 第四巻 一二九12 今村口腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診階 って其診噺的偵値は凝集反鷹に優るとは云ひ得ない様に存じます。
類似熱性病の診蜥︵類症鑑溺︶
第四谷 =二〇 ︵一︶,﹁チフス﹂様﹁パラチフス﹂ 之は御承知の如く,﹁パラチフス﹂菌によって起こる病氣でありまして、其症候は名の示 す如く、腸コチフスしに良く似て居るのであります。併し腸コチフスしと異なり.﹁パラチフスしの際には潜伏期が通常三一六日 で、腸﹁チフス﹂より一般に短かく、病氣の初まりは多くは急激で、翌翌或は戦史を以て急に艦淵が三九一四〇度位に昇るの であります。熱は多くは初めから弛張致します。其他時には口唇に]ヘルペスLを生することがあります。尿のヂアツオ﹂反 慮は多くは陰性であります。其他の症候は腸コチフスしと略ぼ同様であります。從って以上の諸鮎に注意すれば、略ぼ診噺を 下すことが出來ますが、併し確實なる事は細菌學翼壁血清學的診断に待たなければなりませぬ。印患者の血液其他糞尿から ﹁パラチフス﹂菌を誰明し.或は患者の血清が﹁パラチフス﹂菌に謝して著明なる凝集反鷹を呈することを讃明することに依っ て.診臨は確定されるのであります。但し患者が豫防注射を受けて居た場合には、凝集反響曳けでは診断を確定することは 出來ませぬ。 ︵二︶、獲疹﹁チフス﹂ 本病は衣颪に依って傳署する病氣でありまして、從って貧困者に多い病氣であります。併し我邦に は稀有な疾病であ砂まして、病原菌は爾ほ不明であります。症候は腸,チフスしに似て居る計りでなく,県費﹁チフズ﹂と同じ く、尿は多くは﹁ヂアツオ﹂反鷹を呈し、血溝は腸﹁チフス﹂菌に聴してこ〇〇倍位迄凝集反証を起こすことがあります。併し 腸﹁、チフス﹂と異なり、病初には往々にして悪寒、職藻が起こり、熱ぼ急に三九一四〇無位に上昇して、一週聞以上略ぼ稽留し 次で徐々に下降するのであります。一畳的には頭痛、全身倦怠等の外に、關節痛や、四肢痙痛などを訴へるのであります。 顔面は往々にして浮腫状に腫脹して重く、眼球結膜は常に充血して居ります。而して第四−第六病日に至れば,腹部から、 胸部、背部、手、足に至る迄殆んど全身に、順次多数の薔薇疹が一爾日の間に獲生するのであります。但し顔面及頸部には 通常磯疹致しませぬ。血液の白血球数は初は普通或は減少しますが、喪疹期に至れば増加致します。之等の畳鰯に注意すればユ3 診断は通常困難でありませぬ。殊に本患者の血清は一、プロテウスLX一九と云ふ特殊の御器に棄して、常に凝集反慮を起こす のでありまして、吊れに因て診籔曇.確定し得るのであります。但し此﹁プロテゥス﹂X︸九は本病の病原菌ではないと云ふ事 であります。 ︵三︶、﹁,インフルエンザ﹂ 御承知の如く,﹁インフルエンザ﹂の症候は多種多門でありまして,或る場合には高熱が爾三日 或は其れ以上稽留し、殊に所謂﹁チフス﹂性﹁インフルエンザ﹂なるものに於ては高熱が二三週間も馬鈴して、腸﹁チフス﹂との 鑑別に苦しむことがあります。併し﹁インフルエンザ﹂の際には頭痛、腰痛、四肢の痙痛が一般に激しく、文題の僅かな維験に よれば、眼球の屡痛を誰明し得る場合が比較的多い様に存ぜられます。愚管﹁カタル﹂、殊に咽頭﹁カタル﹂、其他氣管支﹁カタ ル﹂を起こすこと多く、尿の﹁ヂアツオ﹂反慮は常に陰性でありまして、此黙はコパラチフスしに似て居るのであります。叉コイ ンフルエンザLは悪寒或は景観を以て可なり急速に磯熱するのでありまして、此貼も寧ろ﹁パラチフス﹂に似て居るのでありま すが、之に反して腸,チフスLは前述の如く,戦懐を以て獲熱するこどは殆んとないのであります。省ほ叉血液の白血球数は﹁イ ンフルエンザ﹂の際にも減少し、コエオジンー嗜好白血球も溝失することがありますかむ,之等の血液所見は腸﹁チフス﹂及、パ ラチフス﹂と﹁インフルエンザ﹂との鑑別には殆んど何等の退出を有せざるものと云はねばなりませぬ。要するに疑はしき場 合には前蓮の如き細菌學的我は血清學的稔査によりて、診断を確定せねばなりませぬ。 ︵四︶、潜在性肺結核或は肺門結核 此虞で潜在性肺結核或は肺門結核と申しますのは獲熱以外には何等の理學的症候を現 はさない肺結核の事を云ふのであります。此者の診断は極めて困難でありまして、此者と腸、チフスL及類似熟性病との鑑別に 苦しむ場合は決して少なくないのであります。英國のマーチソン氏は﹁他に擦るべき症歌がなくて、熱が一週間も績いたら 先づ﹁チフス﹂を考へよ、萬一誤りても潜在結核に過ぎすしと云って居るそうであります。若しか玉る場合に患者の膿格が虚 弱で、装備の淋巳腺が腫脹して居ましたら、衝ほ其上盗汗があったり,且つ既往歴並に家族歴に結核を思はしむべき鮎があ りましたら、其等は潜在性肺結核の診断の参考或は補助にはなりませうが、併し確實なる診断を下さんとするには、一方に 於て患者の血液其他糞尿に就て腸﹁チフス!菌及﹁パラチフス﹂菌の槍索を行ひ、或は患者の血清に就て腸コチフスL菌及﹁パラ Aコ村口腸﹁チフス﹂及溜門似数㎝性疾病の診噺 第四谷 一三一
14 今村”腸コチフス﹂及類似熱性疾病の診噺 第四巻 一三ニ チフス﹂菌に謝する凝集反響を検査し、他方に於ては患者の胸部の﹁レントゲン﹂槍査、略疾の結核菌槍査等が必要でありま す。かxる場合に若し細菌學的にも、亦血清學的にも腸﹁チフス﹂或は﹁パラチフス﹂の診断を下し得す、又他方に於ては胸部 の﹁レントゲン﹂検査をも行ない得す、又略疾も出ないか,或は出ても結核菌を誰明し得なかったとしたら、どうして診噺を 下すかと云ふに、私はか玉る場合には、若し熱が下がる傾向がなければ、﹁クリオゲニン﹂O。六と﹁ピラミドン﹂0・四との合剤. を︸日六同に分ちて興へて見るのであります︵三同に分ちて與へますと、甚しく獲汗することがあります︶。私の嘩かな維験 によれば、結核の場合に、若し混合墨染がなければ、かxる合剤を與へますると、多くは三日以内に、或は分利状に或は換 散欣に下熱致すのであります。かくして潜在結核は略ぼ想像し得ると私は考へて居ります。 ︵五︶、中心性肺炎 下れも診断の六かしい病氣で,腸コチフスしとの鑑別に苦しむことがあります。併し肺炎ぱ御承知の如 く、腸﹁チフス﹂と異なり、通常悪寒庭働を以て急激に獲熱する病氣でありまして、呼吸数は通常増加し、時には口唇に﹁ヘル ペス﹂を獲生することがあります。又白血球増多症を起こしますから、此等の諸鮎で腸、チフスしとは鑑別し得られますが、 併し中心性肺炎其者は若し特有な血疾︵乳色疫︶や、単機中に肺炎菌がない場合には、﹁レントゲン﹂槍査によらざれぽ、確實 なる診断は下し難いのであります。 ︵六︶、急性全身粟粒結核の﹁チフス﹂型 急性全身粟粒結核の﹁チフス﹂型なるものと腸﹁チフス﹂との鑑別は初期に於ては甚 だ困難であります。殊に急性全身粟粒結核に薔薇疹様の皮膚疹が稜生しますと、腸﹁チフス﹂との鑑別が益々困難でありまし て、か玉る場合には一方に於て血液の腸.、チフスL菌槍査、血清の腸﹁チフス﹂菌に封ずる凝集憎悪検査等を行って、腸﹁チフ ス﹂なりや否やを決定し.他方に於て肺臓のコレントゲンL検査、眼底桧査によれる脹絡膜結核の誰明、白血球増加等により て、全身粟粒結核の診断を下すのであります。 ︵七︶、敗血症御承知の如く、敗血症は多くは悪寒或は戦懐を以て激しく弛張する所の熱型を呈する病氣でありますが、 併し時としては熱が稽留し、或は病原菌の侵入門が不明で、其爲めに腸﹁チフス﹂或はコパラチフスしとの鑑別に苦しむこと があります。併し敗血症の際には皮膚に鮎歌出血,膿萢、其他種々なる磯疹を磯生すること多く,叉關節炎を趙こすことも
15 多いのであります。且つ叉通常白血球増多症を起こすのであります。殊に血液の細菌心的検査に因って、多くは確實なる診 噺を下し得るのであります。 ︵八、、ワイル氏病 次はワイル氏病の初期,郎黄疸や出血が未だ起こらない時期の診断でありますが、此時期に於ては頭 痛、殊に筋肉痛、帥四肢の筋肉痛、腰痛などが烈しく、叉筋肉に烈しき腿痛があること、眼球結膜に非常に著明なる充血が あること、並に白血球の増加せること等によって、腸﹁チフス﹂との鑑別は通常容易であり,次で黄疸及出血が起これば、本 病の診断は殆んど確實であります。殊に黄疸出血性﹁スピロへーテ﹂を誰明し得れば、診蜥は確實であります。 ︵九︶、軍純性︵加答見性︶黄疸 之れが稀には熱を以て初まりまして、腸﹁チフス﹂と疑はれ、後に黄疸が現はれるに至って 始めて診断が確定することがあります。か懸る場合、帥黄疸が未だ皮膚、眼球結膜或は尿に現はれざるに先ちて、患者の血 清を槍接しますと、多少黄色味を帯びて居ることがあります。叉血清に就てコヂアツオ﹂反慮を検査しましたら、血液の中に は朗に謄汁色素が増加して居ることを誰明し得るだらうと想像して居ります。 ︵一〇︶、・臓膜炎 臆膜炎は御承知の如く、熱のぽかに平常激しき頭痛.項部彊直、ケルニツヒ氏徴候其他嘔吐などを起こ す病氣でありまして、臓脊髄液の脚力は上昇し,且つ臓脊髄液の蛋白質、細胞等の増加を起こす病氣でありますが、併し時 には腸コチフスしが上述の謄膜炎様症欣を呈し、且つ臓脊髄液も其れに類似の攣化を呈して、臓膜炎と考へられ、後に至って 薔薇疹などが現はれ、或は血液の検査により、始めて蝉吟を下し得ることがあります。 ︵一一︶、流行性謄炎 之れが叉時には熱の割合に脹が少なくて、腸﹁チフス﹂らしく見えることがあります。併し本病に於 ては眼瞼下垂、複覗、瞳孔異状などを起こすこと多く、血液の白血球激は通常増加するのであります。殊に一種特有なる嗜 眠状態を呈し、或は舞踏病性痙攣又は聞代性筋痙攣等の如き蓮動障碍を起こすに至れば、殆んど確言に診断を下し得るので 診ります。 ︵一二︶、日本佳血吸轟病 之は山梨縣甲府平原、備後國片山村,其他岡山縣.佐賀縣、灘岡平等に流行する地方病であり まして、東京附近に於ては利根川、荒川、江戸川滑岸の地方に之を見るのであります。本病の急性症は或は急性腸﹁カタ 今村団腸コチフス﹂及類似熱性疾病の診噺 第四巻 一三三
16 今村H腸﹁チフス﹂及類似熱性疾病の診噺 第四巻 =二四 ルL、或は赤痢、或は轟様突起炎、或はコマラリやL、或は腸﹁チフス﹂等の如き種々様々の症候を呈しますので、本病の流行地 に於ては之等の疾病.殊に腸﹁チフス﹂との鑑別に苦しむことが少なくないのであります。本病は通常春から秋にかけて、川、 溝,水田などに這入ると起る病氣でありまして、其急性症は通常晩春から晩秋にかけて見るのであります。從って此季節に 本病の流行地に於て不明の熱性病に遭遇しましたら、本病の急性症をも念頭に置いて、川、溝,水田等に這入った事はない かと云ふ事を注意して聞く事が必要であります。其と同時に患者の糞便に就て日本佳麗吸癒の卵子を捜すことが必要であり ます。本病の急性症に於ては通常糞便内に日本雪加吸虫蝕の卵子を獲位し得るのでありまして、其れに因って診噺を確定し得 るのであります。