共同学習における学習内容に関する成員間相互説明過程の段階的構成が児童の知識獲得に及ぼす影響
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(2) 【結果】SE条件では,半数のグループがモデ ル通りに,3割のグループが段階3を自分のま. 級をSE条件, B学級をFD条件に割り当てた。 両条件とも質問スキル及び説明スキルのトレー. G{yノ〕d・’d、\ノノレーノ【〃訊GO9乞ししい1こorリ. ニングを行った後,SE条件には段階的説明モ. 条件では8割のグループが各自の意見を言った. デルの教示及び話合いの練習,FD条件には質. 後にグループのまとめをする流れで話合いを進. 問と説明の重要性の教示及び話合いの練習を5. めていた。. 回行った。最終的に,話合いによる児童の相互. し瓶燃}斗“} ノ 甘11. づ(ナ hレk」♪、」 }ゲ、、↓. ■一−∼. 概念地図テストでは条件間に有意な差はみら れなかったが,知識テストでは事前テストを共. 変量とする共分散分析を行った結果,SE条件. 作用を記録した後,事後の知識テスト,概念地 図テスト等を実施した。. 【結果】SE条件では半数のグループが段階2. の方がFD条件よりも有意に高いことが示され. で終わってしまったため,分析においては,SE. た。. 条件を段階4までのSE(W)条件,段階2まで. 【考察】段階的説明モデルは児童にとって概ね. のSE(P)条件に分けた。. 適用可能であり,知識獲得にも効果があり得る. 知識テスト及び概念地図テストではSE(W). という結果が得ちれた。しかし,児童の話合い. 条件がFD条件よりも有意に高い結果であっ. の実態として,最終的にグループのまとめをす. た。また,発話分析の結果,繰り返し説明及び. ることが自然な流れであると示唆された。そこ. 意見統合説明と知識テスト得点との闘に正の相. で,モデルの一部を修正し,段階3の後にグル. 関がみられた。概念地図テストでもそれらの説. ープのまとめをする段階4を加える。. 明との正の相関がみられた。. また,話合いに対する児童の認知では,自分. 本実験 【目的】「問題」で提案したモデルに修正を加え. た段階的説明モデルが児童の知識獲得に有効で あるか検討することを目的とする。. の考えの深化,話合いに対する取り組み,話合. いの楽しさでSE(W)条件がFD条件より有意 に高く評価していた。. 【考察】段階的説明モデルによる話合いが児童. 【方法】被験者:静岡県内め公立小学校第5学. の知識獲得に効果的であり,段階的説明モデル. 年の2学級の児童計74名(A学級:男子18名,. を使った児童自身も話合いに満足することが示. 女子19名,B学級:男子18名,女子19名). 唆された。また,「質問」よりも「説明」の方が発. 実験計画:話合い方法を要因とする1要因2水. 話した児童の知識獲得に影響を与えることが示. 準の被験者間計画。話合い方法はモデルに従う. された。しかし,段階的説明モデルは児童に話. SE条件,自由に話し合うFD条件が設定され. 合いの不自由さを与えている可能性があり,知. た。各条件への割り当ては学級単位とした。. 識以外の従属測度の検討と共に今後の課題とし. 測度:知識テスト,概念地図テスト,話合いに. て残された。. 関する質問紙,話合いの効果に関する自由記述。. 手続き:事前に知識テスト及び概念地図テスト. を実施し,事前の等質性を検討した上で,A学. 主任指導教官 荒木紀幸. 指導教官 天根哲治.
(3) 学位論文. 共同学習における学習内容に関する 成員間相互説明過程の段階的構成が 児童の知識獲得に及ぼす影響. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻 教育方法コース. MOOO31C 加 藤. 寧.
(4) 目. 問題. 次. 1. ●●●●●o●●●●●●●●●●●●●●●●●●■●●●●■●●●●●●●●●●●●●●●●●o●・. 予備実験 目的. ・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 方面. 。・。・・・・・・・・・…. 結果. ・の…. 考察. 。・・・…. P6. @。・・・・・・・・… 。・・・・・… 。・・・・・・・… 。・。16. @。・・・・・・・・… 。・・・… 。・… 。・… 。… 。・・・…。。… 。26 @。… 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 。… 32. 本実験 目的. ・・・・・・・・・・・・・…。・・。・・・…。・・…。・・・…。。。・・。・・…. 方法. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 結果. ・・・・・・・・・・・・…. 考察. ・・…. R8. @。・・・・・・… 。・・・・・・・・・・・・・… 38. @。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 。・・。・56. @。・・… 。・・… 。… 。・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 76. 引用文献. ・・・・・・…. @。・・,・・●・。・・・・・・… q・・… 。・・・・・・・・・… 89. 附記. ・。・・・・…. @。・・・・・・・・・… 。・・・・・・・・・・・・… 。・・・… 。92. 巻末資料. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. @。・… 。・・・・… ∴・。・・。・93.
(5) 問 一共同学習1)の場面において,児童は他者とのコミュニケーションを通. して既有知識や新たな知識を言語化する機会をもつ。その時,児童たち は言語化した知識を共同構成しながら学習対象となる概念の意味を明ら かにしていく可能性がある。また,コミュニケーションをするときに,. 一般に児童は他者が自分の意見を理解することを望むので,その結果と して児童は詳細な説明をすることが多くなると考えられる。社会構成主 義(social construcdvism)の立場に立った研究者たちは,児童によるそのよ. うな詳細な説明は知識をさらに精緻化させると考えている(Boxte1, Linden. &Kanselaar,2000)。このように,共同学習における児童柑互のコミュニ. ケーションは認知的側面に効果を与えていると指摘され,児童の知識獲 得と話合いの関連を追究する多くの研究がなされてきている。 共同学習に関する実証的研究では,「共同」が学習を促進するという結 果が一般的である。例えばJohnson, Johnson&Holubec(1984)は過去90年間. の研究をレビューし,個別学習や競争的な一斉学習と比較した上で共同 学習2}による知識獲得の有効性を示している。またGraesser&Person(1994). は,共同学習の1つの形態であるピア・チュータリング(peer−tutoring)と. 1) 本研究での「共同学習」は,「個別(individua1)」に対する「共同(collaborative)」の意味で. 用いている(e.g. Azmitia,1988)。小集団による学習は「協同学習」「グループ学習」「小集団. 学習」等と表されることもあるが,本研究では,Webb(1989)がグループでの学習でも, それぞれの生徒の考えを強調したように,個別の学習を基盤にして「共同」のよさを取 り入れていくという立場から,「個別」との対比を強調して「共同学習」と表記すること にする。. 2)Johnsonらは,「協同学習(coopelative leaming)」という用語を用いて,人間関係を重視 した学習を行っている。. 一1一.
(6) 一斉学習の比較をしている。この研究では,生徒3}が相手の生徒に対し. て,一斉学習で生徒が行う240倍もの質問をしていると結論づけ,質問 の多さが生徒の知識獲得の機会を増やしている可能性を示唆した。最近 ではFall, Webb&Chudowsky(2000)が州単位で生徒たちの学力を評定する. 大規模評価プログラムの中で,たとえわずかな「共同」でも,個別学習よ. りも内容理解や成績に有意な影響を与えていることを示している。以上 のように,.多くの研究によって,共同学習による児童の知講獲得の効果 が実証されてきている。. 共同学習のプロセスを分析した研究も多い。話合いのプロセスでは,. 分析の対象として発話回数や発話内容が問題とされる。最近の研究の多 くは,単なる発話回数よりも発話内容のレベルに視点を当てた分析を行 っている。Berkowitz&Gibbs(1983)は,大学生の道徳性発達にどのような 話合いが関係しているのかを‘TD(transac恒ve discussion:理由づけによ. る相互理解のある話合い)’という概念を用いて説明している。具体的 には,道徳性発達は知識を構築していく意見交流(oper甜onal transacts)の 多さに左右され・知艶出し合うだけの意見交流(・ep・e・en…i・n・1・・an・響…). の頻度には関係しないと結論づけている。つまり,高レベルの相互作用 が認知の変化に影響しているという指摘である。. 知識獲得を目的とした相互作用について検討した研究では,‘説明’. と‘質問’に焦点を当てた研究が多い。‘説明’の視点からの研究の1 つにPeterson, Wilkinson, Spinelli&Swin9198φの研究がある。彼らは小学校. 2年生及び3年生の算数で‘説明’の種類と知識テストの結果との関係. 3) この研究では中学生及び大学生が被験者であったので,「生徒」と表記した。以下, 「児童」と表記される場合は小学生を指し,「生徒」と表記される場合は中学生または高 校生を指す。. 一2一.
(7) について詳細に検討している。その中で,学習内容に関する‘説明’を 与えることが‘説明’を与えた児童の知識獲得に正の相関があることを 示.した。Webb(1989;1991)は,児童または生徒同士の相互作用の研究レ ビューの中で,グループの仲間に‘念入りな説明(elaboration)’を与える. ことは説明者の知識獲得と正の相関があり,念入りでない説明や答えだ け話すような簡単な反応は説明者及び被説明者の知識獲得に関係しない としている。Webb&Fahvar(1994)は,‘念入りな説明’を導き出すよう な援助スキル(helping skill)をトレーニングすることによって‘説明’を. 誘発する研究を行っている。中学校1年生の数学の授業で,基本的なコ ミュニケーション・スキルのみを訓練した条件と援助スキルも訓練した 条件を作り,援助スキルによって‘念入りな説明’が引き出されるのか,. そして援助する生徒あるいは援助を受ける生徒の知識獲得に影響がある. のか実験した。結果は,学力の低い生徒にとっては,援助スキルも訓練 した条件の方が‘念入りな説明’を引き出すことが多く,その条件の生. 徒の方が数学の成績も良かった。また,他者から念入りでない援助を受 けるほど受けた側の生徒の学習効果が低いという結果も導かれた。この 結果はWebb(1989;1991)やKing(1992;1994)の結果とも一致していた。. 児童の‘説明’を引き出す手続きとして他者による‘質問’や要求を 用いた研究もある。King(1992;ユ994)は,さまざまな質問手続きを珊いて. 生徒の知識獲得との関係を研究している。その中でKing(1992)は‘質問’. と‘説明’との関係を,訓練を受けた生徒による質問生成方略に関する 認知モデル(Figure 1)を使って,次のように指摘している。. 一3一.
(8) 関連する既有知識 ,’. ’ ’. ’ ’. ’ ’. ’. /. ’ ’ ’. ’ ’. ’. 一般的な 質 問. @. 、. 、. 、 、. 、. 精緻化. 、 、 、. 、 、. (例:説明). 、. 、 、. 固有の. 認知的な. 質 問. 再提示. 理解 呼び起こし. 思考レベル 、(例:分析). Figure 1.訓練を受けた生徒による質問生成方略の要素と過程(照ng,1992). 生徒たちにどんな学習内容にも応用できる一般的な高レベルの質問の 仕方(例:経験と結びつける質問「○○は今までに経験した△△とどんな ところが似ていますか?」)を教えることにより,生徒ば自分の既有知識. と結びつけて,一般的な質問の仕方を学習内容に固有の高レベルな質問 (例:理科「神経と電話はどんなところが似ていますか?」)に変換する。. 学習内容に固有な質問を生成したり他者にそれを質問したり,(他者ま たは自分の)質問に答えたりすることによって,生徒は高レベルな思考 (例:適用,分析,評価)と高レベルな精緻化(例:念入りな説明)をする。. 他者からの質問に答えるために・さらに高レベルな思考が必要とされ・ それが高レベルな精緻化にもつながる。このことは,高レベルな‘説明’. が他者あるいは自分の高レベルな‘質問’によって導かれることを示し ている。この認知活動の間に,生徒は新たな知識を自分自身の記憶の中 に完全に組み入れ,より幅広い認知ネットワークを構築していく。そし て,学習内容の精緻化活動により生徒が学習内容を正確に再提示できる ようになり,生徒の学習内容の理解が促進され,その呼び起こしが容易 になる。. 一4一.
(9) 以上のことは,ただ単に‘質問’を与えれば質問を受けた側の知識が 再構成されるのではなく,質問を受けた側が高レベルな質問に答えるこ と,一すなわち,‘念入りな説明’をすることによって質問を受けた側,. つまり説明者の知識の精緻化が進み,高いレベルの理解が可能になるこ とを示唆している。. King(1994)はさらに具体的な質問手続きを用いて‘質問’と児童の知. 識獲得の関係を実証した。学習内容に関する新たな概念と既有知識と関 係づける質問をすると,質問された児童は既有知識を活性化させ,その 概念と過去のことを結びつける複雑な知識の構成をする。そして,‘質 問’と既有知識とを詳細に関係づけるほど学習効果が大きくなると結論 づけている。 King, Staffieri,&Adelgai《1998)は,中学1年の理科におけるピア・チュ. ータリングの研究で,質問手続きを一歩進めて,段階的質問(sequenced. inquiry)による学習効果を検討している。この研究はKingが考案した. ‘ASKめTHINK−TEL WHY⑪◎41’と呼ばれる‘質問’や‘説明1をモ デル化したチュータリングの研究であった(King,1997;1998)。段階的質 問.では,まず,チューターが知識レビュー質問(knowledge−review questions. :定義,要約,など新たな概念に関する知識を引き出す質問)をして,. チューティーの新たな概念に関する知識を活性化させる。そして,チュ ーターはチューティーの新たな概念に関する理解を確認,評価した上で, 必要に応じてヒント質問(hinting questions:チューティーの意見が正しく. ないと示唆したり本来の方向を暗示したりする質問)や探り質問(probing. 4) “⑪”は登録商標,“◎”は著作権を表している。“ASK to THINK−TEL WHY”及び “ASK to THINK”は登録商標であり,このモデルによるチュータリング手続きは, 1991,1994にKingが著作権を得ている。. 一5一.
(10) questions:チューティーの考えを再確認する質問)を行う。最終的にチュ ーターは思考質問(thinking questions:正当化,推論,統合など相手の高. レベルな‘説明’を引き出す質問)を投げかけ,チューティーの活性化 した学習内容に関する新たな概念の知識をチューティー自身の体験や既. 有知識と結びつけやすくする。このようにKingらはチューターが質問 を段階的に行うことによって,チューティーの自然な思考の流れで‘念 入りな説明’を導こうと考えた。この研究での3つの条件,すなわち, ‘段階的質問と説明’条件(SIE条件:sequenced inquiry plus explanation),‘質. 問と説明’条件(IE条件:inquiry plus explanation),‘説明のみ’条件(E条. 件:explanation only)で比較すると,ポストテストの多肢選択式理解テス. トの得点に条件差はみられなかったが,自由記述式の知識構成テストで. SIE条件がE条件よりも有意に優れた成績を示した。さらにSIE条件は ポストテストの6日後に実施された質問誘発カードを用いない転移セヅ. ション後の知識構成テスト及び8週間後の知識構成テストでE条件より も優れていた。また,パートナーへの満足度では,SIE条件の生徒がIE 条件及びE条件の生徒よりも高くパートナーを評価していた。 Kingら(ユ998)の研究は生徒たちが質問を段階的に構成していぐことに. よって生徒たちの知識獲得に影響を与えることを示唆したという点で興 味深いが,問題点がないわけではない。知識構成テスト得点において‘段 階的質問と説明’条件では,‘説明のみ’条件と比べて期待された.よう. な結果が得られたが,‘段階的質問と説明’条件と‘質問と説明’条件 の間では期待されたような結果が表れなかった。つまり,段階的に質問. したことのみの影響は予想したほどでなかった。Kingらはこの原因に ついて,段階的質問で大きな役割があると考えられていた‘ヒント質問’ が生徒に内在化されていなかったためであると考察している。 一6一.
(11) しかし,‘ヒント質問’の内在化に限らず,同年齢・同能力の生徒(King, 1999)による質問を用いた‘足場かけ(scaffolding=より高い学習レベルに. 引き上げること)’に問題があった可能性がある。例えば,大人と子供 のチュータリングならば,子供の反応をみて大人が適切な質問を出して,. 子供の説明を引き出すことは可能である。ところが,同年齢・同能力の 生徒による質問を用いた‘足場かけ’は困難であると予想さ燕る。King ら(1998)の研究でも,‘思考質問’‘探り質問’及び‘段階的質問’の頻. 度は‘段階的質問と説明’条件の方が‘質問と説明’条件よりも有意に 多かったにもかかわらず(‘説明と質問’条件の方が多かった質問カテ ゴリーはなかった),説明の出現頻度に2条薄着の差はなかった。この 事実からチューターの‘質問’がチューティーに有効に働いていなかっ たと考えられる。チュータニはチューティーの反応に細心の注意を払っ て‘質問’しなければ,適切な援助はできないのである。 Webb(1991)は,援助を受けることが学習に正の効果を及ぼす必要条件. として次の6つを挙げている。(1)被援助者が援助を必要としているこ と,(2)援助者の説明の適切さ,(3)援助者の援助の適時性,(4)説明が. 被援助者に理解されたこと,(5)問題解決で被援助者がその説明を使う 機会があること,(6)被援助者がその機会を使うこと,である。援助者 はこのような被援助者のサインを見落とさずに援助を与えなければ,、被. i援助者の学習効果は上がらない。Kingらの実験では,チューターが学 習内容に熟達していなか?たため,例えば,援助を必要としているチュ ーティーのサインを見落としたりチューティーが必要としたときに援助. を与えられなかったりしたと考えられる。Webb、は,6つの視点は被援 助者への効果的な説明の必要条件であり,1つでも欠けると与えた‘説 明’は説明を受けた側の学習に効果がなくなると述べている。したがっ 一7一.
(12) て,チューターが同年齢・同能力であったために,チューターはチュー ティーの適切な‘足場かけ’ができなかったのかもしれない。. 以上のことを考えれば,Kingらが指摘しているヒント質問の内在化 という問題よりも,必要なときにヒントを出すだけでなく,ヒントを質. 問の形にして表現することが学習内容を熟知していない生徒にとって困 難であったという見方の方が妥当であると考えられる。. 1人だけでは相手の援助が困難であるが,学習内容の認知レベルが異 なる少人数のグループ(Johnsonら(1984)は6人が上限であると述べてい,. る)を構成すれば,成員が説明している児童に‘足場かけ’をしゃすく. なる。さらに‘質問’を主体にした‘足場かけ’では赴く,説明者の知 識獲得に直接的に関係する‘説明’を説明者自身が段階的に行えるよう. にする。つまり,自然な形で説明者が段階的に高いレベルの精緻化をす るように,成員それぞれが段階的に説明していく過程を経る6段階的な 説明とは,それぞれの成員による自分の考えの説明の段階(段階1),そ れぞれの成員による自分以外の成員の考えの説明の段階(段階2),それ. ぞれの成員による他の成員の考えを踏まえた上での自分の考えの説明の 段階(段階3)を経ることである。各段階で成員がそれぞれ‘念入りな説. 明’をして,その説明について成員が共同で話し合うことによって,説 明者ひいてはグループ成員全員の知識獲得が促進されるのではないかと 考える。. 以上の理由から,本研究では異質な4人程度の小集団で,各成員が‘念. 入りな説明’を段階的に行っていくことによって,各成員が知識をより 確実に高いレベルまで高めていくこζができるのではないかと仮定し, 「段階的説明モデル」を提案する(Figure 2)。. 一8一.
(13) ①. 自分の知識 ↓. ②. 員が 別に 自分の考えを. @. 学習課題の提示. め. 員がそれぞれ. 自. の えを曇. 段. 分. る. の. 考. 三明者は自分の考え. 5. No. 説明できたか9. の は, ピン. 9 謝. 階. え. の. 説 明. Yes. 1. ⑥ 成員が自分の・. No. 幽明を終えたか9. ↓. Yes く一一一一一一一. ⑦. 成員が他の成員の え方が分かったか9. No. 8不明な箇所をお互いに. A}. Yes 員は順番に の 員の 》. 曇. 他 者. 日. ⑩. の. 成員が納得でき 説明だったか9. の 員は, ピン. No. 停り 問. 考. 説. ⑫. 階. え. の. Yes. 2. 明. 成員が他者意見 説明を終えたか9. No. 段. ↓. Yes ⑬. 自分の意見が 変わったか?. No 統 合. Yes. 段. さ. 1 の山 の皿月 他者の意見の長所をふまえ =β 日. 力立. ゴ明は の“の月 認めながら,最終的にア再度 瓜の立. ⑯. 統合さ 統合された知請 Figure 2.共同学習における知識獲得に関する段階的説明モデル. 一9一. れ. 階. た. 説 明. 3.
(14) 【段階的説明モデルの提案】. さて,段階的説明モデルにおいては,各成員が予め学習課題に対する 自分の意見をもって話合いに臨むこと,自分が説明するとき以外はなる べく説明者に対して質問を行うことを原則とする。もちろん,フィード バックや励ましを行うことはよしとされる。 まず,各成員が自分の知識(①)を基に考えをまとめ(②),それぞれが. グループで自分の意見を説明する(③)。説明者が自分の意見を言えない. 場合には(④),他の成員が援助する。他の成員は説明者に「…につい て知ってる?」などの説明者の理解の程度を把握する‘探り質問(本研 究では「確認質問」)’や「…についてどう思う?」「…という見方はで きない?」など説明者にヒントを与える‘ヒント質問’を行う(⑤)。こ. れは説明者が自分の考えを説明しやすい条件を他の成員が共同して整え ることを意味している。. 全員が説明を終えたことを確認して(⑥),次に,各成員が他者の考え 方を理解できたか確認する(⑦)。理解できない考え方がある場合は,お 互いに当該の成員に対して,不明な点を質問する(⑧)。この段階は各成. 員が自分の考えを説明すると共に全員が各成員の考え方を理解できるよ うにするための段階である。. 全員が他の成員の考え方を理解した上で,次に,各成員が順番に他の 成員の考え方を自分の言葉で説明する(⑨)。説明者が独力で他者の考え. を説明できるように,⑨の場面でも説明者以外はなるべく質問すること によって援助する。他の成員が納得できるような説明でない場合(⑩)は,. 他の成員が援助して‘念入りな説明’を引き出す。ここでは「…につ いて説明できる?」「… を他の例で示すとどうなる?」「…を別の言葉 で言い換えるとどうなる?」などの‘探り質問(本研究では「確認質問」)’. 一10一.
(15) や「…と関係あることは何?」「∴・と考えられない?」などの‘ヒン ト質問’が使われる(⑪)。この段階は,説明者が他者の意見を自分の言. 葉で説明することによって,今までの自分の意見を修正したり固めたり することを目的とした段階である。. 他者の意見の説明が全員終わったことを確認して(⑫),最終的に,各. 成員は自分の意見をまとめる段階に移る。他の成員の意見を理解して自 分の意見を変えた説明者は(⑬),一連の話合いを通して発見した,自分. の当初の意見の短所や他の成員の意見の長所を述べ,最終的な意見をま とめる(⑭)。他の成員の意見を踏まえた上で,自分の意見に確信をもっ. た成員は,他の成員の意見の長所を認めながらも,自分の意見のよさを 再確認してまとめる(⑮)。⑭や⑮のまとめの説明では,意見を変えたか. 否かに関わらず,自分を含めてグループ全員の意見を統合した意見にな るであろう(⑯)。この統合された考えが自分の既有知識に影響を与え,. 各成員の知識がより高く広いものになっていくと考えられる。 本研究では,Kingら(1998)の‘段階的質問と説明’条件の‘理解質問’ (知識レビュー質問)でのレベルは本研究の段階1に当たり,‘思考質問’. でのレベルは段階2及び段階3に相当する。. 【段階的説明モデルの期待される有効性】 本研究で提案した段階的説明モデル(Figure 2)を照ng(1992)の刮ll練を受. けた生徒による質問生成方略モデル(Figure 1)を基に,要素や過程を対 応づけながら示したものがFigure 3である。. Figure 3では,まず,各成員が既有知識を基に自分の考えを説明する。. そして,他者の意見について不明な点を既有知識にアクセスさせ,理解 できないところは質問して他者の意見を把握する。質問するときにも質 一1ユー.
(16) 間者は既有知識と結びつけながら質問し,質問者が説明者の意図と異な る解釈をしないようにする(段階1)。次に,各成員が他者の意見を説明 することによって,自分の既有知識とのズレや整合性を確認しながら, 当初の自分の考えをより高い思考レベルで精緻化させていく。この際に. も必要ならば他の成員は説明者を援助する手だてとして質問を用いる (段階2)。最終的に各成員の考えは精緻化され,他者の意見を統合した. 再構成された知識となり得る(段階3)。そして,3つの段階を経て固め られた知識は容易に呼び起こしが可能となる5. 関連する既有知識 1. 圏. ■. 鵬. 1. 唇. 睡 を. ■ コ. ココしコ. 、. 、. 、. 、 、. 、 、. 、. コロコ セコロ. 覧. = 他者意見の理解. 、. 、 、. 精緯化. l. N冒鴨.闇「鵬■卜. 今までの自分の視点から. 、 、. 認知的 再提示. ■. 自己意見説明. 、 、. i質問i T日. 、. 、. 他者意見説明. .理 解. 呼び. 他者の視点からの検討. (段階1). (統合された). 起こし. 思考レベル (段階3). (段階2》. Hgure 3.段階的説明モデルの要素と過程. 本モデルの一連の流れの中で,どの成員も説明をする機会が少なくと も3回ある。先述してきた,説明者の理解を促進させる要因とされる‘説. 42一.
(17) 明’が本モデルで重要な役割を果たしている。また,他の成員の意見を. 説明する活動を通して,説明者は自然に自分の考えと他者の考えとを比 較させたり衝突させたりする。説明者の中で,自分の知識と他者の知識 が比較,融合されることによって,自分の知識が他者の考えを統合した 知識に変わり,高いレベルの知識の再構成がなされると仮定する。 ‘説明’の認知的意義については,市川(2000)が‘認知カウンセリン グ(市川,1993,1998>’の中で‘言語的説明’という概念を用いて,声に. 出して説明することの重要性を指摘している。市川によれば,‘言語的 説明’の意義は理解や診断の深化に役立つこと及びコミュニケーション 能力の育成である。段階的説明モデルでも,‘言語的説明’の機会が意 図的に多く設けられており,認知的にみてもグループ成員の知識獲得に 効果が期待される。. ところで,段階的説明モデルが児童の知識獲得に効果を及ぼすための. 前提条件が2つある。1つは,児童が学習課題に対する自分の考えをま とめた上で共同学習に臨むことであり,もう1つは,児童がある程度の コミュニケーション・スキルをもっていることである。 各成員が自分の考えをもっことについて,杉江・市川・藤田・塩田(ユ979). は個別学習をした後にグループ学習を設定した条件の方がグループ学習 のみの条件より問題解決に直接関係する相互作用をすると結論づけてい る。さらにBoxtel, Linden&Kansela誠2000)は,わずか5分間だけ共同学. 習の前に個別学習の機会を設けただけで生徒たちの相互作用に影響があ ったとしている。また,本モデルは異質集団を想定しているので,グル ープ内に異なる意見が存在する可能性が高い。もし,自分の考えをもた ないで話合いに臨めば,他者の考えに合わせてしまう危険性があるが,. 自分の考えをもって話合いに臨めば対立する場面も起こり得る。相互作 一13一.
(18) 用でそれぞれの児童が,葛藤しながら適宜,質問・応答を重ねることに よって,相手の意見を理解することができ,知識獲得に肯定的に影響す る一と考えられる(Nelson&Aboud,1985)。. そのために,問題解決の過程を利用して,多様な考えを引ぎ出すこと が効果的であると考える。児童にも興味があり,多様な考えを導き出す ような「共同」の課題を提示して,児童は個別に自分の考えをつくる。そ. して,児童が自分の考えをもってから話合いに臨む。しかし,場合によ. っては限られた時間で自分の意見をまとめられない児童がいることも考 えられる。その場合には,他の成員の意見を聴き,他者の意見を参考に して自分の考えを説明するという活動を通して(Figure 2の④⑤の場面),. 共同学習の前の個別学習で自分の意見がまとまらなかった児童は,自分 の考えを固めていくことも可能である。. コミュニケーション・スキルについては,照ngら(1998)の研究をはじ. め共同学習の多くの研究で取り入れられている。生徒たちにある∵定の コミュニケーション・スキルをつけておくことによって,共同学習の効. 果をいっそう高めることを目的としている。しかし,Kingらの研究で は,スキル・トレーニングの絶対的な時間はどの条件も同じであったが,. 条件ごとにトレーニングするスキルの数が異なっていたため,指導した スキルがどの条件でも同じように学習されていたのか疑問である。本研 究では,各条件に割り当てられた児童のコミュニケーション・スキルを 条件間で一定にするために,同じ内容のスキル・トレーニングを同じ時. 間だけ行う。具体的には,質問スキルと説明スキルを1時間ずつ行うこ とによって,それぞれのスキル・トレーニングが条件間で一定になるよ うに統制する。また,元々のスキルが一定であるとは限らないので,界 キル・トレーニング後に各児童のスキルをチェックして,不十分なら追 一ユ4一.
(19) 加のスキル・トレーニングを行うことにする。 ピ. 以上の考察に基づき,本研究では提案した段階的説明モデルの有効性 を一検討することを目的とする。設定された実験仮説は次の通りである。. 仮説:共同学習の場面において,段階的説明モデルに基づく話合いを行 つた児童の知識獲得の程度は説明と質問のスキルのみを訓練され た自由討論条件の児童に比べて優れているであろう。. 一ユ5一.
(20) 目 的 提案した段階的説明モデルが児童に適用可能であるか調べるこど,児 童の話合い活動における相互作用の実態を検討すること,及び試行的に 段階的説明モデルが児童の知識獲得に有効であるか調べることを目的と する。. 方 法. 1 被験者 静岡県内の公立小学校第6学年の2学級の児童計80名。A学級:・男 子18名,女子22名,B学級:男子18名,女子22名。. 2 実験計画 予備実験では,話合いの方法を要因とする1要因2水準の被験者間計 画が用いられた。話合いの方法としては,段階的説明モデルに従って話 合いを進める段階的説明条件(SE条件:sequenced explanation)とモデルには. よらず自由に話し合う自由討論条件(FD条件:free discussion)が設定され. た。各条件への被験者の割り当ては学級単位とした。. 3 学習材・資料 実験セッション前の事前準備セッション,教示セヅション,練習セッ. ションでは,被験児らが使用している6年理科の教科書から「ヒトとか んきょう(啓林館 新版理科6年下)」を学習材として使用した。この学. 一16一.
(21) 証悟は学年のまとめの内容であり新しい概念は出てこない。 事前準備セッションでは・「概念地図練習プリント」(巻末資料1−1参 照)及び概念地図の完成図の見本(巻末資料1−2参照〉を準備した。この. プリントはB4判3枚から成り,1枚目(「関係図のかき方1」)には順を. 追って概念地図がイメージできるように練習問題が3問配置されてい た。2枚目(「関係図のかき方2」)は実際に児童が概念地図を描くための 用紙であり,氏名を書く欄のみ印刷されていた。3枚目(「練習用紙」)は. 概念地図の簡単な描き方の手順が左上に印刷されていた。「概念地図練 習プリント」の1義目は関係の深い概念同士を線で結ぶ問題,2・3窪目 は関係がある概念同士を線で結びその関係を問う問題,4問目は「電流」 「太陽」「磁石」「地球」の4概念について概念地図を描くように求める問題 であった。. 事前準備セッション,教示セッション,練習セッションでは,各回ご とにB4判縦の学習プリント(理科『ヒトとかんきょう』プリント1∼5) が用意された。事前準備セッション及び教示セッションの学習プリント には,学習課題,個別学習時に自分の考えを書くスペース,必要に応じ. てグループで出た意見を書くスペース,必要に応じて自分の考えをまと めるスペースが設けられていた。練習セッションの学習プリントは,学 習課題,個別学習時に自分の考えを書くスペース,必要に応じて自分の 考えをまとめるスペース,話合いに関する自己評価項目が設けられてい. た。自己評価項目は条件ごとに異なり,FD条件では,説明の満足度, 質問の満足度,他者意見の理解,他者に対する承認の4項目であった。. 各項目とも5件法で問う設問であった。SE条件は,話合いの進度,説 明の満足度,.他者意見の理解,ヒント質問の満足度,確認質問(‘探り. 質問’)の満足度,他者に対する承認の6項目であった。話合いの進度 一17一.
(22) は段階1から段階3を選択する3件法であり,残りは5件法で回答を求 めるものであった。学習プリントと共に学習課題提示に必要な写真を拡 大し一た掲示物(例:月面の写真,宇宙から見た地球の写真,汚れた河川 の写真)を準備した。. また,教示セッション,練習セッションでは,話合いの仕方に関する. 掲示物が準備された。この掲示物は2切画用紙の大きさで内容は条件に よって異なっていた(Figure 4>。. 説明の仕方 約束 説明す・る人…理由をつけてくわしく 聞く人・・・… なるべく質問で意見を. グループでの 話し合いの仕方 ●説明する人. ○理由を入れてくわしく言おう. 言おう (ヒント質問・確認の質問) 答えを言わない・励まし・感想・よさ. うなずき・あいりち・視線. 順序 1.自分の意見を説明する. ↓ 分からないところは質問する. ○友達の意見のよさを認めて意 見を言おう き. ●聴く人 (うなずき・あいつち・視線). ↓ 2.友達の意見を説明する 、レ 確認の質問やヒントの質問をする. ↓ 3.自分の意見をまとめて説明する (友達の意見のよさを認めて). ○質問をたくさんしてあげよう ○答えを言わないようにしよう ○励ましや友達の意見のよさを 認めた言葉をかけてあげよう. Figure 4.段階的説明(左)及び自由討論(右)の教示に用いられた掲示物. 実験セッションでは,教示セヅション及び練習セッションでの知識が 影響しないように「ヒトとかんきょう」と直接関係がない「氷のでき方」を 一18一.
(23) 用いた。この学習材も日常生活や既有知識から推測可能であり,新たな 概念は含まれていなかった。実験セッションの学習課題は,「金属の入 れ物に入れた水は,どのようにこおっていくのだろうか」であった。こ. のセッションではB5判横型の個別学習用プリント(学習課題と自分の 考えを書くスペース)が使われた。. 4 測度 ①知識テスト:知識の幅を痴来することを目的とした多肢選択問題と. 知識の深さを測定することを目的とした自由記述問題が配置されてい た。話合いの効果をみるために事前テスト(巻末資料1−3参照)と事後テ スト(巻末資料1−4参照)で一部同じ問題を含めて構成した。多肢選択問. 題は,熱の伝導や融点,三態に関する問題で,選択肢は正答が1つ,誤. 答が3つ含まれていた。例えば,「だんだん温度が低くなった水が0℃ になったとぎ,(1)水のままである,(2)水と氷が混ざっている,(3)ほ. とんど氷である,(4)完全に氷である」などであった。多肢選択問題は,. 事前テスト9問,事後テスト5問で,事後テストの5問中2問は事前テ ストと同問題であった。自由記述問題は,実験セッションの学習課題に 類似した問題を入れて,「池に氷が張るときには,どこからこおり始め て池の全面に広がっていくでしょうか。理由もつけて説明しましよう」 などを使用した。自由記述問題は,事前テスト2問,事後テスト3問で,. 事後テストの3間中2問は事前テストと同問題であった。配点は多肢選 択問題が各1点(正答が1点,他は0点),自由記述問題が各5点(内容. によって0点∼5点〉で,事前テストが多肢選択問題9問及び自由記述. 問題2問の19点満点,事後テストが多彩選択問題5問及び自由記述問 題3問の20点満点であった。 一19一.
(24) ②概念地図テスト:B4判横型の用紙の上に問題及び氏名記入欄が設け られ,残りは概念地図を描くスペースであった。「水」「氷」「氷点下」「温 度」「空気」「金属」「固体」「液体」「気体」の9つの概念に対して,関係ある. ものを線で結びその関係を詳細に書くことを求める問題であった。概念 地図の手順を示した補助用紙(巻末資料1−5参照)も準備した。. ③話合いに関する質問紙:「グループ学習に関する質問紙」の上半分に 設けられていて,話合いについての満足度を評定させるものであった。. 内容は練習セッションで用いた学習プリントの自己評価項目と同じであ り,条件によって異なった。(巻末資料1−6・巻末資料1−7参照). ④共同学習に関する感想質問紙:B5判縦型の「グループ学習に関する 質問紙」の下半分に,話合いについての感想を自由に記述させるもので あった。条件によって話合いの進め方が異なるので,条件別に異なる問. 題文を用意した。FD条件には,グループでの話合いの感想についての 記述を求め(巻末資料1−6参照),SE条件には事前準備セヅションでの自. 由な話合いとそれ以降の段階的説明モデルを用いた話合いを比較した感 想の記述を求めるものであった(巻末資料1−7参照)。補充セッション後. には,自由討論と段階的説明の両方を経験したFD条件の児童用に,両 者を比較した感想を求める補充セッション感想質問紙を用意した。. 5 手続き 流れを示したものがFigure 5である。大きく分けて,’事前準備セッシ ョン,教示セッション,練習セッション,実験セッション,補充セッション. の5つから成っていた。事前準備セッション,教示セッション,練習セ ッションの3セッションは,実験セッションのための準備段階であった。. 一20一.
(25) 自由討論条件 (FD条イ牛). 段階的説明条件 (SE条件). 事前準備セッション. ○知識テスト. → 等質性検討・グループ編成. ○概念地図の描き方(1回) ○概念地図テスト ○相互作用録音・録画(6年理科『ヒトとかんきょう』). 教示セッション(1回)・練習セッシ1ヨン(3回)(理科『ヒトとかんきよう』). 課題提示. 課題提示. ↓ 個別学習(5分間) ↓. 、レ. 個別学習(5分間) 、レ. 説明・質問及び段階的説明教示. 説明・質問等の重要性の教示. (練習では前回のフィードバックγ. (練習では前回のフィードバヅク) ↓ 自由討論による グル「プでの話合い(15分間) ↓. 、レ. 段階的説明モデルによる グループでの話合い(15分間) ↓ 話合いの結果発表. 話合いの結果発表. 号 実験セッション(理科『氷のでき方』). 課題提示. 課題提示 ↓ 個別学習(5分間) ↓,. 段階的説明モデルによる グループでの話合い(15分間) ↓ (録音・録画). ・知識テスト・概念地図テスト ・話合いに関する質問紙 ・共同学習に関する感想質問紙. ↓ 個別学習(5分間) ↓ 自由討論による グループでの話合い(15分間) ↓ (録音ξ録画) ・知識テスト・概念地図テスト ・話合いに関する質問紙 ・共同学習に関する感想質問紙. 補充セッション(2回). 6年算数『6雛のまとめ』 感想質問紙 Figure 5.予備実験の流れ. 一21一.
(26) (1)事前準備セッション. 事前準備セッションでは,最初に知識テストを実施した。知識テスト の結果,学級間の等質性が確認ざれたので(Table 2参照), A学級をSE. 条件に,B学級をFD条件にそれぞれ割り当てた。また,その結果に基 づいてグループ編成を行った。グループ編成は,得点により各条件ごと に低群(25%),中華(50%),高群(25%)に分け,各グループに低群1人,. 中群2人,高群1人の4人が入るように,また男女比が同じに・なるよう に割り振った(各条件10グループ)。このグループは実験の期間中固定 した。. 次に,実験者が被験者に概念地図を描くトレーニングを行った。この トレーニングでは,初めに実験者が作成した概念地図の完成図を提示し, 概念地図(児童には「関係図」と教示した)のイメージをつかませた。そし. て,「概念地図練習プリント」を児童に配布し,プリントに沿って1問ず. つ全児童の進行状況をみながら時間をかけて進めていった。プリントは 理科に関する問題を用いて段階的に概念地図に近づくように配列されて いたので,問題ごとに最初に児童が取り組み,全員が描けたところで実 験者が解答例を示し解説していく手続きを取ったげ教示の際に児童に強 調したことは,提示した解答例はあくまでも実験者の考えであり,児童. それぞれが異なる解答になるということであった。最後の4問目の問題 は,実際に児童自身が「電流」「太陽」「磁石」「地球」の4槻念についての概. 念地図を描く問題であった。描く前に実験者が概念地図を描く手順を教 示した。具体的な手順は次の通りであった。. 1.プリントに印刷されている4概念のカードを破線に沿って切り取る。 2.4枚のカードを「練習用紙」の上に適当に並べる。. 3.4つの概念の関係を考える。 一22一.
(27) 4.最初に置いた位置より関係を考えやすい位置がみつかった場合は, カードを動かす。. 5.適切な位置が決まったら,関係があるところは線を結び,どんな関 係があるか詳しく書く。. (カードが動いてしまいそうなときには,糊付けしてもよい) 6.「練習用紙」に書いたことを「関係図のかき方2」に書き写す。 7.「関係図のかき方2」を提出する。. 実験者が声に出しながら1∼4まで老やってみせた後,児童に独力で 解答させた。その後,児童が描いた「関係図のかき方2」を回収した。回. 収したプリントは実験者が点検して,児童に返却した。トレーニングの 翌日,両条件共に概念地図テストを実施した。. 最後に,知識テストによって編成されたグループで実際に話合いをさ せた。話合いに至るまでの手続きは,実験者による学習課題の提示(「月. には生き物が住めないのに,地球には生き物が生き続けられる。どうし てだろうか?」),学習課題を基にした5分間の個別学習の順であった。 個別学習時に実験:者と教師は一切児童の質問に答えなかった。児童は個. 別学習で書いた自分の考えを基に両条件とも自由に15分間話し合った。. 話合いの間,実験者及び教師は児童の話合いの様子を観察したが,児童 とのやり取りばしなかった。話合いの様子は各グループ1台の小型テー プレコーダー及び各グループ1台のビデオカメラで記録された。 (2)教示セッション. 教示セッションでは,まず,実験者による学習課題の提示(「空気がな. かったら,どんなことが起こるのだろうか?」)に続いて,5分間,学習 プリントに自分の考えを書き込む個別学習を行った。個別学習の際に,. 実験者及び教師は児童から質問があれば答えたが,積極的に関わること 一23一.
(28) はしなかった。グループでの話合いに入る前に,SE条件では,説明や. 質問の重要性及び段階的説明の意義や方法について書かれた掲示物 (F{9亡b4参照), FD条件では,説明や質問の重要性について書かれた掲. 示物(Figure 4参照)を提示して実験者が教示した。両条件とも教示は15 分間とした。. 教示を与えた後,児童たちは実験グループに分かれ15分間の話合い をした。児童が話合いをしている間,実験者及び教師は各グループをま わり,発話内容を把握したり児童の求めに応じてアドバイスを与えたり した。話合い後は,各グループの代表者が話し合った内容について発表 した。SE条件では,代表者が毎回異なるように順番を決めておいた5)。FD. 条件は毎回発表者をグループで自由に決めた。 (3)練習セッション. 練習セッションは3回行われた。3回の練習とも同様の手続きで進め られた。まず,教示セヅションと同様に,実験者による課題提示及び個. 別学習を行った。個別学習は5分間であった。学習課題は,1回目が「水 がなくなったら,どんなことが起こるのだろうか?」,2回目が「わたし. たちが食べているものは,何から作られているのだろうか?」,3回目 が「水や空気やみどりを守るために,わたしたちができることは,どん なことなのだろうか?」であった。その後,実験者が話合いの仕方に関 サる掲示物(Figure 4)を黒板に掲示した。毎回の実験者と教師の話合い. の観察を基に,実験者が前回の話合いの良かった点や今後改善すべき点. について両条件とも学級一斉に10分間教示した。教示の際には話合い. 5) 予めグループごとに4人の児童を1∼4番まで決めてお.いた。説明の順番及び発 表はその順番に基づいて授業者(実験者)が決めた。実験を通して毎回同じ順番ではな く,授業ごと(練習ごと)に1番ずつずらしていった。. 一24一.
(29) の仕方に関する掲示物を参照させながら指導した。SE条件では特に段 階的説明の進め方について,FD条件では特に質問や説明の仕方につい てラィードバックした。そして,グループごとの15分間の話合いに入 った。練習セッションでは,話合い中でも児童の求めに応じて実験者と 教師がアドバイスを与えた。実験者及び教師は毎回グループを半分ずつ 担当し,話合いの様子を観察した。最後に,各グループ代表者が話合い の内容を発表した6)。. (4)実験セッション. 教示・練習セッションと同様に実験者による課題提示及び5分間の個 別学習を最初に行った。直後に15分間の話合いに入った。話合いの間 は,実験者及び教師は一切児童とやり取りをしなかった。相互作用は,. 各グループ1台のテープレコーダー及びビデオカメラで記録された。実 験セヅションでは,共同学習後に各グループの発表はさせず,すぐに,. 知識テスト,概念地図テスト,及び共同学習に関する感想質問紙を実施 した。. (5)補充セッション. FD条件には補充セッションとして段階的説明モデルを教示し,練習 するプログラムが組まれた。算数の「6年生のまとめ(学校図書 みんな と学ぶ 小学校算数6年下)」の教科書の中から異なる種類の文章題を2 問選んで2回(45分×2)行った。手続きは,段階的説明条件の教示セッ ショジ及び練習セヅションの1回目と同様であった。. 6)各グループでまとまった意見を出させるのではなく,どんな意見が出てきたのか を発表させた。. 一25一.
(30) 6 時. 期. 2001年2月∼3月(3週間). 結 果. SE条件の児童1名が実験セッションの話合い後に早退したため,話 合いの流れ以外の分析では,その児童が所属するSE条件の1グループ を分析対象から除外した。したがって,SE条件36名(9グループ), FD 条件40名(10グループ)を分析の対象とした。. 1 段階的説明条件における児童の話合いの実態 各グループの主な話合いの流れと話合いを始めてから学習課題につい ての話合いを終えるまでの時間を示したものがTable 1である。Table 1. のSE条件の話合いの流れを見ると,段階的説明モデルに沿った話合い. をしていたグループはB・F・G・H・Jグループであり,全体の半数 であった。Fグループは,モデル通りに話合いを進めた後に,途切れる ことなく自然な形でグループとしての意見をまとめていった。しかし,. A・D・Eグループの3グループは,段階2まではモデル通りであるが, 段階3で各成員が自分のまとめを説明するのではなく,1人がグループ で出された意見を要約し,他の数人がその発言に付け足ししていた。C グループは,段階2でスムーズに説明できなかった児童がいたので,段. 階2をほぼ終えた時点でユ5分になってしまった。1グループは,段晧1 を終えた時点で2つの予想に分かれ,どちらが正しいのかに関心が集ま. 一26一.
(31) り,グループとしての結論を出そうとする話合いに進んでいった。時間. 的にみると,Cグループ以外は15分間でほぼ話合いが終わり,極端に 短いグループはなかった。. 話合いに関する質問紙の結果では,話合いの進度についてCグルー プの4人及びAグループの1人が段階2で終わったと評価した以外は, 段階3まで終わったと認識していた。他の項目では5点満点で,説明の 満足度がM=3.86(SD=0.93),他者意見の理解がM=3.94(SD=0.83),ヒント. 質問の満足度がM=3.11(SD=1.37),確認質問(‘探り質問’)の満足度が M=3.ユ9(SD=1.24),他者に対する承認がM=325(SD=1.00>であった(各項目 n=36)。. Table 1 各グループの話合いの流れと学習課題の話合いに要した時間 段階的説明条件(SE条件). 自由討論条件(FD条件). グルーフ。 話合いの流れ 話合いの糊 グルーフ。 話合いの流れ 飴いの1寺問. A. 1一>2→・3雪. C. 1一>2一>3 1一>2. 14,29曾,. 1一>2→・3’. 15畢. 1一>2今3’. 12107”. 1≒>2一>3一>3,. 15曾. B. D. E F. G H I. J. 1→2→・3 1→2一>3 1→3’ 1一>2一>3. K. 8「37”. L. M. 1. 15,. 1→3’. 15,. 1. 15,. 1一>3’. O P Q. 14955”. 1→3’ 1→3’. 5122”. 1一>3’. 15曾 15曾. 15曾. S. 10134,1. T. 1一>3→3’ 1→3’ 1一>3’. 13,15”. 151. N. 7曾06”. R. 15曾. 注)1・・… 段階1(自分の意見の説明の段階). 2・…・段階2(友達の意見の説明の段階) 3・・…段階3(自分のまとめを説明する段階) 3曹r・…段階3発展型(グループのまとめをする段階). 一27一. 2璽08”. 151.
(32) 2 自由討論条件における児童の話合いの実態. 段階的説明モデルに当てはめると10グループ中8グループが1今3’. の流,れになっていた。残りの2グループは段階1で終わっていた (Table 1)o. 学習課題に関する話合いに要した時間の面からみると,グループによ. って大きく差があった。15分間では全員が自分の考えを十分に説明で きなかったグループ(K・Mグループ)がある二方で,2分ほどで学習課 題に関する話合いが終わってしまうグループもあった(Pグループ)。. 話合いに関する質問紙では,5件法で満足度が最も高いもの(「ひじょ うに」)を5点,最も低いもの(「全然」)を1点とする5点満点で得点化す. ると,説明の満足度がM=4.03(SD=0.86),質問の満足度がM=3.40 (SD=1.24)・,他者意見の理解がM=423(SD=0.73),他者に対する承認が M=3.48(SD=1.13)であった(各項目n=40)。なお, SE条件と同じ質問項目. の説明の満足度,他者意見の理解,他者に対する承認の3項目について 条件間でt検定を行ったが,有意な差を示した項目はなかった。. 3 段階的説明モデルの有効性 知識テスト及び概念地図テストの採点は予め作成した採点基準に沿っ. て実験者が行った。知識テストの多肢選択問題では正答1点,それ以外 は0点とした(事前テスト:満点9点,事後テスト:満点5点)。知識テ ストの自由記述問題は基本的に,正答,正答に近いもの,誤答で段階的 に差をつけ,さらにその中で,根拠が正しいもの,根拠が客観的なもの,. 根拠が誤っているものあるいは根拠がないもので差をつけた(事前テス ト:5点満点×2問,事後テスト:5点満点×3問;巻末資料1−8参照)。. 概念地図テストについては,9概念36組の中から実験での学習内容と 一28一.
(33) あまり関係ないものは採点基準から外し,関係がある1巨組の中で0∼2 点の段階をつけた。満点は32点であった。(巻末資料1−9参照). まず,事前の知識テスト及び概念地図テストによって等質性を検討し た(Table 2)。知識テストの多肢選択問題の得点,自由記述問題の得点,. 合計点,及び概念地図テストの得点で有意な差はみられなかった。. Table 2条件別にみた予備実験の事前テストの得点平均値(M)と標準偏差(SD). 事前テスト. 段階的説明条件 自由討論条件 (SE条件) (FD条件). t値. 知識テスト. 多肢選択M(SD) 自由記述M(SD) 合 計M(SD) 概念地図テスト. M(SD). 5.08 (1.87). 5.38 (1.23). 0.79. 3.22 (242). 3.73 (2.75). 0.84. 8.31(3.58). 9.10 (3.45). 0.98. 9331牛27). 8.95 (3.83). b.41. 注)多肢選択問題の七検定はWelch lest(df=60)によった。. df唱74(多肢選択問題のみdf=60). T、bl。3条件別にみた予備実験の事後テストの毎点平均値(M)と癬偏差(SD). 事後テスト. t値. 段階的説明条件 自由討論条件 (SE条件) (FD条件). 知識テスト. 多肢選択M(SD> 自由記述M(SD) 合 計M(SD). 2.92(1.16). 2.50 (1.01). 1.68†. 7.47 (3.13). 6.48 (2.68). 1.50. 10.39 (3!73). 8.98 (3.25). 1.77†. 933 (4。38). 10.30 (3.73>. 概念地図テスト. M(SD). 1.04 df=74. 一29一. † p<0.1.
(34) 次に,事後テストについて検討した(Table 3)。知識テストの結果は,. 多肢選択問題得点と合計得点でSE条件がFD条件よりも高い傾向があ った。さらに,事前テストで両条件に有意な差はなかったが,平均得点 をみるとどの問題でもFD条件の方がやや高かったので(Table 2),事前. テストの合計得点を共変量として事後テストの合計得点について共分散. 分析7)を行った。その結果,調整後の得点の平均値はSE条件の方がFD 条件よりも有意に高い得点であることが示された(SE条件:10.62, FD 条件:8!76;F(1,73)=7.71,P<0.01)。. Table 4は知識テストにおける事前事後同問題の問題ごとの条件別事前. テスト及び事後テストの得点平均値,標準偏差,及びt値である。SE 条件では4間中3問で事前テスト得点に比べて事後テスト得点が有意に. 高く,FD条件では4間中1問で事前テスト得点に比べて事後テスト得 点が有意に高かった。. Table 4 条件別にみた知識テスト事前事後同問題の得点平均値と. 標準偏差及びt値 問 題. 段階的説明(SE)条件. 事前 多肢選択問題 凝固点の状態 冷たい空気 自由記述問題 池の氷 容器の水. 事後. 自由討論(FD)条件. 事前 事後 t値. t値. 0.11(0.32) 031(0.47). 291** 0.10(030) 0.18(038). 1.14. 0!75(0.44) 0!72(0.45). 033. 0.77. 2.08(1.84) 336(1.42). 447*** 2.18(1.68) 3.23(1.07) ・. 3.43**. 1.14(1.25) 2.14(1.55). 4.13*** 155(1.63) 1.75(150). 0.73. 注1)()内は標準偏差. 0.73(045) 0.65(048). df=35(SB), df=3g(FD) **p<0,01 ***pく0.001. 注2)「凝固点の状態」は凝固点での水の状態を問う問題,「冷たい空気」は冷たい空気の動きを問う問題,「池. の水」は池の水の凍り方を問う問題,「容器の水」は缶の中の水の凍り方を問う問題であった。. 7) 共分散分析を行うに当たっては,事前テスト合計得点と事後テスト合計得点との 相関,回帰直線の原点通過の有無,回帰直線の傾きの等質性など前提条件の検討を行 った。これらの前提条件はすべて満たされていた。. 一30一.
(35) 概念地図テストは事前事後同問題であったが,結果は事前事後共に有 意な差はみられなかった。しかし,平均点を相対的に比較すると,事前 テ:ズー. gはSE条件の方が高かったのに対し,事後テストではFD条件の. 方が高くなり,事前テストと事後テストで逆転していた。条件別に事前. テストの得点平均値と事後テストの得点平均値をt検定すると,FD条 件では事前テスト得点よりも事後テスト得点の方が有意に高かったが (t(39)=2.61,p<oの5), sE条件では事前一事後間に有意な差はみられな かった(t(35)=0.00,n.s.)(Table 2, Table 3参照)。. 概念地図テストの事前テスト得点と事後テスト得点の差の分布を表し たものがTable 5である。条件間の分布に大きな違いがみられた。概括 的には,SE条件は0点(事前テスト事後テスト同得点)前後に多く分布. し,FD条件は0点以上の各階級に同じくらいの度数が分布していた。. Table 5 条件別にみた概念地図テストの事前事後得点差の度数分布. 事後得点一事前得点. +5点以上 +4点 +3点 +2点 +1点 0点 一1点 一2点 一3点 一4点 一5点以下. 段階的説明条件 自由討論条件 (SE条件) 1 3 4 1 4. 10 5 7 1 1 2. 一31一. (FD条件〉 6 2’. 4 6 5 5 5. 4 2 1. 0.
(36) 最後に,段階的説明条件と自由討論条件を比較した児童側の認知につ. いて,記述されたSE条件の共同学習に関する感想質問紙及びFD条件 の補充セッション後の感想質問紙の結果を分析した。SE条件では,段 階的説明に肯定的な意見が83%であった。その理由として,他者の意見 がよく分かった(肯定理由の35%),話合いが続いた(同25%),他者の意 見を真剣に聞けた(同15%),自分の意見を言えた(同10%)などを挙げて. いた。否定的な意見の主な理由は,自由に話したい(否定理由の38%), 先に意見を言われた(同25%),むずかしい(同13%),時間がかかる(同. 13%)などであった。FD条件では,段階的説明に対する肯定的な意見が 68%であった。肯定理由の主なものは,話合いが混乱しない(肯定理由 の24%),他者の意見がよく分かった(同18%),話しやすい(同ユ2%), 質問しやすい(同12%)であった。.否定理由は,自由の方が話しやすい(否 定理由の63%),質問しにくい(同37%)であった。. 考 察. 1 段階的説明条件における児童の話合いの実態. 第1の目的である提案した段階的説明モデルの児童への適用可能性に ついて検討する。. 実験セヅションでは,SE条件の10グループのうち半数のグループが 段階的説明モデルに従った話合いをすることができた。残りの5グルー. プのうち3グループは段階3のみ手続きを誤り,1つのグループは時間 が足りなかったため段階2で終わり,もう1グループは段階2を経ずに. 一32一.
(37) 段階3に移っていた。この5グループのうち段階2で終わってしまった1 グループ4人全員と段階3の手続きを誤ったグループの1人以外は,話 合いに関する質問紙において段階3まで終わった(「まとめが終わった」). と回答していた。以上のことから,段階的説明モデルを6年生の児童に. 適用することは不可能なことではないが,段階3は児童たちにとって捉 えにくい段階であると言える。段階的説明モデルに対する児童の認知か. らみると,両条件とも7∼8割の児童が段階的説明のよさを認めていた ので,児童への教示の際に段階的説明における段階3の意義を強調して いけば,段階3が段階的説明モデル通りに行われるのではないだろうか。. 2 自由討論条件における児童の話合いの実態. 第2の目的である特別な制約のない児童の話合いにおける相互作用に ついて自由討論条件の実態を基に検討する。. 両条件の話合いの流れを比較すると,SE条件は10グループ中9グル ープが段階2(他者の意見を説明する段階)を経ているが,FD条件は段. 階2を経たグループは1グループもなかった。両条件の最大の相違点は. 他の成員の考えを説明する段階2の有無であると言えよう。FD条件に は話合いの進め方に関して一切制約を与えなかったことを考えれば,児 童の自由な話合いでは各成員が他者の意見を説明することは期待できな. い。知識テストの結果でみると,FD条件よりもSE条件の方が児童の知 識獲得に効果的だった可能性があるので,段階2は知識獲得には何らか の影響を与えていると推測できる。市川(1998)は‘認知カウンセリング’. の1つの技法である‘自己説明’の重要性を指摘し,人は自分の意識の 中で理解したつもりになっていても,実は十分に理解していないことが よくあり,言語化することによって,よく分かっていなかったことが認 一33一.
(38) 識されたり考えが整理されたりすると述べている。段階的説明モデルの. 段階2では,他者の意見を聞いただけで分かったつもりになっている児 童が,実際に他の成員の意見を音声に出して説明することによって,曖 昧な理解に終わっていたことに気づいたり考えを整理したりすることに. なる。段階2は児童の立場から自然に出てくるものではないが,知識獲 得には重要な要素となり得るので,いかに自然なつながりとして段階2 にもっていくが重要である。その方法として質問スキルや説明スキルを. 利用して児童が他者の意見を把握するスキルを高めておくことが重要で あろう。. また,SE条件でも段階3’を経るグループが10グループ中5グループ. あり,自由に話合いを進めたFD条件では10グループ中8グループが1 →3曾(1グループは1→3→3’〉の流れになっていた。話合い方法を構成 しない場合,自分の考えをもたせた上ならば,多くはこのパターンをた どると予想される。段階3量に向かう流れが児童にとって自然な流れであ るとも考えられよう。. 3 段階的説明モデルの有効性. 第3の目的である段階的説明モデルの児童の知識獲得に関わる有効性 について検討する。. 予備実験は試行段階であり,使用した学習材も知識獲得というよりも 知識の再提示が主なものであった。その事実はあるにしても,知識テス. トの結果はSE条件の方がFD条件よりも有意に得点が高く仮説を支持 するものであった。逆に,概念地図テストは有意ではないがFD条件の 児童の方がSE条件の児童よりも得点が伸び,予想に反する結果であっ た。. 一34一.
図
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