10 -(大 阪 女醫 誌 第7卷 第1∼3號 昭
和30年3月)-緑 膿 菌 の色 素 産生 に及 ぼ す 玉 葱 の有効
因 子
に つ い て(第1報)
大阪女子醫科 大學 微生物學 教室(主 任 大澤 教授) 大 澤 忍,大 星 瓊 子,井 上 惠 美 子 序 言 緑 膿 菌 の 色 素 の 産 生 條 件 に つv・て は 夙 にAoki, 8erthlein,Gessard以 來 多激 學 者1)に よつ て 究 め ら れ てV・る◎ 大 澤,井 上等2)は 先 に 野 茶 を主 材 料 と した 培 地 の 研 究 中 に慧 豆,筍,玉 葱,長 芋,田 芋 等 が 色素 の 産 生 に有 効 な 事 實 を認 め ひ 之 に 反 し て 薮 蓑 草,尾 張 大 根,宮 茂 大 根,蕪,人 参,牛 勢 を 。 蓮 根,大 豆,小 豆,黒 豆,碗 豆,両 芋,馬 鈴 薯, 及 び 甘 薯 の 諸 種(6種)等 が 無 効 で あ る こ と を知 つ た ◎ こ ㌧に は この 菌 の 色素 産 生 に汲 ぽ す 玉 葱 の 有 効 因 子 につ い て 行 つ た 研 究 の 中 間 報 曽 を違 ぺ る。 材 料,蜜 験 方法 並 び に 威綬 菌 株:供 試 菌 株 は 激 育 保 存 の 申か ら主 と し て4 株 を選 ん で用 い ヤヒ。 緑 膿 菌 の 産 生 す る 色素 は 翠 一 なPyocyaninの み に限 らす㌔ 叉 その 色素 産 生 能-(大 阪 女 醫 誌 第7卷 第1∼3號 昭和30年3月)- 11 は 屡 屠 養 條 件 に よ つ て 著 し く攣 化 し,し か も色 譲 産 生 の 條 件 が 充 分 明 らか で なV・ 牝 め に そ の 分 類 も適 當 と 思 は れ る も の が 無V、。 こ 蕊で は 一 慮 Ges8ard紛 に 從 つ て 適 宜 に 下 記 の4抹 を 求 め た ◎ No.IIOABouillonに 青 緑,螢 光 を有 し,PΦtonにi無 色 No.20PBouillonに 青,螢 光 な く, Pept◎nに 無 色 Nα31MABoulllonに 青 緑,螢 光 あ り PeptORに 赤 褐 色 No.410A(M)Bouillonに 青 緑,螢 光 あ り PeptonGlycerol-agarに 赤 褐,(Gessardの 分 類 に 入 らす) i基礎 培 地:虚 方,第1燐 酸 加 里0。29,硫 酸 マ グ ネ シ ウ ム0.019,炭 酸 ア ン モ ニ ウ ム0・lg,グ リセ リ ン2.Om1,食 盤0.59,溜 水(再 溜)100ml,pH 7。2に 補 正 す る。 これ に 必 要 物 質 を遙 宜 混 合 し 小 形 試 験 管 に 分 注 し 滅 菌 の 後 用V・る。 供 試 菌 は こ の 培 地 に 磯 育 しNoJ及 びNo・4は5日 後 僅 か に 緑 色 調 を 常 び る。 微 量 の 螢 光 色 素 の 産 生 に よ る6移 植 菌 は 寒 天 培 地 か ら基 礎 培 地 に 移 し,24時 間 後 の も の を1白 金 耳 宛 臼的 の 培 地 に 移 す ◎ 移 植 後3∼5 日 聞 観 察 す る◎Pyocyaninと 螢 光 色 素 と の 匪 別 は 後 に ゆ つ る ◎ Peptonの 種 類 に よ る 色 素 産 生 歌 況: Gessardが 分 類 の1っ の 基 礎 と し て 用v・た PeptonはPeptoncpancreatiqueの2%溶 液 で あ る4)。Peptonは 製 品 に よつ て そ の 榮 養 性 に 著 し V・差 が あ る牝 め 邦 産 の 材 料 を用 う る吾 汝 に は 上 掲 の 分 類 は 全 く便 宜 的 な もの に 過 ぎ な い 。 暑 汝 は ポ リペ プ トン を 用 い)ヒが 絢 他 の ペ プ ト ン の 性 歌 を も 参 考 と す る 必 要 上 邦 産 各 種 ペ プ ト ン にWitte, Chapoteaut等 の 製 晶 粒蜘 え て 襲 色 歌 況 を 調 べ て み た 。Pepton水 は 夫 々 軍 純 な1%溶 液,食 璽 0.5%,pH7.2で あ る(第1表 参 照),街 こ れ に 玉 葱 エ キ ス と 加 え れ ば 表 の 如 くに な る。(第1表) 郎 ち 輩 純 ペ プ 干 ン 水 で はWitteとChaρoteaut の 他 に は 襲 色 す る も の 醜 無 い こ れ に 玉 葱 屯 キ ス を 加 え れ ばWittcとChap◎teautの 他 照 内,臓 研,ポ リプ トン と マ ル カ ワ と が 獲 色 す る ◎ 邸 ち 獲 色 因 子 は 縛 プ 幣ン 水 中 に 既 に 存 在 す る も 第1表 の と存在 し ない もの とが あ る。 ま た,玉 葱 エ キ ス の 添 加 に よつ て 蛮 色 す る もの と,し なv・もの との あ る黙 か ら見 て,獲 色 因子 は 必 し も輩一 の もの で は な くて,ペ プ トン中 の 因子 との 共 同作 用 に よ る と考 え られ る。 基礎 培 地 に玉 葱 エキ ス を加 えた 場 合: 基 礎 培 地 に 緑膿 菌 を移 植 した 場 合 には 殆 ど色素 の 形 成 を見 なv・。 これ に10%の 割合 に玉 葱 エ キ ス を加 えれ ば菌株 に よ つ て 稜 色す る(第2表)。 Carra耳)はUschinskyの 培 地 にalaninを 加 え て 獲 色 の 良 好 な の を見,tyrosin及 びglycocoll が こ れ に つ ぐ とv・ う。 暑 汝 の 基 礎 培 地 に 於 け る α一及 び β一alanin,tyrosin,glycocoU等 を 加 え た 場 合 の 成 績 も略 同様 で あ つ た 。 か&る 成 績 か ら み る と 前 項 の ペ プ トン水 に よ る 有 効 因 子 は 諸 因 子 の 複 合 と考 え る 他 に こ れ ら の 關 係 因 子 の 何 れ か が 玉 葱 エ キ ス の 添 加 に よ つ て 壌 量 さ れ る 結 果 で あ る と も 考 え ら れ る ◎ 肉 エ キ ス に よ る 差 異: 照 内 又 は ポ リペ プ ト ン に よ る 輩 純 ペ プ トン 水 に 第2表 軽 些+↓ の記號 は獲 色 の程 度 の順 位 を示 す, 一は 陰性 於 て 色 素 産 生 の 認 め られ なV・こ と は 先 に 述 べ た 。 これ に 開 エ キ ス を却 えて(1%)ブ イ ヨン と し寒 場
12 -(大 阪 女 醫 誌 第7卷 第1∼3號 昭 和30年3月)-合 に は 市販 の 所 謂 牛 肉 エ キ ス に よ る 亀の は 充 分 獲 色 あ るが蝋 エ キ ス叉 は 鰹 エ キ ス等 の 場 合 には 焚 色 を見 なv・◎ 玉 葱 申 の有 効 物 質: 玉 葱 を細 切 し同 量 の 蒸 鱈 水 を加 えて100℃1時 間 煮沸 し濾 絞 して 得 た 液 を 更 に濾 紙 を通 し原 液 と す る。 これ に種 汝の分 離 操 作 を施 して 分 離 分 屑 を 夫 汝ペ プ トン水(ポ リベ プ トン1%溶 液)に 加 え (pH7・2)IV,V株 を植 えて3∼5白 闇 獲 色 の妖 態 を検 す る。 1.原 液 を稀 範躍酸 を以てpH5.5と し て 絶 量 の 活 性 炭 を加 え て吸 着 を計 り翌 『遠 心 沈 澱 して 上 清 を培 地 に 加 え る。 こ の上 清 は よ く稜 色す る。 (皿 株+,IV株 珊)◎ 之 分 離 し た炭 末 をpH5.5ゐ 水 で洗v・pH8.5の 燐酸 後 衝 液 で 振 蛋 分 離 す る◎ 分 離 液 は輕 く襲 色 し (第1日 皿 株 ⊥,IV株 廿)日 時 の経 過 に從 つ て 次 第 に 色 調 が 強 くな る。 ミ エ キ ス をpH8・5と し これ に加 え て 吸 着 せ し め た 炭 末 を盆 日遠 心 し て 上 清 と分 け れ ば上 清 は 護 色 す る。 炭 末 をpH8.5の 水 で 洗v・盤 酸 の 稀 薄 溶 液 (約pH5.5)で 抽 出 す れ ば抽 出液 は僅 か に獲 色 し時 闇 の 経過 に 從 つ て翌 日か ら槌 色 す る◎ 曳 玉 葱 エ キ ス を100℃ でi蒸鱈 して も蒸 餌 分 中 に は 有 効 因 子 は 移 行 し なV・◎ 酸 性 及 び アル カ リ性 に し て蒸 鱈 した 場 合 に生 す る沈 澱物 申 に 含 有 され す 。 濃 縮 され た 上 清 中 に残 存 す る 有 効 因 子 は 加 温 を綴 績 す る に 從 つ て 次 第 に減 弱す る。 乾 濃縮 し た 稠 厚 物 申か らア セ トンに は 因 子 は pHが 高 くて も低 くて も抽 出 さ れ なV・◎ エ ト テル 分 屑 中 には 僅 か に 移 行 す るか 大 部 分 は箆 る。 荷 か 玉る操 作 後 の 因 子 に よ る護 色は 速 か に浩 裡 す る轟 ア ル コ ール に よつ て 抽 出 し難 い◎ 6.通 氣 しつ&濃 縮 す れ ば 速 か に破 壌 す る。 結 論 緑 膿 菌 の 色素 産 生 に 及 ぼ す 玉 葱 中 の 有効 因 子 に 關 す る一蓮 の 實 験 の結 果 か ら次 の 如 く結 論 す る? 色素 中PyocyaninとFluorescin等 と の關 係 に つV・て は 後 に逮 べ る◎ 1.Witte及 びChapoteautpeptoneは 軍 猫 で緑 膿 菌 に封 す る色 素 産 生 因子 を含 ん で い る。 然 し 國産 の ペ プ トンは 凡 て(7種)軍 猫 では 色素 を産 生 せ し め得 なか つ ナこ6 之 ポ リベ プ トン,照 内,マ ル カ ワ 及 び臓 器 研 究 所 製 品 は 玉葱 エ キ ス を加 えれ ば夫 汝 色素 を産 生 す る。 從 つ て嚢 色 因 子は ペ プ トン と 玉葱 との 双 方 に 存 す ると 考 え られ る。 ミ グ リセ リン を含 む 基 礎 墜 類培 地 で は 嚢 色 し な いが これ に 玉葱 エ ヤス を加 え れ ば獲 色 す る。 概 基礎 培 地 にalanin(α 及 び β)91ycocoll, Tyrosin等 を加 えれ ば獲 色す る◎ 銑 牛 肉 エ キ スは 護 色に 有 効 で あ るが 蝋,鰹 等 の エ キ スは 無 効 で あ る。 6.玉 葱 中 の 有 効 物 質 は 吸 着 し難 く,エ ーテ ル ア ル コール,ア セ トンに溶 解 せ す100℃ で蒸 瑠 さ れ す,長 時 聞 又 は 通 氣 加 熱 に よつ て破 壌 す る。 主 要 文 献
1) Aokl, K. Zentralb. f. Bakt. 1. Orig., 1926. Bd. 98. S. 186.
Etterthieln: Zentralb. f. Bakt. 1. Orig., 1918, Bd. 81. S. 369. zit. n. Handb, d. Path. Mikr. Bd. VI. S. 155.
Gessard, C.: Ann. past. 1901. Ann. past. 191 9. T. 33 p. 241. C. R. Ac. Sci. 1922. Bd. 114: No. 20 p. 1301-1303., 1924. Bd. 178? No. 22. p. 1857-4859, 1925. Bd. 180.p. 972.
2)大 澤,井 上:大 阪 女 子 醫 大 誌,Bd,3,No.2,to 7∼9(昭 和25,11).
3) Gessard, C., Kolle, Kraus Uhlenhuth: Handb
d. Path. Mikr, III Aufi. Bd. VI. S. 156. C.R. Soc. Biol. 1919. T. 82. p. 795.
4) Gessard, C.,: Ann. l'inst. past. T.34. 1920 p. 88.
5) Carra. J.,: Zs. f. Bakt., 1. Orig., 1924. Bd. 91. S. 154.