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看護系大学卒業生が卒業後6か月時点で認識する看護技術到達度と困難度 : 卒業時との比較を通して

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Ⅰ.はじめに  近年、高度医療の推進や医療技術の高度化などに より臨床では安全かつ高度な実践能力が求められて いる。そのような中、看護の専門課程を卒業した直 後の新卒看護師の看護実践能力の低下は、患者に質 の高い医療サービスを提供することを阻害するばか りでなく、新卒看護師自身にも多大なストレスを生 み出し、新人看護師個人のネガティブなストレス 反応は離職願望と関連があることが報告されてい る1)。また、自分の看護技術の未熟さや医療の複雑 さから医療事故を起こすことに不安を感じている新 卒看護師は多い。このような状況により、看護教育 機関と医療機関の双方で、看護の専門課程の学生お 〈原著論文〉

看護系大学卒業生が卒業後6か月時点で認識する

看護技術到達度と困難度

-卒業時との比較を通して-

The level of achievement of Nursing skills and sense of difficulties among the graduates six months after the graduation.

菅野 由美子

,新井 祐恵

,伊藤 朗子

,野原 留美

,九津見 雅美

,佐藤 文子

仲下 祐美子

,溝口 幸枝

,森本 安紀

,山中 純瑚

10 要 旨  本研究の目的は、A大学卒業生の卒業時と卒業後6か月の時点における看護技術到達度と、卒業生が看護技術習得に関 して直面した課題や困難を明らかにし、A大学における今後の看護技術教育の課題と方向性を明らかにすることである。 卒業生86名(卒業後6か月)に質問紙にて調査を行い、32名の回答を得た。その結果、実習では実践することが難しく、 卒業時に技術ができるとした学生が50%未満である診療補助技術が、早期より臨床現場において必要とされる技術である ことが分かった。また、直面する困難としては、「未学習の看護技術が未熟」に困難であると回答した割合が最も高く、未 経験技術への困難が高いことが明らかとなった。その一方で、方法や物品などが異なる事での不安も述べられており、看 護技術の根拠を理解させる教育の必要性が再認識された。 キーワード:看護技術教育,困難度,新人看護師,看護技術到達度

Education of Nursing skills, difficulty degree, Novice Nurse, Attainment of Nursing skills

1 Yumiko KANNO 千里金蘭大学 看護学部 受理日:2014年10月15日 2 Sachie ARAI 千里金蘭大学 看護学部 査読付 3 Akiko ITOH 千里金蘭大学 看護学部 4 Rumi NOHARA 千里金蘭大学 看護学部 5 Masami KUTSUMI 兵庫県立大学 看護学部 6 Fumiko SATOH 千里金蘭大学 看護学部 7 Yumiko NAKASHITA 千里金蘭大学 看護学部 8 Yukie MIZOGUCHI 千里金蘭大学 看護学部 9 Aki MORIMOTO 千里金蘭大学 看護学部 10 Junko YAMANAKA 千里金蘭大学 看護学部

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よび新卒看護師における看護実践能力の育成が大き な問題となっている。  2002年の看護学教育のあり方に関する検討会の報 告「大学教育における看護実践能力の育成の充実に 向けて」 2)において、看護実践のための技術学習の 項が設けられた。その中で、卒業時の看護技術の到 達度について、「知る」、「わかる」項目だけではな く、一部は「使う」、「実践できる」ことが必要とさ れる項目もある。つまり、看護基礎教育の段階で、 基本的な技術習得が要求されている。その反面で、 現在のカリキュラムでは、看護技術習得のための時 間が不足しているという指摘があり、臨床で必要と されるすべての看護技術の習得が困難とされてい る。  A大学看護学部では、厚生労働省が平成19年に出 した「看護師教育における看護技術チェックリス ト」 3)に沿って、学内演習および臨地実習における 看護技術の教育に取り組んでいる。また、技術実施 状況の把握として、臨地実習終了後の卒業前の学生 に、実施状況に関する調査を行ってきた。しかし、 A大学を卒業した学生が就職し、臨床現場に出た後 に看護技術の習得に向けてどのような経過を辿るの かは明らかになっていない。卒業生が看護技術をめ ぐって実際に直面した困難や、看護技術習得の程 度、看護技術習得に関連する要因を明らかにするこ とで、看護基礎教育のさらなる充実にも役立つと思 われる。 Ⅱ.研究目的 1)A大学卒業生の卒業時と卒業後6か月時点にお ける看護技術到達度を明らかにする。 2)A大学卒業生が看護技術習得に関して実際に直 面した課題や困難を明らかにする。 3)1)2)より看護技術教育の課題と今後の方向 性を明らかにする。 Ⅲ.研究の意義  これらのことを明らかにすることで、A大学にお ける看護技術教育のよりよいあり方を探索するとと もに、卒業後も追跡することによって、看護技術教 育内容について示唆が得られると考えられる。 Ⅳ.研究方法 1.研究対象者  A大学看護学部卒業生86名(卒業後6か月) 2.データ収集方法  自記式質問紙を作成し、2013年11月に郵送法にて 配布・回収した。 3.質問紙調査内容  質問紙では看護技術到達度、卒業後の困難度、大 学教育に関する意見について尋ね、加えて、対象者 の属性、職場環境についても質問を行った。  看護技術到達度は、『看護師の基礎教育のあり方 検討会』(厚生労働省 平成19年)の「看護師教育に おける看護技術チェックリスト」 3)において提示さ れている看護技術13技術142項目に関する卒業後6 か月時点の到達度について「現時点でのあなたの看 護技術の各項目の実施状況について当てはまるもの に一つ○をつけてください」と質問し、回答形式は 「3:単独で実施できる」「2:指導者のもと実施で きる」「1:ベッドサイドで見学した」「0:知識と してわかる」の4段階リッカートスケールとした。  卒業後の困難度については、小池らの先行研究4) を参考に、研究者により25項目の質問を作成し、 「卒業後あなたが直面した困難について伺います。 それぞれ、1~4のうちあてはまる内容に○をつけ てください」と尋ね、回答形式は「4:非常にあて はまる」「3:ややあてはまる」「2:あまりあては まらない」「1:まったくあてはまらない」の4段 階とした。また、実際に直面した困難については、 「上記(質問項目)以外で直面した困難があれば記 載して下さい」と質問し、自由記載にて調査を行っ た。  また、大学の教育に関する意見については、「看 護技術習得について、大学での教育(講義、演習、 実習)について意見を書いてください」と質問し、 自由記載にて調査を行った。 4.分析方法  看護技術到達度については、卒業時に求められる 到達度「Ⅰ.単独で実施できる」「Ⅱ.見守りのも と実施できる」群(以下Ⅰ・Ⅱ群)、学内演習で経験 する「Ⅲ.見学」「Ⅳ.知識としてわかる」群(以下 Ⅲ・Ⅳ群)に分け、行動レベルの技術「到達度Ⅰ・

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Ⅱ群」12技術58項目、「到達度Ⅲ・Ⅳ群」8技術21項 目について記述統計にて分析を行った。  卒業後の困難度については、25項目の内容につい て全体に対する割合を集計し記述統計にて分析を 行った。実際に直面した困難、および大学教育への 意見に関する自由記載については、意味内容の類似 性に着目しながら分類し、整理した。 5.倫理的配慮  A大学疫学研究倫理審査の承認を得て調査を実施 した。研究の目的、方法・個人情報保護、回答した くない項目は回答しなくてよいという回答の自由に 関して書面にて説明し、質問紙の返送をもって研究 参加への同意を得たものとした。  データは個人が特定されないよう無記名、通し番 号で管理した。また、卒業時の看護技術チェックリ ストの到達状況に関するデータの使用については、 意思表示を示す欄を設け、同意を得た者のみを対象 とした。 Ⅴ.結果  回収32名(回収率37%)、有効回答31名(有効回答 率97%)であった。無効回答となった1名は、保健 師として勤務しており、看護技術の到達度を比較検 討できなかったため、今回は分析から除いた。  また、有効回答31名のうち、卒業時のデータの使 用に同意を得たのは31名であった。 1.調査対象者の属性(表-1)  有効回答者31名は、全員が病院の常勤看護師であ り、500床 以 上10名(32 %)、200~500床 未 満21名 (68%)、病棟は一般診療科23名(74%)であり、そ の他は精神科、手術室、ICU、小児科、産婦人科、 緩和ケア病棟などがあった。  看護技術のサポートについては、回答者全てに1 名以上の指導者がおり、うちプリセプターは23名 (74%)であった。 2.卒業後6か月時点での看護技術到達度について  看護技術到達度については、卒業時のデータが存 在する、30名(有効回答率93%)を分析対象とした。  質問紙にて調査を行った13技術142項目のうち、 知識ではなく実践可能な技術に限定するため「… わかる」「…アセスメントできる」「…計画できる」 「…観察できる」の項目を除いた、13技術79項目に ついて分析を行った。  今回の結果では、「単独で実施できる」「指導者の もとで実施できる」を合わせ、「できる」として判断 した。 1)「Ⅰ・Ⅱ群」に分類される12技術58項目につい て  「単独実施」が100%の項目数は、卒業時は「患 者にとって快適な病床環境をつくることができる」 「スタンダードプリコーション(標準予防策)に基づ く手洗いが実施できる」の2項目、卒業後6か月で は「基本的なベットメイキングができる」「バイタ ルサインの測定ができる」「スタンダードプリコー ション(標準予防策)に基づく手洗いができる」の 3項目であった。「単独実施」が80%以上の技術項 目数は、卒業前が9項目で、卒業後6か月では26項 目、50%以上の技術項目数では、卒業時が20項目、 卒業後6か月時点では51項目であった。  また「できる」が100%であった技術項目数は、卒 業時が12項目、卒業後6か月時は20項目であった。 卒業時に「できる」が100%であったが卒業後6か 月時には100%未満となっていた技術項目は、「患者 のおむつ交換ができる」「患者を車椅子で移送でき る」「患者の機能や行動特性に合わせて療養環境を 安全に整えることができる」の3項目であった。卒 業時に「できる」が100%未満であったが、卒業後6 表−1 調査対象者の属性

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か月時に「できる」が100%となった技術項目には、 「臥床患者のリネン交換ができる」「臥床患者の清拭 ができる」「患者の歩行・移動介助ができる」「輸液 ラインなどが入っている患者の寝衣交換ができる」 「患者の状態に合わせた温罨法・冷罨法が実施でき る」「患者の自覚症状に配慮しながら体温調節の援 助ができる」「患者の安楽を促すためのケアができ る」「患者の状態に合わせて安楽に体位を保持する ことができる」「使用した器具の感染防止の援助が できる」「感染性廃棄物の取り扱いができる」「自然 な排便を促すための援助ができる」の11項目であっ た。そして80%以上が「できる」項目数は、卒業時 34項目、卒業後6か月時では54項目であった。  これらの結果より、卒業時より卒業後6か月の時 では、「単独実施」または「できる」技術項目数は増 加していた。  また、卒業時に「できる」が50%未満であったが、 卒業後6か月時で50%以上が「できる」となった項 目は10項目あり、「簡易血糖測定ができる」96.7%、 「針 刺 し 事 故 防 止 の 対 策 が 実 施 で き る」86.7 %、 「ポータブルトイレでの患者の排泄援助ができる」 76.7%、「酸素吸入療法が実施できる」73.3%の順で 割合が高かった(図1)。 2)「Ⅲ・Ⅳ群」に分類される8技術21項目に ついて  卒業後6か月時で、単独実施ができるようになっ た技術項目は「点滴静脈内注射の輸液管理ができ る」97%、「誤薬防止手順に沿った与薬ができる」 90%、「静脈血採血ができる」87%の順で割合が高 かった。一方、「人工呼吸が正しく実施できる」「気 道確保が正しくできる」「閉鎖式マッサージが正し く実施できる」「除細動の原理が分かりAEDをもち いて正しく実施できる」など救急処置に関する4項 目は、「できる」と回答したものは40%未満であっ た。  「Ⅲ・Ⅳ群」の技術に関しては、A大学では演習 科目においてモデル人形を用いて看護技術の習得の トレーニングを行っており、卒業生全員が卒業時点 でモデル人形を用いて「単独実施」もしくは「見守 りのもと実施」レベルに達していると評価できるた め、卒業後6か月時での実施状況のみを表に表した (図2)。  卒業時には演習で実施できた「Ⅲ・Ⅳ群」の項目 図1 卒業時の到達度Ⅰ・Ⅱ群レベルで50%以下の実施項目で、卒業後の単独実施割合の降順

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でも、卒業後6か月時では、救急救命処置の項目以 外の17項目で、60%以上が「できる」になっていた。 3.看護技術習得に関して卒業後に直面する困難に ついて  卒業後に直面した困難度について、31名(有効回 答率100%)より25項目について回答を得た。その なかで、プリセプターに関する質問項目について は、プリセプター制を導入していない施設もあり、 結果が十分に現状を表すものではないと判断した2 項目について削除し、23項目について分析を行った (図3)。  また、具体的にどのような問題や悩みに直面した のかについて自由記載の回答を得たのは31名中17名 であった。  直面する困難について「非常にあてはまる」の割 合が高かった項目は、「終末期の看取りの看護にお ける経験が不足」65%、「終末期の看取りの看護に おける知識不足」61%であった。「非常にあてはま る」「ややあてはまる」の割合が最も高かったもの は、「未学習の看護技術が未熟」100%、「既習の技 術の経験不足」97%、「医療処置時不測の事態に対 応できない」「専門用語・略語の知識不足」93%、 「複数受け持ちによる仕事の繁忙さ」87%であった。  さらに、自由記載に回答した17名のうち6名が 「大学で学んだ手順と病棟のやり方が異なり、慣れ るのに時間がかかった」「学校で使用した物品と異 なった」「指導された方法とチェックリストの内容 が異なりどうすれば良いか不安になった」など、物 品や技術の手順の違いによる不安や戸惑いを述べて いた。  しかし、一方で「習得した技術と臨床での技術が 違い注意を受けたが、説明すれば納得してもらうこ とができた」と学習した基本的な内容と臨床で指導 を受けた技術の違いと内容を理解し、対処できたと いう回答が1名あった。  また、「受け持ち患者の業務をやり遂げることに 精一杯で未経験の技術を積極的に経験していく余裕 がない」という記述もあり、実際得られた回答で も、「ややあてはまる」「非常にあてはまる」を合わ せた割合でみると「複数受け持ちによる日頃の繁忙 さ」87%、「複数受け持ちによる時間調整が困難で ある」84%など、高い割合が見られ、多重課題に対 応することへの困難を感じていた。  逆に、「非常にあてはまる」「ややあてはまる」が 低かった項目は「自分から注射薬の見方を聞けな い」0%、「自分から医療用具の場所を確認できな い」3%、「忙しさのため先輩看護師に聞くことを 躊躇する」35%であった。  回答を得た31名には、全て指導者が付いて新人の 指導が行われていた。 図2 卒業時の到達度Ⅲ・Ⅳレベルの卒業後の単独実施割合の降順

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4.看護技術習得における大学教育への要望につい  看護技術習得における大学教育への意見につい て、12名の自由記載があった。そのうち、「もっと 多くの繰り返し練習を行う機会があればよかった」 と回答したのは5名であり、「演習を行っても1度 きりである」ことや「実習で行った技術を振り返 り、練習を行う機会があればよかった」という意見 もあった。  また、「特に困ることはなかった」と記載したの は4名であり、「講義や演習で基本的な根拠を学ぶ ことができたため、多少やり方が異なっても困るこ とがなかった」「実習でケアの多い患者や介護度の 高い患者を受け持ちした経験がとても活かされた」 と回答していた。  その他としては、「附属の専門学校の人たちは、 基本的看護技術に対しては全て技術チェックリスト があったと聞いて、A大学はその点が不足している と感じた」「自己学習日は設けられているが、教員 の指導を受け新たな気づきや自信をつけたい」な どの意見があった。また、「4月の時点では演習を 行っておきたかったと思っていたが、根拠を理解し ていれば対応できた」と述べていた。 Ⅵ.考察 1.看護技術到達度と技術習得に関する困難度との 関連について  今回の結果から、卒業後6か月の時では「単独実 施」および「できる」となった技術項目数が増加し ていたことから、卒業後6か月時までには臨床の現 場において、看護技術の経験する機会が増え、習得 するに至っていると考えられる。  卒業時Ⅰ・Ⅱレベルの看護技術で、卒業後6か 月時点で「単独実施」が100%であった「基本的な ベッドメイキングができる」「バイタルサインの測 定ができる」「スタンダードプリコーション(標準 予防策)に基づく手洗いが実施できる」の3項目か らは、既に学習し身についた技術が、卒業後も患者 の特性に関係なく日々実施される技術であり、看護 1. 未学習の看護技術が未熟 2. 既習の看護技術の経験不足 3. 医療処置時不測の事態に対応できない 4. 身体的侵襲を伴う処置を直接患者に提供することへの抵抗感を感じる 5. 終末期の看取りの看護における経験が不足 6. 看護基礎教育で習得した技術と臨床での技術が不一致 7. 既習の知識の理解度が浅い 8. 医療用具についての名前が分からない為、準備出来ない 9. 専門用語・略語の知識不足 10. 終末期の看取りの看護における知識不足 11. 複数受け持ちによる患者と向き合う時間の不足 12. 複数受け持ちによる時間調整が困難 13. 複数受け持ちによる患者把握が困難 14. 複数受け持ちによる仕事の繁忙さ 15. 忙しさのため先輩看護師に聞くことを躊躇する 16. 自分から医療用具の場所を確認できない 17. 自分から注射箋の見方を聞けない 18. 申し送り時、要点を簡潔明瞭に伝えることが出来ない 19. 業務の優先順位をつけられない 20. 看護師毎に看護観が異なる 21. 周囲の期待の重さを感じて緊張する 22. 周囲の期待に応えられない事に対する申し訳なさ 23. 出身養成機関の違いによる自己の技術の未熟さ 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% n=31 全くあてはまらない あまりあてはまらない ややあてはまる 非常にあてはまる 45% 55% 52% 3% 45% 48% 6% 45% 29% 35% 19% 16% 19% 6% 10% 65% 29% 6% 52% 13% 23% 35% 42% 16% 58% 3% 23% 35% 6% 58% 13% 19% 6% 61% 23% 35% 39% 13% 3% 3% 42% 42% 29% 58% 13% 35% 6% 6% 52% 52% 13% 19% 16% 32% 65% 3% 45% 55% 23% 45% 32% 29% 52% 19% 42% 3% 39% 16% 48% 6% 32% 13% 13% 45% 6% 35% 6% 42% 45% 6% 図3 卒業後に直面した困難

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師として患者のケアにあたる際に必要不可欠な技術 として、大学教育での学びがそのまま活かされる形 となった。また「臥床患者のリネン交換ができる」 「臥床患者の清拭ができる」「患者の歩行・移動介助 ができる」「輸液ラインなどが入っている患者の寝 衣交換ができる」などの技術項目が100%「できた」 となっていたことから、患者の自立度や介護度によ り、看護助手や介護士ではできない看護師として専 門的な知識が必要な看護援助が求められていると考 えられる。また「患者の状態に合わせた温罨法・冷 罨法が実施できる」「患者の自覚症状に配慮しなが ら体温調節の援助ができる」「患者の安楽を促すた めのケアができる」「患者の状態に合わせて安楽に 体位を保持することができる」などからは、患者の 状態に合わせて看護援助を実施する必要性が求めら れている現状が窺えた。「使用した器具の感染防止 の援助ができる」「感染性廃棄物の取り扱いができ る」からは感染予防の観点で、手洗いだけでなく、 器具や廃棄物への対応を確実に求められ、対応でき る幅の広がりが自信につながったのではないかと考 えられる。  一方、卒業時全員が「単独実施」または「できた」 が、卒業後6か月時に全員が「単独実施」に至らな かった「患者にとって快適な病床環境をつくること ができる」「患者の機能や行動特性に合わせて療養 環境を安全に整えることができる」「患者のおむつ 交換ができる」「患者を車椅子で移送できる」は、 看護助手や介護士などの他職種と連携し実施してい る施設も多く、短期入院やADLの自立度が高い患 者が多い病棟などから、卒業後の経験が低下してい る結果であると考えられる。片平によると、経験者 率が高いにも関わらず、自信度が低めの看護技術は 「患者の状態にあわせた」といった表現の技術項目 や幅広い状況が想定できるものが多い5)と述べて おり、今回、卒業時に全員が「できる」に至ってい なかったが、卒業後6か月時で全員が「できる」と なった項目は、11項目について同様の結果であると 言える。廃棄物に対しても対応できるかという幅広 い視点において全員が卒業時で「できる」に至らな かったものの、経験を積み重ねる中でどの患者にお いても、どの廃棄物に関しても対応できるという対 応の幅の広がりが自信につながったのではないかと 考えられる。  卒業時Ⅲ・Ⅳレベルの看護技術で卒業時「でき る」が50%未満であったが、卒業後6か月時で「で きる」に移行する割合の高かった技術項目「点滴 静脈内注射の輸液管理ができる」「誤薬防止手順に 沿った与薬ができる」「静脈血採血ができる」が 85%以上であったことから、臨床現場では特に診療 補助の看護技術習得が早期より求められることが窺 えた。  一方で、「気道確保が正しくできる」「人工呼吸が 正しく実施できる」「閉鎖式マッサージが正しく実 施できる」「除細動の原理が分かりAEDを用いて正 しく実施できる」など救急処置に関する項目のほと んどで、「できる」は40%に到達していなかった。 西尾らの報告6)においても、卒業後6か月時点で 救急救命処置に関する看護技術到達度の低下は指摘 されており、同様の結果であった。  今回の対象者は、一般診療科、精神科、小児科、 産婦人科、緩和ケアの病棟に勤務が90.3%であった こともあり、救命救急処置を実際に経験すること や、その場面に立ち会うことも少ないのではないか と予測され、病棟特性による経験の差異や院内教育 のクリ二カルラダーにおいて、救急救命に関する技 術をどこに位置づけているかなどを考慮する必要が あると思われる。  これらのことより、卒業後6か月時で50%未満の 到達度が低い項目はあるが、配属された病棟での処 置や患者の特徴により未経験看護技術がある状況 で、その他の技術項目については「新人看護職員の 臨床実践能力の向上に関する検討会報告書」(厚生 労働省 平成21年)で提示された「新人看護師技術 チェックリスト」7)で卒業後6か月時での到達度と 比較して大差はない。そのため、大学での看護技術 教育は、基本的な技術を習得出来た上で対応できる 能力を培うため、根拠となる知識と技術を行う上で の対象者の理解に重点を置いた教育が必要であると 考える。  しかし、一方で看護技術習得に関する困難を感じ ている現状もある。今回の協力者は全てプリセプ ターなど指導を行う役割が付いていることもあり、 先輩に尋ねることができない、確認できないなど、 周囲の指導看護師に対してわからないことを確認し ていくことに関する困難度は高くないことがわかっ たが、「未学習の看護技術が未熟」「既習の看護技術 の経験不足」はほぼ全員が困難と回答しており、未 経験技術や既習の看護技術について、経験不足から 実際に行う際に困難を感じていた。また、「専門用 語・略語の知識不足」や「医療用具の名前がわから

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ない」など、学生の時に見たり、聞いたりした経験 がない言葉や物品への知識不足や、終末期の看取り や医療処置時の不測の事態への対応など、応用力を 求められる状況や実習で経験しなかった状況への力 不足が窺えた。  卒業時に「できる」が50%未満で、卒業後6か月 時ですぐにでも必要となる技術項目に、検体や針、 点滴、酸素の取り扱いなどがあった。これらの看護 技術項目は、臨地実習では学生が取り扱うことが少 ない技術であることや、実習では急性期実習でも早 期離床を促すため移乗やストレッチャーでの移動、 尿器・便器の使用などを行う機会が少ないことなど から、卒業後すぐに必要となる看護技術であるにも 関わらず、実習において経験する機会が乏しい状況 が明らかになった。また、「終末期の看取りの看護 における知識不足」「専門用語の知識不足」「不測の 事態への対応」に対して困難と感じている割合が高 かったことについては、先行研究においても、同様 に「終末期の看取りに関する看護技術」「終末期の 看取りの際の家族対応」などの看取りの場面での困 難を感じており、終末期の患者・家族への対応を含 む看取りの看護の理解に至っていない状況が指摘さ れている4)。また、その背景には、臨床実習で終末 期にある患者を受け持つ経験の乏しさ、核家族化や 地域交流の減少により、学生にとって、死が身近に なく、死を語り考える機会がないまま青年期を迎え ていることがある8)と言われており、実習で十分 に体験できない状況があることに加え、学生の生活 体験の乏しさが、看護技術への理解、経験の未熟に もつながることが考えられた。  厚生労働省「第1回新人看護職員の臨床実践能力 向上に関する検討会」資料9)において、臨地実習 での経験が30%未満の看護技術項目では、「一人で できる」と認識している新卒看護師は30%未満であ り、看護基礎教育の臨地実習で未経験の技術項目は 入職後も一人でできない傾向があると指摘されてい る。また、学生は経験した看護技術の項目数と自信 度には中程度の正の相関があり5)、自信に影響を与 えた要因として体験を繰り返すことの必要性が報告 されている10)  また、今回の自由記載の中に、「受け持ち患者の 業務をやり遂げることに精一杯で未経験の看護技術 を積極的に経験していく余裕がない」という記述も あり、「複数受け持ちによる時間調整が困難」「複数 受け持ちによる仕事の繁忙さ」に困難が高い傾向が 見られた。経験不足・未経験の看護技術があるこ と、知識が乏しいことは自覚し、技術練習の必要性 を感じているものの、学生の時と異なり、業務に追 われ積極的に技術習得に向けての練習や経験を増や すことが難しいと感じていることが窺えた。これ ら、多重課題に関して、A大学では、4年次の統合 実習として総合看護学実習を位置づけている。その 実習の中では、複数受け持ちを行い、リアリティー ショックの軽減を目的に多重課題をこなすトレーニ ングを行っている。しかし、今まで一人の患者と向 き合い、看護展開してきた学生にとって、2名の患 者を受け持つ際の課題は多く、実習目標を達成する 過程において、指導を要する場面も多い。  教育課程別の看護技術の自信度は、大学生は養成 所・短大生より有意に看護技術の経験者率が低く、 自信度も低い傾向にあり、さらに大学生は看護技術 の経験数は個々のばらつきが大きい5)と言われて いる。このことからも、学生の時に看護技術経験項 目をできるだけ多く持てるようにすること、また、 リアリティーショックの軽減だけでなく、卒業後の 自己学習時間を確保するための気持ちの余裕や時間 管理、早期からの多重課題をこなす経験を行うな ど、教育内容・方法を検討していく必要がある。 2.今後の大学における看護技術教育のあり方につ いて  今回の結果では、「Ⅲ・Ⅳ群」に分類される技術 項目においても、卒業後6か月時で看護技術習得が 概ね順調に進んでいると言えるが、これらの看護技 術は身体的侵襲を与える技術が多く含まれ、学内で はモデルを用いた技術経験の項目がほとんどであ る。臨地実習において、患者への侵襲が高い看護技 術に関しては、経験することはほぼ皆無の状況があ る中で、直面する困難については「身体的侵襲を伴 う処置を直接患者に提供することへの抵抗感を感じ る」に、64%が「あてはまらない」と回答している。 このことから、モデル人形などを用い、侵襲の高い 看護技術を経験しておくことは、経験からの知識と して理解を促し、侵襲の高い処置への抵抗感の軽減 につながり、卒業後の看護技術習得への困難度を軽 減するためにも重要であることが示された。  しかし、「大学で学んだ手順と病棟のやり方が異 なり、慣れるのに時間がかかった」「学校で使用し た物品と異なった」「指導された方法とチェックリ ストの内容が異なりどうすれば良いか不安になっ

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た」など、学生時代に習得したものであったとして も、看護技術の根拠や意味が十分に理解できていな いと、方法や物品が変わることで困惑し戸惑いを感 じてしまう場合があり、根拠を理解する看護技術教 育が必要であると再認識された。  また、終末期における看取りの看護や家族対応に 困難を感じる状況においては、終末期の患者・家族 への対応について、臨床実習で経験させる機会を作 ることは極めて難しい。しかし、これらの背景には、 先述したように、前澤による先行研究7)において、 核家族化や地域でのつながりの希薄さから、学生自 身の身近に死を感じる環境が少ないことが指摘され ている。そのため、学生時代より、死について考え、 学生自身の死生観を形成するなど、死を身近に感じ、 考える機会を作る工夫も必要であると考えられる。  また、「医療用具についての名前が分からないた め、準備できない」「専門用語・略語の知識不足」 についても困難を感じる割合が高かった。看護技術 演習や授業においては、基本的な方法や物品を使用 するのが一般的であり、その名称についてもできる 限り正式名称を使い、教授している。しかし、実際 には、臨床の現場で「通称」で呼ばれていることが 多く、その「通称」と既存の知識とがつながらない 場合も多い。そのため、正式名称に加え、略語の紹 介や実際に物品を見て、触れる機会を作るなど、現 場のやり方に触れる工夫を行うことも一つであると 考える。  未経験看護技術、未学習の看護技術に関する困難 が高いことはすでに指摘されており4)、臨地実習で の経験を増やすことの重要性が言われている5)。ま た、今回の自由記述の中でも「実習でケアの多い患 者や介護度の高い患者を受け持ちした経験がとても 生かされた」という記載もあり、実習での経験がそ の後の看護技術習得においても重要であることが窺 える。しかし、臨地実習では、実習を行う病棟や 出会う患者によって、学生一人一人の経験が異な り、学生により経験が偏ることも致し方ない状況で ある。その中で、いかに経験を増やし、臨床の現場 に触れさせるかなど、授業や演習の組み立てを再度 検討していく必要がある。また、多重課題について も、できる学生には早期から機会を与え、トレーニ ングしていくことも重要であると思われる。  また、卒業直後は技術面での困難を抱えていた が、根拠を理解していれば様々な状況に対応できる という経験を積み重ねる中で実感できている状況が 分かった。実習でケアの多い患者を受け持つなど、 学生時に行った技術があるという経験は、卒業後の 看護技習得にもつながっていた。看護技術教育は、 知識としての理解だけでなく、実際の現場での学び も重要である。そのため、大学と実習病院が連携を とり、看護技術教育に取り組むことが重要になって くると言える。 Ⅶ.結語  今回、A大学卒業生の卒業後6か月時での看護技 術到達度と卒業後の看護技術習得に際して直面する 困難について明らかにする目的で研究を行った。そ の結果、以下のことが明らかになり、看護技術教育 への今後の方向性に関して示唆が得られた。 1 .就職した病院や配属された病棟特性による経験 や入職後の院内ラダー教育による差はあるもの の、卒業後6か月時点での看護技術到達度は「新 人看護師技術チェックリスト」(厚生労働省 平 成21年)と差はなく、概ね順調であることが分 かった。 2 .卒業時Ⅲ・Ⅳレベルの看護技術において卒業後 6か月時で「できる」に移行する割合の高かった 技術項目「点滴静脈内注射の輸液管理ができる」 「誤薬防止手順に沿った与薬ができる」「静脈血採 血ができる」が85%以上であったことから、臨床 現場では特に診療補助の看護技術習得が早期より 求められることが窺えた。 3 .既習の看護技術であっても「大学で学んだ手順 と病棟のやり方が異なり、慣れるのに時間がか かった」や 「学校で使用した物品と違った」など 根拠や意味を十分に理解できていないと困惑し戸 惑いを感じる場合も多く、根拠を理解させる看護 技術教育の重要性が再認識された。 4 .身体侵襲が高く、臨床実習での経験ができない 技術であっても、モデル人形を用いて看護技術を 理解し、経験することは、侵襲の高い処置への抵 抗感の軽減につながり、卒業後の看護技術習得へ の困難度の軽減つながると示唆された。 5 .卒業後に複数受け持ちを行うことでの時間管理 や繁忙による困難を感じている割合が高く、看護 技術の知識・技術の未熟さを感じているものの、 業務に追われ、積極的に技術練習や経験を増やす ことが難しい現状が窺えた。

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6 .看護技術習得において、未学習の技術への不安 や困難度が高い傾向にある。実習での経験も学生 により偏りを生じる状況があるため、看護技術項 目の経験による偏りについても、授業や演習の組 み立ての再検討が必要である。 Ⅷ.研究の限界と今後の課題  今回の研究では、有効回答数が少なく、卒業生の 状況を十分に反映できるものとはならなかった。今 後、卒業生の看護技術習得状況と大学教育との関連 を見るためには、授業や実習に関連する質問内容な ども再度検討し、調査を継続していく必要がある。 また、卒業後教育としてクリニカルラダーを導入し ている施設も多く、卒業後の看護技術習得状況は施 設のクリニカルラダーが反映されたものであるとも 言える。そのため、卒業後の看護技術習得状況が大 学教育の影響を大きく受けているとは限らず、卒業 後の看護技術習得状況から大学の技術教育のあり方 を検討するには限界があると考えられる。  看護技術教育は臨床での教育が重要であり、卒業 後も継続して実施されていく必要がある。A大学の 卒業生の多くは、実習病院に就職している状況か ら、看護技術教育における臨地実習や演習などの看 護基礎教育から卒業後の継続教育への移行について も、大学と臨床との連携をとり、関わっていくこと が今後の課題であると言える。 Ⅸ.謝辞  本研究を実施するにあたり、ご協力くださった卒 業生の皆様に心より感謝申し上げます。  尚、本研究は、平成25年度千里金蘭大学特別研究 B助成を受けた研究の一部である。 引用文献 1)山住康恵ほか,日本看護学教育学会誌 21 (2),13〜22(2011) 2)厚生労働省,看護学教育の在り方に関する検討 会報告 平成14年3月26日,16〜19(2002) 3)厚生労働省,第1回看護教育の内容と方法に関 する検討会 参考資料4-3,5〜7(2009) 4)小池菜穂子ほか,群馬パース大学紀要 13,3 〜12(2012) 5)片平伸子ほか,日本看護学教育学会誌22(2), 65〜71(2012) 6)西尾亜理砂ほか,愛知県立大学看護学部紀要 8,31〜38(2012) 7)厚生労働省,新人看護職員の臨床実践能力向上 に関する検討会 第2検討会 資料3,(2009) 8)前澤美代子ほか,山梨県立看護大学短期大学部 紀要12(1),1〜13(2006) 9)厚生労働省,第1回新人看護職員の臨床実践 能力向上に関する検討会 配布資料3.1〜3 (2003) 10)林幸子ほか,日本看護学会集録22回看護教育, 194〜197(1991) 参考文献 1)原明子ほか,日本看護研究学会雑誌 36(3), 227(2013) 2)椎葉美千代ほか,日本看護研究学会雑誌 36 (3),227(2013) 3)伊藤愛ほか,日本看護研究学会雑誌 36(3), 222(2013) 4) 高 塚 綾 子 ほ か, 聖 母 大 学 紀 要  7,31〜40 (2010) 5)大室律子ほか,看護教育 46(10),86(2005) 6)山崎美惠子ほか,高知学園短期大学紀要 41, 73〜80(2010) 7)岡田ルリ子ほか,愛媛県立医療技術大学紀 要 5(1),65〜73(2008) 8)金城忍ほか,沖縄県立看護大学紀要 12,105 〜112(2011) 9)荒川裕美ほか,北日本看護学会誌 9(2),34 〜45(2007) 10)浅川和美ほか,茨城県立医療大学紀要 13,57 〜67(2008) 11)小元まき子ほか,順天堂大学医療看護学部 衣 装看護研究 4,72〜78(2008) 12)中岡亜希子ほか,千里金蘭大学紀要 8,132 〜143(2011) 13)津田智子ほか,日本看護研究学会雑誌 36 (3),204(2013) 14)浅川和美ほか,茨城県立医療大学紀要13,57〜 67(2008) 15)戸田由美子ほか,高知県立看護学会誌14(1), 33〜42(2010)

参照

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