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陳旧性舌刺入魚骨と顎下腺管唾石を合併した1例

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Academic year: 2021

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仙台市立病院医誌 28,77−79,2008  索引用語   唾石 炎症性腫瘤 ワルトン管

陳旧性舌刺入魚骨と顎下腺管唾石を合併した1例

青 柳 生 織,澤 田 朋 啓*,吉 田

     牛来茂樹,千葉敏彦

征 之*

はじめに

 顎下腺唾石や顎下腺管内唾石の生成要因とし て,唾液管の狭小化による唾液のうっ滞などが考 えられる.今回我々は,偶然に舌側縁近傍に刺入 した魚骨異物が顎下腺管内の唾液の流れを妨げた 結果,唾石が生成されたと推測される1例を経験 したので報告する. 症 例  患者:47歳,男性.  主訴:食後の口腔底腫張痙痛.  既往歴:特記すべきものなし.  現病歴:2002年2月食事中,魚骨を口腔底左側 に刺入した.同日2カ所の近医耳鼻科を受診した が,魚骨は発見されなかった.同年12月15日,食 後急に左顎下部の腫張・疾痛が出現し,近医耳鼻 科を受診した.左顎下腺炎,唾石症の疑いにて当 科を紹介され,CT検査にて左顎下腺管内唾石と 思われる石灰化像が認められた(図1).この時は 抗生剤内服にて症状軽快したため,経過観察と なったがその後も約半年に一度の割合で左顎下腺 炎を繰り返していた.  2006年9月,左顎下部腫脹と舌左側の硬結・腫 脹が出現したため,近医耳鼻科を受診し,舌腫瘍 の疑いで当科紹介となった.CTにて2002年の検 査同様,左顎下腺管内唾石と思われる石灰化像を 認めた(図2).舌左側の腫脹に関しては,舌腫瘍 も疑われたためMRIを施行したが,舌左側の腫 張部位はT1強調画像で低信号(図3a), T2強調 画像で高信号を示した(図3b).造影MRIでは, T1で低信号を示した左舌の腫張部位は像影効果 を示したが,内部に一部像影効果のない部位が認 められた(図3c).再度CTを見直すと顎下腺管内 唾石と考えられる石灰化像(図2)とは異なる部位 に,角度の違った石灰化像を認めた(図4).この 部位は舌の腫張部位にほぼ一致し,CTの石灰化 像は造影MRIで舌内の造影効果のない線状陰影 と一致した.このことから舌の腫脹は腫瘍ではな く,舌内の異物によるものと考えられた.  この時点で患者に再度詳細な問診をしたとこ

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石灰化像          k 図1.2003年CT.左口腔底の位置に左顎下腺管内   唾石と思われる石灰画像を認めた(矢印). 石灰化像 仙台市立病院耳鼻咽喉科 *東北大学病院耳鼻咽喉・頭頚部外科       .輔已      獅

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図2.2006年CT.増大した唾石陰影を認めた(矢   印). Presented by Medical*Online

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MRI(T1)にて低信号を示した(矢印) 図3b. MRI(T2)にて高信号を示した(矢印) 石灰化像

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図4.2006年CT.顎下腺管内唾石(図1)とは異   なった角度の石灰化像を認めた(矢印)

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  図5.摘出顎下腺と唾石(矢印) 1魚 図3c.

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MRI(T1−Gd) (矢印)

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   にて造影増強効果を認めた ろ,2002年に魚骨が刺入し,近医耳鼻科受診する も魚骨なしと診断され,そのままになっていたこ とが判明した.  唾石は顎下腺管移行部に存在し,これまでも繰

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図6.唾石(左),魚骨(右)(矢印) り返し顎下腺炎をきたしていたため,口内法では なく外切開による唾石をふくめた顎下腺摘出術を 施行した(図5).同時に舌腫瘤内の陳旧性魚骨の 摘出(図6)と舌腫瘤の摘出術を施行した. Presented by Medical*Online

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79 表1.顎下腺唾石が多い理由 ・性状 高ムチン含有率(耳下腺の2倍) アルカリ性(pHが高い) 有機物の割合が高い カルシウムとリン酸塩の濃度 低二酸化炭素 高フォスファターゼ酵素含有 ・ 解剖学的 長く,不整なワルトン管 腺の位置と腺管の機能 腺管開口部の位置 開口部の直径く腺管の直径 考 察  唾石は9割が顎下腺管内に生じる.その原因は 解剖学的なものと,唾液の成分に寄与している1) (表1).耳下腺管に比ベワルトン管はその走行が 長く,走行が曲折している.また管の内径よりも 開口部の径が小さいことなどから唾液がうっ滞し やすい形態であるといえる.成分はアルカリ性で ムチンが多く有機物,フォスファターゼが多く含 まれている.またカルシウムも耳下腺の2倍含ま れており,唾液のうっ滞がおきると唾石が形成し やすいことが考えられる2).  本症例は魚骨刺入部位周囲の慢性炎症によりワ ルトン管が狭窄・閉塞し,結果として唾液流出を 妨げ,唾石が生じたものと推測された3∼5).舌に魚 骨が刺入した時点で早期に摘出されていれば,唾 石の形成はなかった可能性が考えられた.  当症例は2002年当科初診時に唾石と診断され たが,それ以前の舌刺入魚骨のエピソードが把握 されておらず,また初診時のCT検査でも舌刺入 魚骨陰影が描出されていなかったことが診断の遅 れの原因となったものと考えられた. 結 語  我々は,舌腫瘍と鑑別を要した陳旧性魚骨刺入 による舌の炎症性腫瘤の一例を経験した.魚骨刺 入による舌周囲の炎症が唾液腺管内の唾液のうっ 滞などを生じ唾石生成の誘因になったと推測し た. 文 献 1)Charles W. Cummings et al :SALIVARY   GRANDS. Otolaryngology Head and neck   Surgery 2 second edition. Mosby Year Book,   St. Louis, pp 994−995,1993 2)小林晋一郎他:唾石症における唾液成分の病   態生化学研究 特に石灰化抑制因子を中心にし   て.日本口腔外科学会雑誌30:1087−1098,1984 3)若江秀敏他:魚骨を核として形成されたと思   われる唾石症の1例.日本口腔外科学会雑誌35:   2747−2753,1989 4) 田中正司 他:確定診断までに長期間を要した   耳下腺唾石症の1例とその成分分析.日本口腔外   科学会雑誌11:194−198,1998 5)左坐春喜 他:唾石症の臨床統計的検索.日本口   腔外科学会雑誌29:1304−1309,1983 Presented by Medical*Online

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