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集水域の水文的特異性が河川

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Academic year: 2021

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集水域の水文的特異性が河川

陸域間の捕食

被食関係に与える影響 森林・緑地管理学講座 生態系管理学分野

西尾 太希

【背景】生態系が系外から受けるエネルギー、有機物の流入を補償と呼ぶ。補償は、資源の流入に よるボトムアップ効果となり、受け手の食物網構造を変化させる。そのため、生態系の構造を理解 するためには、系外からの補償の効果を考慮する必要がある。

水生昆虫の羽化成虫は、河川から陸へのエネルギー補償において重要な役割を果たす。河川水中 で幼虫期を過ごし、陸上へ羽化した水生昆虫は、河畔に生息する捕食者にとって重要な餌資源であ る。これらの捕食者は、水生昆虫の羽化タイミングに合わせて個体数を増加させる、分布を河川の 水際へ寄せる等、水生昆虫の羽化に合わせた生態を持つ。そのため、河畔の陸上生態系の構造を理 解するためには、水生昆虫の羽化による影響を明らかにすることが重要である。

水生昆虫の羽化タイミングや羽化量には、水温、流量という水文条件が影響している。これらの 水文条件を支配しているものに地質が挙げられる。火山活動によって形成された地質(火山性地質)

には地下水が豊富に存在するため、火山性地質を流域に持つ河川は年間の水温変動、水位変動が小 さいという特徴がある。このような地質の特徴が、水温・水位変動、水生昆虫を介して、陸上生態 系に影響を与えているかもしれない。

本研究の目的は、流域が火山性地質の河川とその他地質の河川間で、①水生昆虫の羽化量、②陸 域捕食者の個体数をそれぞれ比較することで、流域地質の違いが河川–陸間のエネルギー補償の変化 を通じて陸上捕食者の個体数に与える影響を解明することにある。

【方法】調査は20188月~20197月に行った。石狩川水系空知川支流のうち、20万分の1 本シームレス地質図を参考に、流域地質が第四紀火山岩層(安山岩、玄武岩)、軽石流堆積物層であ る河川5河川、その他の地質である河川5河川を選択した。各河川の水温、水位を測定するため、

河川水中に記録計を設置した。水生昆虫の羽化量を調べるため、各河川に1~2基のマレーゼトラッ プを設置した。捕獲した水生昆虫のうちカゲロウ目、カワゲラ目、トビケラ目の昆虫の個体数をそ れぞれ数え、目ごとに羽化数を把握した。また、水生昆虫の捕食者として、オサムシ科甲虫、クモ 類を対象とした。これらの節足動物を捕獲するため、20195月と7月に、各河川の砂礫堆に10 個のピットフォールトラップを設置した。

【結果】流域に火山性地質を持つ河川では、その他地質の河川と比べて、年間の平均水温が低く、

年間の水位変動が小さくなる傾向となった。また、年間の平均水温が低いと、水生昆虫量が多くな る傾向がみられた。しかしながら、水生昆虫量と捕食者量には相関が見られなかった。

【考察】今回の調査では、流域に火山性地質を持つ河川では年間の水温変動、水位変動が小さくな る傾向が見られた。既往研究通り、火山性地質の河川では、豊富な地下水流入があり、水温、水位 変動が安定したと考えられる。また、火山性地質の河川では、その他の地質の河川よりも水生昆虫 の羽化量が年間を通じて多かった。冬季の高水温、夏季の低水温の双方が、水生昆虫の個体数の増 加に繋がったと考えられる。しかしながら、水生昆虫の羽化量は、オサムシ科甲虫、クモ類の量に 影響を与えていなかった。今回の調査地は山地渓流であったため、周囲の森林から流入する餌資源 が多く、河川からの補償の効果が小さかった可能性が考えられる。砂礫性のオサムシ科甲虫、クモ 類は河川生態系と陸域生態系を連結させる重要な機能を有すが、今回のような山地渓流ではその機 能の効果が少ないことが考えられる。

参照

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