長野工業高等専門学校紀要 ・第1
9
号(1 9 8 8 ) 97
砂 礫 河 床 上 の 乱 れ 特 性 ( 第 一 報 )
松 岡 保 正*
Turbulent structure of flow over gravel river bed Yasumasa MATSUOKA
Thef ie l dme a s ur e me nt soft ur bul e nc ear ec ar r i e douti nt heChi kumar i ve ra nd t heSa ir i ve r ,us i ng3e l e c t r o・ magne t i cno wmet er .
Es t i ma t i onsoft ur bul e nc ear ema def or . t he r e s ul t soft heo bs e r va t i ons .l nt hi s pa pa e r ,ver t i c a ldi s t r i but i o nsoft ur bul e ntc ha r a ct er i s t i c t sa r er epr e s e nt e d.
Thef o l l o w ingr e s ul t sa r eobt a ine df r o m t hi sobs e r va t i on.
1 ) .Theva l ue sofRe yno l dss t r e s sa nde ne r gy di s s i pa t i onsde c r e a s euni f or ml ywi t h hi ght .Someoft heo bs er va t i o nd at as ho w t ha tt hedi s t r i but i onpa t t e r noft heReyn・
ol dss t r e s sha st ur ni ngpo i ntofac ur ve .
2 ) .Thes c a l eofene r gyc ont ai ni ngeddi e si nc r e a s e wi t h bi ght .Whe n Z/ H eql l a l s t o0 . 8 ,t hes c a l et a ke st heva l ueofaboutI o 試.
1 . ま え が き
日本の川は大陸系の河川 とくらべ,川の源流部か ら海に到達するまでの距離が歴か く,河 床勾配が急である.また,ずば抜けた大河が無いかわ りに,同じ位の規模の川の数が多 く, 延長
20 km
以上,流域両手茸1 5 0 km
乞以上の川は約2 6 0
にのぼる. こうした小規模の川の大半 は,山地か ら急勾配で流下するため,大量の土砂を運び出し,結果 として,かな りの粒径の 石を含む砂硬河床を形成 している.砂磯河床は,出水時にはかな りの厚 さで移動する為,上流 ・中流域では洗掘による河川構 造物の崩壊等を引き起 こす大 きな原因 となる.護岸や水制等を利用 した安全な河川管理 の為 には,そ うした硬床河川の流れの構造を把返してお く必要が有る.
本研究は,磯床河川の乱流構造を解明す るために,先ず,硬床河川における現地観測か ら 鉛直乱流場における乱れの諸特性を明らかにしようとした ものである.
2 . 観 測 方 法
一 口に砂喋河床上の流れ と言っても,出水時 と渇水時ではかな り異なった様相を程する.
掲水時には;水深 と粗度要素の石や裸が同じオーダとな り,出水時には先に述べた様に,か な りの厚さで河床 の砂磯が移動する.本研究では,通常の状態で観測を行な うが, ここで言
* 土木工学科 助 教授
・ 原稿受付 昭和6
3
年9
月27日98
松 田 保 正う通常 とは,出水時以外で,河床材料の粒径 と水深 とが
1
オーダー以上離れている状恩を指 す.その様な状況下では,謂ゆるボイル現象が親祭される.流速変動の測定には,計測技研製
VM2 0 1
とアレック電子製のACM‑20 0 P2
台を用いた.流速計の固定には,外径
2 5 mm
の銅管を用い,鉛直方向への移動を容易にす るため,外径1 9 mm
の鋼管を用いた骨組に沿 ってスライ ドできる様 にしてある.自然河川では,断面形状の一様でない場
合が多いため,測線は一本ではな く,河道
T
。 長m ・中央に向けて複数設けた.延長 コー ド長, 水深,流速の大 きさ等の制限が有 り,本数 は観測地点の状況により異なる.
観測地点を右に示す
.A
地点は河岸か ら9m
地点で水深が5 5 c m.
河床を構成 して いる石喋の代表径は2 0 c m
内外であ り,余 一・り頻れ易 くはない.
B
地点は河岸か ら6m
地点で水深が9 3 c m.
河床の右横の代表径はA
地点 と同程 度 であるが,洗掘 され易 く,20 c m
程度は 簡単に掘れる.C
地点は河岸か ら9m
地点で水深が7 0 c m.
図
1
故 郷 地 点横断方向に,余 り大 きな水深の変化は無い.
河床は
A
地点 とほぼ用様であるが,かな り緩勾配である.3. 観 測 結 果 3‑ 1
データ処理1
データ当 りの観測時間は約2 0
分 とし,TEAC
社製R21 0 B
に収録 した.解析にあた り市 販 のAD
ボー ドを用いてAD
変換を行なった.サンプ リング間隔は0 .1
秒で,1
チャンネル 当 り20 4 8
個のデータをサ ンプ リングした.サ ンプ リング後 の流速変動記録の一つを,図2
に 示す.u
′は流れ方向の,Ⅴ
′は鉛直方向の流速変動を表わ している.3‑2
乱れの解析1
チャンネル当 り2 0 4 8
個のデータを用いて,乱れ強 さ∨‑R ェネルギースペ ク トル密度F ( n)
を計算 した.エネルギースペ ク トル密度に‑5 / 3
剰別を適用 し,エネルギー退散率 古を求 めた. また,最大乱子スケールLo
は,エネルギースペ ク トルのピークか ら求めた.解析結果の一覧を,表
1
か ら表7
に示す.表中のU
.は摩擦速度,yは岸か らの距離,
Hは 水深,
Zは河床か らの高さを表わ している. ここで言 う河床 とは,流速計設置のために組ん だ鋼管に よる骨組 の最下端の位置であ り,厳密な意味での河床ではない.移動床 における河 床位置は重要 な問題であるが,ゼ ロ面修正量や粗度の面か ら,別の機会に触れ る.3‑3
速度変動頻度分布移動床上の乱れの取 り入れ 口として,河床近傍か らのカルマン渦管を考 えた場合,速度変 動 の頻度分布形は大変興味軌 、.河床近傍か ら上昇す るに伴い,周囲の水を巻 き込み,湧昇 流を発生 させ,表面近傍で崩壊す ると言 う馬蹄形渦モデルの考察を試みる.頻度分布は
,A
砂孜河床上 の乱れ特性 (第一報)
1 のものを図 4
に示す..
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1 0 3 1 0 2 1 0 1 1 0 0 1 0 1
n(I/S∝) 図
3
ここネルギ‑スペ ク トル密 度9 9
松 岡 保 正
元 請
a
観
・
表( c mYs e c ) ( cm
Ys * e c )
︼l u H emru■u
Eidym‑̲u
tr Hu ↑ ■ C △ senLt
Eid → secutu
9836268775979 7 7 7 3 0 6 9 1 7 5 1 8 7 7 6 1 6 1
5
74 6
30 5
44 一 4 9 7
9 7 5 4 6 9
1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0
8 8 8 8 8 8 4 4 4 4 4 4 20 20 20 40 20 20
1
2 3 4
AA A A
Bce ・ ul vl
( cm 2 / s e cB ) ( cm 2 / s e c 2)
蕊
Eii=C
忠
r u■u
F u Z cmlutu 1 9 8 6 2 0 9 2 5 3 0 4 3 2 9 9 4 8 1 3 1 2 6 3 3 5 1
8 6 9 9 6 5 7 6 2 7 6 8 4 6 6 7 1 0 2 3 2 3 1 1 1
4 7 0 4 8 8 7 6 1 2 8 7 4 1 1 0 1 4 1
2 9 2 5 5 8 0 2 0 3 3 4 4 4 4 9 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1
5 3 7 5 6 5 6 3 1 9 7 8 4 9 1 7 8 6 6 7 8 9 9 0 0 0 1
050505050112233445
z
iT(Z)イ ます 6 ̲ u・ V・
( c m) ( c m/ s ec ) ( cm/ s ec ) ( cm2 / s e c3) ( cm 2 / s e c2)
9 3 8 0 1 4 2 8 7 3 8 9 9 0 3 1 2 4 3 3 5
6 6 3 7 9 2 0 8 2 6 5 1 2 4 2 3 2 2 1 1
0 9 2 4 3
86 3 2 6 3 1
10 1 1
0 5 7 9 4 9 0 2 2 2 1 7 9 8 1 1 1 1
1 7 5 7 2 4 4 0 7 5 1 4 8 6 7 7 8 9 7 9 01
0 5 0 5 0 5 5 1 1 2 2 3 3 .4
6 ‑ uJ vt
( cm! / s e c3) ( cmB / S e cB )
ph ︼
I
.・・; & > m CrⅦt
F H一C
4豊r
̲ u
︼l u Z cmrutu 8 3 0 8 8 2 8 3 8 6 1 6 1 2 3 2 3 4
0 8 4 7 4 7 0 8 9 0 0 5 2 1 1 1 1
9 7 7 .4 0 5 0 9 6 1 2 1 1
3 9 4 7 8 5 3 9 9 7 7 7 1
8 5 8 6 1 4 5 4 9 5 9 2 6 7 7 8 8 9
0500LL'0112334
1 0 1
砂横河床上の乱れ特性 (第一報)表
5 A4
u1 2
e・ ul vI Lo / s e e ) ( cm℡ / s e c t ) ( cm2 / s e c 2 ) ( cm)
7 6 3 5 1 8 2 3 9 5 8 3 0 1 2 1 3 3 .4一 7 7
9 1 1 0 0 8 3 0 7 2 0 7 2 2 2 1 1 1
5 5 8 8 2 7 5 4 6 8 2 2 0 0 r=
7 8 2 8 8 1 1 0 9 1 7 7 7 8 1 1
9 6 6 1 9 0 5 6 4 0 0 1 5 5 5 dU 7 8 8 8 8
0 5 5 0 5 0 5 1 1 2 3 3 4 4
表
6
B8 ‑ ul vI c ) ( cm2 / s e c 8 ) ( cm2 / s e c 2 )
0 8 6 5 3 6 5 9 1 8 9 0 2 ‑5 7 3 6 2 5 7 5 0 7 4 4 3 3 3 3 5 4 4 2 4 5 2
7 .4 6 2 9 4 1 3 0 6 3 1 6 2 7 1 9 2 7 .4 3 0 1 4 4 5 5 5 2 3 4 1
8 6 4 2 5 4 6 3 8 5 9 0 0 8 2 3 3 1 2 1 2 2 4 4 1 1 1
6 0 3 7 2 1 1 3 9 6 2 9 6 8 7 5 5 7 LL' 3 0 0 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 4 1 5 5 4 tE) 0 3 6 9 0 5. 7. 5. 0. 0. L 6. 9. 5. 4. ・ 8. 9 0 0 1 2 3 3 3 3 3 3 3 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
Lb O 5 0 0 5 0 5 LL' 0 5 0 1 2 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8
u1 2 6 ‑ ul vl / s e e ) ( cm2 / s e c B ) ( cn℡ / s e c 2 )
0 5 0 8 8 3 3 7 9 7 4 1 0 9 8 6 5 7 0 7 1 1 1 1 1 1 1 3 2 1
9 5 2 1 8 5 4 3 7 5 3 2 3 2 1 0 0 1 3
5 3 6 6 1 8 5 9 5 2 3 3 3 1 4 0 1 1 3 2
9 5 1 0 2 3 2 0 5 4 7 7 7 7 8 7 6 6 5 3
2 0 2 3 0 2 1 1 0 4 0 .4 8 4 5 3 5 9 2 1 5 5 5 tD 7 7 7 7 9 8
0 5 0 5 5 0 5 0 0 5 1 1 2 2 3 4 4 5 6 6
102 松 岡 保 正
届 甘
烏
「+40 ‑40 +40 ‑60
‑40 +40 ‑40 十40 ‑60
図
4 u' ,V
一頻度分布4 . 考 察
河岸の影響,河床近傍か らの渦の生成の可能性等について検討を加えるため
,A
地点にお ける解析結果を もとに若干の考察を加える・砂喋河床上 の乱れ特性 (第一報)
1 0 3 4‑ 1
レイノルズ応力平均流か らのエネルギーの取 り入れ 口は,物理 モデルの側面か らは馬蹄形渦であ り,力学 的には レイノルズ応力であると考えられ る
・A
.1‑A4
を一つにまとめ, よ り直観的にす る ため,縦軸を相対水深,横軸を一 訂 マ 7
としてプtlッ トした ものが,図5
である.レイノルズ応力の大 きさは,河岸か ら離れる 程全体的に大 きな値 となっているが,表
1
か ら も明 らかな様 に,断面平均流速 も同様 の傾向に 有 る事か らすれば,当然 の結果 と言えよう.重要な事は
,A
l一A2
共に相対水深0 ・ ‑ 2 〜
.忘0 . 2 5
で変曲点を持 っている事である.√室内実験 水路に於ける固定床での研究例では,そ うした 候向は伺えないが,最近 の浸透性水路床での結 果 の中には,本研究 と同様 の結果が得 られた も のも報告 されている.4‑2
渦管断面の推定レイノルズ応力の鉛直分布形か らす ると,相 対水深
Z/ H‑0 . 2 ‑0 . 2 5
で最 も強い 渦管が生 成 しているものと考えられ る.渦管は間欠的に 放出され,通過時間 も短かい.応答時間が遅 く,1.0
0.5
0
1 0
20 30 40‑u
ly
' (C爪7/sect) 図5 一石T T'
鉛直分布流れ方向の流速 しか訳す定出来なか ったプロ ベ ラ流速計での現地観測ではこうした渦管は とらえられない.
2
成分電磁流速計の導入に よ り,鉛直方向流速変動の測定が可能になって, ようや く渦管を とらえる事が出来 る様 になっ た.移動速度 Ui,渦管の直径 Di,渦管の通過時間Ti
,鉛直方向流速変動Ⅴ
′とし,禍管断 面がセンサーに直角に通過するもの と仮定すると,図6
の様になる.0 J O
20 30 40 50 旬7O
Dianeter
( ct L )
図7
渦管
頻 度図
6
に於ける鉛直方向流速変動バターンを,A3
のI , Z‑2 0 c m
とAl
のZ‑1 5 c m
の記録か ら拾い出し,Di‑Ui Ti
としてその頻度分布を表わ したものが図7
と図8
である.水深に匹 敵する程 のスケールのものは,湧昇流等であると考え られ るが,詳細は今按の検討課題 とし たい.図7
,図8
か ら,相対水深Z/ H‑0 . 2 ‑0 . 2 5
辺 りで,直径2 5 c m
程度 の渦管が生成 さ1 0 4
2 0
. ̲J S l リ I t ; ) 7 )
コ r J O
5
0
松 岡 保 正
1 0 2 0 3 0 4 0 5 O
Di a n et e r(
川)皿 8
渦 管 頻 度 れていると言えよう.4‑3
流速変動の頻度分布の偏 り流れ方向の流速変動
u
′についてみると,Z‑20cm
か ら30cm
にかけて, ピークが正側に 有 り,裾が負側 に伸びている. これは湧昇淀が,負側に寄与す る事 と符合す る.水面近傍で はほぼ正規分布になってお り,等方性は良 く成立 しているようだ.Ⅴ
̀については,水面近傍 に近づ くにつれ,水面 の抵抗を受け,小 さ くなる傾向が出ている.5 .
あ と が き磯床河川に於 いて流速変動を測定 し,乱れの諸星の鉛直方向分布特性を求めた.最大乱子 スケール とェネルギー退散率については, これ まで得 られている結果 と大差無い̲ものが得 ら れた.従来の研究では,河床近傍については余 り明 らかにされていなかったが,今回の測定 で,興味深い結果が得 られた.河床近傍で レイノルズ応力の分布形が極大値を持ち,反転す る傾向を持つ事は,その辺 りで渦管が生成 されている可能性を示唆 している.それが渦管で あるか どうか,更には渦管であるとすれば横方向の拡が りや発生周期が どの程度であるか, 今後の観測で明 らかに して行 きたい.
今回の観測では物理 モデルの検証が主 目的ではなか った為,ボイルの同時観測は行なって いない.従って,変動速度 の頻度分布については,十分 な考察を加 えるには到 らなかった.
終 りに,本研究を進めるにあた り,御指導を頂いた広島大学工学部余越正一郎教授,計器 類 の便宜を図って頂いた信州大学工学部富所五郎助教授に感謝致 します.
参 考 文 献
1) 日本の水とダム,日本ダム協会,1