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流域特性に基づく水質ハイドログラフの予測手法の提案 

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Academic year: 2021

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流域特性に基づく水質ハイドログラフの予測手法の提案 

Prediction method of water quality hydrograph based on basin characteristics

土木工学専攻 

43

号  劉  金双

Kinsou RYUU 

1.  はじめに 

湖沼,内湾などの閉鎖性水域では赤潮・アオコなどの富 栄養化問題が深刻化しており,水質改善が急がれている.

流入負荷量に関しては下水処理場や生活廃水のような点 源負荷の要因以上に加えて流域や田畑のような面源負荷 の要因を占めている.面源を起源とする流入負荷は降雨 イベント中に流入してくる.よって,出水時の河川水質濃 度変化を表す水質ハイドログラフの特性と汚濁負荷物質 の発生源としての流域特性の関係を把握することは非常 に重要である. 

水質濃度変化特性と汚濁物質の発生源としての流域特 性の関係を把握するため, 図-1に印旛沼へ流入する河 川(高崎川,手繰川,桑納川,神崎川,鹿島川,師戸川)を対 象として印旛沼における河川から流入する COD 比負荷量 と流出高の関係を示す.高崎川流域,鹿島川流域からの COD 比負荷量は他の流域に比べ低く,手繰川流域,桑納川 流域,神崎川流域では COD 比負荷量は高いことがわかる.

各流域の特性を考えると, 手繰川流域,桑納川流域,神崎 川流域では市街化率が高い.高崎川流域,鹿島川流域では 山地や畑が残っており相対的に市街化率が低い現状であ り降雨時の面源負荷量の割合が高いことが想像される.

このように流域特性に応じて出水時の物質流出特性が異 なることがわかる. 

従来から流入負荷量の算定に関して原単位を用いてい る.しかしながら,森林や農地などの非特定発生源から河 川への負荷量は時々刻々大きく変動し短時間スケールの 降雨などの影響は未だ定量的に評価できていないのが現 状である.よって,負荷量の算定や水質ハイドログラフを 予測する際に,物質発生項として析出・巻き上げ量を如 何に表現するかが重要である.  

本研究は水質濃度変化を表す水質ハイドログラフの形 成過程の解明を目的とし,印旛沼へ流入河川を対象とし,

出水時の水質 COD 濃度変化の特性を把握するとともに流 域特性に基づく水質ハイドログラフの予測手法の提案を

行う.研究全体のフローチャートを図-2 に示す. 

2.水質ハイドログラフの特性 

降雨時の河川水質濃度変化は初期高濃度型(ファース トフラッシュ型),後期高濃度型および流量希釈型の3種 類に分類できる.ここで,降雨時の実測濃度の水質ハイド ログラフを図 -3,4,5 に示している.図-3 は山梨県相川流

0 0.2 0.4 0.6

0.2 0.4 0.6 0.8 1

流出高[mm/h]

COD比負荷量[g/s/km2 ]

:桑納川流域

:桑納川流域

:神崎川流域

:師戸川流域

:手繰川流域

:高崎川流域

:鹿島川+高崎川流域

図-1 印旛沼へ流入するCODの比負荷量と流出高関係

河川・湖沼の水質環境

点源負荷量

・生活排水、下水処理場等 ・森林,田畑,牧場等 面源負荷量

外部負荷 内部負荷

・底泥の巻き上げ・溶出

水質ハイドログラフの形成過程の解明

ファーストフラッシュ型

後期高濃度型

流量希釈効果型

質量保存則に基づく水質濃度計算

流域特性(土壌・地形特性, 土地利用状況)に応じて変化 負荷量に関して

土壌・地形特性に基づく降雨流出計算手法 水質ハイドログラフの特性

発生項として巻き上げ・析出関数の逆推定

水質ハイドログラフの予測

出水時に汚濁物質が流出

下水処理普及率の向上および下水処 理方の高度化により改善傾向

・植物性プラントンの発生

水質濃度追跡手法

原単位法, L-Q式を用いた評価

図-2  研究全体の流れ

(2)

域(面積 8.4km

)における硝酸態窒素の実測濃度および 比負荷量を示している.総降雨量は 319.5mm である.図-3 を見ると,ピーク流出高より濃度のピークが早く現れて いることがわかり,水質濃度変化の特性タイプとしては 初期高濃度型の水質ハイドログラフである.図-4 につい ては筑波森林試験地(0.68km

)における硝酸態窒素の実 測濃度および比負荷量の時系列である.流出高の上昇に 伴い,濃度が希釈されピーク流出高の時に濃度は最小値を 取ることがわかる,その後流出高が減少するに伴い,濃度が 増加している.この水質ハイドログラフのタイプは流量希釈 型と後期高濃度型である.また,図-5 は印旛沼へ流入してい る高崎川(77.9km

)における実測濃度および比負荷量を 示している.流出高の増加に伴い,濃度は上昇しているこ とがわかる.ピーク降雨時に,COD 濃度は最大値となり, 流量減少に伴い濃度が減少していることがわかる.降雨 に伴う,流量と濃度の変化挙動は全く同じであり, 水質 濃度変化特性のタイプとしては同時上昇型である.  

3.単一斜面における降雨流出に伴う物質濃度変化の基 礎式の導出 

単一斜面における降雨流出に伴う河川水質濃度変化を 斜面流下方向流れを kinematic  wave として取り扱うと ともに物質濃度変化における質量保存則(1)式を用い,水 質濃度変化の基礎式を導出する.負荷量として濃度フラ ックスである(2)式を用いる.ここで負荷量の拡散項を簡 易化のため無視する. 

( ) f( )t x q t

h

c =

+

   (1)  

x k q q c qc

=

   (2) 

ここに,

c

:断面平均濃度[g/mm

],

r

:降雨強度 [mm/h],

qc

:負荷量[g/s]である,

f

:析出量[mg/lh],

h

:

水深[mm],

k

:拡散係数[h/mm]である.  

 析出量と水深の関係に対して,単位水深当たりの析出量

f0

(3)式を用い表現する. (2)式を(1)式に代入し,(3)式 を用い整理することにより,水質物質濃度変化の基礎式 (4)式を得る. 

h

f0 = f

    (3)     

h r f c x c t

c =

+

0

   (4)  この(4)式は単一斜面における降雨流出に伴う汚濁物質 濃度変化の基礎式である.(4)式をみると,物質濃度変化 は発生項である析出量と希釈効果である降雨と濃度と積 の関数との差により生じることがわかった.以上により, 単一斜面における降雨流出に伴う,物質濃度変化の基礎 式が質量保存則のみから理論的に導出された. 

4. 降雨流出過程と物質濃度変化過程の集中化 

直接流出は流出寄与域のみから生じると考えると,斜 面長は実地形上の斜面長に比べ十分短いと考えられる.こ のような仮定のもと変数分離形の近似式(5)が得られる. 

       

c

( )

x,txc*+c0

      (5)       

c*

:物理的な意味よりは計算の必要性から用いるものである .

c0

:上端境界濃度であり上端からの流入があるものとして 集中化際に考慮し,初期濃度と同一記号,同一の値を用いる.

斜面における初期濃度の空間分布の値は一様に取り扱う.

近似式(5)式を用い,単一斜面における降雨流出に伴う物質 濃度変化の基礎式(4)式を整理することにより,(4)式の偏微 分方程式から(6)式の常微分方程式(6)式を得る. 

⎟⎟

⎜⎜

+ +

= cqL

c q c r q L a f dt dc

*

* 0

*

*

*

* 0

* β 1

      (6) 

ここで,

a*

は流出パラメータであり,土壌地形特性から 決定される.ここに,

L

:斜面長である.(6)式は降雨流出

0 10 20 30 40 50 60 70

0 20 40 60

0 1 2 3

0 20 40 60 0

5 10

20

40 0

流出高 [mm/h]

時間 [h]

:流出高

:濃度 降雨強度 [mm/h]

NO3–N 濃度 [mg/l]

総降雨量:

319.5mm 1983.8.15〜18 山梨県相川流域(8.4km2)

:比負荷量

比負荷量 [g/s/km2]

図-3  降雨流出に伴うNO3̶N濃度の変化

(竹内ら1983)の実測を用い求めた負荷量

0 20 40 60

0 0.5 1 1.5

0 0 20 40 60

0.02 0.04 0.06 0.08

0 0.1 0.2 0.3

時間 [h]

NO 3–N 濃度[mg/l] 流出高[mm/h] 降雨[mm/h]

:流出高 :濃度

5 10 筑波森林試験地(0.68km2) 比負荷量[g/s/km2]

:比負荷量 総降雨量:54.4mm

図-4  降雨流出に伴うNO3̶N濃度の変化

(岡村ら1985)の実測を用い求めた負荷量

0 20 40 60 80

0 10 20 30

0 2 4 0

10

20

0 10 20 30

高崎川流域(面積77.9km2)

時間[h]

COD濃度mg/l 流出[mm/h]降雨強度〔mm/h

比負荷量[g/s/km2]

総降雨量[112mm]

:実測濃度[mg/l]

:比負荷量[g/s/km2]

:流出高[mm/h]

Case4(2005.8.24– 8.28)

図-5 降雨流出に伴うCOD濃度の変化 の実測を用い求めた負荷量

(3)

に伴う水質濃度変化を表現する集中定数系方程式であ る. 

5. 発生項としての析出・巻上げ量の逆推定 

発生項としての巻き上げ・析出関数

f0

を実測濃度,流量 及び降雨データから逆推定する手法を提案する.これに より,発生項として巻き上げ・析出と降雨,流量との関係 から析出量の水理・水文特性について述べている.以下に 理論的に述べる.降雨流出に伴う水質濃度変化の集中定 数方程式により,(7)式を得る.  

⎟⎟

⎜⎜

+ + +

= c q L

r c q c r q dt a L dc f

*

* 0

*

*

*

*

0 1

     (7)  この,(7)式により,発生項としての析出量を実測濃度, 流量及び降雨データから求めることが可能である. 

析出関数(7)式に関して,濃度の微分項はデータを数値 補間し計算する.また,降雨強度に関しては,実測降雨量 を用いた.使用した流量データに関しては,基底流量一定 値をカットし,流域面積で除し流出高として計算を行う. 

本論文において使用した水質濃度,降雨流量データは 千葉県において印旛沼へ流入している高崎川,手繰川を 対象とし,千葉県が現地観測から得た貴重なデータを使 用させていただいている. 

図-6,7,8 に出水時の COD 濃度を用い逆推定から求めた 析出量を示す.図-6,7 に示すよう高崎川流域において, 析出量は降雨に伴い発生していることがわかる.濃度と 流量は同時に上昇し,降雨ピーク時に析出量がピーク値 になることがわかる.しかし,流量ピーク付近で負の析出 量を示している.これは汚濁物質の河道部における沈降 などが考えられる.また,図-7 は同時上昇タイプであり,

析出量は降雨に伴い濃度増加にともない強い析出が生じ ている.以降の析出量は濃度減少に伴い減少し濃度ピー ク時において図-6 と同じような負の値が現れる.析出量 は降雨に伴い発生することがわかり,析出量の析出形態 は降雨形態,流域特性と関係があると考えられる.  

図 -8 に関しては手繰川流域(16.7km

)における,逆推定 から求めた析出量である.流量ピーク以前に濃度ピーク が現れており.水質ハイドログラフのタイプとしてはフ ァーストフラッシュ型である.流量増加以前に降雨に伴 い強い析出が生じ流量増加に伴い継続的に減少している ことがわかる.また,降雨に伴い析出量が継続的に生じて いることが見られるが,流量の希釈効果に伴い濃度が減 少していることがわかる. 

以上, 降雨流出に伴う析出・巻き上げ関数(6)式により, 実測濃度,流量,降雨データがあれば発生項としての析 出・巻き上げ量を逆推定から求めることができることを 示した. また,求めた析出量から発生項としての析出は降 雨に伴い生じていることがわかった. 

6. 水質ハイドログラフの予測手法 

上記の析出量逆推定の適用結果から,水質ハイドログ ラフの形成過程における物質発生項としての析出・巻上 げ関数

f0

は降雨に伴い発生することがわかった. 

図-9 に逆推定から求めた COD 析出量と降雨強度との関 係を示す.ここで,初期濃度の影響を無視するため,初期 濃度で除した析出量の値を用いている.析出量は降雨強 度と線形関係で表現でき(8)式を仮定する. 

)

0 (

0 c r t

f =α⋅ ⋅

        (8)  ここに,

α

:回帰係数であり.析出量と降雨強度の関

0 20 40 60 80

0 10 20 30

0 2 4 0

10

20

0 5 10 15

高崎川流域(面積77.9km2)

時間[h]

COD濃度〔mg/l〕 流出高[mm/h]降雨強度〔mm/h

析出量[mg/lh]

総降雨量[112mm]

:実測濃度[mg/l]

:析出量[mg/lh]

:流出高[mm/h]

Case4(2005.8.24– 8.28)

図-6  降雨流出に伴う実測COD濃度を 用い逆推定から求めた析出量

0 10 20 30

0 20 40

0 1 2 0 10

20

0 10 20 30

高崎川流域(面積77.9km2

時間[h]

COD濃度[mg/l] 流出高[mm/h]降雨強度[mm/h]

析出量[mg/lh]

総降雨量[42mm]

:流出高[mm/h]

:実測濃度[mg/l]

:析出量[mg/lh]

Case1 (2002.7.16– 7.17)

図 7  降雨流出に伴う実測COD濃度を用い逆推定 から求めた析出量

00 20 40 60

10 20

0 0.5 1 1.5

0

5

10

–10 –5 0 5 10

手繰川流域(面積16.7km2) COD濃度[mg/l]

流出高[mm/h] 降雨強度[mm/h]

時間[h]

Case1(2003.9.20〜9.22)

総降雨量:98mm

:流出高[mm/h]

:濃度[mg/l]

析出量[mg/lh]

:析出量[mg/lh]

図-8  降雨流出に伴う実測COD濃度を 用い逆推定から求めた析出量

(4)

係に対して回帰を行い決定する. 

 (8)式より,降雨強度と初期濃度がわかれば,降雨流出 に伴う発生項として巻き上げ・析出

f0

は簡易に表現する ことできる.これによって,水質ハイドログラフの予測計 算を行うことができる.ここで,(6),(8)式を用いて,高崎 川流域を対象として COD 濃度の再現計算を行った.その 結果を図-10 に示す.計算濃度と実測濃度はよく一致し ていることがわかり,濃度変化が良好に再現できている ことがわかる.しかし,濃度ピーク以降は実測の濃度は減 少していくが逆推定から計算した濃度の減少は大きく生 じていないことがわかる.これは逆推定から求めた析出 量が負の値を示しているのに対し,降雨強度の関数(8) 式で表現した場合に負の析出量を表現できていないため である.しかしながら,発生項としての析出・巻上げ量 を降雨及び初期濃度の関数として評価することにより,

水質ハイドログラフ予測の計算が容易に行える事を示し た. 

7.  河道部における水質濃度追跡手法: 

河道部における洪水波の追跡計算には連続式及び横流 入量を考慮した不定流の基本式(サン・ヴナン式)を用 いる. 連続式および運動量保存式を(9)式と(10)式にそれ ぞれ示す. 

x q Q t A+ =

  (9)  

43 0

2 2

= +

⎟⎟+

⎜⎜

+

AR Q Q g n x gA h x

A Q t Q

α

 (10)  ここに,

A

:通水断面積[m

2

],

Q

:流量[m

3

/s],

q

:側方 流入流量[m

2

/s],

α

:エネルギー補正係数(1.0),

h

:水 位[m],

g

:重力加速度,

n

:Manning の粗度係数,

R

:径

深[m]である. 河道部における物質濃度の追跡計算に関し ては(21)式に示すフィックの拡散方程式を用いる. 

( ) ( ) AKC C q

x AD C x x QC t

AC = +

+

2

   (11)  ここに,C:断面平均濃度,D:拡散係数[m

2

/s],K:線 形減衰係数[1/S],C

2

:生成/吸収濃度である. 

面源から発生する流量および水質濃度を上記河道部にお ける基本式に横流入量として線的に与えることにより河 道部における水質濃度の追跡計算が可能となる. 

8. まとめ 

本論文は比負荷と流出高の関係から水質ハイドログ ラフの特性を把握するとともに水質ハイドログラフの予 測手法を提案するものである.降雨流出に伴う単一斜面 における物質濃度変化の基礎式を質量保存則のみから導 出するとともに,発生項として析出・巻上げ関数を逆推定 から求める手法を提案し,流域特性に基づく水質ハイド ログラフの予測手法を提案した.水質ハイドログラフの 形成過程における発生項として巻き上げ・析出関数を降 雨強度と初期濃度の関係で表現することにより,水質ハ イログラフの予測が簡易に行えることを示した.  

 

参考文献: 

 

1)竹内邦良,坂本康,本郷善彦:土木学会水工学論文 集,Vol.27,pp.405〜413,1983.  

2)平田健正,村岡浩爾:山地小流域における溶存物質の降 雨 流 出 特 性 に つ い て , 土 木 学 会 水 工 学 論 文 集,Vol.30,pp.43-48,1986. 

3)呉修一,劉金双,江花亮,山田正:小流域における水質 ハイドログラフの形成過程および推定手法に関する研究,

土木学会水工学論文集,Vol.50,pp.59,2006.  

0 4 8 12 16

0 4 8 12 16

case1(総降雨量:42mm;初期濃度:6.2mg/) case2(総降雨量:72mm;初期濃度:13.8mg/) case3(総降雨量:77mm;初期濃度:6.3mg/l) case4(素行雨量:112mm;初期濃度:5.8mg/l)

析出量f0[mg/lh]/初期濃度C0[mg/l]

降雨強度r[mm/h]

f0=0.87*c0r(t)

図-9  降雨強度と析出量及び初期濃度の関係

0 10 20 30

0 20 40 60

0 1 2 0

10

20

0 20 40

高崎川流域(面積 77.9km2

時間[h]

COD濃度[mg/l] 流出高[mm/h]降雨強度[mm/h]

析出量[mg/lh]

総降雨量[42mm]

:流出高[mm/h]

:実測濃度[mg/l]

Case1 (2002.7.16– 7.17)

:計算濃度[mg/l]

図-10  降雨流出に伴う水質の予測

参照

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