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ラットの組織及び下肢骨格筋重量に対する脱トレー ニングの影響

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(1)

ラットの組織及び下肢骨格筋重量に対する脱トレー ニングの影響

著者 辻本 尚弥, 鈴木 英樹

雑誌名 久留米大学健康・スポーツ科学センター研究紀要

巻 16

ページ 17‑23

発行年 2008‑12‑01

URL http://hdl.handle.net/11316/237

(2)

ヒト及び動物では活動量や運動量の低下あるいは 不活動に対して、 各組織・臓器は量的および質的な 適応を示す。 骨格筋は、 運動によりその生理的機能 や組織重量が維持されているため、 運動の量および

質の変化に強く影響を受ける。 継続していたトレー ニングが身体的あるいは社会的な理由等で、 一時的 に休止あるいは中止することを脱トレーニングとい う。 脱トレーニングでは、 全身の諸組織にみられた トレーニングによる適応は、 トレーニング前の状態 に戻ることが知られている1)−4)

ラットの組織及び下肢骨格筋重量に対する 脱トレーニングの影響

辻 本 尚 弥1) 鈴 木 英 樹2)

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1) 久留米大学 健康・スポーツ科学センター 2) 愛知教育大学 保健体育

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(3)

骨格筋は、 水、 蛋白質、 脂質、 グリコーゲンなど 種々の物質より構成されている5)。 骨格筋の機能や 組織化学的特性及び構造の違いは、 筋を構成してい る種々の物質の変化を反映したものである5)−8)。 種々 の物質の全体の変化は組織重量の変化としてあらわ れる。 我々はこれまで骨格筋に注目し、 トレーニン グの効果および脱トレーニングの影響について、 実 験動物のラットを用いて検討してきた6)7)8)。 その 結果、 長期間の脱トレーニングにより、 前脛骨筋と 腓腹筋の筋重量および蛋白質量に対するトレーニン グの効果は消失したことを報告した8)

本研究では、 種々の物質の全体の変化を反映して いると考えられる組織重量、 特に骨格筋重量に注目 して、 トレーニングによる変化と、 その後の脱トレー ニングの影響について、 エネルギー源の貯蔵庫であ る脂肪組織と新たにいくつかの下肢筋について明確 にすることを目的とした。

実験動物として344系雌ラットを用い、 飼 育は室温22±1℃、 湿度60±5%、 昼夜逆転12時間 の明暗サイクルの環境下で行った。 飼料は固形飼料 2 (日本クレア株式会社) を用い、 飲水ともに24 時間自由摂取とした。 なお、 実験動物の取り扱いに ついては 「研究機関等における動物実験等の実施に 関する基本指針」9)および 「動物実験の適正な実施 に向けたガイドライン」10)に沿って行った。

持久性走トレーニングおよび脱トレーニングに対 する各組織重量の適応変化を観察するために、 23週 齢コントロール群 (2323

群)、 23週齢トレーニング群 (23 23群)、 77週齢コントロール群 (77 77群) および77週齢脱トレーニ ング群 (7777群) を 設けた。 23群と77群には13週齢から10週間の 持久性走トレーニングを実施した。 トレーニングは 11)の方法に順じて運動強度〜77% の走運動 (傾斜15%) を、 1日1回60分間、 週5日 の頻度で行った。 23群と23群のラットはトレー ニング期間終了時に、 77群と77群のラットは トレーニング期間終了から53週間 (約1年間) の脱 トレーニング期間後に、 麻酔下にて頚動脈より放血 し屠殺した。 その後、 心臓、 肝臓、 脂肪組織 (鼠径 部、 腹膜後方)、 ヒラメ筋、 足底筋、 腓腹筋 (内側 部、 外側部)、 前脛骨筋及び長指伸筋を摘出した。

摘出した各組織は、 結合組織を丁寧に取り除いたの ち重量を測定した。 なお、 脱トレーニング期間中、

ラットは飼育用ケージ内で、 特に制限のない通常飼 育を行ない、 餌および飲水は自由摂取とした。

測定により得られた値から平均と標準誤差を算出 した。 統計的処理は分散の検定には法を、

平均値の検定については一元配置分散分析法を用い た。 各群間の平均値の差の検定には統計量をt値と する 法を用いた12)。 なお、 全ての検定におい て有意水準は5% (!0"05) とした13)

表1には、 各群の最終体重、 心臓、 肝臓、 鼠径部 脂肪組織および腹膜後方脂肪組織の各組織重量を平 均値および標準偏差にて示した。 体重は23週齡の 久留米大学健康・スポーツ科学センター研究紀要 第16巻 第1号 2009

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群および群に比べて、 77週齡の群、 群が有 意に高値を示した。 心臓重量は23週齡では群に 比べて群で有意に高値を示し、 持久性走トレー ニングの効果がみられた。 また23週齡の群に比 べて、 77週齡の群、 群が有意に高値を示した。

肝臓重量は、 体重と同様に23週齡の群および 群に比べて、 77週齡の群、 群が有意に高値を 示した。 鼠径部および腹膜後方の脂肪組織重量は、

23週齡では群に比べて群で有意に低値を示し、

持久性走トレーニングの効果がみられた。 加齢の影 響をみると、 鼠径部脂肪組織重量では23週齡の 群および群に比べて、 77週齡の群、 群が有 意に高値を示した。 腹膜後方脂肪組織重量は、 23週 齡の群および群に比べて、 77週齡の群が有 意に高値を示した。 また両脂肪組織重量において脱 トレーニングの影響はみられなかった。

表2には、 各群の心臓、 肝臓、 鼠径部脂肪組織お

よび腹膜後方脂肪組織の相対的組織重量を平均値お よび標準偏差にて示した。 相対的心重量では、 23週 齡で群に比べて群が有意に高値を示し、 持久 性走トレーニングの効果がみられた。 また23週齡の 群および群に比べて、 77週齡の群、 群が 有意に低値を示した。 相対的な肝重量は各週齡およ び各群間に有意な差はみられなかった。 鼠径部およ び腹膜後方の両脂肪組織の相対的組織重量は、 持久 性走トレーニングの効果として、 23週齡で群に 比べて群が有意に低値を示した。 また77週齡の 両群で23週齡の群と比較して有意に高値を示 した。

表3には下肢骨格筋重量を平均値および標準偏差 にて示した。 前脛骨筋、 長指伸筋および腓腹筋外側 部の筋重量は23週齡では群に比べ群が有意に 高値を示した。 また23週齡の群および群に比 べて、 77週齡の群および群が有意に高値を

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示した。 ヒラメ筋重量は、 23週齡では群と 間に有意な差はみられなかった。 加齢による変化に ついては、 23週齡の群に比べて、 77週齡の両群 が有意に高値を示した。 足底筋重量は、 23週齡では、

ヒラメ筋重量と同様に群と群間に有意な差は みられなかった。 また23週齡の群および群に 比べて、 77週齡の群および群が有意に高値 を示した。 腓腹筋内側部は、 23週齡では群に比 群が有意に高値を示した。 各週齡間に有意な 差はみられなかった。

表4には下肢骨格筋の相対的筋重量を平均値およ び標準偏差にて示した。 23週齡では、 前脛骨筋、 足 底筋および腓腹筋内側部、 腓腹筋外側部において 群が群に比べて有意に高値を示した。 一方、 長 指伸筋およびヒラメ筋では、 23週齡の群と 間に有意な差はみられなかった。 加齢による変化に ついては、 前脛骨筋、 長指伸筋、 ヒラメ筋、 足底筋 および腓腹筋内側部の相対的筋重量は、 77週齡の 群および群が、 23週齡の群、 群に比べ有意 に低値を示した。 腓腹筋外側部の相対的筋重量では、

77週齡の群および群が、 23週齡の群に比 べ有意に高値を示した。

本研究では、 心臓、 肝臓、 脂肪組織および下肢骨 格筋でみられた持久性走トレーニングの効果が長期 間の脱トレーニングにより消失することが確認さ れた。

本研究では、 体重は23週齡群の両群に比べ、 77週

齡の両群で高値を示した。 さらに体重の増加に対し て脱トレーニングの影響はみられなかった。 ラット では多くの系統で、 発育期後の成熟期においても約 70から80週齡まで体重が増加する事が報告されてい 14)。 また脱トレーニング期間中の摂食量および摂 食効率は、 脱トレーニング初期の1週間では差がみ られるものの、 2週間後には対照群との間に差がみ られないことが報告されている15)。 これらのことか ら本研究では脱トレーニング期間中における体重の 増加は、 対照群と同様であったと考えられる。 心重 量および相対的心重量では、 加齢とトレーニングの 影響が見られたものの、 脱トレーニングの影響は見 られなかった。 心重量は持久的なトレーニングによ り肥大する事が知られており16−18)、 本研究も先行研 究と同様の結果であった。 また脱トレーニングにつ いては、 3〜6週間の脱トレーニングで、 トレーニ ングの効果は消失している事が報告されている19−21) 本研究では脱トレーニング期間が先行研究よりも長 期間である。 本研究の結果も先の研究と同様に、 脱 トレーニングによりトレーニングの効果が消失した ものと考えられる。 肝重量では心重量と同様に加齢 による影響が認められた。 しかし、 相対的肝重量に おいては、 加齢およびトレーニングの影響は見られ なかった。 肝臓重量は、 持久性走トレーニング群と 対照群では有意な差が見られなかったとする報告が ある7)。 重要な臓器である肝臓は、 その機能から考 えて、 各ライフステージやトレーニングなど生体が 置かれている状況においても、 体重に見合った組織 重量が維持されていると考えられる。 鼠径部および 久留米大学健康・スポーツ科学センター研究紀要 第16巻 第1号 2009

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腹膜後方の脂肪組織については、 心重量と同様に加 齢および持久性走トレーニングの影響がみられた。

22)は、 通常の飼料を与えてい るラットでは、 多くの脂肪細胞の増殖は離乳前およ び離乳後の早い時期に起こり、 成熟した脂肪細胞中 の脂肪量の増加は、 ラットが成熟しても続くことを 報告している。 また、 脱トレーニング期間中の摂食 量および摂食効率が対照群との間に差がみられない こと15)からも、 加齢による脂肪組織重量の変化は成 熟期以降の正常な増加であると考えられる。 ラット の体脂肪量については、 23) 24) よび 25)が、 持久性走トレーニングによ り、 対照群に比べてトレーニング群で有意に低値を 示す事を報告している。 また 25) 26)および 27)が、 持久性走トレー ニングにより脂肪組織重量は低値を示すことを報告 している。 本研究でも両脂肪組織重量が低値を示し た。 このことは持久性走トレーニング効果のひとつ と考えられる。 群では両脂肪組織重量の相対的 重量が、 同週齢の対照群との間に有意な差が認めら れなかった。 脂肪組織重量に対するトレーニングの 影響も、 その後の脱トレーニングにより消失したも のと考えられる。

骨格筋重量に関しては、 腓腹筋外側部を除く下肢 の筋で、 相対的筋重量において加齢に伴う変化がみ られた。 先行研究では、 約80週齢のラットで、 若齢 群に比べて筋重量には有意な差が認められないもの の、 相対的筋重量に差が認められると報告してい

7)28)。 本研究でも、 23週齡の群に比べ77週齡の

群で、 内側腓腹筋を除く他の下肢筋で筋重量が高 値を示した。 しかし、 相対的筋重量は低値を示し、

先行研究と同様であった。 先行研究では、 老化によ り体重の増加に見合うだけの筋重量の増加がみられ ないことを老化の始まりだととらえている16)28)。 本 研究に用いた実験動物も19ヶ月齢以上であり、 この 時期が老齢期初期にあたり、 脱トレーニング期間は 成熟から初老にいたる時期となる。 本研究の結果か ら成熟期初期にトレーニングを十分に行っても、 そ れ以後にトレーニングを休止あるいは中止した場合、

加齢による筋量低下は避けられないものと推察でき る。 腓腹筋について、 本研究と同系統のラットで、

5ヶ月齢に比べて25ヶ月齢の群で、 筋重量に有意な 差はみられないものの、 相対的筋重量において有意 な差がみられたとする報告がある29)。 本研究では腓 腹筋の内側部において、 23週齡の群に比べ77週

齡両群で有意に低値を示した。 しかし、 外側部にお いては内側部と異なり、 23週齡の群に比べ77週 齡の両群で有意に高値を示した。 外側部と内側部を 総計した腓腹筋として加齢の影響をみると、 腓腹筋 重量 (23群;1013±3123群;1108±46 77群;1469±7477群;1385±71) およ び相対的腓腹筋重量では (23群;537±1523 群;602±3077群;504±2677群;

493±15)、 23週齡のおよび群に比べ77週齡 の両群で有意な差がみられた。 本研究においても、

腓腹筋全体では、 先行研究29)と同様な変化を示して いる。 しかし、 腓腹筋の内側部と外側部の変化が異 なったことから、 腓腹筋における加齢による筋量の 減少には、 部位差の存在することが示された。 これ は腓腹筋の内側部と外側部の筋線維組成、 生理的機 能あるいは活動時の動員が異なることによるものと 考えられるが詳細は不明である。

本研究におけるトレーニングの効果について、 長 指伸筋とヒラメ筋を除く他の下肢筋で先行研究と同 様に相対的筋重量で効果がみられた6)−8)28)。 先行研 究では相対的筋重量において長指伸筋やヒラメ筋に ついても持久性走トレーニングの効果が観察されて いるが、 本研究では有意な差がみられなかった。 こ れは、 トレーニングの相対的な強度およびラットの 系や週齡の違いによると考えられるが、 詳細は不明 である。 また脱トレーニングの影響をみると、 全て の下肢筋において同週齡の対照群と有意な差が認め られず、 トレーニングの影響は消失したと考えられ る。 我々は先の報告で下肢骨格筋の蛋白濃度に対す る脱トレーニンクの影響は認められなかったことを 報告している8)。 脱トレーニング期間は飼育条件と しては、 体支持や適度な運動が行える穏やかな飼育 条件である。 トレーニングにより一時的に更新した 蛋白質や脂質、 炭水化物、 水分といった筋の構成物 質の代謝が、 穏やかな条件にみあった速度に落ちつ いたため、 それらの量に変化が見られず、 筋重量が 対照群と同程度になったと考えられる

本研究では、 長期間の脱トレーニング期間により、

心臓、 肝臓、 脂肪の各組織重量と下肢骨格筋重量に 対するトレーニングの効果は消失したと考えられた。

このことはトレーニングの継続が無い場合、 組織重 量特に骨格筋量の維持や加齢による減少の抑制は難 しいことを示している。

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! - "# - -2000'30(3)"145 54 5) 山口正弘, 加納和孝, 平田恒彦, 高坂健二. 運

動生化学. 1版. 京都:金芳堂&1990'53 68.

6) 辻本尚弥, 鈴木英樹, 春日規克, 石河利寛. 走 及びジャンプトレーニングによるラット骨格筋 ミオシン重鎖アイソフォーム組成の変化. 体力 科学 1995'44"97 104.

7) 辻本尚弥, 鈴木英樹, 春日規克. 走及びジャン プトレーニングの前脛骨筋に対する効果. 名古 屋経済大学・市屯学園短期大学 自然科学研究 会会誌 1994'29(1)"5 18.

8) 辻本尚弥, 鈴木英樹. ラット下肢骨格筋に対す る長期間の脱トレーニングの影響. 久留米大学 健康・スポーツ科学センター研究紀要 2006;

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!1960'57"318 28 13) 森敏昭, 吉田寿夫. 心理学のためのデータ解析

テクニカルブック. 1版. 京都:北大路書房, 1990.

14) 石橋正彦, 高橋寿太郎, 菅原七郎, 安田泰久.

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28) 辻本尚弥, 鈴木英樹, 春日規克. 老齢期ラット 下肢骨格筋における走及びジャンプトレーニン グの効果. 名古屋経済大学・市屯学園短期大学 自然科学研究会会誌 199530(1)9 21.

29) 辻本尚弥, 鈴木英樹, 小笠原仁美, 稲垣洋, 春 日規克. ラット腓腹筋外側部表層における筋線 維及び毛細血管の老化による変化. 名古屋経済 大学・市屯学園短期大学 自然科学研究会会誌 199631(1)1 13.

参照

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