博 士論 文 の要 旨お よび 博士 論 文審査 結 果 の要 旨
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(2) 2. 〈博 士 論 文 の要 旨 〉. 中国 にお け る社 会保 障制度 の変 遷. 孟. 1.は じめ に ̀社会 保 障'(S. ocialSecurity)と. の 萌 芽 は イギ リス の 女 王,エ の 集 大 成 の 立 法 は1601年. 、. い う言 葉 が は じめ て 使 われ たの は,1935. 年 の ア メ リ カの 社 会 保 障 法(SocialSecurityActof1935)に そ もそ も社 会 保 障 制 度 自体 は,19世. 久. おいてである。. 紀 末 に ヨー ロ ッパ に は じ ま っ た が,そ. リザ ベ ス1世 の 治 世 に制 定 され た救 貧 法 で,そ. に 公 布 さ れ て い る。 これ が 近 代 的 な社 会 保 障 制 度. の 出発 点 とされ る。 早 期 に社 会 保 険 制 度 を整 備 した国 は ドイ ッで あ る。 ドイ ッ は1883年. に疾 病 保 険 法 を 制 定,翌84年. に災 害 保 険 法,89年. 病 保 険 法 を制 定 し,こ れ らの 法 制 が1911年. に 老 齢 ・疾. に帝 国保 険 法 に統 合 され た 。 世. 界 で 最 初 の 社 会 保 険 体 系 を整 備 したの で あ る。 この よ う に して,社 会 保 険 制 度 は は じま っ た。 い まで は,社 会 保 険 制 度 は全 世 界160あ. ま りの 国 家 と地 域. に普 及 して い る。 河野 正輝 ほか編 『 社 会 保 障 論』 の 中 で示 さ れ た̀社 会 保 障'の 定 義 は, 「社 会 保 障 とは,1.個. 人 の 自助 努 力 の み で は対 応 が 困 難 な社 会 的 な リス クや. ニ ーズ ,あ るい は個 人 の 責 め に帰 せ られ ない(言 い 換 えれ ば社 会 的 な要 因 ・ 背 景 か ら生 ず る)リ ス ク や ニ ーズ が 発 生 した と きに,2.社 ん ず く 国 の 最 終 的 責 任)の し,4.社. 下 に,3.す. 会 の 責 任(な か. べ て の 国 民(社 会 構 成 員)に. 対. 会 の 一 員 と して の 尊 厳 を保 持 す る に足 る給 付(所 得 保 障,医 療 保. 障 お よ び福 祉 サ ー ビ ス保 障 の 給 付 等)を,5.社. 会 連 帯 の 考 え方 に基 づ く社. 会 保 険 料 と公 費(税)を. 民(社 会 構 成 員)の 権 利 と. 主 た る財 源 と して6.国.
(3) 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨3 して 保 障 しよ う とす る もの 」 とあ る。 ま た,1950年. の社 会 保 障 制 度 審 議 会 勧 告 で は,「 社 会 保 障 と は,疾 病,負. 傷,生 育,廃 疾,死 亡,老 齢. 失 業 な どそ の ほか 貧 困 の 原 因 に対 し,保 険 的. 方 法 あ るい は直 接 公 の 負 担 にお い て 経 済 保 障 の 途 を講 じ,生 活 貧 困 に陥 った もの に対 して は,国 家 扶 助 に よ って 最 低 限 度 の 生 活 を保 障 す る と共 に,公 衆 衛 生 及 び社 会 福 祉 の 向 上 を図 り,も って 全 て の 国 民 が 文 化 的 成 員 た る に値 す る生 活 を営 む こ とが 出来 る よ う にす る こ とをい う」 と定 義 して い る。 堀 勝 洋編 著 『 社 会 保 障論 』 の 中 で示 され た̀社 会 保 障. の 定 義 は,「 社 会. 保 障 とは,様 々 な事 故 に よ って 生 活 不 安 が 生 ず る こ とへ の 対 応 策 で あ る。 こ の 意 味 で,社 会 保 障 は 国民 生 活 の 安 定 を 目的 と して い る と もい う こ とが で き る」 とあ る。 社 会 保 障 制 度 は,社 会,経 済,文 化 お よ び政 治 と と もに,発 展 を続 けて い る。 社 会 進 歩 と文 明 の 深 化 と平 灰 を と もにす る。 現 代 の 社 会 保 障 制 度 は,複 雑 で,多 様 な特 徴 を帯 びて い る。 社 会 保 障 制 度 は,そ れ ぞ れ の 国 の 政 府 の 管 理 の 下 に,法 律 を制 定 し,国 民 の 所 得 の 再 分 配,基 本 的 に社 会 保 障 基 金 を設 置 し,一 時 的 も し くは永 久 的 に労 働 能 力 を失 っ た国 民 に対 して 基 本 的 な生 活 保 障 を提 供 して い る。 社 会 保 障 は社 会 の 安 定 と秩 序 維 持 を確 保 す る役 割 を に な って い る。 そ れ ぞ れ の 国の 社 会 保 障 制 度 の 具 体 的 な内 容 は,国 情 に よ りさ ま ざ ま に異 な って い る。 た とえ ば,日 本 の 社 会 保 障 制 度 の 型 は,基 本 的 に社 会 保 険 と公 的 扶 助 が 有 機 的 に結 合 した もの と言 われ て い る。 す な わ ち,社 会 保 険 を 中心 に据 え,こ れ を補 完 す る もの と して 資 力 調 査 に基 づ く扶 助 が 行 われ る とい う もの とな って い る。. 2.中 一方. 国の社会保障制度 ,中 国の 社 会 保 障 制 度 は,社 会 保 険. 社会救済. 社 会 福 祉,社 会 優 扶. の 四 つ の 制 度 を包 含 して い る。 社 会 保 険 制 度 は,国 家 が 法 律 を制 定 し,労 働 者 に対 して 所 得 の 中か ら定 め られ た資 金 を拠 出 させ る こ とに よ り基 金 を こ し.
(4) 4. らえ,老 齢,病 気,生 育,失 業 した場 合 に,基 金 か ら一 定 の 資 金 を給 付 し, 困 窮 を軽 減 緩 和 す る仕 組 み で あ る。 社 会 救 済 制 度 とは,自 然 災 害 な どの 原 因 で 被 災 した個 々の 社 会 構 成 員 を救 い,国 家 に よ る国 民 の 所 得 の 再 分 配 を通 じ て,最 低 の 生 活 レベ ル を維 持 確 保 す る仕 組 み で あ る。 社 会 福 祉 制 度 とは,国 家 が 法 律 を制 定 し,そ の 定 め に したが って,所 定 の 要 件 を満 た す 社 会 的 弱 者 に対 す る公 的 資 金 あ るい はサ ー ビス を提 供 す る仕 組 み で あ る。 社 会 優 扶 制 度 とい うの は,国 家 が 定 め た法 律 に したが い,国. に特 殊 な貢 献 を行 っ た軍 人 お. よ びそ の 家 族 を対 象 とす る仕 組 み で あ る。 現 在 の 中国 社 会 にお い て は,社 会 保 障 制 度 は,社 会 の 安 定 に対 して 欠 か せ な い制 度 と考 え られ て い る。 市 場 分 配 の不 完 全 性 を補 い,こ. の制度 を通 じ. て,社 会 的 な所 得 分 配 の 相 対 的 公 平 性 を維 持 す る こ とが で きる とされ る。 労 働 者 に対 して,安 心 で きる労 働 環 境 が 形 成 され て い る とい う こ とが で きる と 思 われ る。 ̀社会 保 障'と い う表 現 は. ,現 代 的 な名 称 で あ る。 社 会 保 障 制 度 が 近 代 に. な っ て か ら整 備 され た こ とか らす れ ば 当 然 の こ と で あ るが,中 は,̀社 会 保 障'と. 国の古代 に. い う名 称 の 制 度 は存 在 して い な か っ た。 しか し,歴 史 的. 視 角 か ら見 る と,具 体 の 機 能 と して は,中 国 の 歴 史 上 存 在 して きた̀救 災, 荒 政,扶 助 等'の 仕 組 み と制 度 は,現 実 的 に は社 会 保 障 の 機 能 を発 揮 した も の と考 え られ る。 なぜ な ら,「社 会 福 祉 制 度 とは,日 常 生 活 上 の 一 定 の不 便 ・ 困 難 に さ らされ た さ ま ざ ま な人 々 に対 して,主. と して 人 的 な生 活 支 援 サ ー ビ. ス を提 供 す る制 度 で あ る」 とい う こ とに想 到 す れ ば. う え にあ げ た 中国 古 代. か らの 仕 組 み は ま さ にそ の よ う な役 割 を果 た して きたか らで あ る。 現 代 の 社 会 福 祉 の 分 野 に お い て は,児 童,老. 人,身 体 障 害 者,知. 的 障害. 者,精 神 障 害 者,母 子 家 庭 とい っ た対 象 者 ご とに個 別 の 制 度 が 存 在 し,対 象 者 の 具 体 的 な定 義 の 仕 方 も,そ れ ぞ れ の 法 律 に よ り異 な って い るが,中 国 古 代 か らの̀扶 助. の 仕 組 み はそ の 一 部 をす で に担 って い た もの と考 え る こ と. が で きる よ う に思 われ る。 社 会 保 険 制 度 は,国 民 生 活 全 体 に とって 欠 か せ ない 基 盤 的 制 度 で あ り,安.
(5) 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨5 全 で 安 心 な社 会 とす る ため 社 会 保 障 制 度 全 体 の 中で も きわめ て 重 要 な制 度 で あ る。 中 国 は,間 違 い な く農 業 大 国 で,全 人 口 の8割. は農 民 で あ る 。 しか. し,長 い 間の 「城 郷 経 済 二 元 化 」(す な わ ち都 市 部 と農村 部 を分 離 す る 政 策) の も とで,農 村 部 は都 市 部 と分 離 され,社 会 保 険 制 度 は農 民 を カバ ー して い なか っ た。 そ れ は これ まで 常 に社 会 的 不 安 定 の 大 きな要 因で あ っ た。 社 会 的 安 定 を実 現 す る に は,国 民 全 体 が 平 穏 に一 定 水 準 の 生 活 が で きる こ とが 必 要 で あ る。 農 民 の 権 利 利 益 を保 護 し,農 民 を も含 む 中国 の 全 国 民 を カバ ー す る 社 会 保 険 制 度 が 必 要 で あ る。 最 近,中 国 経 済 は急 速 な発 展 をみ たが,国 民 生 活 の セ イ フ テ ィ ネ ッ トで あ る社 会 保 険 制 度 が 十 分 に整 わ ない こ とが い まの 中 国社 会 に とって は大 きな欠 陥 とな って い る。 私 の 日本 滞 在 中,知. り合 い の 留 学 生 の 中 に も 日本 の 国 民 健 康 保 険 を受 給 し. た もの が い る。 この 日本 の 現 状 と比 較 して,現 在 の 中国 に は,病 気 に な って も病 院 にい け ない 低 所 得 者 が 多 数 存 在 して い る。 残 念 な こ とで あ るが,そ の 状 況 は 中 国全 土 にお い て 普 通 に見 られ る。 外 国 人 を含 み,日 本 に住 んで い る 住 民 の 全 体 を幅 広 くカバ ー して い る 日本 の 国 民 健 康 保 険 制 度 の 便 益 を知 った と き,中 国の 社 会 保 険 制 度 はあ ま りに も整 備 され て い ない と言 わ ざ る を え な い○ 社 会 保 険 制 度 は,国 民 の 老 後 の 生 活 を安 定 させ,傷 病 時 に も安 心 して 生 活 が で きる ため の 制 度 で あ る。 要 す る に,国 民 の 幸 福 な生 活 に欠 か せ ない 制 度 で あ る。 中 国の 国民,特. に農 民 が 幸 せ に生 活 で きる よ う にす る に は,中 国 の. 全 国民 を カバ ーす る社 会 保 険 制 度 の 整 備 が 喫 緊 の 課 題 で あ る。 この よ う な問 題 意 識 を もって,私. は 中 国の 社 会 保 険 制 度 に関 す る研 究 に取 り組 む こ とに し. た。 歴 史 的 に み る と,1949年. の 建 国 以 来60数 年 を 経 た 中 国 の 社 会 保 険 制 度. は,建 国初 期 の 都 市 部 の 労 働 者 を対 象 と した労 働 保 険 制 度 か ら,改 革 開 放 後 の 都 市 部 の 住 民 全 体 を対 象 と した社 会 保 険 制 度 に転 換 しつ つ あ り,か つ て と は大 き く変 化 した。 そ して 新 型 農 村 養 老 年 金 保 険 制 度 と新 型 農 村 合 作 医 療 保 険 制 度 が 実 施 に移 され,農 村 社 会 保 険 制 度 も格 段 に充 実 した。 改 革 開 放 以 来.
(6) 6. 30数 年 を経 て,中 国 の社 会 保 険 制 度 は 一 定 の 進 歩 を 果 た した が,い. まだ不. 十 分 な とこ ろが 少 な くない 。 現 在 の 中国 の 社 会 保 険 制 度 は,改 革 以 前 の 労 働 保 険 制 度 よ り大 き く進 歩 したが,社 会 保 険 制 度 の 完 備 に至 る まで に は ま だ相 当 の 時 間が か か る と考 え られ て い る。. 3.本. 論 文 の 構 成 と内 容. 本 論 文 は,中 国の 古 代 の 救 済 お よ び福 祉 事 業 の 歴 史 的 研 究 を は じめ,建 国 以 後 の 労 働 保 険 制 度 か ら現 在 の 一 定 水 準 に達 した社 会 保 険 制 度 に至 る まで, 中 国の 古 代 か ら現 在 まで の 社 会 保 障 に関 す る制 度 につ い て 紹 介,検 討 す る。 そ して,そ れ を踏 ま えて,今 後 の 中国 の 社 会 保 障 制 度 を展 望 す る こ とが 本 論 文 の 目的 で あ る。 こ の テ ー マ につ い て は,張. 紀 溝 「中 国 にお け る社 会 保 障. 思 想 の 生 成 と 歴 史 的 考 察 」 『城 西 経 済 学 会 誌 』29巻1号,pp.109‑131 (2001)な. どい くつ か の 先 行 研 究 は 存 在 す るが,本 論 文 で は,古 代 か ら現 代. まで の 救 済,福 祉 事 業 の 変 遷 を鳥 鰍 す る だ けで な く,政 治 行 政 過 程 や 社 会 的 関 係 を強 く意 識 して 論 じよ う と した。 本 論 文 で は,中 国 にお け る前 近 代 的 な 社 会 保 障 的 な制 度 を振 り返 り,さ らに は近 代 的 な社 会 保 険 制 度 の 整 備 発 展 に つ い て 述 べ た。 第1章 で は,中 国 にお け る災 害 対 応 救 済 と福 祉 事 業 の 歴 史 的 研 究 の 成 果 の 一 端 を紹 介 す る。 具 体 的 に は,中 国 にお け る社 会 保 障 制 度 の 先 駆 的 思 想 を紹 介 し,西 周 時 代 か ら清 代 に至 る まで の 救 済 制 度 と福 祉 事 業 を振 り返 る。 第2 章 で は,情 報 コ ミュニ ケ ー シ ョンの 発 達 と社 会 救 済 の 効 果 ・効 率 の 向 上 につ い て 論 じる。 す な わ ち,中 国 古 代 の 情 報 伝 達 手 段,郵 政 制 度 お よ び救 済 と福 祉 と情 報 コ ミュニ ケ ー シ ョンの 歴 史 的 か か わ りを検 討 す る。 第3章 で は,中 国の 近 代 にお い て 発 達 をみ た社 会 保 障 制 度 につ い て 詳 細 に論 じよ う と した 。 1840年 の アヘ ン戦 争 以 後,西 欧 文 化 の 中 国 流 入 に あ わ せ て,そ の 福 祉 事 業 の 思 想 も中 国 に普 及 して い っ た。 西 欧 福 祉 思 想 を受 容 す る過 程 で,中 国 の 伝 統 的 な福 祉 事 業 思 想 が 変 化 す る こ とに な っ た。 中国 の 文 化 と西 洋 文 化 が 混 合 し,新 しい 中 国近 代 の 福 祉 事 業 の 思 想 が 形 成 され た。 第4章 で は,建 国 後 の.
(7) 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨. 7. 社 会 保 障 制 度 にお け る構造 的 な都 市 部 と農 村 部 の 分 離 制 度 とそ の 問 題 点 につ い て 論 じた 。建 国 後 の 中 国 で は経 済 的 ・歴 史 的 ・文 化 的 ・政 策 的 な 背 景 か ら,都 市 部 と農 村 部 とい う典 型 的 な二 元 的 経 済 が 形 成 され た。 そ して,都 市 部 と農 村 部 との 問で は,経 済 発 展 段 階 ・所 得 水 準 ・産 業 構 造 な ど,様 々 な面 にお い て 大 きな差 異,格 差 が 存 在 した。 こ こで は,踏 み 込 んで 中国 の 生 活 保 障 の あ り方 お よ び,現 代 中 国の 社 会 保 障 制 度 整 備 に及 ぼ した背 景 要 因 を も検 討 した。 新 中 国 の 建 国 以 来,都 市 部 と農 村 部 が 対 立 す る 二 元 化 社 会 の な か で,な か ば必 然 的 に形 成 され た二 元 的 社 会 保 険 制 度 で あ る。 第5章 で は,都 市 部 を対 象 とす る社 会 保 険 制 度 の 沿 革 につ い て 述 べ た。 第6章 で は,中 国 の 社 会 保 険 制 度 の 改 革 につ い て 検 討 した。 改 革 以 前 の 都 市 部 にお け る企 業 の 従 業 員 を対 象 とす る労 働 保 険 制 度 はそ の 原 資 の す べ て を国 営 企 業 が 拠 出 して い たが,1978年. に国 営 企 業 の 負 担 を減 少 す る 目的 か ら社 会 保 険 制 度 へ の転 換. を図 っ た。 本 章 で は,都 市 部 にお け る養 老 年 金 保 険 制 度 の 改 革,医 療 保 険 制 度 の 改 革,失 業 保 険 制 度 の 改 革,工 傷(労 災)保 険 制 度 の 改 革,生 育 保 険 制 度 の 改 革,及. び農 村 部 にお け る新 型 農 村 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 と新 型 農 村 合. 作 医 療 制 度 につ い て 詳 細 に検 討 した。 第7章 で は,中 国 の 社 会 保 険 制 度 の 現 状 と問 題 点,課 題 を論 じた。 中 国 は,改 革 開 放 以 来,企 業 保 険 制 度 か ら社 会 保 険 制 度 に転 換 した。 中 国の 社 会 保 険 制 度 は初 期 か ら改 革 発 展 段 階 に進 展 し つ つ あ る。 特 に,農 村 部 の 新 型 農 村 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 と新 型 農 村 合 作 医 療 保 険 制 度 は,一 部 の 農 村 住 民 の 養 老 お よ び医 療 に関 す る問 題 を解 決 しよ う と した。 社 会 保 険 制 度 の 制 度 的 意 義 は,国 民 の 所 得 の 再 分 配 に よ って 貧 富 の 格 差 を 縮 小 し,社 会 の 公 平 を実 現 す る こ と,そ して 社 会 経 済 の 発 展 を促 進 す る こ と にあ る。 中 国の 国情 に基 づ く都 市 部 と農 村 部 とを二 分 す る独 自の 社 会 保 険 制 度 は,中 国社 会 の 不 安 定 さの 大 きな要 因 とな って い る。 そ れ を一 定 程 度 解 消 し社 会 を安 定 化 す る に は,中 国の 経 済 を継 続 発 展 させ つ つ,全 国 統 一 的 な社 会 保 険 制 度 を確 立 す る こ とが 急 務 で あ る よ う に 思 え る 。本 論 文 の 結 び と し て,全 体 を振 り返 っ た後,今 後 の 研 究 課 題 を指 摘 す る。.
(8) 8. 2011年7月1日. に 施 行 され た 「中 華 人 民 共 和 国 社 会 保 険 法 」 は,こ れ ま. で の 制 度 的 課 題 の 一 部 につ い て 解 決 を図 ろ う と した もの で あ る。 例 え ば. 当. 該 保 険 に加 入 して い る農 民 工 が 職 場 と住 所 を移 転 した と き,保 険 契 約 の 継 続 性 が 確 保 され,15年. 間 の 保 険 期 間 の 連 続 性 が 維 持 さ れ る 。 そ して,こ の 社. 会 保 険 法 に よ り,す べ て の 農 村 部 の 住 民 を カバ ーす る新 型 農 村 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 が で きた こ とに よ り,農 村 部 の す べ て の 住 民 は老 後 生 活 の 不 安 が 取 り除 か れ る こ とに な っ た。 ま た,都 市 部 の 労 働 者 以 外 の 無 職 の 都 市 部(鎮 が 含 まれ て い る)住 民 を対 象 とす る城 鎮 住 民 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 が で き,都 市 部 の 住 民 も安 心 して 老 後 生 活 を迎 え る こ とが で きる。 今 後,城 鎮 住 民 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 と農 村 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 とを統 合 す る方 向 で 政 策 的 努 力 が な され れ ば. 全 国 統 一 な 城 郷 一 元 化 の 社 会 保 険 制 度 が で き あ が り,衡. 平 ・平 等 な保 険 の 仕 組 み とな ろ う。 中 国の 社 会 保 障 体 系 を完 備 す る に は,中 国 政 府 は以 下 の 諸 課 題 に取 組 む必 要 が あ る。 1,制. 度 を拡 充 し,す べ て の 国 民 を カバ ーす る社 会 保 障 体 系 とす る こ と。. 全 国民 を遺 漏 な くカバ ーす る社 会 保 障 体 系 が 必 要 で あ る。 総 合 的 ・包 括 的 な社 会 救 済 制 度 を完 備 し,貧 困 にあ え ぐ国 民 を救 済 す る。 医 療 保 障 体 系 を完 備 し,国 民 が"看 病 貴,看 病 難'の 問 題 を解 決 す る。 養 老 年 金 保 険 制 度 を完 備 し,全 国民 の 老 後 の 生 活 を保 障 す る。 2,安. 定 した社 会 保 障 体 系 を整 え,発 展 させ る こ と。 社 会 保 障 体 系 を完 備 す る と と もに,社 会 保 障 に関 す る法 律 の さ らな る. 整 備 も必 要 と考 え る。 特 に,社 会 保 険 と社 会 救 助 制 度 に関 す る法 律 の 拡 充 が 求 め られ る。 3,社. 会 保 障 制 度 の 衡 平 性 を重 視 す る こ と。 遺 漏 の ない 社 会 保 障 体 系 の も とで,政 府 が 城 郷 間,地 域 間,組 織 間 な. どの 格 差 と不 公 平 を縮 小 す る ため に,全 国 民 は平 等 に社 会 保 障 制 度 を享 受 す る こ とが で きる よ う に,さ 4,社. らな る政 府 の 努 力 が 必 要 で あ る。. 会 保 障 制 度 が 保 障 す る水 準 を高 め れ ば,や が て 中国 は素 晴 ら しい 固.
(9) 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨9 有 の 福 祉 社 会 に な る。 政 府 は国 民 の 生 活 の 品 質 と生 活 の 安 全 を重 視 し,社 会 主 義 社 会 にふ さ わ しい 総 体 と して 豊 か な福 祉 社 会 を実 現 す る こ とが 必 要 で あ る と考 え ら れ る。 最 近 の 中 国の 著 しい 経 済 発 展 に伴 い,国 民 か らの 社 会 保 障 の 要 求 水 準 も高 くな っ た。 中 国政 府 は,積 極 的 に社 会 保 障 制 度 の レベ ルの 向 上 を図 り,国 民 の 安 定 した生 活 を維 持 増 進 しな けれ ば な らず,国 民 の 生 活 の 品 質 を高 め る こ とこそ 中 国政 府 の 責 任 と考 え られ る。 経 済 発 展 に伴 って 財 政 力 が 強 ま っ た政 府 は,全 国 一 元 的 な社 会 保 険 制 度 の 実 現 を 目指 せ る よ う に な る と考 え られ る。 そ して,全. 国民 が 平 等 に社 会 保 険 制 度 に加 入 す る こ とが 出来 る よ う に な. れ ば,中 国 は調 和 社 会 を実 現 で きるで あ ろ う。. 3.本. 論 文 の 構 成 と内 容. 中 国 にお い て,こ の よ う な長 期 的 な社 会 保 障 制 度 を拡 充 整 備 しよ う とす る 立 場 を とれ ば,城 郷 二 元 的 な性 質 を もつ 中国 の 社 会 保 険 制 度 の 一 元 化 の 実 現 が 課 題 とな り,ま だ相 当 に長 い 時 間 を要 す る と考 え られ る。 しか し,直 ち に は有 効 な仕 組 み を構築 す る こ とは困 難 だ と して も,社 会 保 険 制 度 の 一 元 化 の 実 現 に向 けて,ま 必 要 が あ る。. たそ れ を見 通 し,社 会 保 険 制 度 を少 しず つ 着 実 に改 善 す る.
(10) 10. 〈博 士 論 文 審 査 結 果 の 要 旨 〉. 学位 「 博士(経 営 学)」 申請 論文 論 文 提 出 者:孟 論 文 題. 審査 報 告書. 冬. 目:中 国 にお け る社 会 保 障 制 度 の 変 遷. 学 位 申請 の 種 類. 甲(課 程 博 士,経 営 学). 審 査 報 告 書 目次 1.は. じめ に. 2。 論 文 の 目的 と研 究 方 法 3.論. 文 の 構 成 と講 評. 4.結. 1.は. 論. じめ に. 孟 冬 氏 は,2003(平 後,2007(平. 成19)年. 成15)年. に 来 日 し,金 沢 星 陵 大 学 経 済 学 部 で 学 ん だ. に桃 山学 院大 学 経 営 学 研 究 科 博 士 前 期 課 程 日 中 ビ ジ. ネス コ ース に入 学,大 連 に 日本 語 学 校 を設 置 経 営 す る とい う ビ ジ ネス プ ラ ン に 関 し実 証 研 究 を試 み た 。 そ して,さ (平 成21)年. ら に研 究 を 継 続 し よ う と して2009. に博 士 後 期 課 程 に進 学 を果 た し,日 中 ビジ ネ ス コ ー ス で の 指 導. 教 授 で あ り,先 年 まで 本 学 経 営 学 研 究 科 長 を務 め られ た武 田久 義 先 生 の も と で,中. 国の 社 会 保 障 制 度 の 研 究 に取 り組 んで こ られ た。. 中 国 の社 会 保 障 制 度 の 研 究 に 向 か っ た 契 機 は,孟 冬 氏 が 来 日 して 間 も な く,彼 女 の 知 り合 い の 留 学 生 が 病 を得 て,日 本 の 国 民 健 康 保 険 が 利 用 され, 運 良 く健 康 に復 した事 件 にあ る との こ とで あ る。 留 学 生 で も国 民 健 康 保 険 制 度 が 享 受 で きる 日本 の 現 状 と比 較 した と き,現 在 の 中国 で は病 気 に な って も 病 院 にい け ない 低 所 得 者 が 多 数 存 在 して い る とい う状 況 が あ り,中 国 の 社 会 保 障 制 度 の 在 るべ き姿 を考 え よ う と し,武 田先 生 の も とで 本 格 的 に研 究 活 動 に取 り組 む こ とを決 意 され た との こ とで あ る。.
(11) 11. 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨. とこ ろが,保 険 論 や リス ク管 理 を守 備 範 囲 とされ る武 田先 生 が,†専士 後 期 課 程 在 籍 の 途 中で,諸 般 の 事 情 か ら退 職 され た。 研 究 指 導 の 体 制 が 十 分 に整 わ ない なか で の 研 究 の 継 続 を余 儀 な くされ た孟 冬 氏 は,2012(平. 成24)年2. 月 に ひ と まず こ の提 出 論 文 の基 礎 と な る 単 位 修 得 認 定 申 請 論 文 を提 出 され た。 単 位 修 得 認 定 申請 論 文 で は,中 華 人 民 共 和 国 成 立 以 後 の 中国 の 社 会 保 障 制 度 につ い て 概 観 され たの で あ るが,表 層 的 な分 析 に と どま って い た た め, 歴 史 文 化 的,思 想 的 淵 源 に立 ち返 り,現 在 の 中国 の 社 会 保 障 制 度 を捉 えか え す 方 向 で,そ の 後 の1年 この1年. 間,研 究 を継 続 して きた。. 間 にお い て,学 内 紀 要 の ひ とつ で あ る 「環 太 平 洋 圏 経 営 研 究14. 号 」(2013年3月. 刊 行 予 定)掲 載 の 「中 国 にお け る災 害 対 応 救 済 と福 祉 事 業. の 歴 史 的 研 究 」 を ま と め,ま. た2012年(平. 成24年)11月24日(土),東. 邦 大 学 大 森 キ ャ ンパ ス で 開催 され た 情 報 メ デ ィ ア学 会 第14回 研 究 会 に お い て 「中 国社 会 にお け る 災 害 対 応 に か か る 諸 事 業 に 関 す る情 報 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン につ い て の 歴 史 的 検 討 」 と題 す る研 究 報 告 を行 っ た。 学 位 請 求 論 文 提 出 に向 けて の 通 常 の 研 究 成 果 を 目に見 え る形 で 残 した う えで,よ. うや くこの. た び本 論 文 の 完 成 をみ た。. 2.論. 文 の 目的 と研 究 方 法. 本 論 文 の 目的 は,現 在 の 中 国の 社 会 保 障 制 度 の 思 想 的 基 盤 とな る 中国 古 代 の 救 済 お よ び福 祉 事 業 につ い て の 検 討 ・分 析 か ら説 き起 こ し,建 国 以 後 西 欧 に範 を と り整 備 され た労 働 保 険 制 度,さ. らに は最 近 の 中華 人 民 共 和 国 社 会 保. 険 法 に至 る まで,歴 史 的 文 脈 の なか で 中国 の 社 会 保 障 制 度 の 発 展 と課 題 を明 らか に し,今 後 の 中 国の 社 会 保 障 制 度 を展 望 す る こ とで あ る。 この テー マ に 関 連 して は,思 想 的 起 源 を 訪 ね る張 紀 樽 「中 国 にお け る社 会 保 障 思想 の 生 成 と歴 史 的 考 察 」 『 城 西 経 済 学 会 誌 』29巻1号,pp.109‑131(2001)な. ど. い くつ か の 先 行 研 究 は存 在 す るが,政 治 行 政 過 程 や 社 会 的 関 係 を意 識 して 論 じた点 や 古 代 か ら現 代 まで 鳥 鰍 した とこ ろ な どに独 自性 を見 て 取 る こ とが で きる。.
(12) 12. 本 論 文 は文 献 研 究 に終 始 して い るが,論 文 末 尾 にあ げ られ た主 要 参 考 文 献 の リス トに も明 らか な よ う に,日 本 語 で 書 か れ た この 論 文 の 日本 語 の 概 念 名 称,専. 門用 語 修 得 の ため に も読 まれ た翻 訳 を含 む 日本 語 文 献 の ほか,中 国 の. 文 化 ・制 度 を対 象 と して い る こ とか ら当 然 中国 語 の 関 係 文 献 を も渉 猟 しな け れ ば な らない わ けで あ るが,ご. く最 近 中国 で 刊 行 され た 関 係 文 献 に まで 検 討. が 及 んで い る こ とは評 価 され るべ き もの と思 われ る。. 3.論. 文 の 構 成 と講 評. 「第1章. 中国 にお け る災 害 対 応 救 済 と福 祉 事 業 の 歴 史 的 研 究 」 にお い て. は,二 次 的 資 料 を用 い て,西 周 時 代 か ら清 代 に至 る ま で,10の. 時 代 を画 し,. そ れ ぞ れ の 時 代 の 救 済 制 度 と福 祉 事 業 をて い ね い に振 り返 り,中 国 にお け る 社 会 保 障 制 度 の 先 駆 的 思 想 を詳 細 に紹 介 し,検 討 を加 えて い る。 先 に言 及 し た情 報 メデ ィ ア学 会 で の 発 表 とそ こで の 質 疑 応 答 に触 発 され て 書 い た 「第2 章. 社 会 救 済 にお け る 情 報 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン につ い て の歴 史 的検 討 」 で. は,中 国古 代 の 道 路 網 整 備,郵 政 制 度 お よ び電 信 ・電 話 に は じま る科 学 技 術 の 革 命 的 進 歩 な ど,情 報 コ ミュニ ケ ー シ ョン手 段 と技 術 の 発 達 と中国 固 有 の もの か ら近 代 西 欧 モ デ ル へ と変 貌 した社 会 救 済 の 効 果 ・効 率 の 向 上 につ い て 論 じて い る。 「第3章. 中 国近 代 の 社 会 保 障 制 度 」 にお い て は,中 国 の 近 代 にお い て 発. 達 を み た社 会 保 障 制 度 につ い て 詳細 に論 じ よ う とす る。1840年 の アヘ ン戦 争 以 後,西 欧 文 化 の 中 国流 入 にあ わせ て,そ の 福 祉 事 業 の 思 想 も中国 に普 及 して い っ た。 西 欧 福 祉 思 想 を受 容 す る過 程 で,中 国 の 伝 統 的 な福 祉 事 業 思 想 が 変 化 す る こ とに な っ た。 中国 の 文 化 と西 洋 文 化 が 混 合 し,新 しい 中国 近 代 の 福 祉 事 業 の 思 想 が 形 成 され た。 「第4章. 建 国 後 の社 会 保 障 制 度 に お け る. 都 市 部 と農 村 部 の 分 離 制 度 」 で は,中 華 人 民 共 和 国 建 国 後 の 社 会 保 障 制 度 に お け る構 造 的 な都 市 部 と農 村 部 の 分 離 制 度 とそ の 問 題 点 に つ い て 論 じて い る。 建 国後 の 中 国で は経 済 的 ・歴 史 的 ・文 化 的 ・政 策 的 な背 景 か ら,都 市 部 と農 村 部 とい う典 型 的 な二 元 化 経 済 が 形 成 さ れ,都 市 部 と農 村 部 と の 問 で.
(13) 13. 博 士 論文 の要 旨お よび博 士 論文 審査 結果 の要 旨. は,経 済 発 展 段 階 ・所 得 水 準 ・産 業 構 造 な ど,様 々 な 面 に お い て大 き な 差 異,格 差 が 存 在 した 。 こ こ で は,踏 み 込 ん で 中 国 の 生 活 保 障 の あ り方 お よ び,現 代 中 国の 社 会 保 障 制 度 整 備 に及 ぼ した背 景 要 因 を も検 討 して い る。 新 中 国の 建 国以 来,都 市 部 と農 村 部 が 対 立 す る二 元 化 社 会 の なか で,な か ば必 然 的 に二 元 的 社 会 保 険 制 度 が 形 成 され た。 「第5章 革 」 で は,主. 中 国社 会 保 険 制 度 の 沿. と して 都 市 部 を対 象 とす る労 働 保 険 条 例,養 老 年 金 制 度,医 療. 保 険 制 度 な どの 整 備 につ い て 述 べ て い る。 「第6章. 中 国 の社 会 保 険 制 度 の 改 革 」 に お い て は,1970年. 代 以 降の鄭. 小 平 の 指 導 体 制 の 下 で 展 開 され た改 革 開 放 期 にお け る 中国 の 社 会 保 険 制 度 の 改 革 につ い て 検 討 して い る。 改 革 以 前 の 都 市 部 にお け る企 業 の 従 業 員 を対 象 とす る労 働 保 険 制 度 はそ の 原 資 の す べ て を国 営 企 業 が 拠 出 して い た が,1978 年 に 国有 企 業 の 負 担 を減 少 す る 目的 か ら社 会 保 険 制 度 へ の 転 換 を図 った 。 本 章 で は,都 市 部 にお け る養 老 年 金 保 険 制 度 の 改 革,医 療 保 険 制 度 の 改 革,失 業 保 険 制 度 の 改 革,工 傷(労 災)保 険 制 度 の 改 革,生 育 保 険 制 度 の 改 革,お よ び農 村 部 にお け る新 型 農 村 社 会 養 老 年 金 保 険 制 度 と新 型 農 村 合 作 医 療 制 度 につ い て 詳 細 に検 討 して い る。 「第7章. 中 国の 社 会 保 険 制 度 の 現 状 」 で は,中 国 の 社 会 保 険 制 度 の 現 状. と問 題 点,課 題 を論 じて い る。 中国 は,改 革 開 放 以 来,企 業 保 険 制 度 か ら社 会 保 険 制 度 に転 換 した。2010年 に制 定 され 翌2011年. に施 行 さ れ た 「中 華 人. 民 共 和 国社 会 保 険 法 」 は,こ れ まで の 集 大 成 と もい え る画 期 的 な内 容 を持 つ もの で あ っ た。 そ の 制 度 の 内 容 につ い て 丁 寧 に検 討 を加 えて い る。. 以 上 の よ う な構成 と内 容 を持 つ 本 論 文 につ き,講 評 を加 え る こ とにす る。 社 会 保 険 制 度 の 制 度 的 意 義 は,国 民 の 所 得 の 再 分 配 に よ って 貧 富 の 格 差 を縮 小 し,社 会 の 公 平 を実 現 す る こ と,そ して 社 会 経 済 の 発 展 を促 進 す る こ とに あ る。 中 国の 国情 に基 づ く都 市 部 と農 村 部 とを二 分 す る独 自の 社 会 保 険 制 度 は,中 国社 会 の 不 安 定 さの 大 きな要 因 とな って い る。 そ れ を一 定 程 度 解 消 し 社 会 を安 定 化 す る に は,中 国 の 経 済 を継 続 発 展 させ つ つ,全 国 統 一 的 な社 会.
(14) 14. 保 険 制 度 を確 立 す る こ とが 急 務 で あ る よ う に思 え る。 本 論 文 は,詳 細 な歴 史 的 検 討 を加 え,制 度 的 分 析 を試 み た後 に,そ の よ う な妥 当 な結 論 を提 示 して い る。 歴 史 的 検 討 を意 識 す るあ ま り制 度 的 検 討,と. くに現 在 の 中国 の 社 会 保 障 制. 度 全 体 の 法 的 理 解 と行 政 的 実 務 の 詳 細 に は十 分 に踏 み 込 め て い る とは言 え な い 。 ま た,時 代 を前 後 して 繰 り返 し同 じ表 現 が 頻 繁 に 出て くる とい う難 点 も 小 さ な もの とはい え ない 。 検 討 ・分 析 も皮 相 的 で,深 み や 鋭 さ に欠 け る う ら み はあ る。 しか し,研 究 指 導 体 制 が 必 ず し も十 全 な もの で なか っ た なか で, 現 代 の 中 国社 会 が 抱 え る主 要 な課 題 の ひ とつ で あ る社 会 保 障 制 度 の 改 善 に向 けて の 真 摯 な検 討 が な され た こ とは大 い に評 価 で きる。. 4.結. 論. 本 提 出論 文 に 関 し,桃 山 学 院 大 学 学 位 規 程(平 成4年11月6日 認)24条. に定 め る 口頭 試 問 は2013年2月12日(火)に. 教授会 承. 審査 委員 の全員 の. 出席 の も とに実 施 した。 そ こで,本 論 文 は,上 に もふ れ た通 り,少 な くない 難 点 を抱 えて は い る が,本 学 大 学 院 経 営 学 研 究 科 の 博 士 学 位 申 請 論 文 と し て,合 格 水 準 に達 して い る と認 定 す る こ とが で きる と判 断 した。. 2013(平. 成25)年2月18日. 一 和 栄. 順 秀 大. 審 査 委 員(副 査). 本 木. 審 査 委 員(副 査). 山 今 朴. 審 査 委 員(主 査).
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