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富島言語宗 1 1 : 0 0 3   ・ L 7 1 9   2  7 

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(1)

昭 和

54

3

月 発 行

富島言語宗 1 1 : 0 0 3   L 7 1 9  

V N U

R A D I A T I O N  C H E M I S T R Y    

日 本 放 射 線 化 学 会 JAPANESE  SOCIETY  OF RADIATION CHEMISTRY 

(2)

放射線化学と新しい研究の芽

化学反応,特に気相の素反応過程の研究における新し い傾向として,分子やイオンの高い励起状態の研究と,

s t a t e   t o   s t a t e   c h e m i s t r y

文は

s t a t es e l e c t e d  c h e m i s t r y  

と呼ばれる単一の電子,振動,および回転状態から同じ

く単一の生成状態への微視的な反応過程の検討が関心を 集めている.前者は,高エネルギー粒子の衝突や極端紫 外光の照射によってイオン化ボテンレャル付近,または 以上の高いエネルギー状態へ励起された分子やイオンの エネルギー準位と分子構造に関する実験,理論の両面か らの研究であり,このような高励起状態を経由する反応 機構の研究へとつながる.これらの研究は,分光学的方 法を始めとする新しい物理的測定法や高真空中のビーム 衝突などの実験技術を駆使して分子論的な立場から化学 反応の本質を見極めようとするものであり,反応論,分 子構造論の分野で活躍する若い世代の関心を集めてお

り,今後の発展が予想される分野である.

液相あるいは固相反応における反応中間体の研究はま た,反応機作や分子の構造,状態とその化学反応性の関 連を理解するために重要である.その方法も凍結安定化 法 ( M a t r i x i s o l a t i o n   method )

からパルス技術と高速

測定技術の組合せによる液相中の短寿命活性種の測定へ と発展してきた.気相における遊離基やイオンの構造と エネルギー準位の精密な分光学的研究もまたこの分野に

おける新しい話題である.

これらの化学反応論における新しい分野は,しかしな

がら 1""'2を除き,放射線化学においてなじみ深いも

のであり,放射線化学において芽をふき,枝葉を伸ばし ながら順調に発展してきたものが多いことは,御承知の 通りである.

更に観点を変えれば,新しい研究方法が放射線化学に

おける基礎,並びに応用研究に進取的に取り入れられ,

新しい研究対象に恵まれて,方法自身の特長を大いに発 揮しながらもその適用限界に対する厳しい検討を受け,

*大阪大学理学部化学教室教授

田 敬 治*

この限界を乗り越える努力が続けられてきた例も多い.

身近な 1

として ESR 法を挙げることを許していただ ければ,その化学への応用は被照射高分子中の遊離基,

結晶中の放射線損傷の観測を 1

つの大きな入口として始

められたといっても過言ではなく

,以後,有機結晶中の

遊離基,溶媒和電子,イオンラジカルなど多くの興味深 い対象に恵まれて順調な発展を逐げてきた. 筆 者 が 現 在,深い関心を抱いている高い時間分解能をもっ ESR

分光法を用いた液相中の短寿命活性種,並びにその磁気

的 励 起 状 態 の 研 究 ふ 既 に 1 9 6 4 年に Fessen d en 教授に より液相中の炭化水素の放射線分解についてその端緒が 聞かれたものである.

以上のように,放射線化学は絶えず新しい研究対象を それ自体の内部に見出すと共に,物理学,化学,生物学 などの広い分野に互る研究者の関心を集めることにより このような新しい研究を発展させる培地となり,更にこ うして育てられた新しい研究の方法論を関連分野へと送 り出してきたと考えられる.筆者の所属する大阪大学理 学部の反応物理化学講座は,我国における放射線化学の 育成に大きく貢献された故千谷利三先生によって創始さ れた.更にその伝統は広田鋼蔵先生や故飯塚義助先生に よって受継がれ,放射線化学においても多くの研究成果 を生み出してきた

.現在は,大変残念な次第であるが,

放射線源,研究装置の不備と研究者の不足に阻まれ,放 射線化学における研究活動は徴々たるものに過ぎない.

しかしながら,筆者の興味は以上のような理由により常 に放射線化学における研究の発展に惹きつけられてお り,それらから多くを学ぶことができたと考えている.

最近のエネルギー問題に関する議論の一部において聞

かれる「原子力離れ」の声などによって放射線化学がい

ささかもその未来に磐りをみせることなく,つねに若い

研究者の興味と関心を集めながら新しい世代へと受け継

がれ,発展を続けていくことを心から念願している.

(3)

〔展望〕

G 値 の 理 論 計 算

1 .   はじめに

水の放射線分解を議論すると き , 我々はしば し ばつ ぎ のような表し方をする.

H20

州ド

H 2 0 ++ e ‑

'¥¥ H2

0 *  H2 0 ++ H 2 0 一→ HaO " ' + OH

H20* ー → H+OH

e ‑ 一 一 →. e a q  

ここで,H2 0 * は水分子の励起状態,e a q ーは水和電子を 示す.しかし,この反応機構は単純化されすぎている.

例え ば , H 2 0 + には何種類もあるはずである . なぜな ら,H20分子中には電子が 1 0 コあり , それぞれ固有の 結合エネルギーを持っている .高エネ ル ギ ー の 放 射 線 ならば,どの電子でもたたき出す可能性があるか ら , H

2

0 + には何種類かのものが生成 し ているはずである.

表 1 に示したのは1 0 コの電子が所属する分子軌道とそ 表 1 水分子中の電子の結合エネルギー

( 1 1 )   e V 

軌 道 気 相 固相 C 77K ) * >

1  b

1 2 . 6   7 . 6   3  a l  1 4 .   7  9 . 8   1  b 2  1 8 . 4   1 4 . 5   2  a l   3 2 . 2   2 6 . 3   1  a l   5 3 9 . 7   5 3 3  

* >  X PS スペクトルから推定1>

の結合エネルギーである.この値を使って我々が最近開 発した近似計算法で計算すると 6 0Co ‑ r 線分解の 場合 表 2 のような値が得られる.すなわち放出される電子が 内側の軌道からのものも少なくないことがわかる .表 2 には示してないが,励起状態についても いろいろの状態 が出てくる.また, もっとこまかなことを言えば,放出 される電子のエネルギーにもスペク ト ルがあるはずであ

T h e o r e t i c a l  C a l c u l a t i o n  o f  G‑v a l u e 

* Shin SATO 

東京工業大学理学部助教授

佐 藤 伸*

表 2 6 0Co ‑ r 線に よる気相水分子の イオン化のG値

軌道 G i  予想される分解過程 1  b

H 2 0 ++ e ‑ 3  a l   0 . 8 3  

1  b 2  H++ OH +e ‑ 2  a l  0 . 2 1   H'  +OH+ +e ‑ * > 

1  a l  0 . 0 0 6 2   Au g e r

果 H 2 0 2 +

紳 )

0 . 1 1   H ++ OH + 

* >  H' はホットな水素原子を表わす.

材〉二重イオン化の和.

る.こんなこまかなことを実験的に示すのは,いまのと ころ不可能ではあるけれども ,初期過程を論じようとす る限り 避けられない.

また,上の反応機構では飛び出した電子がすべて水和 電子になるかのよ うに書いてあるけれども ,ほんとうに そうなのか.水和電子として観測される前に中和してし まうものはないのか. もしあるとすれば大体どの程度な のか.

Dr y e l e c t r onの実験値と我々の計算値の比較から ,

約30~ぢがその値になると

々は考えている.この値を推

算するには, r 線照射で水中に生成するいわゆるスパー の詳細,すなわち, スパーの大きさ,スパー中のイオン 対の数などを知る必要がある.このような値を厳密に求 めようとしても現状ではほとんど望みはないが,おおよ そのところは計算できると,私は思っている.以下,そ れらについて述べて行くけれども ,その途中で,いまま で余り論じられていない問題,たとえば, α 線分解と T 線分解の初期イオン化収率の違いとか ,N e g a t i v e  J e s s e  e f f e c t などについても,ある程度議論ができる ので,そ れらについても触れて行きたい.

(経歴)東京工業大学卒特別研究生 (専門〉放射線化学 ( 連絡先〉東京工業大学理学部 ( 趣 味〉 囲

将棋

‑ 2 ‑

(4)

前もってお断りしておくけれども ,私は以下述べる議 0 . 4   論が最終的なものだとは毛頭思っていない.どの部分を

とっても問題は山積している.著者の願いは,この小論 文が新しい研究を触発することである.

2 .   減速スペクトル

放射線化学の初期過程を論じる上で, もっ とも重要な 概念と思われるのが二次電子の減速スペクトルである.

減速スペクトルは要約すれば,つぎのように言ってよい だろう .

放射線が物質中に入り込むとイオン化や励起が起る.

イオン化で生成 し た電子は, もしエネルギーが大きけれ ばさらにイオン化や励起を起す,いわゆる雪崩現象であ る .そこで,立場を変えて分子の方から衝突してくる電 子を考えてみる.いろいろのエネルギーの電子が, もし かすると同じ電子が何回も衝突してくるかも知れない,

しかし分子の方ではその区別はつかない.減速スペクト ルとは,衝突してくる電子のエネルギースペクドルであ る.それでは二次電子の減速スペク ト ルを具体的に数字 に表すにはどうしたらよいか.この章では,そこまでの 手続き と我々の用いた近似法について述べる .

2 ‑1  r 線照射によって生成するコンブトン電子 T 線と物質との相互作用のうち,放射線化学で重要な のはコンプトン効果である .何故なら我々は T 線といえ ば大体 6 0 Co ‑ r線を考え,被照射物質には原子番号の若 い原子から成る分子を考えるからである

2)

他の相互作 用は,今は考えないこと にする .

コンプトン効果については有名な Ni s h i n a ‑ K l e i n の式 があるが,我々に必要なのはコンプトン 電子のエネルギ 一分布である .計算には Ni s h i n a ‑ K l e i n の式から導かれ る次式が使える

3)

da(T) 二 竺三 r1 + ~

dT α h ν

( h ν ‑T ) h ν 7

{ 1 一 α( h : ‑T ) } つ ( 1 )

σ ( T ) は T というエネルギーを持つコンブトン電子の生 成断面積, h J . l は T 線のエネルギー, α =h ν / mc

2

,  r o

e

2

/m c

2

,  e は単位電荷,mは電子質量 c は光速.

60C Oー

γ 線は1 . 1 7 と1 . 33Me Vの 2 つの線から成ってい るから,これを代入して計算するとコンプトン電子のエ ネルギ一分布 f ( T ) は図 l のようになる .

もちろんこの計算では T 線は物質と l 回だけ事件を起 し ,あとは突き抜けてしまうと仮定している . もし 7 線 が何回も系内で事件を起すとする と, r 線の減速 スペ ク

ト ルを考察しなくてはならない.

0 . 5  1 . 0  T (MeV ) 

6 0 Co ‑ r 線によるコンプトン電子のエ ネルギ一分布

4)

実験で使われている ωCo ‑ r 線のスペクトルは自己吸 収や容器との相互作用によ って変形されているので, コ

ンプトン電子のスペクトルも図 1とは少し違うはずであ る. しかし,あとでも述べるように, r 線のエネルギ ー が大きいので, G 値の計算にはその影響は出て来ない.

2 ‑ 2  電子と物質との相互作用

高速電子と物質との相互作用については,井口道生氏 の秀れた総説がある

5)

その中にも述べられているよう に,衝突する電子のエネルギーが大きいとき ( 1keV以 上〉には B e t h e の式がイオン化の断面積を正確に表す.

しかしエネルギーが下ってくると近似は急速に悪くな り ,やっと分子をイオン化できる程度のエネルギーのと ころでは,全く使えなくなる.低速電子と分子の相互作 用を表す正確な式というのは,今のところ存在しない.

衝突物理の人達が昔から苦労されていると ころである.

そこで一番正確と思われる方法は, イオン化や励起の 断面積の実験値をできるだけ沢山集め,できれば簡単な 近似関数で表すことである.事実アンゴ ンヌの人達や高 空大気中の電離現象などを議論している Green のク・ルー プは,この方法で断面積を表そうとして いる. しかし放 射線化学で対象になるような分子についての測定値が集 るには,まだ何年かかるかわからない.我々はいつまで も待 っているわけにはいかない.

じつは高速電子の衝突の理論には Beth e の式が導かれ る以前から,古典的に取り扱う方法がある .いわゆる二 体衝突理論 ( B i n a r y ‑Encou n  t e r ‑ C o l l  i s i o n ‑ Theo r y ) で

その始まりは R u t h e r f o r dの式である

6)

-.~4

σ E ( T )

二三L

‑L 

T  E2  ( 2 )  エネルギー T の高速電子が静止 している電子の近傍を 通過 してEというエネルギー損失をする断面積である.

この式を実験値に合うように補正したのが T h om a s の式 である

7)

‑ 3

(5)

べると余り長く なるので,こ こでははぷか せ て いただ く . くわし くは原論文を参照 し ていただ きたい.

こ うして全断面積が求められれば,あとは対象とする 分子の中の電子すべてについて集計するだけである.図 2 は H

2

分子についてのイオン化の全断面積 Q( T) につ いての我々の計算と実験値とを比較したものである.よ い一致など とはとても言えないが,きればとい っ て簡単 に改善できるとも思えない.

2 ‑3  電子の 減速

最初に発生する電子のエネルギースペ ク トル f( T) と 電子によるイオン化や励起の断面積 Q( T) がわかったの だから,あとはいろいろの過程の起る確率を Q( T ) から 算出して,いわゆる MonteC a r l oの計算を行い集計す ればよいはずである . しかしイオン化ごとに新しい電子 が生れるので,実際に Mo n t eC a r l oで計算するのは大 変である .

このよ うな計算をもっ と巧妙にやる方法が実は昔から ある.井口氏らが Fo w l e r 方程式と呼んでいるのが,そ の方法に使われている式である

10)

前に名前の出てきた Gre en のグループも使っている

1

1 l 我々もヘリウム気体 のW値の計算に使ったことがある

12)

しかし,次に述べ る減速ス ペク トルを仲立ちにする方がはるかに見通しが よい.実は F o w l e r 方程式と減速スペクトルとは同じ内 容を持っ てい ることは,井口氏が証明している

13)

きていま高速で飛び込んできた電子の減速の様子を考 えてみる. 図 3 にみるように,飛び込んできた一代目の 電子はイオン化や励起を起しながらだんだん減速する.

σE ,  dir ーが T + I t + E i  (~+竺E1 ¥  E 2 '  3E3j 

1 iと E i はそれぞれ衝突される電子の結合エネノレギー と 運動エネルギーである .こ の式の導出はち ょっと面倒で あるが,Vriensの総説にきれいにまとめられている

8)

我々が使った断面積の式は,大体 Vriens の示 し ている 式から選んだ ものである. ( 3 ) 式には衝突される電子の個 性,すなわち結合エネルギーや運動エネルギーが入って いるので分子の性質が反映する .

ところで ( 3 ) 式では,衝突 してくる電子と衝突される電 子が交換して しまうような衝突は考えられていない.そ の断面積はち ょっと考察を必要とするがつ ぎのようにか ける.

( 3 )  

σ E , ex c

πe4

,... 

~

‑T+ I t + E i  1  ( T +1 1‑ E ) 2  

+  ̲ ̲ ̲  4E~~ I 3 ( T +l t ‑ E ) 3  J  ( 4 : )  

プ「 τ「↓プç~↓717「

2 jJJ

L ト

結局 .T というエネルギーの電子がエネルギー E を失う 断面積は ( 3 ) と(引の和である.

σE( T )  =σE ,  d i r +σE , e x c   ( 5 )  σE( T ) はいわゆる徴分断面積なので E の適当な範囲 について積分 し なくてはならない.たとえば E の値が 1 i より大きいところはすべてイオン化とみなすことがで きる.また衝突される分子の励起エネルギー E s から 1 i までの積分は励起状態の発生に対応する . もし個々の励 起状態を区別したければ,積分範囲を ES 1

r‑..J 

E S 2 ,  ••• E sn 

r‑..J 

E s ,

n+l

などとわけることになる .また ,三重項の励起状 態は,電子の交換によってのみ生成すると考えられるか ら,そのときに積分の対象となるのは σE , ex c のみであ る.そのときの積分の下限は最低三重項状態の励起エネ ルギ ‑ E t である.また,分子のイオン 化エネルギー I

(最外殻の軌道にある電子の結合エネルギー〉と 1 i の間 への励起は超励起状態の発生に当る .大体このように し てイオン化や励起の全断面積が計算される.積分の範囲 の取り方や一重項励起と 三重項励起の算出方法など,ち ょっと統計的な考察も必要なのだけれども, くわしく述

高エネルギー電子の減速

図の中で*で示したのは励起を表したつもりである. 1  と書いてあ るのが一代目という意味である .ただし,こ こではイオン化が起ってもう一つ別の電子が飛び出した とき ,どちらの電子がもとの電子か区別がつかないが,

我々 は常にエネルギーの大きい方を先代とみなして計算 する .図 3 に示したように,二代目 .三代目と, 電子の エネ ルギーが分子のイオン化エネルギーより小さくなる まで続く.それでは何代目位まで考えたらよいかという と,それは計算しようとする中身によって違うが. G 値 の計算ではのちに示すように,五代目位まで考えれば十

図 3

2 . 0 

1 . 5 

1 . 0 

0 . 5  

(

EU 2 1 0

) (

) ‑ d

T  ( e V )  

水素分子のイオン化断面積,測定値 と 計算値的

‑ 4

0  1 0  

図 2

(6)

分なようである.

いま一代目だけの電子を考えることにし,その一代田 の電子が分子と衝突するときのエネルギ一分布をわ (T) とする .すると,この Y l ( T)というエネ ルギ一分布は,

Nを単位体積中の分子数, n l を i軌道中の電子数とする と,次の式を満足する はずである .

Y l   ( T )  f:k 仇 E ) dE

J ;m ( T + E ) k ( T + E ,  E ) dE + f ( T ) 

(

6 )   k (T, E)= N~σ I(T, E ) n i  

というのは, k(T ,  E ) はTというエネルギーの電子がこ の系の中で E というエネルギーを失う割合に相当するの で,左辺は T ' " ' ‑ ' T +L l Tのエネルギ一範囲から出ていく 電子数になり,右辺はその範囲に高いエネルギーの方か ら入ってくる電子数になっている.すなわち ( 6 ) 式は一種 の流れの式である.f  ( T ) ははじめから T ' " ' ‑ ' T + ム T の範 囲にある個数である.f  ( T ) が電子数なのだから Y 1 ( T ) の単位は C 長さ/エ ネルギ ‑ J という変な単位になる . 私が減速スペクトルという考え方に出くわしたとき,ど うもピンと来なかったのは,この単位のせいであったよ うに思う.

ところで, ( 6 ) 式かられ ( T ) を求めるわけだけれども , その計算がまた面倒である .Spencerと F anoの論文に は計算法が書いてあるが,具体例が示されているわけで はないので大変わかりにくい

14)

ところがこれをうまく すり抜ける方法がある.それが連続減速近似 ( Continu o u s  Slowin g  Down Approximation ) 略して CSDA という近似法である

15)

いま図 4 のように, r 線照射下にある系内に半径 R の 球を考え, RはTというエネルギーを持つ電子の飛程と

図 4 Y 

( T) の計算

する.そして球の中心に断面積 ~S ,奥行 dx の小さな

筒があり,この筒に電子が入るときは,必ずム S の面に 直角に入ってくると考えることにする.電子が飛んでく る方向に向って小さな筒がくるくる廻っていると考えれ ばよいかも知れない.さて球面上の点 P における一代目 の電子の減速スペクトルを Yl(T) とする. ところがR が飛程なのだから P 点を球面に直角に外から入って来た 電子だけがちょうど小さな筒に到達して筒の中で止るは ずである.点 P からムSを見込む立体角を.6..0.とすれば 筒の中に止る電子数Aはつぎのように書ける.

A = 4 π R 2 y 1( T ) dT

・必Q

Y l ( T ) dT.AS

ところで, Aは T 線照射によって

~S.dx の筒からこの

球の外へ拠り出される電子数 f: max f

dT S d x

に等しいはずである.さもなければ電子がどこかに溜っ てしまうことになる.二式を等しいとおけば次式が得ら れる .

Y l ( T ) dT

f : m a x f ( T ) dT ・ d x

ところが dT / d xというのはTというエネルギーの電子 がこの系の中の単位飛行距離ごとに失うエネルギー,す なわち阻止能 S(T) である.結局.次式を得ることにな る

Y1(T) 二一」一一 r ~maxf (T) dT ( 7

S  ( T)  J 

阻止能 S ( T ) は,上述した断面積を使って次のように書 ける.

m

N{ 平 n if ア 日 目

( f : s E σE dE +÷J: : E σ

c 叫} ( 8 )  

n は最外殻中の電子数.第一項がイオン化. 第二項が E s 以上の一重項と三重項の励起,第三項が E t ' " ' ‑ ' E sの聞の 三重項励起,%がついているのは電子交換のうち半分だ けが三重項励起になると考えているためである .阻止能 の中に電子が分子の振動や回転を励起することによるエ ネルギー損失が入っていないではないかと思われるかも 知れないが,振動や回転励起の断面積は電子的なものに 較べてはるかに小 さく 1 0 0 分の l 程度である .

(7)式がほんとうに

(

6 ) 式に代りうるものか,私も考えて みたが,正直なところ明快ではない.それで.前に述べ たように, ( 7 ) 式を使わないですむ F owler 方程式を用い て計算し,比較してみたのである .G 値の計算結果はヘ リウムについてだけだけれども,数必以内で一致した.

ただし, Fowler方程式を使う方は,計算時聞が1 0 倍以 上かかっている .

(7)

こうして一代目の電子の減速スペクトル Yl(T) が求 まったことにすると,二代田三代目は比較的容易に計算 できる.式を簡単にするために徴分断面積をちょっと変 形してある

16)

r

< T m a x ‑ J D r  Tmax  Y2(T)  = , . .   ~:',2jnll

S  (T)  1‑'J  T  J  2 T 2 + I i   Yl(T)σ(T

l, 

T 2)d T

1

dT 2  ( 9 )  

1¥.T 

r 士 < T m a x ‑ 3

T1】 p告

<Tmax‑T

1)

Y3(T) = 

,.. 

~~, 2 j

lli 

S  (T)l"'J T  J  2 T 2 + T I   Y2(T )σ( Tl ,  T2 ) dT

1

dT 2  U O )   ただし,

σ(T

1

,  T2)

π e 4 . ~ ~,~ ~

Tl  +II+Ei 

(T2+Ii)2  4 E 1   3(T2+Ii)3 ( T

1

‑T 2 )  2 ・

4E

3(T

‑T2) 3 1  

積分領域には気をつけないと変なことになる.かくして 減速スペクトル全体は,

Y  ( T)  = 

2j

Ym(T ) 

ロ1

( 1

2) 

‑t﹀ωEQ)

. . ‑ . . .   1 0 ‑

〉、

1 0 ‑

1 0   1 げ 1 0

3

1 0

l O S

T eV 

図 5 60Co‑r 線照射下における気相の 水の中の二次電子の減速スペクトル

ということになる.図 5 は気相の水に 6 0 C O ‑ γ 線を照射 したときの y(T) である.

こまかいところで少し違うが,これと似た計算方法で 二次電子のエネルギ一分布を水について計算した例が,

東工大の織田先生の古い仕事の中にある.その論文では 高いエネルギーの電子の分布だけが示されている.断面 積には Betheの式が用いられている

17)

3 .   G 値 の 計 算

y(T) が求まってしまえば,あとは求めようとする生 成物の生成全断面積 Qs(T) を掛けて T について積分し てやればよい.

Ns

NPif:7uy(T)Qs(T 〉 dT

N s は生成物の分子数 T s は生成物 S をつくるのに必要 U l   3

な衝突電子が持つべき最低のエネルギーである . G 値は コンプトン電子のエネルギーはすべて吸収されるとして 次のようにかける.

Gs=l 州 ィ ; m u T m d T

上述してきたようにして, Thomas の式と連続減速近 似を使い, ヘリウムのイオン化と励起のG値をはじめて 計算したのは原研の大野新一氏である 18 】その仕事に刺 激されて我々も G値の計算を手掛けることになったのだ が,実際に計算機のプログラムをやったのは岡崎清君で ある.私はプログラムのことはよくわからない.この小 論の付録に, 100keV の電子照射による水のイオン化と 励起(一重項と三重項)の G値を計算するプログラムを 少しコメントを加えてまとめておいたので, もし興味を 持たれる人があったら試してみていただきたい.

3  ‑ 1  Platzman 図形

間式をち ょっと変形すると次式になる.

Ns=NPif:7

Ty ( T )  Qs  ( T )  d l 汀 ( 1 5 )

縦軸を Ty(T)Qs(T) とし,横軸を lnT でプロットする と,どの程度のエネルギーの電子が生成物 S をどの位作 るかを示すことができる . 図 6 は , 100keV の電子をヘ

リウムに照射したときのプロットである.

イオン化と一重項および三重項励起が示されている.

3 つの曲線が横軸とつくる面積がそれぞれの G値に比例 する.他の分子についても大体同じような図がえられる が , 電子に種類があるので,図も複雑になる.

ヘリウムについて,これと同じような図を初めて描い たのは Platzman である

19)

ただし彼の論文の中には,

計算方法は全く示されていない.噂によると,彼はほと んど f r e e hand で書いたそうである .

‑ 6  ‑

(8)

g

、 I

triptet 

e  1 5  

,唱

ご 1 0

... 、

』 ラ 号、

o  1 0   1 0

1 t r   1 0

T(e V) 

図 6 1 0 0   kevの電子照射によるヘリウ ムのイ オン化と励起

図 6 と y(T) の性質からわかるように,イオン化や一 重項励起の大体半分は Yl(T) によるものであり,あと 半分が Y2(T) 以下による.一方,考えてみれば当り前 かも知れないが,三重項励起は Yl (T) によってはほと んど起らない.

3‑2  電子線照射と G値

T 線照射でははじめにコンプトン電子が発生し,物質 へのエネルギー供給は,この電子を通して起るのだから T 線照射 と 電子線照射では,透過性のことだけは違うが エネルギー供給の仕方は全く同じであると考えられてき た.事実,実験的にも差はみられていない.しかし,そ れでは一体,放射線化学的に見て高速電子というのは,

どの程度のエネルギー以上なのだろうか?というわけで 入射電子のエネルギー依存を計算してみたのが図 7 であ る被照射体は計算が一番手軽なヘリウム である.

3 1  

l o n   2  乙 S i n g l e t  

U  1 

、ー T r i p l e t 1 0 1 0 1 0

T ( e V )  

図 7 ヘリウムのイオン化と励起の G値の照射 電子エネルギー依存

4>

図から明らかなように 1keV 以上ならば,イオ ン 化も 励起も G値は一定する.ということは逆に. 1keV以下 の電子線照射では特殊化している可能性がある と,いっ

0  1 0   1 0

てもよ いかも知れない.

3‑3  α 線分解

いままでのところでは重荷電粒子照射のことには何も 触れて来なかったが,重荷電粒子でも電子と大体同じよ うに計算できる. くわしくは原論文を見ていただくこと にして 2 . 3 の結果だけを紹介する.

図 8 は.8MeV のα 線をヘリウムに照射したときの Platzman 図形である.

2 0  

(

目 巨

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Cコ

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"10‑ 1 0

1 0 J  

10~

1 0

T  ( e V )  

図 8

4>

8MeV の α 線照射による ヘ リウムのイ沈ン 化と励起

実線 : α粒子による部分 点線:二次電子による部分

図の実線の部分は α 粒子との直接の衝突によるイオン化 と励起,点線の部分が二次電子によるイオン化と励起で ある.この計算では,電子の交換によってのみ三重項励 起が起るとしているから,点線の部分だけに三重項励起 が現れる.

それでは α 粒子の直接作用によるイオン化と二次電子 によるイオン化の割合が入射の粒子のエネルギーでど う 変るかを示したのが図 9 である.

100 

α‑partic1e 

0.1 

Energy ofα‑partic1e MeV  図 9 α 粒子によるイオン化と二次電子によるイ オン化

表 3 異なった放射線によって起るイオン化と 励起の G 値の比較

4>

( ヘリウム〉

G  G  G 

(イオン化)( 一重項励起. ) (三重項励起〉

10 

電子線(>10

3

eV) 2 . 2 7   60Co‑r 線 2 . 3 0 α 粒子 (8MeV )  2 . 2 4  

0 . 8 6   0 . 8 6   0 . 8 5  

0 . 1 6  

0 . 1 6  

0 . 1 5  

(9)

1MeV で 8 2 ,  10MeV で 5:  5 という値である.

つぎは, αsr線の比較である.表 3 にまとめたよう に,エネルギーが大きくなれば G 値は放射線の種類にほ とんどよらない.あ ったとして も 数必以内 の よ う で あ る.

3 ‑ 4  計算値と実験値の比較

いままでに,5 0 種余りの化合物について計算したので それを一括して示したいのだけれども ,二重イオン化を 考慮した も の , 励起状態の 中身を区分け したも のなど,

少しずつ計算方法が違うので,計算方法が全く 同じ も の 同士でま とめることにした.

表 4 100keVの電子線による希ガスのイ オン化 と 励起(二重イ オン化を考慮 している) 2 0 > 

He  Ne  Ar  Kr  Xe  G ( イ オン イ じ 2 . 2 8 2 . 5 3   3 . 0 9   3 . 4 1   3 . 6 7   G ( 一重項励起 0 . 8 4 1 . 3 7   1 . 7 8   1 . 5 4   1 . 4 1   G  (三重項励起 0 . 1 7 0 . 0 7   0 . 1 3   0 . 2 3   0 . 3 9   W値(計算 4 3 . 9 3 9 . 5 3 2 . 4   2 9 . 3   2 7 . 2   (実験 4 2 . 3 3 6 . 3   2 6 . 4   2 4 . 2   2 2 . 0   二重イオン化 というのは,要するに

M

‑‑"vゅー

‑ M 2++ 2 e ‑

という反応のことである .電子数の多い原子では決し て 無視できない.断面積の計算方法は Gr y z i n s ki による .

表 5 1 0 0  ke V の電子線による二原子 分子のイ;;t ン化 と励起

9>

H N 2  CO  NO  O 2  G (イオンイヒ 2 . 8 3 2 . 5 5   2 . 6 8   3 . 6 1   2 . 9 8   G  ( 励 起 3 . 4 5 3 . 9 7   3 . 8 5   6 . 7 3   1 0 . 3 8   W 値 ( 計 算 3 5 . 3 3 9 . 2   3 7 . 3   2 7 . 7   3 3 . 5   ( 実 験 3 5 . 9 3 4 . 1   3 3 . 2   2 7 . 5   3 1 . 0   3 4 . 9   3 3 . 3   3 0 . 9   3 0 . 4  

*  H

2

については高い励起状態も考慮した.

表 6 1 0 0 k e V の電子線による 1 0 電子 分子のイオン化と励起

21>

(後続反応を考慮している〉

CH 4  G ( イオン化 3 . 6 0 G ( 励 起 3 . 9 6 W 値 ( 計 算 2 7 . 8 ( 実 験 2 6 . 7 2 7 . 5   2 7 . 6  

N H 3  3 . 5 6   5 . 3 4  2 8 . 1   2 6 . 5   2 6 . 5  

H

2

0  3 . 0 0   5 . 0 1   3 3 . 3   3 0 . 2   2 9 . 9  

表 7 100keV の電子線による各種分子の イオン化と励起(超励起状態はすべ てイオン化すると仮定した) 1 2

G  G  G  ( 一重項¥ / 三重項¥ / イオ

励起 / ¥ 励起 ) ¥ ン化 計算 実験 化 合 物

C2H 6  1 . 9 4   CaH s  2 . 2 0   C

4

HI0  1 .  5 0   i s o ‑ C 4 H1 0   1 . 9 7   C 5 H1 2  1 . 3 5   i s o ‑ C s H1 2   1 .  3 3   neo ‑ C 5 H1 2  2 . 0 5   C

6

H 1 4   1 .  2 5   c y c l o ‑ C 3 H 6  1 .  7 5   c y c l o ‑ C 5 H1 0  0 . 9 4   c y c l o ‑ C ; : H s  2 . 0 4   c y c l o ‑ C 5 H 6  3 . 8 7   c y c l o ‑ C 6 H 1 2   0 . 6 8   s p i r o ‑ C 5 H s  0 . 8 7   C 2 H 4  5 . 0 7   C a H 6  2 . 2 9   1 ‑ C 4 Hs  2 . 3 7   c i s ‑ 2 ‑ C 4 Hs  2 . 2 6   t r a n s ‑ 2 ‑ C 4 H S  2 . 2 4   i s o ‑ C 4 H s  2 . 2 6   C 2 H2  6 . 5 6   1 , 3 ‑ C 4 H 6  2 . 4 1   C 6 H 6  4 . 9 1   CH 3

o

C 6 H 5  3 . 8 7   C 6 H 5 0H  4 . 0 4   C 5 H 5 N  2 . 5 4   C 4 H 4 0  2 . 6 7   CH 3 0H  7 . 3 8   C 2 H5 0H  6 . 7 4   C 3 H

7

0H  6 . 3 2   ( CH 3 )  2 CHOH  6 . 3 8   CH 3 0CH 3  7 . 2 3   C 2 H 5 0C 2 H 5  6 . 5 6   CH 3 COCH 3  6 . 9 6   C 2 H5 COCH 3  6 . 6 8   CH 3 CHO  8 . 0 5   CO 2  5 . 5 5   HCN  4 . 1 9  

d

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0 0 1 A

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AH

VA

HV

E

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AH

VA

HV

1 . 6 7   5 . 2 5  

i

n r u q u h H v a 4 4

A U P D O V Q d

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i n u n d

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T i 1 4 1 A

iii

i q L 1

L

i A U n U

以上の結果を見てわかるように,計算値と実験値とは 意外によく合っている .何か計算の途中に適当に案配で きるパラメータがあるのではないかと疑われたこともあ るが,こんな沢山の化合物について適当なパラメータを 見つけるまで何回も何回も計算をやるほど我々は勤勉で

‑ 8

(10)

はない.こ の計算を発表してから私の気にな っている の は,何故この程度の計算でも っともら しいG値が出てき てしまうのかということである.

パラメータで思い出したけれども ,上の計算で使った 分子中 の各電子の L はほとんどが実験値で ある. ない ものは量子化学的な計算値を用いた.問題は運動エネ ル ギー E l である.この方 の値は,ご く わずかの計算値き りない,そのわずかな計算値が大体 E i 二 2.341 1

0

・ 9 3と いう関係を満すので,この式を使って計算 し た. くわし い数値については原論文をみていただきたい 1 2 )

3 ‑ 5  計算値からの推測

上に述べたように,計算し たイオン化の G値と実験で 求められている W 値が割合よい付合をしているが,私は

W=1 0 0 / G 

そのこと自体は余り本質的なことだとは思っていなし> . もちろん合わないよりは合う方がいし〉けれども,上の計 算でもっと本質的なのは,表 4 . 5 .  6 .  7 には示して いない部分にあると,思っている .その一つは表 2 に示し たような各分子軌道からのイオン化の割合や励起の割 合,さらにはそれぞれの化合物について描くことのでき る P l a t z ma n図形である .要するに絶対値よりも同じ分 子についての相対値の方により意味があると考えてい る.我々 ,放射線化学の実験を行っている者にとって は,測定にかからない初期生成物よりも ,後続反応でで きてくる最終生成物により興味があるし,その生成過程 を想像する方が化学者としては楽しい.といってこの小 論の中にすべての分子軌道からのイオン化の割合や P l a t z man図形を示すわけにはいかないので, もし興味 のある方がおられるなら,計算値をお送りしたいと考え ている.

計算値を眺めていると ,いろいろな推測ができ る.そ のいくつかを以下紹介 し たい.

1) O2

からの

03

の生成

O

2

に電子ノ〈ルスを照射して 0

3

のG 値を測った W i l l i s らの実験によると .G( 0 3 ) 二1 2 . 8 と報告されている 2 2

O

2

の各分子軌道についてのイオン化と励起の計算値 は表 8 に示した通りである .

いま ,すべてのイオン化 と最低以外のすべての励起状態 からは 2 分子の 0 3 が生成すると仮定する.

0 2 + + e ‑ ‑ → 20  O 2 *+ 0 2 一 → 0 3+0 o  +0 2 一 → 03

すると ,表 8 からG( 0 3 ) 二1 2 . 6 と求められる.すなわち 0

3

の生成には最低励起状態の

1

i 1 は無関係である .とい

うもっともらしい結論になる.

表 8 100keV の電子照射による各分子軌道に ついての O

2

のイ オン化と 励起

G  G 

分子軌道 ( ィ ム ヒ) ( 議項 ) (議項)

l π R  1 π u  3σR  2σu  2σR  1 σu  1 σ

0 . 8 7   1 . 6 5   0 . 9 4   0 . 9 2   0 . 3 4   0 . 2 7   0 . 2 5   0 . 1 2   0 . 0 9 9   0 . 0 2 5   0 . 0 0 4 0   0 . 0 0 0 0 6 1   0 . 0 0 4 0   0 . 0 0 0 0 5 0   G (二重イ オン化) =0 .  0 3 9   G ( 励 起イ オ ン )= 0 . 1 8 4 G ( 二 重 励 起 ) 二 0 . 0 5 4

2 )  N O の放射線分解

7 . 0 5   0 . 5 0   0 . 0 7 6   0 . 0 1 0   0 . 0 0 1 7   0 . 0 0 0 0 0 1 5   0 . 0 0 0 0 0 1 5  

N O の放射線分解は生成するイオンや原子の種類が少 ないので反応機構を比較的もっともらし く 議論できる .

実験では,つぎの関係がえられて いる 2 3 ) 24.8NO ‑ → 5 . 3  N 2+ 7 .  0  N0 2+ 3 . 6  N 2 03 

N 2 は主に N+NO ‑ → N 2+ 0 の反応で生成する . すな わち.N O が,途中イオンを経るものもあるかも知れな いが,結局 NとOに分解する G値は 5 . 3 である .

表と しては示さないが,上述 した

O2

のときと同じよ うに,最低の励起状態だけはN O の分解に寄与しな いと して集計すると . G 値は5 . 5 0 と計算される.

3 ) メタンの放射線分解

メタンの各分子軌道についてのイオ ン 化と励起の G 値 は表 9に示した通りである.

表 9 100keV の電子照射による各分子軌道に

分子軌道

1  t 2  2  a 1   1  a 1  

ついての CH 4のイオン化と励起 G  ( 雨 量 項)

( イオン化〉

2 . 5 9   3 . 4 5   0 . 3 6   0 . 1 5   0 . 0 1 8   0 . 0 0 0 5   G (二重イオン化〉二 0 . 1 1

G  (励起イオン) =0 .  5 4  G ( 二 重 励 起 ) ニ 0 . 1 6

( 議 項)

0 . 7 8   0 . 0 0 7 0   0 . 0 0 0 0 0 9  

いま ,こうして生成 したイオンや励起状態の後続反応

を文献を参照 し ながら最終生成物まで計算する.途中の

反応機構は余り長くなるのでここでは示さないが,それ

ほど任意性があるわけではない.得られた計算値と実験

値を比較したのが表1 0 である.実験値を大体再現してい

ると見るのは私の ひがめだろうか N H 3や H

2

0 にっ

ても同様いな取り扱いをし,似たような結果がえられて

(11)

し〉る.

表1 0 メタンからの最終生成物のG値 生成物 計算値 実験値

( 1 ) 2 4 )   ( 2 ) 2 5 ) ( 3 ) 2 6 )   H2  7 . 1 8   5 . 4 4   6 . 9   C 2 H2  0 . 7 1   0 . 7 6 ' " " ‑ ' 0 . 8 1   0 . 7   0 . 8 5   C 2 H 4  2 . 2 0   0 . 7 1 ' " " ‑ ' 1 . 6 0   1 . 6  1 . 0 5   C 2 H6  0 . 6 7   0 . 7 5 ' " " ‑ ' 1 .  0 5   0 . 6   1 .  9 3   C 3 H 6  0 . 1 0   0 . 0 6 ' " " ‑ ' 0 . 1 1   0 . 2   C3H 8  0 . 0 3 ' " " ‑ ' 0 . 0 9   0 . 2  

‑ CH 4  7 . 4 6   6 . 9 2   7 . 8  

4 ) 励起しアセチレンの化学イオン化

表 7 のG (イオン化)の計算値と実験値の比較を眺め ているとわかるように,概して計算値の方が実験値より 大きい. もちろん計算の精度によるのだけれども,一つ の理由は,超励起状態をすべてイオン化するとして計算 しているためではないかと考えている .

ところが,表 7 の中の 3 つの化合物 ( C 2 H2 , CH30H ,  CO

2)

は例外で,実験値の G (イオン化〉の方が計算値 より大きい,とくにアセチレンではその差が1. 0 3 であ る.この値をみたとき私は,東工大の田中先生の下で小 谷野君のやった仕事を思い出した.それは,アセチレン にライマンー α を照射する実験である.アセチレンはラ イマンー α ではイオン化にちょっと足りない. ところ が,つぎの反応でイオンが生成する

27)

C 2 H

+C 2 H2‑ → C 4 H3 + +H+e‑

¥ 、 C4H2 H2 +e

いわゆる化学イオン化である .他の炭化水素では報告さ れていない.この反応がもし本当なら,表 7 の計算値の 逆方向へのずれは当然、説明できる.

ただし,この議論を CH 3 0H や CO 2にまで拡張して よいかどうかはわからない.

5 ) シクロヘキサンの放射線分解

レクロヘキサンの放射線分解は,私が放射線化学にの めり込んだときの初めての研究課題である.主生成物は H2 ,  c y c l o‑C 6 HI 0 ,  ( c y c l o ・ C 6H

ll

) 2であり,これらの 生成機構は何とか組み立てることができたが,徴量生成 物の C 2 H 4 ( G=0 . 2 ) C3 H6  ( G=0 . 0 2 ) についてはどう にも反応機構を考えられず困ったものである.いま私の 手元にはレクロヘキサンのすべての分子軌道からのイオ ン化と励起の G 値の計算値がある . じつはいま, C

2

H

や C 3 H 6 の前駆体が,どのイオンあるいは励起状態なの か,分子軌道を描きながら考えている.

他の化合物についても,この種の考察なら無尽蔵に残 っている .

4 .   Jesse効 果

例えば Heに Arを少量加えると,イオン化のG 値が 急激に上昇する .このような現象はたいへん一般的で J e s s e 効果とよばれている 2 8 ) 主な原因は, Heの準安 定な励起状態が Arのイオン化電圧より高いために起る Pennin g イオン化である.

He* +Ar‑ → He+ Ar ++e‑ (  1 ) 

表1 1 は希ガスのイオン化電圧と三重項の最低励起状態の エネルギーをまとめたものである .J e s s e効果が観測さ れるだろうと考えられる組み合せは, He‑Ar ,  He‑Kr

 

Ne‑Xe など容易に想像がつく. ところが,話はそれだ けではかたづかないのである.

そこでまず,このような混合系のイオン化の G値, G M をプロットする方法から述べる .いま , A と B の 2 つの 気体を考え,それぞれ純粋のときのイオン化の

G

値を G~, GBとし,混合物の GMとつぎの関係式で結ぶ.

表1 1 希ガスのイオン化電圧と三重項最低励起 状態のエネルギー (eV)

希ガス イオン化電圧 三状重態項最低 Et 励起

He  2 4 . 5 8   1 9 . 8   Ne  2 1 . 5 6   1 6 . 7   Ar  1 5 . 7 6   1 1 .  6  Kr  1 4 . 0 0   1 0 . 0   Xe  1 2 . 1 3   8 . 5  

G M

( GA ‑Gs ) Z +GB

Z は気体の分圧 ( p) とそれぞれの気体の 阻止能 ( S) の関数と考える.

Z =  PA /(PA+- 。 ~B

A

Ps

S

且.

Ss は照射する粒子のエネルギーに依存するが, SB  / S

A

と比をとれば,大体入射粒子の飛程の逆数の比とお いてよいだろう,ということ促する(ここには当然問題 がある) .K l o t s2 9 ) の用いている数値は He‑Ar で2 . 7 9 , Ar‑Neで0 . 7 5 ,Kr‑Neで0 . 4 6 5 ,また窪田氏は Ne‑He で 0 . 3 1 6 を使っている 3 0 ) いずれにしろ, K l o t s や窪田 氏は, もし 2 つの気体A. B がイオン化を起す過程で気 体同士全く相互作用がないとすれば,上の数値を使って GM を Z に対してプロ ットすれば直線がえられるはずだ

と考えたのである .

ところが He ‑Ne系では表1 1 をみてわかるよ うに. E t   ( H e )

I ( N e ) なので. J e s s e効果は起らないと予想さ れるのに直線からずれる. もっと変った例はあとでお見 せするが, Ne‑Kr 系などで見られる.そこで我々は G 値 の理論計算をこれらの混合系でも行ってみた.計算例を 沢山上げているときりがないので, 2 ,  3 の代表例 と,

‑ 10‑

(12)

4 ‑ 2  Ne‑Kr 系

この場合はいわゆる J e s s e 効果が起るはずである.と ころが K l o t s の測定値を再現した図 1 1 を見ればわかるよ うに, Kr

の混入に伴って

GM

がまず増大し(この部分 は通常の

J e s s e

効果に違いない),極大に達したのち減

少し,極小を経て,純 Kr の G 値へとまた増大して行く

のである.

我々が重要だと,思っている結論だけを述べさせていただ く.

4‑1  He‑Ne 系

上述したように,この系では払

C H e )

1C N e )

なの で,いわゆる

J e s s e

効果は起らないはずである.にもか かわらず,図1

0

に示した窪田氏のデータは直線になって いなし'.

2 . 8  

ω ロ ︻

何 ? ︒

1 . 0  He‑Ne 系のイオン化の G値 3 1 )

.:窪田氏のデータ

実線は計算値(相互作用を含まず)

0 . 8   0 . 4   0 . 6  

Z  0 . 2  

図 1 0

l  K r  Z  =  P K r !   ( PK r +  0

.4

6 5   f > N e ) 

Ne‑Kr 系のイオン化の G 値 0 . 2 

3 . 0  

O  Ne 

1 1

変化量は

GM

の絶対値に較べれば小さいが,簡単には説 明できない変化である.これに対する

K l o t s

の説明はあ るけれども,余り説得力があるとは思えない

K l o t s

は この現象を

N e g a t i v eJ e s s e 効果と名づけている Ne‑

Kr 系のほか, Ne ‑ Ar

, 

He ‑ CH 4 系でこの現象が現われ る.

この系に対して我々が計算した曲線が図

1 1

の実線であ る.この場合は

J e s s e

効果が考慮されている.ただし,

我々の計算では純

Ne

,純

Kr

でのイオン化の

G

値がす でに測定値からずれているので,図

1 1

では

Kr

の割合の 大きなところで計算値が

K l o t s

の測定値に合うようにパ ラメータを入れて合せている.それ故, 説 得 力 は 弱 い が,しかし,

Kr の割合の大きなとこ

ろで合せておくと, そこで考え出されたのが,

He の高い励起状態からの Ne

へのエネルギー移動に伴うイオン化,

N o n ‑ m e t a s t a b l e   P e n n i n g  i o n i z a t i o n である.

He**+Ne‑ → He + Ne + +e ‑ C  n ) 

He** としては 1 P1 状態などが考えられている 1 P1

状態は放射寿命は短いが,

i m p r i s o n m e n t で見掛けの寿

命はずっと長くなっている可能性はある.

ところで,我々は

c n )

の反応を含めないで,純

He

や純

Ne

のときと同じように

G

値の計算をしてみた.計 算方式は単一気体のときと全く同じである.ただ混合物 なので,式は少々複雑になる.こうして計算されたのが 図1

0

の実線である.すなわち, 反応

c n )

を考慮、しなく ても曲線が出てくるのである.

これはどういうことかというと,

Ne の混入によって

系中の電子の減速スペクトルは変化するが,その変化の 仕方が

Ne

の分圧に比例せず,少量の

Ne

の混入で大き

く純

Ne

の中の減速スペクトルに近づくのである.

図1

0

の結果は反応

c n )

の存在を全面的に否定すると ころまでは行かないが,とに角減速スペクトルのことを 考えないといけないことは示している.

(13)

Krの割合の小さなところで. K l o t sの示した極大と似 たような凸部がでてくる.

なぜこんなことが起るかというと,純 Ne では 1 (Ne)  以下のエネルギーの電子ではイオン化を起さないが, Kr  が少しでも入ると急に 1 ( N e ) 以下の電子でもイオン化を 起しはじめる. ところが Kr が増えると今度は Krの励 起状態をつくるためにイオン化全体としては減り出すの である.こまかくは. Platzman図形を詳しく調べなく ては説明しにくいが,減速スペクトルが複雑に絡んでく る.

我々の説明は. K l o t sの測定値を定量的には再現でき ないので強く主張はできないが. Negative J e s s e 効果の 説明に新しい視点を与えていると私は信じている.私と

しては, もう一度挑戦したいと思っている系である.

4 ‑ 3  He‑Hg

上述してきたように,混合系 A ー B では,最低励起状 態のエネルギーが AとB で違うから,いま E t(A)>  E t   ( B ) とすると, もはや A を電子的に励起できなくなった 電子でも. Bに対しては電子的に励起を起すことができ るというような事情が起る.

その極端な例が He ‑ Hg系である. Heの最低励起状 態は1 9 . 8 eV なので Hg の 3P1 状態 ( 4 . 9 eV)はもちろ ん,イオン化電圧 ( 10.4eV)との差が大きい.すなわち 15eV 位の電子はHeに対しては亜励起電子だが. Hg に 対しては高エネルギー電子である.そこで我々が思いつ いた のは. He‑Hg系に電子ノ〈ルスを照射し. Hg  ( 3 P 1 )   からの発光2 5 3 .7nm を見る実験である. 亜励起電子の減 速はたとえ相手が 1 0 ‑3 Torrの Hg でも 1 0 ‑1 0 秒位と考 えられるが. He*+Hgー→ He+Hg +

e ‑ .Hg + +e‑+ 

Mー→ Hg*+M の反応の方はだいぶ遅くなる可能性があ る.すなわち. Hg(3P1 ) からの発光には,亜励起電子に よるものと,中和を経るものとがあり,時間的に相当ず れると考えられる.実際,実験してみたところ,時間的 にずれる 2 つの発光を観測することができた 3 2 > 私とし ては亜励起電子を研究する手掛りを掴えたと , 思ってい る .G 値の計算の副産物である.

5 .   二 次 電 子 の 空 間 分 布

いままでは気相のことばかり述べてきたが,放射線化 学でもっ とも興味があるのは凝縮相である.凝縮相を考 える上でまず心配になるのは,放射線作用の初期過程で 気相と凝縮相では本質的に違うのではないかということ である.事実,集団励起を拡大解釈したような議論はあ った,しかし高エネルギー粒子を d eB r o g l i e波の波長 で考えてみると分子の大きさに 較べて極端に短く,ほと

んどの相互作用は気相におけると同じような相互作用と してよいのではないかと私は考えている.衝突される電 子の方は,他分子の影響を受けながら存在しているか ら,イ オン化エネルギーや励起エネルギーは気相とは違 っていると考えられる.とくに,極性分子ではその影響 は激しいだろう.凝縮相ではプラズマ振動があり,これ が気相にはないエネルギーの受け手と考えることもでき る.しかし,少なくとも第一次近似としてははぶいてよ いのではないかと思う.しかしそのことを保証できるほ ど私には知識がない . ν ンクロトロン放射光を使う実験 がさかんになり,この付近の議論がもっと我々にもわか

り易くなることを期待している.

もっと単純なことで放射線化学として問題なのは,凝 縮相中のイオン化の定義である.気相ならばイオン化と は電子が親分子から無限大に離れることと考えてよいだ ろうが,凝縮相では電子が親分子からどのくらい離れた らイオン化とみなすかが問題となりうる.半導体などな ら,価電子が伝導帯へ飛び出たときが,放射線化学で問 題とするイオン化といえるだろう.この辺の問題は,液 体のいわゆる Voに絡んでいる.私としてはその議論の 中に立ち入るつもりはない.ここではただ,上述してき た計算を凝縮相に適用する場合に電子の結合エネルギー Lとして何を使ったらもっともらしいかを考えているだ けである.

以下の計算では水につ いてだけ行うので.I i としては デー タのある 77K の固相で測定されている ESCA の値 ( 表1)を使うことにした.この値が Lとして小さすぎ ること はな いだろうとは考えている.

表 l の L を使って上述してきたと同様に 60Co ‑ r 線 照射について計算すると,表1 2 の値がえられる.括弧内 は超励起状態に相当する.この状態はすべてイオン化す ると仮定すると,表1 2 の下部のような値になる.イオ ン化の G 値として 6 . 7 6という大きな値になった d r y e l e c t r o nのG 値として Hunt 達は4 . 8 以上, 3 3 >Jonahら

表1 2 r 線照射による水のイオン化と励起,括 弧内は超励起状態

分子軌道 Ge  Gs  Gt  1  b1  3 . 1 3   0 . 2 3   1 . 1 8   3  a 1   1 .  8 7   ( 0 . 0 9 6 )  0 . 1 5 ( 0 . 1 2 )  1  b2  0 . 9 6   ( 0 . 0 7 5 )   ( 0 . 0 1 8 )  2  a l   0 . 3 9   ( 0 . 0 0 9 )  ( 0 . 0 0 2 )  1  a 1   0 . 0 0 8   ( 5 X 1 0 ‑

6

(4X10 ‑

7

Gion  6 .  7 6   G s i n g l e t   0 . 2 3   G t r i p l e t   1 .  2 1  

‑ 12‑

(14)

和電子となって落ち着くはずである.このような減速過 程を記述する方法はまだ確立していなし昔, F r o h l i c h  

とPlatzman は 1eV 位までの減速は大体‑dTjdt=101 3   eV S ‑ 1 で表せることを示した

35)

しかし,これは大変 大雑把な計算である.最近 Mageeと Helmanがこの問 題を検討しなおし, F r o h l i c hらの取り扱いでは電子の 減速に対し遠くの分子への影響だけが考えられていて,

たとえば一時的な負イオン生成のような m 直接効果

H

が 抜けてい亀ことを指摘し, ‑dTjdt

1 01 4eVS‑1 の方が よいだろうと述べている

36)

元来,亜励起電子の減速がその電子のエネルギーに全 く依存しないというのはおかしい.しかし,その関数を かつてに決めるわけにも行かないので,ここではやむを えず,電子エネルギーに無関係に ‑dTjdt

1 01 4eV s ‑ 1   と仮定する.この付近の理論的な不備は甚しい.

それはとにかく,ここでは上で求めた亜励起電子の初 期エネルギ一分布を使って,電子が熱平衡化したときの 空間的な分布を ‑dTjdt 二lO‑

14

eVS ‑ 1 ,  平均自由行路 L

3Aで強引に計算してみたのが図1 3 である.径100A の球内で,ほとんどの亜励起電子は熱平衡に達すること になる.

は 5 . 4 以上3 4 ) といっているので,少し大きすぎるような 気もするが,あとでも述べるが,よく知られているよう に水の中のイ方ン化は不均一であり,場所によっては多 数のイオン化が偏在するので,すべての d r ye l e c t r o n   を掴えてはいない可能性もあるのではないだろうか.

5 ‑ 1  水の中の E 励起電子

表 1 で示した数値を使っているので,ここの計算では E t

5.0eV以下のエネルギーになった電子が E 励起電 子である.そのエネルギ一分布をまず計算する.実は,

r 線照射で亜励起電子が生成する過程は 3 種類に分類 きれる. 1 つはコンプト ン効果によって生成する 5eV 以 下の電子 f(T)T

E t である.この量は大変少ない.第 2 は,はじめ 5eV以上で飛び出した電子 (我々はこ の ような電子を親電子とよぶことにしている〉がイオン化 や励起を起して減速 し5eV以下になったもの Np ( T) である. 第 3 は初めから 5eV以下で生成してくる電子 (子電子)N c ( T) である. Np(T) ,  Nc(T )ともに減速 スペクト ル y(T)から,つぎのように計算できる.

N s u b ( T )  =f(T) +Np(T)  +N c ( T )  ;  T

E t

Np ( T )

N 干 nif;;Iiy(T+E)σ ( T+E , E ) dE 

/"'l'

max 

Nc(T) 二 N~ni I  ̲ 

̲ 0  

y(T')σ(T' ,  T +I i )   dT' 

.J 2T +Ii 

図1 2 はこのようにして計算した水の中の亜励起電子の初 期分布である.

︿

¥ (

p h

) u

h

U 同

1 0 0 0

ト ¥ . 1¥

0 0 0  

〉 v 

h  2 0 0 0  

‑'" 

4  ‑

O  O 

水中で熱平衡化した電子と親イオンの分布.

点線は e ‑

al

なる関数で近似したもの

1 3

6 0 C o ‑ r 線照射によって生じる水の中の亜励 起電子の初期エネルギ一分布,実線は全体,

点線は子電子

4)

2  3  Electron ene r g y  T j e   V 

1 2

(炭化水素のような無極性溶媒の場合は,いわゆる s u b ‑ v i b r a t i o n a lなエネルギー以下で, さらに拡散すること を考えなくてはならないかも知れない.)図 1 3 で点線で 示したのは e ‑

al

という関数で, 分布のすその方を近似

したものである.

5eV 以下になった電子は,もはや水分子を電子的に励

起できないから,分子振動,分子間振動,分子回転など

を励起しながら減速する.そして中和を逃れたものは, 水

参照

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