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平成22年度 操舵システム作動監視装置の技術開発 成果報告書

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平成22年度 

操舵システム作動監視装置の技術開発  成果報告書 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)
(3)

はしがき   

本報告書は、競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて、平成 22 年度に社 団法人日本舶用工業会が実施した「操舵システム作動監視装置の技術開発」の成 果をとりまとめたものである。 

 

操舵システムは船の航行を担う極めて重要な装置で、いったんこれが作動不良 に陥ると、船の航行上の安全確保が出来なくなるが、操船が不能になって初めて、

操舵システムが不良になることを知るというのが実情である。あるいは、操舵シ ステムの調子がおかしいと思っても、それを感覚的にしか知覚できない、まして や、その前兆を知覚することはできないというのが実情で突然危険にさらされる というリスクがある。 

そこで、このリスクを避けるため、操舵システムが作動不良になったことのみ ならず、作動不良に到るであろうことを、感覚的にではなく、計測的に予め知り、

監視することができるような、操舵システム作動監視装置の開発を、ジャパンハ ムワージ㈱に委託して実施したものである。 

 

ここに、貴重な開発資金を助成いただいた日本財団に厚く御礼申し上げる次第 である。 

 

平成23年3月 

(社)日本舶用工業会 

(4)
(5)

 

1.技術開発の目的  ··· 1 

  2.技術開発の目標  ··· 1 

  3.実施経過  ··· 2 

3.1 実施項目  ··· 2 

3.2 実施期間  ··· 2 

3.3 実施場所  ··· 2 

  4.実施内容  ··· 3 

4.1  操舵システム作動監視装置  ··· 3 

4.1.1  システム設計  ··· 3 

4.1.2  操舵システム作動監視と舵角指示を統合した表示装置の設計  ··· 10 

  4.2  試作品の製作  ··· 18 

4.2.1  試作  ··· 18 

  4.3  工場運転試験  ··· 24 

4.3.1  工場運転試験、舵取機(アクチュエータ)に取付の場合  ··· 24 

4.3.2  工場運転試験、駆動装置に取付の場合  ··· 24 

4.3.3  実舵角(検出部舵角)に対する各出力の関係  ··· 26 

4.3.4  基準転舵速度からの実転舵速度の遅速に対するモニター表示  ··· 27 

  4.4  MED 試験と MED 認定申請作業  ··· 28 

4.4.1  腐食試験(塩水噴霧) ··· 29 

4.4.2  動揺・傾斜試験  ··· 32 

4.4.3  伝導無線周波数電磁界の耐性試験(イミュニィティ) ··· 33 

4.4.4  放射無線周波数電磁界の耐性試験(イミュニィティ) ··· 34 

4.4.5  電気的ファーストトランジェント/バースト耐性試験  ··· 35 

4.4.6  電気的低速トランジェント(サージ)耐性試験  ··· 36 

(6)

 

4.5  実船搭載運転試験  ··· 44 

4.5.1  海上予行運転中における舵取機作動モニターの誤警報とその原因  ··· 45 

4.5.2  誤作動原因の究明と対策  ··· 46 

4.5.3  原因究明のための試験  ··· 46 

4.5.4  対策と結果  ··· 50 

4.5.5  船級規則との整合性を図るための構造見直し  ··· 50 

  5.目標の達成状況  ··· 51 

  6.今後の予定  ··· 51   

(7)

操舵システムは船の航行を担う極めて重要な装置で、いったんこれが作動不良に陥る と、船の航行上の安全確保が出来なくなる。然るに、従来、操船が不能になって初めて、

操舵システムが不良になることを知るというのが実情である。あるいは、操舵システムの 調子がおかしいと思っても、それを感覚的にしか知覚できない、ましてや、その前兆を知 覚することはできないというのが実情で突然危険にさらされるというリスクがある。 

このリスクを避けるため、操舵システムが作動不良になったことのみならず、作動 不良に到るであろうことを、感覚的にではなく、計測的に予め知り、監視することが できるような、操舵システム作動監視装置を持つことが必要になる。 

本開発は、操舵システムが作動不良になること、および、その前兆があるというこ とが、究極的に、舵取機械の転舵速度が低下するという現象に鑑み、作動中の舵の回 転速度を各瞬間において計測・演算し、それが正常であるかどうか、また、注意を要 する状態であるかどうかを検知し、監視できる装置を開発することを目的とする。 

その方法として、どの舵取機械にも装備されている舵角指示器に入力される舵角信 号を利用し、演算器において、その舵角に相当すべき回転速度(舵取機械の形式によっ て固有のもの)を演算し、その固有の回転速度と実際の回転速度とを比較し、その差が 所定の値を超えているならば表示器において、作動不良あるいは要注意なることを表 示する。これは舵角と関連するので、操舵システム作動監視装置においては、舵角の 表示と作動監視の表示を一体化する。 

実際の回転速度と比較すべき基準回転速度の設定方法としては、舵取機械の作動油 室の容積変化に基づいて算出する方法、作動油室の実際の油圧を検出して、その油圧 の下でのあるべき回転速度を算出する方法、舵のトルク特性曲線から油圧を算出し、

その油圧の下でのあるべき回転速度を算出する方法、などが考えられるので、それら の優劣を検討する。 

なお、本装置は、舵取機械の形式(ロータリーベーン式、ラム(ラプソンスライド)式、

ピストン式)を問わず適用できる。 

 

2.技術開発の目標 

  本技術開発の目標を次のように定めた。 

1) 舵角検出装置で検出した舵角の微分量を演算し、予め求めた舵取機械のその時あ るべき転舵速度と比較して、操舵システムの作動状態の良否の判定方法を確立する こと 

2)上記で求めた判定方法を、舵角検出装置に適用し、これと組合わせ、舵角指示、

オートパイロット制御信号、操舵システム作動監視を行わせる統合システム製品を

(8)

 

3.実施経過  3.1  実施項目 

  本開発では、以下の項目について実施した。 

1)  操舵システム作動監視装置の設計 

①  システム設計 

②  操舵システム作動監視表示と舵角指示との統合作動表示器の製品設計  2)  試作品の製作 

3)  工場運転試験  4)  MED 試験 

5)  実船搭載運転試験   

3.2  実施期間 

  開始  :  平成 22 年 4 月 1 日    終了  :  平成 23 年 2 月 28 日   

3.3  実施場所 

実施項目 1)  本社 

実施項目 2)〜3)  工場 

実施項目 4)   独立行政法人 海上技術安全研究所、 

フルノ・ラボテック・インターナショナル株式会社  実施項目 5)  株式会社神田造船所川尻工場 

実施項目 6)  本社   

(9)

4.実施内容 

舵取機の作動状況を監視して、正常、要注意、異常等を判定し表示する操舵システム 作動監視装置を開発した。 

この監視装置は、舵角検出装置から得られる舵角信号の時間微分を行って、転舵速度 に換算し、更にそれに舵取機の型式に対応した演算を行って、その値がどの範囲にある かで判定を行うものとし、その判定方法、基準を併せ検討開発した。 

舵取機の作動状況を監視して、正常、要注意、異常等を判定し表示する操舵システム 作動監視装置を開発し、これを平成 20 年度新製品助成による「舵取機用光学式舵角検出 装置の技術開発」で達成した舵角検出/舵角指示器及びオートパイロットフォローアッ プ信号を出力する機能と一体化させた試作品を作り、工場運転試験、また実船搭載運転 試験を行って、その機能を検証した。 

更に、MED試験を行い、過酷な環境下においても正常に作動し、また、本装置から妨 害電磁波等の放射が限界内であることが立証された。 

 

4.1  操舵システム作動監視装置の設計  4.1.1  システム設計 

システム設計を行うに当たり、その前作業として、どんな方式で舵取機の作動異常即 ち回転速度異常を検出するかについて、以下の検討を行った。 

4.1.1.1  舵取機の速度異常の検出方式の検討 

4.1.1.1.1  舵取機械の作動油室の容積変化に基づいて算出し、良否を判別する方法  ポンプからの吐出油量に対して、アクチュエータのピストンやベーンが動いて油室の 容積がどれだけ変化したかを求めるものである。即ちこれは、ポンプ吐出量に対して、

ピストン式、ラム式にあってはそれぞれピストン又はラムの移動量、ロータリーベーン 式にあってはベーンの回転角の変化等の関係を求めることとなり、作動油の漏洩が無け れば、その変化量は何れもポンプ吐出油量に対する一次式で表される。従って、演算装 置としては、ポンプ吐出油量とそれに対するこれらの変化量を検出して、その差異を見 るだけで、システムの良否を判別できるのでその構成は比較的簡単にできる。しかし、

ピストン、ラムのように、直線運動を検出する装置をこれらアクチュエータ上に配置す ることには困難を生じる。 

 

(10)

4.1.1.1.2  舵トルク特性曲線から油圧を算出し、その油圧下でのあるべき回転速度を算 出する方法 

舵取機には作動油の漏洩は大なり小なり必ず発生するものであるので、作動油圧に対 する作動油の許容漏洩量、したがって許容出来る転舵速度の低下の程度を予め定めてお き、船速と舵のトルク曲線から求められる舵取機に作用する想定油圧に対して、実際の 転舵速度が妥当 (許容転舵速度であるかどうか)を演算して、それが異常値であれば警報 を発するように演算装置を構成する。しかしこの方法は、舵への水流の流入角が絶えず 変化するため、図 4.1.1‑1 に示すように、同一舵角を取っても舵トルクしたがって作動 油圧は同一ではなく大きく変化するため、正常、異常の判別を舵のトルク特性曲線から 想定した油圧と転舵速度の関数として表現することは極めて困難であり、これの採用は 得策ではない。 

 

図 4.1.1‑1  舵トルク特性曲線 

(11)

法 

ピストン式、ラム式およびロータリーベーン式のある舵角における転舵速度は、それ ぞれ次のように求められる。 

1)  ピストン式の場合 

  図 4.1.1‑2 に1ピストンの場合の力と舵角の関係を示す。 

                     

図 4.1.1‑2 ピストン式舵取機の力と舵角の関係   

ピストンの中立位置からの移動距離を s(m)とすれば、 

s=R sinδ(m)  ··· (1)  となり、舵角がδ(rad)から微少角 dδ(rad) 

動く場合、ピストンの移動距離 d(s)は次式で表される。 

ds=R sin(δ+dδ)−R sinδ=2 Rcos(δ+dδ/2)sin(dδ/2)≒R cosδ dδ ··· (2)  ピストンの移動速度を v(m/s)とすれば、距離 ds を動く時間 dt は 

dt=ds/v =R/v cosδ dδ  ··· (3)  で表されるので、δ=δ1(rad)からδ=δ2(rad)まで動く時間は、(4)式をδで積分して、 

t=R/v (sinδ2−sinδ1)  ··· (4)  となり、v=Q/A(m/s)であるからこれを(5)式に代入して、次式を得る。 

t=RA/Q (sinδ2−sinδ1)  ··· (5)  各舵角に於ける転舵速度ω(rad/s)は(4)式より次式を得る。 

ω=dδ/dt=Q/(RA cosδ) (rad/s)  ··· (6)  すなわち、転舵速度は、Q が一定であれば、1/cosδに比例し、舵角が大きくなるほど 速くなる。 

(12)

2)  ラム式の場合 

図 4.1.1‑3 にラムの場合の力と舵角の関係を示す。 

 

図において 

  F1:ラムを押す力(N) 

  F2:F1の舵柄中心線に垂直な分力(N)    F3:クロスヘッド案内梁に懸かる分力(N)    R:軸中心からラム中心までの距離 

  ℓ :舵軸中心から舵兵に作用する力 F1 の      作用点までの距離 

  δ:舵角(rad) 

とすると、  図 4.1.1‑3 ラム式舵取機の力と舵角の関係  ラムの中心位置からの移動距離を s(m)と 

すれば、次式が求まる。 

  S=R tanδ(m)  ··· (7)  舵角がδ(rad)から微少舵角 dδ(rad)動く場合、ラムの移動距離 ds(m)は次式となる。 

  ds=R tan(δ+dδ)−R tanδ 

  =sin(dδ)/{cos(δ+dδ) cosδ}≒Rdδ/cos2δ ··· (8)  これよりラムの移動速度を v(m/s)とすれば ds を動くのに必要な時間は dt は、次式とな る。 

  dt=ds/v=R dδ/(v cos2δ) (s) ··· (9)  したがって、舵がδ=δ1(rad)からδ=δ1(rad)まで動く時間は、上式を積分して次式を 選る。 

  t=R/v (tanδ2‑tanδ1

ここで速度 v は、v=Q/A (m/s)であるから上式に適用して、 

  t=(RA/Q)(tanδ2‑tanδ1) (s) ··· (10)  各舵角における転舵速度ω(rad/s)は(11)式を変形して次式を得る。 

  ω=dδ/dt=vcos2δ/R=Q/(R A)cos2δ (rad/s) ··· (11)  すなわち Q を一定とした場合、転舵速度は cos2δに比例し舵角がおおきい程遅い。 

 

(13)

図 4.1.1‑4 に1ベーン式の場合の力と  舵角の関係を示す。 

  h:ベーンの幅(m)    a:ベーンの短径(m)    b:ベーンの長径(m) 

  A:ベーン面積=h(b−a)(m2

  R:ベーンの舵軸中心からの平均距離 

      =(a+b)/2 (m)      図 4.1.1‑4 ベーン式舵取機の力と舵角の関係    Q:単位時間当たりの流入油量(m3/s) 

とすると、舵軸を dδ(rad)だけ動かすのに必要な油量 dq(m2)は次式となる。 

  dq=(1/2 bdq−1/2 a2) h=1/2(a+b)(b−a) h dq=R A dδ(m3) ··· (12)  転舵速度ω(rad/s)は(14)式より、次式を得る。 

  ω=dδ/dt=1/(R A)・dq/dt=Q/(R A) (rad/sec) ··· (13)  すなわち、Q が一定であれば転舵速度は舵角の大きさにかかわらず一定である。 

 

これらのことから、各形式の舵取機について、それぞれ上に求めた(6)式、(11)式また は(13)式を適用して各舵角におけるあるべき転舵速度を基準速度として予め求めておき、

舵取機の実際の転舵速度とこれら基準速度との差異を計測して、その差がある一定値以 上になれば警報を発するような演算装置を

構成すればよいことになる。 

装置の構成の容易さ、判別の難易、実用 性、又別途開発を進めてきた舵角検出装置 の延長線上の技術として開発が可能である ことから考えて、舵角の転舵角及び転舵速 度を検出して、各舵角位置における転舵速 度の良否を判別する方法が最も合理的であ るので、この方式をターゲットにして本開 発を推進することにした。 

(14)

 

また、舵取機作動監視装置のシステム構成のイメージ゙図を図 4.1.1‑6 に示す。 

 

 

図 4.1.1‑6 舵取機作動監視装置のシステム構成のイメージ図 

(15)

また、構成図例を図 4.1.1‑7 に示す。舵取機作動監視表示部は、今回製作した装置には 舵角指示器に設けたが、別途独立して他の盤に組み込んでも良い。 

 

   

図 4.1.1‑7 舵取機用舵角検出装置の構成図 

(16)

4.1.2  操舵システム作動監視と舵角指示を統合した表示装置の設計 

舵角検出装置からの信号を演算処理して操舵システムの作動状態を監視し、システム の正常、異常及び要注意等、当直員が直感的にその状態を判断できる表現形式とし、舵 取機の作動を総合的・合理的に監視できるようにし、表示内容に応じて速やかに適切な 対処が行えるようにすべく、この作動監視表示と舵角指示とを統合した操舵システム作 動表示器の設計を行った。 

なお、当初行った設計を元に試作を遂行していた途上で、船級規則の厳格化に対応す るために、舵角検出部各ユニット間およびそれぞれへの電線を相互に隔離出来るように 全面的に構造の変更を行った。 

図 4.1.2‑1 に、舵角検出部組図を、図 4.1.2‑2 に各ユニット間の隔離図を示す。隔離板 部を図上に赤で示している。 

 

 

図 4.1.2‑1  舵角検出部及び演算部組図 

(17)

 

図 4.1.2‑2  舵角検出部各ユニット間の隔離   

(18)

 

図 4.1.2‑3〜‑8 に舵角検出部外観図、指示・表示部外観図及び接続図を示す。  

   

図 4.1.2‑3  検出演算部、及びオートパイロットフィードバック信号用   

(操舵システム作動監視装置、検出、演算部、舵角指示用、及びオートパイロットフィ ードバック信号用) 

           

(19)

   

図 4.1.2‑4  検出演算部 

(操舵システム作動監視装置、検出、演算部、舵角指示用) 

 

(20)

 

 

注)図中 Operation monitor が操舵システム作動監視用表示灯   

図 4.1.2‑5  舵角指示器(シングルタイプ) 

(操舵システム作動監視装置、監視モニター付き舵角指示器(シングルタイプ)) 

 

(21)

 

 

注)図中 Operation monitor が操舵システム作動監視用表示灯   

図 4.1.2‑6  舵角指示器(ダブルタイプ) 

(操舵システム作動監視装置、監視モニター付き舵角指示器(ダブルタイプ)) 

 

(22)

                                                                           

図 4.1.2‑7  操舵システム作動監視装置、接続部(1/2) 

(23)

                                                                 

(24)

4.2  試作品の製作  4.2.1  試作 

4.1 の設計に基づく操舵システム作動監視演算機能とその表示及び舵角指示との統合 表示器の製品試作を行った。 

これら全体を写真 4.2.1‑1 に、各製品を写真 4.2.1‑2〜‑6 に示す。 

                                         

写真 4.2.1‑1  操舵システム作動監視装置のアクチュエータ代替駆動装置を用いての  作動試験の様子 

                     

(25)

                                       

アクチュエータ代替駆動装置   

検出演算部、及びオートパイロットフィードバック信号用   

 

写真 4.2.1‑2  検出演算部、及びオートパイロットフィードバック信号用ユニット 

(操舵システム作動監視装置、検出、演算部、舵角指示用、及びオートパイロットフィ ードバック信号用) 

         

(26)

                                                             

写真 4.2.1‑3  検出演算部 

(操舵システム作動監視装置、検出、演算部、舵角指示用) 

 

(27)

                                             

写真 4.2.1‑4  舵角指示器(シングルタイプ) 

(操舵システム作動監視装置、監視モニター付き舵角指示器(シングルタイプ)) 

               

(28)

                                               

写真 4.2.1‑5  舵角指示器(ダブルタイプ) 

(操舵システム作動監視装置、監視モニター付き舵角指示器(ダブルタイプ)) 

                         

(29)

                                                 

写真 4.2.1‑6  ティーチングユニット 

(操舵システム作動監視装置、ティーチングユニット) 

     

(30)

4.3  工場運転試験 

4.3.1  工場運転試験、舵取機(アクチュエータ)に取付の場合 

  上記試作品を別途製作のロータリーベーン式舵取機に搭載、接続して工場運転を行い、

機能・性能を確認した。  写真 4.3.1‑1 は、舵取機(アクチュエータ)に舵角検出部を搭 載して工場運転試験を行っている様子を示す。 

                         

写真 4.3.1‑1  工場運転試験、舵取機(アクチュエータ)に取付の場合   

 

4.3.2  工場運転試験、駆動装置に取付の場合 

写真 4.3.2‑1 には、アクチュエータの代わりに、回転速度(転舵速度に対応)を自由に変えること が出来る駆動装置を用いた場合を示す。 

                   

写真 4.3.2‑1 工場運転試験、駆動装置に取付の場合   

     

(31)

いる様子を写真 4.3.2‑2 に示す。 

                                         

写真 4.3.2.‑2  ティーチングユニットでの設定の様子 

(操舵システム作動監視装置、検出演算部の設定をティーチングユニットで設定の様子) 

   

(32)

4.3.3  実舵角(検出部舵角)に対する各出力の関係 

実舵角(検出部舵角)に対する各出力(舵角指示器指針、アナログ出力及び信号データ 値)の関係を計測した。その結果、極めて高いリニアリティを持つことが解った。 

信号データ値では、その誤差は最大±0.02°、舵角指示値では±0.16°、アナログ出力 ではほとんど誤差は検出されなかった。 

なお、舵角指示器の  シングルタイプの表示範囲は STBD/PORT 共 0〜70°、ダブルタイ プでは、右舷側指針は STBD 110°〜0°〜PORT3 0°、左舷側指針は STBD 30°〜0°〜PORT  110°である。 

なお、指示器指針に、機械的なバックラッシュにより、多少ガタツキがあったので、機 構面で工夫を凝らし、このバックラッシュを除くようにした。 

                                         

  舵角指示器指示範囲 

  シングルタイプ:A〜0〜A' 

  ダブルタイプ、 右舷指針:B〜0〜B' 

  左舷指針:C〜0〜C' 

 

図 4.3.3‑1  実舵角(検出部舵角)に対する表示角/出力値   

(33)

図 4.3.4‑1 は、アクチュエータがロータリーベーン式舵取機の場合のモニター表示の 状態の一例を示す。 

この例では、基準転舵速度が 22 秒/65°で、転舵速度の偏差が±3°/65°以内、即ち 転舵速度(dδ/dt) が 2.6°/秒〜3.42°/秒の範囲にあれば、正常(緑色)表示をし、

転舵速度(dδ/dt) がこの範囲を越えて 2.6°/秒から 2.32°/秒または、3.42°/秒 から 4.06°/秒になれば要注意(黄色)表示をし、更にこの範囲を越えれば異常(赤色)表 示をすることを確認した。 

運転は長期間にわたって行い、この間偏差が蓄積されて大きくなるようなことはなく、

極めて安定して動作した。 

なお、舵角ゼロ位置設定、最大転舵角設定、正常転舵速度設定、及び要注意/異常速度 範囲の初期設定は、写真 4.2.1‑6、及び写真 4.3.2‑2 に示すティーチングユニットで行 えるようにしている。 

                                 

図 4.3.4‑1 基準転舵速度からの実転舵速度の遅速に対するモニター表示例   

 

(34)

4.4  MED 試験と MED 認定申請作業 

本装置の販売を世界市場に展開できるようにするため、技術面での国際的な障壁をク リヤすべく、EC 認定試験所において MED 指令(EC 舶用機器指令、Council Directive on  Marine Equipment)に基づく一連の耐環境動作試験を以下の通り実施した。 

実施した試験の概要は次の通りである。 

操舵システム作動監視装置及びそれに付随する舵角検出装置の環境条件に対する耐久性 試験並びに対抗力試験として、腐食試験(塩水噴霧)及び動揺・傾斜試験を独立行政法人 海上技術安全研究において実施した。 

腐食試験(塩水噴霧)及び動揺・傾斜試験は、特に問題となる点がなく判定基準に合格 した。 

また、EMC 電磁界耐性試験、EMC 不要輻射抑圧試験、電気的トランジェント(バースト、

サージ)試験、静電気放電の耐性試験、低温・高温・高温高湿試験および振動試験成績の 試験をフルノ・ラボテック・インターナショナル(株)において実施した。 

EMC 不要輻射抑圧試験については、試験遂行過程でいくつか不具合点が発生したが、対 策を施すことによって、全ての試験項目において、判定基準に合格し、EC 認定条件をクリ ヤした。 

下記に実施した試験項目を示す。 

4.4.1  腐食試験(塩水噴霧) 

4.4.2  動揺・傾斜試験 

4.4.3  伝導無線周波数電磁界の耐性試験  (イミュニィティ)  4.4.4  放射無線周波数電磁界の耐性試験  (イミュニィティ) 

4.4.5  電気的ファーストトランジェント/バースト耐性試験  4.4.6  電気的低速トランジェント(サージ)耐性試験 

4.4.7  静電気放電の耐性試験  4.4.8  EMC不要輻射抑圧試験  4.4.9  低温・高温・高温高湿試験   

 

(35)

4.4.1.1  試験方法 

腐食試験(塩水噴霧)は、IEC 60068‑2‑52:1996(JIS C0024:2000)に規定する厳しさ(1) の条件で行った。すなわち、15〜35℃で 5wt%濃度の塩化ナトリウム溶液を 2 時間噴霧の 後、温度 40±2℃、相対湿度 93+2‑3%の湿度槽での7日間放置でもって 1 サイクルとし、こ の操作を4回繰り返した。その後、試験対象装置の機能確認試験を行った。この操作を4 回繰り返した。その後、試験対象装置の機能確認試験を行った。 

噴霧槽及び湿度槽の写真をそれぞれ写真 4.4.1‑1 及び写真 4.4.1‑2 に、試験対象装置を 写真 4.4.1‑3 に示す。 

                             

4.4.1.2  判定基準 

  腐食試験(塩水噴霧)後、定格電源電圧で動作すること。 

               

写真4.4.1-1  噴霧槽 写真4.4.1-2  湿度槽

シングルタイプ ダブルタイプ

(36)

4.4.1.3  試験結果  (1)  腐食状況 

4サイクル終了後の試験対象装置の状態を写真 4.4.1‑4〜写真 4.4.1‑6 に示す。シング ルタイプ及びダブルタイプの双方に、ガラス窓パッキンから塩水が侵入し、筐体の一部に 腐食による膨れが認められたが、内部基板の腐食までには至っていなかった。 

                                                           

 (2)  機能確認試験 

腐食試験(塩水噴霧)後の機能確認試験は、試験対象装置に接続箱(演算ユニット)を介し て検出部を接続し、検出部から発信される舵角信号データと、演算ユニット内部データ、

指示器受信データとの比較を行った(写真 4.4.1‑7)。 

写真4.4.1-4  4サイクル終了後の状態

写真4.4.1-5  内部状態(シングルタイプ)

(37)

いるが、演算ユニットと指示器の間では信号データのずれはない。また指針の読み値にも 異常は認められない。 

                                                             

写真4.4.1-6  内部状態(ダブルタイプ)

検出部

接続箱

舵角指示器

(38)

4.4.2  動揺・傾斜試験  4.4.2.1  試験方法 

  動揺・傾斜試験は Bureau Veritas Pt C, Ch 2, Sec 2 General Design Requirements 1.6  Inclinations に準拠して行った。すなわち、試験対象装置に対して傾斜角 22.5 度、周期 10 秒で連続 60 分間の動揺・傾斜を与えた(写真 4.4.2‑1)後、機能確認試験を行った。 

                                 

4.4.2.2  判定基準 

  動揺・傾斜試験後、定格電源電圧で動作すること。 

 

4.4.2.3  試験結果  (1)  動揺・傾斜試験 

試験対象装置に傾斜方向は横方向とし、傾斜角度 22.5 度、周期 10 秒、の動揺・傾斜を 60 分間加え、異常のないことを確認した。 

(2)  機能確認試験 

機能確認試験は、試験対象装置に接続箱(演算ユニット)を介して検出部を接続し、検 出部から発信される舵角信号データと、演算ユニット内部データ、指示器受信データとの 比較を行った。 

動揺・傾斜試験後の機能確認試験の結果は、信号データについては、検出部と演算ユニ ット間において最大±0.02 度の誤差が生じているが、演算ユニットと指示器の間では信号 データのずれはない。また指針の読み値にも異常は認められない。 

(3)  判定 

以 上 の 結 果 、 試 験 対 象 装 置 は 、 Bureau Veritas Pt C, Ch 2, Sec 2 General Design  Requirements 1.6 Inclination に規定する動揺・傾斜試験に合格した。 

写真4.4.2-1  動揺・傾斜試験の状況

(39)

伝導無線周波数電磁界の耐性試験は IEC61000‑4‑6 に規定する試験対象装置の電源線、

信号線に伝導無線周波数電磁界を限度値まで加えた時正常に動作する事(性能クライテ リア A)の条件で行った。 

伝導性無線周波数電磁界の耐性試験の限度値は次のとおりとする。 

  伝 導 無 線 周 波 数 : 10Vr.m.s  (2 〜 25MHz の 指 定 し た ス ポ ッ ト 周 波 数 )及 び 3Vr.m.s  (150KHz−80MHz) 1kHz、80%AM 変調、Source impedance 150Ω 

 

4.4.3.1  試験準備 

①  写真 4.4.3‑1 のとおり試験対象装置を設置する。 

②  試験対象装置への試験電源、信号供給のために補助装置として結合/減結合器(CDN)

を接続する。 

                     

写真 4.4.3‑1  ノイズ耐性試験室での機器設置   

 

4.4.3.2  試験方法 

試験対象装置の電源ライン及び装置間の信号ラインに CDN を通して規定の電磁界を加 え、舵角試験治具により試験対象装置の性能試験を行い正常であることを確認する。 

 

4.4.3.3  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、伝導性無線周波数電磁界の耐性試験(イミュニティ)に 合格した。 

 

(40)

4.4.4  放射無線周波数電磁界の耐性試験  (イミュニィティ) 

放射無線周波数電磁界の耐性試験は IEC 61000‑4‑3 に規定する試験対象装置全体に放射 無線周波数電磁界を限度値まで加えた時正常に動作する事(性能クライテリア A)の条 件で行った。 

耐性電磁界限度値は次のとおりとする。 

  放射性無線周波数電磁界の耐性試験の限度値:10V/m(r.m.s. 80MHz‑1GHz) 1kHz、

80%AM 変調   

4.4.4.1  試験準備 

  ① 写真 4.4.4‑1 のとおり試験対象装置舵角試験治具を電波暗室内の回転台に設置す る。 

  ② 試験対象装置を結ぶケーブルは、電磁界発生アンテナに対し 1m 以上正対するよう に設置する。 

  ③ 試験対象装置(舵角指示計)の指針はモニターで監視できる位置に設置する。 

                     

写真 4.4.4‑1  電波暗室内での機器設置   

4.4.4.2  試験方法 

①試験対象装置を設置した木製の試験台前端から 3m の位置に電磁界発生アンテナを 設置する。 

②電磁界発生アンテナに規定の電磁界を加える。 

③試験対象装置には AC100V を給電し動作させ、舵角試験治具により舵角検出器に基準 舵角を与え舵角指示計の指示角度を読み取る。 

④電磁界発生を停止した後も③と同様の試験を行い変化がないことを確認する。 

 

4.4.4.3  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、放射性無線周波数電磁界の耐性試験(イミュニティ)に 合格した。 

 

(41)

  電気的ファーストトランジェント/バースト耐性試験は IEC61000‑4‑4 に規定するス トトランジェント/バースト波を限度値まで加えた時正常に動作する事(性能クライテ リア B)の条件で行った。 

電源ラインでのバースト耐性試験の限度値は次の通りとする。 

  ±2KV  5/50ns tr/td 5kHz  繰返し周波数 

また、信号伝送ラインでのバースト耐性試験の限度値は次の通りとする。 

  ±1KV  5/50ns tr/td 5kHz  繰返し周波数   

4.4.5.1  試験準備 

①  写真 4.4.5‑1 のとおり試験対象装置、試験治具を設置する。 

                     

写真 4.4.5‑1  ノイズ耐性試験室での機器設置   

4.4.5.2  試験方法 

①  バースト発生器から試験対象装置の電源ラインに対して結合/減結合ネットワー クを経由し規定の限界値電圧を印加する。 

②  同じく EUT1,EUT2 間に信号伝送ラインに対しては、バースト発生器から容量性結 合クランプを通して表 4 の限界値電圧を印加する。 

③  上記はいずれも 300msごとに 15msのバーストで正負各極性のパルスを 3〜5 分 間印加する。 

④  バースト印加中及び印加停止後舵角試験治具により試験対象装置の動作を確認 する。 

 

(42)

4.4.6  電気的低速トランジェント(サージ)耐性試験 

電気的低速トランジェント(サージ)耐性試験は EC61000‑4‑5 に規定する試験対象装置 の電源線、信号線にサージ波を限度値まで加えた時正常に動作する事(性能クライテリ ア B)の条件で行った。  

電源ラインでのサージ耐性試験限度値は次のとおりとする。 

  ライン・接地間:1kV、 

ライン・ライン間:0.5kV、 

立上り:1.2μs、パルス幅:50μs   

4.4.6.1  試験準備 

  ①  写真 4.4.6‑1 のとおり試験対象装置、試験治具を設置する。 

                     

写真 4.4.6‑1  ノイズ耐性試験室での機器設置   

4.4.6.2  試験方法 

① 合成波発生器から試験対象装置の電源ライン(ライン・接地間及びライン・ライン 間)に対して結合/減結合ネットワークを経由し限界値電圧を印加する。 

② 上記はいずれも 1 パルス/分の繰り返し周期で、±各極性のパルスを連続 5 分間印 加する。 

③ サージ印加中及び印加停止後試験治具により試験対象装置の動作を確認する。 

 

4.4.6.3  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、電気的低速トランジェント(サージ)耐性試験に合格した。 

   

(43)

静電気放電の耐性試験は IEC 61000‑4‑2 に規定する試験対象装置の手が触れる部分に静 電気放電を限度値まで加えた時正常に動作する事(性能クライテ リア B)の条件で行っ た。 

静電気耐性試験限度値は次のとおりとする。 

  6KV  導電性表面は接触放電、  8KV  絶縁性表面は気中放電   

4.4.7.1  試験準備 

①  写真 4.4.7‑1 のとおり試験対象装置、試験治具を設置する。 

                     

写真 4.4.7‑1 ノイズ耐性試験室での機器設置   

 

4.4.7.2  試験方法 

  ①  静電放電発生器から 150pF+330 オームの静電プローブを通して試験対象装置に対 して放電を行う。 

  ②  試験対象装置の筐体各側面とコーナーに規定の静電気を加える。静電気ポイント 箇所(代表される箇所)は写真 4.4.7‑2 参照。 

  ③  上記はいずれも端面に対し放電面は垂直になるように静電プローブを設置する。 

  ④  放電は±各極性で 10 回繰り返す。 

 

静電気印加中及び印加停止後試験治具により試験対象装置の動作を確認する。 

 

4.4.7.3  試験結果 

(44)

                                                                           

写真 4.4.7‑2 静電気放電ポイント箇所 

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(45)

EMC不要輻射抑圧試験は CISPR16‑1(伝導性エミッションレベルの限度値)に規定 する条件で行った。伝導性エミッションレベルの限度値は次のとおりとする。 

①  無線周波障害(伝導性)試験:試験対象装置の電源線及び信号線から放射される無 線周波電磁界が 

   限度値以下である事  

②  無線周波障害(放射性)試験:試験対象装置全体から放射される無線周波電磁界が 規定された限度値以下である事  

 

4.4.8.1  無線周波障害(伝導性)試験  4.4.8.1.1  試験準備 

  写真 4.4.8‑1 のとおり試験対象装置、試験治具を電波暗室内に設置し、擬似電源ネッ トワークを接続する。 

                     

写真 4.4.8‑1  電波暗室内での機器接続図   

 

4.4.8.1.2  試験方法 

擬似電源ネットワークを通して試験対象装置に AC100V を供給し、同擬似電源ネットワ ークの測定用受信機端子にスペクトルアナライザーを接続し、エミッションレベルを測 定する。 

このとき試験対象装置は運転状態にしておく。 

 

4.4.8.1.3  試験結果 

(46)

4.4.8.2  無線周波障害(放射性)試験  4.4.8.2.1  試験準備 

写真 4.4.8‑2 のとおり試験対象装置、試験治具を電波暗室内の回転台に設置する。 

                       

写真 4.4.8‑2 電波暗室内での機器接続   

 

4.4.8.2.2  試験方法 

  ①試験対象装置を設置した試験台前端から 3m の位置に測定用アンテナを設置する。 

  ②試験対象装置には AC100V を給電し運転状態にしておく。 

  ③スペクトルアナライザーにより測定用アンテナからの雑音信号レベルを測定する。 

 

4.4.8.2.3  試験結果 

当初エミッションレベルが限度値を越え、合格レベルに達しなかったが、試験対象装 置の筐体とカバー等のスリット状開口部をすべて導電性シールによりマスキングするこ とにより、性能試験において良好な結果を得て、無線周波障害(放射性)試験に合格し た。 

   

(47)

4.4.9  低温・高温・高温高湿試験 

  ①  低温試験  ‑15℃定格電源電圧で性能保証をすること。 

       ‑15℃限界電源電圧で動作保証すること。 

  ②  高温試験  55℃定格電源電圧で性能保証をすること。 

       55℃限界電源電圧で動作保証すること。 

③  高温・高湿試験  40℃湿度 93%定格電源電圧で動作保証をすること。 

 

4.4.9.1  試験準備 

①  温度湿度試験槽(恒温槽)内に、操舵システム作動監視装置検出部・警報モニター 付舵角指示計・試験治具をそれぞれ設置する。 

②  恒温槽外より電源線を引き込みこれらに接続する。 

③  温度測定点は、恒温槽室内、これら装置の内部、筐体外面とし恒温槽に併設の温度 記録計で記録をとる。 

④  動作、性能確認のため恒温槽内のこれら装置を恒温槽外から操作し作動を確認する。 

⑤  恒温槽への設置状況は写真 4.4.9‑1 のとおり。 

                                   

(48)

4.4.9.2  低温試験 

  低温試験は IEC 60068‑2‑1 により、下記の通り行う。 

  ①  恒温槽内の温度を−15℃として、16H 放置する。 

  ②  上記放置のあと試験対象装置の電源をいれて2H 以上動作させる。 

この動作時間内に装置の通常電源での性能試験、限界電源での性能チェックを行 う。(このとき恒温槽温度は−15℃を保持しておく。) 

  ③  試験完了後は恒温槽内を常温、常湿に戻す。 

 

4.4.9.2.1  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、低温試験に合格した。 

 

4.4.9.3  高温試験 

  高温試験は IEC 60068‑2‑2 により、次の通り行う。 

  ①  恒温槽内の温度を+55℃として、10H〜16H 放置する。 

  ②  上記放置のあと試験対象装置の電源をいれて通常電源での性能試験、限界電源で の性能チェックを行う。(このとき恒温槽温度は+55℃を保持しておく。) 

  ③  試験完了後は恒温槽内を常温、常湿に戻す。 

 

4.4.9.3.1  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、高温試験に合格した。 

 

4.4.9.4  高温・高湿試験 

高温・高湿試験は IEC 60068‑2‑30 により次の通り行う。 

  ①  恒温槽内の温度を+40℃として、3H かけて湿度を 95%まで上昇させ 10H〜16H 放 置する。 

  ②  上記放置のあと試験対象装置の電源をいれて2H 以上動作させる。 

       この動作時間内に試験対象装置の通常電源での性能チェックを行う。 

        (このとき恒温槽温度は+40℃±2℃、湿度は 93%±3%を保持しておく) 

  ③  試験完了後は恒温槽内を常温、常湿に戻す。 

 

4.4.9.4.1  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、高温・高湿試験に合格した。 

 

(49)

4.4.10  振動試験 

振動試験は振動試験中及び試験後において定格電源電圧で動作保証をすること。 

耐久試験は振動共振点または 30Hz で加速度 7m/s2にて定格電源電圧で動作保証をする こと。 筐体、部品の破損脱落がないか確認する。 

試験は IEC 60068‑2‑1 により、次の通り行い、振動試験中及び試験後において定格電 源電圧で動作保証をすること。筐体、部品の破損脱落がないか確認する。 

  ①  振動の加振方向は試験対象装置に対して水平横(X 方向)、水平縦(Y 方向)、上

(Z 方向)の 3 方向で行う。 

  ②  周波数 2〜5Hz⇒13.2Hz、振幅1mm 及び 13.2Hz⇒100Hz 最大加速度 7m/s2で周波数 変化率を 0.5 オクターブ/min で正弦波振動を与える。 

  ③  上記②の条件で共振点サーチを行い、共振点にて2H または共振点が無いときは 30Hz にて2H の耐久試験を行う。 

  ④  試験中に 1 回と試験後 1 回通常電源にて性能チェックを行う。 

 

4.4.10.1  試験準備 

  ①  写真 4.4.10‑1 のとおり試験対象装置を振動試験加振台に設置し、電源線、舵角試 験治具、測定器を接続する。 

               

写真 4.4.10‑1  振動試験台への設置状況   

 

4.4.10.2  試験結果 

  性能試験結果は良好であり、振動試験に合格した。 

 

(50)

4.5  実船搭載運転試験 

試作した試作品を実船に搭載し、装備・取扱の簡易性、性能を確認し、実用化のため のデータ取得し、改良設計を行い実用化回路を製作し製品に組み込んだ。 

神田造船所 SNo.507 「興山丸」のサーフェイスフィン舵角指示器に操舵システム作動 監視装置を組み込んで、以下に記す機能を確立するための確認試験を行った。 

同船に搭載した本装置を写真 4.5‑1 に示す。 

                     

写真 4.5‑1  実船搭載した作動監視装置組込舵角検出/指示器   

 

舵取機が正常に作動しているかどうかを監視するために、本来舵取機のあるべき転舵 速度と舵角検出器からの出力データから得られた転舵速度計測値とを比較し、その差の 程度に応じて正常・要注意・異常を自動的に判断し表示させる構成とした。 

運転中、システムの作動そのものは正常に作動することを確認したが、項目 4.5.1 に示 すような予期せぬ誤警報が発生した。 

 

(51)

  海上予行運転において、直進航行中に、オートパイロットから転舵指令が出ていない 状態の時に、このモニターが警報を発する即ち誤警報を発することが何回か起こった。

推定されるその原因は次のようである。 

オートパイロットからの電磁弁駆動信号の ON‑OFF パターンは、図 4.5.1‑1 のようであ ると想定し、本舵取機作動モニターを構成した。その電磁弁駆動信号を本装置に取り込 んで操舵中/非操舵中の参照信号として利用している。 

             

図 4.5.1‑1  電磁弁駆動信号の想定 ON‑OFF パターン   

 

オートパイロットからは、閾値 A の左側及び閾値 B の右側では完全に ON(AC100V 出力) され、それより内側では完全に OFF(0V )となると考えていた。 

しかし、実状は、図 4.5.1‑2 に示すように閾値はその近傍で幅を持ち、舵角がこの領域 にあるとき、舵に当たる水流変動等により、短いインターバルでの ON−OFF が繰り返し パルス状に出力されるが、そのパルスエネルギーでは電磁弁を作動させるに十分な力が 発生せず、従って電磁弁は中立位置のままであるが、本モニターは電磁弁駆動信号が入 っていると認識することになり、結果として、電磁弁駆動信号が来ているのに操舵が行 われない(転舵速度がゼロ)ことから、舵取機が作動不良であると判断し、本モニターは 警報を発することに到った。 

               

(52)

4.5.2  誤作動原因の究明と対策 

上述のように、オートパイロットから、不感帯の閾値付近で短いインターバルの ON‑OFF 信号が繰り返し出力されることを想定していなかったため、その条件をクリヤする回路 を設けていなかったことにより誤警報の発生に到った。 

この現象を究明するため、閾値に関する現象を調査研究し誤警報を無くし作動モニター 機能を十分に発揮できる回路設計を行いシステム化した。 

 

4.5.3  原因究明のための試験 

オートパイロットから舵取機電磁弁への制御信号の擬似信号として、ON‑OFF 信号のパ ルス幅を種々変えた繰り返し信号を与えて、異常判別回路の挙動を調べた。 

図 4.5.3‑1 に示すように、電磁弁への信号電圧を本装置への取り込み部に取り込んだ電 圧信号のノイズを除去するためコンデンサーを設けているが、この容量が不適切ではな いかと考え、その出力の様子をシンクロスコープで観察した。 

                           

図 4.5.3‑1 電磁弁作動信号取込回路   

 

オートパイロットの電磁弁制御信号の閾値付近での短いインターバルでの ON‑OFF 繰 り返しのパルス状の信号に対しては、平滑コンデンサーC1〜C4 をオリジナルセットの 10 μF を 0.1μF に変更する事により解決できた。このことに関しては、後の項目 4.5.4 に て詳述する。 

 

(53)

図 4.5.3‑3 は、コンデンサー10μF の時の波形を示す。 

実船実験を行った装置は本回路である。 

電磁弁入力相当信号に対するフォトカプラー出力電圧を測定したところ、その電圧波 形は図のようになり、時定数は 97.5msec 程度である。 

図 4.5.3‑3 の 0sec 時点で電磁弁信号が遮断しても、197ms までは、DC0.3V 即ち電磁弁 入力の AC 電圧に換算すると AC6V 以上の出力があり、電磁弁 ON‑OFF の判別回路は、この 時点までは電磁弁信号が入力され続けていると判定していることが分かった。したがっ て、これより短いパルス状の信号が繰り返し入力されれば、判別回路は電磁弁信号が持 続していると判定することになる。このことが、誤警報の原因につながった。 

                                 

図 4.5.3‑3 コンデンサー10μF の時波形   

(54)

図 4.5.3‑4 はコンデンサー1μF の時の波形を示す。 

出力波形から、時定数は、8.5msec 程度であると見える。 

電圧が、DC0.3V 即ち、AC 電圧に換算して AC6V 等価となるまで減衰する時間は約 22.5msec である。閾値付近でのプロペラ回転等による脈動はこんなに速くはないと考え られるが、もう少し時定数が小さい方が安心である。 

                     

図 4.5.3‑4 コンデンサー1μF の時波形   

 

図 4.5.3‑5 はコンデンサー0.1μF の時の波形を示す。 

出力波形から、時定数は、2.4msec 程度であると見える。 

電圧が、DC0.3V 即ち、AC 電圧に換算して AC6V 等価となるまで減衰する時間は約 3msec で、十分短い。なお、ON 入力時にひげ状パルス(AC60Hz の立ち上がり立ち下がり時に出 ている)が、見られるが、極めて短く、また、落込み電圧も 10%程度なので、この特性 を判別回路に採用しても問題ない。 

また、場合によっては、オートパイロットからの電磁弁への信号が遮断時に切れが悪 いケースがあるかも知れないことを想定して、電磁弁への AC 電圧の 75%以上で ON と判 別するように回路構成をする。 

                   

図 4.5.3‑5  コンデンサー0.1μF の時波形 

(55)

出力波形から、時定数は、十分短いが、AC60Hz から誘引されるひげ状パルスがやや大 きいので、場合によってはこれが不安定を引き起こす要因となるかも知れない。したが って、これの採用は避けた方がよいと考えられる。 

                         

図 4.5.3‑6  コンデンサー0.01μF の時の波形   

 

図 4.5.3‑7 はコンデンサー無しの時の波形を示す。 

AC60Hz から誘引されるひげ状パルスが大きいので、これが不安定を引き起こす要因と なる可能性があり、採用は避けた方がよいと考えられる。 

                     

(56)

4.5.4  対策と結果 

オートパイロットの電磁弁制御信号の閾値付近での短いインターバルでの ON−OFF 繰り 返しのパルス状信号に対しては、図 4.5.3‑1 に示す平滑コンデンサーC1 から C4 を当初採用 していた 10μF を 0.1μF に変更することにより解決できたことは前述の通りである。 

しかし、フォトカプラーPC1〜PC4 は、電磁弁信号電圧が AC6V 以上あれば ON になってし まう。この程度の電圧は、オートパイロットから出力される SSR 等の OFF 時の切れが悪けれ ば漏洩分電圧として現れる恐れが多分にあるので、この電圧をカット出来るようにする必要 がある。 

その対策として、図 4.5.3‑1 に示すように、整流器出力と減流回路との間に Zener Diode として、Zener Voltage 100V のものを採用すると、電圧信号の大きさに対して Zener 出力 電圧は図 4.5.4‑1 のようになる。 

このように構成すれば、AC 電圧が 74V 以上にならなければ、フォトカプラーは ON にはならず、したがって誤動作することは ない。 

なお、この Zener Diode は、オリジナル 回路では設けていなかったものである。 

なお、抵抗 R は回路の作動の安定化のた めに採用した。 

これらの対策を施すことによって、シス テムが安定して作動するようになった。 

 

図 4.5.4‑1 電磁弁信号の Zener Diode 通過後電圧   

4.5.5  船級規則との整合性を図るための構造見直し 

システムの機能としては、完全な状態となった段階で、日本海事協会に本装置が船級 規則との整合がとれているかどうかアドバイスを求めた。 

船級規則に沿うように、設計し装置を設計し、システムを構築してきたのではあった が、「2組の独立した制御システムは、これらの内の一方の機械的又は電気的な故障に より他方が作動不能となることの無いように配置すること。これに関わり、筐体、制御 箱、配電盤あるいは船橋コンソール内に設けられるケーブル、接続点及び部品であって、

二重に設けられる制御システムに使用されるものは、出来る限り離して配置すること。

十分な距離が得られない場合は、耐火板によって分離しても良い。」という要求に対し て十分ではないとのアドバイスを頂き、基板構成、部品の配置、電線処理、ユニット間 に遮蔽板の適用など全面的な構造の設計変形を行い、製作し直した。 

この過程で、舵角検出装置内に設けることにしていた舵角極限リミットスイッチを、

舵角検出装置内ではなく、アクチュエータに直接取付けることに変更した。 

それにより、変更した試作品を用いて、項目 4.3MED 試験を実施した。 

(57)

達成目標として、以下の 5 項目を設定して、本開発に取り組んだ。 

開発過程で、予期せぬことが、何度か発生し、その対策に多くの時間を費やすことに なったが、ようやく、目的とする装置の開発を完成することが出来た。 

すなわち、 

① 舵角検出装置で検出した舵角の微分量を演算し、予め求めた舵取機械のその時ある べき転舵速度と比較して、操舵システムの作動状態の良否の判定方法の確立し課題 を達成した。 

② 上記で求めた判定方法を、舵角検出装置に適用し、これと組合わせ、舵角指示、オ ートパイロット制御信号、操舵システム作動監視を行わせる統合システムを、開発 途上で発生した③、⑤に記す問題を克服することによって目的とする製品として完 成することができ、本課題を達成した。 

③ 工場運転試験を繰り返し行い、本システムが安定して作動することを確認した。特 に、下記の実船試験中に発生した予期せぬオートパイロット装置からの電磁弁への 閾値付近発生する不規則な ON‑OFF 信号による誤警報に対して取った対策が効果的で あることを確認した。 

④ 世界市場を対象とした製品として仕上げるため、EC 認定機関による MED 認定試験を 受け、全ての試験項目において、判定基準に合格し、EC 認定条件をクリヤした。 

⑤ 実船に搭載し、試験を行って、振動、動揺中でも安定して作動し、性能を発揮する ことの実証、確認を行った。この間において、オートパイロット装置からの電磁弁 への閾値付近発生する不規則な ON‑OFF 信号によって、予期せぬ誤警報が発生したが、

上述したようにその信号のスペクトル分析を行い、原因を究明し、信号処理回路に 反映させて、この問題を解決した。 

 

6.今後の予定 

現在のシステムでは、操舵装置の作動、特に転舵速度が徐々に劣化していく状態を監 視し、それを報知する機能を有するものは存在せず、操舵機能が不能になってはじめて 異常に気づくこととなり、船の安全運航上極めて危険な状況を引き起こすことになる。

また操業上大きな損失を引き起こしかねない。 

操舵システムが全く作動しなくなるような異常に到る前に、その兆候を知ることがで きるので、事前に適切な対処が行え、大きなトラブルに陥ることから回避でき、安全性 の向上は言うまでもなく、操業上の損失を抑えることに寄与出来るシステムを開発する ことが出来た。 

今後、この成果を展開して、ロータリーベーン式舵取機に、又他の舵取機にも装備さ

(58)

                                                     

 

「この報告書は BOAT RACE の交付金による日本財団の助成金を受けて作成しました」 

             

 

 

 

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