■ 博士論文要旨
神奈川大学審査学位論文の要 旨
生産財製造業 における戦略
一 競争優位 を確立す る策定方法 ‑
StrategyinProductiveGoodsManufachrer
‑ ′meMethodologyofEstablishingCompetitiveAdvantages一
学 位 の 種 類 博士 (経営学) 学 位 記 番 号 博 甲 第73号 学位授与の 日付 2005年3月31日
森 田 和 光
KazuteruMorita
■キーワー ド
能動的戦略、変化誘起戦略、外部環境変化への挑戦、絶対的競 争優位の確立、 自己革新組織
序章
1 研 究の 目的
本論文で は 「生産財製造業 における戦略」 につ いて考察す る。企業 が設定 した 目標 を達成 す るた めに、直面 している戦略的課題 を解決 してい く手 段 が戦略で ある。戦略展 開時には顧客の前 で競合 と対嶋 し、優 位 に事業 を進 めなければ な らない。
従 って本論文の 目的は戦略に関 して 「競争優位 を 確立す る策定方法」 はどこに焦点 を当て、如何 に して戦略構築すれば良いのか を提示す ることにあ る。
この論文 では、従来の思考の枠組みか ら一段視 点 を高 めた次元 か ら、競争優位の確立 が可能 と思 われ る仮説 を提示す る。 その仮説が有効である事 を証明 し、最終 的には 「競争優位 を確立 す る、新 たな戦略策定方法」 を提案す る。
現在、筆者 が設定 している仮説 は以下 の通 りで
ある。
「事業 の外部環境 (市場、顧客、競合 、規 制 と 取 り決 め、 の4要 素 で構 成 され る) は従 来 よ り、
所与で、変化 させ る事 はで きない 。外部環境の大 いなる変化 に対応 して、受動 的に行動す る事 が戦 略的行動 で ある、 とされて きた。 しか し、事業者 が主体的、積極 的、能動 的に事業 の外部環境 それ 自身に働 きかけ、変化 を起 こす活動 が本来の戦略 的行動 で あ る。」 と筆者 は仮説 を設定 した。 さ ら に 「前者の受動的 と後者 の能動 的戦略行動の間に 異 なる結果 が生 じるのではないか」 との仮説 も設 定 した。
従来か ら筆者 は戦 略策定場面 に於 いて、現状分 析 と して、事業の外部環境の分析 か ら入 るのが常 であった。
この作業 では、設定業界 において先行す るため に は継 続 的 な苦 しい作業 の繰 り返 しを強 い られ る事 とな る。 それ で も半年 か ら1年程度 の期 間 を、
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競合 よ り先行す るのがやっとである。 この事態 を 脱却 す る方法 を常 日頃考 えて きた時、「外部環境 の変化 に対応 して自 らの戦略構築 に必要 とされ る 内部環境である経営資源 が不十分の場合 はどうな るか」 と考 えることが しば しばあった。事業の内 部環境である経営資源 を、移動する事に も多大な エネルギーを費や さなければな らない。 それで も 満足行 く状況が構築で きないのが常である。従 っ て 「所与であ りコン トロール不可能 とされ る外部 環境 を動か し変化 を誘起 させ ることは、極 めて困 難 を伴 う行動である」 と考 えざるを得 なかった。
30年程前、小規模 ではあるが外部環境への働 きかけを実施 した事がある。 当時は意図的ではな かったが、結果 と して 日本のガス燃焼安全技術の 業界標準 とす ることがで き、 自社の競争優位 を確 立 した。 まさしく他企業にとっては所与 となる業 界規制 を提起す る事 となったのである。振 り返 る と事業の外部環境の変化発生 と新たな業界標準構 築へ能動的 ・積極 的に関与 した事になる。
また近年、中国における空調制御業界での競合 各社の活動 は正 に激動す る市場の動向に追随、対 応す るためだけではな く、中国に存在す る当該事 業外部環境へ変化 を起 こそうとしているものでは ないか、 と思わせ るものが出現 して きてい る。そ れ らの判断の背景 には外部環境の既存の構成 ・枠 組み を大 きく変 えようとす る、それ ら企業の意図 を垣間見 ることが出来 る。
以上の疑問 と仮説 を事例 によ り解明 し検証 を試 み るのがこの論文の主 目的である。
2 研究の範囲
国際的に競争優位 を構築 し、成功裏に事業 を行 なってい る生産財製造業 が存在 してい る。 それ ら の うち比較分析 が可能 な欧州、アジア、米系の各 企業 を研究対象 として取 り上 げる。
その競争優位構築の過程 において、それ らの企業 が とった対応行動 とその時点における背景 に焦点 を当て分析す る。
製造業 に特定 した理 由は、サービス業 に関する 戦略策定 は従来か らの筆者研究分野か ら大 きく離 れている事実 がある。 さらに範囲 を絞 り込み製造
業か ら消 費財製造業 を除いて生産財製造業 と研究 範囲 を特定 した。
研究の主要地理的範囲 を中国 とし、同地域 にお いて事業活動 を してい る生産財製造業 を対象 とす るの は、以下の2点で研究継続 と研究深耕の両面 で大変 に有効 であると判断 したか らである。第1 に現在の中国は生産面のみな らず、販売面で も日 本、欧米企業の新規事業展開の主要 な地域 である 事が挙 げ られ る。その結果、新たな戦略展 開が次々 と試み られ、その成果 を短期間に確認す る事 が可 能 となってい る。第2に筆者 の担 当事業の地理 的 分野 において中国が約80%を占め るとい う現状 がある。
その理由か ら、研究対象 を中国で事業活動 を活 発に行 なっている企業 とした.欧州企業ではシー メ ンスの空調制御機器部門の子会社である 「シー メ ンス ・ビルデ ィング ・テクノロジーズ社 (略称 : SBT)」 とスイスの空調制御機器会 社の アジア子 会社である 「べ リモ ・アジア ・オー トメーシ ョン 礼 (略称 :Belimo‑AA)」 を選 定 した。米 国企 業 か らは、やは り制御機器会社の大手であるハ ネウ エル の空 調制御機 器部 門で ア ジア子会社 で あ る
「ハネウエル ・インターナシ ョナル ・アジア社 (略 称 :HIA)」 を選定 した。
これ ら欧米企業 に対比 して分析 され るべ き日本 企業 は筆者 が勤務 している企業 とその事業関連の 顧客企業 を含む 日系企業が中心 となる。加 えて興 味深いのは新興 の中国企業である。
3 研究の意義
研究 テーマ選定 において最 も強 く意識 したのは
「生産財製造業 に関 して有効な戦略策定方法、マー ケテ イング手法 を体系的にまとめ上 げた
い
」 とい う思いである。生産財製造業 における戦略策定に 関す る参考文献で体系的にまとまった ものが数少 ないため、戦略策定提示 には多様 な分野の本、 コ ンサルテ ィング会社の教本、同業界各社の社内資 料 を集約 して活用 して きた。それ らを体系的にまとめ上げ、同時に過去の実 際の現場 における経験 と発見 した事実か ら、 より 強力な競争優位 を確立 で きる戦略策定方法、実施
方法に関 して新 たな考 えを提示 し、実践 に耐 える 内容にまで完成す ることを目指す。
4 研究の手順
(1)第1章 外部環境の分析
外部環境 は 「市場」、「顧客」、 「競合」、「規制 と 取 り決 め」の4要素 か ら構成 され る。 それ らの分 析の過程 に於 いて、事例 か ら発見 した仮説 を証明 す る研究対象企業の行動 を紹介、分析 し、 その成 果 も検証す る。外部環境の変化に受動的に対応 し たか、変化 を起 こすべ く能動的に働 きかけたかを 分析す る。 その結果の成果が大 きく異 なることが 明確 にで きるか否か仮説の証明 も試み る。
(2)第2章 内部環境の分析
内部環境 は 「人 的資源」、「物 的資源」、 「技術 資源」、「組織文化資源」 の4要素 か ら構成 され る。
これ らも外部環境同様 に個別に分析す る。 自社が 保有す る各々の内部環境の状況 を認識 して課題設 定 をお こな う。
(3)第3章 課題の発見 と設定
この章 は筆者の仮説検証の場 として重要 な役割 を担 う章 となる。
外部環境の変化は事業上の脅威 と好機 として認 識 され る。 これ らへの対応策は事業上の課題 とし て設定 され る。 ここでは多 くの事例研究 を通 じて 外部環境 の変化 に対応 してい る実態 を研究 す る。
また本論文の主題である競争優位の構築 は、 どの ような経緯 によ り実現 されたか も事例研究 により 明 らかにす る。
それ ら課題は対応難易度の上位 よ り戦略的課題、
戦術的課題、定常業務的課題 に区分 され る。その 中の戦略的課題 を特に詳細 に分析する。
(4) 第4章 事業 基盤 の確立 か ら、第5章 戦 略 の構築、第6章 戦術 の展 開、第7章 戦 略及 び 戦術 の評価、第8章 不 測事態対応計画、第9章 自己革新組織 までは戦略策定 ・実施 を通 じて如 何 に して、 より強力な競争優位 を確立す るかを詳 細に分析、提議 している。
(5)第10章 結論
本章では序章 「研究の 目的」の節で設定 した仮 説 を証明で きたか、新 たな考 えを提起 で きたか、
そ して証明で きた新たな構想が普遍的かつ有意義 に実践的活用可能かを確認す る。所与 と考 えられ て きた外部環境の変革 に果敢 に挑戦す ることによ
り以下の ことを実現で きたか検証す る。
競合 に先ん じた戦略の構築 と実施が可能である か。 この戦略実現 は競争優位 を構築で きる可能性 があるか。従来の競争優位の構築の概念 は、外部 環境変化発生後の対応戦略であ り、受動的に発生 した変化対応 を迅速かつ巧みに構築す ることが求 め られ た。前者 の よ うに計画 的に構築す るの と、
後者のように結果 として構築 されたのでは大 きな 差 がでて くるか、 を証明す る。
そ して証明 された仮説が生産財製造業 にとって持 つ意味 を明確 にす る。
第1章 外部環境の分析
外部環境 を分析す るにあた り、外部環境 その も のの内容の定義付 けと現実的、具体的な意味の理 解 を事前 に してお く。本論文 における「外部環境」
の定義 は、ある生産財製造企業の組織外部に存在 す るものである。 その企業が現在、現実 に展開 し ている事業に関係 し、その事業の盛衰に大 きく影 響 を与 えるもの を外部環境 とす る。
具体 的に外部環境 を構築 す るものは、「市場」、
「顧客」、「競合」、「規制 と取 り決め」の4要素 に分 け られ る。それ らは、組織の外部に存在 し、 自ら 変化 し、 また変化 を他 か ら強い られ るもので もあ る。 その変化の過程 において、外部環境 と関係 し つつ活動 を している諸組織の事業経営 に影響 を及 ぼす。その理 由で、諸組織か らは制御不可能であ り、逆 に諸組織 その ものの在 り方 を規定す るもの と認識 されている。
本論文ではこの前提 を認識 しつつ、外部環境 を 能動的に変化 させ うる可能性 を追求す る。 またそ の結果 で得 られた成果 について も考察 を加 える。
市場は顧客、競合 で構成 され、規制 と取 り決めで 自社、競合 の行動枠組み を制限 してい る。顧客 は 市場 に提供 された財 ・サービスを購入す る組織 で ある.競合 は同様 な財 ・サービスを提供す る組織 である。規制 と取 り決め とは事業運行時において
20 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第10号 2006年3月
具体的に要求 され る行動体系の枠 を明文化 した法 的制約が主である。
法的制約力を有 しないが、実質上の制約力を有 す る官公庁が通達する指導、要求、要綱はガイ ド
ラインとして企業行動 を制限す る。明文化 されて お り、明示的であるもの、または暗に要求 される 業界指導、倫理規定 も事業活動を、穏やかである が制約するもの として、規制 と取 り決めの一種 と
して捉 えられる。
これ ら4要素の外部環境 は個別に独立 している のではない。それ らは相互に関係 しつつ、相互に 影響 を与 えつつ複雑に変化 してい く。変化 してい く過程 において、 その大 きな変化点 に於 いて新 規の市場、顧客、競合、規制 と取 り決めを生み出 す。その結果 として新規事業機会 を生み出 してい く。 また同時に既存事業、市場、顧客 を失 いかね ない大いなる脅威や既存事業継続遂行時において 付加的コス トを必要 とする新たな脅威 も生み出 し てい く。
1 市場
把握 しにくく、確定することも難 しく、特定す ることも困難な「市場」を明確にせず してターゲ ッ トとすべ き 「顧客」、「競合」、そこにおける 「規 制 と取 り決め」 も明 らかにすることはかなわない。
市場が特定 され ることなく当該市場 において生 じ ている変化、その変化が誘起 した自社にとっての
「脅威」と 「好機」を把握することは不可能である。
市場 をより明確 に浮 き彫 りに し、あたか も眼前 に見 えるが如 く分析 し切 ることが出来て、初めて 当該市場において競合 に対 して有利 に戦い うるこ とが可能 となる。
分析視点 として有効なのは、市場その ものが保 有 している複数の性格 を明確にする事 を出発点 と して、分析に着手す ることである。 ここでは複数 の性格 として 「市場規模」、「セグメン ト市場」、「市 場成長伸長率」、「市場 占有率」、「市場 占有率の順 位」 そ して 「市場特性」 をあげて個 々に分析す る。
2 顧客
市場 を定義することが終了 して後 に、財 ・サー ビスを購入 して くれ る当該市場の顧客 を特定す る
ことに着手で きる。顧客が特定で き、顧客特性 を 分析できるとその顧客に向かって適切 な戦略が策 定可能 となる。本節では以下の 「顧客の体質
」
「参 入顧客の変動」
「顧客の企業 ・事業規模」
「顧客の 分類」の4特性 を浮 き彫 りにする。3 競合
自社展開事業の競合企業は誰であるかを定義す る必要がある。その上で彼 らの保有す る経営資源 の状況 を詳細 に調査す る。経営方針、理念、使命、
製品構成、流通体系、価格体系、各種販売促進に 関する各々の戦略、それ ら戦略を実行する組織に ついて もその詳細 を調査 し、分析す る。断片的な 情報の集積 とそれ らの組み合わせによる分析が必 要であり重要である。多 くの断片情報 を組み合わ せ る事により全体像が浮かび上がって くる。競合 の全てを知 ることは出来ない。 しか し競合の全体 像 を把握す る事は出来 るOそれ ら一連の作業の結 果で、事前に競合 の行動体系が予測可能 となる。
本章では 「顕在競合 と潜在競合」、「基本的な部分 の競合調査」、「競合の製品戦略」、「競合の価格戦 略」、「競合の販売促進戦略」、「競合の流通経路戦 略」の6項 目に分類 して競合分析 を実施す る。
4 規制 と取 り決め
外部環境の分析時に特に注 目すべ き対象 として、
各種 「規制 と取 り決め」がある。規制 と取 り決め はそれ自身の発生 と変化の過程において事業上の
「脅威」 と 「機会」 を発生 させ る。規制 と取 り決 めに関係す る脅威 と機会の発生過程は、他の事業 外部環境の変化に伴い発生する脅威 と機会に比較
し非常に明確であ り、わか り易い。
従 って規制 と取 り決めの発生 と変化 を常時観察 し、それ らが事業継続に及ぼす影響 を推定す る事 は実 に重要 なことである。 「各種規制 と取 り決め の存在」、「規制は機会か脅威か」に分けて分析 さ れ る。
第2章 内部環境の分析
事業環境 を構成するもの として、外部環境 と対 置 され る内部環境 がある。本章ではその分析 も同 様の重みを持ち実施 され る。
本章では内部環境 を構築す る4要素 を個別 に分 析 してい く。そ して個 々の分析か ら自 らの組織 が 保有 している 「弱み」と 「強み」を浮 き彫 りにす る。
1人的資源 /
人的資源は量的、質的の両観点か ら分析 され る。
まずは量的観点か ら適正 あるいは過剰、過少 と定 義付 け られ る基準 を設定す る必要 がある。
販売価格決定方式の一つにコス ト・マークア ッ プ方式■が ある。製 品開発 か らア フターサ ー ビス までに発生す る全経費 を積み上 げてい く販売価格 決定方式である。つ ま り実際に掛かか る人数が必 要量的基準 と考 える方式 である。
現在の通常の販売価格決定方式 はマ ーケ ッ トプ ライス ・マークダ ウン方式iiで あるO市場価格 は 既 に設定 されていると仮定 し、開発か らアフター サービスまでの ビジネス ・バ リューチェー ン全て のコス トを事前に想定配分す る方式 である。
人的資源の質的側面 については常 に課題 として 議論 され る。つ まり要求 され る機能 を充分 に果 た す事が出来ない為に、常時それが課題 とな り、そ の解決策 を検討 しなければな らない。質的向上策 には幾つかの経営手法 が提示、実施 されて きた。
TQ
Cか らTQM
iiiへ発展 した小集団活動、 シ ックス シグマ活紗 Vな どで人的資源 の質向上 を追求す る 手法が絶 えることな く提案 され続 けている0 2 物的資源物 的資源の定義範囲はかな り広 い。 ビジネスの 着手か ら、製品寿命 に到 って販売中止す るまでに 活用す る物 的資源 は広範 に渡 る。 ここでは 「ビジ ネス移行 と物 的資源」、「物 的資源投資基準」の2 観点か ら分析 している。
3 技術資源
技術資源は製造業 における競争優位確立 のため の根源的な資源である。技術資源 は基礎技術 と応 用技術、要素技術 と組み合 わせ技術 に大別する事 が出来 る。
研究の深 さにおいて学際的か、実用的かで基礎 技術 と応用技術は区分 され る。そ して研究の範囲 において絞 り込んでいるか、幅広 い対象 と してい るかで要素技術 と組み合 わせ技術に区分 され る。
4 組織文化資源
いずれの組織 に も時間の経過 と共 に組織文化V
が形成 され る。 ここでは組織文化 を構成す る要素 として、組織構成員が① 「共通かつ普遍的に保有 す る価値観」、⑦ 「思考す る際に枠 をはめ る思考 の限界」、③ 「行動す る際 に無意識の内に行動 を 規制す る倫理 ・道徳観」、㊨ 「行動の結果 につ い て評価す る基準 ・方法」、 そ して(9 「それ ら①〜
① を維持 ・管理す るための仕組み」 をあげる。A これ らによ り構成 され る組織文化の有無、内容 の実体、次元の高低 によ り、 その組織文化が組織 目標達成の為の推進力 となるか、 または抑制力 と な り、 目標達成時の成果 に大 きく影響 をあたえるC
ここでは組織文化の現状把握 と分析 を実施 し、
自 らが保有す る組織文化の実態 を経営資源 として 認識す る過程 を論述す る。
(1)組織文化の現状把握
組織文化のように 目に見 えず、定量化が不可能 な対象の現状把握 は困難 な作業である。現状把握 の視点 と して前述 した以下 の5項 目か ら分析 され る。
① 「共通かつ普遍的に保有す る価値観」
⑦ 「思考す る際に枠 をはめる思考の限界」
③ 「行動す る際に無意識の内に行動 を規制す る倫 理 ・道徳観」
④ 「行動の結果 について評価す る基準 ・方法」
⑤ 「それ ら①〜④ を維持管理す るための仕組み」
(2)組織文化の分析
時間の経過 と共 に当該組織 が構築当初 とは異 な る環境に直面す るo これ らの環境変化に対応 して 行 くことによ り所属組織の継続存在 を試み る。 自 らが保有す る経営資源 を投入 して当該変化に対応 し適応 してい く過程である。
その結果で組織存続 に効果的であった対応策 と その対応策 を立案、構築、実施 して行 く過程で投 入 された経営資源活用方法 などが組織文化 として 残 って行 く。 ある場合 にはそれ らは過去の記録文 書、 または将来の推奨すべ き対応 マニュアル とし て明示知化 され る。文書化が困難な内容の場合 に は組織構成員の経験 として暗黙知 として口頭伝承
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されて行 く。 vii以上の よ うに現在の組織文化 は過 去 のある時期の環境適応 に有効 であった価値観、
思考、行動、管理方法が伝承 されたもの と言 える。
過去の環境 と過去の変化が同 じ状況で存在 し発生 すれば既存の組織文化は環境変化対応手段構築の 基盤 として有効である。 しか し過去 と同一の環境、
変化、状況 の出現 は有 り得 ない。 この矛盾の意味 す る所 を言 い換 えると 「組織文化は常に変化 させ なければ新 たな環境変化に対応 は出来 な
い
」 とい うことになる。第
3
章 課題の発見 と設定本論文 における仮説の中核 を占める 「外部環境 の変化 を受動的に待つのではな く、能動的に変化 を起 こす事が可能か。そ してその結果で強力な競 争優位 を確立す る事が可能か」 を本章で検証す る。
1 外部環境の変化 か ら発生する脅威 と機会 第1章 で述べ た4要素 の外部環境 は どの よ うに 変化 したか、その変化 は過去にどのよ うな影響 を 事業 に与 えて きたか以下の各種事例で検証 ・分析
してい く。
(1)市場の変化
1973年10月の第4次中東戦争 に端 を発 したオイ ル シ ョックに よ り電 力使 用量料金 を50%弱上 昇 させたこの変化は、大規模電力需要家 にとり事業 面 で死活 問題 とな ったOす なわ ち事業遂行上 の かってない 「脅威」 が発生 したのである。その状 況 に対 して提案型省電力機器 または省電力 システ ムを提供す る事によ り新規事業構築 とい う「機会」
を得 た企業 が多数出現 した。
この事例 は外部環境変化がある企業 に対 しては
「脅威」であ り、別の企業 にとっては 「機会」であっ た事 を劇的に提起 した事実 として歴史に残 ってい る。
(2)顧客の変化
1980年代 の 日本 はバ ブル景気の最 中で あった。
多 くの ビルが建設 され、空調制御市場で言 えば当 時の顧客のニーズは高度の快適性、制御の新規性 であ り、 これに応 えてい く事が空調制御機器製造 企業の使命であった。その変化 に対応で きない レ
ベルの技術資源 しか保有 していない企業 にとって は事業継続面での 「脅威」であった。高度 な技術 を保有 していたか、開発に着手で きた企業 にとっ ては正 しく事業拡大の 「機会」であった。
(3)競合の変化 (ヨハ ネウェル社の変化
空調業界 では、世 界的に も トソプ企業の1社で あるハ ネウェル社 (Honeywell以下H社 と略称) その ものが直面 した近年の変化 はす さまじい もの がある。 その変化の影響 を受 けてハネウェル社の 戦略は大 きく変化 した。短期間での2回にわた る 合併 ・買収 とい う大変化に見舞 われたH社 は大 き
な戦略転換 を した。
(参シーメ ンス ・ビルデ ィング ・テクノロジーズ社 の出現
元来 中規模の空調制御事業部門 を保有 していた に過 ぎない シーメ ンス社 (Siemens)は中規模 の 欧州 の複 数の空調制御機器製造会社 をM&Aにて 買収 ・合併での事業強化によ りグローバルでH社 と比肩す るまでの地位 をこの10年間で構築 した。
1999年 か ら低 価格 に よる市場浸透戦 略での市場 占有率 拡大 が実施 され、2003年 には市場 占有率 は40%に上昇 した。
いずれ もM&Aが関係 した業界再編 と枠組みの 大 きな変化 で ある
。H
杜 は受動的に、S B T
杜 は能 動 的に競合 関係 とい う外部環境変化 に対応 して いったわけである。 これ らは事業の外部環境 に果 敢 に挑戦 し変化 を起 こす行動が大 きな競争優位 を 構築 した事例 であると提議 したい。(4)規制 と取 り決めの変化
近年、特 に注 目された規制 に新規ISO規格の制 定 と取得がある。 これ らがどのような背景 と経過 で制定 され、事業上の 「脅威」 と 「機会」 と して 捉 えられて きたか を検証す る。
(》ISO9000の制定 とその影響
ISO9000の制定背景 には、世界で一人勝 ちの様 相 を見せていた 日本企業 に対す る欧州企業の危機 感 に裏付 け された規格覇権闘争の始 まりであった
と見 なければな らない。
当時の 日本企業 は製 品品質 には絶対の 自信 を
持 って お り、ISO制 定 活 動 は製 品 品質 に関 す る
「デ ・フ アク ト ス タ ンダー ド」viL確 立 の争 い と の認識 になかった。 その結果ISO9000を取得せず 欧州へ輸 出 または、現地での生産販売 を試み た企 業 で多大 な不利益 を被 った企業 は多い。
⑦ISO14000の制定 と対応
ISO14000も英 国 を中心 と した欧州企 業 が 日米 企業 に対 して環境規格面 での覇権構築 を しよ うと 試みて行 った経緯 が伺 われ る。
その 結 果、 欧州 企 業‑LXは 「グ リー ン購 入 」 の 名 の もとに 「原材料や部 品 な どの調達 にあた り、
E
U地域 メーカーはEMAS( E
U理事会規 則 の環境 管理 ・監査 スキーム)への参加 を、 E
U地域以外 メー カーはISO14001の認証取 得 を条件 とす る」 との 意向 を表明 した。欧州企業 を優遇 し他国の輸 出企 業 を締 め出そ うとす る意図があった。 また して も 販売面 における 「脅威」の出現である。事例 は少 ないが外部環境 その もの を変化 させ よ うとして果敢 に能動的に挑戦 して きた企業 も紹介 したo その時に必要 とされ るエネルギ ーは膨大 な 物 である。 その結果 で得 られ る事業上 の成果 は変 化 を待 ち対応す る受動的活動の成果 に比較 した ら 比較 にな らない多 くの果実 を得 られ る事 も説明 し た。
それ らを踏 まえて、強固な競争優位確立 を望 む 戦略的活動 とは外部環境 を主体的、能動 的に変化 させ よ うと意 図 して挑戦す る事であると仮説証明 の一端 を本章で呈示 した。
2 内部環境の実情 か ら出現す る弱み と強み 自社の持つ弱み と強みは分析実施時においては、
文字通 りの もの と して競合 と対比 されて認識 され る。 自社が事業 を行 なってい る業種 との関連で初 めて具体的に認識 で きるものである。
3 SWOT分析 による課題の発見
ホフ ァー とシュ ンデル はSWOT分析 の概念 を提 起 してい る。x1973年 の ホ フ ァー とグ リュエ ック の研究 では 「ある事業 が直面 しそ うな、 たいてい の戦略的機会 はその属 す る市場 と産業、供給源 と その条件、競争相手の行動、その事業分野 に影響 を及ぼす よ うな一般環境 レベルの基本 的変化、あ
るいはこれ らの要 因すべての相互作用か ら生 じる 事 を示 してい る」 と機会 の発生 に関 して述べてい
る。
また弱み強みの分析 につ いては 「事業 レベルで の資源分析の 目的は、 その企業 が外部環境 で直面 す る機会 を開拓 し、脅威 を回避す る能力 を評価す る事である。 この能力は経済 的に効果のある差別 的優位性 を得 るために、 その事業の多様 な資源及 びスキルがその市場 の主要成功要 因 とどの よ うに 作用 しあ うか、 そ して また競争相手 の資源 お よび スキル とどの よ うに作用 しあ うか によって い る」
とホファーは述べてい る。
4 課題の分類
課題 を解決す るために必要 と予測 され る「費用
」
と 「時間」 で戦 略的、戦術 的、定常業務 的の各3 課題 に分類す る。分類す る目的は課題 ごとに適切 な経営資源 を配分す る必要 があ り、着手時期 と対 応期間に優先順位 を設定す る必要 があるためで あ
る。
(1)戦略的課題
「戦 略」 の定義 につ いての研究 は数 多 くな され て い る。 ホ フ ァー & シ ェ ンデル はA.D.チ ャ ン ド ラー Xj以降H.Ⅰ.ア ンゾ フを含 む戦 略 に関す る主要 研究者12人 の戦略の定義 を整理 してい る。xii=こ では同書 にある戦 略の定義 を参考 にす る。 Xiii
戦略 とは 「組織 がその 目的 を達成 す る方法 を示 す よ うな、現在 な らびに予定 した資源展開 と環境 との相互作用の基本パ ター ン」 と してい る。 この 定義 は経営資源 (内部環境 その もの)の配付 を含 む点 と環境 (ここでは外部環境 と特定 され る) と の係 わ り合 いは企業 と環境の両方 か ら作用す ると い う点が包括的である。 また現在 な らびに予定 し た資源展 開、 と言 う意味で課題解決 までの時間軸 も考慮 してい る。
戦略的課題 その もの を外部環境 との係 わ り合 い の仕方か ら分類す る。 その 「思考基点」 か ら戦略 的課題 と して分渠 す る場合 の視 点 は以下 の2点 で あるO
第1に、 その課題 は外部環境 へ積極 白須こ働 きか けて、外部環境 に大 きな変化 を起 こそ うとい う意
24 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第10号 2006年3月
図があるものである。 この場合 はその行動主体で ある企業が、 自社の基本事業方針に従い外部環境 である 「市場」、 「顧客」、「競合」、「規制 と取 り決 め」の どれか1ない し複数の現状の枠組み を意図 して変 えよ うとす るo そのためのエネルギーは極 めて大 きくな らざるを得 ない。筆者 はこの場合の 戦略的課題 を 「能動的戦略課題」 と定義す る
第2に、 その課題 は外部環境 に予測 し得 ない大 きな変化が発生 した場合 である。従 って変化発生 の結果での脅威 または機会 に対応す る戦略的課題 で ある。 この場合 の行動 は受動 的で ある。勿論、
発生 したその課題解決には多 くの経営資源の投入 と、長期の期間が必要 となるものであるため戦略 的視点か らの対応 が求め られ る。筆者 はこの戦略 的課題 を 「受動的戦略的課題」 と定義す る。
(2)戦術的課題
企業活動 において戦術 は 「実際に販売活動 を実 施 している市場 において、競合 に打 ち勝つ為 に販 売活動 を組み合 わせ る事である。販売活動 とは販 売時の製品の組み合 わせ、価格の提示方法、販売 代理店 との役割分担、展示会 ・広告宣伝等の販売 促進活動等である。 それ らの具体的実施方法 を指 示、指定す る事」言 い換 えられ る。
従 って 「戦術的課題 とは、前述の戦術 を巧みに 組み合 わせ、効率 よく実施 し、問題解決のための 一連の行動体系である」 と定義で きる。
(3)定常業務的課題
定常業務は 「販売時の製品の組み合 わせ、価格 の提示方法、販売代理店 との役割分担、展示会 ・ 広告宣伝等の販売促進活動等に関 してそれ らを構 成す る、個 々の技量 を構築、維持、向上 させ る活 動である」 と定義で きる。
従 って 「定常業務的課題 は、 日常の定例 ・定常 的な問題 を解決す る行動体系」 と定義で きる。
第
4
章 事業基礎の確立 1 理念の構築理念 を構成 す る要素 として、「現在の活動領域」、
「将来の活動領域」、「現在か ら将来への進む道筋
」
の3点 が含 まれていなければな らない。組織 を構 成す る全ての人 々、組織以外で当該事業 に関係す る全ての人々に発信す る組織 か らのメ ッセージxIV
である。
以上 の必須要素 を包含す る理念概念 を図表4‑1 にまとめる。
図表4‑1理念 (ビジョン)の概念 現在 活動 している領域
・自分達 の 活動 が組織 の どの 領域 を担 当しているか、良く 理解 できる.
*担 当している領域 は何 か
・ 事 業領 域 は
・ 技術領 域 は
・ 専 門領 域 は
・ロー ドマップで呈 示
*どのように変 化 し移 行 して行くの か 明確 であ る
将 来活動すべき領域
・自分達 の活動 が組織 の将来
の発 展 に寄 与す る事 の確信
が 持 てる。
* 望 ま しい活動領 域 は何 か
・ 新 たな事 業領域 は
・ 新 たな技術領域 は
・ 新 たな専 門領域 は
優 れたビジョン.理念 が持 つべき6の要素
・ どちら‑ 進 むべきか 明確 (強 い約 束 と行動 が伴 っている)
・ 創造 的である(わ くわ くす る)
・ 独 自の意 思が入 っている(誰でのものでも無 いo自分達 だけのもの )
・ 既存 の知 的、業務 的仕組を変革 して行 く(新 たな 自分達 へ の取 り組みである)
・ 企 業 の存在価値 を外部‑ 伝 達する(皆 が認 め、期待 してくれ るもの)
・ 競争 優位 を確立する強 い決意 (組織 の強み、競 争優 位 の構築、維持 に貢 献す るもの )
(1)現在の活動領域
ここには事業領域、技術領域、専門 とすべ き領 域 の3点が含 まれ る。 自分 たちが現在 どの領域 を 担当 しているかが具体的に理解で きる記述 となっ ている必要 がある。
事業領域の設定 については レビッ トの 「マーケ テ イング近視眼」の論文 中での提起 が、最 も適切 である。xvここでは鉄道会社 を例 に挙 げて、その 衰退原因が鉄道会社の事業領域 に関 しての定義 を 誤 ったか らだ としている。
ホファー&シェンデルは上記 レビッ トの論点に 対 して 「鉄道事業 とい う物理的表現ではな く輸送 事業 とい う機能的表現 にすべ きである」 と補強 し ている。 またレビッ トの言 うような大 まかな機能 的表現ではな く、特定的、撤密な表現のほ うが良 い としてい る。 xvi
以上 をまとめると、「事業領域 は顧客か ら見て、
自社が提供す る機能の選択の範囲が広 く、利便性 に富み、具体的にその内容が解 るものでな くては な らない」 と言 えよう。
技術領域 については内部環境の技術資源分析で 明確 に した強み を発揮で き、競合 と技術面での差 別化が可能であ り、技術的に競争優位 を構築で き る領域 を設定 しなければな らない。広範 な事業領 域の中において、技術面 で競合 より勝 る領域 を選 択す ることを目指す。
専門領域 と技術領域 が合致 していれば問題は少 ない。 その一致 した領域 を結果的に現在の活動領 域 として設定すれば良いか らである。 しか し、得 意技術分野 と技術以外の内部資源で制限 され る展 開分野 は必ず しも一致 しない。以上の3つの領域 によ り現在の活動領域 は決定 され る。
(2)将来の活動領域
組織 が発展す る将来像 が明示で きるもの となって いなければな らない。新 たな事業領域で展開を し ているか もしれない。新 たな技術 を開発、導入 し て現在 よ り強固な技術領域 を構築 している事 も計 画すべ きであろう。そ して自分たちの競争優位 を 確立で きる専門領域 において活動 している状況が 手 にとる様 に提示 されていなければな らない。
(3)現在か ら将来へ進 む道筋
現在 と将来の活動領域 を提示す ることは可能で あろう。 しか し将来の姿が挑戦的であればあるだ け、 そこへ到達す る道筋 は描 き難 い もので ある。
事業領域、技術領域、専門領域各々の現在か ら将 来への ロー ドマ ップxviiを描 く必要 がある。
2 使命の認識
前述 した理念 は主 として組織内部の構成員 とそ の組織 に利害面で深 く関係す る組織外部の人たち に対 して発信す るメ ッセージで あ る。 この メ ッ セ‑ジにより当該組織 がどの ような意識 を持 ちな が ら、 どの方向へ向って行 こうとしているのかが 明快 に理解で きる。
以上の よ うに 「使 命」 の記述 は 「社会、顧客
」
と関係 して認知 され る 「活動」 によ り 「手段」 を 生み出 し、その 「結果」 によ り出現す る 「状況
」
も社会的に承認 され、期待 され るもの とされ るべ きである。 「認知」、「承認」、「期待」 されてい る ことを裏切 らないように企業 とその構成員は全 て の行動 と活動 を 「使命」 に照 らし合 わせて自 ら規 制 してい くガイ ドラインとすべ きものである。
3 非計数 目標の設定
長期に変わることのない理念 と使命 に合致 させ つつ、3か ら5年 間の長期事業計画 で完成 させ て 行 こうとす るものが 目標である。その 目標 は定量 的に表現 し数値化 された後述の計数 目標 と定性 的 に表現 され る非計数 目標 とに分かれ る。非計数 目 標は理念 を実現す る年度毎のマイルス トー ンであ り、使命の認知度 を上 げる役割 も有 してい る。実 際の事業活動の 目標 として設定 され る非計数 目標 を 「非計数 目標の役割」、「非計数 目標の内容」、「非 計数 目標の達成度評価」の各項 目で詳述 している。
4 計数 目標の設定
企業 は事業継続 に必要 な経営数値 を追及す る。事 業継続 を可能な らしめるための副次 目的がその経 営数値 である。 それ らは 「事業継続 を可能 とす る 計数設定」、「計数設定 の考 え方」、 「計数追及の 非 目的化」の項 目であるべ き姿 を分析 され る。
26 神 奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第10号 2006年3月
第5章 戦略の構築 と展開
戦略的課題解決はビジネス ・コンセプ トの構築 か ら出発する。戦略的課題 を解決す る対応行動 そ の ものが新たな ビジネス展開活動であるのがその 理由である。長期事業計画 と呼ばれ る3ヵ年間計 画は統合事業 目標、個別展開事業、戦略、戦術に より構成 され る。 その中で個別展開事業 を具体的 行動体系毎 に計画 的に構築 したの が個別 ビジネ ス ・プランである。
個別 ビジネスプランの 目標 は、長期事業計画の 統合事業 目標 をブレークダウンし、それ らを個 々 に細分化 した もの となる。従 って各々の ビジネス プランは特定 した各セグメン ト市場における個別 達成 目標 を有 す る個別事業計画 その もので ある。
ビジネスプラン中で個 々の戦略が検討、構築、実 施 され る。
1 製品戦略
製造業 におけ る最 も強力かつ具 体 的な 自社の メ ッセージを伝 える手段 は 「製品」である。製品 開発過程 を追 うことにより、本論文中におき、以 下の流れ を追い製品戦略全体の有 るべ き姿 が明確 に され る。
(1)製品に関す る外部環境の分析 ・把握 (2)製品コンセプ トの構築
(3)製品設計
(4)生産設備の設計 と利益計算 (5)部品の調達
(6)製造 2 価格戦略
(1)基本的な価格設定
価格設定は対象製品がプロダク ト・ライフサイ クルの どの過程 に存在 しているかで差別価格 を設 定で きるか、市場価格 に合 わせ ざるを得 ないか、
または後発参入 とい うことで市場価格 よ り何 %か 安価 に設定せ ざるを得 ないか、その設定検討は多 岐 に渡 る。 その後 (2) 「設定価格 検証」、 (3)
「
輸出製品価格の設定」 が議論 され る。
3 流通経路戦略
流通経路の 選定に当た り基本 的に認識 してお く
べ き事 は以下 の通 りで ある。第1に ターゲ ッ ト市 場の ターゲッ ト顧客へ、長期的にみて流通 コス ト の最小化 と顧客満足度最大化の観点か ら最 も効果 的な接近手段 として選択す ることで ある。第2に 社会 基盤Wiiiの充実 とその利 用可能性 が高 ま り変 化す ると、流通経路 を提供す る企業 に対 して求 め られ るもの も同期 して変化 して くることの認識 を 持つ必要 がある。そ してその変化に応 じて流通経 路の革新 を常時検討す ることが必要である。以下 が流通企業 に対 して要求 され る7機能で あ、個 々 に内容分析 され る。
(1)拡販 (販売拡大)機能 (2)配送 (流通 ・物流)機能 (3)在庫 (顧客要求対応在庫)機能
(4)与信供与 (金 融提供、与信供与、与信管理) 機能
(5)営業 ・技術的サービス (サービス ・メ ンテナ ンス)機能
(6)情報入手 と伝達 (情報収集 ・提供)機能 (7)エ リアでの広告宣伝 (販売促進)機能 4 販売促進戦略
新製品 を開発 し市場導入す る前後 において当該 製品の早期浸透 と定常販売状況移行 させ るために 以下の各種販売促進手段 が検討実施 され る必要 が あ り個別に論述 され る。
(1) プ レス リリース、 (2)巡 回発表会、 (3) セ ミナー、(4)広告宣伝、(5)ダイレク トメ‑ル (6) 無償使用モニ ターキャンペーン、 (7)低価格試用 キャンペ ーン、 (8)展示会
5 組織戦略
戦略に合致 した組織の改廃 が迅速にで きる事は、
競争優位確立の重要 な手段である。
(1)組織 と戦略の関係
ア ル フ レ ッ ド・チ ャ ン ド ラ ー (jukedD.
Chandler.Jr.) は その名 著 で あ る 『戦 略 と組 織 (StrategyandStructure)』の序(INTRODUCTION) で 「組織 は戦略に従 う。複雑 な組織 は一連の各種 基本戦略の結果である」xivと言 ってい る。正確 に 論文の前後 を忠実 に訳すな らば、チ ャン ドラーは
「推論 した」 と記述 している。
そ して巻末 (CONCLUSION)で 「組織 と戦略 は市場の要求に対する経営資源の配置である。組 織 とは現実の要求に対 しての経営資源統合の設計 図である。戦略 とは予測 される要求にたい しての 経営資源再配置の計画書である」xxと序での推論 に対 して結論 を出 している。 この論述か らも明 ら かなようにチャン ドラーは 「戦略」は将来を見据 えた予測計画 であ り、「組織」 はその結果構築 さ れ る現在の課題対応体系 としている。それ を踏 ま えて、続 く以下の3項 目につ き提議 している。
(2)事業 レベルの組織戦略構築部門 (3)組織変革 と戦略呈示の遅滞
(4)外部 リソースによる特別組織の構築 第
6
章 戦術の展開戦略に沿 った戦術の展開は 「組織構造」、「組織 行動」、「組織管理」 の3要素 か ら構成 され る。3 要素の各々の構築方法 と展開方法について論 じた 後、評価 し、有 るべ き姿 を提起す る。
戦 術 を展 開す る組 織 はチ ャ ン ドラーの言 う
「フィール ド・ユニ ッ ト(FieldUnit)」 xxiであるO
他部門 と比較 して顧客、競合の両者 との距離が圧 倒的に短 く、いわば最前線に位置 していると言 え るのは販売部門である。従 って、本章では販売部 門における戦術展開について言及する
1 組織構造
フィール ド・ユニ ッ トについて各部門毎にその 呼び名 は異 な る。販売部門の場合 は 「各地の支 店 ・営業所 (BranchSalesUnits)」である。 これ
らの組織 をどのように構築す る事で、生産性向上 と競合に比較 して優位に立 ちうる事 を実現で きる か、 を本節で論 じる。
(1)担当方式 による構造
図表6‑1の よ うに顧客担当方式 には地域別 と製 品別の方式が存在す る。それぞれ一長一短があり、
どちらの方式 を採用す るか試行錯誤が続 いている。
基本的には、少機種製品事業組織の場合 には地域 別が、多機種製品事業組織の場合 は製品別販売担 当方式が効率的である。
①地域別担当方式
通常は軍隊の組織 と近似 した階層構造の組織 を 形成する。その構造 を地域別に構築 してい く。つ まり事業部内に本社販売統括部があり、それが各 地域の支店 を統括す る。各地域の支店はその傘下 に営業所及び出張所 を有するQ営業所 と出張所の 区別は規模の大小 であ り、両者 は支店管轄地域 を 分割 して担当する。顧客はシングル ・ウイン ドウ としての1人の窓 口担当者 と接触すれば全て完結 する。
①製品別担当方式
事業部内の本社販売統括部の下 に製品別組織 を 設置する。いわば事業部内に製品別の複数の小事 業部門が存在する状況である。複数の製品別組織 は各支店、営業所、出張所 を有 して、全国に散在 する最終顧客 までを担当す る。同一顧客に複数の 事業担当者が訪問す る事 も珍 しくない。
(釘担当方式による優劣
地域別担当方式 の販売組織 はシンプル となる。
図表6‑1 担当方式による販売組織の対比
地 域 別 担 当 販 売 組 織 製 品 別 担 当 販 売 組 織 組 織 構 造 階 層 (シ ン プ ル ) 階 層 (複 雑 ) 担 当 製 品 事 業 部 門 の 全 て の 製 事 業 部 門 の 特 定 業 種
⊂コ
PP 製 品
販 売 力 総 花 的 に な る 専 門 的 で 強 化 さ れ る
28 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第10号 2006年3月
従 って社 内においては1人 の販売員 が複数 の製 品 販売 を担 当す る為、販売生産性 が上 が るよ うに見 える。 また顧客側 か らも1人 の販 売員 で供給側 企 業の製品全て を担 当 して くれ ることか ら利便性 が 高 いよ うに思われ る。 しか し致命 的な欠点 は、担 当製 品が多岐に渡 るため、担 当販売員に とって技 術的に詳 しい得意製品分野 とそ うでない不得意製 品分野 が出て くる。
製 品別担 当方式の組織 は複雑 となるが、担 当製 品が専門分野のみ となるため、販売力は強化 され る。 しか し同一顧客 に同事業部の異 なる販売担当 者 が出入 りす る事 となる。 その結果、当該顧客 に とっては同一企業 の販売員 が複数担 当者 と して コ ンタク トされ る事 で混乱 と煩 わ しさが発生 す る。
また同事業部内部 における販売製品の優先権の順 位 、顧客への販売価格の不整合 発生 による社内外 乱蝶 が生 じる。 この軌蝶調整 の関わ る社 内 コス ト 発生 と顧客 での信用度低下 は大 きな問題 となる。
(2)タスク組織
異常時の対応 は常 に時間 との戦 いである。販売 部 門 に付 き物 の異 常 事態 には 「製 品納 入期 日遅 延」、 「製 品不具合 発生」、 「競合参入」 が挙 げ られ る。 これ らは放置す る事 によ り重大 な問題 として 戦略的課題へ拡大す る可能性 の あるものばか りで ある。
この事態 に対応 す る組織 と して通常 は構築 され ていないが、異常事態発生 時に構築 され るタスク 組織 が有効である。異常事態 に早期、迅速 に対応 し問題処理 が完 了 した ら解散す る性格 を持つ。 タ ス ク組織 は関連 部 門 の上位 職 で あ るマ ネ ジ ャ‑
xxjiが担当すべ きである。
2 組織行動
効果的かつ 円滑 な事業展 開のために必要 な定常 業 務活 動 に関 して、戦 術 的決 定 は な され る。 xxiii
決定 され る内容 は経営資源 である人、物、金の配 置 ・再配置 に関す る実際の行動 が中心 となる。
(1)行動計画
行動計画 は1年 間の年度計画 が元 にな る。行動 の経過 と成果確認のために、 その年度計画 は6ヶ 月単位 に分割 され る。 これが事業年度 の半年毎 の
中間成果確 認評価表 とな る。 さらに3ケ月毎 の行 動計画書 に細 分展 開 し、3ヶ月間で実施す る詳細 行動、達成 しよ うとす る目標、実施者 、実施期 日 と期限 を明記す る。
(2)リーダーシ ップ
組織行動 を計画通 りに展 開 し、実施す るために は組織長 に リーダーシ ップ xxivが要求 され る.米海 軍 の リーダーシ ップの定義 では 「人間の思考、計 画、行為 を指揮 で き、特権 を有 す る技 術、科学、
天分」 と してい る。す なわち リーダーシ ップは、
上位職が有 す る指揮命令権 によ り発信 され る業務 命令 と相 まってその効果 が発揮 され る。 また ここ で重要 なの は 「技術、科学」 であると指摘 してい ることで ある。
3 組織管理
戦術の展 開時 において、当初設定 目標 と達成行 動結果 を成果 と して一定期間毎 に評価 し管理す る 必要 がある。
(1)評価
組織行動 において行動計画書の存在 とその内容 に触 れ た。評価 は行動計画書 に沿 った、組織行動 の実施経緯 とそれによる結果 を確認 し、 目標 の示 す方向 と目標の期待す る量 的 レベル との釆離 を測 定す ることにある。測定結果 は組織構成 員及び当 該計画立案 ・遂行責任 を持つ組織 リーダーのある 期 間の評価 ともなる。 それ に も増 して重要 な事 は、
組織全体 が向か う方 向 とその時点 までに到達 して いなければな らない計数 的に設定 された 目標 との 距離の測定 にある。評価 は結果 と しての成果 のみ な らず、 その結果 を出す に到 ったプロセスである 経緯 を含 めて評価対象 とすべ きである。
(2)統合
組織行動の評価の結果 によ り複数の関連す る下 部組織 と組織構成員の進行方 向 と進行度合 いが確 認で きる。 その評価結果 を当初の行動計画書 の 目 標 と対比 し、禾離 した場合 には、 その要 因分析 を 行 う。 その要 因が組織 内部か ら発生 した ものな ら ば、 それ を除去 し改善す る具体策 を講 じる。 しか しその要 因が組織外部 に存在 し影響 を与 えてい る 場合 は、 その影響 を回避す るか、回避不可能 な要
因の場合 には、その影響 を受ける度合 いに従 った 影響緩和具体策に変更す る。
これ らの具体策によ り、再び組織全体の行動の 進行方向 と進捗度合 い との整合 をとることが可能 となる。 この一連の作業の 目的は組織統合のため である。
第7章 戦略 ・戦術の評価
この章では立案 された複数の戦略 ・戦術の評価 方法 について述べ る。戦略 ・戦術 は可能性、機能性、
適応性、受容性、利益性 の5項 目の条件 に照 らし 合 わせて評価 ・選択 されな くてはな らない。選択 す る戦略 ・戦術が挑戦的であ りなが ら一定期間の 後に 目標 とした成果 を生 む ものでな くてはな らな い。複数の戦略 ・戦術の中に上記5項 目の評価 に よって選択 され るべ き最適であるものが存在す る はずである。 そのための評価基準 を事前に用意 し てお く必要 がある。
1 可能性
戦略 ・戦術は課題解決の手段 として立案 され る。
従 って選択 された戦略 ・戦術 を駆使すればその課 題が解決で きるものでな くてはな らない。巨大な 経営資源 を投入 しなければ解決で きない もの もあ る。 目標達成の可能性 は低 いが当該戦略 ・戦術 を 実施で きれば課題解決 は短 時間で実現で きるもの がある。その逆 に 目標達成 が確実ではあるが実効 が生 まれ るまでに時間の掛かるもの もある。 また はどの戦略又は戦術 を選択す るかは直面 している 課題が有 している性質 により選定 され る。課題解 決可能性 に関 しては、2種頬の異 なる性質 が異 な
る重み付 けで構成 されている。
第1の性質 はその課題 その ものが発生 当初 か ら 保有 している 「深刻度」 である。深刻度 が高位 に ある課題 は、解決せずに放置 した場合 はその放置 時間 と比例的関係 を持つ事な く、有形無形の高位 の被害 をもた らす性質 を有する。
第2の性質 は時間の関数である 「緊急度」 であ る。 その課題 を解決せず に放置 した場合 に有形無 形の発生被害 が時間 と共 に急速に拡大す る性質 を 持つ。
2 機能性
当該組織 が保有す る経営資源である人材、設備、
資金で着手で きて、十分機能発揮で きる事の検証 が必要 となる。 この検証 は上記経営資源の活用で きる質 ・量の両面の範囲 を前提 に於いてな され る。
当該範囲内において、候補案が どの程度の機能性 を有するかの確認 を行 ない順位付 けをす る。
3 適応性
既 に設定 してある計数、非計数 目標 と対置 し、
対照 して戦略 ・戦術の質 ・量両面 か ら行 な う評価 項 目である。既設定 目標 を達成 した状況 にふ さわ しく質 ・量両面で適応す る戦略 ・戦術で対応 して 行 くことが望 まれ る。 また活用、展開で きる経営 資源が制限 されてい る状況 において期待 され る計 数的、非計数的成果 と既設定の計数、非計数 目標 値 とはバ ランスの取れた ものであることも望 まれ
る。 これが適応 している状態である。
4 受容性
手段である戦略 ・戦術 は適切 に選ばれな くては な らない。選択の基準 となるのが第4章 で説明 し た 「理念」 と 「使命」である。 目標の中で計数 目 標達成 に重点が置かれ るのはやむ をえない。 しか し、 目標 を達成す るための手段 は適切 に選択 され るべ きである。 さもない と基本で ある事業継続 が 財務的理由ではない社会責任、倫理責任の観点か ら否定 され る事が生 じる危険性 を秘 めてい るか ら である。
選択の段階に於 いて、全ての判断の基準である 自社の 「理念」、「使命」 に照 らし合 わせて戦略 ・ 戦術はその受容性 を自問 し選定 されな くてはな ら ない。
5 利益性
課題解決の手段である戦略 ・戦術の評価尺度 に はプ ラス面評価の 「利益性」 を使用す る。 これ ま でに述べた可能性、機 能性、適応性、受容性 の4 つの評価尺度 は主 と して組織 内部の制約か ら出て
くるものである。
他方、計数 目標 に対す る利益性 とは、選択 され た戦略 ・戦術 を実施す ることで主 として組織外部 か ら得 られ る成果である。
30 神 奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報1第10号 2006年3月
第
8
章 不測事態対応計画不測事態 とは リスク (危機)発生状態 である。
リスクとは事業 その ものの停止 を もた らす事態、
または事業 を継続 させているプロセスの破壊 に到 り、事業継続 を危 うくす る事態 と定義す る。 xx"
不測事態対応計画の全体像 は 「リスクの事前予 測」、「リスクの事前評価」、「リスクマネジメン ト
」
の3項 目で構成 され、各項 目は一連の継続性 を持 ち構築 され るべ きである。
1 リスクの事前予測
(1)リスク発生分野の特定
対象 とす る事業の ビジネス ・バ リューチェーン を確定す ることか ら開始す る。 リスクは多様 な性 格 を有す る。 リスクを誘起す る不測事態によりそ の性格 は変化す る。図表
8 ‑ 2
の よ うに リス クの発 生す る場所 とリスクの性格 に付 き想定 してお き、不測事態 を明確 に してお く必要 がある。
2 リスクの事前評価
予測 され る リスクを事前 に評価 してお く。 しか し予測 され る全ての リスクに詳細対応計画 を構築 す るのは不合理 で ある。発生す る 「可能性」、発 生 した時の 「深刻度」、発生 した後 の 「被害度」
の3点か ら優先度 を付 けて、優先順位 に応 じて不 測事態対応計画 に もその設計の詳細度合 いを設定 す る。
(1)リスク発生可能性
事業形態 と事業性格 の2点か らリスク発生可能 性 を評価す る。
(∋従来の経験、 ノウハ ウを活用で きない未知の市 場分野へ進出す る事業
⑦法的、社会慣習的が全 く異 なる海外市場への新 規展開す る事業
(∋従来の経験、 ノウハ ウを活用で きない技術的に 新規の製品開発 を伴 う事業
④経営 資源 が乏 しくボ トル ネ ック とな る ビジネ ス ・バ リューチェー ン部分の存在
①制約 された時間内に挑戦的な 目標の達成 を求め られ るビジネス ・バ リューチェーン部分の存在 (2)リスク発生時の深刻度
深刻度 は定性 的に把握す ることの方 が有効であ る リスク影響 を対象 とす る。
①意識的な企業組織 による犯罪行為の発覚 (む顧客 を無視 または軽視 した反倫理的行為の発覚 (彰企業 トップの意思、指示 で実施 された反社会的
行為の発覚
(彰組織 内で半ば承認 されていた反道徳的行為の発 覚
G)意識的に実施 された国益 に反す る行為の発覚 (3)リスク発生後の被害度
定量的に被害額 を把握で きる リスク影響 を対象 に絞 り込む。
図表8‑2 ビジネス ・バ リューチェーンと発生 リスクの性格
B V
C性 格 調 査
開 発
調 達 生 産 販 売 保 守技 術 面 仕 様 誤 設 計 ミ 別 仕 様 大 量 の 口ツ
認 ス 晶 手 配 ト不 良
法 務 面 ス パ イ 競 合 特 不 正 取 犯 罪 行
行 為 許 抵 触 引 為
財 務 面 巨 額 の 想 定 外 の 欠 陥 品 リ 未 回 収 金 多 額 の 人 投 資 高 コス ト コ ー ル の 増 大 的 投 資
拡 販 面 過 大 な市 大 手 競 合 大 量 の 大 量 の 大 手 顧
場 規 模 想定 参 入の 突 然 の 退 蔵 部品 在 庫 退 蔵 製品 在 庫 客 か らの 失 注
注 :BVCはBusinessⅥllueChainの略
①杜欠陥品の潜在的事故防止のための製品市場回 収
③ 自社欠陥品による直接の火災、人的災害事故の 発生
③ 自社製品の品質不具合 に起 因す る2次災害事故 の誘発
3 リスクマネジメン ト (危機管理)
リスクマネジメン トは 「リスク要 因分析」、「リ スク要因評価」、 「事前予防策の構築」、「事後対応 策の構築」、「予知方法の確立」、「不測事態対応計 画の構築」、「事後学習方法の確立」 の7段階の順 序 を踏む.xmi
(1) リスク要因分析
リスクを発生 させ る真の要因を大泉 は 「他の多 数の可変事項 と緊密な相互関係 を通 じて拡大 され たか らである」xxviiと言 っている。 また畑村は 「実 際の失敗 は、ひ とつの要 因だけで起 こることはほ とんどな く、い くつかの要因が複雑 に絡んで人 々 に とって好 ま しくない形で現れ るのです」 xxviiiと 指摘 している。
(2) リスク要因評価
リスク要 因を複数特定で きたわけである。特性 要 因図 を作成 す る と関係 の強弱 に よ りTQC用語 でい う大骨、中骨、小骨でその関連が 目に見 える 形で作成 で きる。
(3)事前予防策の構築
リスク要因の発生可能性の高い順番 にその要因 を排除または発生抑制の手 を打つ事 によ りリスク その ものの発生 を抑制ができるはずである。従っ て ここでは、 ここまでの作業 によ り可視化で き、
発生面か ら優先度の高い リスク要因を対象 とした 予防策 を講 じる。
(4)事後対応策の構築
事後対応策 も予防策の延長線上に存在す る。 リ スク要 因が判 明 し予防策 を講 じられ た場合 で も、
リスク要 因を全て排除で きたのではない。従 って リスク発生 は完全 には防止できない。 また予防策 を講 じることを意図的に実施 しなかった決定の背 後には リスク発生 時に対応措置 を講 じると決断 し たことにある。
(5)予知方法の確立
リスク発生の予知は極 めて困難である。 リスク 発生 は突如爆発的に発生す る物 は少 な く、通常 は 目に見 えない状態でゆるやかに進行 してい く。 シ グナル を発 しているが、そのシグナル は一般 的な 事象 で あ ることが多い。xxix従 って リス ク発生 を 察知す るには不測事態 を前提 に した計画 に照 らし 合 わせて、 コンテ ンジェンシー計画発動決定す る 要 因を定量化 し危機 レベルの設定 をす る。 その設 定値 を専任のメ ンバ ーが注意深 く観察す ることで、
シグナル を発見す る事 に期待 が持て る。
(6)不測事態対応計画の構築
本計画の構造 は、対象 となる事業 内容 とそれに 関連す る不測事態 との関係 に於 いて構築 され る。
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(7)事後学習方法の確立
不測事態 は再び発生す る性質 を有 している。 そ のために も経験 した不測事態の真の要 因分析、発 生経緯、対応経過、 そ してその結果 を明示知 とし て共有、活用で きる状態 にす る必要 がある。xxxi
第9章 自己革新組織
本章では戦略 ・戦術構築 を行い、実施行動 に移 行 し、展 開を継続 中に如何 なる視点、思考で組織 は推移すべ きかを策定す る。
第1節では 「優 れ た組織文化の構築」 で 自己革 新 を起 こす事が可能な土壌 である組織文化につい て論 じる。第2節 では優れ た組織文化 が醸成 す る 躍動的な 「ダイナ ミックな組織構造」の創 出を議 論す る。第3節では優れ た組織文 化 とダイナ ミッ クな組織構造の上 に構築 され、 自己革新の有力な 手段 となる 「競争優位 を確立す る組織学習」 は如 何に して構築 し定着 させ うるかを論 じる。
1 優れた組織文化
ここでは自己革新 を可能 とす る組織 が保有すべ き組織文化 は如何 なるものであるべ きかを論 じる。
組織で計画 を作成 し、実行 した結果 を組織で評価 す る事は、学習す る良 き組織文化 を形成す る上で 最 も重要 な作業である。実践 した経緯 と成果 を学 習す ることによ り、組織 を自 らの力で成長 させ変