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特許戦略と製品戦略の共進化モデル
Author(s)
佐々木, 達也; 永田, 晃也; 平田, 透; 長谷川, 光一;
遠山, 亮子
Citation
年次学術大会講演要旨集, 15: 40-43
Issue Date
2000-10-21
Type
Conference Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/10119/5817
Rights
本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す
るものです。This material is posted here with
permission of the Japan Society for Science
Policy and Research Management.
lA08
特許戦略と製品戦略の 共進化モデル
0 佐々木達也,永田晃
也 (北陸先端科学技術大学院大
),
平田 透 (富山短期大
),
長谷川光Ⅰ遠山亮子
(北陸先端科学技術大学院大
) 1. はじめに 共進化とは,「あ る種 A の形質は第 2 の種 B が存在しているために 進化し , B は A が存在しているために 進化」することを 指す [lL 。 本報告では,共進化の 概念を援用して ,「特許戦略と 製品戦略は,技術選択を 介して共進化する 関係にあ る」ことを示し ,その相互作用を 考慮に入れたマネジメントが 重要であ ること を提示したい。 以下では,はじめに ,「特許戦略と 製品戦略の共進化モデル」 ( 図 1 参照 ) を構成する各要素の 内,製品 戦略,技術選択,特許戦略のそれぞれがどのようなプロセスと 特徴をもって 形成あ るいは実施されるかに ついて相互依存関係に 注意しながら整理する。 そして,製品戦略,技術選択,特許戦略の
成果としての 製 品が,市場によって 淘汰・保持されるプロセスについて 簡単に述べ,最後に ,製品戦略と 特許戦略が共進 化するプロセスを 定義し,簡単な 事例で例証する。 図 1 : 特許 技略 と製品戦略の 共進化モデル 製品を販売するか」を 規定する。 その製品コンセプト接合他社 (t 正 舛井Ⅰ 庄 J , P い弔拝 Ⅰ 庄 [ ] S-P [ [ [ [
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ト 特杵朋庄 レ 扶億世会 TO 2. 製品戦略,技術選択, 特杵 戦略 2.1 型 品故略と 技術選択 企業は,市場で 競争していくために「製品戦略 ' 」 を立てる。 製品戦略では ,「どのようなコンセプトの,一般的に,製品戦略 ( あ るいは事業戦略 ) と,技術戦略は 分けて扱われるが ,本報告では ,モデルを簡略化するため に,製品戦略に 技術戦略を含んだ 形で定義している。 が 持っ機能を,どのような 技術で実現するのかを 決定 するのが「技術選択」であ る。 また,技術選択では , その技術をどのように 調達するかの 意思決定も行われ る。 技術選択には ,市場を含めた 経営環境についての 子 測と ,技術開発についての 予測が伴う。 そのため,市 場をどう予測するかによって 技術選択の内容は 異なる し,また,何を 基本戦略と考えるかによって ,最適な 技術選択は変化する [2] 。 よって,技術選択のバリエ ーションは多様になる。 (1) 市均 ,接合他社との 相互作用 製品戦略は,企業が 何を競争優位の 源泉とするかに よって異なってくるだろう [3L 。 例えば,コストによ るリーダーシップを 狙 5 戦略と,差別化を 狙う戦略で は ,選択する技術は 別のものになる。 製品戦略は,企業が 市場の評価をど う 認識するか, また,競合他社の 動向をど う 認識するかによっても 異 なってくる。 例えば,投入した 製品が市場で 高く評価 された場合,次の 製品戦略は,その 延長上の次世代 型 品を投入する 内容になる可能性が 高い。 また,競合他 社の動きによって ,それに対抗した 製品が投入された り,あ えて異なる製品での 市場参入が行われることが あ るだろう。 (2) 経路依存性 また,ネットワーク 外部性があ る製品,言い 換える
と 規格競争が行われるような 製品の場合は 特に,次世 代の製品戦略は ,前世代でデファクト・スタンダード ド が取れたか否かに 大きく影響を 受ける [4L 。 例えば, カメラ一体型 VTR のケースでは ,据え置き型の VHS 方 式で勝利した 日本ビクター・ 松下電器らは ,互換性を 重視した VHS-C 規格による製品を 投入した。 VHS 陣営 が先行する自社技術の 延命を図ったのに 対し, ソニー は 廿 とも VHS とも互換性の 無い 8mm ビデオ規格による 製品を投入し ,その後の市場で 高いシェアを 獲得して いる [5]0 以上述べたよ う に,製品戦略は 経路依存性を 持ち, また,市場と 競合他社の影響を 大きく受けながら 進化 していくのであ る。 2.2 特許 俄略 製品は市場に 出ることによって ,その要素技術が , 他社によって 模倣されるリスクを 持つ。 そのため企業 は,技術選択して 自社開発した 技術を特許化すること によって,排他的な 専用実施権 を確保しなくてはなら ない。 そしてその技術を 独占的に実施したり ,あ るい は,標準化やデファクト・スタンダード 獲得における 技術リーダーシップの 源泉にするのであ る [6][7][8][9]0 技術の特許化を 扱 う 「特許戦略」は , 次の三つの 下 位 戦略からなると 考えることができる。 (1 「特許の出 願に関する戦略, (2) 特許権 の権 利行使に関する 戦略, (3) 特許関連の組織に 関する戦略であ る。 (1) 特許由 憶 日本企業は,他国企業と 比較して出願件数が 多い [l0L 。 戦後,欧米企業の キヤ ソチアップに 注力 してき た日本企業は ,出願件数は 大量だが,その 大半は改良 特許や周辺特許であ り,また,休眠特許が 非常に多い と 言われてきた [11]0 しかし,欧米企業との 特許紛争の経験を 持つ電機や 精密機械のメーカーは ,より戦略的な 特許出願を行 う よ う になってきた [9][12][13L 。 また,近年の 不況下 での特許関連費用の 見直し,およびその 有効活用の要 講や,平成 11 年度の特許法改正による 審査請求期間 の短縮の影響などから ,特許出願戦略の 見直しが行わ れている [9][11]0 また,特許出願戦略は ,出願対象となる 技術の性質 に大きく依存する 側面を持っ [11][14][15L 。 例えば, 医薬品に関する 特許は,物質特許制度の 対象となり, 一つの製品に 対して一つの 特許となることが 多い。 物 質特許を押さえることによって ,他社の類似品を 排除 できる。 一方,電機や 精密機械の場合,一つの 製品に何百・ 何千もの特許が 関係することが 多く, 自社の特許だけ で製品を開発することはほ ほ 不可能であ り,クロス・ ライセンスが 頻繁に行われる。 その契約交渉を 有利に 進めるため,他産業と 比較して大量の 出願が行われる。 (2) 権 利行使 特許の権 利行使には,大きく 分けて二つの 戦略パタ ーンが考えられる。 自社技術を競争優位の 源泉とし,他社を 排除する目 的を持っ「技術独占」のパターン と ,他社に対して 自 社 技術を供与,あ るいはクロス・ライセンスする「技 術供与」のパターンであ る。 ネットワーク 外部性のあ る製品 ( 例えば, Av 製品, パソコンおよび 周辺機器 ) の場合は特に ,ドミナント・ デザインの出現する 前は,積極的に 技術を公開して 自 社 技術のファミリーを 構築しょうとする「技術供与」 の戦略パターンがとられることが 多い。 また,特許出願と 同様に権 利行使も,対象となる 技 術の性質に大きく 依存する側面を 持つ。 医薬品では,一つの 物質特許を押さえられれ ば,他 社の模倣を避けることができるため , 「技術独占」の 戦略パターンをとることが 多いが,電機・ 精密機械の 場合, 自社技術だけでの 製品開発は難しいため ,クロ ス・ライセンスが 多く行われる。 (3) 特許 組綴 特許関連組織は ,「組織構造」と「組織機能」の 二 つの視点から 分析することができる [16]0 組織構造には ,本社や研究所のスタッフ 部門が特許 活動を行 う 「中央集権 的構造」と,実際に 発明が行わ れる開発部門や 技術部門で特許活動を 行 う 「分散処理 的構造」,そしてその 折衷案であ る「中央集権 十分散」 の三つのパターンがあ る [9][17]0 特許関連組織の 果たす機能で 見た場合,主に 特許出 願業務を中心とした「手続き・ 管理」部門と ,研究開 発の初期から 参画しより戦略的な 特許活動を行 う 「戦 略」部門の段階に 分けることができる。 特許の持つ経 営的意義が大きくなってくるにつれて ,企業は組織機 能を変化させ ,その組織機能を 実行するのに 適した組 織構造をとるよ う に進化していく [16]0 以上述べてきたよ う に,特許戦略は ,特許制度,競 合他社との相互関係,技術選択の 内容の影響を 受けな がら進化するのであ る。
2.3 市場による淘汰・ 保持 自社の既存技術,新たに 自社開発された 技術,あ る いは技術供与などによって 外部から導入された 技術は, 製品という形態で 統合される。 そして市場に 投入され るのであ る。 製品の寿命は ,市場および 特許制度といった 外部環 境に,製品戦略と 特許戦略が適応しているか 否かによ って影響を受ける。 市場のニーズに 合っていない 製品 は早期に淘汰されるであ ろうし,また ,特許による 要 素技術の保護がうまくいっていない 場合,他社によっ て 模倣あ るいは迂回発明をされる 可能性があ る。 そし て,淘汰あ るいは保持された 製品は , 次の製品戦略に 進化の方向性に 影響を与えるのであ る。 3. 特許戦略と製品戦略の 共進化 3.] 共進化の概俳 繰り返しになるが ,共進化とは , 「あ る種 A の形質 は第 2 の種 B が存在しているために 進化し B は A が 存在しているために 進化」するケースであ る [1]0 前述のように ,製品戦略が「どのようなコンセプト の 製品を販売するか」を 規定しその機能をどのよう な技術で実現するのかを 決定するのが「技術選択」で あ る。 一方,特許戦略は ,技術選択されて 自社開発し た技術を特許化することに 関する戦略であ る。 製品戦略が進化することによって ,技術選択の 内容 は 変わり,その 技術を特許 ィヒ する特許戦略も 進ィヒして いく。 つまり,特許戦略と 製品戦略は,技術選択を 介 して共進化していくのであ る。 3.2 車例 : キヤノン株式会社 独自技術による 競争優位と優れた 特許戦略で有名な キヤノンの簡単な 事例を記述し ,特許戦略と 製品戦略 の共進化モデルを 例証したい。 キヤノンの特許関連部門は , 当初は,技術者と 特 許 事務所の仲介が 主な業務であ った。 以降,特許出 願数が増加してきたため , 1972 年に特許部に 昇格。 50 名程度の人員を 抱えるようになる。 そして, 1983 年には,本社部門であ る特許法務センタに 格上げさ れ,取締役がセンタ 長をつとめるよ う になった。 人 員は 100 名程度になり ,特許紛争対策と 汎用技術の 権 利確保がその 主要機能となった。 1987 年に,特 許法務本部 (150 名程度 ), 1989 年に知的財産法務 本部となり, 2000 年 6 月現在で, 400 人を超える規 模となっている。 特許関連部門は , 1980 年以前は事業分野別の 構 造をとっていた。 それが電子化の 技術が進み, 1980 年代から一つの 製品に使われる 技術が複数の 事業分 野にわたるよ う になった。 それに伴い,事業横断的 な研究開発体制がとられるよ う になった。 特許関連 部門も,これに 合わせて技術分野ごとに 担当者を分 けて,研究開発部隊に 張りつくようになった。 最近 は ,以前にも増して 複雑化してきたため ,事業部門 の状況と製品分野によって 柔軟な対応ができるよ う に,ハイプリッドな 組織構造をとっている。 また,キヤノンでは ,研究開発の 早い段階から 特 許関連部門のメンバーが 加わる。 そして研究開発部 隊 に張りついて ,特許情報の 提供,特許の 視点から の発明の掘り 起こしや研究開発テーマの 提案を行っ ている。 本 事例から,キヤノンにおける 特許関連部門の 進化 は ,出願件数の 増加に対応して 規模を大きくするだけ ではなく,事業横断的な 研究開発の支援を 可能にする 組織構造・機能の 拡張という方向での 進化があ ったこ とがわかった。 キヤノンは独自技術志向の 強い製品戦略をとって お り ,技術選択は「自社による 新規技術開発」が 多いと 考えられる。 そして,特許戦略は 技術選択された 技術 の研究開発を 最も効率的に 支援できるような 形に進 ィ 比 している。 このことから ,キヤノンでは ,特許戦略と 製品戦略の共進化が 進んでいるといえるだろう。 4. まとめ 以上,本報告では ,特許戦略と 製品戦略は技術選択 を介して共進化する 関係にあ ることを示し ,それを 特 許 戦略で先進的と 言われるキヤノンの 事例によって 例 証した。 市場で競争していくための 製品戦略と,発明された 技術の専有可能性を 確保し戦略的に 活用するための 特 許戦略は , 別々の環境に 適応して進化していく。 しか し ,市場での競争で 生き残って行くには ,製品戦略の 進化と特許戦略の 共進化を意図的に 促進させるような マネジメントが 必要だと言えるだろう。
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